JP5151254B2 - 二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物に関する。
2液型のポリウレタン系シーリング材においては、軽量化の観点から樹脂系中空体を配合することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、樹脂系中空体の配合量を増加させると耐久性が低下してしまうため、樹脂中空体の配合量は制限され、シーリング材組成物の比重を十分小さくすることができないという問題があった。
特許第2575776号明細書
また、本発明者は、使用する樹脂系中空体の粒径等により、シーリング材の弾性復元率が低くなる場合や、モジュラスが上昇し、伸び率が低下する場合があることも明らかした。
そこで、本発明は、耐久性に優れ、かつ、比重が小さく軽量化も図ることができ、弾性復元率、モジュラスおよび伸び率のいずれにも優れる二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ウレタンプレポリマーを含有する主剤と、特定のポリプロピレンエーテル水酸化物を含有する硬化剤とを有し、更に特定の樹脂系中空体を含むシーリング材組成物が、耐久性に優れ、かつ、比重が小さく軽量化も図ることができ、弾性復元率、モジュラスおよび伸び率のいずれにも優れる二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物となりうることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記(1)〜(16)を提供する。
(1)ウレタンプレポリマーを含有する主剤と、ポリプロピレンエーテル水酸化物を含有する硬化剤とを有する二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物であって、
樹脂系中空体を上記硬化剤の0.5質量%以上の量で含有し、
上記樹脂系中空体が、粒子径70μm以下の樹脂系中空体を上記樹脂系中空体全体積中の20%超で含み、かつ粒子径110μm以下の樹脂系中空体を上記樹脂系中空体全体積中の80%超で含み、
上記ポリプロピレンエーテル水酸化物が、数平均分子量が4000以上のポリプロピレンエーテルジオールと数平均分子量が2000以上のポリプロピレンエーテルモノオールとを合計して50質量%以上含有し、
上記ポリプロピレンエーテルジオールと上記ポリプロピレンエーテルモノオールとの質量比(モノオール/ジオール)が、0.1以上である二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(2)上記ポリプロピレンエーテルジオールと上記ポリプロピレンエーテルモノオールとの質量比(モノオール/ジオール)が、0.2以上である上記(1)に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(3)上記ポリプロピレンエーテルジオールと上記ポリプロピレンエーテルモノオールとの質量比(モノオール/ジオール)が、0.4以上である上記(1)に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(4)上記ポリプロピレンエーテルジオールおよび/または上記ポリプロピレンエーテルモノオールの総不飽和度が、0.08meq/g以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(5)上記ポリプロピレンエーテルジオールおよび/または上記ポリプロピレンエーテルモノオールが、セシウム化合物、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポリフィリン、ホスファゼニウム化合物または複合金属シアン化物錯体触媒を用いて合成される上記(1)〜(4)のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(6)上記樹脂系中空体が、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデンおよび熱可塑性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(7)上記樹脂系中空体が、無機フィラーでコーティングされている上記(1)〜(6)のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(8)上記無機フィラーが、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレーおよびカーボンブラックからなる群から選択される少なくとも1種である上記(7)に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(9)上記硬化剤が、更に、チクソ性付与剤を含有する上記(1)〜(8)のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(10)上記硬化剤が、上記チクソ性付与剤を15〜60質量%含有する上記(9)に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(11)上記チクソ性付与剤が、合成炭酸カルシウムである上記(9)または(10)に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(12)上記チクソ性付与剤が、コロイダル炭酸カルシウムである上記(11)に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(13)上記硬化剤が、更に、重質炭酸カルシウムを含有する上記(1)〜(12)のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(14)上記硬化剤が、上記チクソ性付与剤および上記重質炭酸カルシウムを30〜75質量%含有する上記(13)に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(15)比重が1.30g/mL以下となる上記(1)〜(14)のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
(16)BS型粘度計の7号ロータを用い、23℃、50%相対湿度における、回転速度1rpmおよび10rpmで計測される粘度(Pa・s)の比より算出されるチクソインデックス〔(1rpmでの粘度)/(10rpmでの粘度)〕が、5.5以上である上記(1)〜(15)のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
以下に示すように、本発明によれば、耐久性に優れ、かつ、比重が小さく軽量化も図ることができ、弾性復元率、モジュラスおよび伸び率のいずれにも優れる二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物を提供することができる。
このような効果を有する本発明の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物(以下、「本発明のシーリング材組成物」ともいう。)は、施工時のハンドリング性(以下、「作業性」ともいう。)が向上するため軽疲労にも寄与することができ、施工した目地部からのずり落ち(スリップ)のおそれも軽減できるため、非常に有用である。
特に、本発明のシーリング材組成物は、弾性復元率にも優れるため、例えば、カーテンウォール工法のALC板間のように動きのある目地に施工された場合でも、シーリング材自体が破断したり、被着体を破損したりすることがなく、良好な止水性能を保持することができる。
また、本発明のシーリング材組成物からなる硬化物は、低モジュラスで、かつ、高い伸び率を有するため、シーリング材として非常に有用である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のシーリング材組成物は、ウレタンプレポリマーを含有する主剤と、ポリプロピレンエーテル水酸化物を含有する硬化剤とを有する二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物であって、
樹脂系中空体を上記硬化剤の0.5質量%以上の量で含有し、
上記樹脂系中空体が、粒子径70μm以下の樹脂系中空体を上記樹脂系中空体全体積中の20%超で含み、かつ粒子径110μm以下の樹脂系中空体を上記樹脂系中空体全体積中の80%超で含み、
上記ポリプロピレンエーテル水酸化物が、数平均分子量が4000以上のポリプロピレンエーテルジオールと数平均分子量が2000以上のポリプロピレンエーテルモノオールとを合計して50質量%以上含有し、
上記ポリプロピレンエーテルジオールと上記ポリプロピレンエーテルモノオールとの質量比(モノオール/ジオール)が、0.1以上である二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
次に、本発明のシーリング材組成物に含有するウレタンプレポリマー、ポリプロピレンエーテル水酸化物および樹脂系中空体等について詳述する。
<ウレタンプレポリマー>
主剤に含有されるウレタンプレポリマーは、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、ヒドロキシ基(OH基)に対してイソシアネート基(NCO基)が過剰となるように反応させることにより得られる反応生成物等を用いることができる。
また、ウレタンプレポリマーは、0.5〜5質量%のNCO基を分子末端に含有することができる。
(ポリイソシアネート化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられる。
このようなポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、トリレンジイソシアネート(TDI)であるのが、得られるウレタンプレポリマーが低粘度となり、ウレタンプレポリマーを含む主剤の取り扱いが容易となる理由から好ましい。
(ポリオール化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、これらの混合ポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールおよびペンタエリスリトールからなる群から選択される少なくとも1種に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびポリオキシテトラメチレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。具体的には、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリプロピレンエーテルトリオールが好適に例示される。
ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパンおよびその他の低分子ポリオールからなる群から選択される少なくとも1種と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、その他の脂肪族カルボン酸およびオリゴマー酸からなる群から選択される少なくとも1種との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体;等が挙げられる。
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールのような低分子量のポリオール;等が挙げられる。
このようなポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリプロピレンエーテルトリオールであるのが、硬化剤の粘度が適当となり、また、この硬化剤を用いて得られる本願発明のシーリング材組成物からなる硬化物の伸びと強度が適当となり、水浸漬後の膨潤による物性の低下が少ないという理由から好ましい。
本発明においては、ウレタンプレポリマーを製造する際のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との組み合わせとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)からなる群から選択される少なくとも1種と、ポリプロピレンエーテルジオールおよび/またはポリプロピレンエーテルトリオールとの組み合わせが好適に例示される。
また、本発明においては、ウレタンプレポリマーを製造する際のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との量は、NCO基/OH基(当量比)が、1.2〜2.5となるのが好ましく、1.5〜2.2となるのがより好ましい。当量比がこのような範囲である場合、得られるウレタンプレポリマーの粘度が適当となり、ウレタンプレポリマー中の未反応のポリイソシアネート化合物の残存量を低減することができる。
本発明においては、ウレタンプレポリマーの製造方法は特に限定されず、例えば、上述の当量比のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、50〜130℃で加熱かくはんすることによって製造することができる。また、必要に応じて、例えば、有機錫化合物、有機ビスマス、アミンのようなウレタン化触媒を用いることができる。
このようなウレタンプレポリマーは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
<ポリプロピレンエーテル水酸化物>
硬化剤に含有されるポリプロピレンエーテル水酸化物は、ヒドロキシル基を有するポリプロピレンエーテルをいい、ヒドロキシル基を2個以上有するポリプロピレンエーテルポリオールおよびヒドロキシル基を1個有するポリプロピレンエーテルモノオールを包含するものである。
本発明においては、上記ポリプロピレンエーテル水酸化物は、数平均分子量が4000以上のポリプロピレンエーテルジオールと数平均分子量が2000以上のポリプロピレンエーテルモノオールとを合計して50質量%以上含有するものであり、60質量%以上含有するものであるのがより好ましい。
また、本発明においては、上記ポリプロピレンエーテルジオールと上記ポリプロピレンエーテルモノオールとの質量比(モノオール/ジオール)が0.1以上であり、0.2以上であるのが好ましく、0.4以上であるのがより好ましい。
更に、本発明においては、上記ポリプロピレンエーテルジオールと上記ポリプロピレンエーテルモノオールとの質量比(モノオール/ジオール)が10以下であるのが好ましく、4以下であるのがより好ましく、2以下であるのが更に好ましい。
(ポリプロピレンエーテルジオール)
上記混合物を形成するポリプロピレンエーテルジオールは、数平均分子量が4000以上であり、ヒドロキシ基を2個有し、主鎖としてポリプロピレンエーテルの骨格を有するものであれば特に限定されない。
数平均分子量が4000以上であると、本発明のシーリング材組成物からなる硬化物のモジュラスおよび伸び率が良好となる。
このようなポリプロピレンエーテルジオールとしては、具体的には、例えば、プロピレンジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびポリオキシテトラメチレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種を付加させて得られうるジオール;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリプロピレンエーテルジオールの数平均分子量は、4000以上であるが、反応性、物性の観点から、5000以上であるのが好ましい。また、粘度と反応性との観点から、10000以下であるのが好ましく、8000以下であるのがより好ましい。
ポリプロピレンエーテルジオールの総不飽和度は、0.08meq/g以下であるのが好ましい。
ここで、総不飽和度とは、ポリプロピレンエーテルジオール中に含まれる不飽和基(アリル基)の総量(ミリ当量)を示すが、これは合成に用いるプロピレンオキシド等のグリシジル基が異性化して生じたアリル基に由来している。また、この総不飽和度は、JIS K1557−3:2007に従って測定した値である。
ポリプロピレンエーテルジオールの製造方法は特に限定されないが、セシウム化合物、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポリフィリン、ホスファゼニウム化合物または複合金属シアン化物錯体触媒を用いて製造されるのが、高分子量で不飽和度が低いジオールが得られ、低分子量の不純物の含有量が少なく、塗膜汚染性が低い理由から好ましい。
本発明においては、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて製造するのが好ましく、複合金属シアン化物錯体触媒としては、具体的には、例えば、Zn3[Fe(CN)62、Zn3[Co(CN)62、Fe[Fe(CN)6]、Fe[Co(CN)6]等が挙げられる。
(ポリプロピレンエーテルモノオール)
上記混合物を形成するポリプロピレンエーテルモノオールは、数平均分子量が2000以上であり、ヒドロキシ基を1個有し、主鎖としてポリプロピレンエーテルの骨格を有するものであれば特に限定されない。
数平均分子量が2000以上であると、本発明のシーリング材組成物からなる硬化物のモジュラスおよび伸び率を良好に担保しつつ、ブリードアウトによる塗膜汚染の影響もない。
このようなポリプロピレンエーテルモノオールとしては、具体的には、例えば、潤滑剤や可塑剤の用途で市販されているものを用いることができ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、エチレンオキシドの付加のないものが低温下での水の吸収による膨潤が起こらない理由から好ましい。
ポリプロピレンエーテルモノオールの数平均分子量は、2000以上であるが、反応性、物性の観点から、2500以上であるのが好ましい。また、粘度と反応性との観点から、8000以下であるのが好ましく、5000以下であるのがより好ましい。
ポリプロピレンエーテルモノオールの総不飽和度は、ポリプロピレンエーテルジオールと同様、0.08meq/g以下であるのが好ましい。
また、ポリプロピレンエーテルモノオールの製造方法は特に限定されないが、ポリプロピレンエーテルジオールと同様、セシウム化合物、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポリフィリン、ホスファゼニウム化合物または複合金属シアン化物錯体触媒を用いて製造されるのが、高分子量で不飽和度が低いモノオールが得られ、低分子量の不純物の含有量が少なく、塗膜汚染性が低い理由から好ましい。
ポリプロピレンエーテル水酸化物は、上述した数平均分子量が4000以上のポリプロピレンエーテルジオールおよび上述した数平均分子量が2000以上のポリプロピレンエーテルモノオールとを、特定の質量比で合計して50質量%以上含有するものであれば、他のポリプロピレンエーテルポリオールやポリプロピレンエーテルモノオールを含有するものであってもよい。
本発明においては、硬化性を向上させ、残留タック(硬化物の表面のべたつき感)を低減させる観点から、数平均分子量が4000以上のポリプロピレンエーテルトリオールを他のポリプロピレンエーテルポリオールとして10〜20質量%程度含有しているのが好ましい。
このようなポリプロピレンエーテル水酸化物を硬化剤に含有させることにより、本発明のシーリング材組成物からなる硬化物の弾性復元率、モジュラスおよび伸び率のいずれもが良好となる。
これは、詳細には明らかではないが、ポリマー鎖におけるソフトセグメントが多くなり、共有結合による分子内力が分子間力に比べて圧倒的に大きくなるために弾性復元率が良好となり、上述した数平均分子量が4000以上のポリプロピレンエーテルジオールおよび上述した数平均分子量が2000以上のポリプロピレンエーテルモノオールとを特定の質量比で特定量含有することにより、モジュラスおよび伸び率が良好になると考えられる。
<樹脂系中空体>
本発明のシーリング材組成物に含有される樹脂系中空体は、中空球体の外殻が樹脂によって構成されているものである。例えば、樹脂系中空体の内部に液体を内包させてこれを加熱し、外殻となる樹脂系中空体を膨張させ、かつ、内部の液体を気化させて得られる熱膨張性の樹脂系中空体が挙げられる。
樹脂系中空体の外殻を構成する材料としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
これらのうち、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデンおよび熱可塑性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
熱可塑性樹脂系中空体の外殻を構成する熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;ベンジルアクリレート、ノルボルナンアクリレートのようなアクリレート化合物;メチルメタクリレート、ノルボルナンメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなメタクリレート化合物;スチレン系モノマー;酢酸ビニル;ブタジエン;ビニルピリジン;クロロプレンのホモポリマー;これらのコポリマー;等が挙げられる。
これらのうち、耐候性、耐熱性の観点から、アクリロニトリル共重合体(例えば、アクリロニトリルとメタクリロニトリルとの共重合体、アクリロニトリルとアクリロニトリルと共重合可能なブタジエン、スチレンのようなビニル系モノマーとの共重合体等)、塩化ビニリデン重合体が好ましい。
一方、樹脂系中空体に内包される液体としては、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ブタン、イソブタン、ヘキサン、石油エーテルのような炭化水素類;塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロルエチレンのような塩素化炭化水素が挙げられる。
樹脂系中空体の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。
本発明のシーリング材組成物においては、樹脂系中空体の含有量は、硬化剤の0.5質量%以上の量である。なお、ポリプロピレンエーテル水酸化物とともに樹脂系中空体を硬化剤に含有する場合は、樹脂系中空体の含有量の算出において、硬化剤の合計質量には樹脂系中空体の質量を含むものとする。
ここで、樹脂系中空体の含有量が硬化剤の0.5質量%以上の量であると、得られる本発明のシーリング材組成物の耐久性に優れ、かつ、比重が小さく軽量化も図ることができる。
また、得られる本発明のシーリング材組成物の耐久性および軽量化がより向上するという観点から、樹脂系中空体の含有量は、硬化剤の0.5〜10質量%の量であるのが好ましく、0.5〜6質量%の量であるのがより好ましい。
本発明のシーリング材組成物においては、樹脂系中空体は、主剤および硬化剤のうちのいずれか一方または両方に含有することができるが、得られる本発明のシーリング材組成物の主剤と硬化剤とを混合する際の作業性が向上する理由から、硬化剤のみに含まれるのがより好ましい。
本発明において、樹脂系中空体は、粒子径70μm以下の樹脂系中空体を樹脂系中空体全体積中の20%超で含み、かつ粒子径110μm以下の樹脂系中空体を樹脂系中空体全体積中の80%超で含む。
ここで、20%超で含むとは、20%を超える数値で含むことを意味し、80%超で含むことについても同様である(以下同様。)。
樹脂系中空体が、粒子径70μm以下の樹脂系中空体を樹脂系中空体全体積中の20%超で含むことにより、本発明のシーリング材組成物からなる硬化物の伸びが適当となり、その結果、耐久性も良好となる。
また、樹脂系中空体が、粒子径110μm以下の樹脂系中空体を樹脂系中空体全体積中の80%超で含むことにより、本発明のシーリング材組成物の比重が小さく軽量化を図ることができ、その結果、ヘラ仕上げ時の仕上がり感が良好で、その後に施される塗装膜の厚さが薄い場合であっても塗装表面に樹脂系中空体に由来する凹凸が認められないため、外観が良好となる。
樹脂系中空体の最大粒子径は、汎用的に使用される樹脂系中空体が有する範囲であれば特に限定されず、600μm以下であるのが好ましく、500μm以下であるのがより好ましい。
ここで、樹脂系中空体の粒子径は、レーザー回折式に基づき、測定装置としてマイクロトラック粒度分布計(日機装株式会社製)を使用して測定したものである。
本発明においては、樹脂系中空体は、硬化剤製造時のハンドリングに優れるという観点から、無機フィラーでコーティングされているものであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
樹脂系中空体をコーティングするために使用される無機フィラーは特に限定されず、その具体例としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレー、カーボンブラック等が挙げられる。
これらのうち、樹脂系中空体のコーティングに優れるという観点から、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレーおよびカーボンブラックからなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
このような無機フィラーは、それぞれ単独で、または、2種以上を併用して使用することができる。
樹脂系中空体を無機フィラーでコーティングする方法は特に限定されず、従来公知の方法によりコーティングすることができる。
本発明のシーリング材組成物においては、作業性を向上させる観点から、硬化剤が、チクソ性付与剤を含有しているのが好ましい。
チクソ性付与剤としては、合成炭酸カルシウム(沈降性炭酸カルシウム)が好適に例示される。合成炭酸カルシウムとしては、具体的には、例えば、コロイダル炭酸カルシウム等が挙げられる。
このようなチクソ性付与剤は、硬化剤全体の質量に対して15〜60質量%含有しているのが好ましく、25〜55質量%含有しているのがより好ましい。
また、本発明のシーリング材組成物においては、硬化物の伸びと強度を付与し、補強効果をもたらすという観点から、硬化剤が、重質炭酸カルシウムを含有しているのが好ましい。
重質炭酸カルシウムは、硬化剤全体の質量に対して5〜50質量%含有しているのが好ましく、10〜40質量%含有しているのがより好ましい。
なお、硬化剤が重質炭酸カルシウムとともにチクソ性付与剤も含有する場合は、これらの合計含有量は、硬化剤全体の質量に対して30〜75質量%であるのが好ましく、33〜60質量%であるのがより好ましい。
本発明のシーリング材組成物においては、硬化剤が、更に、ポリプロピレンエーテル水酸化物以外の活性水素含有化合物を含有することができる。
活性水素含有化合物は、ウレタンプレポリマーと反応可能な活性水素を有する活性水素基を備える化合物であれば特に限定されない。
活性水素基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基が挙げられる。
活性水素含有化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミン(脂環式ポリアミンを含む。)、芳香族ポリアミンのようなポリアミン;ポリオール化合物;等が挙げられる。
ポリオール化合物としては、例えば上記と同様のものが挙げられる。
脂肪族ポリアミンとしては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン、メタキシリレンジアミン(MXDA)、ヘキサメチレンジアミンカルバメートのような脂肪族ジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンのような3官能以上の脂肪族アミン;等が挙げられる。
活性水素含有化合物としての芳香族ポリアミンは、芳香環に2個以上のアミノ基および/またはイミノ基が結合しているものであれば特に限定されない。
このような芳香族ポリアミンとしては、具体的には、例えば、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、3,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,2′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,3−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,5−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、3,4−トリレンジアミン、メチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン等が挙げられる。
このような活性水素含有化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、活性水素含有化合物の量は、本発明のシーリング材組成物からなる硬化物の物性(例えば、引張物性、せん断物性等)と耐熱安定性の観点から、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と、ポリプロピレンエーテル水酸化物および活性水素含有化合物が有する活性水素基の合計との当量比[イソシアネート基/活性水素基]が、0.8〜1.5となるようにするのが好ましく、0.9〜1.4であるのがより好ましい。
本発明のシーリング材組成物は、上述したウレタンプレポリマー、ポリプロピレンエーテル水酸化物および樹脂系中空体等以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、補強剤、硬化触媒、可塑剤、分散剤、溶剤、酸化防止剤、老化防止剤、顔料が挙げられる。添加剤は、主剤および/または硬化剤に添加することができる。
補強剤は、得られる本発明のシーリング材組成物からなる硬化物の硬化物物性(例えば、伸び、引張強度等)を補強しうるものであれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
補強剤としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレー、生石灰、カオリン、ゼオライト、けいそう土、微粉末シリカ、疎水性シリカ、カーボンブラック等が挙げられる。
これらのうち、ポリプロピレンエーテル水酸化物および可塑剤との濡れ性の観点から、酸化チタン、疎水性シリカ、カーボンブラックが好ましい。
補強剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用して使用することができる。
補強剤の含有量は、得られる本発明のシーリング材組成物からなる硬化物の破断伸びに優れ、破断強度を補うという観点から、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、40〜160質量部であるのが好ましく、50〜150質量部であるのがより好ましい。
硬化触媒としては、例えば、有機金属系触媒が挙げられる。
有機金属系触媒としては、具体的には、例えば、オクテン酸鉛、オクチル酸鉛のような鉛系触媒;オクチル酸亜鉛のような有機亜鉛化合物;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズラウレートのような有機スズ化合物;オクチル酸カルシウム、ネオデカン酸カルシウムのような有機カルシウム化合物;有機バリウム化合物;有機ビスマス化合物;等が挙げられる。
硬化触媒は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化触媒の使用量は、硬化剤全体の質量に対して0.2〜5質量%であることが好ましい。
なお、硬化触媒は、ポリプロピレンエーテル水酸化物と共に硬化剤中に配合してもよいし、主剤と硬化剤の混合時に添加してもよい。
可塑剤としては、具体的には、例えば、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ジブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、トリオクチルフォスフェート(TOP)、トリス(クロロエチル)フォスフェート(TCEP)、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート(TDCPP)、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
可塑剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用して使用することができる。
可塑剤の使用量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、20質量部以下であるのが好ましい。
分散剤は、固体を液中に分散させうるものであれば特に限定されない。
分散剤の使用量は、硬化剤全体の質量に対して0.01〜5質量%であるのが好ましく、0.05〜5質量%であるのがより好ましい。
溶剤としては、具体的には、例えば、ヘキサン、トルエンのような炭化水素化合物;テトラクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル;酢酸エチルのようなエステル;ミネラルスピリット;等が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシトルエンアニソール(BHA)、ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、亜リン酸トリフェニル等を挙げることができる。
顔料は、無機顔料と有機顔料とに大別される。
無機顔料としては、具体的には、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化亜鉛、群青、ベンガラのような金属酸化物;リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウムの硫化物、これらの塩酸塩またはこれらの硫酸塩等が挙げられる。
有機顔料としては、具体的には、例えば、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
本発明のシーリング材組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、ウレタンプレポリマーを含有する主剤と、ポリプロピレンエーテル水酸化物と樹脂系中空体とを含有する硬化剤とを別々に窒素ガス雰囲気下で十分に混合する方法により調製することができる。
また、本発明においては、調製された主剤を窒素ガス等で置換された容器に、調製された硬化剤を別の容器にそれぞれ充填し保存することができ、使用時に主剤と硬化剤とを十分に混合して調製することもできる。
本発明のシーリング材組成物は、樹脂系中空体が、粒子径70μm以下の樹脂系中空体を樹脂系中空体全体積中の20%超で含み、かつ粒子径110μm以下の樹脂系中空体を樹脂系中空体全体積中の80%超で含む。
つまり本発明のシーリング材組成物に含有される樹脂系中空体は、粒径が比較的小さいものの含有率が高く、かつ、ブロードな粒度分布を有するものであり、このことによって、本発明のシーリング材組成物から得られる硬化物の耐久性は優れ、かつ、比重が小さく軽量化も図ることができる。
具体的には、後述する実施例にも示すように、耐久性については、耐久性区分8020(JIS A5758:2004)を満足し、比重については、1.30g/mL以下となる。
また、本発明のシーリング材組成物は、BS型粘度計の7号ロータを用い、23℃、50%相対湿度における、回転速度1rpmおよび10rpmで計測される粘度(Pa・s)の比より算出されるチクソインデックス〔(1rpmでの粘度)/(10rpmでの粘度)〕が5.5以上となるため、シーリング材としての作業性に大変優れるものである。
本発明のシーリング材組成物における樹脂系中空体の分散について、添付の図面を用いて以下に説明する。
図1は、組成物に含有される樹脂系中空体が比較的粒径が大きく狭い粒度分布を有する場合の、組成物における樹脂系中空体の分散を模式的に表わす図である。
図2は、本発明のシーリング材組成物における樹脂系中空体の分散の一例を模式的に表わす図である。
図1において、組成物10は比較的粒径が大きく狭い粒度分布を有する樹脂系中空体11を含有する。また、図1において、樹脂系中空体11同士の間にできるすき間12や、樹脂系中空体11が浮上してできる空間13には、樹脂系中空体11以外の成分を含有する部分14が存在する。このような状態の組成物10を硬化させて硬化物10とすると、樹脂系中空体11同士の間隔が大きいすき間12や空間13の硬化部分14において引き裂きが起きやすいと考えられる。
これに対して、図2においては、本発明のシーリング材組成物20は、比較的粒径が小さくブロードな粒度分布を有する樹脂系中空体(図示せず。)を含有し、ブロードな粒度分布を有する樹脂系中空体(図示せず。)は、大きな粒子径の樹脂系中空体23と小さい粒子径の樹脂系中空体21、22とを含む。そして、小さい粒子径の樹脂系中空体21、22は、大きな粒子径の樹脂系中空体23の間のすき間24に入り込んですき間24を埋めていると考えられる。
これによって、大きい粒子径の樹脂系中空体23の凝集や浮上等が防止され、組成物20中における樹脂系中空体の分散性が高くなる。
また、本発明のシーリング材組成物20において、大きな粒子径の樹脂系中空体23の間のすき間24や浮上によってできる空間25が、小さい粒子径の樹脂系中空体21、22によって図1の場合と比べて少なくなり、得られる硬化物20中に樹脂系中空体が均一に広く分散しこれによって外部応力が硬化物に均一に分散してかかるため、得られる硬化物20は比重が小さいにも関わらず耐久性を保持することができると考えられる。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.ウレタンプレポリマーの調製
まず、数平均分子量4000のポリプロピレンエーテルトリオール(EXCENOL 4030、旭硝子社製)2100gと、数平均分子量2000のポリプロピレンエーテルジオール(EXCENOL 2030、旭硝子社製)1400gとを反応容器に入れて、減圧下で110℃に加熱し、6時間脱水処理した。
次いで、脱水処理後の反応容器内に、トリレンジイソシアネート(コスモネートT80、三井化学ポリウレタン社製)をNCO基/OH基の当量比が1.95となるように、かくはんしながら添加した。
その後、反応容器内を80℃に加熱し、窒素雰囲気下で更に24時間混合、かくはんし、ウレタンプレポリマーを調製した。
得られたウレタンプレポリマーのNCO基の含有量(NCO%)は、ウレタンプレポリマー全質量に対して3.0質量%であった。
2.二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物の調製
下記第1表に示す成分を第1表に示す量比(質量部)で使用し、これらを電動かくはん機等を用いて十分に混合して硬化剤を調製した。
上記のウレタンプレポリマーを主剤として100質量部と、第1表の硬化剤の400質量部とを電動かくはん機等を用いて十分に混合することにより二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物を得た。
3.評価
得られた二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物の比重、粘度、チクソインデックス、耐久性、引張物性、弾性復元率および塗膜汚染性を以下に示す方法により測定し、評価した。これらの結果を下記第1表に示す。
(1)比重(g/mL)
得られた二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物の比重を電子比重計(エー・アンド・ディー社製)を用いて水中置換法にて測定した。
なお、水中置換法は一般的に固体の比重を測定するものであるが、得られた二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物はいずれもチクソ性が高く、形状を保持できるため、電子比重計の計量皿に載せた状態で通常に測定することができた。
水中置換法による測定結果から、比重が1.3g/mL以下であれば、硬化後のシーリング材組成物の比重も十分に小さいものと評価できる。
(2)粘度(Pa・s)
得られた二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物について、BS型粘度計の7号ロータを用い、23℃、50%相対湿度における、回転速度1rpmおよび10rpmで計測される粘度(Pa・s)を測定した。
(3)チクソインデックス(TI)
回転速度1rpmおよび10rpmで計測される粘度(Pa・s)の比からチクソインデックス〔(1rpmでの粘度)/(10rpmでの粘度)〕を算出した。
(4)耐久性
得られた二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物について、JIS A5758:2004で規定する試験を行い、耐久性区分8020を評価した。
その結果、試験体の溶解、膨潤、ひび割れ、被着体からのはく離等の明確な異常を目視により確認し、これらの異常がなかったものを耐久性に優れるものとして「○」と評価し、これらの異常があったものを耐久性に劣るものとして「×」と評価した。
(5)引張物性
得られた各二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物について、JIS A1439:2004の「建築用シーリング材の試験方法」で規定する「5.3 引張特性試験」を行った。
なお、被着体には、陽極酸化アルミニウム基板を用い、養生は、23℃、50%相対湿度の条件下で28日間置いて行った。また、試験は、23℃、50%相対湿度の条件下で行った。
(6)弾性復元率
得られた各二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物について、JIS A1439:2004の「建築用シーリング材の試験方法」で規定する「5.2 弾性復元性試験」を行った。
なお、養生は、23℃、50%相対湿度の条件下で28日間置いて行い、試験は、23℃、50%相対湿度の条件下で行った。
(7)塗膜汚染性
スレート(サイズ:200mm×300mm)表面の一部(30mm×180mm)に、厚さが5mmとなるように、得られた各二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物を打設し、23℃、50%相対湿度の条件下で7日間硬化させた。
その後、二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物が打設された表面に、合成樹脂エマルジョン系塗料(オーデコートG、日本ペイント社製)を塗布し、7日間養生させ、更に60℃のオーブン内で7日間保持し、試験体を得た。
その後、得られた試験体を室温下に置き、エマルジョン系塗料が塗布され表面に、8号ケイ砂を塗布し、直ちに試験体を直立させて余分なケイ砂を除去し、塗装面へのケイ砂の付着を目視により観察した。
その結果、塗装面にケイ砂の付着が認められないものを「○」と評価し、ケイ砂の付着が認められるものを「×」と評価した。
Figure 0005151254
Figure 0005151254
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・ポリプロピレンエーテルトリオール1:数平均分子量5000、総不飽和度0.131meq/gのポリプロピレンエーテルトリオール(EXCENOL 5030、旭硝子社製)
・ポリプロピレンエーテルジオール1:数平均分子量3000、総不飽和度0.036meq/gのポリプロピレンエーテルジオール(EXCENOL 3020、旭硝子社製)
・ポリプロピレンエーテルジオール2:数平均分子量5500、総不飽和度0.005meq/gのポリプロピレンエーテルジオール(PREMINOL S4006、旭硝子社製)
・ポリプロピレンエーテルモノオール1:数平均分子量2750、総不飽和度0.006meq/gのポリプロピレンエーテルモノオール(旭硝子社製)
・ポリプロピレンエーテルモノオール2:数平均分子量1500、総不飽和度0.006meq/gのポリプロピレンエーテルモノオール(旭硝子社製)
これらのポリプロピレンエーテル水酸化物のうち、ポリプロピレンエーテルジオール2、ポリプロピレンエーテルモノオール1およびポリプロピレンエーテルモノオール2については、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて合成したものである。
・老化防止剤:イルガノックス1010、チバスペシャリティケミカルズ社製
・チクソ性付与剤:コロイダル炭酸カルシウム(CCR−S、白石工業社製)
・重質炭酸カルシウム:スーパーS、丸尾カルシウム社製
・酸化チタン:石原産業社製
・可塑剤:フタル酸ジイソノニル(DINP)、ジェイ・プラス社製
・硬化触媒:鉛触媒、ミニコP−30、活材ケミカル社製
・溶剤:ミネラルスピリット、新日本石油社製
・バルーン1:炭酸カルシウムでコーティングされたアクリロニトリル−メタクリロニトリル共重合体の中空体であり、当該中空体は、粒子径50μm以下の中空体を中空体全体積の28%で含み、粒子径95μm以下の中空体を中空体全体積の87%で含む。
・バルーン2:炭酸カルシウムでコーティングされたアクリロニトリル共重合体の中空体であり、当該中空体は、粒子径70μm以下の中空体を中空体全体積の18%で含み、粒子径110μm以下の中空体を中空体全体積の58%で含む。
第1表に示す結果から明らかなように、比較例1〜3で得られたシーリング材組成物は、本発明で用いる特定のポリプロピレンエーテル水酸化物を含有していないため、耐久性に優れ、比重も小さくなるものの、弾性復元率に劣り、モジュラスが高くなり、伸び率も低くなることが分かった。
また、比較例4および5で得られたシーリング材組成物は、本発明で用いる特定の樹脂系中空体を用いていないため、耐久性および比重のいずれもが優れる結果とはならなかった。
これに対して、実施例1〜5で得られたシーリング材組成物は、特定のポリプロピレンエーテル水酸化物および樹脂系中空体を含有するため、耐久性に優れ、かつ、比重が小さくなり、弾性復元率、モジュラスおよび伸び率のいずれにも優れることが分かった。
また、実施例1〜5で得られたシーリング材組成物は、硬化物の引張物性および打設後に塗布する塗膜の防汚性にも優れることが分かった。
図1は、組成物に含有される樹脂系中空体が比較的粒径が大きく狭い粒度分布を有する場合の、組成物における樹脂系中空体の分散を模式的に表わす図である。 図2は、本発明のシーリング材組成物における樹脂系中空体の分散の一例を模式的に表わす図である。
符号の説明
10 組成物(硬化後硬化物となる。)
11 狭い粒度分布を有する樹脂系中空体
12,24 すき間
13,25 空間
14 樹脂系中空体11以外の成分を含有する部分
20 本発明のシーリング材組成物(硬化後硬化物となる。)
21,22 小さい粒子径の樹脂系中空体
23 大きな粒子径の樹脂系中空体

Claims (16)

  1. ウレタンプレポリマーを含有する主剤と、ポリプロピレンエーテル水酸化物を含有する硬化剤とを有する二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物であって、
    樹脂系中空体を前記硬化剤の0.5質量%以上の量で含有し、
    前記樹脂系中空体が、粒子径70μm以下の樹脂系中空体を前記樹脂系中空体全体積中の20%超で含み、かつ粒子径110μm以下の樹脂系中空体を前記樹脂系中空体全体積中の80%超で含み、
    前記ポリプロピレンエーテル水酸化物が、数平均分子量が4000以上のポリプロピレンエーテルジオールと数平均分子量が2000以上のポリプロピレンエーテルモノオールとを合計して50質量%以上含有し、
    前記ポリプロピレンエーテルジオールと前記ポリプロピレンエーテルモノオールとの質量比(モノオール/ジオール)が、0.1以上である二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  2. 前記ポリプロピレンエーテルジオールと前記ポリプロピレンエーテルモノオールとの質量比(モノオール/ジオール)が、0.2以上である請求項1に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  3. 前記ポリプロピレンエーテルジオールと前記ポリプロピレンエーテルモノオールとの質量比(モノオール/ジオール)が、0.4以上である請求項1に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  4. 前記ポリプロピレンエーテルジオールおよび/または前記ポリプロピレンエーテルモノオールの総不飽和度が、0.08meq/g以下である請求項1〜3のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  5. 前記ポリプロピレンエーテルジオールおよび/または前記ポリプロピレンエーテルモノオールが、セシウム化合物、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポリフィリン、ホスファゼニウム化合物または複合金属シアン化物錯体触媒を用いて合成される請求項1〜4のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  6. 前記樹脂系中空体が、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデンおよび熱可塑性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  7. 前記樹脂系中空体が、無機フィラーでコーティングされている請求項1〜6のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  8. 前記無機フィラーが、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレーおよびカーボンブラックからなる群から選択される少なくとも1種である請求項7に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  9. 前記硬化剤が、更に、チクソ性付与剤を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  10. 前記硬化剤が、前記チクソ性付与剤を15〜60質量%含有する請求項9に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  11. 前記チクソ性付与剤が、合成炭酸カルシウムである請求項9または10に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  12. 前記チクソ性付与剤が、コロイダル炭酸カルシウムである請求項11に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  13. 前記硬化剤が、更に、重質炭酸カルシウムを含有する請求項1〜12のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  14. 前記硬化剤が、前記チクソ性付与剤および前記重質炭酸カルシウムを30〜75質量%含有する請求項13に記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  15. 比重が1.30g/mL以下となる請求項1〜14のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
  16. BS型粘度計の7号ロータを用い、23℃、50%相対湿度における、回転速度1rpmおよび10rpmで計測される粘度(Pa・s)の比より算出されるチクソインデックス〔(1rpmでの粘度)/(10rpmでの粘度)〕が、5.5以上である請求項1〜15のいずれかに記載の二液硬化型ポリウレタン系シーリング材組成物。
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