JPWO2005037876A1 - オキセタニル基を有するポリマー、及びこれを含むカチオン硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
3.水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有エチレン−ブチレン共重合体、水酸基含有水素添加ポリブタジエン、及び水酸基含有水素添加ポリイソプレンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものと式(1)とから得られるオキセタニル基を有するポリマーである。
4.上記に記載のオキセタニル基を有するポリマーと活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤とを含むカチオン硬化性樹脂組成物である。
5.上記に記載のオキセタニル基を有するポリマーと、エポキシ基を有する化合物及び/又はオキセタニル基を有するポリマー以外のオキセタニル基を有する化合物と、活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤とを含むカチオン硬化性樹脂組成物である。
6.上記に記載のカチオン硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線照射及び/又は加熱してなる硬化物である。
水素添加したものを合成原料に用いた本発明のオキセタニル基を有するポリマーを含有する組成物から得た樹脂は、安定性が良い。ポリブタジエン等のように二重結合が存在するものを合成原料に用いた本発明のオキセタニル基を有するポリマーは、組成物を作製するときの相溶性が良い。
本発明は、上記に記載のカチオン硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射及び/又は加熱してなる硬化物である。
本発明のオキセタニル基を有するマレイン化化合物の合成に使用するマレイン化ポリブタジエンやマレイン化ポリイソプレンとしては種々のものが利用できる。これはラジカル重合由来であってもアニオン重合由来であっても良い。これらの分子量は特に限定するものではないが、粘度平均分子量で500〜100,000であることが好ましく、さらに好ましくは1,000〜80,000、特に好ましくは5,000〜40,000である。この分子量が500未満であると、硬化物が低弾性率のカチオン硬化性樹脂を得ることが困難である場合がある。また分子量が100,000より大きい場合はその他のモノマーや重合開始剤との相溶性が悪くなるので好ましくない。マレイン化率すなわちポリマー1分子当りに導入される酸無水物の個数については、1分子当り平均1個以上導入されていることが好ましく、さらに好ましくは平均2〜10個、特に好ましくは平均2〜5個である。マレイン化率が平均1個以下の場合、非反応性のポリマーが増えることになり、硬化物からのブリードアウトやtanδの上昇を引き起こしやすくなり、また耐溶剤性にも劣るため好ましくない。逆にマレイン化率が平均10個を超える場合、本発明の特徴である低弾性率を実現するために式(1)で表されるものの付加率を下げる必要がでてくるが、その場合無用の酸無水物が残るので、耐水性や低吸水性の点から好ましくない。
なお、本発明のオキセタニル基を有するマレイン化化合物は、マレイン化ポリブタジエン又はマレイン化ポリイソプレンに、式(1)で表される化合物だけでなく、他のアルコールをも付加させて良い。ここでのアルコールとしては、1分子中に1個の水酸基を有するものが好適であり、アミン化合物等のカチオン重合を阻害する官能基を有していなければ種々のものが好適に利用できる。また、酸無水物にアルコールを付加させた後に生成するカルボン酸を、これらのアルコールによりエステル化しても良い。
本発明の組成物で使用する式(2)で表される化合物を合成するために使用する2個以上の末端が水酸基であるポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、又は水素添加ポリイソプレンは、2個以上の末端が水酸基であれば重合方法を特に限定するものではなく、アニオン重合であってもラジカル重合であっても良い。アニオン重合で得たものとしては、日本曹達製のGI−1000、GI−2000、GI−3000や、三菱化学製のポリテールHA等が挙げられる。アニオン重合によるものは分岐がないため水酸基を2個有する。ラジカル重合で得たものとしては、出光石油化学製のR−45HTや、これを三菱化学にて水素添加したポリテールH等が挙げられる。ラジカル重合によるものは分岐を有しているため、大部分のものは水酸基を2個有するものであるが、それ以上の水酸基を有するものも含まれる。なお、耐酸化性を重視する場合、これらを水素添加したものが好ましい。ここで、本発明では、式(2)で表される化合物を合成するために使用するものの重合方法を特に限定するものではないが、ラジカル重合由来の水素添加物は固体であり、溶媒への溶解性に劣るため、製造の容易さの点でアニオン重合由来の水素添加ポリブタジエンが特に好ましい。
本反応温度は、好ましくは60℃〜150℃であり、特に好ましくは90℃〜130℃である。
本反応系の雰囲気は、水によるトシレートやメシレートの分解や過酸化物の生成を抑制する点から、窒素雰囲気とすることが好ましい。
本発明の組成物で使用する式(4)で表される化合物を合成するための片末端が水酸基であるエチレン−ブチレン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、及び水素添加ポリイソプレンは、片末端に水酸基を有する物であれば重合方法を特に限定するものではない。例えば配位重合によるエチレン−ブチレン共重合体や、アニオンリビング重合で得た片末端水酸基のポリブタジエンやポリイソプレン、及びこれらを水素添加したものが挙げられる。また、式(4)で表される化合物の合成に両末端が水酸基であるポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、又は/及び水素添加ポリイソプレンを使用する場合も、重合方法を特に限定するものではなく、アニオンリビング重合であってもラジカル重合であっても良い。式(1)を合成するために用いる物の分子量は特に限定するものではないが、GPCによるポリスチレン換算平均分子量(Mw)で500〜50,000であることが好ましく、さらに好ましくは1,000〜10,000である。分子量が500未満であると、低弾性カチオン硬化性樹脂を得ることができないことがあるので好ましくなく、また分子量が50,000より大きい場合は、組成物に配合するその他のモノマーや重合開始剤との相溶性が悪くなるので好ましくない。
トシルクロライド又はメシルクロライドの仕込み量は、片末端が水酸基であるポリマーを使用する場合、式(2)の場合と同様、水酸基と等モル以上にすることが好ましく、さらに好ましくは1.2〜6倍モルである。しかし、両末端が水酸基を有するような水酸基が複数結合しているポリマーを使用する場合、水酸基より少ないモル数のトシルクロライド又はメシルクロライドを仕込んでトシル化又はメシル化した後、直接式(1)で表される化合物を投入する方法が、簡便であるため好ましい。
なお、両末端が水酸基を有するような水酸基が複数結合しているポリマーを使用する場合、当該ポリマー中には平均してオキセタニル基が2個未満含有していてもよく、好ましくは1個である。
本反応温度は、好ましくは60℃〜150℃であり、特に好ましくは90℃〜130℃である。
本反応系の雰囲気は、過酸化物の生成を抑制する点から、窒素雰囲気とすることが好ましい。
本反応後の精製は式(2)で表される化合物と同様に行うことができる。
本発明によるオキセタニル基を有するマレイン化化合物、式(2)で表される化合物及び式(4)で表される化合物は、カチオン重合性に優れるため、活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤を配合することで、カチオン硬化性樹脂組成物として使用することができる。当該カチオン硬化性樹脂組成物からの活性エネルギー線硬化性樹脂は、従来のものでは達成困難な物性を実現できる。なお、式(2)で表される化合物及び式(4)で表される化合物の貯蔵安定性や硬化物の耐酸化性の点で、式のR2は、エチレン−ブチレン共重合体、水素添加ポリブタジエン、又は水素添加ポリイソプレンであることが好ましい。
全体としての硬化性向上のために用いるエポキシ化合物としては種々のものが利用可能であり、単官能であっても多官能であっても良い。また、エポキシ化合物のエポキシ基としては、分子内の二重結合を酸化させたものであっても、グリシジルエーテルであっても良い。分子内の二重結合を酸化させたものとしては、脂環式エポキシだけでなく、オレフィンやポリブタジエン等の鎖状分子を酸化させたものであってもよい。
もう一つの例は、式(4)で表される化合物と、1分子中に2個以上のカチオン重合性基を有する化合物と、カチオン重合開始剤を含む組成物である。良好な硬化性を維持しながら低粘度化する場合には、この組成物に更に1分子中に1個のオキセタニル基を有する化合物を配合する事が好ましい。また、光カチオン重合開始剤を含有した光硬化性樹脂の場合、この組成物に更にエポキシ基を含有する化合物を含む方が硬化性の点で好ましい。
1分子中に1個のオキセタニル基を有する化合物は、1分子中に1個のエポキシ基を有する化合物に比べて、硬化性だけでなく安全性の点からも好ましい。即ち、分子量の小さいエポキシ化合物の多くは変異原性の疑いが持たれているが、オキセタン化合物では、例えば分子量の小さい3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンは変異原性が陰性であるからである。
tanδが小さい硬化物は、弾性率が低くとも形状変化後の復元性に優れている。
ここで、室温とは25℃付近を指し、実際には室内で使用する電子機器の内部に使用されることが多いため、概ね0℃〜40℃の範囲である。この温度範囲にて、硬化物を低弾性率でありながら形状変化後の復元性に優れたものとするためには、ガラス転移温度は−10℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは−25℃以下、特に好ましくは−40℃以下である。
更に本発明の組成物から得られる硬化物は、本発明の化合物の含有量や配合するものを調製することにより、25℃での動的粘弾性率(G’)が1×108Pa以下であるものを得ることができ、又は107Pa以下のものも得ることができ、又は106Pa以下ものも得ることができる。
この商品化されている化合物の例を挙げると、ジシクロペンタジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、o−、m−、p−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ポリブタジエンの内部エポキシ化物、ポリブタジエンの両末端がグリシジルエーテル化された化合物、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエンの二重結合が一部エポキシ化された化合物、エチレン−ブチレン共重合体とポリイソプレンのブロックコポリマーのポリイソプレンの一部がエポキシ化された化合物(KRATON社製L−207)、4−ビニルシクロヘキセンオキサイドの開環重合体のビニル基をエポキシ化した化合物、エポキシ化植物油等が例示できる。ここで、1分子当りのエポキシ基の数は特に限定するものではないが、50以下であることが好ましく、特に好ましくは20以下である。エポキシ基が50より多い場合は少量の配合で弾性率が向上するので好ましくない。
ここで、1分子当りのオキセタニル基の数は特に限定するものではないが、20以下であることが好ましく、さらに好ましくは5以下であり、特に好ましくは3以下である。
フェノール系酸化防止剤としては、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3’−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)]プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティーケミカルズ社製Irganox 1010)、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチル)フェノール、等が挙げられる。
特に、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物において活性エネルギー線硬化によるものでは、従来のものでは達成困難な物性を実現できるため好適である。その中でも、活性エネルギー線として紫外線又は可視光を使用したものは、比較的安価で小さな製造ラインによる生産が可能なため、特に好ましい。
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例や比較例によって限定されるものではない。また、組成物配合表における数値は質量部である。
○両末端にオキセタニル基を有する水素添加ポリブタジエン(HAOX)の合成
<両末端に水酸基を有する水素添加ポリブタジエンのトシル化>
500MLセパラブルフラスコに、両末端に水酸基を有するアニオン重合由来の水素添加ポリブタジエン(三菱化学製ポリテールHA)86.8g(水酸基として80mmol)、テトラヒドロフラン(THF)142g、トリエチルアミン24.2g(240mmol)を仕込み、4つ口のフタに、撹拌棒、温度計、及び冷却管を取り付け、窒素ガスを通気させながらオイルバス中で撹拌溶解した。溶解後、これにトシルクロライド30.5g(160mmol)を加え、62℃で21時間撹拌し反応させた。反応終了後、この反応粗生成物を、室温で撹拌したメタノール950gにゆっくりと投入し、更に30分間撹拌させた後、1時間放置した。放置後、デカンテーションによりメタノール層を除いた後、沈殿物にn−ヘキサン190gを加えて溶解させた。これを分液漏斗に移し、二層に分離したメタノール層を除去した後、メタノール25gを加えて激しく振り混ぜ、静置した。そして、メタノール層を除去した。この操作を2回繰り返したが、最後の洗浄時は、n−ヘキサン48gの追加を行った。生成物を含むn−ヘキサン層をセパラブルフラスコに移し、減圧しながらオイルバス中65℃以下で溶媒を留去して淡黄色透明の生成物80gを得た。1H−NMRスペクトルより、ポリマーの水酸基がトシル化されたことを確認した。
500MLセパラブルフラスコに、トシル化した水素添加ポリブタジエン62.0g、ジn−ブチルエーテル62.0g、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXA、東亞合成製)116g、95%水酸化カリウム5.9gを仕込み、4つ口のフタに、撹拌棒、温度計、及び冷却管を取り付け、窒素ガスを通気させながらオイルバス中120℃で4.5時間撹拌して反応させた。反応終了後、沈澱が生成していたためデカンテーションにより液体のみを分液漏斗に移し、この沈澱をn−ヘキサン100gで洗浄してデカンテーションによりこの洗浄液も分液漏斗に加えた。この液体は二層に分離していたため、OXAを含有している下層を除去した。次いで、メタノール123gを加えて激しく振り混ぜた後、n−ヘキサン24gを加えて軽く混ぜて静置させ、二層に分離させ、下層を除去した。この後メタノール62gによる洗浄を3回繰り返したが、このとき、二層分離を迅速にするためにn−ヘキサンを30〜90gの範囲で適宜追加した。生成物を含むn−ヘキサン層を500MLセパラブルフラスコに移し、窒素を通気させながら100〜120℃のオイルバス中で溶媒の大部分を留去した後、残存する少量の溶媒を除去するため150℃のオイルバス中で5時間減圧し、淡黄色透明の生成物50gを得た(HAOX)。原料であるポリテールHA及び生成物の1H−NMRスペクトルをそれぞれ図1及び図2に示した。NMRスペクトルからポリマー末端のトシル基がOXAにより置換されたことを確認した。また、生成物のGPCを測定して分子量分布を確認したところ、ポリスチレン換算のMwが3876、Mw/Mnが1.31であった。一方、原料ポリマーではMwが3656、Mw/Mnが1.37であった。
○L1203OXの合成
<片末端に水酸基を有するエチレン−ブチレン共重合体のトシル化>
2Lセパラブルフラスコに、片末端に水酸基を有するエチレン−ブチレン共重合体(KRATON Polymers社製L−1203)240g(水酸基として約60mmol)、テトラヒドロフラン(THF)328g、トリエチルアミン36.4gを仕込み、4つ口のフタに、撹拌棒、温度計、及び冷却管を取り付け、窒素ガスを通気させながらオイルバス中で撹拌溶解した。溶解後、これにトシルクロライド51.5g(270mmol)を加え、62℃で27時間撹拌し反応させた。反応終了後、この反応粗生成物を、室温で撹拌しているイソプロピルアルコール(IPA)2.5kgにゆっくりと投入し、その後、30分間撹拌させた後1時間放置した。そしてデカンテーションによりIPA層を除いた後、n−ヘキサン700gを加えて沈澱を溶解させた。これを2Lの分液漏斗に移し、メタノール120gを加えて撹拌した後、さらにn−ヘキサン300gを加えて軽く混ぜて二層分離させた。下層のメタノール層を除去した後、更にメタノール120gを加えて振り混ぜ15分間放置し、下層のメタノール層を除去した。以上のようなメタノールによる洗浄をさらに2回繰り返した後、生成物を含むn−ヘキサン層をセパラブルフラスコに移し、減圧しながらオイルバス中65℃以下で溶媒を留去して淡黄色透明の生成物222gを得た。生成物の1H−NMRスペクトルより、ポリマーの水酸基がトシル化されたことを確認した。
2Lセパラブルフラスコに、トシル化したエチレン−ブチレン共重合体204g、ジn−ブチルエーテル204g、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXA、東亞合成製)255g、95%水酸化カリウム6.5gを仕込み、4つ口のフタに、撹拌棒、温度計、及び冷却管を取り付け、窒素ガスを通気させながらオイルバス中120℃で6時間撹拌して反応させた。反応終了後、沈澱が生成していたためデカンテーションにより液体のみを2L分液漏斗に移し、この沈澱をn−ヘキサン200gで洗浄し、デカンテーションにより洗浄液を、先の分液漏斗に加えた。分液漏斗中の溶液は二層に分離していたことから、OXAを含有している下層を除去した。次いで、メタノール200g、n−ヘキサン500gを加えて撹拌した後、更にn−ヘキサン100gを加えて軽く混ぜて二層分離させた。この下層を除去し、更にメタノール200gによる洗浄を3回繰り返した。このとき、二層分離を迅速かつ明瞭にするためにn−ヘキサン100gを適宜追加した。生成物を含むn−ヘキサン層を2Lセパラブルフラスコに移し、窒素を通気させながら100〜110℃のオイルバス中で溶媒の大部分を留去した後、残存する少量の溶媒を除去するため150℃のオイルバス中で5時間減圧し、淡黄色透明の生成物183gを得た。L−1203及び生成物の1H−NMRスペクトルをそれぞれ図3及び図4に示した。このことからポリマー末端のトシル基がOXAにより置換されたことを確認した。また、生成物のGPCを測定して分子量分布を確認したところ、ポリスチレン換算のMwが5630、Mw/Mnが1.04であった。一方、原料ポリマーではMwが5510で、Mw/Mnが1.03あった。
○オキセタニル基を有するマレイン化化合物の合成(LIOX−1)
500MLのセパラブルフラスコに、マレイン化ポリイソプレンであるクラレ製LIR−403を100g(粘度平均分子量25,000、1分子あたりの官能基数3、酸無水物として約8mmol)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXA、東亞合成(株)製)を4.65g(40mmol)、キシレンを100g仕込んでフタをし、撹拌機、冷却管、窒素導入管を取り付け、オイルバスに浸けて撹拌した。窒素流量200ml/分で30分窒素置換した後、窒素流量を50ml/分とし、バス温を150℃としてキシレンを還流させながら16時間反応させた。反応率は、IRスペクトルにおける酸無水物のピーク(1790cm-1)の吸光度とC−H伸縮振動である2930cm-1のピークとから求めた。16時間後の反応率は81%であった。
この溶液に酸化防止剤であるIrganox1010(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)を0.1g加えた後、100℃にてキシレンを減圧留去した。収率は100%であり、残留したOXAは0.3%(ガスクロマトグラフィーによる)であった。生成物であるポリマーは淡黄色透明であり、50℃での粘度は153Pa・sであった。
○オキセタニル基を有するマレイン化化合物の合成(LIOX−2)
500MLのセパラブルフラスコに、マレイン化ポリイソプレンであるクラレ製LIR−403を90g(酸無水物として約7.2mmol)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXA、東亞合成(株)製)を4.19g(36mmol)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(EHOX、東亞合成(株)製)を60g仕込んでフタをし、撹拌機、冷却管、窒素導入管を取り付け、オイルバスに浸けて撹拌した。窒素流量200ml/分で30分窒素置換した後、窒素流量を50ml/分とし、液温165℃で4時間反応させた後、140℃で4時間反応させた。反応率を実施例1と同様に求めたところ84%であった。ここでの生成物は、オキセタニル基を有するマレイン化化合物(58%)、EHOX(40%)、OXA(2%)を含む組成物であり、外観は淡黄色透明、25℃での粘度は10.9Pa・sであった。
○ウレタンアクリレート(PTGUA)の合成
500MLのセパラブルフラスコに、イソホロンジイソシアネート(IPDI)88.8g(0.40mol)、ジブチルチンジラウレート0.34g、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)0.102gを仕込み、空気を吹き込みながら、分子量約1000のポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業製PTG1000SN)203.8g(0.20mol)を滴下して反応させ、さらに60℃で1時間反応させた。次いで、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)46.4g(0.40mol)を滴下し、80℃で1時間反応させてウレタンアクリレートを得た。
HAOX:実施例1で得た生成物
L1203OX:実施例2で得た生成物
LIOX−1:実施例3で得た生成物
LIOX−2:実施例4で得た生成物
UVR6216:1,2−エポキシヘキサデカン(ダウ・ケミカル日本製UVR−6216)
EHOX:3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成製アロンオキセタンOXT−212)
L207:KRATON Polymers社製L−207(エチレン−ブチレン共重合体とエポキシ化ポリイソプレンのブロック共重合体、1H−NMRの水酸基基準による分子量は約6000、エポキシ当量は約670g/mol、Tg−53℃)
POX:3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成製アロンオキセタンOXT−211)
CHOX:3−エチル−3−(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン(東亞合成製CHOX)
L1203:KRATON Polymers社製L−1203(片末端に水酸基を有するエチレン−ブチレン共重合体、1H−NMRの水酸基基準による分子量は約4000、Tg−63℃)
NDMOX:ノルボルナンジメタノールジオキセタン(東亞合成製、アロンオキセタンNDMOX(開発品))
PGE:フェニルグリシジルエーテル(ナガセケムテクス製デナコールEX−141)
PTGUA:合成例1で合成したウレタンアクリレート
BADMA:ビスフェノールAにエチレンオキサイドを4個付加させたアルコールのジメタクリレート(共栄社化学製ライトエステルBP−4EM)
M120:2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート(東亞合成製アロニックスM−120)
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
POA:フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学製ライトアクリレートPOA)
WPI016:ビス(アルキル(C=10〜14)フェニルヨードニウム)ヘキサフルオロアンチモネート(和光純薬製光カチオン重合開始剤WPI−016)
#2074:トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ローディア社製PHOTOINITIATOR2074)
Dc1173:チバ・スペシャルティーケミカルズ社製光ラジカル重合開始剤Darocur1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、本発明では光カチオン重合の増感剤として使用)
Irg184:チバ・スペシャルティーケミカルズ社製光ラジカル重合開始剤Irgacure184(1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、本発明では光カチオン重合の増感剤として使用)
WPI003:ビス(アルキル(C=10〜14)フェニルヨードニウム)ヘキサフルオロホスフェート(和光純薬製光カチオン重合開始剤WPI−003)
○式(2)で表される化合物を含有する組成物の配合とその物性評価
表1及び表2に示す成分を常法に従って混合し、カチオン硬化性組成物を調製した後、物性を評価した。
東機産業製E型粘度計にて25℃における各組成物の粘度(Pa・s)を測定し、これらの結果を表3に記載した。
○硬化物の動的粘弾性測定:1mm厚硬化物の作成と動的粘弾性測定
ポリテトラフルオロエチレン製の板に厚さ1mmの枠を作成し、表1に記載の実施例及び比較例の組成物をそれぞれの枠内に流し込んだ後、60W/cmの高圧水銀ランプにより紫外線を照射した。365nmにおける強度150mW/cm2で2分間照射し、裏面まで硬化したことを確認した後、裏返して同一条件で照射した。得られた硬化物の動的粘弾性を、ティーエーインスツルメント社製RDS−IIにて、振動数1Hzで測定し、貯蔵弾性率(G’)及びtanδを評価した。表3には、25℃での物性値を記載した。
また、実施例8及び9の硬化物については、動的粘弾性スペクトル(温度依存性)を図5に示した。
○硬化過程及び硬化物の動的粘弾性測定(測定温度:25℃)
Reologia社(スウェーデン)製光硬化粘弾性測定装置にて、光照射による硬化過程及び硬化後の粘弾性を測定した。すなわち、石英プレート上に、表1記載の比較例1の組成物、及び表2記載の比較例2及び3の組成物を載せて上から直径10mmのローターで挟み(ギャップ0.2mm)、温度25℃にて、振動数1Hzでずり歪を与えながら、石英プレート下部より水銀キセノンランプ(浜松ホトニクス製L8222、50mW/cm2(365nmにおける強度)に調整)を照射し、粘弾性を測定した。硬化物の弾性率G’(Pa)及びtanδを表3に示す。比較例1及び2については、樹脂が光硬化して最終的に到達した値を示す。比較例3については、G’が105Pa付近となるよう、光照射を硬化の途中で中止した場合の値を示す。なお、比較例1については、モノマーが消費されていることを、1H−NMRスペクトルにより確認した。
○硬化物の脆さの評価
実施例6〜9については1mm厚の硬化物で、比較例1〜3については光硬化粘弾性測定装置での硬化物で、脆さを次のように評価した。これらの結果を表3に記載した。
○:大きく変形しても破れない。
△:大きく変形すると破れる。
×:僅かな変形で粉々に破れる。
−:固体と液体の中間的性状のため、脆さという言葉が不適当。
○塗膜での硬化性
実施例6〜9、及び比較例1の組成物について、PETフィルム上にバーコーターにて膜厚20ミクロンに塗工し、これを80W/cmの高圧水銀ランプ(1灯)、ランプ高さ10cmにて、コンベア速度10m/分又は30m/分にて、塗膜が固体に変化するまでのパス回数により硬化性を評価した。この結果を表3に記載した(固化するまでの通過回数を記載。以下、硬化性についての結果記載は同様である。)。なお、このときの雰囲気は、温度26℃、相対湿度66%であった。
○式(4)で表される化合物を含有する組成物の配合とその物性評価
表4に示す成分を常法に従って混合し、カチオン硬化性組成物を調製した後、各種物性を評価した。
表4に記載の実施例12、13及び比較例6の組成物をPETフィルム上にバーコーターにて膜厚20ミクロンに塗工し、これを80W/cmの高圧水銀ランプ(1灯)、ランプ高さ10cmにて、コンベア速度50m/分又は80m/分にて、塗膜が固体に変化するまでのパス回数により硬化性を評価した。なお、このときの雰囲気は、温度26℃、相対湿度66%であった。この結果を表6に示す。
ポリテトラフルオロエチレン製の板に厚さ1mmの枠を作成し、表4記載の実施例12、及び実施例13の組成物を流し込んだ後、高圧水銀ランプにより紫外線を照射した。365nmにおける強度150mW/cm2で2分間照射し、裏面まで硬化したことを確認した後、裏返して同一条件で照射した。得られた硬化物の動的粘弾性を、ティーエーインスツルメント社製RDS−IIにて、振動数1Hzで測定し、貯蔵弾性率(G’)及びtanδを評価した。この動的粘弾性スペクトルの温度依存性を図6に示す。
○オキセタニル基を有するマレイン化化合物を含有する組成物の配合とその物性評価
表7に記載の組成物について、粘度及び硬化物の動的粘弾性を測定した。これらの評価結果を表7に示す。また表8に記載の組成物について硬化性を評価し、この結果を表8に記載した。
物性の評価方法を以下に示す。
表8に記載の組成物(実施例19〜21)をPETフィルム上にバーコーターにて膜厚20ミクロンに塗工し、160W/cmの高圧水銀ランプ(1灯)、ランプ高さ10cm、コンベア速度10m/分にて、塗膜が固体に変化した時のパス回数により硬化性を評価した。この結果を表8に記載した。なお、このときの雰囲気は、温度26℃、相対湿度66%であった。
ポリテトラフルオロエチレン製の板に厚さ1mmの枠を作成し、実施例14及び実施例16の組成物をそれぞれの枠内に流し込んだ後、60W/cmの高圧水銀ランプにより紫外線を照射した。365nmにおける強度150mW/cm2で2分間照射し、裏面まで硬化したことを確認した後、裏返して同一条件で照射した。得られた硬化物の動的粘弾性スペクトル(温度依存性)を、Reologia社製VAR−100にて振動数1Hzで測定した。これらの粘弾性スペクトルを図7に示す。
なお、実施例14及び実施例16の硬化物の手触りは、非常に軟らかいが形状変化後の復元性に優れたものであり、また大きく変形しても破れず、脆さのないものであった。
更に、本発明のポリマーの製法は、容易に入手可能な材料を使用し、厳密な脱水のための設備や操作を必要としないため、特定の電子材料や光学材料等のような比較的少量の生産に適した製造法である。
図1〜4の縦軸:1H−NMRスペクトルにおける任意の値。
図5〜7の横軸:温度 ℃
図5〜7の右縦軸:tanδの値(対数目盛)。
図5〜7の左縦軸:貯蔵弾性率(G’)の値(Pa、対数目盛)。
図5の太い実線:実施例8の組成物を紫外線で硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’)を示す曲線。
図5の細い実線:実施例9の組成物を紫外線で硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’)を示す曲線。
図5の太い破線:実施例8の組成物を紫外線で硬化させた硬化物のtanδを示す曲線。
図5の細い破線:実施例9の組成物を紫外線で硬化させた硬化物のtanδを示す曲線。
図6の太い実線:実施例12の組成物を紫外線で硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’)を示す曲線。
図6の細い実線:実施例13の組成物を紫外線で硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’)を示す曲線。
図6の太い破線:実施例12の組成物を紫外線で硬化させた硬化物のtanδを示す曲線。
図6の細い破線:実施例13の組成物を紫外線で硬化させた硬化物のtanδを示す曲線。
図7の細い実線:実施例14の組成物を紫外線で硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’)を示す曲線。
図7の太い実線:実施例16の組成物を紫外線で硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’)を示す曲線。
図7の細い破線:実施例14の組成物を紫外線で硬化させた硬化物のtanδを示す曲線。
図7の太い破線:実施例16の組成物を紫外線で硬化させた硬化物のtanδを示す曲線。
Claims (6)
- マレイン化ポリブタジエン及び/又はマレイン化ポリイソプレンと上記式(1)とから得られるオキセタニル基を有するポリマー。
- 水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有エチレン−ブチレン共重合体、水酸基含有水素添加ポリブタジエン、及び水酸基含有水素添加ポリイソプレンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものと上記式(1)とから得られるオキセタニル基を有するポリマー。
- 請求項1〜3にそれぞれ記載のオキセタニル基を有するポリマーと活性エネルギー線によって活性化するカチオン重合開始剤及び/又は熱によって活性化するカチオン重合開始剤とを含むカチオン硬化性樹脂組成物。
- エポキシ基を有する化合物及び/又はオキセタニル基を有するポリマー以外のオキセタニル基を有する化合物を更に含有する請求項4記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
- 請求項4又は5にそれぞれ記載のカチオン硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線照射及び/又は加熱してなる硬化物。
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