JP5152213B2 - オキセタニル基を2個以上有するポリマーを含むカチオン硬化性樹脂組成物 - Google Patents

オキセタニル基を2個以上有するポリマーを含むカチオン硬化性樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、紫外線や電子線等のような活性エネルギー線の照射及び/又は加熱によりカチオン重合する硬化性組成物において、その配合原料となるカチオン重合性ポリマーを含む樹脂組成物に関する。また、本発明は、可撓性に優れ、室温に於いて低弾性率で形状変化後の復元性にも優れた硬化物を作成することが可能な、硬化性良好なカチオン硬化性樹脂組成物に関する。
紫外線や電子線等のような活性エネルギー線の照射又は加熱によりカチオン重合する硬化性樹脂組成物のほとんどのものは、エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂は、一般に耐熱性、接着性、及び耐薬品性等に優れているが、その多くは、アミンや酸無水物等の付加反応による二液型の熱硬化型である。カチオン重合による硬化系はエポキシ樹脂ほど広く使用されていない。しかし、カチオン硬化系では、アミンやエステル等の極性基を有さないため、硬化物の吸水率を小さくする上で有利である。また、カチオン硬化系では、潜在性の熱カチオン重合開始剤を使用することで、一液型の熱硬化性樹脂とすることができる。
また、光カチオン重合開始剤を配合したエポキシ系及びオキセタン系の光カチオン硬化性樹脂組成物は、次のような理由で近年注目されている。すなわち、光硬化性樹脂の大部分を占める(メタ)アクリレート系に比べてエポキシ化合物及びオキセタン化合物は硬化時の収縮率が小さく、基材への密着性に優れ、吸水率が低く、そして空気中の酸素により重合が阻害されない等の長所を有するためである。このような理由から、カチオン硬化性樹脂組成物、とりわけ光カチオン硬化性樹脂組成物が注目されている。しかし、エポキシとアミン等とによる硬化系等に比べると高価であるため、汎用の材料よりはむしろ電子材料や光学材料等、特異な物性を必要とする分野において注目されている。
電子材料や光学材料に求められる特異な物性の一つとして、例えば、室温(25℃付近)に於いて粘着剤と同程度もしくはそれ以上に軟らかいにも関わらず、形状変化後の復元性に優れるというものがある。これは言い換えると、動的粘弾性測定において、貯蔵弾性率(G’)が低く、且つtanδも低いという物性である(以後、低弾性率・低tanδと略す)。ところが、従来のエポキシ系カチオン硬化性樹脂組成物は、シリコーン系を除くと、このような物性の点で優れたものは見出せない。なお、シリコーン系樹脂の硬化物は、一般に他の材料と接着させることが困難であるため、用途が限定される。
しかし、一般に可撓性樹脂と呼ばれるレベルの軟らかさを求める場合には、エポキシ化ポリブタジエンを使用したエポキシ系の組成物が知られている。また、現在上市されているエポキシ化ポリブタジエンよりも可撓性を向上させるためのエポキシ樹脂として、末端にカルボキシル基を有するポリブタジエンと、1分子中に2個のシクロヘキセンオキサイド構造を有するエポキシ化合物との付加反応物等がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、この化合物が、低弾性率・低tanδの点で、硬化性も踏まえて、どこまでの性能を発現できるかは明らかでない。
エポキシ化合物、オキセタン化合物及び光カチオン重合開始剤からなる光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。これには、考えられる種々の化合物や組成物が幅広く列挙されているが、本発明が目的とする低弾性率樹脂とは異なるものである。
末端にオキセタン含有基を有するマクロモノマーの製造方法が開示されており(例えば、特許文献3参照)、化合物としては片末端にオキセタン環を含有するポリイソプレンが示されている。しかし、カチオン硬化性樹脂としての物性は明らかにされておらず、また末端の構造も、本発明における構造を示していない。また、この化合物は分子内に二重結合を数多く含んでいるため、酸化による劣化を受けやすい。しかも、当該特許の製造方法は、アニオン重合したポリマーの活性末端にオキセタン環を有する重合停止剤を付加させることで得られるが、この方法は、空気中の水分や反応溶液中の微量の水分によって阻害されるため厳密な脱水工程が必要であり、またこのような精密な反応に適した製造設備が必要である。また、ブチルリチウム等のアニオン重合の開始剤は、空気中の水分によって分解するため、取り扱いは容易でない。
特開2001−329045号(特許請求の範囲) 特開平10−168165号(特許請求の範囲) 特開平7−309856号(特許請求の範囲、実施例)
本発明の課題は、組成物の粘度を数10mPa・s〜数10Pa・sと幅広く調整することができるカチオン重合性ポリマーを使用して、硬化性が優れ、その硬化物が、密着性が良く、可撓性に優れ、柔軟で、及び室温(例えば、25℃付近)において低弾性率でありながら形状変化後の復元性にも優れる組成物を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、以下の発明により前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
1.マレイン化ポリブタジエン及び/又はマレイン化ポリイソプレンと式(1)とから得られるオキセタニル基を有する2個以上ポリマー(以下、「多官能オキセタンポリマー」という)及び活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤とを含むカチオン硬化性樹脂組成物。
Figure 0005152213
式(1)のR1は水素原子又は炭素数1〜6個の分岐を有してもよいアルキル基を表す。
2.上記に記載の多官能オキセタンポリマーと、エポキシ基を有する化合物及び/又は多官能オキセタンポリマー以外のオキセタニル基を有する化合物(但し、片末端にオキセタニル基を有するエチレン−ブチレン共重合体を除く)と、活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤とを含むカチオン硬化性樹脂組成物。
3.上記に記載のカチオン硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線照射及び/又は加熱してなる硬化物。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、前記課題が解決された組成物を提供することが可能となる。
さらに、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物によれば、一般に可撓性樹脂と呼ばれる軟らかい硬化物から、粘着剤と同程度もしくはそれ以上に軟らかい硬化物を与えることができる。また、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、粘着剤と同程度の低弾性率でありながら形状変化後の復元性に優れた材料とすることができる。
本発明で使用する多官能オキセタンポリマーは、マレイン化ポリブタジエン及び/又はマレイン化ポリイソプレンと前記式(1)とから得られるオキセタニル基を有する化合物(以下、オキセタニル基を有するマレイン化化合物と称する)である。
なお、本発明のオキセタニル基を有するポリマーが混合物であるときは、それぞれ個別に合成して混ぜてもよい。
ポリブタジエン等のように二重結合が存在するものを合成原料に用いた本発明の多官能オキセタンポリマーは、組成物を作製するときの相溶性が良い。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、多官能オキセタンポリマーと活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤とを含むものである。
又は、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、多官能オキセタンポリマーと、エポキシ基を有する化合物及び/又は本発明の多官能オキセタンポリマー以外のオキセタニル基を有する化合物と、活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤とを含むものである。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、オキセタニル基を有するマレイン化化合物と、活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤とを配合したものである。
本発明の組成物には、これら以外のオキセタニル基を有する化合物を含むこともあり、またエポキシ化合物を含むこともある。
本発明は、上記に記載のカチオン硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射及び/又は加熱してなる硬化物である。
さらに、オキセタニル基を有するマレイン化化合物と、活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤と、エポキシ基を有する化合物及び/又はオキセタニル基を有するマレイン化化合物以外のオキセタニル基を有する化合物を配合したものである。硬化性を重視する場合、エポキシ化合物を配合することが好ましい。
一方、弾性接着剤等において、低弾性率と強靱性とを適度に調整すべき場合や、マレイン化率の少ないポリブタジエンやポリイソプレンを原料とした場合では、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物及び/又はオキセタニル基を有するマレイン化化合物以外の1分子中に2個以上のオキセタニル基を有する化合物を配合することもできる。ここで、1分子中にエポキシ基とオキセタニル基とを両方含む化合物を配合してもよい。
○オキセタニル基を有するマレイン化化合物
本発明のオキセタニル基を有するマレイン化化合物の合成に使用するマレイン化ポリブタジエンやマレイン化ポリイソプレンとしては種々のものが利用できる。これはラジカル重合由来であってもアニオン重合由来であっても良い。
これらの分子量は特に限定するものではないが、粘度平均分子量で500〜100,000であることが好ましく、さらに好ましくは1,000〜80,000、特に好ましくは5,000〜40,000である。この分子量が500未満であると、硬化物が低弾性率のカチオン硬化性樹脂を得ることが困難である場合がある。また分子量が100,000より大きい場合はその他のモノマーや重合開始剤との相溶性が悪くなるので好ましくない。
マレイン化率すなわちポリマー1分子当りに導入される酸無水物の個数については、1分子当り平均1個以上導入されていることが好ましく、さらに好ましくは平均2〜10個、特に好ましくは平均2〜5個である。マレイン化率が平均1個以下の場合、非反応性のポリマーが増えることになり、硬化物からのブリードアウトやtanδの上昇を引き起こしやすくなり、また耐溶剤性にも劣るため好ましくない。逆にマレイン化率が平均10個を超える場合、本発明の特徴である低弾性率を実現するために式(1)で表されるものの付加率を下げる必要がでてくるが、その場合無用の酸無水物が残るので、耐水性や低吸水性の点から好ましくない。
本発明で使用するマレイン化ポリブタジエンとしては、日本曹達製NISSO−PBBN−1015、新日本石油化学製M−1000−80、出光石油化学製Poly bd R−45MA等が挙げられる。本発明で使用するマレイン化ポリイソプレンとしては、クラレ製LIR−403等が挙げられる。
本発明のオキセタニル基を有するマレイン化化合物は、上述のマレイン化ポリブタジエン又はマレイン化ポリイソプレンに式(1)で表される化合物を付加させることで容易に合成される。
本発明のオキセタニル基を有するマレイン化化合物における式(1)で表される化合物の好ましい付加率はマレイン化率によって異なるが、ポリマー1分子あたりの付加率で見ると平均1〜20個であることが好ましく、さらに好ましくは平均2〜5個である。平均が1個未満の場合、非反応性のポリマーが増えることになり、硬化物からのブリードアウトやtanδの上昇を引き起こしやすくなり、また耐溶剤性にも劣るため好ましくない。逆に平均が20個より多い場合、本発明の特徴である低弾性率を実現する上で好ましくない。なお、グリシドール等の水酸基を有するエポキシ化合物をマレイン化ポリブタジエン又はマレイン化ポリイソプレンに付加させると、この付加で発生するカルボン酸が別のポリマーのエポキシ基に付加してゲル化する。しかし、本発明で使用する式(1)で表される化合物はカルボキシル基と付加反応しにくいため、オキセタニル基を有するマレイン化化合物は容易に合成できる。
なお、本発明のオキセタニル基を有するマレイン化化合物は、マレイン化ポリブタジエン又はマレイン化ポリイソプレンに、式(1)で表される化合物だけでなく、他のアルコールをも付加させて良い。ここでのアルコールとしては、1分子中に1個の水酸基を有するものが好適であり、アミン化合物等のカチオン重合を阻害する官能基を有していなければ種々のものが好適に利用できる。また、酸無水物にアルコールを付加させた後に生成するカルボン酸を、これらのアルコールによりエステル化しても良い。
○カチオン硬化性樹脂組成物
本発明で使用するオキセタニル基を有するマレイン化化合物は、カチオン重合性に優れるため、活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤を配合することで、カチオン硬化性樹脂組成物として使用することができる。当該カチオン硬化性樹脂組成物からの活性エネルギー線硬化性樹脂は、従来のものでは達成困難な物性を実現できる。
活性エネルギー線の照射により本発明のカチオン硬化性樹脂組成物のカチオン重合を開始させるカチオン重合開始剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルフォニウム塩、セレニウム塩、ピリジニウム塩、フェロセニウム塩、フォスフォニウム塩、及びチオピリリニウム塩等が挙げられ、好ましくはヨードニウム塩及びスルフォニウム塩であり、さらに好ましくはジアリールヨードニウム塩及びジアルキルフェナシルスルホニウム塩であり、特にジアリールヨードニウム塩が好適に使用できる。
ヨードニウム塩及びスルフォニウム塩等の光カチオン重合開始剤を本発明のカチオン硬化性樹脂組成物に使用する場合、アニオンとしてはBF4 -、AsF6 -、SbF6 -、PF6 -、及びB(C654 -等が挙げられ、好ましくはSbF6 -、PF6 -、又はB(C654 -であり、特に好ましくはSbF6 -又はB(C654 -である。
光カチオン重合開始剤の具体例を挙げると、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(GE東芝シリコーン社製、UV−9380Cの主成分)、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ローディア社製、PHOTOINITIATOR2074)、ビス(アルキル(C=10〜14)フェニルヨードニウム)ヘキサフルオロアンチモネート(和光純薬製光カチオン重合開始剤WPI−016)等が挙げられる。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物を硬化させるときの活性エネルギー線としては、X線、電子線、紫外線及び可視光等を使用することもできるが、好ましくは紫外線又は可視光であり、特に好ましくは紫外線である。紫外線を使用する場合、その波長範囲は特に限定されないが、好ましくは150〜400nm、さらに好ましくは200〜380nmである。紫外線を用いる場合、カチオン重合を効率よく開始できる。
また、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物には、必要に応じてさらに光カチオン重合開始剤の活性を高めるため、増感剤を併用することもできる。本発明で用いることができる増感剤として、例えばクリベロがアドバンスド イン ポリマーサイエンス(Adv.in Plymer Sci.,62,1(1984))で開示している化合物を用いることが可能である。具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン及びペンゾフラビン等がある。また、光ラジカル重合開始剤として広く使用されている化合物も使用することができ、具体的には、ベンゾフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル類、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンジルジメチルケタール類、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン類、カンファーキノン等のα−ジカルボニル化合物等が挙げられる。本発明においては、チオキサントン類やα−ヒドロキシアルキルフェノン類が特に好適に使用できる。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物への光カチオン重合開始剤の配合量は、活性エネルギー線の種類や照射量に応じて適宜に調整できる。例えば紫外線の場合、カチオン硬化性樹脂組成物の合計100質量部に対し、0.1〜10質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜5部であり、さらに好ましくは1〜3部である。カチオン重合開始剤の配合量が0.1部よりも少ない場合は硬化性に劣ることがあり、逆に10質量部より多い場合は硬化物に真に必要な成分を減少させて硬化物の物性が低下する場合や、硬化物の着色が激しくなる場合があり好ましくない。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物に増感剤を添加する場合の配合量は、活性エネルギー線の種類や照射量に応じて適宜に調整できる。例えば紫外線の場合、カチオン硬化性樹脂組成物の合計100質量部に対し、5質量部以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜2部である。増感剤の配合量が5質量部より多い場合は硬化物に真に必要な成分を減少させて硬化物の物性が低下する場合や、硬化物の着色が激しくなる場合がある。
活性エネルギー線が紫外線や可視光である場合、カチオン硬化性樹脂組成物が空気にさらされるが、このとき雰囲気の湿度は低いことが好ましく、好ましくは湿度80%R.H.以下であり、70%R.H.以下であることがさらに好ましい。ここで、紫外線や可視光を生産ラインの中に設置する場合、光照射装置の手前に乾燥空気を送る方法や、加熱装置を取り付けて湿度を下げる方法も採用できる。
熱により活性化してカチオン重合を開始させる化合物、すなわち熱カチオン重合開始剤を本発明のカチオン硬化性樹脂組成物に用いることもできる。このものとしては、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びスルホニウム塩等の各種オニウム塩類や、アルコキシシランとアルミニウム錯体の組み合わせ等が例示できる。入手可能な製品としては、アデカオプトンCP−66及びアデカオプトンCP−77(いずれも商品名、旭電化工業(株)製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L及びサンエイドSI−100L(いずれも商品名、三新化学工業(株)製)、及びCIシリーズ(日本曹達(株)製)等が挙げられる。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物への熱カチオン重合開始剤の配合割合は、カチオン硬化性樹脂組成物100質量部に対し、0.01〜10質量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜5部であり、さらに好ましくは0.5〜3部である。この配合割合が0.01質量部未満の場合には、熱の作用によりこれが活性化しても、開環重合性基の開環反応を十分に進行させることができないことが有る。また、これを10質量部超えて配合したとしても、重合を進行させる作用はそれ以上高まらず、また硬化物の物性が低下する事があるので好ましくない。
光カチオン硬化性樹脂組成物に注目すると、オキセタニル基を有するマレイン化化合物、エポキシ基を含有する化合物、並びに光カチオン重合開始剤を含む樹脂組成物が硬化性の点で好ましい。光カチオン重合において、オキセタン化合物はエポキシ化合物よりも重合性が良好であるが、重合の開始段階での反応が遅いため、オキセタン化合物を含有する組成物に少量のエポキシ化合物を配合することで、全体としての硬化性が向上する。
全体としての硬化性向上のために用いるエポキシ化合物としては種々のものが利用可能であり、単官能であっても多官能であっても良い。また、エポキシ化合物のエポキシ基としては、分子内の二重結合を酸化させたものであっても、グリシジルエーテルであっても良い。分子内の二重結合を酸化させたものとしては、脂環式エポキシだけでなく、オレフィンやポリブタジエン等の鎖状分子を酸化させたものであってもよい。
室温(例えば25℃付近)で、粘着剤と同程度に低弾性率でありながら形状変化後の復元性にも優れた硬化物を得るための好ましい配合例を以下に例示する。一つは、マレイン化化合物、1分子中に1個のオキセタニル基を有する化合物、およびカチオン重合開始剤を含む組成物である。光カチオン重合開始剤を含有した光硬化性樹脂の場合、この組成物に更にエポキシ基を含有する化合物を含む方が硬化性の点で好ましい。
1分子中に1個のオキセタニル基を有する化合物は、1分子中に1個のエポキシ基を有する化合物に比べて、硬化性だけでなく安全性の点からも好ましい。即ち、分子量の小さいエポキシ化合物の多くは変異原性の疑いが持たれているが、オキセタン化合物では、例えば分子量の小さい3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンは変異原性が陰性であるからである。
なお、一般に高分子は粘弾性体であるため固体と液体の区分けは一概に言い難いが、ここでは、動的粘弾性測定におけるtanδが1以下のものを固体と呼ぶことにする。
tanδが小さい硬化物は、弾性率が低くとも形状変化後の復元性に優れている。
ここで、室温とは25℃付近を指し、実際には室内で使用する電子機器の内部に使用されることが多いため、概ね0℃〜40℃の範囲である。この温度範囲にて、硬化物を低弾性率でありながら形状変化後の復元性に優れたものとするためには、ガラス転移温度は−10℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは−25℃以下、特に好ましくは−40℃以下である。
更に本発明の組成物から得られる硬化物は、本発明の化合物の含有量や配合するものを調製することにより、25℃での動的粘弾性率(G’)が1×108Pa以下であるものを得ることができ、又は107Pa以下のものも得ることができ、又は106Pa以下ものも得ることができる。
弾性接着剤等、低弾性率の度合いを強靱性等とのバランスの上で適度なレベルに調整すべき場合は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物及び/又は本発明のポリマー以外の1分子中に2個以上のオキセタニル基を有する化合物を配合することが好ましい。ここで、1分子中にエポキシ基とオキセタニル基を両方含む化合物を配合してもよい。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物に用いるエポキシ基を1個含有する化合物としては、種々の化合物が使用できる。この商品化されている化合物の例を挙げると、1,2−エポキシヘキサデカン等のα−オレフィンエポキサイド、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物に用いるエポキシ基を2個以上含有する化合物としては、種々の化合物が使用できる。
この化合物で商品化されているものの例を挙げると、ジシクロペンタジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、o−、m−、p−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ポリブタジエンの内部エポキシ化物、ポリブタジエンの両末端がグリシジルエーテル化された化合物、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエンの二重結合が一部エポキシ化された化合物、エチレン−ブチレン共重合体とポリイソプレンのブロックコポリマーのポリイソプレンの一部がエポキシ化された化合物(KRATON社製L−207)、4−ビニルシクロヘキセンオキサイドの開環重合体のビニル基をエポキシ化した化合物、エポキシ化植物油等が例示できる。
ここで、1分子当りのエポキシ基の数は特に限定するものではないが、50以下であることが好ましく、特に好ましくは20以下である。エポキシ基が50より多い場合は少量の配合で弾性率が向上するので好ましくない。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物に用いる1分子中に1個のオキセタニル基を有する化合物としては(カッコ内は商品名又は開発品名、東亞合成製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(アロンオキセタンOXT−212(EHOX))、3−エチル−3−(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン(CHOX)、3−エチル−3−(ドデシロキシメチル)オキセタン(OXR−12)、3−エチル−3−(オクタデカシロキシメチル)オキセタン(OXR−18)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(アロンオキセタンOXT−211(POX))、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXA)等が挙げられる。
但し、1分子中に1個のオキセタニル基を有する化合物としては、片末端にオキセタニル基を有するエチレン−ブチレン共重合体を除く。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物に用いるオキセタニル基を2個以上含有する化合物としては、種々のものが使用できる。
この化合物の例を挙げると、(カッコ内は商品名又は開発品名、東亞合成製)、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(アロンオキセタンOXT−121(XDO))、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(アロンオキセタンOXT−221(DOX))、オキセタニルシルセスキオキサン(OX−SQ)、フェノールノボラックオキセタン(PNOX−1009)、ノルボルナンジメタノールと3−エチル−3−クロロメチルオキセタン(以後OXCと略す)のエーテル化物(NDMOX)、トリメチロールプロパンとOXCのエーテル化物(TMPOX)、ハイドロキノンとOXCのエーテル化物(HQOX)、レゾルシノールとOXCのエーテル化物(RSOX)、2,2’−ビフェノールとOXCのエーテル化物(2,2’−BPOX)、4,4’−ビフェノールとOXCのエーテル化物(4,4’−BPOX)、ビスフェノールFとOXCのエーテル化物(BisFOX)、トリシクロデカンジメタノールとOXCのエーテル化物、OXAとシリコンによるアルコキサイド(OX−SC)等が挙げられる。
ここで、1分子当りのオキセタニル基の数は特に限定するものではないが、20以下であることが好ましく、さらに好ましくは5以下であり、特に好ましくは3以下である。
これらを配合した組成物は、最終的に均一透明に溶解することが好ましい。組成物に配合するときにおいて相溶性の点で好適なものは、KRATON社製L−207、1,2−エポキシヘキサデカン、ノルボルナンジメタノールジオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(EHOX)、3−エチル−3−(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン(CHOX)、3−エチル−3−(ドデシロキシメチル)オキセタン(OXR−12)等が例示できる。
本発明の組成物には、必要に応じて、シリカ、アルミナ、その他金属酸化物等のフィラーを配合してもよい。これにより、チクソトロピー性の付与等ができる。また、電気絶縁材料として使用するときは、イオン交換能を有する材料を配合することが好ましく、さらに好ましくは無機系であり、特に好ましくは陰イオン交換能を有するものである。好適な無機系陰イオン交換体の例としては、IXE−500、IXE−530、IXE−550、IXE−700、IXE−800等(いずれも東亞合成製)が例示できる。
さらに、本発明の組成物には、無機材料への密着性の向上を目的として、シランカップリング剤等のカップリング剤を配合することも可能である。この例としてシランカップリング剤としては、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学製KBM−303)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製KBM−403)、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学製KBE−403)、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学製KBM−402)、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン(東亞合成製OXT−610)等が挙げられる。
本発明の組成物には、耐酸化性を必要とされる場合、酸化防止剤を配合することができる。
本発明の組成物に含有させる酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤が挙げられるが、特に好ましいのはフェノール系酸化防止剤である。
フェノール系酸化防止剤としては、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3’−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)]プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティーケミカルズ社製Irganox 1010)、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチル)フェノール、等が挙げられる。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、一般に可撓性樹脂と呼ばれる軟らかい硬化物から、粘着剤と同程度もしくはそれ以上に軟らかい硬化物を与えることができる。また本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、粘着剤と同程度の低弾性率でありながら形状変化後の復元性に優れた材料とすることができる。このようなことから、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、電子材料や光学材料を中心に、接着剤、コーティング剤、シーリング剤、封止剤、及び絶縁材料等として好適に使用できる。
特に、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物において活性エネルギー線硬化によるものでは、従来のものでは達成困難な物性を実現できるため好適である。その中でも、活性エネルギー線として紫外線又は可視光を使用したものは、比較的安価で小さな製造ラインによる生産が可能なため、特に好ましい。
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線硬化系又は熱硬化系のどちらを選択するかについては、用途に応じて使い分けることが出来る。例えばレジストとして使用する場合やスタンパー(型)等により微細な形状を付与する用途では、紫外線硬化系等の活性エネルギー線による硬化系が好適である。また、コーティング、スクリーン印刷、透明材料の接着等でも、生産速度の速さや省エネルギーの点で活性エネルギー線による硬化系が好適である。しかし、不透明な材料同士の接着や、金属等を含む部品の封止等、活性エネルギー線が樹脂に到達できない用途では、熱硬化系が好適となる。ただし、不透明な材料同士の接着等の用途においても、カチオン硬化に特有な暗反応を利用して、例えば不透明な材料に塗布された光硬化性樹脂に光を照射した後、他の不透明な材料を貼り合せ、暗反応により硬化を完結させて接着することも可能である。また、活性エネルギー線による硬化後に加熱硬化を組合わせることもできる。
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例や比較例によって限定されるものではない。また、組成物配合表における数値は質量部である。
<合成例1>
○オキセタニル基を有するマレイン化化合物の合成(LIOX−1)
500MLのセパラブルフラスコに、マレイン化ポリイソプレンであるクラレ製LIR−403を100g(粘度平均分子量25,000、1分子あたりの官能基数3、酸無水物として約8mmol)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXA、東亞合成(株)製)を4.65g(40mmol)、キシレンを100g仕込んでフタをし、攪拌機、冷却管、窒素導入管を取り付け、オイルバスに浸けて攪拌した。窒素流量200ml/分で30分窒素置換した後、窒素流量を50ml/分とし、バス温を150℃としてキシレンを還流させながら16時間反応させた。反応率は、IRスペクトルにおける酸無水物のピーク(1790cm-1)の吸光度とC−H伸縮振動である2930cm-1のピークとから求めた。16時間後の反応率は81%であった。
この溶液に酸化防止剤であるIrganox1010(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)を0.1g加えた後、100℃にてキシレンを減圧留去した。収率は100%であり、残留したOXAは0.3%(ガスクロマトグラフィーによる)であった。
生成物であるポリマーは淡黄色透明であり、50℃での粘度は153Pa・sであった。
<合成例2>
○オキセタニル基を有するマレイン化化合物の合成(LIOX−2)
500MLのセパラブルフラスコに、マレイン化ポリイソプレンであるクラレ製LIR−403を90g(酸無水物として約7.2mmol)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXA、東亞合成(株)製)を4.19g(36mmol)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(EHOX、東亞合成(株)製)を60g仕込んでフタをし、攪拌機、冷却管、窒素導入管を取り付け、オイルバスに浸けて攪拌した。窒素流量200ml/分で30分窒素置換した後、窒素流量を50ml/分とし、液温165℃で4時間反応させた後、140℃で4時間反応させた。反応率を実施例1と同様に求めたところ84%であった。
ここでの生成物は、オキセタニル基を有するマレイン化化合物(58%)、EHOX(40%)、OXA(2%)を含む組成物であり、外観は淡黄色透明、25℃での粘度は10.9Pa・sであった。
<合成例3>
○ウレタンアクリレート(PTGUA)の合成
500MLのセパラブルフラスコに、イソホロンジイソシアネート(IPDI)88.8g(0.40mol)、ジブチルチンジラウレート0.34g、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)0.102gを仕込み、空気を吹き込みながら、分子量約1000のポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業製PTG1000SN)203.8g(0.20mol)を滴下して反応させ、さらに60℃で1時間反応させた。次いで、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)46.4g(0.40mol)を滴下し、80℃で1時間反応させてウレタンアクリレートを得た。
下記に組成物配合表における略号を記載する。
LIOX−1:合成例1で得た生成物
LIOX−2:合成例2で得た生成物
UVR6216:1,2−エポキシヘキサデカン(ダウ・ケミカル日本製UVR−6216)
EHOX:3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成製アロンオキセタンOXT−212)
L207:KRATON Polymers社製L−207(エチレン−ブチレン共重合体とエポキシ化ポリイソプレンのブロック共重合体、1H−NMRの水酸基基準による分子量は約6000、エポキシ当量は約670g/mol、Tg−53℃)
POX:3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成製アロンオキセタンOXT−211)
NDMOX:ノルボルナンジメタノールジオキセタン(東亞合成製、アロンオキセタンNDMOX(開発品))
PGE:フェニルグリシジルエーテル(ナガセケムテクス製デナコールEX−141)
PTGUA:合成例1で合成したウレタンアクリレート
BADMA:ビスフェノールAにエチレンオキサイドを4個付加させたアルコールのジメタクリレート(共栄社化学製ライトエステルBP−4EM)
M120:2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート(東亞合成製アロニックスM−120)
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
POA:フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学製ライトアクリレートPOA)
WPI016:ビス(アルキル(C=10〜14)フェニルヨードニウム)ヘキサフルオロアンチモネート(和光純薬製光カチオン重合開始剤WPI−016)
#2074:トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ローディア社製PHOTOINITIATOR2074)
Dc1173:チバ・スペシャルティーケミカルズ社製光ラジカル重合開始剤Darocur1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、本発明では光カチオン重合の増感剤として使用)
Irg184:チバ・スペシャルティーケミカルズ社製光ラジカル重合開始剤Irgacure184(1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、本発明では光カチオン重合の増感剤として使用)
WPI003:ビス(アルキル(C=10〜14)フェニルヨードニウム)ヘキサフルオロホスフェート(和光純薬製光カチオン重合開始剤WPI−003)
<比較例1〜3>
表1及び表2に示す成分を常法に従って混合し、カチオン硬化性組成物を調製した後、物性を評価した。
Figure 0005152213
Figure 0005152213
表1及び表2に記載の組成物についての粘度及び硬化性及び硬化物の動的粘弾性を測定した。これらの評価結果を表3に示す。
○粘度
東機産業製E型粘度計にて25℃における各組成物の粘度(Pa・s)を測定し、これらの結果を表3に記載した。
○硬化物の動的粘弾性測定:1mm厚硬化物の作成と動的粘弾性測定
ポリテトラフルオロエチレン製の板に厚さ1mmの枠を作成し、表1に記載の実施例及び比較例の組成物をそれぞれの枠内に流し込んだ後、60W/cmの高圧水銀ランプにより紫外線を照射した。365nmにおける強度150mW/cm2で2分間照射し、裏面まで硬化したことを確認した後、裏返して同一条件で照射した。得られた硬化物の動的粘弾性を、ティーエーインスツルメント社製RDS−IIにて、振動数1Hzで測定し、貯蔵弾性率(G’)及びtanδを評価した。表3には、25℃での物性値を記載した。
○硬化過程及び硬化物の動的粘弾性測定(測定温度:25℃)
Reologia社(スウェーデン)製光硬化粘弾性測定装置にて、光照射による硬化過程及び硬化後の粘弾性を測定した。すなわち、石英プレート上に、表1記載の比較例1の組成物、及び表2記載の比較例2及び3の組成物を載せて上から直径10mmのローターで挟み(ギャップ0.2mm)、温度25℃にて、振動数1Hzでずり歪を与えながら、石英プレート下部より水銀キセノンランプ(浜松ホトニクス製L8222、50mW/cm2(365nmにおける強度)に調整)を照射し、粘弾性を測定した。
硬化物の弾性率G’(Pa)及びtanδを表3に示す。比較例1及び2については、樹脂が光硬化して最終的に到達した値を示す。比較例3については、G’が105Pa付近となるよう、光照射を硬化の途中で中止した場合の値を示す。なお、比較例1については、モノマーが消費されていることを、1H−NMRスペクトルにより確認した。
○塗膜での硬化性
比較例1の組成物について、PETフィルム上にバーコーターにて膜厚20ミクロンに塗工し、これを80W/cmの高圧水銀ランプ(1灯)、ランプ高さ10cmにて、コンベア速度10m/分又は30m/分にて、塗膜が固体に変化するまでのパス回数により硬化性を評価した。この結果を表3に記載した(固化するまでの通過回数を記載。以下、硬化性についての結果記載は同様である。)。なお、このときの雰囲気は、温度26℃、相対湿度66%であった。
Figure 0005152213
<実施例1〜6>
○オキセタニル基を有するマレイン化化合物を含有する組成物の配合とその物性評価
表4に記載の組成物について、粘度及び硬化物の動的粘弾性を測定した。これらの評価結果を表4に示す。また表5に記載の組成物について硬化性を評価し、この結果を表5に記載した。
物性の評価方法を以下に示す。
Figure 0005152213
○塗膜での硬化性
表5に記載の組成物(実施例4〜6)をPETフィルム上にバーコーターにて膜厚20ミクロンに塗工し、160W/cmの高圧水銀ランプ(1灯)、ランプ高さ10cm、コンベア速度10m/分にて、塗膜が固体に変化した時のパス回数により硬化性を評価した。この結果を表8に記載した。なお、このときの雰囲気は、温度26℃、相対湿度66%であった。
Figure 0005152213
○硬化物の動的粘弾性スペクトル(温度依存性)の測定
ポリテトラフルオロエチレン製の板に厚さ1mmの枠を作成し、実施例1の組成物をそれぞれの枠内に流し込んだ後、60W/cmの高圧水銀ランプにより紫外線を照射した。365nmにおける強度150mW/cm2で2分間照射し、裏面まで硬化したことを確認した後、裏返して同一条件で照射した。得られた硬化物の動的粘弾性スペクトル(温度依存性)を、Reologia社製VAR−100にて振動数1Hzで測定した。これらの粘弾性スペクトルを図1に示す。
なお、実施例1の硬化物の手触りは、非常に軟らかいが形状変化後の復元性に優れたものであり、また大きく変形しても破れず、脆さのないものであった。
本発明の構成成分である多官能オキセタンポリマーは、カチオン硬化性に優れたものであることから、硬化性組成物の配合原料として好適に使用でき、特に、可撓性に優れた硬化物や、室温に於いて低弾性率でありながら形状変化後の復元性にも優れた硬化物を必要とする際、好適に使用できる。また、光硬化性樹脂等の活性エネルギー線硬化性樹脂として本発明の組成物は好適に使用できる。また、硬化前の粘度を比較的高くすることも可能である。しかも、この硬化物は非常に低弾性率でありながら、耐熱性にも優れており、また脆くないものである。したがって、以上のような物性を必要とする電子材料や光学材料として好適に使用できる。
更に、本発明のポリマーの製法は、容易に入手可能な材料を使用し、厳密な脱水のための設備や操作を必要としないため、特定の電子材料や光学材料等のような比較的少量の生産に適した製造法である。
実施例1の組成物を紫外線で硬化させた硬化物の動的粘弾性スペクトル(温度依存性)を示す。
図1の横軸:温度 ℃
図1の右縦軸:tanδの値(対数目盛)。
図1の左縦軸:貯蔵弾性率(G’)の値(Pa、対数目盛)。
図1の太い実線:実施例1の組成物を紫外線で硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’)を示す曲線。
図1の太い破線:実施例1の組成物を紫外線で硬化させた硬化物のtanδを示す曲線。

Claims (3)

  1. マレイン化ポリブタジエン及び/又マレイン化ポリイソプレンと下記式(1)とから得られるオキセタニル基を2個以上有するポリマー及び活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤とを含むカチオン硬化性樹脂組成物。
    Figure 0005152213


    (式(1)のR1は水素原子又は炭素数1〜6個の分岐を有してもよいアルキル基を表す。)
  2. エポキシ基を有する化合物及び/又はオキセタニル基を2個以上有するポリマー以外のオキセタニル基を有する化合物(但し、片末端にオキセタニル基を有するエチレン−ブチレン共重合体を除く)を更に含有する請求項1に記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のカチオン硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線照射及び/又は加熱してなる硬化物。
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