JP5151060B2 - 塗布液の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも、バインダー樹脂と粒子を有する塗布液の製造方法に関し、特に、高固形分濃度の塗布液の製造方法に関するものである。また、特に、その塗布液が電子写真感光体用のものである塗布液の製造方法に関するものである。
少なくとも、バインダー樹脂と粒子を含む塗布液の製造方法としては、主な例として次のものが知られている。以下、特に、電子写真感光体用の塗布液について示すが、下記の背景技術は、電子写真感光体の塗布液のみならず、塗布液一般に対してもいえるものである。
少なくとも、バインダー樹脂と粒子を含む塗布液の製造方法に関しては、以下の(1)ないし(4)が提案されている。
(1)予め、粒子を超音波やビーズミル等で溶媒に分散させたスラリーと、予め、バインダー樹脂を溶媒に溶解させたバインダー樹脂液とを混合して、塗布液を製造する方法。
(2)予め、バインダー樹脂を溶媒に溶解させたバインダー樹脂液に、粒子を添加し、その後、超音波やビーズミル等で分散させて、塗布液を製造する方法。
(3)予め、粒子を超音波やビーズミル等で溶媒に分散させたスラリーに、バインダー樹脂粉末又はペレットを添加して攪拌混合し、また、場合によっては加温しながら攪拌混合して塗布液を製造する方法(特許文献1)。
(4)電子写真感光体の下引き層用の塗布液の製造方法について、以下の方法が提案されている(特許文献2)。すなわち、塗布液の最終濃度よりも高い固形分濃度で、かつ分散すべき粒子(酸化チタン)全量を、全バインダー樹脂の30重量%以下を溶解した有機溶剤中に分散する一次工程と、得られた一次分散塗布液に、残りのバインダー樹脂を溶解した溶液を加えて最終固形分濃度とした後、更に分散する二次分散工程を有する塗布液の製造方法が提案されている。この製造方法は、簡略して述べると、(2)の方法を2段階に分けて、分散混合を行っているものである。すなわち、バインダー樹脂溶解液を2つに分けて、最初にバインダー樹脂濃度が低い溶解液で粒子を分散混合し、その後に、残りの樹脂溶解液で分散混合するものである。
しかしながら、上記(1)ないし(4)の塗布液の製造方法では、少なくとも、バインダー樹脂と粒子を有し、高固形分濃度の塗布液を製造するには種々の問題があり、適した塗布液を製造することが困難であった。
すなわち、(1)の塗布液の製造方法で高固形分濃度の塗布液を製造するためには、固体のバインダー樹脂を溶解させるのに、一定の溶媒が必要なため、残りの少ない溶媒で多量の粒子を超音波やビーズミル等で分散させることが必要になる。そのため、得られたスラリーの粘度が必然的に高くなるため、粒子の分散性が悪くなったり、スラリーの取り出しが困難になったりするという問題が生じ、実用的には適切な方法ではなかった。
また、(2)の塗布液の製造方法で高固形分濃度の塗布液を製造する場合も、一般的には、高粘度のバインダー樹脂液に粒子を添加しビーズミル等で分散させるため、やはり、分散性が悪くなったり、塗布液の取り出しが困難になったりして、適切な方法ではなかった。更に、この方法では、ビーズの洗浄についても、ビーズにバインダー樹脂が付着するため、(1)の方法に比べて難しくなるという問題点もあった。
(3)の塗布液の製造方法は、(1)や(2)の方法よりは、高固形分濃度の塗布液を製造するのに適した方法ではあるが、この方法も以下のような問題点があり、最適な方法とはいい難かった。すなわち、この方法の問題点とは、固体のバインダー樹脂が室温で溶媒に溶けない場合は、必然的に粒子分散スラリーに固体のバインダー樹脂粉を添加後、加熱しながら攪拌混合を行うことになるが、攪拌調整及び昇温スピード等の温度調整を注意深く行わないと、粒子が熱凝集を起こし分散安定性を損なうという問題が生じる場合があった。
また、(4)の方法は、(2)の方法と比較すると、最初に粒子を分散混合するときのバインダー樹脂濃度を、分散に適切な濃度に充分低く調整することができるので、分散性の良い液を製造しやすいというメリットはあるが、ビーズ分散を行っている場合は、(2)の方法と同様に、塗布液が取り出しにくく、塗布液の収率が悪くなるという問題点があった。また、ビーズの洗浄が大変になる点は、(2)と同じであった。更に、高固形分濃度の塗布液を製造する場合は、最初に粒子を分散するときのバインダー樹脂濃度を、分散に適切な範囲にまで下げることが難しくなり、やはり塗布液の分散安定性が悪くなりやすいという問題点があった。
このように、バインダー樹脂と粒子を含む塗布液については、従来の製造方法では、充分に高固形分濃度の塗布液を安定的に製造できないという問題点があった。
特に、この塗布液が、電子写真感光体の下引き層用のものである場合には、高固形分濃度の塗布液が安定的にできないと、下引き層の膜厚を厚くすることができない場合があり、そこがリークの起点になり得る場合があった。また、厚くできても粒子の分散安定性が悪い場合には、粒子が凝集し、そこがリークの起点になり得る場合があった。また、この塗布液が、電子写真感光体の電荷輸送層用のものである場合には、耐刷性を向上させるために粒子を添加する場合があり、高固形分濃度の塗布液で粒子が良く分散されているものが望まれていた。
特開平10−254150号公報 特開平8−166678号公報
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、少なくとも、バインダー樹脂と粒子を含有する塗布液の製造方法であって、粒子の分散性がよく収率もよい塗布液の製造方法を提供することであり、特に、その塗布液の最終固形分濃度が高濃度であっても、粒子の分散性や収率に優れた塗布液の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、各成分を特定の状態にして特定の順番で混合することによって、最終固形分濃度の高い塗布液であっても、粒子の分散性、収率がよい塗布液が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも、バインダー樹脂と粒子を含む塗布液の製造方法であって、該粒子を溶媒中に分散したスラリー、該バインダー樹脂を溶媒中に溶解した液、及び、固体のバインダー樹脂を混合することを特徴とする塗布液の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記製造方法を使用して製造されたものであることを特徴とする塗布液を提供するものである。
また、本発明は、少なくとも、上記塗布液を導電性基体上に塗布することによって形成された層を有することを特徴とする電子写真感光体を提供するものである。
本発明によれば、粒子含有塗布液を分散性よく製造することができる。特に、得られた塗布液を電子写真感光体の下引き層形成に適用した場合、画像欠陥等がない良好な電子写真感光体を得ることができる。
また、本発明は、高固形分濃度の塗布液を好適に製造することを可能にするため、例えば漬積塗布方法等で厚膜を塗布形成する場合、適切な塗布速度で塗布できるので、均一な塗布膜が得られやすい等の効果を有する。
特に電子写真感光体の用途に関しては、装置のコンパクトさ等の点から、接触帯電方式を採用するマシーンが多くなっており、接触帯電によるリーク(絶縁破壊)を予防する上で、下引き層の膜厚を厚くすることが望まれているが、本発明の製造方法で得られた塗布液によって、充分厚く塗布することができるようになる。
更に、厚く塗布しても、粒子が良く分散されず凝集していれば、そこがリークの起点になり得る場合があるが、本発明の製造方法によれば、粒子含有塗布液を高濃度で、分散性良く製造できるので、かかるリークの起点になる凝集粒子を少なくすることができる。
また、電子写真感光体の電荷輸送層も、耐刷性(耐摩耗性)を向上させるために、粒子を添加することが提案され、実用化されているが、この場合も、高固形分濃度の液で粒子が良く分散されている必要があり、本発明の塗布液の製造方法は、その必要性にも対応できるものである。
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の具体的形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。また以後、電子写真感光体用の塗布液の製造方法について本発明を説明していくが、本発明は一般的な塗布液の製造方法についても同様の効果を有するものであり、以下の記載は、一般的な塗布液の製造方法についての記載でもある。
本発明は、少なくとも、バインダー樹脂と粒子を含む塗布液の製造方法であって、
(1)該粒子を溶媒中に分散したスラリーと、
(2)該バインダー樹脂を溶媒中に溶解した液と、
(3)固体のバインダー樹脂
を混合する工程を少なくとも有していることが特徴である。
[バインダー樹脂]
本発明に用いられるバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が何れも使用できる。具体的には、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボーネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアクリレート樹脂、シリコン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ニトロセルロース、ポリアミノ酸エステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
中でも、ポリアミド樹脂、ポリカーボーネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等が好ましく、ポリアミド樹脂が特に好ましい。
また、本発明に用いられるバインダー樹脂としては、アルコール可溶性樹脂も好ましい。本発明では、「アルコール可溶性樹脂」とは、メタノールに、20℃からメタノールの沸点までの温度範囲の中の何れか1点の温度で、少なくとも3質量%の濃度で溶解する樹脂をいう。
アルコール可溶性樹脂としては特に限定はないが、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂等が好ましく、電子写真感光体の下引き層用として用いられるときには、下引き層の特性面で、アルコール可溶性ポリアミド樹脂が特に好ましい。
アルコール可溶性ポリアミド樹脂としては、変成タイプと共重合タイプがある。変成タイプとしては、ナイロン6のN−メチル変成体、ナイロン6のメトキシメチル変成体、ナイロン8のN−エチル変成体、ナイロン8のエトキシメチル変成体等が挙げられるが、中でもナイロン6のメトキシメチル変成体が好ましい。
共重合タイプとしては、6ナイロン、8ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、66ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、620ナイロン等の共重合体が挙げられ、中でも、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/610共重合ナイロン、6/66/610/12共重合ナイロン等の三元系若しくは四元系の共重合ナイロンが好ましい。
また、アルコール可溶性樹脂としては、下記一般式(1)で示されるジアミン化合物を繰り返しユニットとして有する共重合ポリアミド樹脂も、画像特性や塗布液の安定性の点で好ましい。更に、上記した共重合ナイロンであり、かつ、下記一般式(1)で示されるジアミン化合物を繰り返しユニットとして有するものが、画像特性や塗布液の安定性の点で特に好ましい。
Figure 0005151060
[式(1)中、A及びBは、それぞれ独立して置換基を有していてもよいシクロヘキサン環を表し、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表す。]
式(1)中、A及びBは、それぞれ独立して置換基を有していてもよいシクロヘキサン環を表すが、シクロヘキサン環A及びBの置換基としては、炭素数1〜8個のアルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。特に好ましくは、メチル基又はエチル基である。また、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表す。このアルキル基としては炭素数1〜8個のアルキル基が好ましい。このアルコキシ基としては、炭素数1〜8個のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。このアリール基としては低級アルキル置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が好ましい。
一般式(1)で示されるジアミン化合物と共に繰り返しユニットとして上記共重合ポリアミド樹脂に含まれるものとしては以下のものが好ましいものとして挙げられる。すなわち、ジアミン成分としては、ブタンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン等のアルキレンジアミン類等が挙げられ、ジカルボン酸成分としては、コハク酸、アジピン酸、ブタンジカルボン酸、ヘキサメチレンジカルボン酸、オクタメチレンジカルボン酸、デカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸、オクタデカメチレンジカルボン酸等のアルキレンジカルボン酸類等が挙げられ、アミノ基とカルボキシル基を1分子中に含む成分としては、アミノ酸類等が挙げられ、環状アミド成分としては、γ−ブチロラクタム(2−ピロリドン)、γ−バレロラクタム、δ−バレロラクタム(2−ピペリドン)、ε−カプロラクタム、ω−オクタラクタム、ω−ラウリンラクタム等のラクタム類が挙げられる。
アルコール可溶性ポリアミド樹脂の数平均分子量としては特に限定はないが、5000から5万の範囲が好ましく、より好ましくは1万から3万の範囲である。数平均分子量が大きすぎると、厚さの均一な塗布膜の形成が困難になる場合があり、小さすぎると、充分な膜厚の塗布膜の形成が困難になる場合がある。
[粒子]
本明細書の塗布液の製造方法に用いられる粒子としては特に限定はないが、無機微粒子が好ましく、金属酸化物粒子が特に好ましい。金属酸化物粒子としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸素欠陥型チタニア(黒色チタニア)、酸化銅、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化錫、酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化インジウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、酸化ニッケル、ITO(インジウムドープ酸化錫)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)等が挙げられる。
電子写真感光体の下引き層用として用いられるときには、バンドギャップが2〜4eVの範囲の金属酸化物であることが好ましく、その中でも、酸化チタン又は酸化亜鉛が特に好ましい。酸化チタンとしては、アモルファス、ルチル、アナターゼ、ブルカイトの結晶型があり何れも用いることができるが、ルチル型が一般的である。また、酸化チタンにニオブ、アンチモン、タングステン等をドープしたものも好適に用いることができる。
また、電子写真感光体の下引き層用として用いられるときには、該金属酸化物粒子が、有機ケイ素化合物で表面処理されていることが、例えば高温高湿下でのロングラン実写特性等の環境特性の面で好ましい。有機ケイ素化合物としては表面処理に効果的であれば特に限定はないが、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリメトキシシロキサン等のポリシロキサン化合物;メチルジメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、エチルトリクロロシラン等のシラン化合物;フルオロシラン化合物等が好ましいものとして挙げられる。その中でも、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルジメトキシシラン又はフルオロシラン化合物での表面処理が特に好ましい。また、上記有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタンが、環境特性が良好である点で好ましい。
粒子の粒子径は、塗布液の安定性の点で、体積平均一次粒子径で、100nm以下が好ましく、特に好ましくは10nm以上で60nm以下であり、更に好ましくは15nm以上で40nm以下である。金属酸化物粒子の粒子径が大きすぎる場合は、塗布液の安定性が悪くなる場合がある。粒子径は、均一であってもまた、異なる粒子径の複合系でもよい。
本発明の塗布液の製造方法は、(1)該粒子を溶媒中に分散したスラリーと、(2)該バインダー樹脂を溶媒中に溶解した液と、(3)固体のバインダー樹脂とを混合する工程を少なくとも有している。
(1)は、該粒子が溶媒中に分散されたスラリーであるが、その際の溶媒としては、バインダー樹脂を最終組成において溶解させ得るものであれば特に限定はなく公知の溶剤が使用できる。通常、25℃、1気圧下で液状のものが好ましく、1気圧での沸点が30℃〜150℃のものが好ましく、50℃〜100℃のものが特に好ましい。
特にバインダー樹脂がアルコール可溶性樹脂の場合は、炭素数が1〜10個で、置換基を有していてもよいアルコールが分散媒として好ましい。かかるアルコールとしては特に限定はないが、具体的には例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール(2−メチル−2−プロパノール)、2−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール等が好ましく、このうちメタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等が、アルコール可溶性樹脂の溶解性及び塗布膜の乾燥性等の点で特に好ましい。これらの他のアルコールは、1種類単独で使用してもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
なお、バインダー樹脂がアルコール可溶性樹脂の場合であっても、樹脂の溶解性を悪化させず、粒子の分散性を悪化させない範囲で、アルコール以外の溶媒も併用することができるが、かかる溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。その中でも、芳香族炭素水素が、アルコール可溶性樹脂の溶解性及び塗布膜の乾燥性の点で好ましく、その中でも特にトルエン又はキシレンが好ましい。これらの他の溶媒は、1種類単独で使用してもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
[(1)該粒子を溶媒中に分散したスラリー]
該粒子を溶媒中に分散してスラリーを得るが、その際のスラリーの濃度としては、スラリー全体に対して該粒子が、10質量%〜70質量%が好ましく、20質量%〜60質量%が特に好ましい。
該スラリー中には、該粒子が上記濃度で分散されているが、更に、バインダー樹脂が溶解されていてもよい。その際のバインダー樹脂の濃度としては、スラリー全体に対して該バインダー樹脂が、10質量%以下が好ましく、1質量%〜8質量%が特に好ましく、10質量%〜5質量%が更に好ましい。濃度が高すぎる場合は、特にビーズミル、ボールミル等を用いたときに収率が減少したり、洗浄が面倒になったりする場合がある。スラリー中にはバインダー樹脂は実質的には溶解されていないことが、前記粒子が凝集しないという点で特に好ましい。
溶媒中への該粒子の分散方法は特に限定はなく、超音波分散器、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ホモミキサー等が使用可能であるが、ボールミル、ビーズミル等が、分散性が良好である点で好ましい。また、本発明における上記スラリーは、バインダー樹脂を実質的に含まないか少量しか含まないので、ボールやビーズ等のメディアにスラリーが付着して収率を落としてしまうことがなく、また、スラリー取り出し後のメディアの洗浄も容易であるため、ボールミル又はビーズミルが特に好ましい。
分散時の液温は溶媒の沸点以下ならば特に限定はないが、0℃〜50℃が好ましく、5℃〜25℃が特に好ましい。
[(2)該バインダー樹脂を溶媒中に溶解した液]
(2)は、該バインダー樹脂を溶媒中に溶解した液であるが、その際の濃度としては、溶液全体に対して該バインダー樹脂が、3質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜25質量%が特に好ましく、10質量%〜20質量%が更に好ましい。濃度が高すぎる場合は、該液がゲル化するおそれがある。
[(3)固体のバインダー樹脂]
本明細書の塗布液の製造方法では、(3)固体のバインダー樹脂を混合する工程を少なくとも有している。固体のバインダー樹脂の形状は特に限定はなく、ペレット状、粉末状、フレーク状、塊状等が挙げられる。好ましくは、樹脂の溶解性の点で、ペレット状、粉末状又はフレーク状であり、特に好ましくは、取り扱いの容易さの点で、ペレット状である。
「ペレット状のバインダー樹脂」とは、溶融された樹脂を数mm以下の小さな穴から押し出し、線状にしたものを冷やし、通常1mmから5mm程度の長さにカッティングされたものをいう。
「粉末状のバインダー樹脂」とは、体積平均粒径が1μm〜1mmのバインダー樹脂をいい、より大きい形状のものを粉砕して得ることもできるが、ペレット状、塊状等のバインダー樹脂を溶媒に溶かし、再沈、晶析等により製造することもできる。
「フレーク状のバインダー樹脂」とは、平板の平均差し渡し長が約5mm〜50mmの大きさで、約0.5mm〜5mmの厚さを有するバインダー樹脂をいう。粉末状のバインダー樹脂を加圧してフレーク状にしたり、融解された樹脂を板の上に流して冷却して固体としそれを割ったりすること等により製造できる。
塗布液の最終組成における全バインダー樹脂に対して、(2)のバインダー溶液中のバインダー樹脂は、10〜90質量%が好ましく、30〜70質量%が特に好ましい。(2)のバインダー溶液中のバインダー樹脂が多すぎ、(3)の固体のバインダー樹脂の量が少なすぎると、本発明の効果が得られない場合があり、一方、(2)のバインダー溶液中のバインダー樹脂が少なすぎ、(3)の固体のバインダー樹脂の量が多すぎると、塗布液の分散性が悪くなる場合がある。
[混合方法等]
混合手順としては、(1)粒子を溶媒中に分散したスラリーと、(2)バインダー樹脂を溶媒中に溶解した液と、(3)固体のバインダー樹脂の3種類を一度に混合してもよいし、3種類のうち2種類を先に混合して、その後、その混合液に残った1種類を混合してもよい。それらの方法の中でも、先に(1)粒子を分散したスラリーと、(2)バインダー樹脂を溶媒中に溶解した液、とを混合した後に、(3)固体のバインダー樹脂をその混合液に混合する製造方法が、作業性、塗布液の分散性等の面で好ましい。
混合方法としては、どのような方法でも行われるが、攪拌翼で攪拌混合するのが、一般的であり、超音波分散器は、用いても用いなくてもよいが、用いた方が粒子の分散性向上の面等で好ましい。超音波分散器を用いる場合は、(1)粒子を溶媒中に分散したスラリーを調製するときに用いたり、(1)(2)(3)を攪拌混合する際に同時に用いたり、攪拌混合後に用いたりすることができる。
加熱の有無については特に限定はないが、(3)固体のバインダー樹脂を加熱により溶解させる必要がある場合に、特に本発明の効果が高く奏される。加熱する際には、(1)(2)(3)を混合後に加熱することが好ましい。その場合は、加熱温度としては40℃から100℃が好ましく、特に好ましくは45℃から80℃である。更には攪拌を行いながら加熱することが好ましい。
[その他の成分]
塗布液には、その他の成分が含有されていてもよい。その他の成分としては、界面活性剤、消泡剤、可塑剤、顔料、着色剤、滑剤、分散補助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、レベリング剤、安定剤、流動性付与剤、架橋剤等が挙げられ、更に、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるための物質も挙げられる。また特に、該塗布液が電子写真感光体の感光層に用いられる場合は、電荷輸送物質、電子吸引性化合物等が挙げられる。
[塗布液の組成と物性]
上記のようにして得られた塗布液中の、最終的なバインダー樹脂と粒子の含有量は特に限定はないが、該塗布液全体に対して、バインダー樹脂が、2〜25質量%が好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。バインダー樹脂の濃度が低すぎる場合には、一般に薄い塗布膜しか得られないので塗布欠陥が多くなる場合があり、また、本発明の製造方法を使用しなくてもよい場合があり、また、該塗布液の粘度が高くなり塗布が困難になる場合がある。一方、バインダー樹脂の濃度が高すぎる場合には、そのような用途がなく必要性がない場合がある。
該塗布液全体に対して、粒子は5〜45質量%が好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。樹脂の含有量が低すぎる場合には、本発明の製造方法を使用しなくてもよい場合があり、本発明の効果が充分に発揮されない場合がある。一方、樹脂の含有量が高すぎる場合には、塗布膜の密着性が悪くなる場合がある。
上記のようにして得られた塗布液中の、最終的なバインダー樹脂と粒子の、それぞれの「好ましい含有量」、「特に好ましい含有量」、「更に好ましい含有量」は、組み合わされていることが好ましい。また、バインダー樹脂、粒子等の固形分の含有量は、塗布液全体に対して15質量%以上が好ましく、20質量%以上が特に好ましい。
該塗布液が電子写真感光体の下引き層の浸漬塗布用の場合は、塗布液の粘度は、好ましくは3mPa・s以上、特に好ましくは10mPa・s以上、上限は、好ましくは100mPa・s以下、特に好ましくは60mPa・s以下である。また、該塗布液が電子写真感光体の電荷輸送層の浸漬塗布用である場合は、塗布液の粘度は、好ましくは50mPa・s以上、特に好ましくは100mPa・s以上、好ましくは700mPa・s以下、特に好ましくは500mPa・s以下である。
[塗布方法]
上記のようにして得られた塗布液の塗布方法は特に限定はなく、浸漬塗布、スプレー塗布、リング塗布等が用いられるが、浸漬塗布が、高濃度の塗布溶液を必要とし本発明の上記効果を奏しやすい点等から好ましい。
<塗布液の用途(電子写真感光体)>
以下、下引き層を有する電子写真感光体について本発明を説明していくが、本発明は一般的な塗布液の製造方法についても同様の効果を有するものであり、以下の記載は、塗布液の製造方法については塗布液一般についても記載されているものとする。
[導電性基体]
電子写真感光体は、一般には導電性基体上に下引き層と感光層とを有する。電子写真感光体における導電性基体としては特に限定はないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属からなるもの;ポリエステルフィルム、紙、ガラス等の絶縁性基体の表面にアルミニウム、銅等の金属を蒸着したもの;導電材料をバインダー樹脂に分散させた導電層を設けたもの等が挙げられる。
更には、アルミニウム等の金属上に導電材料を分散させた導電層を設けたものでも良い。なかでも、アルミニウム等の金属のエンドレスパイプを適当な長さに切断したものが好ましい。また、アルミニウム系金属を押し出し成形して得られた肉厚管をしごき加工又は引き抜き加工したものを、切削せずにそのまま用いても良い。導電性基体の表面には、画質に影響のない範囲で、例えば、酸化処理や薬品処理等の各種の処理を施すことができる。また、導電性基体の表面には陽極酸化被膜が形成されていてもよい。
[下引き層]
下引き層とは、導電性基体と全ての感光層(最も導電性基体に近い感光層)との間に位置し、実質的に電荷発生能はなく、絶縁性を有しており、電荷輸送能を有する層をいう。
本発明の塗布液の製造方法で製造された塗布液を用いて形成された下引き層を有する電子写真感光体は、絶縁破壊等を起こさず画像欠陥のない良好な画質を与えることができる。すなわち、本発明の製造方法によると、本発明の効果として高濃度の塗布液が安定して得られるが、また、製造された塗布液の濃度の高低によらず、欠陥のない高画質を達成する電子写真感光体の下引き層を与えることができる。
下引き層中に含有されるバインダー樹脂としては前述のものが好適に用いられる。すなわち、アルコール可溶性樹脂及び/又はポリアミド樹脂が特に好ましい。かかる樹脂の数平均分子量としては特に限定はないが、5000から5万の範囲が好ましく、より好ましくは1万から3万の範囲である。
下引き層中の粒子としては前述のものが好適に用いられる。下引き層用には無機化合物粒子が含まれていることが、電気特性の面等で好ましい。特に好ましくは前述したような金属酸化物粒子である。
粒子径は、塗布液の安定性、電気特性等の点で、体積平均一次粒子径で、100nm以下が好ましく、特に好ましくは10nm以上で60nm以下である。粒子径が大きすぎる場合は、塗布液の安定性や電気特性が悪くなる場合がある。粒子径は、均一であってもまた、異なる粒子径の複合系でもよい。例えば、体積平均一次粒子径で、0.1μmのものと0.03μmのものを混合して用いても良い。
粒子が含まれている場合、該粒子とバインダー樹脂の含有比率は任意に選ぶことができるが、塗布液の安定性、電気特性及び画像特性の面から、バインダー樹脂1質量部に対して、粒子0.5質量部から6質量部の範囲が好ましい。特に好ましくは、0.8質量部から4質量部の範囲である。粒子が多すぎる場合は画像特性や塗布液の安定性が悪くなる場合があり、少なすぎる場合は電気特性が悪くなる場合がある。
電子写真感光体の下引き層には、その他に、必要に応じて、酸化防止剤、レベリング剤等の添加剤、導電剤等を加えても良い。
電子写真感光体の下引き層の塗布溶媒については前述のものが好適に用いられる。下引き層の膜厚としては、通常0.1μm〜30μm、好ましくは0.5μm〜20μmで、更に好ましくは1μm〜10μmである。膜厚が薄すぎると、本発明の塗布液を下引き層用に用いたときの画像欠陥改善の効果が不十分になる場合があり、一方、厚すぎると電子写真感光体としての電気特性が不十分になる場合がある。
下引き層の塗布は、ある程度均一に塗布できる方法であれば、いかなる塗布方法を用いてもよいが、浸漬塗布方法、スプレー塗布方法、ノズル塗布方法等を用いて常法に従って塗布されることが好ましく、中でも、浸漬塗布方法が生産効率に優れている点で好ましい。
その後、塗膜を乾燥するが、必要かつ充分な乾燥が行われるように、乾燥温度、乾燥時間を調整する。乾燥温度は、通常100〜250℃、好ましくは110〜170℃、更に好ましくは115〜140℃の範囲である。乾燥方法としては、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機、遠赤外線乾燥機等を用いた方法を挙げることができる。
[感光層]
電子写真感光体は、導電性基体上に下引き層と感光層とを有する。感光層には、単層型と、電荷発生層と電荷輸送層に機能分離した積層型とがあるが、積層型が好ましい。
本発明の塗布液の製造方法で製造された塗布液を用いて形成された感光層特に電荷輸送層を有する電子写真感光体は耐刷性に優れている。すなわち、本発明の製造方法によると、本発明の効果として高濃度の塗布液が得られるが、その塗布液は濃度の高低によらず、耐刷性が優れた電子写真感光体の感光層特に電荷輸送層を与えることができる。
[[積層型における電荷発生層]]
感光層が機能分離した積層型の場合は、該下引き層の上に電荷発生層が設けられ、電荷発生層には電荷発生物質が含有される。電荷発生物質としては特に限定はないが、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。
フタロシアニン顔料としては、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、ガリウムフタロシアニン、インジウムフタロシアニン、バナジウムフタロシアニン、銅フタロシアニン等があり、好ましくは、ガリウムフタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料であり、その中でも、チタニルフタロシアニン顔料が特に好ましく、特定結晶系を有するオキシチタニウムフタロシアニンがより好ましい。フタロシアニン顔料は単一の化合物のみを用いてもよいし、いくつかの混合状態で用いてもよい。ここで、フタロシアニン顔料の混合状態又は結晶状態における混合状態を形成する方法としては、それぞれの構成要素を後から混合して用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン顔料の製造・処理工程において混合状態を生じせしめたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理、磨砕処理、溶剤処理等が用いられる。特に、結晶状態における混合状態であるいわゆる混晶状態のフタロシアニン顔料を用いた電子写真感光体は、特に高い感度を示し、温度変化等の環境変動に対する感度変化が小さいため好ましい。
電荷発生物質は単独で、又はバインダー樹脂と共に用いられて、電荷発生層を形成する。電荷発生層のバインダー樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体若しくは共重合体、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられるが、顔料の分散性等の面で、ポリビニルアセタールが好ましい。
電荷発生物質とバインダー樹脂の割合は、特に制限はないが、一般的には電荷発生物質100質量部に対し、5〜500質量部、好ましくは20〜300質量部のバインダーポリマーを使用する。また電荷発生層は上記電荷発生物質の蒸着膜であってもよい。
また電荷発生層は、必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤、酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
電荷発生層を形成する場合、電荷発生物質をボールミル、超音波分散器、ペイントシェイカー、アトライター、サンドグラインダ等により適当な分散媒に分散又は溶解し、必要に応じてバインダー樹脂を添加して電荷発生層形成用塗布液を調整し、この塗布液を塗布形成する。電荷発生物質が単独で用いられる場合には、上記分散液にバインダーを添加せずに塗布液を調整し、塗布してもよいし、蒸着やスパッタリング等の方法で形成してもよい。電荷発生層の膜厚は、通常0.05〜5μm、好ましくは0.1〜2μmである。
[[積層型における電荷輸送層]]
該電荷発生層の上に電荷輸送層が設けられる。電荷輸送層は少なくともバインダー樹脂と電荷輸送物質を含有しているが、必要に応じて、粒子、電子吸引性化合物、可塑剤、顔料、その他の添加剤等を含有していても良い。
電子写真感光体が機能分離型の感光層を有する場合、電荷輸送層中の電荷輸送物質としては、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリアセナフチレン等の高分子化合物;ジフェノキノン誘導体、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、チアジアゾール誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン化合物、これらの化合物が複数結合されたもの、又はこれらの化合物からなる基を主鎖若しくは側鎖に有する重合体等が挙げられる。なお、上記電荷輸送物質は、2種類以上を混合して使用してもよい。
電荷輸送層のバインダー樹脂としては、上記電荷輸送物質と相溶性が良く、塗膜形成後に電荷輸送物質が結晶化したり、相分離したりしないものが好ましい。それらの例としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
電子吸引性化合物としては、テトラシアノキノジメタン、ジシアノキノメタン、ジシアノキノビニル基を有する芳香族エステル類等のシアノ化合物、2,4,6−トリニトロフルオレノン等のニトロ化合物、ペリレン等の縮合多環芳香族化合物、ジフェノキノン誘導体、キノン類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、酸無水物、フタリド類、置換及び無置換サリチル酸の金属錯体、置換及び無置換サリチル酸の金属塩、芳香族カルボン酸の金属錯体、芳香族カルボン酸の金属塩が挙げられる。好ましくは、シアノ化合物、ニトロ化合物、縮合多環芳香族化合物、ジフェノキノン誘導体、置換及び無置換サリチル酸の金属錯体、置換及び無置換サリチル酸の金属塩、芳香族カルボン酸の金属錯体、芳香族カルボン酸の金属塩が用いられる。
電荷輸送物質とバインダー樹脂の含有割合は、バインダー樹脂100質量部に対して、電荷輸送物質10質量部以上が好ましく、30質量部以上が特に好ましい。また、200質量部以下が好ましく、150質量部以下が特に好ましい。バインダー樹脂の含有割合が大きくなりすぎると、電気特性が悪くなる場合がある。また、電荷輸送物質は、通常バインダー樹脂と相溶性があり、感光層の機械的特性への影響度が高く、そのため電荷輸送物質の含有割合が大きくなりすぎると感光層の機械的強度が低下する場合がある。
電荷輸送層に、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるため又は感光層の機械的強度を更に向上させるために、粒子、周知の可塑剤、滑剤、分散補助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、染料、顔料、増感剤、レベリング剤、安定剤、流動性付与剤、架橋剤等の添加物を含有させることも好ましい。酸化防止剤の例としては、例えば、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物等が挙げられ、界面活性剤の例としては、シリコ−ンオイル、フッ素系オイル等が挙げられる。
粒子は、フッ素原子を含有する樹脂粒子が好ましい。粒子を含有させることによって、表面滑り性が向上し、耐久性が良くなるという効果がある。粒子はスラリーとして、本発明の塗布液の製造方法を使用して、バインダー樹脂等と混合することが好ましい。
電荷輸送層の形成方法は後述するが、電荷輸送層の膜厚は、通常10μm〜50μm、好ましくは13μm〜35μmである。
[[単層型における感光層]]
該感光層が単層型の場合は、該下引き層上に単層の感光層が設けられる。該単層の感光層は、少なくとも上記で記載したフタロシアニン顔料とバインダー樹脂を含有することが好ましい、上記の他の電荷発生物質や上記の電荷輸送物質や上記の電子吸引性物質が含まれていてもよい。
この際、電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは、0.5μm以下で使用される。単層型感光層内に分散又は溶解される電荷発生物質の量は、感光層全体に対して、例えば、0.5〜50質量%の範囲である。少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害がある。特に好ましくは、1〜20質量%の範囲で使用される。電荷輸送物質とバインダー樹脂の含有割合は、バインダー樹脂100質量部に対して、電荷輸送物質30質量部以上が好ましく、40質量部以上が特に好ましい。また、80質量部以下が好ましく、60質量部以下が特に好ましい。
積層型感光層における電荷輸送層の場合と同じく、バインダー樹脂の含有割合が大きくなりすぎると電気特性が悪くなる場合がある。また、電荷輸送物質は、通常バインダー樹脂と相溶性があるため、電荷輸送物質の含有割合が大きくなりすぎると、感光層の機械的強度が低下する場合がある。更に、単層型感光層には、積層型感光層における電荷輸送層に配合できるものと同様の添加剤が使用できる。
所定の成分を配合して得られた塗布液を、下引き層上に塗布、乾燥し、単層型感光層を形成するが、その膜厚は、通常2μm〜70μm、好ましくは10μm〜45μm、特に好ましくは20μm〜35μmである。
[[感光層一般の製造方法等]]
上記各層を塗布する際に使用される溶媒、分散媒としては、ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、1,2ージクロルエタン、1,2ージクロルプロパン、1,1,2−トリクロルエタン、1,1,1−トリクロルエタン、トリクロルエチレン、テトラクロルエタン、ジクロルメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブ等が挙げられる。これらの溶媒は、1種類単独で使用してもよく、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
感光層の塗布形成方法としては、電子写真感光体の感光層を塗布形成するのに通常用いられる、スプレー塗布法、バーコーター法、ブレード法、ロールコーター法、ワイヤーバー塗布法、ナイフコーター塗布法、スパイラル塗布法、リング塗布法、浸漬塗布法、スピンナー塗布法等、何れの塗布方法も用いることができる。塗布液を塗布後、乾燥することにより感光層を得る。
スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送する方法を用いることにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機又はカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等が用いられる。
浸漬塗布法としては、一例としては以下のような電荷輸送層の塗布形成手順が挙げられる。電荷輸送物質、バインダー樹脂、溶剤等を用いて、全固形分濃度が好ましくは15質量%以上、特に好ましくは40質量%以下であって、粘度が好ましくは50センチポアーズ以上、特に好ましくは100センチポアーズ以上、好ましくは700センチポアーズ以下、特に好ましくは500センチポアーズ以下の電荷輸送層形成用の塗布液を調製する。ここで実質的に塗布液の粘度はバインダー樹脂の分子量により決まるが、前記した通り、分子量が低すぎる場合には感光層の機械的強度が低下するため、これを損なわない程度の分子量を持つバインダー樹脂を使用することが好ましい。このようにして調製された塗布液を用いて浸漬塗布法により電荷輸送層等の感光層が形成される。
その後、塗膜を乾燥するが、必要かつ充分な乾燥が行われる様に、乾燥温度、乾燥時間を調整する。乾燥温度は、通常100〜250℃、好ましくは110〜170℃、更に好ましくは115〜140℃の範囲である。乾燥方法としては、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機、遠赤外線乾燥機等を用いた方法を挙げることができる。
更に、電子写真用感光体の感光層は、単層型でも、機能分離した積層型でも、成膜性、可とう性、塗布性、機械的強度を向上させるために周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤を含有していてもよい。更に、感光層の上に、機械的特性の向上及びオゾン、NOx等の耐ガス特性向上のために、オーバーコート層を用いても良い。更に必要に応じて、接着層、中間層、透明絶縁層等を有していてもよいことはいうまでもない。
<作用・原理(理由)>
本発明の製造方法で、高固形分濃度でも良好な塗布液が得られる作用・原理(理由)は定かではなく、また以下の理由に本発明は限定されるものではないが以下のように考えられる。本発明では、固体のバインダー樹脂を予め溶媒で溶解した樹脂液と、固体のバインダー樹脂の状態のままのものに分割することができるので、背景技術に記載した(1)の方法と比較して、粒子を分散するのに多くの溶媒を使用することができて、良好なスラリーを得ることができたものと考えられる。
また、スラリーとバインダー樹脂溶解液が混合されるので、粒子にバインダー樹脂がある程度吸着され立体安定化されるため、その後、加熱攪拌しても、背景技術に記載した(3)の方法と比較して、熱凝集が起こりにくいため良好な塗布液が得られたものと考えられる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例の具体的態様には限定されない。なお、文中「部」とは、「質量部」を表す。また、「アルコール混合溶媒」とは、メタノール/n−プロパノール=7/3(質量比)を表すものとする。
実施例1
アルコール混合溶媒80部に対して、石原産業製酸化チタンTTO55N(ルチル型,平均1次粒子径40nm)を20部添加して、ボールミルで16時間分散混合を行った後、アルコール混合溶媒を20部添加し、更にボールミルを1時間行った後、酸化チタン粒子分散スラリー84部を取り出した。ボールミルのボールはφ5mmのアルミナボールを用いた。
バインダー樹脂としては、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる、数平均分子量13000のランダム共重合ポリアミド樹脂を用いた。
Figure 0005151060
上記酸化チタン粒子分散スラリーを、上記共重合ポリアミド樹脂ペレット1部を混合アルコール溶媒9部に溶解した液に加え、室温下で攪拌混合を行った。
その後、その混合溶液を攪拌しながら、室温下で、更に上記した共重合ポリアミド樹脂ペレットを6部添加し、60℃まで加温し、60℃で90分間加熱攪拌し、酸化チタン/共重合ポリアミド樹脂=2/1(質量比)で、固形分濃度が21質量%(酸化チタン14質量%、共重合ポリアミド樹脂7質量%、混合アルコール溶媒79質量%)の最終塗布液を製造した。
上記の方法で、10回調液を行ったところ、10回とも良好な塗布液が得られた。
比較例1
アルコール混合溶媒80部に対して、実施例1と同様の酸化チタン20部を添加して、実施例1と同様の条件で、ボールミルで16時間分散混合を行った後、アルコール混合溶媒を20部添加し、更にボールミルを1時間行った後、酸化チタン粒子分散スラリー84部を取り出した。
このスラリーに、更に混合アルコール溶媒を9部添加した。その液に室温下で攪拌しながら、前記の共重合ポリアミド樹脂ペレット7部を、実施例1と同様の方法で添加し、その後60℃まで加温し、60℃で90分間加熱攪拌を行い、酸化チタン/共重合ポリアミド樹脂=2/1(質量比)で、固形分濃度が21質量%(酸化チタン14質量%、共重合ポリアミド樹脂7質量%、混合アルコール溶媒79質量%)の最終塗布液を製造した。
上記方法で10回、調液したところ、8回は、良好な塗布液が得られた。しかし、2回は、塗布液の分散性が悪く、1日後には塗布液はゲル化していた。実施例1の塗布液の最終組成は、比較例1と全く同じであるにもかかわらず、実施例1の製造方法で得られた塗布液は、粒子(酸化チタン)の分散性が、比較例1のそれに比較して、極めて良好であった。
比較例2
実施例1の組成の塗布液を製造するのに、背景技術に記載した(1)の塗布液製造方法で、チタニア分散スラリーを上記と同じ組成で製造したところ、樹脂液は、上記共重合ポリアミド樹脂ペレット7部を混合アルコール溶媒9部に溶解させないといけないことになるが、この組成では、該ポリアミド樹脂は溶解しなかった。また、該ポリアミド樹脂を溶解できるように、ボールミルに添加する溶媒の方を減らすと、スラリー粘度が上昇し、スラリー取り出し収率が非常に悪くなった。
よって、背景技術に記載した(1)の方法では、この組成の塗布液は、現実的には、製造できないことが分かった。
参考例1
アルコール混合溶媒80部に対して、実施例1と同様の酸化チタン20部添加して、実施例1と同様の条件で、ボールミルで16時間分散混合を行った後、アルコール混合溶媒を20部添加し、更にボールミルを1時間行った後、酸化チタン粒子分散スラリー48部を取り出した。
このスラリーを、予め上記共重合ポリアミド樹脂ペレット4部を混合アルコール溶媒48部で溶解した共重合ポリアミド樹脂溶解液に室温下で攪拌混合を行い、酸化チタン/共重合ポリアミド樹脂=2/1(質量比)で、固形分濃度12質量%(酸化チタン8質量%、共重合ポリアミド樹脂4質量%、混合アルコール溶媒88質量%)の最終塗布液を製造した。
上記の方法で、10回調液を行ったところ、10回とも良好な塗布液が得られた。
参考例1は、実施例1、比較例1と比較して、固形分濃度が低いため、上記の酸化チタン、上記のポリアミド樹脂、上記の混合アルコール溶媒の組み合わせでは、本発明の方法で塗布液を製造しなくても、背景技術に記載した従来方法(1)で、無理なく製造できるため、良好な塗布液が得られたものと考えられる。つまり、本発明の塗布液の製造方法は、固形分濃度が大きい時に特に有効に働く。
応用例1
実施例1で製造した最終塗布液を用いて、表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ254mm、肉厚1.0mmのアルミニウム製シリンダーに浸漬塗布し、その乾燥膜厚が1.2μmとなるように下引き層を設けた。この下引き層は均一に塗布されており、酸化チタンの凝集も見られなかった。また、これを用いて得られた電子写真感光体は絶縁破壊を起こさず、画質が良好であった。
本発明の塗布液の製造方法は、少なくともバインダー樹脂と粒子を含有する塗布層を必要とする全ての分野で用いられるものであり、例えば、電子写真感光体の感光層や下引き層、無機触媒粒子含有層、電子ペーパー用ブロッキング層、各種配管やタンク用等金属材料の被覆用塗布層等用の塗布液の製造方法として広く好適に用いられるものである。

Claims (6)

  1. 少なくとも、バインダー樹脂としてアルコール可溶性ポリアミド樹脂と、金属酸化物粒子と、アルコール溶媒とを含む塗布液の製造方法であって、
    金属酸化物粒子を該アルコール溶媒中に分散したスラリーであって、該スラリー全体に対して、該金属酸化物粒子を10質量%〜70質量%で含有したスラリー
    塗布液の最終組成における全該バインダー樹脂に対して、10〜70質量%の該バインダー樹脂を該アルコール溶媒中に溶解した液、及び、
    固体の該バインダー樹脂
    を混合することを特徴とする塗布液の製造方法。
  2. 少なくとも、バインダー樹脂としてアルコール可溶性ポリアミド樹脂と、金属酸化物粒子と、アルコール溶媒とを含む塗布液の製造方法であって、
    金属酸化物粒子を該アルコール溶媒中に分散したスラリーであって、該スラリー全体に対して、該金属酸化物粒子を10質量%〜70質量%で含有したスラリー
    塗布液の最終組成における全該バインダー樹脂に対して、10〜70質量%の該バインダー樹脂を該アルコール溶媒中に溶解した液、及び、
    固体の該バインダー樹脂
    を混合し、その後に加熱することを特徴とする塗布液の製造方法。
  3. 該バインダー樹脂を該アルコール溶媒中に溶解した液において、溶液全体に対して該バインダー樹脂の濃度が、3質量%〜30質量%である請求項1又は請求項2に記載の塗布液の製造方法。
  4. 該塗布液の固形分濃度が20質量%以上である請求項1ないし請求項の何れかの請求項に記載の塗布液の製造方法。
  5. 該塗布液が、電子写真感光体製造用のものである請求項1ないし請求項の何れかの請求項に記載の塗布液の製造方法。
  6. 該塗布液が、電子写真感光体の下引き層用のものである請求項1ないし請求項の何れかの請求項に記載の塗布液の製造方法。
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