JP5120690B2 - リアクトル用コア - Google Patents

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Description

本発明は、外周にコイルが配置されてリアクトルに用いられるコアに関するものである。特に、コア外部への漏れ磁束を低減することができるリアクトル用コアに関するものである。
近年、地球環境保護の観点からハイブリッド自動車が実用化されている。ハイブリッド自動車は、エンジン及びモータを駆動源として具え、その一方又は双方を用いて走行する自動車である。このようなハイブリッド自動車は、バッテリの直流をインバータで交流に変換し、その交流を走行用のモータに供給する。最近のハイブリッド自動車は、バッテリ及びモータの小型化のために昇圧コンバータを具えている。このコンバータは、バッテリの電圧を昇圧してインバータ(モータ)に供給する役割と、ジェネレータ(モータ)からの回生電流をバッテリ電圧に降圧し、バッテリに充電を行う役割を持つ。このコンバータの部品の一つに、電気エネルギーを磁気エネルギーとして蓄えられるリアクトルがある。
リアクトルは、磁性材料、代表的には電磁鋼板と呼ばれる珪素鋼板を積層してなるコアと、コアの外周に配されるコイルとを具える。コア100は、図6に示すように複数の分割片101a〜101dを組み合わせてなる環状のものが代表的である。珪素鋼は一般に比透磁率が高いため、電磁鋼板からなるコアは、磁気飽和し易い。そこで、磁気飽和し難くするために、分割片間に空隙(エアギャップ)を設けたり、ギャップ材を配することが行われている。図6に示すコア100は、コイルCが配置されてコイルCで覆われる分割片101a,101bと、コイルCが配置されず、コイルCで覆われない分割片101c,101dとの間にそれぞれ、アルミナといった非磁性材料からなるギャップ材102を介在させて環状に形成されている。なお、比透磁率μrとは、材料の透磁率μと真空の透磁率μ0との比率μ/μ0のことである(真空の透磁率μ0=4π×10-7H/m)。
しかし、ギャップがあると、ギャップに起因する漏れ磁束が生じる。そこで、漏れ磁束を低減するために、特許文献1は、高透磁率の珪素鋼板を用いず、低透磁率の圧粉磁性材料で分割片を作製し、分割片同士を接着剤で接合してなるギャップレス構造の環状コアを提案している。
特開2006-344868号公報
漏れ磁束は、コイルに侵入することで渦電流損などの損失を生じたり、リアクトルの周辺機器に影響を与えるなどの問題がある。従って、漏れ磁束は、できるだけ少ないことが望まれる。しかし、上記ギャップレス構造のコアでは、漏れ磁束の低減に限界がある。
図5は、ギャップレス構造の環状コアにおいて磁束の流れる状態を示す説明図である。例えば、コア110に配置される一方のコイルC1が生成する磁束は、理想的には、]状の破線矢印で示すように、コア110においてコイルC1内に挿入される部分(コイル配置部111a)を通過し、コイルCが配置されずに露出された部分(露出部111c)、他方のコイルC2内に挿入されるコイル配置部111b、別の露出部111dを順に経て、コイル配置部111aに戻る。他方のコイルC2が生成する磁束は、コイル配置部111b→露出部111d→コイル配置部111a→露出部111cを経て、コイル配置部111bに戻る。しかし、実際には、コイルが生成する磁束の一部は、一方のコイル配置部から他方のコイル配置部を通過する際、露出部を通らずに、コイル配置部と露出部で囲まれる空間(以下、内側空間と呼ぶ)を通ると考えられる。
コア110は、その全体を一様な低透磁率材料で形成していることから、コア110部分と、内側空間といったコア110外部との比透磁率の差が小さい。そのため、コア110部分と内側空間とにおいて、磁束の通り易さの差が小さくなる。つまり、全体が一様な高透磁率材料で構成されたコア100と比較すると、コア110は、内側空間に磁束が漏れる割合が大きくなり易い。そのため、磁束の一部は、一方のコイル配置部から他方のコイル配置部を通過するにあたり、露出部を介さず内側空間を介して通り易くなる。即ち、図5の直線状の破線矢印で示すように磁束の一部がショートカットするようになる。
また、コア110は、その全体が低透磁率材料で構成されることから、コア110の周囲にも磁束が漏れる割合が大きくなり易い。
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたもので、その目的の一つは、漏れ磁束を効果的に低減することができるリアクトル用コアを提供することにある。
本発明は、コア全体を一様な磁性材料で構成するのではなく、比透磁率を部分的に異ならせることで、上記目的を達成する。
本発明リアクトル用コアは、リアクトルを構成するコイルで覆われるコイル配置部と、コイルで覆われない露出部とを具える環状のコアであり、コイル配置部と露出部とがギャップを介することなく一体化されてなる。そして、露出部は、コイル配置部よりも比透磁率が高い。
本発明リアクトル用コアは、ギャップを介することなく一体化されたギャップレス構造であるため、ギャップに起因する漏れ磁束や騒音が実質的に生じない。
そして、本発明コアは、部分的に比透磁率が異なる構成、具体的には、コイル内に配置される部分(コイル配置部)の比透磁率が低く、コイルが配置されない部分(露出部)の比透磁率が高い。このような特性を実現するために本発明コアは、全体を一様な磁性材料で構成せず、部分的に異なる磁性材料で構成する。このような構成を具える本発明コアは、全体が一様な低透磁率の磁性材料で構成された環状コアのように、内側空間や周囲に漏れ磁束が生じることを低減することができる。従って、漏れ磁束による損失やリアクトル周辺機器への影響を効果的に抑制することができる。また、本発明コアは、漏れ磁束を低減することで、コイルが発生した磁束を十分に活用することができる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明コアは、その外周に配されるコイルを励磁した際に閉磁路が形成される磁性部材であり、コイル配置部と露出部とが一体化されて環状に構成されている。代表的には、一対のコイル配置部と一対の露出部とを枠状に配置した構成が挙げられる。
本発明コアは、例えば、複数の分割片を形成し、分割片同士を接着剤やボルトなどの締結部材で接合することで得られる。分割片の区切りは、種々考えられ、例えば、コイル配置部、露出部のそれぞれを分割片としてもよい。このとき、接合箇所は4つである。その他、一方のコイル配置部と一方の露出部とが一体のL字状分割片と、他方のコイル配置部と他方の露出部とが一体のL字状分割片とからなる構成(接合箇所:2つ)や、各コイル配置部が二つに分割され、一方のコイル配置部を分割した一の短片と一方の露出部と他方のコイル配置部を分割した一の短片とが一体の]状分割片と、一方のコイル配置部を分割した他の短片と他方の露出部と他方のコイル配置部を分割した他の短片とが一体の]状分割片とからなる構成(接合箇所:2つ)などが挙げられる。接着剤は、エポキシ系接着剤などが利用できる。
分割片同士を接着剤で接合すると、分割片の接合箇所に接着剤が介在される。接着剤は、通常非磁性であるが、ここでの接着剤はリアクトルのインダクタンスを調整するためのギャップ材ではなく、単に分割片同士を接合するものに過ぎない。そのため、本発明コアにおいて分割片間に接着剤が存在してもギャップを介することなく一体化されているものとする。
本発明コアを圧粉成形体とする場合、所望の三次元形状の分割片を容易に成形可能であり、所望の特性を有するように材料を調整したり、製造条件を調整することで、本発明コアを得ることができる。
コイル配置部の別の形態として、焼結体や樹脂の硬化成形体が挙げられる。硬化成形体は、磁性粉末と流動性のある樹脂との混合体を成形し、得られた成形体の樹脂を硬化させたものである。これら焼結体や硬化成形体とする場合も所望の三次元形状の分割片を容易に成形可能である。
露出部の別の形態として、電磁鋼板を積層してなる積層体が挙げられる。電磁鋼板を用いることで、比透磁率が高い露出部を簡単に形成できる。なお、電磁鋼板の比透磁率は、4000〜8000程度であり、このような高透磁率の磁性材料でコア全体を構成すると、ギャップレス構造とすることが難しい。
本発明コアは、ギャップレス構造が可能な磁性材料を用いて製造する。コア全体を比透磁率が低い一様な磁性材料で構成するとギャップレス構造が可能であるが、上述のように内側空間などのコア外部に漏れ磁束が生じ易くなる。そこで、本発明コアにおいてコイルが配置されるコイル配置部は、比透磁率が低くなるような磁性材料で構成し、コイルが配置されない露出部は、比透磁率が比較的高い磁性材料で構成し、本発明コア全体の平均透磁率(実効透磁率)が比較的低くなるように磁性材料を選択することが好ましい。具体的には、本発明コア全体の平均透磁率が比透磁率で5以上50以下であることが好ましい。
例えば、露出部は、比透磁率が50以上の材料で構成し、コイル配置部は、露出部よりも比透磁率が低い材料、具体的には、比透磁率が3以上50以下の材料で構成することで、本発明コア全体の平均的な比透磁率を5〜50とすることができる。また、コイル配置部は、その全体が均一的な比透磁率の磁性材料から構成されるものとする。このようなコイル配置部は、その全体に亘って均一的に磁束が通る構造とすることができる。
コイル配置部を構成する磁性材料の比透磁率を上記範囲に調整するには、以下の手法が挙げられる。いずれの手法の場合も、コアのサイズに応じて材料の比透磁率を調整することができる。
<圧粉成形体の場合>
コイル配置部を圧粉成形体で構成する場合、通常、表面に絶縁被膜を具える軟磁性粉末とバインダ樹脂とを混合し、この混合粉末を成形後、絶縁被膜の耐熱温度以下で焼成する。そして、軟磁性粉末とバインダ樹脂との混合比を調整することで、低透磁率材料からなるコイル配置部が得られる。具体的には、バインダ樹脂の配合量を増やすことで、コイル配置部において磁束が通過する断面に対する磁性材料(軟磁性粉末)の割合を下げる。磁性材の割合が少ないことで、比透磁率が小さくなる。その他、混合粉末を成形する際の圧力を変えることでもコイル配置部を構成する材料の比透磁率を調整することができる。バインダ樹脂の配合量が多い方が、又は混合粉末の成形圧力が低い方がコイル配置部の比透磁率が低くなる傾向にある。圧粉成形体は、後述する焼結体と異なり、焼成後にバインダ樹脂が残存し、この樹脂により軟磁性粉末同士が絶縁される。そのため、圧粉成形体からなるコイル配置部は、リアクトルに用いた際、焼結体からなるコイル配置部と比較して渦電流損失を低減でき、コイルに高周波が通電される場合の使用に適する。
軟磁性粉末は、Fe,Co,Niといった鉄族金属粉末の他、Fe-Si,Fe-Ni,Fe-Al,Fe-Co,Fe-Cr,Fe-Si-AlなどのFe基合金粉末、或は希土類金属粉末、フェライト粉末などが利用できる。このような粉末の作製法は、アトマイズ法(ガス又は水)や、機械的粉砕法が挙げられる。特に、結晶がナノサイズであるナノ結晶材料からなる粉末、好ましくは異方性ナノ結晶材料からなる粉末を用いると、高異方性で低保力の分割片が得られる。軟磁性粉末に形成される絶縁被覆は、燐酸化合物、珪素化合物、ジルコニウム化合物又は硼素化合物などから構成されることが好ましい。バインダ樹脂は、熱可塑性樹脂、非熱可塑性樹脂、又は高級脂肪酸を利用することが好ましい。
<焼結体の場合>
コイル配置部を焼結体で構成する場合、通常、非磁性粉末及びバインダ樹脂の混合粉末と軟磁性粉末とを混合し、この混合粉末を成形後、高温にて焼結する。焼結時、バインダ樹脂はほぼ消失して、軟磁性粉末と非磁性粉末とが焼結される。そのため、軟磁性粉末と非磁性粉末との混合比を調整することで、上述した圧粉成形体の場合と同様に、低透磁率材料からなるコイル配置部が得られる。その他、混合粉末の成形時の圧力を変えることでも、コイル配置部の比透磁率を調整できる。非磁性粉末の配合量が多い方が、又は混合粉末の成形圧力が低い方がコイル配置部の比透磁率を低くできる傾向にある。
軟磁性粉末は、上記圧粉成形体と同様に、鉄族金属粉末、Fe基合金粉末、或は希土類金属粉末、フェライト粉末などが利用できる。非磁性粉末は、Cu,Al,Siなどの単一元素によるものの他、Al2O3やSiO2などの化合物によるものが利用できる。バインダ樹脂は、熱可塑性樹脂、非熱可塑性樹脂、又は高級脂肪酸が好適に利用できる。
硬化成形体の場合>
コイル配置部を硬化成形体で構成する場合、硬化成形体を得る方法は、射出成形と注型成形とがある。射出成形は、通常、軟磁性粉末(必要に応じて更に非磁性粉末を加えた混合粉末)と流動性のあるバインダ樹脂とを混合し、この混合流体を、圧力をかけて成形型に流し込んで成形した後、バインダ樹脂を硬化させる。一方、注型成形は、射出成形と同様の混合流体を得た後、この混合流体を、圧力をかけることなく成形型に注入して成形・硬化させる。いずれの成形手法も、バインダ樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が好適に利用できる。バインダ樹脂に熱硬化性樹脂を用いた場合、成形体を加熱して樹脂を熱硬化させる。バインダ樹脂に常温硬化性樹脂或は低温硬化性樹脂を用いてもよく、この場合、成形体を常温〜比較的低温に放置して樹脂を硬化させる。その他、射出成形後に成形体を高温にて熱処理して、軟磁性粉末同士又は軟磁性粉末と非磁性粉末とを焼結させてもよい(MIM:Metal Injection Molding)。射出成形や注型成形を利用する場合も、焼結させない場合は、軟磁性粉末(非磁性粉末)とバインダ樹脂の配合を変えることで、焼結させる場合は、軟磁性粉末と非磁性粉末との配合を変えることで、コイル配置部の構成材料の比透磁率を調整できる。例えば、軟磁性粉末の配合量を減らすと、比透磁率は小さくなる傾向にある。
一方、露出部の比透磁率を高くするには、例えば、比透磁率が大きい高透磁率材料を用いることが挙げられる。例えば、露出部は、上述したように電磁鋼板を用いて形成する。露出部を圧粉成形体で構成する場合、上述した低透磁率材料からなるコイル配置部を得る場合と逆に、軟磁性粉末とバインダ樹脂との混合粉末において軟磁性粉末の配合量を増やしたり、混合粉末の成形圧力を高くすることで、露出部の比透磁率を高くできる傾向にある。また、露出部を圧粉成形体で構成する場合、比透磁率が50〜500の磁性材料で構成することが挙げられる。なお、露出部も全体が均一的な比透磁率の磁性材料から構成されると、全体に亘って均一的に磁束が通る構造とすることができて好ましい。
露出部の比透磁率は、コイル配置部の2倍以上高いことが好ましい。2倍未満であると、漏れ磁束の低減効果が少なくなる。従って、比透磁率の関係が上記範囲になるように本発明コアを構成することが好ましい。
本発明リアクトル用コアは、コイル配置部の外周にコイルを配置してリアクトルとして好適に利用することができる。コイルは、巻線を巻回することで形成される。巻線は、代表的には絶縁被膜を有する金属線により構成される。金属線は、その断面形状が円形の他、四角形、六角形といった多角形など、種々の形状のものがあり、いずれの形状のものを用いてもよい。コイルの形態は、コイルが配されるコイル配置部の外形に適合した形態にする。上記金属線は、導電性が高い銅や銅合金からなるものが好ましく、上記絶縁被覆は、エナメルなどが挙げられる。
このようなコイルは、励磁した際のコイルの振動による騒音を低減するため、接着剤などを用いて本発明コアに固定することが好ましい。接着剤は、例えば、エポキシ樹脂やウレタン樹脂などが利用できる。
本発明コアと上記コイルとが接触する部分にインシュレータを配置したリアクトルとすると、コイルと本発明コアとの間をより確実に絶縁することができ、コイルに大電流が流れたとしても、絶縁破壊や渦電流の発生を防止できる。インシュレータを構成する絶縁材料は、例えば、PPS(Poly Phenylene Sulfide)やLCP(Liquid Crystal Polymer)などの樹脂が挙げられる。このような樹脂に、ガラス(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化チタンなどの無機充填剤を添加させて、熱伝導性を高めると、コイルの熱を本発明コアに伝え易く好ましい。無機充填剤の添加量は、適宜選択するとよい。このインシュレータは、分割片を組み合わせて一体となる構成とすると、本発明コアに配置し易く好ましい。
本発明リアクトル用コアを用いることで、リアクトルにおける漏れ磁束を低減することができる。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(実施例1)
図1は、環状のリアクトル用コアの一例を示す概略構成図である。このコア1は、磁性材料から構成され、コア1の外周の一部にコイルCが配置されてリアクトルに利用される。具体的には、コイルCで覆われる一対のコイル配置部11と、コイルCで覆われない一対の露出部12とから構成される。
コイル配置部11は、コイルCの内側に配されてコイルCで覆われる部分であり、露出部12は、コイルCが配されず露出される部分である。各コイル配置部11a,11b、及び各露出部12a,12bはそれぞれ、分割可能な分割片である。各分割片は、圧粉成形体から構成される柱状体である。コア1は、これら分割片同士を接着剤により接合して一体にしてなり、分割片間にギャップを有していないギャップレス構造である。具体的には、コイル配置部11a,11bの各端面にそれぞれ露出部12a,12bを接合して環状に構成される。
そして、コア1は、露出部12がコイル配置部11よりも比透磁率が高いことを最大の特徴とする。比透磁率を高くするために露出部12は、磁性材料粉末に対するバインダ樹脂の割合を、コイル配置部11における同割合よりも小さくして、即ち、磁性材料粉末が多くなるようにして作製している。そのため、露出部12は、コイル配置部11よりも比透磁率が高くなっており、結果として飽和磁束密度も高い。
このような分割片からなるコア1を用いてリアクトルを組み立てるには、巻線を巻回してなるコイルCを予め用意しておき、コイルCをコイル配置部11に挿通させる。コイル配置部11は、コイルCよりも若干長く、両端がコイルCから突出する。なお、図1に示すコイルCは、断面矩形状の平角金属の巻線をいわゆるエッジワイズ巻きにして形成させたものであり、柱状のコイル配置部11に対応させて中空筒状としている。
次に、コイルCを配置した二つのコイル配置部11を並行するように配置し、各端面と露出部12とを接合して、コア1を形成する。このようにして環状のコア1を具えるリアクトルが得られ、コイル配置部11a→露出部12a→コイル配置部11b→露出部12bを順に通ってコイル配置部11aに戻る閉磁路が形成される。この閉磁路は、途中にギャップが形成されていない。
<試験例>
部分的に比透磁率が異なる上記コア1、及び比透磁率が一様である二つのコア(以下、比較コア100,110と呼ぶ、図5,6参照)を作製し、各コア及びその近傍の磁束密度の分布状態を調べた。コア1及び比較コア110は、ギャップレス構造、比較コア100は、ギャップを有する構造とし、コア1,100,110のインダクタンスが等しくなるように比透磁率及びギャップを調整した。
[コア1]
軟磁性粉末として水アトマイズ純鉄粉(平均粒径100μm程度)を、バインダ樹脂としてポリエチレン(粉末)を用意する。この鉄粉とポリエチレンとを、樹脂量比(樹脂の質量/樹脂と鉄粉との合計質量)が3.8%となるように混合する。この混合粉末を所定の成形型に充填し、成形圧力980MPaで成形する。そして、成形体を250℃×60分で熱処理して、圧粉成形体からなる一対のコイル配置部を得る。
一方、樹脂量比が0.8%となるように鉄粉とポリエチレンとを混合した混合粉末を用いて、上記と同様の条件で成形、熱処理を行って圧粉成形体からなる一対の露出部を得る。
得られたコイル配置部及び露出部の比透磁率を測定したところ、コイル配置部は、比透磁率:19.73、露出部は、比透磁率:200であった。また、コア1全体の平均透磁率は、比透磁率で31.07であった。なお、比透磁率の測定は、理研電子株式会社製のBHトレーサを用いて行った。
得られたコイル配置部と露出部とを、ギャップを介することなく接合することで、図1に示すコア1が得られる。
[比較コア100]
樹脂量比が0.8%となるように鉄粉とポリエチレンとを混合した混合粉末を用いて、上記と同様の条件で成形、熱処理を行って圧粉成形体からなる一対のコイル配置部及び一対の露出部を得る。即ち、これらの分割片はいずれも樹脂量比が等しい材料からなる圧粉成形体で構成されている。この比較コア100について、コア1と同様にして比透磁率を測定したところ、比透磁率:200であった。
得られたコイル配置部と露出部とを、ギャップ材(比透磁率:1)を介して接合することで、図6に示す比較コア100が得られる。
[比較コア110]
樹脂量比が2.9%となるように鉄粉とポリエチレンとを混合した混合粉末を用いて、上記と同様の条件で成形、熱処理を行って圧粉成形体からなる一対のコイル配置部及び一対の露出部を得る。これらの分割片も、比較コア100と同様に、いずれも樹脂量比が等しい材料からなる圧粉成形体で構成されている。この比較コア110について、コア1と同様にして比透磁率を測定したところ、比透磁率:31.07であった。
得られたコイル配置部と露出部とを、ギャップを介することなく接合することで、図5に示すような比較コア110が得られる。
得られた各コア1,100,110について、コイルCに通電した際のコア及びその近傍の磁束密度の分布状態を調べた。コア1の分布状態を図2に、比較コア110の分布状態を図3に、比較コア100の分布状態を図4に示す。磁束密度の分布は、磁束密度の大きさを色別(磁束密度が大きい順に赤,橙,黄,緑,水色,青)で表わすことが可能な公知のシミュレーションソフトを用いて求めた。図2〜4は、グレースケールで示すが、実際には上記色別がある。また、図4のコア内の実線は、磁束を示す。
図4に示すようにギャップを有する比較コア100は、ギャップ部分近傍が赤色〜橙色となっており、磁束密度が高く、漏れ磁束が多いと考えられる。また、比較コア100の周囲も橙色〜黄色〜緑色であり、磁束密度が比較的高く、漏れ磁束が多いと考えられる。特に、比較コア100で囲まれる内側空間にも磁束密度が高い部分が存在し、コイルへの影響があると考えられる。
これに対し、図3に示すようにギャップレス構造の比較コア110は、コア110外部において、赤色部分が実質的に無視できる程度に少ない。また、比較コア110は、内側空間及び周囲において緑色部分が多く、ギャップを有する比較コア100と比較して漏れ磁束が低減されていると考えられる。
但し、比較コア110の内側空間においてコイル配置部と露出部との境界近傍では、コイル配置部間が緑色であり、比較コア100と比較して磁束密度(漏れ磁束量)が低いものの、漏れ磁束があると考えられる。従って、磁束の一部が露出部を通過せず、内側空間を介してコイル配置部間を通過していると推測される。
これに対し、図2に示すように比透磁率が部分的に異なるコア1は、内側空間に青色部分が多く、緑色が少なくなっている。従って、コア1は、上記比較コア110と比較して、内側空間を介してコイル配置部間を通過する磁束が低減されていると考えられる。また、コア1は、周囲が概ね青色であり、周囲への漏れ磁束が効果的に低減されていると考えられる。
以上のことから、コイル配置部よりも比透磁率(飽和磁束密度)が高い露出部を具えるコア1は、コア1外部への漏れ磁束の低減効果が大きく、コア1を具えるリアクトルは、漏れ磁束がコイルCに侵入することによる損失を効果的に低減することができると期待される。また、コア1は、漏れ磁束を低減できることから、コア1全体を有効に利用することができると考えられる。更に、コア1を具えるリアクトルは、ギャップレス構造であることから、ギャップの存在に伴う騒音や漏れ磁束の問題が実質的に生じない。
加えて、コア1は、内側空間における漏れ磁束を低減できるため、ギャップを有する比較コア100と比較して、コイルCをコア1により近づけて配置することができる。ここで、漏れ磁束がコイルに侵入すると、損失が生じ易いため、漏れ磁束の影響が及ばない程度にコイルをコアから離して配置することが望まれる。図4の比較コア100は、磁束密度が高い領域にコイルCの端部が配置されており、漏れ磁束の影響がコイルCに及ぶと考えられる。しかし、コイルCを比較コア100から離して配置すると、コイルCとコア100間の間隔が広くなるため、リアクトルの外寸が大きくなる。これに対し、コア1は、コイルとコア間の間隔を小さくしてもコイルCに漏れ磁束の影響が及び難く、リアクトルの外寸を小さくできる。従って、例えば、コア1を具えるリアクトルを昇圧コンバータに利用する場合、コンバータの構成部材中リアクトルはかなり大きな体積を占めることから、コンバータの設置スペースの削減に大いに寄与すると期待される。
(実施例2)
上記実施例1では、コイル配置部及び露出部の全てが圧粉成形体からなる構成を説明した。別の実施形態として、露出部が圧粉成形体からなり、コイル配置部が焼結体からなる構成が挙げられる。このとき、露出部の比透磁率がコイル配置部よりも高くなるように、焼結体の材料や製造条件を調整する。
(実施例3)
更に、別の実施形態として、露出部が圧粉成形体からなり、コイル配置部が樹脂の硬化成形体からなる構成が挙げられる。このとき、露出部の比透磁率がコイル配置部よりも高くなるように、硬化成形体の材料や製造条件を調整する。
(実施例4)
更に、別の実施形態として、露出部が電磁鋼板を積層した積層体からなり、コイル配置部が圧粉成形体、焼結体、及び樹脂の硬化成形体のいずれかからなる構成が挙げられる。電磁鋼板は、一般に、圧粉成形体、焼結体、及び樹脂の硬化成形体のいずれよりも、比透磁率が高い傾向にある。従って、コイル配置部は、圧粉成形体、焼結体、及び樹脂の硬化成形体のいずれかを適宜選択することができる。
なお、上述した実施例は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、実施例1において樹脂量比を変更することができる。
本発明リアクトル用コアは、ハイブリッド自動車や電気自動車などに搭載される昇圧コンバータに具えるリアクトルの磁性部材として好適に利用することができる。
部分的に異なる磁性材料からなるギャップレス構造の環状のコアを模式的に示す概略構成図である。 部分的に異なる磁性材料からなるリアクトル用コア1の磁束密度の分布状態を示す分布図である。 一様な磁性材料からなるギャップレス構造の比較コア110の磁束密度の分布状態を示す分布図である。 一様な磁性材料からなり、ギャップを有する比較コア100の磁束密度の分布状態を示す分布図である。 一様な磁性材料からなるギャップレス構造の環状コアにおいて、磁束が通過する状態を模式的に示す説明図である。 一様な磁性材料からなり、ギャップを有する環状コアを模式的に示す概略構成図である。
符号の説明
1 リアクトル用コア 11,11a,11b コイル配置部 12,12a,12b 露出部
C,C1,C2 コイル
100,110 リアクトル用コア 101a,101b,101c,101d 分割片
102 ギャップ材 111a,111b コイル配置部 111c,111d 露出部

Claims (6)

  1. リアクトルを構成するコイルで覆われるコイル配置部と、コイルで覆われない露出部とを具える環状のリアクトル用コアであって、
    このコアは、前記コイル配置部と前記露出部とがギャップを介することなく一体化されてなり、
    前記コイル配置部及び前記露出部は、圧粉成形体であり、
    前記コイル配置部を構成する圧粉成形体と、前記露出部を構成する圧粉成形体とは、軟磁性粉末の割合が異なっており、
    前記露出部の比透磁率は、前記コイル配置部比透磁率よりも2倍以上く、かつ、
    前記コイル配置部の比透磁率は、3以上50以下であり、
    前記露出部の比透磁率は、50以上500以下であることを特徴とするリアクトル用コア。
  2. 前記軟磁性粉末は、鉄族金属粉末、Fe基合金粉末、及び希土類金属粉末のいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載のリアクトル用コア。
  3. 前記リアクトル用コア全体の平均透磁率が比透磁率で5以上50以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル用コア。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のリアクトル用コアを具えるリアクトル。
  5. 請求項4に記載のリアクトルを具える昇圧コンバータ
  6. リアクトルを構成するコイルで覆われるコイル配置部と、コイルで覆われない露出部とを具える環状のリアクトル用コアを製造するリアクトル用コアの製造方法であって、
    軟磁性粉末とバインダ樹脂とを混合し、この混合粉末を所定の圧力で成形し、得られた成形体に熱処理を施して、前記コイル配置部を構成する圧粉成形体と、前記露出部を構成する圧粉成形体とを製造するにあたり、
    前記露出部の比透磁率が前記コイル配置部の比透磁率よりも2倍以上高く、かつ、前記コイル配置部の比透磁率が3以上50以下、前記露出部の比透磁率が50以上500以下となるように、前記軟磁性粉末と前記バインダ樹脂との混合比を調整して、前記コイル配置部における軟磁性粉末の割合と前記露出部における軟磁性粉末の割合とを異ならせることを特徴とするリアクトル用コアの製造方法。
    前記リアクトル用コアは、前記コイル配置部と前記露出部とがギャップを介することなく一体化されるものとする。
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