JP5603211B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
本発明はタイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤを図に基づいて説明する。図1は、空気入りタイヤの右半分の概略断面図である。図において空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、該トレッド部両端からトロイド形状を形成するようにサイドウォール部3とビード部4とを有している。さらに、ビード部4にはビードコア5が埋設される。また、一方のビード部4から他方のビード部に亘って設けられ、両端をビードコア5のまわりに巻き返して係止されるカーカスプライ6と、該カーカスプライ6のクラウン部外側には、少なくとも2枚のプライよりなるベルト層7とが配置されている。
本発明においてインナーライナーは、タイヤ内側に配置される第1層と、前記カーカスプライのゴム層と接するように配置される第2層で構成されている。そして第1層および第2層のエラストマー組成物の少なくともいずれかは、イソブチレン系変性共重合体を含む。
本発明において、イソブチレン系変性共重合体とは、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(A)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(B)とからなるイソブチレン系変性共重合体であって、少なくとも1つのブロックがβ−ピネンを含むランダム共重合体である。
イソブチレン系変性共重合体の製造方法は、例えば、特開2010−195969号公報に開示されている。例えば、次の一般式(I)で表される重合開始剤の存在下に、前記単量体成分を重合させて製造できる。
(式中Xはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基またはアシロキシ基から選ばれる置換基、R1、R2はそれぞれ水素原子または炭素数1〜6の1価炭化水素基でR1、R2は同一であっても異なっていても良く、R3は一価若しくは多価芳香族炭化水素基または一価若しくは多価脂肪族炭化水素基であり、nは1〜6の自然数を示す。)
上記一般式(1)で表わされる化合物は開始剤となるものでルイス酸等の存在下炭素陽イオンを生成し、カチオン重合の開始点になる。上記一般式(1)の化合物の例として、ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[C6H4(C(CH3)2Cl)2]、トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[(ClC(CH3)2)3C6H3]がある。
本発明において、インナーライナーの第1層に用いられるエラストマー組成物のエラストマー成分は、イソブチレン系変性共重合体単独または、他のエラストマー成分との混合物で構成される。
本発明において、インナーライナーの第2層に用いられるエラストマー組成物のエラストマー成分は、イソブチレン系変性共重合体と他のエラストマー成分との混合物で構成される。
第2層をSISとSIBSの混合物、またはSIBとSIBSの混合物で構成することができる。この場合、SIBSの配合量はエラストマー成分の10〜80質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲で調整される。SIBSが10質量%より少ないと第1層との接着性が低下し、SIBSが80質量%を超えるとカーカスプライとの接着性が低下する傾向がある。
本発明において、前記第1層及び第2層の少なくともいずれかは、エラストマー成分100質量部に対し、粘着付与剤が0.1〜100質量部は配合される。ここで粘着付与剤とは、エラストマー組成物の粘着性を増進するための配合剤をいい、例えば次の粘着付与剤が例示される。
第1層、第2層のエラストマー組成物には、架橋剤、架橋助剤を添加できる。架橋剤は硫黄、テトラメチルチウラムジスルフィド、4,4−ジチオビスモルホリン、有機過酸化物、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ハロメチルフェノールが使用できる。
本発明においてインナーライナーは第1層と第2層で構成されるポリマー積層体が使用される。ここで第1層、第2層は好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物であり、加硫温度、例えば150℃〜180℃において、金型中で軟化状態にある。軟化状態とは、分子運動性が向上し固体と液体の中間状態を意味する。また、熱可塑性エラストマー組成物が軟化状態では、固体状態よりも反応性が向上するため、隣接する部材と粘着、接着する。そのため、熱可塑性エラストマーの形状変化や隣接部材との粘着、融着を防止するために、タイヤの製造の際には、冷却工程を必要とする。冷却工程は、タイヤ加硫後に、10〜300秒間、50〜120℃に急冷し、ブラダー部内を冷却する。冷却媒体としては、空気、水蒸気、水およびオイルより選択される1種以上が使用される。かかる冷却工程を採用することで、インナーライナーを0.05〜0.6mmの範囲の薄いインナーライナーを形成することができる。
本発明の空気入りタイヤは、一般的な製造方法を用いることができる。前記ポリマー積層体PLを用いてインナンーライナーを製造する。空気入りタイヤ1の生タイヤに前記インナーライナーを適用して他の部材とともに加硫成形することによって製造することができる。ポリマー積層体PLを生タイヤに配置する際は、ポリマー積層体PLの第2層であるSIS主体層PL2またはSIB主体層PL3が、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配置する。このように配置すると、タイヤ加硫工程において、SIS主体層PL2またはSIB主体層PL3とカーカス6との接着強度を高めることができる。得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
本発明の第1層および第2層に用いるエラストマーを以下のように調製した。
(1−1)成分A−1:(スチレン/β−ピネン)−イソブチレン−(スチレン/β−ピネン)ブロック共重合体(β−ピネン含量:9.7重量%、数平均分子量(Mn):103,000)。
2Lのセパラブルフラスコの容器内を窒素で置換した後、注射器を用いて、モレキュラーシーブスで乾燥した、n−ヘキサン31.0mL及び同様に乾燥した塩化ブチル294.6mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイスとメタノールの混合バス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー88.9mL(941.6mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.148g(0.6mmol)及びα−ピコリン0.07g(0.8mmol)を加えた。さらに四塩化チタン0.87mL(7.9mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間に、同様な温度で撹拌を行った後、重合溶液から重合溶液の1mLをサンプルとして抜き取った。そして−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー10.4g(99.4mmol)とβ−ピネン6.8g(49.7mmol)を均一に攪拌した後、重合容器内に添加した。スチレンとβ−ピネンを添加して45分後に約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。そしてトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた生成物を60℃で24時間真空乾燥した。GPC法により得られたブロック共重合体の分子量を測定した。数平均分子量(Mn)は103,000、Mw/Mnは1.21である。
2Lのセパラブルフラスコの容器内を窒素で置換した後、注射器を用いてモレキュラーシーブスで乾燥した、n−ヘキサン31.0mL及び同様に乾燥した塩化ブチル294.6mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイスとメタノールの混合バス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー88.9mL(941.6mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.148g(0.6mmol)及びα−ピコリン0.07g(0.8mmol)を加えた。
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素で置換した後、注射器を用いて、モレキュラーシーブスで乾燥した、n−ヘキサン31.0mL及びモレキュラーシーブスで乾燥した塩化ブチル294.6mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイスとメタノール混合バス中につけて冷却した後、β−ピネン3.6g(26.3mmol)を添加した。
攪拌機付き2L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)589mL、n−ブチルクロライド(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)613ml、クミルクロライド0.550gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.35mL、イソブチレン179mLを添加した。さらに四塩化チタン9.4mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら2.0時間反応させた。次に反応容器にスチレン59mLを添加し、さらに60分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤などを除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をメタノール混合物に加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間乾燥することによりスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を得た(スチレン成分含有量:15質量%、重量平均分子量 :70,000)。
カネカ(株)社製の「シブスターSIBSTAR 102T(ショアA硬度25、スチレン成分含有量25質量%、重量平均分子量:100,000)」を用いた。
クレイトンポリマー社製のD1161JP(スチレン成分含有量15質量%、重量平均分子量:150,000)を用いた。
上記エラストマー成分に、表1、表2に示すように添加剤を配合して、第1層および第2層のエラストマー組成物を調整した。
(注2)酸化亜鉛(ZnO):三井金属鉱業(株)社製「亜鉛華1号」。
(注3)ステアリン酸:花王(株)社製、「ステアリン酸ルナックS30」。
(注4)老化防止剤:大内新興化学社製「ノクラック6C」。
(注5)加硫促進剤:大内新興化学社製「ノクセラーDM」。
(注6)硫黄:鶴見化学工業(株)社製「粉末硫黄」。
(注7)粘着防止剤:C9石油樹脂、アルコンP140(荒川化学工業(株)社製、軟化点140℃、重量平均分子量Mw:900)。
(注8)ポリイソプレン:新日本石油(株)社製、「テトラックス 3T」(粘度平均分子量30,000、重量平均分子量、49,000)。
表1、表2の配合に基づき、イソブチレン系変性共重合体、SIBS、SISおよびSIBなどの熱可塑性エラストマーに添加剤を投入し、バンバリーミキサー、ニーダー、2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)にてブレンドして、エラストマー組成物を得た。その後、Tダイ押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイリップ幅:500mm、シリンダ温度:220℃)にてインナーライナーを作製した。なお、インナーライナーの厚さは、0.3mm(第1層:0.25mm、第2層:0.05mm)である。
空気入りタイヤは、図1に示す基本構造を有する195/65R15サイズのものに、表1〜5に示すエラストマー組成物を有する第1層及び第2層のポリマー積層体をインナーライナーに用いて生タイヤを製造し、次に加硫工程において、170℃で20分間プレス成型して製造した。タイヤ加硫後に、金型から取り出すことなく100℃で3分間冷却して加硫タイヤを製造した。
比較例1、3、比較例7〜10は、第1層にSIBSを用い、第2層にSISを用いたポリマー積層体をインナーライナーに用いた例である。比較例2は、第1層にSIBSを用い、第2層にSIBを用いたポリマー積層体をインナーライナーに用いた例である。
実施例1〜6は、第1層にエラストマー成分として、イソブチレン系変性共重合体のみを用い、第2層にSISとイソブチレン系変性共重合体(成分A−1)を用いた例である。実施例7〜9は、第1層にエラストマー成分として、イソブチレン系変性共重合体とIIRの混合物を用い、第2層にSISとイソブチレン系変性共重合体(成分A−1)を用いた例である。
前述の如く製造された空気入りタイヤに関し、以下の方法で性能評価を実施した。
第1層と第2層の未加硫シートを張り合わせて170℃×20分で加硫し、加硫接着力測定用のサンプルを作製する。引張試験機により剥離力を測定することで加硫接着力とした。下記計算式により、比較例1を基準として各配合の加硫接着力を指数で表示した。なお加硫接着力の指数が大きいほど、加硫接着力が高いことを示す。
<屈曲亀裂成長試験>
耐久走行試験は、インナーライナーが割れたり剥がれたりするかどうかで評価した。試作タイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、タイヤ内圧は150KPaで通常よりも低内圧に設定し、荷重は600kg、速度100km/h、走行距離20,000kmでタイヤの内部を観察し、亀裂、剥離の数を測定した。比較例1を基準として、各配合の亀裂成長性を指数で表示した。指数の値が大きいほど、屈曲亀裂成長が小さいことを示す。
<転がり抵抗指数>
(株)神戸製鋼所製の転がり抵抗試験機を用いて、試作タイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、荷重3.4kN、空気圧230kPa、速度80km/hの条件で、室温(30℃)にて走行させて転がり抵抗を測定した。そして、下記の計算式に基づき比較例1を基準100として、実施例の転がり抵抗変化率(%)を指数で表示した。転がり抵抗変化率が大きいほど、転がり抵抗が低減されていることを示す。
<静的空気圧低下率試験>
試作タイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、初期空気圧300kPaを封入し、90日間室温で放置し、空気圧の低下率を計算する。数値が小さいほど、空気圧が減りにくく好ましい。
判定Aは、次の条件をすべて満たしたものをいう。
(b)屈曲亀裂成長性が100以上。
(d)静的空気圧低下率(%/月間)が2.6以下。
(b1)屈曲亀裂成長性が100より低い。
(d1)静的空気圧低下率(%/月間)が2.7以上。
Claims (2)
- 一対のビード部の間に装架されたカーカスプライのタイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、
前記インナーライナーは、タイヤ内側に配置される第1層と、前記カーカスプライのゴム層と接するように配置される第2層で構成されており、
前記第1層のエラストマー組成物は、エラストマー成分がイソブチレンを主体とする重合体ブロック(A)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(B)とからなるイソブチレン系ブロック共重合体であって、少なくとも一つのブロックがβ−ピネンを含むランダム共重合体であるイソブチレン系変性共重合体を10質量%以上100質量%以下、および、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を0質量%以上50質量%以下含み、
前記第2層のエラストマー組成物は、エラストマー成分が前記イソブチレン系変性共重合体を5質量%以上80質量%以下、および、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンブロック共重合体の少なくともいずれかを含み、
前記イソブチレン系変性共重合体のβ−ピネン含有量が、0.5〜25重量%である、
空気入りタイヤ。 - 前記イソブチレン系変性共重合体は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体又はスチレン−イソブチレンブロック共重合体のスチレンブロックにβ−ピネンが含まれている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
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