JP5157930B2 - ボールねじ装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、上記のような構成のボールねじ装置では、負荷転動路内へ供給する潤滑剤が、ナットの下端面から漏出し、この漏出した潤滑剤が、ねじ軸またはナットの回転によって周囲へ飛散するおそれがある。このため、ボールねじ装置の周辺環境を汚染するおそれがある。
特許文献1に記載されているボールねじ装置は、ねじ軸の外周面及びねじ軸側軌道溝と摺接するシール部材を、ナットの両端部のうち下方側の端部に配置している。
このような構成のボールねじ装置であれば、シール部材がねじ軸の外周面及びねじ軸側軌道溝と摺接して、ナットの下端面とねじ軸との間を閉塞することとなる。このため、ナットの下端面からの潤滑剤の漏出を抑制することが可能となり、ボールねじ装置の周辺環境の汚染を抑制することが可能となる。
上述した特許文献1に記載のボールねじ装置では、シール部材が、ナットの下端面とねじ軸との間を閉塞する。このため、潤滑剤に磨耗粉が混入した場合、この潤滑剤が、負荷転動路内を含むナットの内部に留まることとなる。したがって、ボールねじ装置の運転条件や使用条件が厳しい場合等には、磨耗粉が混入した潤滑剤により、ボールねじ装置の耐久性が低下するおそれがあるため、ボールねじ装置の寿命が短縮されるという問題が生じるおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、潤滑剤に磨耗粉が混入しても、この潤滑剤を外部へ排出することが可能なボールねじ装置を提供することを課題とする。
前記負荷転動路内に、流動性を有する潤滑剤を配置し、
前記シール部材を、前記ナットの両端部のうち下方側の端部よりも下方に配置し、
前記シール部材に、前記潤滑剤を前記負荷転動路の外部へ排出可能な排出孔を形成し、
前記排出孔は、前記負荷転動路と前記ナットの外部とを連通させていることを特徴とするものである。
このため、負荷転動路内に配置した潤滑剤が、ナットの内部に留まることなく、排出孔から負荷転動路の外部へ排出されることとなり、負荷転動路内に配置した潤滑剤に磨耗粉が混入しても、この潤滑剤を、シール部材に形成した排出孔から排出することが可能となる。
前記管状部材の他端に、前記潤滑剤を内部に収容可能な潤滑剤収容部を接続したことを特徴とするものである。
本発明によると、潤滑剤が内部を移動可能な管状部材の一端を排出孔に接続し、潤滑剤を内部に収容可能な潤滑剤収容部に、管状部材の他端を接続する。
このため、負荷転動路内に配置した潤滑剤を、シール部材に形成した排出孔から排出しても、この排出した潤滑剤を、管状部材を介して潤滑剤収容部の内部に収容することが可能となるため、潤滑剤の飛散を抑制することが可能となる。
本発明によると、潤滑剤再供給装置により、排出孔から排出した潤滑剤を負荷転動路内へ再度供給することが可能となる。
このため、ボールとねじ軸側軌道溝及びナット側軌道溝との間に形成される潤滑膜を維持することが可能となり、ボールねじ装置の作動性及び耐久性が低下することを抑制することが可能となる。
前記潤滑剤濾過装置を、前記排出孔と前記潤滑剤再供給装置との間に配置したことを特徴とするものである。
本発明によると、排出孔と潤滑剤再供給装置との間に配置した潤滑剤濾過装置により、排出孔から排出した潤滑剤を濾過し、この濾過した潤滑剤を、潤滑剤再供給装置を介して負荷転動路内へ供給することが可能となる。
このため、排出孔から排出し、潤滑剤再供給装置を介して負荷転動路内へ供給する潤滑剤から、磨耗粉等の不純物を除去することが可能となり、清浄な潤滑剤を負荷転動路内に循環させることが可能となる。
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態のボールねじ装置の構成を説明する。
図1は、本実施形態の一例であるボールねじ装置1の一部を破断して示す図である。また、図2は、図1に示したボールねじ装置1を、図1中に記載した矢印IIの方向から見た図である。
ねじ軸2は、合金鋼等の鋼材で形成した棒状部材であり、螺旋状のねじ軸側軌道溝14を外周面に有している。ねじ軸2の端部は、モータ等の回転動力源(図示せず)に連結されている。
ナット4は、合金鋼等の鋼材で形成された円筒状部材であり、ねじ軸2の外周側に配置されている。
また、ナット4は、ねじ軸側軌道溝14と対向するナット側軌道溝16を内周面に有している。すなわち、ねじ軸側軌道溝14とナット側軌道溝16は、同じリードで形成されている。
ナット4の外周面には、リターンチューブ(図示せず)が固定されている。リターンチューブは、例えば、金属からなる管状体をU字状に曲げ加工して形成されている。
ナット4の両端部には、円環状の潤滑リング20が配置されている。具体的には、内周面をねじ軸2の外周面に摺接させ、外周面をナット4の軸方向の両側の端部に形成されたリング取り付け孔22に嵌合させて、ナット4の両端部に配置されている。
すなわち、本実施形態のボールねじ装置1は、ねじ軸2(またはナット4)の回転運動に伴い、負荷転動路24内を複数のボール6が転動し、ナット4(またはねじ軸2)がボール6の転動を介して、ねじ軸2の軸方向に沿って直線移動する構成となっている。
また、シール部材8は、リップ部26と、鍔部28とを備えている。
リップ部26は、ナット4の軸方向の外側に向かって縮小する円錐台形状に形成されている。
また、図2中に示すように、鍔部28の円周方向には、所定のピッチ円直径、角度ピッチで取り付けボルト34を挿通させるシール取り付け孔36が複数形成されている。なお、本実施形態では、複数のシール取り付け孔36を、90°間隔で均等配置した四箇所の孔で形成している。
シール取り付け板30は、合金鋼等の鋼材で形成された環状部材であり、その外径は、ナット4の外周面の直径と同等であり、その内径は、ねじ軸2の外周面の直径より大きい。
また、シール取り付け板30の、軸方向の一端面には、鍔部28の外周面が嵌合する第一嵌合孔32が形成されている。
また、シール取り付け板30の、軸方向の他端面には、ナット4のリング取り付け孔22に嵌合する第二嵌合孔38が形成されている。そして、この第二嵌合孔38を下方のリング取り付け孔22に圧入等により嵌合させて、二つの潤滑リング20のうち、下方の潤滑リング20の軸方向外側に、シール取り付け板30が配置される。
以上により、シール部材8は、ねじ軸2の外周面及びねじ軸側軌道溝14と摺接する構成となっている。
排出孔40は、リップ部26に形成されており、リップ部26をねじ軸2の軸方向に貫通して、負荷転動路24とナット4の外部とを連通させている。
管状部材10は、例えば、ゴム等の弾性材料を用いて形成した、可撓性を有するチューブであり、その内部(中空部)を、潤滑剤が移動可能となっている。
管状部材10の一端(開口端)10aは、排出孔40に接続されており、管状部材10の他端(開口端)10bは、潤滑剤収容部12の内部に配置されて、潤滑剤収容部12に接続されている。
次に、図1及び図2を参照しつつ、ボールねじ装置1の作用について説明する。
ボールねじ装置1の作動時には、ねじ軸2(またはナット4)の回転運動に伴い、負荷転動路24内を複数のボール6が転動し、ナット4(またはねじ軸2)がボール6の転動を介して、ねじ軸2の軸方向に沿って直線移動する。
ここで、ナット4の両端部のうち、下方側の端部に配置されているシール部材8には、負荷転動路24内に配置した潤滑剤を排出可能な排出孔40が形成されている。
排出孔40から排出された潤滑剤は、管状部材10の内部を移動して、潤滑剤収容部12の内部へ収容される。
以上により、本実施形態のボールねじ装置1では、負荷転動路24内に配置した潤滑剤は、ナット4の内部に留まることなく、排出孔40から排出され、管状部材10の内部を移動して、潤滑剤収容部12の内部へ収容されることとなる。
以下、本実施形態のボールねじ装置1の効果を列挙する。
(1)本実施形態のボールねじ装置1では、ねじ軸2の軸を鉛直方向に向けて配置し、ねじ軸2の外周面及びねじ軸側軌道溝14と摺接するシール部材8を、ナット4の両端部のうち下方側の端部に配置する。そして、負荷転動路24内に、流動性を有する潤滑剤を配置し、シール部材8に、負荷転動路24内に配置した潤滑剤を、負荷転動路24の外部へ排出可能な排出孔40を形成する。
その結果、ボールねじ装置1の長期間に亘る使用等により、微細な磨耗粉が発生し、この磨耗粉が負荷転動路24内に配置した潤滑剤に混入しても、この潤滑剤を、排出孔40から排出することが可能となる。これにより、ボールねじ装置1の耐久性及び作動性が低下することを抑制することが可能となる。
このため、負荷転動路24内に配置した潤滑剤を、シール部材8に形成した排出孔40から排出しても、この排出した潤滑剤を、管状部材10を介して潤滑剤収容部12に収容することが可能となるため、排出孔40から排出した潤滑剤の飛散を、抑制することが可能となる。
その結果、ボールねじ装置1の周辺環境が汚染されることを抑制することが可能となるとともに、排出孔40から排出した潤滑剤の回収が容易となる。
以下、本実施形態のボールねじ装置1の応用例を列挙する。
(1)本実施形態のボールねじ装置1では、ねじ軸2を、中心軸線CLを鉛直方向に向けて配置したが、これに限定するものではなく、ねじ軸2を、例えば、中心軸線CLを鉛直方向から90°未満の傾斜角に向けて配置してもよい。なお、本実施形態のボールねじ装置1を、ねじ軸2を、軸を垂直から90°未満の傾斜角に向けて配置したボールねじ装置1に適用する際は、傾斜角を、垂直から30°以内の範囲としたボールねじ装置1に適用することが好適である。
(3)本実施形態のボールねじ装置1では、潤滑剤収容部12を備える構成としたが、これに限定するものではなく、潤滑剤収容部12を備えていない構成としてもよい。もっとも、本実施形態のボールねじ装置1のように、潤滑剤収容部12を備える構成とすることが、排出孔40から排出した潤滑剤の飛散を抑制することが可能となるとともに、排出孔40から排出した潤滑剤の回収が容易となるため、好適である。
(7)本実施形態のボールねじ装置1では、負荷転動路24及びリターンチューブによって、ボール6の無限循環通路を形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、リターンチューブの代わりに、循環こま、エンドキャップ、デフレクタ等と、負荷転動路24によって、ボール6の無限循環通路を形成してもよい。
次に、本発明の第二実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図5を参照して、本実施形態のボールねじ装置の構成を説明する。
図5は、本実施形態の一例であるボールねじ装置1の一部を破断して示す図である。
なお、本実施形態のボールねじ装置1の構成は、潤滑剤濾過装置42及び潤滑剤再供給装置44の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。このため、その他の構成に関する説明は、省略する。
潤滑剤濾過装置42を配置した容器の内部には、管状部材10の他端10bが接続されている。
また、潤滑剤濾過装置42を配置した容器の内部は、管状部材10とは別の経路である、潤滑剤移動経路により、潤滑剤再供給装置44に接続されている。この潤滑剤移動経路は、例えば、弾性材料により形成したチューブであり、上述した容器の内部に収容した潤滑剤が移動可能に形成されている。
潤滑剤再供給装置44は、流体(液体)を吸入及び吐出可能なポンプを備えている。
潤滑剤再供給装置44の吸入側は、上記の潤滑剤移動経路を介して、潤滑剤濾過装置42を配置した容器の内部に接続されている。
一方、潤滑剤再供給装置44の吐出側は、例えば、ナット4の両端部のうち、上方側の端部に配置した潤滑リング20に形成した貫通孔を介して、負荷転動路24内に接続されている。
以上により、潤滑剤再供給装置44は、排出孔40から排出した潤滑剤を、負荷転動路24内へ供給可能となっている。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
次に、図5を参照しつつ、ボールねじ装置1の作用について説明する。なお、上述した第一実施形態と同様の作用については、詳細な説明を省略する。
ボールねじ装置1の作動時には、潤滑リング20の内周面とねじ軸2の外周面との摺接による摩擦熱等で、潤滑リング20から潤滑剤(潤滑油)が滲み出し、負荷転動路24内に供給される。また、負荷転動路24内には、ナット4の外部から、潤滑剤が供給されている。
そして、潤滑リング20から滲み出した潤滑剤と、ナット4の外部から供給された潤滑剤は、下方へ移動した後、共に、排出孔40から排出される。
このとき、排出孔40から排出され、潤滑剤濾過装置42を配置した容器の内部へ収容された潤滑剤に、微細な磨耗粉等、潤滑剤の機能を低下させる要因となる物質が含まれている場合、この物質は、潤滑剤濾過装置42により濾過される。
以上により、本実施形態のボールねじ装置1では、負荷転動路24内に配置した潤滑剤は、ナット4の内部に留まることなく、排出孔40から排出され、潤滑剤濾過装置42により濾過された後、潤滑剤再供給装置44により、負荷転動路24内に供給されることとなる。
以下、本実施形態のボールねじ装置1の効果を列挙する。
(1)本実施形態のボールねじ装置1では、潤滑剤再供給装置44により、排出孔40から排出した潤滑剤を、負荷転動路24内へ再度供給することが可能となる。
このため、負荷転動路24内に配置した潤滑剤を排出孔40から排出しても、ボール6とねじ軸側軌道溝14及びナット側軌道溝16との間に形成される潤滑膜を、維持することが可能となる。
その結果、ボールねじ装置1の作動性及び耐久性が低下することを、抑制することが可能となる。
このため、排出孔40から排出し、潤滑剤再供給装置44を介して負荷転動路24内へ供給する潤滑剤から、磨耗粉等の不純物を除去することが可能となり、不純物を除去した清浄な潤滑剤を、負荷転動路24内に循環させることが可能となる。
その結果、ボール6とねじ軸側軌道溝14及びナット側軌道溝16との間に形成される潤滑膜に、磨耗粉等の不純物が混入することを抑制することが可能となるため、ボールねじ装置1の作動性及び耐久性が低下することを、抑制することが可能となる。
以下、本実施形態のボールねじ装置1の応用例を列挙する。
(1)本実施形態のボールねじ装置1では、潤滑剤濾過装置42を備える構成としたが、これに限定するものではなく、潤滑剤濾過装置42を備えていない構成としてもよい。この場合、上述した第一実施形態のような潤滑剤収容部12を備える構成とし、潤滑剤収容部12の内部に収容した潤滑剤を、潤滑剤再供給装置44を介して負荷転動路24内へ供給する構成としてもよい。もっとも、本実施形態のボールねじ装置1のように、潤滑剤濾過装置42を備える構成とすることが、排出孔40から排出した潤滑剤から磨耗粉等の不純物を除去することが可能となるため、好適である。
2 ねじ軸
4 ナット
6 ボール
8 シール部材
10 管状部材
12 潤滑剤収容部
14 ねじ軸側軌道溝
16 ナット側軌道溝
18 フランジ部
20 潤滑リング
22 リング取り付け孔
24 負荷転動路
26 リップ部
28 鍔部
30 シール取り付け板
32 第一嵌合孔
34 取り付けボルト
36 シール取り付け孔
38 第二嵌合孔
40 排出孔
42 潤滑剤濾過装置
44 潤滑剤再供給装置
L 潤滑剤
Claims (4)
- 螺旋状のねじ軸側軌道溝を外周面に有し、且つ軸を鉛直方向を含む90°未満の傾斜角に向けて配置するねじ軸と、当該ねじ軸の外周側に配置されるとともに前記ねじ軸側軌道溝に対向するナット側軌道溝を内周面に有するナットと、前記両軌道溝間に形成される負荷転動路内に転動自在に装填され、且つ前記ねじ軸または前記ナットの回転運動に伴って前記負荷転動路内を転動する複数のボールと、前記ナットの両端部のうち下方側の端部に配置し、且つ前記ねじ軸の外周面及び前記ねじ軸側軌道溝と摺接するシール部材と、を備えたボールねじ装置であって、
前記負荷転動路内に、流動性を有する潤滑剤を配置し、
前記シール部材を、前記ナットの両端部のうち下方側の端部よりも下方に配置し、
前記シール部材に、前記潤滑剤を前記負荷転動路の外部へ排出可能な排出孔を形成し、
前記排出孔は、前記負荷転動路と前記ナットの外部とを連通させていることを特徴とするボールねじ装置。 - 前記排出孔に、前記潤滑剤が内部を移動可能な管状部材の一端を接続し、
前記管状部材の他端に、前記潤滑剤を内部に収容可能な潤滑剤収容部を接続したことを特徴とする請求項1に記載したボールねじ装置。 - 前記排出孔から排出した前記潤滑剤を前記負荷転動路内へ供給可能な潤滑剤再供給装置を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載したボールねじ装置。
- 前記排出孔から排出した前記潤滑剤を濾過する潤滑剤濾過装置を備え、
前記潤滑剤濾過装置を、前記排出孔と前記潤滑剤再供給装置との間に配置したことを特徴とする請求項3に記載したボールねじ装置。
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