JP4924986B2 - リアクトル用コア - Google Patents

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Description

本発明は、外周にコイルが配置されてリアクトルに用いられるコアに関するものである。特に、コア外部への漏れ磁束を低減することができるリアクトル用コアに関するものである。
近年、地球環境保護の観点からハイブリッド自動車が実用化されている。ハイブリッド自動車は、エンジン及びモータを駆動源として具え、その一方又は双方を用いて走行する自動車である。このようなハイブリッド自動車は、バッテリの直流をインバータで交流に変換し、その交流を走行用のモータに供給する。最近のハイブリッド自動車は、バッテリ及びモータの小型化のために昇圧コンバータを具えている。このコンバータは、バッテリの電圧を昇圧してインバータ(モータ)に供給する役割と、ジェネレータ(モータ)からの回生電流をバッテリ電圧に降圧し、バッテリに充電を行う役割を持つ。このコンバータの部品の一つに、電気エネルギーを磁気エネルギーとして蓄えられるリアクトルがある。
リアクトルは、磁性材料、代表的には電磁鋼板と呼ばれる珪素鋼板を積層してなるコアと、コアの外周に配されるコイルとを具える。コア100は、図7に示すように複数の分割片101a〜101dを組み合わせてなる環状のものが代表的である。珪素鋼は一般に比透磁率が高いため、電磁鋼板からなるコアは、磁気飽和し易い。そこで、磁気飽和し難くするために、分割片間に空隙(エアギャップ)を設けたり、ギャップ材を配することが行われている。図7に示すコア100は、コイルCが配置されてコイルCで覆われる分割片101a,101bと、コイルCが配置されず、コイルCで覆われない分割片101c,101dとの間にそれぞれ、アルミナといった非磁性材料からなるギャップ材102を介在させて環状に形成されている。なお、比透磁率μrとは、材料の透磁率μと真空の透磁率μ0との比率μ/μ0のことである(真空の透磁率μ0=4π×10-7H/m)。
しかし、ギャップがあると、ギャップに起因する漏れ磁束が生じる。そこで、漏れ磁束を低減するために、特許文献1は、高透磁率の珪素鋼板を用いず、低透磁率の圧粉磁性材料で分割片を作製し、分割片同士を接着剤で接合してなるギャップレス構造の環状コアを提案している。
特開2006-344868号公報
漏れ磁束は、コイルに侵入することで渦電流損などの損失を生じたり、リアクトルの周辺機器に影響を与えるなどの問題がある。従って、漏れ磁束は、できるだけ少ないことが望まれる。しかし、上記ギャップレス構造のコアでは、漏れ磁束の低減に限界がある。
図6は、ギャップレス構造の環状コアにおいて磁束の流れる状態を示す説明図である。例えば、コア110に配置される一方のコイルC1が生成する磁束は、理想的には、]状の破線矢印で示すように、コア110においてコイルC1内に挿入される部分(コイル配置部111a)を通過し、コイルCが配置されずに露出された部分(露出部111c)、他方のコイルC2内に挿入されるコイル配置部111b、別の露出部111dを順に経て、コイル配置部111aに戻る。他方のコイルC2が生成する磁束は、コイル配置部111b→露出部111d→コイル配置部111a→露出部111cを経て、コイル配置部111bに戻る。しかし、実際には、コイルが生成する磁束の一部は、一方のコイル配置部から他方のコイル配置部を通過する際、露出部を通らずに、コイル配置部と露出部で囲まれる空間(以下、内側空間と呼ぶ)を通ると考えられる。
コア110は、その全体を比透磁率が一様な低透磁率材料で形成していることから、コア110部分と、内側空間といったコア110外部との比透磁率の差が小さい。そのため、コア110部分と内側空間とにおいて、磁束の通り易さの差が小さくなる。つまり、全体を比透磁率が一様な高透磁率材料で構成されたコア100と比較すると、コア110は、内側空間に磁束が漏れる割合が大きくなり易い。そのため、磁束の一部は、一方のコイル配置部から他方のコイル配置部を通過するにあたり、露出部を介さず内側空間を介して通り易くなる。即ち、図6の直線状の破線矢印で示すように磁束の一部がショートカットするようになる。
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたもので、その目的の一つは、漏れ磁束を効果的に低減することができるリアクトル用コアを提供することにある。
本発明は、コア全体の比透磁率が一様な構成とするのではなく、比透磁率が部分的に異なる構成とすることで、上記目的を達成する。
本発明リアクトル用コアは、リアクトルを構成するコイルで覆われるコイル配置部と、コイルで覆われない露出部とを具える環状のコアであり、コイル配置部と露出部とがギャップを介することなく一体化されてなる。そして、コイル配置部においてコイルの両端部が配置される箇所は、コイルの中間部が配置される箇所よりも比透磁率が高い材料で構成されている。
本発明リアクトル用コアは、ギャップを介することなく一体化されたギャップレス構造であるため、ギャップに起因する漏れ磁束や騒音が実質的に生じない。
そして、本発明コアは、比透磁率が一様な磁性材料で全体を構成せず、比透磁率が部分的に異なるように構成される。特に、コイル内に配置されるコイル配置部において、コイルの両端部が配置される箇所は、コイルの中間部が配置される箇所よりも比透磁率が高い構成とする。コイルの端部側が配置される箇所、即ち、露出部との連結側部分の比透磁率が高いことから、コイル配置部と露出部との間で磁束が漏れ難くなる。そのため、コイルが生成する磁束は、一方のコイル配置部から他方のコイル配置部に通過する際、内側空間よりも露出部を通過し易くなる。従って、本発明コアは、全体が一様な低透磁率材料で構成された環状コア、即ち、全体の比透磁率が一様であるコアと比較して、コア外部への漏れ磁束を効果的に低減することができる。このような本発明コアは、漏れ磁束による損失やリアクトル周辺機器への影響を効果的に抑制することができる。また、本発明コアは、漏れ磁束を低減することで、コイルが発生した磁束を十分に活用することができる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明コアは、その外周に配されるコイルを励磁した際に閉磁路が形成される磁性部材であり、コイル配置部と露出部とが一体化されて環状に構成されている。代表的には、一対のコイル配置部と一対の露出部とを枠状に配置した構成が挙げられる。
本発明コアは、例えば、複数の分割片を形成し、分割片同士を接着剤やボルトなどの締結部材で接合することで得られる。分割片の区切りは、種々考えられる。特に、比透磁率が異なる箇所で分割すると、比透磁率が一様な材料で分割片を形成することができるため、製造性に優れる。例えば、コイル配置部と露出部とで比透磁率を異ならせる場合、それぞれを分割片とする。このとき、本発明コアは、四つの分割片から構成される(接合箇所:4つ)。また、コイル配置部は、比透磁率を部分的に異ならせるため、複数の分割片を一体にしてなる構成とすると、容易に製造することができる(詳細は後述する)。その他、コイル配置部を構成する少なくとも一部と一方の露出部とが一体のL字状分割片や]状分割片としてもよい。L字状分割片や]状分割片は、一様な材料で構成すると、製造が容易である。接着剤は、エポキシ系接着剤などが利用できる。
分割片同士を接着剤で接合すると、分割片の接合箇所に接着剤が介在される。接着剤は、通常非磁性であるが、ここでの接着剤はリアクトルのインダクタンスを調整するためのギャップ材ではなく、単に分割片同士を接合するものに過ぎない。そのため、本発明コアにおいて分割片間に接着剤が存在してもギャップを介することなく一体化されているものとする。
本発明コアを構成する各分割片は、圧粉成形体が挙げられる。圧粉成形体は、所望の三次元形状の分割片を容易に成形可能であり、材料や製造条件を調整することで、所望の特性を有する分割片が得られる。
特に、コイル配置部を構成する別の形態として、樹脂の成形硬化体が挙げられる。成形硬化体は、磁性粉末と流動性のある樹脂との混合体を成形し、得られた成形体の樹脂を硬化させたものであり、所望の三次元形状の分割片を容易に成形可能である。また、成形硬化体も、材料や製造条件を調整することで、所望の特性を有する分割片が得られる。
一方、露出部を構成する別の形態として、電磁鋼板を積層してなる積層体が挙げられる。電磁鋼板の比透磁率は、4000〜8000程度であることから、上記積層体から構成される露出部は、比透磁率が高くなる。なお、電磁鋼板のように高透磁率の磁性材料でコア全体を構成すると、ギャップレス構造とすることが難しい。
本発明コアは、ギャップレス構造が可能な磁性材料を用いて製造する。コア全体を比透磁率が低い一様な磁性材料で構成するとギャップレス構造が可能であるが、上述のように内側空間などのコア外部に漏れ磁束が生じ易くなる。そこで、本発明コアは基本的構成として、コイルが配置されるコイル配置部を比較的比透磁率が低い磁性材料で構成し、コイルが配置されない露出部を比較的比透磁率が高い磁性材料で構成し、本発明コア全体の平均透磁率(実効透磁率)が比較的低くなるように磁性材料を選択することが好ましい。具体的には、本発明コア全体の平均透磁率が比透磁率で5以上50以下であることが好ましい。
例えば、コイル配置部は、比透磁率が50以下の材料で構成し、露出部は、コイル配置部を構成する材料において、コイルの端部が配置される箇所、即ち、比透磁率が最も大きい箇所と同等以上の比透磁率を有する材料で構成することで、本発明コア全体の平均的な比透磁率を5〜50とすることができる。露出部を圧粉成形体で構成する場合、比透磁率:50〜500、電磁鋼板の積層体で構成する場合、比透磁率:4000〜8000であることが好ましい。
露出部は、その全体の比透磁率が均一的に構成されることが好ましい。このとき、露出部は、全体に亘って均一的に磁束が通ることができる。一方、コイル配置部は、コイルの中間部が配置される箇所を比透磁率が低い磁性材料で構成し、コイルの両端部が配置される箇所を比透磁率が高い磁性材料で構成する。特に、コイル配置部は、コイルの中間部が配置される箇所から、コイルの端部が配置される箇所に向かって連続的に又は段階的に比透磁率が高くなるように構成されることが好ましい。このようなコイル配置部を形成する具体的な手法として、以下の手法が挙げられる。いずれの手法の場合も、コアのサイズに応じて材料の透磁率を調整することができる。
<圧粉成形体の場合>
圧粉成形体は、通常、表面に絶縁被膜を具える軟磁性粉末とバインダ樹脂とを混合し、この混合粉末を成形後、絶縁被膜の耐熱温度以下で焼成することで得られる。そして、軟磁性粉末とバインダ樹脂との混合比を調整することで、比透磁率を調整可能である。具体的には、バインダ樹脂の配合量を増やすことで、磁束が通過する断面に対する磁性材料(軟磁性粉末)の割合を下げると、比透磁率は、小さくなる傾向にある。従って、バインダ樹脂の配合量を調整することで、比透磁率が5〜50である圧粉成形体を形成することができる。
このような圧粉成形体によりコイル配置部を形成する場合、例えば、バインダ樹脂の配合量を変化させた複数の比透磁率が異なる材料を用意して、各材料を用いて比透磁率が異なる複数の分割片を作製する。そして、これら比透磁率が異なる分割片を接合することで、コイルの中間部が配置される箇所よりもコイルの端部が配置される箇所の方が比透磁率が高いコイル配置部が得られる。また、分割片の比透磁率を順次変化させることで、比透磁率が段階的に異なるコイル配置部が得られる。比透磁率が異なる分割片数を多くすることで、比透磁率が連続的に異なるコイル配置部が得られる。
或いは、混合粉末を成形する際の圧力を変えることでも、圧粉成形体の比透磁率を部分的に異ならせることができる。圧粉成形体を作製する際、大きな成形圧力が加えられる箇所は、比透磁率が高くなる傾向にある。そこで、例えば、図1(I)に示すようにダイ200と上パンチ201・下パンチ202とを具える成形型であって、上下パンチ201・202が共に可動である場合、成形型に充填された材料においてパンチとの接触側(端面50eを形成する側)は、成形圧力が高く、パンチと接触しない中間部は、成形圧力が比較的低い。従って、図1(II)に示すように得られた圧粉成形体50の両端面50e側部分は、比透磁率が高く、中央部分50c(中心線Lcの近傍部分)は、比透磁率が低い。即ち、圧粉成形体50は、一方の端面50e側から中央部分50cに向かって順次比透磁率が低くなり、他方の端面50e側に向かって比透磁率が順次高くなる。このような圧粉成形体50をコイル配置部に利用する。この場合、コイル配置部を一つの分割片とすることができる。
或いは、上下パンチ201・202のうち、一方のパンチが固定、他方のパンチが可動である場合(図1(III)では下パンチ202が固定)、成形型に充填された材料において可動パンチ(上パンチ201)との接触側は、成形圧力が高く、固定パンチ(下パンチ202)との接触側は、成形圧力が比較的低い。従って、得られた圧粉成形体60において可動パンチに接した端面60e201側部分は、比透磁率が高く、固定パンチに接した端面60e202側部分は、比透磁率が低い。このような圧粉成形体60を二つ作製し、図1(IV)に示すように比透磁率が低い端面60e202同士を接合することで、一方の端面60e201側から中央部分(端面60e202同士の接合部分)に向かって順次比透磁率が低くなり、他方の端面60e201側に向かって順次比透磁率が高い接合体が得られる。このような接合体をコイル配置部に利用する。この場合、コイル配置部を二つの分割片で形成することができる。
一方、圧粉成形体により露出部を形成する場合、所望の比透磁率を有するように材料や成形圧力を調整するとよい。比透磁率が高い、特に、コイル配置部において最も比透磁率が高い箇所と同等以上の比透磁率を有する露出部を形成する場合、上述した軟磁性粉末とバインダ樹脂との混合粉末において軟磁性粉末の配合量を増やしたり、混合粉末の成形圧力を高くすることで、比透磁率を高くできる傾向にある。
なお、圧粉成形体は、焼成後にバインダ樹脂が残存し、この樹脂により軟磁性粉末同士が絶縁される。そのため、圧粉成形体からなる本発明コアは、リアクトルに用いた際、渦電流損失を低減することができ、コイルに高周波が通電される場合の使用に適する。
軟磁性粉末は、Fe,Co,Niといった鉄族金属粉末の他、Fe-Si,Fe-Ni,Fe-Al,
Fe-Co,Fe-Cr,Fe-Si-AlなどのFe基合金粉末、或は希土類金属粉末、フェライト粉末などが利用できる。このような粉末の作製法は、アトマイズ法(ガス又は水)や、機械的粉砕法が挙げられる。特に、結晶がナノサイズであるナノ結晶材料からなる粉末、好ましくは異方性ナノ結晶材料からなる粉末を用いると、高異方性で低保持力の分割片が得られる。軟磁性粉末に形成される絶縁被覆は、燐酸化合物、珪素化合物、ジルコニウム化合物又は硼素化合物などから構成されることが好ましい。バインダ樹脂は、熱可塑性樹脂、非熱可塑性樹脂、又は高級脂肪酸を利用することが好ましい。
<成形硬化体の場合>
成形硬化体を得る方法は、射出成形と注型成形とがある。射出成形は、通常、軟磁性粉末(必要に応じて更に非磁性粉末を加えた混合粉末)と流動性のあるバインダ樹脂とを混合し、この混合流体を、圧力をかけて成形型に流し込んで成形した後、バインダ樹脂を硬化させる。一方、注型成形は、射出成形と同様の混合流体を得た後、この混合流体を、圧力をかけることなく成形型に注入して成形・硬化させる。いずれの成形手法も、バインダ樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が好適に利用できる。バインダ樹脂に熱硬化性樹脂を用いた場合、成形体を加熱して樹脂を熱硬化させる。バインダ樹脂に常温硬化性樹脂或は低温硬化性樹脂を用いてもよく、この場合、成形体を常温〜比較的低温に放置して樹脂を硬化させる。その他、射出成形後に成形体を高温にて熱処理して、軟磁性粉末同士又は軟磁性粉末と非磁性粉末とを焼結させてもよい(MIM:Metal Injection Molding)。射出成形や注型成形を利用する場合も、焼結させない場合は、軟磁性粉末(非磁性粉末)とバインダ樹脂の配合を変えることで、焼結させる場合は、軟磁性粉末と非磁性粉末との配合を変えることで、分割片の比透磁率を調整できる。例えば、軟磁性粉末の配合量を減らすと、比透磁率は小さくなる傾向にある。
このような成形硬化体によりコイル配置部を形成する場合、例えば、上記配合を変化させた複数の比透磁率が異なる材料を用意して、各材料を用いて比透磁率が異なる複数の分割片を作製し、これら分割片を接合した接合体をコイル配置部に利用する。各分割片の比透磁率を調整することで、上記圧粉成形体の場合と同様に比透磁率が段階的又は連続的に異なるコイル配置部が得られる。
或いは、混合流体を成形型に充填した後、重力を用いて軟磁性粉末の密度分布を変化させることでも、成形硬化体の比透磁率を部分的に異ならせることができる。図1(V)に示すように、軟磁性粉末71がバインダ樹脂72に均一的に分散した混合流体70を成形型75に充填した直後は、均一的な分散状態が維持されている。しかし、時間が経るにつれ、図1(VI)に示すように、樹脂72より重い軟磁性粉末71が重力により沈下し、充填した混合流体70の下方側部分は、軟磁性粉末の密度が高く、同上方側部分は、密度が低くなる。このような密度が異なる状態で硬化させると、得られた成形体において軟磁性粉末の密度が高い一端側は、比透磁率が高く、同密度が低い他端側は、比透磁率が低くなる。このような成形硬化体を二つ作製し、密度(比透磁率)が低い端面同士を接合することで、一方の端面側から中央部分に向かって順次比透磁率が低くなり、他方の端面側に向かって順次比透磁率が高い接合体が得られる。このような接合体をコイル配置部に利用する。
露出部の構成材料の比透磁率は、コイル配置部においてコイルの端部が配置される箇所、即ち、コイル配置部において露出部との連結箇所の比透磁率と同等以上、特に2倍以上100倍以下であることが好ましい。2倍未満であると、漏れ磁束の低減効果が少なく、100倍超であると、露出部とコイル配置部との比透磁率の差が大き過ぎて、ギャップレス構造にし難くなることがある。
本発明リアクトル用コアは、コイル配置部の外周にコイルを配置してリアクトルとして好適に利用することができる。コイルは、巻線を巻回することで形成される。巻線は、代表的には絶縁被膜を有する金属線により構成される。金属線は、その断面形状が円形の他、四角形、六角形といった多角形など、種々の形状のものがあり、いずれの形状のものを用いてもよい。コイルの形態は、コイルが配されるコイル配置部の外形に適合した形態にする。上記金属線は、導電性が高い銅や銅合金からなるものが好ましく、上記絶縁被覆は、エナメルなどが挙げられる。
このようなコイルは、励磁した際のコイルの振動による騒音を低減するため、接着剤などを用いて本発明コアに固定することが好ましい。接着剤は、例えば、エポキシ樹脂やウレタン樹脂などが利用できる。
本発明コアと上記コイルとが接触する部分にインシュレータを配置したリアクトルとすると、コイルと本発明コアとの間をより確実に絶縁することができ、コイルに大電流が流れたとしても、絶縁破壊や渦電流の発生を防止できる。インシュレータを構成する絶縁材料は、例えば、PPS(Poly Phenylene Sulfide)やLCP(Liquid Crystal Polymer)などの樹脂が挙げられる。このような樹脂に、ガラス(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化チタンなどの無機充填剤を添加させて、熱伝導性を高めると、コイルの熱を本発明コアに伝え易く好ましい。無機充填剤の添加量は、適宜選択するとよい。このインシュレータは、分割片を組み合わせて一体となる構成とすると、本発明コアに配置し易く好ましい。
本発明リアクトル用コアを用いることで、リアクトルにおける漏れ磁束を低減することができる。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(実施例1)
図2は、環状のリアクトル用コアの一例を示す概略構成図である。このコア1は、磁性材料から構成され、コア1の外周の一部にコイルCが配置されてリアクトルに利用される。具体的には、コイルCで覆われる一対のコイル配置部11と、コイルCで覆われない一対の露出部12とから構成される。
コイル配置部11は、コイルCの内側に配されてコイルCで覆われる部分であり、露出部12は、コイルCが配されず露出される部分である。各コイル配置部11a,11b、及び各露出部12a,12bはそれぞれ、分割可能な分割片である。各分割片は、圧粉成形体から構成される柱状体である。コア1は、これら分割片同士を接着剤により接合して一体にしてなり、分割片間にギャップを有していないギャップレス構造である。具体的には、コイル配置部11a,11bの各端面にそれぞれ露出部12a,12bを接合して環状に構成される。
そして、コア1の最大の特徴は、コイル配置部11がその中央部分と、露出部12に連結される端部部分とで比透磁率が異なるように構成されている点にある。この例に示すコイル配置部11は、コイル配置部11の中心部分から露出部12側に向かうにつれて段階的に比透磁率が高くなる構成であり、露出部12の接合箇所近傍が最も比透磁率が高い。
コイル配置部11a,11bはそれぞれ、圧粉成形体からなる複数の分割片11anx(x=1,2,…,20)、11bnx(x=1,2,…,20)を接合してなる接合体である。各分割片11an1,11an2,…,11an20,11bn1,11bn2,…,11bn20は、磁性材料粉末に対するバインダ樹脂の割合を異ならせることで、比透磁率が異なるように作製している。分割片11an1〜11an10,11bn1〜11bn10は、xが大きくなるほど比透磁率が小さくなるように上記割合を調整して作製し、分割片11an11〜11an20,11bn11〜11bn20は、xが大きくなるほど比透磁率が大きくなるように作製している。11an1と11an20、11an2と11an19、…、11an10と11a11、及び11bn1と11bn20、11bn2と11bn19、…、11bn10と11bn11という各対は、比透磁率を等しくしている。
露出部12は、コイル配置部11において比透磁率が最も大きい対(x=1,20の分割片)よりも比透磁率が大きくなるように、上記磁性材料粉末に対するバインダ樹脂の割合を調整している。ここでは、上記対における同割合よりも小さくして、即ち、磁性材料粉末がより多くなるようにして露出部12を作製している。
このような分割片からなるコア1を用いてリアクトルを組み立てるには、以下のように行うとよい。まず、分割片11an1〜11an20,11bn1〜11bn20を作製して、コイル配置部11a,11bを形成しておく。また、巻線を巻回してなるコイルCを予め用意しておく。形成したコイル配置部11にコイルCを挿通させる。コイル配置部11は、コイルCよりも若干長く、両端がコイルCから突出する。なお、図2に示すコイルCは、断面矩形状の平角金属の巻線をいわゆるエッジワイズ巻きにして形成させたものであり、柱状のコイル配置部11に対応させて中空筒状としている。
次に、コイルCを配置した二つのコイル配置部11を並行するように配置し、各端面と露出部12とを接合して、コア1を形成する。このようにして環状のコア1を具えるリアクトルが得られ、コイル配置部11a→露出部12a→コイル配置部11b→露出部12bを順に通ってコイル配置部11aに戻る閉磁路が形成される。この閉磁路は、途中にギャップが形成されていない。
<試験例>
部分的に比透磁率が異なる上記コア1、及び比透磁率が一様である二つのコア(以下、比較コア100,110と呼ぶ)を作製し、各コア及びその近傍の磁束密度の分布状態を調べた。コア1及び比較コア110は、ギャップレス構造、比較コア100は、ギャップを有する構造とし、コア1,100,110のインダクタンスが等しくなるように比透磁率及びギャップを調整した。
[コア1]
軟磁性粉末として水アトマイズ純鉄粉(平均粒径100μm程度)を、バインダ樹脂としてポリエチレン(粉末)を用意する。この鉄粉とポリエチレンとを混合した混合粉末を作製する。混合粉末は、樹脂量比(樹脂の質量/樹脂と鉄粉との合計質量)を異ならせたものを10種類用意した。各混合粉末を所定の成形型に充填し、成形圧力980MPaで成形する。得られた各成形体を250℃×60分で熱処理して、圧粉成形体からなる分割片11an1〜11an20,11bn1〜11bn20を得る。なお、最も比透磁率が高い分割片(x=1,20)は、上記樹脂量比を2.5%とし、樹脂量比を徐々に大きくして最も比透磁率が低い分割片(x=10,11)の上記樹脂量比を11%とした。得られた分割片は、最も比透磁率が低い分割片(x=10,11)同士を接合し、得られた接合体の外側に2番目に比透磁率が低い分割片1(x=9,12)を挟むように配置してそれぞれ接合する。以降、順次比透磁率が高い分割片を得られた接合体に接合していき、最後に、18個の分割片からなる接合体を挟むように最も比透磁率が高い分割片(n=1,20)を配置してそれぞれ接合し、20個の分割片からなるコイル配置部11が得られる。
一方、樹脂量比が0.8%となるように鉄粉とポリエチレンとを混合した混合粉末を用いて、上記と同様の条件で成形、熱処理を行って圧粉成形体からなる一対の露出部を得る。
得られたコイル配置部及び露出部の比透磁率を測定したところ、コイル配置部は、以下の表1に示す通りであり、露出部の比透磁率は、200であった。比透磁率の測定は、理研電子株式会社製のBHトレーサを用いて行った。
得られたコイル配置部と露出部とを、ギャップを介することなく接合することで、図2に示すコア1が得られる。
[比較コア100]
樹脂量比が0.8%となるように鉄粉とポリエチレンとを混合した混合粉末を用いて、上記と同様の条件で成形、熱処理を行って圧粉成形体からなる一対のコイル配置部及び一対の露出部を得る。即ち、これらの分割片はいずれも樹脂量比が等しい材料からなる圧粉成形体で構成されている。この比較コア100について、コア1と同様にして比透磁率を測定したところ、比透磁率は200であった。
得られたコイル配置部と露出部とを、ギャップ材(比透磁率:1)を介して接合することで、図7に示す比較コア100が得られる。
[比較コア110]
樹脂量比が2.9%となるように鉄粉とポリエチレンとを混合した混合粉末を用いて、上記と同様の条件で成形、熱処理を行って圧粉成形体からなる一対のコイル配置部及び一対の露出部を得る。これらの分割片も、比較コア100と同様に、いずれも樹脂量比が等しい材料からなる圧粉成形体で構成されている。この比較コア110について、コア1と同様にして比透磁率を測定したところ、比透磁率は、31.07であった。
得られたコイル配置部と露出部とを、ギャップを介することなく接合することで、図6に示すような比較コア110が得られる。
得られた各コア1,100,110について、コイルCに通電した際のコア及びその近傍の磁束密度の分布状態を調べた。コア1の分布状態を図3に、比較コア110の分布状態を図4に、比較コア100の分布状態を図5に示す。磁束密度の分布は、磁束密度の大きさを色別(磁束密度が大きい順に赤,橙,黄,緑,水色,青)で表わすことが可能な公知のシミュレーションソフトを用いて求めた。図3〜5は、グレースケールで示すが、実際には上記色別がある。また、図5のコア内の実線は、磁束を示す。
図5に示すようにギャップを有する比較コア100は、ギャップ部分近傍が赤色〜橙色となっており、磁束密度が高く、漏れ磁束が多いと考えられる。また、比較コア100の周囲も橙色〜黄色〜緑色であり、磁束密度が比較的高く、漏れ磁束が多いと考えられる。特に、比較コア100で囲まれる内側空間にも磁束密度が高い部分が存在し、コイルへの影響があると考えられる。
これに対し、図4に示すようにギャップレス構造の比較コア110は、コア110外部において、赤色部分が実質的に無視できる程度に少ない。また、比較コア110は、内側空間及び周囲において緑色部分が多く、ギャップを有する比較コア100と比較して漏れ磁束が低減されていると考えられる。
但し、比較コア110の内側空間においてコイル配置部と露出部との境界近傍では、コイル配置部間が緑色であり、比較コア100と比較して磁束密度(漏れ磁束量)が低いものの、漏れ磁束があると考えられる。従って、磁束の一部が露出部を通過せず、内側空間を介してコイル配置部間を通過していると推測される。
これに対し、図3に示すように部分的に比透磁率が異なる材料から構成されるコア1は、内側空間に青色部分が多く、緑色が少なくなっている。従って、コア1は、上記比較コア110と比較して、内側空間を介してコイル配置部間を通過する磁束が低減されていると考えられる。また、コア1は、周囲が概ね青色であり、周囲への漏れ磁束が効果的に低減されていると考えられる。
なお、図3に示すモデルでは、コイル配置部において比透磁率が低い中央部分の外側に黄色部分が見られる。これは、このモデルの中央部分の比透磁率が10程度と低いことで生じたと考えられる。従って、比透磁率を調整する、具体的には10超と高くすることで、漏れ磁束を低減できると考えられる。そのため、コイル配置部は、比透磁率が10超〜100、特に10超〜50の範囲で連続的又は段階的に変化するように構成することが好ましいと考えられる。
以上のことから、コイル配置部に比透磁率が高い箇所と低い箇所とを具えるコア1は、コア1外部への漏れ磁束の低減効果が大きいと考えられる。特に、コイル配置部に比較して露出部の比透磁率を高くしたことで、漏れ磁束をより効果的に低減できると考えられる。従って、このようなコア1を具えるリアクトルは、漏れ磁束がコイルCに侵入することによる損失を効果的に低減することができると期待される。また、コア1は、漏れ磁束を低減できることから、コア1全体を有効に利用することができると考えられる。更に、コア1を具えるリアクトルは、ギャップレス構造であることから、ギャップの存在に伴う騒音や漏れ磁束の問題が実質的に生じない。
加えて、コア1は、内側空間における漏れ磁束を低減できるため、ギャップを有する比較コア100と比較して、コイルCをコア1により近づけて配置することができる。ここで、漏れ磁束がコイルに侵入すると、損失が生じ易いため、漏れ磁束の影響が及ばない程度にコイルをコアから離して配置することが望まれる。図5の比較コア100は、磁束密度が高い領域にコイルCの端部が配置されており、漏れ磁束の影響がコイルCに及ぶと考えられる。しかし、コイルCを比較コア100から離して配置すると、コイルCとコア100間の間隔が広くなるため、リアクトルの外寸が大きくなる。これに対し、コア1は、コイルとコア間の間隔を小さくしてもコイルCに漏れ磁束の影響が及び難く、リアクトルの外寸を小さくできる。従って、例えば、コア1を具えるリアクトルを昇圧コンバータに利用する場合、コンバータの構成部材中リアクトルはかなり大きな体積を占めることから、コンバータの設置スペースの削減に大いに寄与すると期待される。
(実施例2)
上記実施例1では、コイル配置部及び露出部の全てが圧粉成形体からなる構成を説明した。別の実施形態として、露出部が圧粉成形体からなり、コイル配置部が樹脂の硬化成形体からなる構成が挙げられる。このとき、硬化成形体の材料や製造条件を調整して、コイル配置部の比透磁率を調整する。
(実施例3)
更に、別の実施形態として、露出部が電磁鋼板を積層した積層体からなり、コイル配置部が圧粉成形体又は樹脂の硬化成形体からなる構成が挙げられる。いずれにしてもコイル配置部は、材料や製造条件を調整して比透磁率を調整する。
なお、上述した実施例は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、コイル配置部を構成する分割片数を変更してもよい。また、コイル配置部は、製造条件(特に、成形圧力)を調整することで、一つの分割片からなる構成とすることができる。
本発明リアクトル用コアは、ハイブリッド自動車や電気自動車などに搭載される昇圧コンバータに具えるリアクトルの磁性部材として好適に利用することができる。
部分的に比透磁率が異なるコイル配置部の作製方法を説明する説明図であり、(I)は、可動式の上下パンチを具える成形型の模式図、(II)は、得られたコイル配置部の模式図、(III)は、上パンチが可動式、下パンチが固定式の成形型の模式図、(IV)は、得られた分割片の模式図、及び分割片を接合してなるコイル配置部の模式図、(V)は、樹脂と磁性粉末との混合流体を成形型に充填した直後の状態を示す模式図、(VI)は、所定時間経過後の混合流体の状態を示す模式図である。 部分的に比透磁率が異なる磁性材料からなるギャップレス構造の環状のコアを模式的に示す概略構成図である。 部分的に比透磁率が異なる磁性材料からなるリアクトル用コア1の磁束密度の分布状態を示す分布図である。 一様な磁性材料からなるギャップレス構造の比較コア110の磁束密度の分布状態を示す分布図である。 一様な磁性材料からなり、ギャップを有する比較コア100の磁束密度の分布状態を示す分布図である。 一様な磁性材料からなるギャップレス構造の環状コアにおいて、磁束が通過する状態を模式的に示す説明図である。 ギャップを有する環状コアを模式的に示す概略構成図である。
符号の説明
1 リアクトル用コア 11,11a,11b コイル配置部
11an1〜11an20,11bn1〜11bn20 分割片 12,12a,12b 露出部
50,60 圧粉成形体 50e,60e201,60e202 端面 50c 中央部分
70 混合流体 71 軟磁性粉末 72 バインダ樹脂 75 成形型
C,C1,C2 コイル Lc 中心線
100,110 リアクトル用コア 101a,101b,101c,101d 分割片
102 ギャップ材 111a,111b コイル配置部 111c,111d 露出部
200 ダイ 201 上パンチ 202 下パンチ

Claims (8)

  1. リアクトルを構成するコイルで覆われるコイル配置部と、コイルで覆われない露出部とを具える環状のリアクトル用コアであって、
    このコアは、前記コイル配置部と前記露出部とがギャップを介することなく一体化されてなり、
    前記コイル配置部は、コイルの中間部が配置される箇所からコイルの両端部が配置される箇所に向かって連続的に又は段階的に比透磁率が高くなるように構成され、
    前記コイル配置部における最大の比透磁率よりも露出部の比透磁率が大きいことを特徴とするリアクトル用コア。
  2. 前記コイル配置部は、圧粉成形体であることを特徴とする請求項1に記載のリアクトル用コア。
  3. 前記コイル配置部は、磁性粉末と流動性のある樹脂との混合体を成形し、得られた混合成形体の樹脂を硬化させた成形硬化体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル用コア。
  4. 前記リアクトル用コア全体の平均透磁率が比透磁率で5〜50であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリアクトル用コア。
  5. 前記露出部は、前記コイル配置部においてコイルの端部が配置される箇所の比透磁率と同等以上の比透磁率を有する材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリアクトル用コア。
  6. 前記コイル配置部は、コイルの中間部が配置される箇所からコイルの両端部が配置される箇所に向かって多段階に比透磁率が高くなるように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のリアクトル用コア。
  7. 一対のコイル配置部と一対の露出部とを接合して矩形枠状に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のリアクトル用コア。
  8. 前記露出部の比透磁率が、コイル配置部における露出部との連結箇所の比透磁率の2倍以上100倍以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のリアクトル用コア。
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