JP5146401B2 - 材料試験機 - Google Patents
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Description
また、供試体に実際に与えられる加振波形を目標波形により近づけるために、駆動系全体の伝達関数を修正する技術も知られている(特許文献2)。
他方、ピーク値を補正する制御方式では、応答波形のピーク値が目標波形のピーク値に一致するよう駆動信号の振幅を増減するので、応答波形の位相遅れおよび波形ひずみを補正することができない。
このように、従来から知られている伝達関数補正およびピーク値補正によるサーボ制御では、目標波形により近づけた実振動波形を供試体に与えることができないという問題があった。
供試体に試験力を繰り返し負荷するアクチュエータと、前記アクチュエータおよび前記供試体を含む系の伝達関数を同定する伝達関数演算手段と、前記供試体に与える実振動波形に対応した目標波形信号と、前記伝達関数演算手段により同定された伝達関数の逆伝達関数とを乗算することにより、前記アクチュエータに供給する最初の駆動信号d0(ω)を生成する初期駆動信号生成手段と、駆動信号di−1(ω)に応答して検出される応答信号を入力し(i=1,2,3,・・・)、周波数ごとの駆動信号成分を補正して駆動信号di(ω)を順次生成するイタレーション手段と、前記駆動信号di(ω)が予め定めた条件を満たすに至ったとき前記イタレーション手段の動作を終了させる判定手段と、前記判定手段により終了判定がなされた後に、時間領域でのピーク値補正を行う時間領域補正手段とを備えている。
このように請求項1に係る材料試験機では、まず周波数領域での駆動信号補正を繰り返して行い、その駆動信号補正による結果(すなわち、イタレーション処理による結果)が予め定めた条件を満たすに至ったときには、時間領域での駆動信号補正に切り替えて駆動信号を補正するので、実振動波形のピーク値のみならず、波形歪みおよび位相遅れを的確に補正することができる。
請求項2に記載の材料試験機では請求項1に記載の材料試験機において、前記伝達関数演算手段は、パワースペクトルが所定の値を有し且つ位相がランダムなPSDランダム波形信号X(ω)を供給し、応答波形信号Y(ω)が得られたとき、T(ω)=(X*(ω)X(ω))−1X*(ω)Y(ω)を演算することにより、前記伝達関数としてT(ω)を算出するので、いわゆるホワイトノイズを用いた伝達関数同定演算を実行することができる。
請求項3に記載の材料試験機では請求項1または2に記載の材料試験機において、前記イタレーション手段は、前記逆伝達関数がT−1(ω)であり、目標波形信号t(ω)とイタレーションi番目の応答波形信号ri(ω)との偏差がδi(ω)であり、ある係数がkであるとき、前記駆動信号を順次生成していくイタレーション処理を行う際に補正後の駆動信号di(ω)として、di(ω)=di−1(ω)+T−1(ω)(kδi(ω))を算出するので、既に求めてある逆伝達関数T−1(ω)を用いて周波数領域での駆動信号補正を実行することができる。
請求項4に記載の材料試験機では請求項1ないし3のいずれか一項に記載の材料試験機において、前記判定手段は、イタレーション処理を1回行う度に目標波形値および応答波形値に関する平均自乗誤差を算出し、その平均自乗誤差が減少しなくなった場合には前記イタレーション手段の動作を終了させることとしているので、時間領域での駆動信号制御への移行時期を適格に判定することができる。
請求項5に記載の材料試験機では請求項1ないし4のいずれか一項に記載の材料試験機において、前記時間領域補正手段は、サーボゲイン補正回路およびゼロ点調節回路を含んでいるので、応答波形の最大ピーク値(=アッパーピーク値)および最小ピーク値(=ボトムピーク値)を補正することができる。
図1は、本発明を適用した材料試験機の全体構成図である。この材料試験機は、試験片TPに試験力を負荷する試験機本体部10と、その制御を行う制御系60とを備えている。
アクチュエータ12および試験片TPを含む系の伝達関数を同定する伝達関数演算部40Aと、
アクチュエータ12に供給する最初の駆動信号を作成する初期ドライブ波形信号作成部40Bと、
アクチュエータ12に供給する駆動信号を周波数領域で繰り返し補正する(後に詳述する)イタレーション処理部40Cと、
イタレーション処理部40で駆動信号を補正する度に応答信号の各周波数成分に着目した平均自乗誤差(後に詳述する)を算出し、その誤差の推移に基づいて信号切り替え部40Eを制御する判定部40Dと、
時間領域における目標信号ピーク値と応答信号ピーク値との間の偏差がゼロとなるように駆動信号を補正するピーク値補正部40Fと、
サーボアンプを含んだ駆動信号出力部40Gと、
荷重信号および変位信号の一方を応答信号として導入する検出信号選択部40Hと、
を備えている。
いま、PSDランダム波形をX(ω)とし、応答波形をY(ω)とし、伝達関数をT(ω)とすると、図4に示した説明図から明らかなように、
となる。ここで、ω=2πfである。従って、
⇔
⇔
(式2)
と変形することができる。この(式2)において、添え字の*は共役転置行列を表し、指数の−1は逆行列を表している。
(式3)
この(式3)において、XおよびYの右下添え字は軸名称および番号(例えばA1は、A軸に対する1番目)を表し、Tの右下添え字は入力軸と応答軸(例えばA−Bは、A軸に対するB軸の応答)を表している。
よって伝達関数T(ω)は、次式で表すことができる。
(式4)
図5は、この初期ドライブ波形信号を得るための演算過程を示した説明図である。この図5において、DFT(Discrete Fourier Transform)は離散フーリエ変換処理を、iDFT(inverse Discrete Fourier Transform)は逆離散フーリエ変換処理を示している。すなわち、図5の上方は時間領域の信号波形を、図5の下方は周波数領域の信号波形を模式的に示している。
(式5)
この(式5)において、dA(ω)およびdB(ω)は周波数領域で表したA軸およびB軸の初期ドライブ波形信号であり、tA(ω)およびtB(ω)はA軸およびB軸の目標波形信号である。
(式6)
この(式6)は上述した2軸の場合におけるi番目のドライブ波形信号を示している。ここで、δは目標波形信号とイタレーションi番目の応答信号との偏差であり、kは補正倍率である。既述の通り、tは目標波形信号であり、T−1(ω)は逆伝達関数である。
(式7)において、xiは目標波形信号に含まれている各周波数成分値、μはxiに対応した応答信号の周波数成分値、Nは周波数成分の個数である。
本実施の形態によれば、以下のような作用・効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、供試体に試験力を繰り返して負荷するので、疲労試験などを行うための加振制御に好適である。
図6(A)は、駆動信号を補正することなくアクチュエータに与えた場合、得られた応答波形と目標波形との関係を例示している。この図(A)から明らかなように、応答波形は目標波形に対して位相が遅れ、且つ振幅も目標波形に届かず、さらに波形自体も歪んでいる。
図6(B)は、周波数領域での補正を行うことなく、応答波形のピーク値が目標波形のピーク値と一致するように、駆動信号の振幅のみを制御した場合である。この場合には、波形のピーク値のみに着目しているので、位相遅れ・波形ひずみは軽減されない。
図6(C)は、応答波形の各周波数成分が目標波形の各周波数成分と一致するように、駆動信号を補正した場合である。すなわち、周波数成分ごとに振幅と位相を調整しているので、波形の歪みは可能な限り軽減されるが、応答波形のピーク値が目標波形のピーク値を超えてしまっている。
図6(D)は、周波数領域での駆動信号を補正した後に、時間領域に戻ってピーク値補正を行った場合である。本図は、図3のステップS4〜S9を実行した結果に相当する。
(1)図2に示した制御装置40は、伝達関数演算部40A,初期ドライブ波形信号作成部40B,イタレーション処理部40C,判定部40D,ピーク値補正部40Fを独立した機能ブロックとして備えているが、一つのコンピュータおよび周辺装置により実施し得ることは勿論である。
(2)図3のフローチャートでは、ステップS6における判定(Si<Si−1)が“NO”となったとき直ちにステップS8を実行しているが、制御系のバラツキ等を考慮して、所定の回数だけ“NO”判定が得られたことを条件としてステップS8に移ることも可能である。
実施の形態と変形例の一つとを組み合わせること、もしくは、実施の形態と変形例の複数とを組み合わせることも可能である。
変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。
さらに、本発明の技術的思想の範囲内で考えられる他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
10 試験機本体部
11 フレーム
12 アクチュエータ
13A ピストンロッド
13B 連結ロッド
14 変位センサ
16 荷重センサ
30 目標波形信号発生部
32 PSDランダム波形信号発生部
38 上つかみ具
39 下つかみ具
40 制御装置
40A 伝達関数演算部
40B 初期ドライブ波形信号作成部
40C イタレーション処理部
40D 判定部
40E 信号切り替え部
40F ピーク値補正部
40G 駆動信号出力部
40H 検出信号選択部
60制御系
Claims (5)
- 供試体に試験力を繰り返し負荷するアクチュエータと、
前記アクチュエータおよび前記供試体を含む系の伝達関数を同定する伝達関数演算手段と、
前記供試体に与える実振動波形に対応した目標波形信号と、前記伝達関数演算手段により同定された伝達関数の逆伝達関数とを乗算することにより、前記アクチュエータに供給する最初の駆動信号d0(ω)を生成する初期駆動信号生成手段と、
駆動信号di−1(ω)に応答して検出される応答信号を入力し(i=1,2,3,・・・)、周波数ごとの駆動信号成分を補正して駆動信号di(ω)を順次生成するイタレーション手段と、
前記駆動信号di(ω)が予め定めた条件を満たすに至ったとき前記イタレーション手段の動作を終了させる判定手段と、
前記判定手段により終了判定がなされた後に、時間領域でのピーク値補正を行う時間領域補正手段とを備えたことを特徴とする材料試験機。 - 請求項1に記載の材料試験機において、
前記伝達関数演算手段は、パワースペクトルが所定の値を有し且つ位相がランダムなPSDランダム波形信号X(ω)を供給し、応答波形信号Y(ω)が得られたとき、T(ω)=(X*(ω)X(ω))−1X*(ω)Y(ω)を演算することにより、前記伝達関数としてT(ω)を算出することを特徴とする材料試験機。 - 請求項1または2に記載の材料試験機において、
前記イタレーション手段は、前記逆伝達関数がT−1(ω)であり、目標波形信号t(ω)とイタレーションi番目の応答波形信号ri(ω)との偏差がδi(ω)であり、ある係数がkであるとき、前記駆動信号を順次生成していくイタレーション処理を行う際に補正後の駆動信号di(ω)として、di(ω)=di−1(ω)+T−1(ω)(kδi(ω))を算出することを特徴とする材料試験機。 - 請求項1ないし3のいずれか一項に記載の材料試験機において、
前記判定手段は、イタレーション処理を1回行う度に目標波形値および応答波形値に関する平均自乗誤差を算出し、その平均自乗誤差が減少しなくなった場合には前記イタレーション手段の動作を終了させることを特徴とする材料試験機。 - 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の材料試験機において、
前記時間領域補正手段は、サーボゲイン補正回路およびゼロ点調節回路を含むことを特徴とする材料試験機。
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