JP5148244B2 - 昇圧回路および電源装置 - Google Patents
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例えば、ハイブリッド自動車は、駆動源として内燃機関(エンジン)と、電気モータとを併用することにより、燃料の消費率を低減し、低燃費を実現可能な自動車である。
このようなハイブリッド自動車については、近年、低燃費を実現するのみでなく、走行性能を高めることにも市場の要求が拡大している。このため、電気モータの出力向上を図ることによって走行性能を高めるべく、電気モータを駆動する電圧の高電圧化が望まれている。
そこで、搭載されたバッテリの電圧を昇圧することにより、電気モータに高電圧を印加することができる昇圧回路を備えたハイブリッド自動車が実用化されている。この昇圧回路は、バッテリと、車両駆動用モータに交流電力を供給するインバータとの間に設けられている。
したがって、スイッチのON/OFF(スイッチング)を高い周波数で繰り返すことにより、インバータに対して高電圧を連続的に出力することができる。
このような従来の圧粉磁心には、一般に、結晶質の軟磁性粉末が用いられている。
しかしながら、スイッチングの周波数が高くなると、リアクトルの磁心に渦電流が発生する。磁心に渦電流が流れると、ジュール熱による発熱を生じ、リアクトルの温度が急激に上昇する。このため、リアクトルの温度が高くなり過ぎて、磁心の磁気特性が低下するばかりでなく、磁心が変質・劣化し、リアクトルとしての機能が損なわれるおそれがある。
したがって、従来の昇圧回路では、この発熱を考慮して、定期的に通電を止めることによって、リアクトルの温度が耐熱温度以上にならないよう制御されている。このため、インバータに対して、高電圧を連続的に印加することができないという問題がある。
しかしながら、珪素鋼板は、最大透磁率が非常に高いという特徴を有する。このため、珪素鋼板を複数枚積層して磁心を形成した場合、低磁場側では優れた特性を示すものの、中磁場または高磁場側では、珪素鋼板の透磁率が極めて低くなり、優れた特性が得られないという問題がある。
しかしながら、磁心のギャップにおいて磁束が漏れ出るおそれがあり、漏れ出た磁束が他の電子部品の誤作動を招いたり、鉄損の増大を招くおそれがある。
さらに、帯状のアモルファス金属(アモルファスリボン)を複数枚積層することにより形成した磁心も知られている。
このようなアモルファスリボンは、厚さが10〜30μmと非常に薄いため、複数枚のアモルファスリボンを緻密に積層する必要があり、多大な手間とコストを要している。また、リアクトルに通電したとき、アモルファスリボンの層間において、電磁騒音が発生するという問題もある。
本発明の昇圧回路は、直流電源と負荷との間に設けられ、前記直流電源と並列に接続されるスイッチと、
該スイッチの前記負荷側に設けられ、前記直流電源と並列に接続されるコンデンサと、
前記直流電源の正極側ラインのうち、前記スイッチと前記コンデンサとの間に直列に接続されるダイオードと、
前記直流電源の正極側ラインのうち、前記直流電源と前記スイッチとの間に直列に接続されるリアクトルと、を有し、
前記リアクトルの磁心は、最大粒径25μm以上150μm以下のFe−Si−B系アモルファス金属で構成され、かつ表面が無機バインダで被覆された軟磁性粉末を、前記無機バインダにより結着してなる加圧成形体であって、圧粉体密度が5.0〜6.0Mg/m 3 である加圧成形体で構成されており、
前記スイッチを開閉する際の周波数を5〜100kHzとし、電圧が100V以上の前記直流電源に接続して使用されるものであり、
前記直流電源の電圧を、時間的に連続して昇圧可能であることを特徴とする。
これにより、高電圧の直流電力を安定的かつ連続的に出力可能な昇圧回路が得られる。
また、前記軟磁性粉末をFe−Si−B系アモルファス金属で構成したことにより、前記磁心は、飽和磁束密度が高く、かつ、低磁場から高磁場まで比較的高い透磁率を示すものとなる。これにより、磁心およびリアクトルをより小型化することができる。
また、圧粉体密度を前記範囲内に設定したことにより、前記磁心は、80000A/mの高磁場においても、磁束密度が飽和しないものとなる。そして、このような磁心を備えた昇圧回路は、直流電源の電圧を、より安定的に昇圧可能なものとなる。
これにより、直流電源の電圧を、より幅広い昇圧比で安定的に昇圧することができる。
本発明の昇圧回路では、前記負荷の大きさによらず、前記直流電源の電圧を連続発振モードで昇圧可能であることが好ましい。
これにより、直流電源の電圧を、負荷に対して安定的かつ連続的に高電圧を印加することができる。
これにより、例えば、昇圧回路を、ハイブリッド自動車の車両駆動用モータに電力を供給する電源装置内に設けられる昇圧回路に適用した場合、より大電力を車両駆動用モータに供給することができ、ハイブリッド自動車の走行性能を高めることができる。
これにより、磁心の磁気特性が著しく低下するのを防止するとともに、熱による磁心の変質・劣化を確実に防止することができる。その結果、直流電源の電圧を、時間的に連続して昇圧可能な昇圧回路が得られる。
これにより、磁心が、ヒステリシス損失が小さく、80000A/mの高磁場においても、磁束密度が飽和しないものとなる。そして、このような磁心を備えた昇圧回路は、直流電源の電圧を、より安定的に昇圧可能なものとなる。
本発明の昇圧回路では、前記軟磁性粉末の最大粒径は、25μm以上53μm以下であることが好ましい。
これにより、磁心において、渦電流が流れる経路を特に短縮することができるため、渦電流損失のさらなる低減を図ることができる。
これにより、このような磁心を備えた昇圧回路は、高電流であっても、確実に昇圧可能なものとなる。
これにより、磁心は、低周波から高周波まで安定した透磁率を示すものとなる。したがって、このような磁心を備えた昇圧回路では、スイッチング周波数の設定値の幅を広くしても、確実に昇圧することができる。
これにより、磁束の漏れが少ない磁心が得られる。その結果、漏れ出た磁束が隣接する電子部品に悪影響を及ぼしたり、鉄損が増大したりするのを防止することができる。
また、これにより、磁心は、内部にギャップを有しないギャップレス構造となり、磁束の漏れをより確実に防止することができる。
本発明の昇圧回路では、前記直流電源は電圧が150V以上のものであることが好ましい。
前記直流電源から出力される電流のノイズを低減するノイズフィルタを有することが好ましい。
これにより、昇圧回路は、例えば、直流電源からスパイク成分を含む電流が供給された場合でも、スイッチが破壊されたり、昇圧回路の発振が不安定になるのを防止することができる。
前記直流電源に対してそれぞれ並列に接続された2つのコンデンサと、
該2つのコンデンサの前記直流電源側に、前記直流電源に対して並列に接続されたコモンモードチョークコイルと、
前記直流電源の正極側の経路のうち、前記2つのコンデンサの間に直列に接続されたノーマルモードチョークコイルとを有することが好ましい。
これにより、ノイズフィルタは、簡単な構成で、確実なフィルタリング作用を示すことができる。
本発明の昇圧回路では、前記スイッチが、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)または電界効果トランジスタ(FET)で構成されていることが好ましい。
これにより、比較的大きな電力のスイッチングを高速で行うことができる。その結果、昇圧回路に流れる電流の制御を、より高速かつ高精度に行うことができる。
該昇圧回路の入力側に接続されたバッテリとを有することを特徴とする。
これにより、より高い出力の直流電力を発生し得る電源装置が得られる。
本発明の電源装置では、さらに、前記昇圧回路の出力側に接続され、前記昇圧回路から出力された直流電力を交流電力に変換するインバータ部を有することが好ましい。
これにより、より高い出力の交流電力を発生し得る電源装置が得られる。
これにより、例えば、登坂路のような車両駆動用モータを長時間にわたって高い出力で駆動する必要があるときでも、休止させることなく、連続駆動が可能な電源装置が得られる。
本発明の昇圧回路は、各種昇圧回路のうち、特に昇圧チョッパ回路と呼ばれるものである。
<第1実施形態>
まず、本発明の昇圧回路および電源装置の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の昇圧回路とこの回路に接続された直流電源および負荷を示すブロック図、図2は、本発明の昇圧回路の第1実施形態を示す回路図、図3は、図2に示す昇圧回路が有するリアクトルを説明するための概略図である。
なお、直流電源Sとしては、例えば、バッテリ(一次電池または二次電池)、光電変換素子(太陽電池)、燃料電池等が挙げられる。
また、負荷Lは、いかなるものであってもよいが、本実施形態では、インバータINVが用いられている。さらに、インバータINVには、交流モータMが接続されている。
そして、昇圧回路1から出力された高電圧は、インバータINVによって交流に変換された後、交流モータMを高い出力で駆動することができる。
また、直流電源S、昇圧回路1およびインバータ(負荷L)で構成される一連の回路は、高出力の交流電力を発生し得る電源装置9を構成する。
また、直流電源Sと負荷Lとは、正極側ライン11および負極側ライン12の2本の経路によって電気的に接続されている。そして、昇圧回路1は、これらの各ライン11、12上に構築されている。
具体的には、昇圧回路1は、スイッチング素子(スイッチ)2、コンデンサ3、ダイオード4およびリアクトル5を有している。
図2に示すスイッチング素子2は、直流電源Sに並列に接続されており、正極側ライン11から負極側ライン12への電流のON/OFF制御を担っている。
このようなスイッチング素子2には、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)のようなバイポーラトランジスタ、金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)のような電界効果トランジスタ(FET)、サイリスタ、SCR等を用いることができる。
また、本実施形態にかかる昇圧回路1は、スイッチング素子2を跨ぐように設けられたコンデンサ25を有している。
このようなコンデンサ3には、例えば、図2に示すような電界コンデンサの他、フィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ等を用いることができる。
このようなダイオード4は、特に限定されず、整流作用のある各種素子で代替することもできる。
このうち、本発明では、圧粉磁心51が、アモルファス金属で構成された軟磁性粉末510をバインダ511で結着してなる加圧成形体で構成されている。
なお、リアクトル5については、後に詳述する。
図4は、図2に示す昇圧回路の動作原理を説明するための図である。
図4に示す昇圧回路1で、直流電源Sの電圧Viを昇圧して負荷Lに印加する場合、まず、スイッチング素子2を、所定の周波数でONとOFFとを繰り返すように操作する。
まず、スイッチング素子2をONにすると、図4(a)に示すように、昇圧回路1の正極側ライン11と負極側ライン12とが短絡し、リアクトル5を流れる電流が急激に立ち上がる。この電流は、リアクトル5に、逆方向への電流を増加させるように、逆起電力VLを誘起する。これにより、リアクトル5にエネルギーが蓄積される。
また、それとともに、電圧Vi+VLで、コンデンサ3が充電される。
その後、再び、スイッチング素子2をONにすると、リアクトル5に流れる電流が再び急激に立ち上がり、リアクトル5にエネルギーが蓄積される。
また、それとともに、図4(c)に示すように、コンデンサ3に充電されたエネルギーが、負荷Lに供給される。これにより、負荷Lには、電圧Vi+VLが印加される。
ここで、スイッチング素子2のONとOFFとを繰り返す周波数、すなわち、スイッチング素子2を開閉する際の周波数(スイッチング周波数)は、5〜100kHzとされる。このような高い周波数でスイッチング素子2をON/OFFすると、リアクトル5の圧粉磁心51には、短時間で変化する磁束が生じることとなる。
このような磁束の変化は、従来のリアクトルでは、磁心に大きな渦電流を発生させ、この渦電流によるジュール熱によって磁心の発熱を招いていた。そして、磁心の温度が高温になると、磁心の磁気特性が低下するばかりでなく、磁心が変質・劣化し、リアクトルとしての機能が損なわれるという問題が発生していた。
このような圧粉磁心51では、軟磁性粉末510の各粒子同士の間にバインダ511が介在することとなり、各粒子間の絶縁が確保される。その結果、圧粉磁心51では、発生する渦電流が各粒子間で分断されることとなるため、リアクトル5を、たとえ前述したような高い周波数で使用したとしても、渦電流損失によるジュール熱の発生を抑制することができる。その結果、圧粉磁心51の温度上昇を抑制することができる。
なお、スイッチング素子2を開閉する際の周波数は、好ましくは20〜50kHz程度とされる。
さらに、アモルファス金属は、保磁力が比較的小さい。このため、(a)アモルファス金属で構成された圧粉磁心51と、(b)Fe−Si系の結晶金属材料で構成された従来の圧粉磁心とについて、磁気特性(B−H特性)を評価すると、図5に示すように、従来の圧粉磁心に比べて、圧粉磁心51のヒステリシス損失を低減することができる。なお、図5は、前記(a)、(b)における磁化曲線(B−H特性)を示すグラフである。
また、スイッチング周波数が前記範囲のように大きいと、ON時間が短くなり、圧粉磁心51における磁束密度の変化量も小さくなる。そして、圧粉磁心51のヒステリシス損失を低減することができる。したがって、これらの作用により、昇圧回路1の無駄な電力消費を低減することができる。
なお、図6は、圧粉磁心51と、Fe−Si系の結晶金属材料粉末で構成された圧粉磁心(従来の磁心)と、珪素鋼板で構成された磁心(従来の磁心)とについて、印加する交流の周波数に対する各磁心の鉄損を示すグラフである。
また、昇圧回路1(本発明の昇圧回路)は、電圧が100V以上であるような高電圧を発生させる直流電源Sに接続されて使用される。
すなわち、従来の昇圧回路では、直流電源Sの電圧を前記範囲のように高くした場合、渦電流が大きくなるため、渦電流損失が著しく増大するという問題があった。このため、例えば、珪素鋼板のように、複数枚の金属板を積層して形成された従来の磁心では、金属板の厚さを薄くすることによって渦電流損失を低減する試みがなされているが、金属板の機械的強度および加工技術の限界から、金属板の厚さを十分に薄くすることができなかった。このため、珪素鋼板で構成された磁心に、前記範囲のような高電圧を印加した場合、リアクトルが極めて高温になってしまうという問題があった。
このような問題点を考慮して、従来の昇圧回路では、定期的に通電を止めることによって、リアクトルの温度が耐熱温度以上にならないよう制御されていた。このため、従来の昇圧回路では、時間的に連続して昇圧を行うことができなかった。
なお、直流電源Sの電圧は、好ましくは150V以上とされる。また、直流電源Sの電圧の上限値は、特に限定されないが、好ましくは1000V以下とされる。
ここで、図7(a)は、図2に示す昇圧回路1(本発明の昇圧回路)が備えるスイッチング素子2を前記範囲の周波数で開閉したときに、リアクトル5に流れる電流波形の一例を示している。
また、図7(b)は、図2に示すリアクトル5を、複数枚のアモルファスリボンを積層することにより形成した磁心を備えたリアクトルで置き換えた昇圧回路(従来の昇圧回路)のスイッチング素子を、前記範囲の周波数で開閉したときに、リアクトル5に流れる電流波形の一例を示している。
これに対し、図7(a)に示す本発明の昇圧回路の場合、昇圧回路1を流れる平均電流の大きさによらず、すなわち、負荷Lが重負荷および軽負荷にかかわらず、リアクトル5に流れる電流は途切れることなく流れ続けることができる。これは、アモルファス金属で構成された軟磁性粉末510を含む圧粉磁心51を有するリアクトル5では、負荷が軽くなるにつれて、そのインダクタンスが大きくなる現象が発現するためである。リアクトル5のインダクタンスが大きくなると、リアクトル5に流れる電流の波形に重畳していた高周波リップルの高さが低くなる。このため、電流が一時的に0になる時間帯がなくなって、昇圧回路1は連続発振モードを維持することができる。
なお、上記の重負荷とは、例えば、負荷Lの最大負荷の50%以上のことを言い、上記の軽負荷とは、例えば、負荷Lの最大負荷の50%未満のことを言う。
また、スイッチング素子2を開閉する際の周波数を、前述したような比較的高い周波数に設定すれば、スイッチング素子2のON時間およびOFF時間をそれぞれ短くすることができ、それに伴って高周波リップルの時間幅を小さくすることができる。これにより、高周波リップルの高さが小さくなる。このような作用によっても、昇圧回路1が間欠発振モードに移行するのが防止され、連続発振モードを確実に維持することができる。
なお、前記ONデューティが前記上限値を上回った場合、スイッチング素子2を流れる電流量が大きい場合には、スイッチング素子2をONからOFFに切り替えた際に、電流を確実に遮断することができなくなるおそれがある。
また、アモルファス金属で構成された軟磁性粉末510を用いることにより、磁気特性が同一であれば、珪素鋼板で構成された従来の磁心に比べて、圧粉磁心51の体積を大幅に小さくすることができる。これにより、リアクトル5および昇圧回路1の大幅な小型化を図ることができる。
図3に示すリアクトル5は、前述したように、トロイダル形状をなす圧粉磁心51を有する。トロイダル形状の磁心は、その他の形状の磁心に比べて磁束の漏れが少ない。このため、漏れ出た磁束が隣接する電子部品に悪影響を及ぼしたり、鉄損が増大するのを防止することができる。
圧粉磁心51は、各種成形方法により成形することができるが、例えば、プレス成形法、射出成形法、押出成形法等の方法により成形することができる。
ここでは、一例として、プレス成形法により圧粉磁心51を作製する方法について説明する。
ここで、軟磁性粉末510を構成するアモルファス金属としては、例えば、Fe−Si−B系、Fe−B系、Fe−Si−B−C系、Fe−Si−B−Cr系、Fe−Si−B−Cr−C系、Fe−Co−Si−B系、Fe−Zr−B系、Fe−Ni−Mo−B系、Ni−Fe−Si−B系等の各アモルファス金属が挙げられる。
これらの中でも、特に、Fe−Si−B系アモルファス金属が好ましい。Fe−Si−B系アモルファス金属は、保磁力が小さいものである。このため、圧粉磁心51のヒステリシス損失の低減を図ることができる。
また、このようなFe−Si−B系アモルファス金属は、Feを主成分とし、Siを4〜9重量%程度の含有率で含みBを1〜5重量%程度の含有率で含むものが好ましく、Feを主成分とし、Siを4.5〜8.5重量%程度の含有率で含み、Bを2〜4重量%程度の含有率で含むものがより好ましい。このような組成のFe−Si−B系アモルファス金属は、保磁力が特に小さいため、圧粉磁心51のヒステリシス損失を特に小さくすることができる。
このような軟磁性粉末510は、いかなる方法で製造されたものでもよいが、例えば、アトマイズ法、冷却ロール法等の方法で製造されたものを用いることができる。
アトマイズ法は、溶融物(溶湯)を、冷却媒(液体やガス等)に衝突させることにより粉末化する方法である。溶湯は、噴霧されたり、冷却媒と衝突させることにより、微細な液滴となるとともに、この液滴が冷却媒と接触することにより急速に冷却され固化する。このとき、液滴の冷却が極めて急速に行われるため、各原子が液体状態の無秩序な原子配置を保存したまま固化に至る。その結果、アモルファス金属で構成された軟磁性粉末を効率よく製造することができる。
なお、アトマイズ法としては、例えば、水アトマイズ法、高速回転水流アトマイズ法、ガスアトマイズ法、真空溶解ガスアトマイズ法、ガス−水アトマイズ法、超音波アトマイズ法等が挙げられる。
さらに、軟磁性粉末510の粒径が前記範囲内であれば、負荷が軽くなったとき、リアクトル5のインダクタンスがより大きくなるので、高周波リップルの高さをより低くすることができる。
これらの中でも、バインダ511としては、特に、無機バインダを用いるのが好ましい。これにより、圧粉磁心51の耐熱性を高めることができる。
また、軟磁性粉末510の各粒子の表面をバインダ511で被覆する方法としては、特に限定されないが、例えば、ボールミルのような各種混合法や、噴霧法、転動法、転動流動法のような各種造粒法等を用いるようにすればよい。
ここで、プレス成形の際の荷重は、プレス成形後の圧粉体の密度が5.0〜6.0Mg/m3になるように調整されるのが好ましい。この場合、事前に、荷重を何段階かに変えてプレス成形を行い、得られた圧粉体の密度を測定することにより、プレス成形の荷重と圧粉体の密度との関係を把握しておけばよい。
なお、圧粉体の密度が前記下限値を下回った場合、圧粉磁心51の透磁率が全体的に低くなりすぎるおそれがある。一方、圧粉体の密度が前記上限値を上回った場合、高磁場側において磁束密度が飽和してしまい、透磁率が小さくなるおそれがある。
この熱処理の条件は、温度が400〜500℃で、10〜30分間程度であるのが好ましい。このような条件で圧粉体に熱処理を施すことにより、ヒステリシス現象をほとんど示さない圧粉磁心51が得られる。したがって、このような圧粉磁心51は、ヒステリシス損失が特に抑制されたものとなる。
また、熱処理を行う雰囲気は、前述したように、非還元性雰囲気中とされるが、この非還元性雰囲気としては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスのような不活性雰囲気、大気(空気)、酸素ガスのような酸化性雰囲気等が挙げられる。
なお、本実施形態では、圧粉磁心51の形状がトロイダル形状である場合について説明したが、これに限定されず、圧粉磁心51の形状は、例えば、平面視で、楕円形、長円形のような閉磁路形状のほか、略I字状、略T字状、略E字状、略U字状等の形状であってもよい。
この場合、例えば、2個の略U字状の磁心または2個の略E字状の磁心を、リング状になるように、または、8の字状になるように、それぞれ組み合わせることにより、閉磁路を形成するのが好ましい。このようにすれば、磁束が漏れ出るのを抑制することができ、圧粉磁心51の鉄損の低減を図ることができる。
また、以上のような昇圧回路1を備えた電源装置9は、昇圧回路1を省略した場合に比べ、より高い出力の交流電力を発生し得るものとなる。
このような電源装置9によれば、電圧を上昇させるため、出力が一定であれば、電流が減少するため導線部での損失が増大するのを防止することができる。これにより、電源装置9の効率を高めることもできる。
さらに、電源装置9によれば、ハイブリッド自動車の車両駆動用モータを低出力で駆動する場合、すなわち、軽負荷に対する電力供給を行う場合でも、昇圧回路1が間欠発振モードに陥ることなく、安定的に高電圧の電力を供給することができる。
次に、本発明の昇圧回路および電源装置の第2実施形態について説明する。
図8は、本発明の昇圧回路の第2実施形態を示す回路図である。
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態にかかる昇圧回路との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
すなわち、図8に示す昇圧回路10は、前記第1実施形態にかかる昇圧回路1と同様の回路構成を有し、この回路構成と直流電源Sとの間に、直流電源Sと並列に接続されたノイズフィルタ6を備えている。
このようなノイズフィルタ6は、2つのコンデンサ61、62と、コモンモードチョークコイル63と、ノーマルモードチョークコイル64とを有している。
このうち、2つのコンデンサ61、62は、直流電源Sと並列に接続されている。
また、コモンモードチョークコイル63は、2つのコンデンサ61、62の直流電源S側に、直流電源Sと並列に接続されている。
さらに、ノーマルモードチョークコイル64は、正極側ライン11のうち、コンデンサ61とコンデンサ62との間に直列に接続されている。
そして、これを備えていることにより、昇圧回路10は、例えば、直流電源Sからスパイク成分を含む電流が供給された場合でも、スイッチング素子2が破壊されたり、昇圧回路10の発振が不安定になるのを防止することができる。また、図8に示す構成のノイズフィルタ6によれば、簡単な構成で、確実なフィルタリング作用を示す。
なお、以上のような第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
次に、電池パックシステムについて説明する。
この電池パックシステムは、本発明の昇圧回路を備えた電池(バッテリ)パックである。
図9は、この電池パックシステムを備えたハイブリッド自動車の実施形態を示す概略図(平面図)である。なお、ハイブリッド自動車とは、駆動源として内燃機関(エンジン)と、電気モータとを併用することにより、燃料の消費率を低減し、低燃費を実現可能な自動車である。
さらに、ハイブリッド自動車200は、電池パックシステム100の出力先であるインバータ210と、車両駆動用モータ220と、エンジン230とを有している。そして、車両駆動用モータ220およびエンジン230の駆動力は、ギア240を介して、車軸203および前輪201に伝達される。これにより、ハイブリッド自動車200が駆動される。
ここで、本実施形態では、電池パックシステム100がハイブリッド自動車200の車両後部に設けられている。そして、電池パックシステム100の出力は、配線160と車両前部に設けられたインバータ210とを介して、車両駆動用モータ220に供給されるよう構成されている。
このようなハイブリッド自動車200では、走行状態やアクセルの開度等の情報に基づいて、ECU250から、電池パックシステム100の制御部140を介して、電池パックシステム100から出力される直流の出力を制御する。これにより、エンジン230の出力と車両駆動用モータ220の出力とを協調して制御することができ、燃料消費率の低減を図ることができる。
ここで、従来は、ハイブリッド自動車の車両駆動用モータの最高出力に応じて、車両側に搭載された昇圧回路の設計を変更する必要があった。このため、新型のハイブリッド自動車を開発するたびに、自動車メーカー側では、昇圧回路を設計し直していた。
また、電池110と昇圧回路130とを同一のケース150内に同梱したことから、必然的に、電池110と昇圧回路130との間の配線115の長さも短くすることができる。配線115には、電池110から出力された昇圧前の比較的低電圧ではあるが、大電流が流れている。
これに対し、上記の電池パックシステム100によれば、配線115の長さを最小限に抑えることができるので、配線の重量を抑え、車両重量の増大を抑制することができる。
これに対し、電池パックシステム100によれば、昇圧回路130においてノイズが除去または抑制されるため、配線160にノイズが発生するのを抑制することができる。その結果、配線160の途中に接続されたコンバータ(図示せず)が、ノイズの影響によって故障するのを確実に防止することができる。
また、これにより、昇圧回路の分だけ、ハイブリッド自動車200の重心を後方に移動することができる。その結果、ハイブリッド自動車200の駆動性能をより高めることができる。
例えば、本発明の昇圧回路は、前記各実施形態にかかる回路構成に加え、任意の電子部品(ダイオード、コンデンサ、コイル、スイッチング素子等)を、1つ以上追加されたものであってもよい。
また、本発明の昇圧回路に接続される負荷Lは、前記各実施形態におけるインバータに限らず、例えば、直流モータのような直流で駆動し得る機器であってもよい。
1.圧粉磁心の成形条件の評価
1.1 圧粉磁心の作製
(サンプル1A)
<1>まず、Si:5.3重量%、B:3重量%、およびFe:残部と、不可避不純物とを含む組成であり、粒径が53μm以下のFe−Si−B系アモルファス磁性粉末(軟磁性粉末)を用意し、このアモルファス磁性粉末の表面を酸化ケイ素(SiO2)で被覆する処理を行った。
<3>次いで、得られた試験片に対し、大気雰囲気中で熱処理を施した。これにより、圧粉磁心を得た。なお、熱処理の条件は、450℃で20分間とした。
<4>次いで、得られた圧粉磁心に、導線を巻き回し、サンプル1Aのリアクトルを得た。
前記サンプル1Aの製造時に、試験片の密度が、それぞれ、5.0Mg/m3、5.5Mg/m3、6.0Mg/m3、6.2Mg/m3となるように成形条件を設定した以外は、前記サンプル1Aと同様にして、サンプル2A〜5Aのリアクトルを得た。
サンプル1A〜5Aのリアクトルについて、それぞれの磁化曲線(B−H特性)を評価した。評価結果を図10に示す。
図10から明らかなように、サンプル2A〜4Aのリアクトルは、80000A/mの高磁場においても、磁束密度が飽和せず、低磁場から高磁場まで安定した透磁率を示した。
一方、サンプル1Aのリアクトルは、透磁率が全体的に低くなり過ぎた。
また、サンプル5Aのリアクトルは、低磁場側での透磁率は高くなるものの、高磁場側では、磁束密度が飽和して透磁率が小さくなる。
2.1 リアクトルの作製
(サンプル1B)
<1>まず、Si:5.3重量%、B:3重量%、およびFe:残部と、不可避不純物とを含む組成であり、粒径が53μm以下のFe−Si−B系アモルファス磁性粉末(軟磁性粉末)を用意し、このアモルファス磁性粉末の表面を酸化ケイ素(SiO2)で被覆する処理を行った。
<3>次いで、得られた試験片に対し、大気雰囲気中で熱処理を施した。これにより、圧粉磁心を得た。なお、熱処理の条件は、450℃で20分間とした。
<4>次いで、得られた圧粉磁心に、導線を巻き回し、サンプル1Bのリアクトルを得た。
Fe−Si−B系アモルファス磁性粉末として、表1に示す粒径の粉末をそれぞれ用い、圧粉体の密度が表1に示す値になるように、プレス成形の荷重を調整してそれぞれプレス成形をした以外は、前記サンプル1Bの場合と同様にして、サンプル2B〜7Bのリアクトルを得た。
Fe−Si系の結晶質磁性粉末を用いた以外は、前記サンプル5Bの場合と同様にして、サンプル8Bのリアクトルを得た。
(サンプル9B)
圧粉磁心に代えて、珪素鋼板の磁心を用いた以外は、前記サンプル5Bの場合と同様にして、サンプル9Bのリアクトルを得た。
2.2.1 直流重畳特性の評価
次に、作製したサンプル1B〜9Bのリアクトルに対し、直流重畳特性を測定した。
この直流重畳特性の測定では、まず、各リアクトルのコイル(導線)に100kHzの交流を印加するとともに、200Aの直流電流を重畳した。そして、各リアクトルのインダクタンスを測定することにより、直流重畳特性を評価した。
評価結果を図11のグラフに示す。なお、図11のグラフの横軸は、直流重畳電流を示し、縦軸は、直流電流を重畳しない場合のインダクタンスを100%としたときの、インダクタンスの変化率を示している。
また、サンプル1B〜7Bにおいては、アモルファス磁性粉末の粒径が小さいほど、また、圧粉磁心の密度が低いほど、それぞれ高電流側でのインダクタンスの低下率が小さく、インダクタンスの安定性がより優れていた。
次に、作製したサンプル1B〜9Bのリアクトルに対し、透磁率−周波数特性を測定した。
この透磁率−周波数特性の測定では、各リアクトルのコイルに印加する交流の周波数を変化させたときの透磁率の変化を測定した。
測定結果を図12のグラフに示す。なお、図12のグラフの横軸は、コイルに印加する交流の周波数を示し、縦軸は、コイルに印加する交流の周波数が50Hzのときの透磁率を100%としたときの、透磁率の変化率を示している。
また、サンプル1B〜7Bのうち、アモルファス磁性粉末の粒径が106μm以下であるリアクトル(サンプル1B〜4B)では、それぞれ、100kHzにおける透磁率が、50Hzにおける透磁率の98%以上と特に高い値を示した。
3.1 昇圧回路および電源装置の作製
(実施例1)
次に、作製したサンプル1Bのリアクトルを、図8に示す回路中のリアクトルとして用いることにより、昇圧回路を得た。
また、図8に示すように、得られた昇圧回路の入力側に電圧200Vのバッテリ(直流電源)を接続し、昇圧回路の出力側にインバータを接続した。これにより、交流電力を出力する電源装置とした。
なお、スイッチング素子には、IGBTを用いた。
また、リアクトルのインダクタンスは、0.5mHであった。
サンプル2B〜7Bのリアクトルを用いた以外は、それぞれ、前記実施例1と同様にして、昇圧回路および電源装置を得た。
(比較例1〜2)
サンプル8B〜9Bのリアクトルを用いた以外は、それぞれ、前記実施例1と同様にして、昇圧回路および電源装置を得た。
次に、各実施例および各比較例で得られた電源装置の出力側に交流モータを接続した。そして、各電源装置について、30kHzの繰り返し周波数でIGBTのON/OFFを行い、各電源装置を運転して交流モータを回転させた。
なお、評価は、リアクトルに流れる電流が20Aになるよう運転した場合(重負荷)と、3Aになるよう運転した場合(軽負荷)とで、交流モータの回転の安定性と、リアクトルの表面温度とについて評価した。
一方、各比較例で得られた電源装置では、軽負荷のときに、交流モータの回転が不安定になった。また、運転中のリアクトルの表面温度が急激に上昇し、いずれも150℃を超えた。
通電終了後、リアクトルを確認したところ、磁心に変色が認められた。
Claims (18)
- 直流電源と負荷との間に設けられ、前記直流電源と並列に接続されるスイッチと、
該スイッチの前記負荷側に設けられ、前記直流電源と並列に接続されるコンデンサと、
前記直流電源の正極側ラインのうち、前記スイッチと前記コンデンサとの間に直列に接続されるダイオードと、
前記直流電源の正極側ラインのうち、前記直流電源と前記スイッチとの間に直列に接続されるリアクトルと、を有し、
前記リアクトルの磁心は、最大粒径25μm以上150μm以下のFe−Si−B系アモルファス金属で構成され、かつ表面が無機バインダで被覆された軟磁性粉末を、前記無機バインダにより結着してなる加圧成形体であって、圧粉体密度が5.0〜6.0Mg/m 3 である加圧成形体で構成されており、
前記スイッチを開閉する際の周波数を5〜100kHzとし、電圧が100V以上の前記直流電源に接続して使用されるものであり、
前記直流電源の電圧を、時間的に連続して昇圧可能であることを特徴とする昇圧回路。 - 前記スイッチを開閉する際のONデューティは、95%以下に設定される請求項1に記載の昇圧回路。
- 前記負荷の大きさによらず、前記直流電源の電圧を連続発振モードで昇圧可能である請求項1または2に記載の昇圧回路。
- 前記リアクトルのインダクタンスは、0.01〜5mHである請求項1ないし3のいずれかに記載の昇圧回路。
- 前記リアクトルの通電中の温度が、−40℃以上100℃以下に維持される請求項1ないし4のいずれかに記載の昇圧回路。
- 前記無機バインダは、酸化ケイ素である請求項1ないし5のいずれかに記載の昇圧回路。
- 前記磁心は、表面が前記無機バインダで被覆された前記軟磁性粉末を圧粉成形した後、非還元性雰囲気中において、400〜500℃の温度で10〜30分間の熱処理を施すことにより作製されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の昇圧回路。
- 前記軟磁性粉末の最大粒径は、25μm以上53μm以下である請求項1ないし7のいずれかに記載の昇圧回路。
- 前記磁心は、200Aの直流を重畳したときのインダクタンスが、直流を重畳しなかった時のインダクタンスの5〜20%となるものである請求項1ないし8のいずれかに記載の昇圧回路。
- 前記磁心は、100kHzの交流を印加したときの透磁率が、50Hzの交流を印加したときの透磁率の70%以上となるものである請求項1ないし9のいずれかに記載の昇圧回路。
- 前記磁心は、全体を一体的にトロイダル形状に成形することにより作製されたものである請求項1ないし10のいずれかに記載の昇圧回路。
- 前記直流電源は電圧が150V以上のものである請求項1ないし11のいずれかに記載の昇圧回路。
- さらに、前記直流電源の正極側とリアクトルとの間と、前記直流電源の負極側と前記スイッチとの間とに、前記直流電源と並列に接続され、
前記直流電源から出力される電流のノイズを低減するノイズフィルタを有する請求項1ないし12のいずれかに記載の昇圧回路。 - 前記ノイズフィルタは、
前記直流電源に対してそれぞれ並列に接続された2つのコンデンサと、
該2つのコンデンサの前記直流電源側に、前記直流電源に対して並列に接続されたコモンモードチョークコイルと、
前記直流電源の正極側の経路のうち、前記2つのコンデンサの間に直列に接続されたノーマルモードチョークコイルとを有する請求項13に記載の昇圧回路。 - 前記スイッチが、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)または電界効果トランジスタ(FET)で構成されている請求項1ないし14のいずれかに記載の昇圧回路。
- 請求項1ないし15のいずれかに記載の昇圧回路と、
該昇圧回路の入力側に接続されたバッテリとを有することを特徴とする電源装置。 - さらに、前記昇圧回路の出力側に接続され、前記昇圧回路から出力された直流電力を交流電力に変換するインバータ部を有する請求項16に記載の電源装置。
- 車両駆動用のモータに、前記昇圧回路の出力側を接続し、前記モータに電力を供給するのに用いられる請求項16または17に記載の電源装置。
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