JP5145597B2 - 葉菜類の鮮度保持方法 - Google Patents

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本発明は、高温期の流通時における葉菜類の黄化やしおれを、低コストで簡易に抑制する容器及び方法に関する。
通常、葉菜類は200g程度を開放系の防曇フィルムに入れ、ダンボール箱に箱詰めして出荷される。気温の低い春秋冬は特に問題ないが、6〜9月の高温期には、収穫後の呼吸量が増えて品質が劣化し、流通時に葉の黄化やしおれが出やすい。黄化やしおれを抑制するためには、(1)低温を保つ、(2)適度な低酸素・高二酸化炭素条件を保ち、葉菜類の呼吸による消耗を防ぐ、(3)葉からの水分の蒸発を防ぐ等が有効とされており、様々な手法がとられている。
まず低温を保つために、農家で収穫された葉菜は冷蔵庫内で保管され、品温をある程度下げた後、袋詰め・箱詰めして集荷所に搬入される。さらに農協等の集荷所で真空予冷にかけて、5℃程度まで十分品温を下げてから、市場へ向けて出荷されている。ここでいう真空予冷とは、予冷庫内を真空引きすることで、野菜自身に含まれる水分が気化し、気化熱が奪われることを利用して庫内を冷却する方法である。したがって容器や袋が密閉されていると、冷却効果が低いだけでなく破損することもあり、開放系の包装が必要である。また、輸送には保冷車が使われることもあるが、農家から集荷場への輸送時や市場では冷蔵施設が整っていない場合が多く、品温が急激に上がりやすい。この急激な温度変化により包装フィルム内が結露し、葉菜類の品質劣化につながる。青果物の収穫後管理では、急激な温度上昇はできるだけ避けることが望ましく、一般的に温度の上昇幅は10℃以内にとどめる配慮が必要である。そのため最近では、発泡スチロールに保冷剤を入れ、急激な温度変化を抑えつつ低温を保って出荷している事例が増えている。
さらに、黄化を抑制する方法としては、MA(Modified Atmosphere)包装が知られている。青果物を適度な通気性を保つ包装資材で密封し、青果物が行う呼吸により袋内を低酸素・高二酸化炭素条件として、青果物の呼吸を抑制し、呼吸による消耗を防ぐ方法である。例えば、袋の胴部を構成するフィルムに平均孔径10〜150μmの孔を複数個あけ、開孔面積比率を1×10−7〜2×10−4%として開口部を密封することにより、青果物を入れた袋内の環境を低酸素・高二酸化炭素条件に保つ鮮度保持袋等が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
青果物の鮮度を保持するため、ダンボール箱に細工する事例もみられる。気密性を高めて保冷効果を上げるためアルミ箔や発泡樹脂をダンボールに貼り合わせたり、高温処理した竹の幹の繊維を原料とした厚紙を使用したり、抗菌剤を塗布した機能性ダンボールも登場している(例えば、特許文献2参照。)。しかしこれらの機能性ダンボール箱はコストが高いうえ、アルミ箔や発泡樹脂が貼り合わせてあるとリサイクル性が低くなる。
また特許文献3には、ダンボール箱に鮮度保持袋を敷いて、ブロッコリーを保存する方法が示されている。しかしこの方法は、野菜に水をスプレーして真空予冷にかけるため、葉が水にぬれると病気が入りやすい葉菜類にとっては致命的であり、栽培期の潅水までも必要最低限にして葉をぬらさないように努力している生産者の意向に反する。さらに、鮮度保持袋内を低酸素・高二酸化炭素に保つため、真空予冷後に1袋ずつ密閉しなくてはならず、出荷数量が多い場合には対応しきれない。
特開平6−199385号公報 特開2002−264982号公報 特開2002−101814号公報
ダンボール箱に開放系の防曇フィルムで包装した葉菜類を入れただけでは、気温の高い時期だと黄化やしおれが激しい。せっかく農家で冷蔵庫保管し、集荷場で真空予冷を行っても、コールドチェーンが完備されていない現状では、葉菜類の品温を大きく変化させ、品質劣化を速めてしまう
一方、発泡スチロールは保冷効果が高く、葉菜類の黄化を抑制するには効果的である。しかしコストが高いうえ、焼却時に有害ガスが発生するため、処分が困難である。また、発泡スチロールは箱内の温度が一度上がってしまうと、周囲の温度が下がってもなかなか箱内温度は下がらないため、かえって黄化を促す場合もある。
MA包装を行うためには、通常密封して袋内の気体濃度を適切に保つため、1袋ごとに密封する必要があり手間がかかる。また密封すると真空予冷にかけられないため、冷却効率が悪いうえ、適度に微細な孔の開いた包装資材は値段が高い。さらに最適温度条件の範囲が狭く、温度が低いと高二酸化炭素状態にならずにMA効果が低く、高すぎると嫌気状態となり、葉菜が呼吸できずに異臭や腐りが出るため、リスクが大きく品温管理が難しい。
そこで、本発明の目的は、高温期における葉菜類の黄化やしおれを抑制して鮮度を保つ一方、焼却やリサイクルが可能な材質の梱包材を用い、低コストで簡易な保冷輸送方法を提供することである。
本発明は、ダンボール箱の中に内袋を使用し、この内袋の中に開放系の防曇フィルムで包装した葉菜類と十分冷却した保冷材を入れた後、内袋の開口部を密封せずに折りたたむことを特徴とする。
内袋の開口部を密封せずに使用し、しかも葉菜類にとって適切な低酸素・高二酸化炭素条件にするために、内袋の素材には厚さ約0.03mmの高密度ポリエチレンを使用する。
本発明では梱包材としてダンボール箱と、燃えるごみ用のゴミ袋と同素材である高密度ポリエチレン袋を使用しているため、焼却可能でコストが安く、ダンボールのリサイクル性も高い。高密度ポリエチレン袋は水蒸気透過性が低く、酸素透過性が条件にうまく適しているため、密閉しなくても葉菜類からの水分蒸発を抑制し、袋内を葉菜類の黄化抑制に適した低酸素・高二酸化炭素状態に保つことができる。内袋内の体積が比較的大きく、かつ開口部を密閉していないため、穏やかな低酸素・高二酸化炭素条件を保ち、温度の変動による効果のムラや、高温による異臭の発生リスクを低減できる。また、密閉する必要がないため、1袋ずつヒートシール等を行う手間が省けるほか、真空予冷にもかけられるため、冷却効率がよい。
さらに、保冷材を内袋内に入れることにより、予冷して品温を下げた葉菜類が高温条件下に置かれても、急激な品温の上昇を和らげ、品質の劣化を遅らせることが可能である。この保冷効果は高密度ポリエチレンの内袋を使用することでより長く持続する。
以下はチンゲンサイの場合を例にとり図1に基づいて説明する。
収穫後、7〜8℃で冷蔵庫保管し、品温を下げたチンゲンサイ34を2株、開放系の防曇フィルム33で包装する。ダンボール箱31の中に高密度ポリエチレンの内袋32を広げ、その中に包装した10袋のチンゲンサイ34を横置きし、3段に詰める。この状態で出荷時まで冷蔵庫内で保管し、出荷する直前に、冷却した保冷材35を内袋32の中に入れる。冷却した保冷材35をそのまま内袋32内に入れてチンゲンサイ34と接触させると、接触部が凍ってしまい、葉が水浸状になってしまうため、保冷材35は新聞紙等で包んでから入れる方が望ましい。冷気は上部から下部に流れるため、保冷材はシート状にして葉菜の上部に乗せるのが理想であるが、わさび菜やミズナなど葉菜を縦詰めする場合は、上部に保冷材を入れると重みで葉が傷むため、ダンボール箱31の側面に配置しても良い。保冷材35の量は多い方が効果は長いが、10袋のチンゲンサイ34に対して250g程度で十分である。
保冷材35を入れた後、内袋32の開口部を軽く折りたたみ、ダンボール箱31を閉じてガムテープでとめる。内袋として使用する高密度ポリエチレンは水蒸気透過性が低く、酸素透過性も4000cc/m2・24hr・atmと比較的低いため、密閉すると酸素が不足して嫌気条件になりかねないため、開口部は密閉せずに軽く折りたたむ程度で良い。
集荷所へ輸送する際は保冷車が望ましいが、保冷材が入っているため保冷車でなくても特に問題はない。集荷所等で真空予冷にかけ、品温を5℃程度に落としてから、約7〜8℃の冷蔵庫で保管する。市場への出荷は保冷車が望ましいが、保冷材やMA包装の効果があるため、保冷車でなくても特に問題はない。出荷後はできるだけ低温を保ち、速やかに小売店等へ流通させる必要がある。
以下、本発明について実施例に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
《実施例1》
図1に示すように、ダンボール箱(内径30cm×40cm×13cm)の中に高密度ポリエチレン厚さ0.03mmの内袋を広げ、内袋の中に開放系の防曇フィルムで包装したチンゲンサイ(2株/袋)10袋を横置きして3段に重ねる。新聞紙で包んだ250gの保冷材を側面に配置した後、内袋の開口部を軽く折りたたみ、ダンボール箱を閉じてガムテープでとめた。32℃8時間、28℃4時間、24℃8時間、28℃4時間を1サイクルとしてプログラムした人工気象室で3日間保管し、葉色、株重、袋内の酸素と二酸化炭素濃度を調査した。その結果、3日後でもチンゲンサイの緑色が十分保持されており、株重の減少が最も少なかった。その際の内袋内の大気組成は、酸素11.4%、二酸化炭素6.0%であり、葉菜類の最適なMA条件(酸素約10%、二酸化炭素約10%)に近くなっていた。また、実際に市場出荷した際も、真空予冷にかけることができるため、効率よく冷却することが可能であり、急激な温度上昇も抑制されて緑色保持に効果がみられた。
《比較例1》
発泡スチロール箱(内径32cm×51cm×18cm)に防曇フィルムで包装したチンゲンサイ20袋を、横置きして5段に積み重ね、新聞紙で包んだ500gの保冷材を側面に配置して、発泡スチロールのふたを閉じ、ガムテープで周囲をとめた。実施例1と同様に人工気象室で3日間保存し、同様の調査を行った結果、1.5日までは保冷効果が続き、緑色も十分保持された。しかし、それ以降は箱内の温度が上昇してしまい、周囲の温度が下がっても箱内温度は下がらず、葉のふちが黄化してカビの発生が目立つようになった。箱内の空気組成は11〜12%程度の酸素濃度を保っていたが、二酸化炭素濃度が徐々に増加し、3日後では最適MA条件の10%を超えることから、発泡スチロール箱内に長期間入れておくのはチンゲンサイの鮮度保持上問題がある。
実際に市場出荷した事例では、ほぼ密閉状態になっているため真空予冷にかけられず、冷却効果は実施例1に劣った。2日後の外観は、最上部に積み上げられた株の葉のふちに黄化が認められた。
《比較例2》
実施例1で使った普通のダンボール箱に、防曇フィルムで包装したチンゲンサイ10袋を、横置きして3段に積み重ね、ダンボール箱のふたを閉じてガムテープでとめた。実施例1と同様に人工気象室で3日間保存し、同様の調査を行った結果、1日経過時点ですでに黄化が発生し、3日後では全株の葉全体が黄化した。市場出荷した事例では、真空予冷にかけられたため効率よく冷却できたが、MA効果がなく温度の変動も大きいため、2日後には外葉の緑色が全体的に薄くなった。
これらの結果を表1、図1、表2にまとめて示す。これらの結果から明らかに本発明の顕著な効果を確認することができる。
(表1)流通シミュレーション3日後の変化
Figure 0005145597
(表2)現地実証試験における葉色の変化
Figure 0005145597
《比較例3》
実施例1と同様の形態で、内袋の素材を検討した。低密度ポリエチレン厚さ0.04mm、大谷石微粉末添加ポリエチレン厚さ0.02mm、微細孔あきポリプロピレンの3種類を使用し、実施例1と同様の条件で試験を行った。その結果、いずれの資材を内袋として使用した場合にも黄化がみられ、表3のように葉緑素計(値が大きいほど葉の葉緑素が多く、緑色がよく保持されていることを表す。)で測定した葉色の値は、実施例1より低かった。
《比較例4》
上記以外にも、内側にアルミ箔を貼り付けた機能性ダンボールと保冷剤を使用した形態、ダンボール箱に高密度ポリエチレンの内袋を使用して真空予冷にかけた形態(保冷剤は不使用)も実施例1と同様の条件で検討したが、いずれも黄化が激しく、緑色保持効果は実施例1に劣った。
(表3)流通シミュレーション3日後の変化
Figure 0005145597
コストが安く簡易であるため、1円でもコストを下げたい現在の厳しい農産物流通事情を考慮すると、非常に汎用性が高く利用しやすい技術である。安価で手間がかからないわりに黄化抑制効果が高く、特に必要とされる機械等もないため、設備投資も不要である。
本発明の実施形態を示した概略説明図である。 現地実証試験での温度変化を示したグラフである。
符号の説明
31 ダンボール箱
32 内袋
33 防曇フィルム
34 チンゲンサイ
35 保冷材

Claims (1)

  1. 葉菜類の生産地→出荷所→市場→小売店の流通工程における葉菜類の鮮度保持方法であり、防曇フィルムを用いて葉菜類を開放した状態で包装する工程、当該防曇フィルムで包装された葉菜類を保冷剤とともに高密度ポリエチレン製の内袋に収納する工程、高密度ポリエチレン製の内袋を段ボール箱に収納する工程、及び前期流通工程中の葉菜類に対する真空予冷を効率的なものとすべく、防曇フィルムと高密度ポリエチレン製の内袋と段ボール箱によって当該葉菜類を密封しない状態で保持する工程を、葉菜類の生産者が当該生産地で行うことを特徴とする葉菜類の鮮度保持方法。
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