JP2012169538A - 圧粉コア - Google Patents
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Abstract
【課題】ギャップを形成することのないリアクトル用の圧粉コアとして使用することができ、しかも圧粉成形の抜き出し時に割れが発生することのないリアクトル用の圧粉コアを提供することを課題とする。
【解決手段】鉄基合金粉末或いは純鉄粉でなる金属粉末と、酸化物粒子或いは炭酸塩粒子と、フェノール樹脂を混合して圧粉成形した圧粉コアであって、圧粉成形時の抜き出し方向の長さが10mm以上であると共に、成形体密度が4.5〜5.5g/cm3であり、成形体内に形成される空隙の体積率(空隙率)が10〜20%、前記フェノール樹脂の体積率が0.6〜3.5%である。
【選択図】 なし
【解決手段】鉄基合金粉末或いは純鉄粉でなる金属粉末と、酸化物粒子或いは炭酸塩粒子と、フェノール樹脂を混合して圧粉成形した圧粉コアであって、圧粉成形時の抜き出し方向の長さが10mm以上であると共に、成形体密度が4.5〜5.5g/cm3であり、成形体内に形成される空隙の体積率(空隙率)が10〜20%、前記フェノール樹脂の体積率が0.6〜3.5%である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ハイブリッド自動車などのインバータやコンバータの昇圧回路に使用されるリアクトルとして用いられる圧粉コアに関するものである。
ハイブリッド自動車は、作動原理が異なる二つ以上の動力源を持ち、状況に応じて単独、或いは複数の動力源で走行することができる自動車であり、エネルギー効率が電気自動車や燃料電池自動車と同程度であって、環境負荷が小さくしかも実用的であるという観点から、近年注目されており、実用化されている。
このハイブリッド自動車には、モータを制御するインバータが搭載されており、より高出力を出すためにバッテリー電圧を昇圧コンバータにより高電圧に変換してモータを駆動する昇圧コンバータ用のリアクトルが組み込まれている。
このリアクトルはコアの磁気飽和を回避し、大電流を流しても安定したインダクタンスを得ることが必要である。従来のリアクトルAは、図1および図2に示すように、電磁鋼板を積層した複数の分割コア1a、1bを、ギャップ2を介して一体に組み立ててなるコア1と、そのコア1の外周に巻き付けられたコイル3より形成されている。リアクトルAは、このコイル3により励磁することで、コア1を通る磁束経路を形成する。
このギャップ2は、リアクトルAのコア1に磁気飽和する箇所が生じないようにして透磁率を調整するもので、直流重畳時のインダクタンス特性を安定化するために設けるものである。このギャップ2は、例えば、分割コア1a,1a間及び分割コア1a,1b間に無機材料等で成る非磁性材料のスペーサ3を挟み込み、それら分割コア1a,1bとスペーサ4を接合することで、隣り合う分割コア1a,1a間及び分割コア1a,1b間に形成されている。
しかしながら、高透磁率材料のコア1ではギャップ2の寸法が微妙に変化してもインダクタンス特性が変動してしまう。従って、インダクタンス特性を安定化するためにはギャップ2の寸法を高精度に管理することが必要であり、高透磁率材料のコア1を用いたリアクトルAでは、高い寸法精度で加工されたスペーサ4を準備する必要があり、コスト上昇等の課題がある。
また、コイル3により励磁すると、コア1には電磁吸引力が作用することになるが、コア1はギャップ2で分断されて分割コア1a,1bとなっているため、電磁吸引力が作用すると、分割コア1a,1bと、ギャップ2を形成するためのスペーサ4との接合部で振動が発生する。すなわち、リアクトルAにギャップ2を形成すると、直流重畳時のインダクタンス特性が安定するという作用があるが、一方で分割コア1a,1bと、ギャップ2を形成するためのスペーサ4との接合部で振動が発生し、その振動を起因とする騒音がリアクトルAから発生するという問題がある。
これらの問題に対して、ギャップを形成することのない金属粉末製の磁心や、ギャップを形成することなくリアクトルのコア等の材料として使用することができるとした軟磁性複合材料等が、近年提案され始めている。
ギャップを設けることのないリアクトルのコアに好適とした軟磁性複合材料として、特許文献1により、比透磁率および飽和磁束密度が低い軟磁性複合材料が提案されており、また、特許文献2では、高圧に加圧しなくても得ることができる軟磁性複合材料が提案されている。
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の軟磁性複合材料は、そのいずれもが軟磁性粉末とその粉末を分散した状態で内包する樹脂とを有する複合材料であって、軟磁性粉末と液状の樹脂を混合したのちに、型に充填し、硬化させて成形体を得る必要があるために、多量の樹脂を使用する必要があり、その液状の樹脂の硬化時の寸法収縮などの影響を受け、寸法精度の管理が困難であると考えられる。
また、特許文献3により圧粉磁心の提案がされているが、この圧粉磁心はFe基である軟磁性粉末を主体として成る圧粉磁心において、軟磁性粉末のアスペクト比を1〜1.5、軟磁性粉末の体積比率を40〜60%とし、残部を絶縁バインダ(絶縁材料とバインダ成分)と空隙を主体としたものであり、その実施例にはバインダ成分として水ガラスを用いた例のみが記載されている。
更には、特許文献4として、鉄基合金粉末或いは純鉄粉でなる金属粉末本体と、その金属粉末本体の表面を被覆する絶縁被膜よりなる軟磁性複合材料用金属粉末であって、その絶縁被膜の膜厚が、金属粉末本体の平均粒子径の1/100以上、1/2以下であり、且つ、絶縁被膜が金属粉末を完成品とする過程で曝される温度で溶融・溶解しない材料で形成されている軟磁性複合材料用金属粉末と、その軟磁性複合材料用金属粉末に樹脂を加えて成形、加熱硬化させたその軟磁性複合材料が提案されている。
特許文献3記載の圧粉磁心、並びに特許文献4に記載の軟磁性複合材料用金属粉末を用いて作製されるコアは、樹脂などのバインダ成分と非導電材料(絶縁材料)を混合して圧粉成形することで作製される圧粉コアであるが、これらは所望の透磁率となる低密度成形体を得るためには、混合する樹脂量が多い、或いは多いと想定されるために、熱硬化させる際の樹脂軟化により形状の維持が難しく、また、高い寸法精度が得られにくいと考えることができる。
また、樹脂の量を減らすためには、樹脂と共に酸化物粉末などの非導電性のフィラーを混合することが考えられる。しかしながら、このような非導電性のフィラーを単に添加するだけでは、圧粉成形時の抜き出し方向の長さが長いコアを成形する場合に、金型から抜き出す際に、スプリングバックにより図3に示すような層状の割れが発生することがあり、健全な成形体を得ることが難しいと考えられる。
本発明は、上記従来の問題を解決せんとしてなされたもので、ギャップを形成することのないリアクトル用の圧粉コアとして使用することができ、しかも圧粉成形の抜き出し時に割れが発生することのないリアクトル用の圧粉コアを提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、鉄基合金粉末或いは純鉄粉でなる金属粉末と、酸化物粒子或いは炭酸塩粒子と、フェノール樹脂を混合して圧粉成形した圧粉コアであって、圧粉成形時の抜き出し方向の長さが10mm以上であると共に、成形体密度が4.5〜5.5g/cm3であり、成形体内に形成される空隙の体積率(空隙率)が10〜20%、前記フェノール樹脂が占める体積率が0.6〜3.5%であることを特徴とする圧粉コアである。
請求項2記載の発明は、透磁率が5〜50であることを特徴とする請求項1記載の圧粉コアである。
本発明の圧粉コアによると、ギャップを形成することのないリアクトル用の圧粉コアとして使用することができ、しかも圧粉成形の抜き出し時に割れが発生することがない。
本発明者らは、ギャップをなくしても優れた恒透磁率特性を有するリアクトル用のコアを作製することができる新規な材料を見出すため研究開発を始めた。近年、交流で使用されるモータなどの電磁気部品の磁心の材料等として使用実績がある軟磁性粉末をもとに作製した鉄基合金粉末或いは純鉄粉でなる金属粉末に着目し、鉄基合金粉末或いは純鉄粉でなる金属粉末の表面に絶縁被膜を形成し、その絶縁被膜の膜厚を適切に制御することで十分な粒子間距離が得られ恒透磁率特性を得ることができることが分かり、先に特許出願した(特許文献4)。
しかしながら、この軟磁性複合材料用金属粉末を用いて圧粉成形によりリアクトル用の圧粉コアを作製しても、圧粉成形後の抜き出し方向の長さが10mm以上ある圧粉コアの場合、圧粉成形後に金型から抜き出す際に、スプリングバックにより図3に示すような層状の割れが発生することがある。このような課題が残るため、圧粉成形の抜き出し時に割れが発生することのない新たなリアクトル用の圧粉コアを見出すため、更に研究開発を進めることとした。
その研究開発の結果、圧粉コアを、鉄基合金粉末或いは純鉄粉でなる金属粉末と、酸化物粒子或いは炭酸塩粒子と、フェノール樹脂とで作製し、混合するフェノール樹脂の量を極力低減すると共に、成形体内部の空隙率を適切な範囲に制御することで、圧粉成形の抜き出し時にスプリングバックが発生することを緩和でき、抜き出し時に割れが発生することのないリアクトル用の圧粉コアを得ることができることを知見し、本発明の完成に至った。
以下、本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。
リアクトルはコアの磁気飽和を回避し、大電流を流しても安定したインダクタンスを得ることが必要であるが、コアの磁気飽和を抑制するためには、コア材の透磁率を低く制御することが重要である。具体的には透磁率を10〜50程度に低く制御することが好ましい。
このように透磁率が低いコア材を得るためには、成形体密度をできる限り低密度にして成形することが不可欠である。具体的には、成形体密度を4.5〜5.5g/cm3の範囲とする必要がある。成形体密度が5.5g/cm3を超えた場合、前記したように透磁率が低いコア材を得ることができなくなる。一方、成形体密度が4.5g/cm3未満の場合は、金型での圧縮成形自体が困難になる。すなわち、保形性の極めて低い成形体となりハンドリングできなくなるか、或いは金型から抜き出した時点で成形体が崩壊する。
このように低密度の成形体を得るためには、金属粉末に非磁性・非導電性の材料を混合して成形体の体積を稼いだ上で、これらを結着させ成形体の機械的強度を得るためにバインダ成分を混合する必要がある。本発明では、金属粉末として鉄基合金粉末或いは純鉄粉を、非磁性・非導電性の材料として酸化物粒子を、バインダ成分としてフェノール樹脂を用いる。
金属粉末としては、純鉄粉のほか、Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイ等の軟磁性鉄基合金粉末を用いることができる。この金属粉末の粒子径は、渦電流損の観点から小さければ小さい方が良く、最大粒子径が300μm以下であることが望ましく、より望ましくは150μm以下、更に望ましくは75μm以下である。
バインダ成分としてフェノール樹脂は用いた理由は、フェノール樹脂はシリコーン樹脂よりも高強度であり、また、伸びが小さいことから熱処理中の変形も少なく、更には、粉末状で硬化剤を用いないという条件でも高い強度が得られるからであり、圧粉コアのバインダ成分として通常用いることができる樹脂の中でも特に優れた特性を有しているからである。
このフェノール樹脂は熱硬化時に一度軟化してから硬化するという特性を有しているため、多量に添加すると、成形体自体が変形したり、成形体の寸法が変わったりするため、なるべく添加量を抑える必要がある。しかし、一方で成形体の機械的強度を確保する必要があるため、フェノール樹脂の添加量は機械的強度を確保できることができる最低限の添加量とすることが望ましい。
また、このフェノール樹脂の線膨張係数は3〜7×10−5(1/K)程度であって、純鉄の線膨張係数(1.17×10−5(1/K))の数倍である。従って、フェノール樹脂の添加量が多くなると成形体が変形しやすくなり、また、高温時には寸法変化が大きくなる。実際にリアクトル駆動時には圧粉コアが発熱するため、成形体が寸法変化を生じる可能性がある。この寸法変化が大きくなるとインダクタンス特性が変化するため、この観点でもフェノール樹脂の添加量はなるべく少ない方が望ましい。
具体的には、成形体へフェノール樹脂の添加量は、質量%で0.1〜0.5%とする。フェノール樹脂の添加量が0.1%より少ないと成形体が機械的強度を確保できなくなり、逆に0.5%より多くなると熱硬化処理時に材料の噴出しや熱硬化後の変形を発生しやすくなる。鉄の比重はフェノール樹脂の比重の6〜7倍程度であるので、換算するとフェノール樹脂が成形体内に占める体積率は0.6〜3.5%である。より好ましい体積率は2.0〜2.4%である。
非磁性・非導電性の材料として酸化物粒子或いは炭酸塩粒子を選択した理由は、樹脂の硬化温度を含む使用温度域(樹脂の硬化温度は230℃程度、使用領域はリアクトルの発熱によってもせいぜい150℃)で熱的に安定であることと、比較的容易に混合に適した微粒子が得られるためである。酸化物粒子としては、Al2O3、SiO2、炭酸塩粒子としては、CaCO3などの微粉末を例示することができる。この酸化物粒子や炭酸塩粒子は殆ど塑性変形しないため、酸化物粒子或いは炭酸塩粒子を多量に添加して成形体を圧粉成形すると、成形体を金型から抜き出す際にスプリングバックが発生し、成形体に図3に示すような層状の割れが発生することがある。この割れは、成形体の抜き出し方向の長さが10mm未満の場合は発生することはなく、成形体の抜き出し方向の長さが10mm以上の場合に発生するため、本発明は、抜き出し方向の長さが10mm以上の成形体を対象とする。
成形体の抜き出し方向の長さが10mm以上の場合でも、酸化物粒子或いは炭酸塩粒子の添加量を抑制して成形体内に空隙を形成させるようにすると、スプリングバックをその空隙で吸収することができ、層状の割れの発生を抑制することができる。本発明者らが実験、研究を重ねた結果、成形体内に形成される空隙の体積率(空隙率)を10〜20%とすれば、層状の割れの発生を抑制できることが分かった。しかしながら、空隙率が10%未満であると、成形体を金型から抜き出す際にスプリングバックにより図3に示すような層状の割れが発生することがある。一方、空隙率が20%を超えると、成形体としての機械的強度を確保できなくなる。
尚、この酸化物粒子或いは炭酸塩粒子の添加量は、成形体内に形成される空隙の体積率(空隙率)が10〜20%であるとして、透磁率およびフェノール樹脂の添加量にも影響を受けるが、酸化物粒子或いは炭酸塩粒子が成形体内で占める体積率に換算して16〜33%とすることが望ましい。また、金型による圧粉成形時の成形圧は、面圧で5〜6ton/cm2とすれば所望の成形体を得ることができる。
金属粉末(純鉄粉)として、株式会社神戸製鋼所製アトメル300NH(平均粒子径:約80〜100μm、最大粒子径:250μm以下)、炭酸塩微粒子として、炭酸カルシウム(CaCO3)微粉末、フェノール樹脂として、エアウォーター株式会社製ベルパールS−899を用いて、それらを混合して金型内に充填し、成形圧:5.0〜6.0ton/cm2で型潤滑成形(潤滑剤添加はなし)を行い、圧粉成形後に成形体を金型から抜き出すことによりφ30mm×高さ40mmの成形体試料を得た。尚、成形体の熱処理はフェノール樹脂の硬化温度230℃×10分間とした。
抜き出しを終えた成形体の表面を目視で観察し、層状の割れを認めることができなかったものを合格、層状の割れが目視で確認できたものを不合格とした。試験結果を表1に示す。
尚、表1に記載した鉄密度は、純鉄の体積率(%)/100×純鉄の密度(7.86g/cm3)という式から計算により求めたもので、透磁率は、励磁磁場1000eのときの最大透磁率である。
表1によると、本発明の要件、特に、空隙の体積率(空隙率)が10〜20%、フェノール樹脂の体積率が0.6〜3.5%という要件を満足した試料No.2〜4、6〜8、10〜12では、成形体の表面に層状の割れが認められなかったのに対し、空隙率が7.1%、5.5%、6.6%と低い試料No.1、5、9では、目視にて層状の割れを確認することができた。
A…リアクトル
1…コア
1a、1b…分割コア
2…ギャップ
3…コイル
4…スペーサ
1…コア
1a、1b…分割コア
2…ギャップ
3…コイル
4…スペーサ
Claims (2)
- 鉄基合金粉末或いは純鉄粉でなる金属粉末と、酸化物粒子或いは炭酸塩粒子と、フェノール樹脂を混合して圧粉成形した圧粉コアであって、
圧粉成形時の抜き出し方向の長さが10mm以上であると共に、成形体密度が4.5〜5.5g/cm3であり、
成形体内に形成される空隙の体積率(空隙率)が10〜20%、前記フェノール樹脂が占める体積率が0.6〜3.5%であることを特徴とする圧粉コア。 - 透磁率が5〜50であることを特徴とする請求項1記載の圧粉コア。
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2011
- 2011-02-16 JP JP2011030962A patent/JP2012169538A/ja active Pending
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