JP5143945B1 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】タイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、前記インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体の7質量%以上で93質量%以下と、β−ピネン成分を含むイソブチレン系変性共重合体の7質量%以上で93質量%以下を含むエラストマー組成物からなるシートで構成され、前記インナーライナーは、タイヤ最大幅位置からビードトウに亘るビード領域Rbの平均厚さGbと、タイヤ最大幅位置からベルト層端の対応位置Luに亘るバットレス領域Rsの平均厚さGsの比Gs/Gbが0.30〜0.75である空気入りタイヤ。
【選択図】図1
Description
本発明においてインナーライナーはスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(以下、「SIBS」ともいう。)とβ−ピネンを含むイソブチレン系変性共重合体を混合したエラストマー成分を含むエラストマー組成物からなる。
SIBSのイソブチレンブロック由来によりSIBSを含むフィルムは優れた耐空気透過性を有するため、これをインナーライナーに用いることで、耐空気透過性に優れた空気入りタイヤを得られる。またSIBSは芳香族以外の分子構造が完全飽和であるため劣化硬化が抑制され、タイヤに適用した場合には優れた耐久性を有する。また、SIBSは耐空気透過性が高いため、ハロゲン化ブチルゴム等の、従来耐空気透過性を付与するために使用されてきた高比重のハロゲン化ゴムを使用する必要がない。従ってタイヤの軽量化が可能であり低燃費性が得られる。
本発明において、イソブチレン系変性共重合体とは、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(A)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(B)とからなるイソブチレン系変性共重合体であって、少なくとも1つのブロックがβ−ピネンを含むランダム共重合体である。
が芳香族ビニル系化合物に由来するユニットが80質量%以上から構成される重合体ブロックである。
イソブチレン系変性共重合体の製造方法は、例えば、特開2010−195969号公報に開示されている。例えば、次の一般式(1)で表される重合開始剤の存在下に、前記単量体成分を重合させて製造できる。
(式中Xはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基またはアシロキシ基から選ばれる置換基、R1、R2はそれぞれ水素原子または炭素数1〜6の1価炭化水素基でR1、R2は同一であっても異なっていても良く、R3は一価若しくは多価芳香族炭化水素基または一価若しくは多価脂肪族炭化水素基であり、nは1〜6の自然数を示す。)
上記一般式(1)で表わされる化合物は開始剤となるものでルイス酸等の存在下炭素陽イオンを生成し、カチオン重合の開始点になる。上記一般式(1)の化合物の例として、ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[C6H4(C(CH3)2Cl)2]、トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[(ClC(CH3)2)3C6H3]がある。
本発明においてインナーライナーのエラストマー組成物は、エラストマー成分の30質量%以下の範囲で、その他の熱可塑性エラストマー、特にスチレン系熱可塑性エラストマーが混合できる。ここでスチレン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとしてスチレンブロックを含む共重合体をいう。例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」ともいう。)、スチレン−イソブチレンブロック共重合体(以下、「SIB」ともいう。)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、「SBS」ともいう。)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレンブロック共重合体(以下、「SEBS」ともいう。)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SEPS」ともいう。)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SEEPS」ともいう。)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SBBS」ともいう。)がある。
<イソブチレン系変性共重合体>
(1)成分A−1:(スチレン/β−ピネン)−イソブチレン−(スチレン/β−ピネン)ブロック共重合体(β−ピネン含量:9.7質量%、数平均分子量(Mn):103,000)。
2Lのセパラブルフラスコの容器内を窒素で置換した後、注射器を用いて、モレキュラーシーブスで乾燥した、n−ヘキサン31.0mL及び同様に乾燥した塩化ブチル294.6mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイスとメタノールの混合バス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー88.9mL(941.6mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.148g(0.6mmol)及びα−ピコリン0.07g(0.8mmol)を加えた。さらに四塩化チタン0.87mL(7.9mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間に、同様な温度で撹拌を行った後、重合溶液から重合溶液の1mLをサンプルとして抜き取った。そして−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー10.4g(99.4mmol)とβ−ピネン6.8g(49.7mmol)を均一に攪拌した後、重合容器内に添加した。スチレンとβ−ピネンを添加して45分後に約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。そしてトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた生成物を60℃で24時間真空乾燥した。GPC法により得られたブロック共重合体の分子量を測定した。数平均分子量(Mn)は103,000、Mw/Mnは1.21である。
2Lのセパラブルフラスコの容器内を窒素で置換した後、注射器を用いてモレキュラーシーブスで乾燥した、n−ヘキサン31.0mL及び同様に乾燥した塩化ブチル294.6mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイスとメタノールの混合バス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー88.9mL(941.6mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.148g(0.6mmol)及びα−ピコリン0.07g(0.8mmol)を加えた。
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素で置換した後、注射器を用いて、モレキュラーシーブスで乾燥した、n−ヘキサン31.0mL及びモレキュラーシーブスで乾燥した塩化ブチル294.6mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイスとメタノール混合バス中につけて冷却した後、β−ピネン3.6g(26.3mmol)を添加した。
器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。さらにp−ジクミルクロライド0.148g(0.6mmol)及びα−ピコリン0.07g(0.8mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン0.87mL(7.9mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から45分後、そして−70℃に冷却したスチレンモノマー10.4g(99.4mmol)を重合容器内に添加した。スチレンを添加してから45分後に約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。さらにトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥した。GPC法により得られたブロック共重合体の分子量を測定した。ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は109,000、Mw/Mnは1.21である。
カネカ(株)社製の「シブスターSIBSTAR 102T(ショアA硬度25、スチレン成分含有量15質量%、重量平均分子量:100,000)」を用いた。
エクソンモービル(株)社製「エクソンクロロブチル1066」を用いた。
天然ゴムは、TSR20を用いた。
フィラーは、東海カーボン(株)社製「シーストV」(N660、N2SA:27m2/g)カーボンブラックを用いた。
上記エラストマー成分に、表1、表2に示す配合内容で熱可塑性エラストマー組成物を調製した。
表1、表2の配合に基づき、イソブチレン系変性共重合体(成分A)およびSIBSのエラストマー成分を、2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)に投入混合してエラストマー組成物のペレットを得た。その後、Tダイ押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイリップ幅:500mm、シリンダ温度:220℃)にてインナーライナー用のシートを作製した。
上述の方法で得られたインナーライナー用シートを使用して生タイヤを準備した。次に加硫工程において、170℃で20分間プレス成型して製造した。タイヤ加硫後に、100℃で3分間冷却して、金型から加硫タイヤ取り出して、図1に示す基本構造を有する195/65R15サイズの空気入りタイヤを製造した。
表1および表2において、SIBS+成分Aの混合層の厚さは、Gs以外の領域の平均厚さを示している。比較例1を除き、いずれの実施例、比較例においても、Gbは0.6mmである。
NR (注2) 20質量部
フィラー(注3) 60質量部
(注1)エクソンモービル(株)社製の「エクソンクロロブチル 1068」。
(注2)TSR20。
(注3)東海カーボン(株)社製の「シーストV」(N660、窒素吸着比表面積:27m2/g)。
実施例1〜6は、SIBSにイソブチレン系変性共重合体(成分A)を混合したエラストマー組成物をインナーライナーに用いた例であり、Gs/Gbの値は0.75である。
実施例、比較例のシート及び空気入りタイヤの性能試験は以下の方法で行った。
JISK−6256「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−接着性の求め方」に準じて、試験片を作成し剥離試験を行った。インナーライナーとカーカスの剥離力を測定した。試験片の大きさは25mm幅で、剥離試験は23℃の室温条件下で行った。インナーライナーとカーカス剥離力は大きいほど好ましい。
JISK−6260「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムのデマチャ屈曲亀裂試験方法」に準じて、中央に溝のある所定の試験片を作製した。インナーライナーは、厚さ0.3mmシートをゴムに貼り付けて加硫し、所定の試験片を作製した。試験片の溝の中心にあらかじめ切り込みを入れ、繰り返し屈曲変形を与え亀裂成長を測定する試験を行った。雰囲気温度23℃、歪30%、周期5Hzで、70万回、140万回、210万回時に亀裂長さを測定し、亀裂が1mm成長するのに要した屈曲変形の繰り返し回数を算出した。比較例1の値を基準(100)として、実施例および比較例のポリマー積層体の屈曲疲労性について指数表示した。数値が大きい方が、亀裂が成長しにくく良好といえる。例えば、実施例1の指数は以下の式で求められる。
<静的空気圧低下率試験>
上述の方法で製造した195/65R15スチールラジアルPCタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、初期空気圧300Kpaを封入し、90日間室温で放置し、空気圧の低下率を計算した。
195/65R15スチールラジアルPCタイヤを周方向に8等分し、それぞれの箇所で、幅20mmでタイヤ径方向に沿って切断した8個のカットサンプルを作成し、この8個のカットサンプルについて、それぞれのバットレス領域Rsとビード領域Rbにおいて等間隔に5等分した5点についてインナーライナー層の厚さを測定した。それぞれ測定した合計40点の測定値の算術平均値をGs、Gbとした。
195/65R15スチールラジアルPCタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、正規の空気圧を充填し、JATMA YEAR BOOKで空気圧−付加能力対応表より、この空気圧に対応する最大荷重を負荷し、速度80km/hでドラム上で走行し、外観目視にて確認可能な損傷が発生した時点で走行を終了し走行距離を求めた。比較例1の走行距離を100とし指数で示す。指数が大きいほど、耐クラック性が優れている。
表1及び表2において、本発明の実施例1〜9は比較例1〜11に比べて、いずれも剥離力、屈曲疲労性、静的空気低下率および耐クラック性において総合的に優れていることが認められる。
Claims (6)
- タイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、
前記インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体の7質量%以上で93質量%以下と、β−ピネン成分を含むイソブチレン系変性共重合体の7質量%以上で93質量%以下が混合されたエラストマー成分を含むエラストマー組成物からなるシートで構成され、
前記インナーライナーは、タイヤ最大幅位置からビードトウに亘るビード領域Rbの平均厚さGbと、タイヤ最大幅位置からベルト層端の対応位置Luに亘るバットレス領域Rsの平均厚さGsの比Gs/Gbが、0.30〜0.75である空気入りタイヤ。 - 前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体はスチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が50,000〜400,000である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記エラストマー組成物のエラストマー成分中にイソブチレン系変性共重合体を10質量%以上で90質量%以下含む請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記イソブチレン系変性共重合体のβ−ピネン含有量が、0.5〜25重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記イソブチレン系変性共重合体の重量平均分子量Mwが30,000〜300,000であり、かつ分子量分布の値(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.3以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記インナーライナーのバットレス領域の平均厚さGsは、0.05〜0.45mmである請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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