JP2012102269A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一対のビード部の間に装架されたカーカスプライのタイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、前記インナーライナーは、タイヤ内側に配置される第1層と、前記カーカスプライのゴム層と接するように配置される第2層で構成されており、前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体のスチレンブロック部分が不飽和結合を有する酸塩化物もしくは酸無水物で変性されたSIBS変性共重合体を含むエラストマー組成物であり、前記第2層は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンブロック共重合体の少なくともいずれかを含むエラストマー組成物であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【選択図】図1
Description
本発明はタイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤを図に基づいて説明する。図1は、空気入りタイヤの右半分の概略断面図である。図において空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、該トレッド部両端からトロイド形状を形成するようにサイドウォール部3とビード部4とを有している。さらに、ビード部4にはビードコア5が埋設される。また、一方のビード部4から他方のビード部に亘って設けられ、両端をビードコア5のまわりに巻き返して係止されるカーカスプライ6と、該カーカスプライ6のクラウン部外側には、少なくとも2枚のプライよりなるベルト層7とが配置されている。
本発明においてインナーライナーは、タイヤ内側に配置され、且つエラストマー組成物よりなる第1層と、前記カーカスプライのゴム層と接して配置されるエラストマー組成物よりなる第2層で構成されている。ここでエラストマー組成物とは、ポリマー成分として熱可塑性エラストマーまたはゴム成分を含む組成物を意味する。但し、添加剤として配合するゴム成分、例えば、ポリイソブチレンは、本発明においては、エラストマー成分には含めないものとする。
前記第1層は、SIBS変性共重合体をエラストマー成分の10質量%〜100質量%含む組成物である。ここでSIBS変性共重合体は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIBS」ともいう。)のスチレンブロック部分が不飽和結合を有する酸塩化物もしくは酸無水物で変性されたものであり、分子鎖中に次の式(1)の化学構造を含んでいる。
本発明で変性に用いられる不飽和結合を有する酸塩化物とは、メタクリル酸クロライド、メタクリル酸ブロマイド、メタクリル酸ヨウダイド、アクリル酸クロライド、アクリル酸ブロマイド、アクリル酸ヨウダイド、クロトニル酸クロライドおよびクロトニル酸ブロマイドが例示される。特に、メタクリル酸クロライド、アクリル酸クロライドが好適である。
SIBSは、一般的なビニル系化合物のリビングカチオン重合法により得ることができ。例えば、特開昭62−48704号公報および特開昭64−62308号公報には、イソブチレンと他のビニル化合物とのリビングカチオン重合が可能であり、ビニル化合物にイソブチレンと他の化合物を用いることでポリイソブチレン系のブロック共重合体を製造できることが開示されている。
前記第1層はSIBS変性共重合体を主体とするエラストマー組成物である。即ち、エラストマー成分中にSIBS変性共重合体を90質量%以上含む。ここでエラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマーなどが好適に使用できる。
第1層の厚さは、0.05〜0.6mmである。第1層の厚さが0.05mm未満であると、第1層と第2層よりなるポリマー積層体をインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、第1層がプレス圧力で破れてしまい、得られたタイヤにおいてエアーリーク現象が生じる虞がある。一方、第1層の厚さが0.6mmを超えるとタイヤ重量が増加し、低燃費性能が低下する。第1層の厚さは、さらに0.05〜0.4mmであることが好ましい。第1層は、押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーをフィルム化する通常の方法が採用できる。
前記第2層は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンブロック共重合体の少なくともいずれかの熱可塑性エラストマーを含む組成物である。また第2層はSIBS変性共重合体、スチレン系熱可塑性エラストマーまたはゴム成分を含むことができる。SIBS変性共重合体は、熱可塑性エラストマー成分全体の5〜80質量%、好ましくは10〜80質量%の範囲である。SIBS変性体共重合体が、5質量%未満の場合は、第1層との加硫接着力が低下する可能性があり、80質量%を超えるとカーカスプライとの接着力が低下する可能性がある。
本発明では第2層をSISとSIBSの混合物、またはSIBとSIBSの混合物で構成することができる。この場合、SIBSの配合量は、エラストマー成分の10〜80質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲で調整される。SIBSが10質量%より少ないと第1層との接着性が低下し、SIBSが80質量%を超えるとカーカスプライとの接着性が低下する傾向がある。
本発明において、前記第1層及び第2層の少なくともいずれかは、エラストマー成分100質量に対し、粘着付与剤が0.1〜100質量部は配合される。ここで粘着付与剤とは、エラストマー組成物の粘着性を増進するための配合剤をいい、例えば次の粘着付与剤が例示される。
本発明において、インナーライナーは前記第1層と第2層で構成されるポリマー積層体が使用される。ここで第1層、第2層はエラストマー、特に熱可塑性エラストマーの組成物であり、加硫温度、例えば150℃〜180℃において、金型中で軟化状態にある。軟化状態とは、分子運動性が向上し固体と液体の中間状態を意味する。また、熱可塑性エラストマー組成物が軟化状態では、固体状態よりも反応性が向上するため、隣接する部材と粘着、接着する。そのため、熱可塑性エラストマーの形状変化や隣接部材との粘着、融着を防止するために、タイヤの製造の際には、冷却工程を設けることが好ましい。冷却工程は、タイヤ加硫後に、10〜300秒間、50〜120℃に急冷しブラダー部内を冷却することができる。冷却媒体としては、空気、水蒸気、水およびオイルより選択される1種以上が使用される。かかる冷却工程を採用することで、インナーライナーを0.05〜0.6mmの範囲の薄いインナーライナーを形成することが容易となる。
本発明の空気入りタイヤは、一般的な製造方法を用いることができる。まず前記ポリマー積層体PLを用いてインナンーライナーを製造する。空気入りタイヤ1の生タイヤに前記インナーライナーを適用して他の部材とともに加硫成形することによって製造することができる。ポリマー積層体PLを生タイヤに配置する際は、ポリマー積層体PLの第2層であるSIS層PL2またはSIB層PL3が、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配置する。このように配置すると、タイヤ加硫工程において、SIS層PL2またはSIB層PL3とカーカス6との接着強度を高めることができる。得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
本発明の第1層および第2層よりなるポリマー積層体の製造に用いた熱可塑性エラストマー(SIB、SIBSおよびSIS)は以下のとおり調整した。
攪拌機付き2L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)589mL、n−ブチルクロライド(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)613ml、クミルクロライド0.550gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.35mL、イソブチレン179mLを添加した。さらに四塩化チタン9.4mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら2.0時間反応させた。次に反応容器にスチレン59mLを添加し、さらに60分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤などを除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をメタノール混合物に加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間乾燥することによりスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を得た(スチレン成分含有量:15質量%、重量平均分子量:70,000)。
カネカ(株)社製の「シブスターSIBSTAR 102T(ショアA硬度25、スチレン成分含有量25質量%、重量平均分子量:100,000)」を用いた。
クレイトンポリマー社製のD1161JP(スチレン成分含有量15質量%、重量平均分子量:150,000)を用いた。
2リットルのセパラブルフラスコにスチレン―イソブチレンブロック共重合体75g(スチレン含量30%、スチレンユニットのモル数0.216モル)を入れて、容器内を窒素で置換した。注射器を用いて、モレキュラーシーブスで乾燥したn−ヘキサン1200mL及びモレキュラーシーブスで乾燥したn−ブチルクロリド1800ミリリットルを加えた。
(注2)カーボンブラック(CB):東海カーボン(株)社製「シーストV」(N660、N2SA:27m2/g)。
(注3)酸化亜鉛(ZnO):三井金属鉱業(株)社製「亜鉛華1号」。
(注4)ステアリン酸:花王(株)社製、「ステアリン酸ルナックS30」。
(注5)老化防止剤:大内新興化学社製「ノクラック6C」。
(注6)加硫促進剤:大内新興化学社製「ノクセラーDM」。
(注7)硫黄:鶴見化学工業(株)社製「粉末硫黄」。
(注8)粘着防止剤:C9石油樹脂、アルコンP140(荒川化学工業(株)社製、軟化点140℃、重量平均分子量Mw:900)。
(注9)ポリイソブチレン:新日本石油(株)社製、「テトラックス3T」(粘度平均分子量30,000、重量平均分子量、49,000)。
表1、表2の実施配合、比較配合に基づき、SIBS変性共重合体、SIBS、SISおよびSIBなどのエラストマー組成物を、2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)にてペレット化した。その後、Tダイ押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイリップ幅:500mm、シリンダ温度:220℃、フィルムゲージ:第1層は0.25mm、第2層は0.05mm)にてインナーライナーを作製した。
空気入りタイヤは、図1に示す基本構造を有する195/65R15サイズのものに、上記ポリマー積層体をインナーライナーに用いて生タイヤを製造し、次に加硫工程において、170℃で20分間プレスを行い、加硫金型から取り出すことなく、110℃で3分間冷却した後、加硫金型から取り出した。冷却媒体としては、水が使用された。
比較例1、3、比較例7〜10は、第1層にSIBSを用い、第2層にSISを基本配合とするインナーライナーを用いた例である。比較例2は、第1層にSIBSを用い、第2層にSIBを用いたインナーライナーを用いた例である。
第1層にSIBS変性共重合体の配合量を変更した組成物を用い、第2層にSISと変性SIBSの混合物を用いた例である。実施例1〜11は、いずれも比較例1よりも、加硫接着力、屈曲亀裂成長性、転がり抵抗性および静的空気低下率が改善されていることが認められる。
実施例12〜16は、第1層にSIBS変性共重合体のみの組成物に、第2層にSIBS変性共重合体とSISの混合物を用いたものである。実施例12〜16は、いずれも比較例1よりも、加硫接着力、屈曲亀裂成長性、転がり抵抗性および静的空気低下率が改善されていることが認められる。
前述の如く製造された空気入りタイヤに関し、以下の性能評価をおこなった。
第1層と第2層の未加硫シートを張り合わせて170℃×20分で加硫し、加硫接着力測定用のサンプルを作製する。引張試験機により剥離力を測定することで加硫接着力とした。下記計算式により、比較例1を基準として各配合の加硫接着力を指数で表示した。なお加硫接着力の指数が大きいほど、加硫接着力が高いことを示す。
<屈曲亀裂成長試験>
耐久走行試験は、インナーライナーが割れたり剥がれたりするかどうかで評価した。試作タイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、タイヤ内圧は150KPaで通常よりも低内圧に設定し、荷重は600kg、速度100km/h、走行距離20,000kmでタイヤの内部を観察し、亀裂、剥離の数を測定した。比較例1を基準として、各配合の亀裂成長性を指数で表示した。指数の値が大きいほど、屈曲亀裂成長が小さいことを示す。
<転がり抵抗指数>
(株)神戸製鋼所製の転がり抵抗試験機を用いて、試作タイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、荷重3.4kN、空気圧230kPa、速度80km/hの条件で、室温(30℃)にて走行させて転がり抵抗を測定した。そして、下記の計算式に基づき比較例1を基準100として、実施例の転がり抵抗変化率(%)を指数で表示した。転がり抵抗変化率が大きいほど、転がり抵抗が低減されていることを示す。
<静的空気圧低下率試験>
試作タイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、初期空気圧300kPaを封入し、90日間室温で放置し、空気圧の低下率を計算する。数値が小さいほど、空気圧が減りにくく好ましい。
判定Aは、次の条件をすべて満たしたものをいう。
(b)屈曲亀裂成長性が100以上。
(d)静的空気圧低下率(%/月間)が2.6以下。
(b)屈曲亀裂成長性が100より低い。
(d)静的空気圧低下率(%/月間)が2.7以上。
Claims (6)
- 一対のビード部の間に装架されたカーカスプライのタイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、
前記インナーライナーは、タイヤ内側に配置される第1層と、前記カーカスプライのゴム層と接するように配置される第2層で構成されており、
前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体のスチレンブロック部分が不飽和結合を有する酸塩化物もしくは酸無水物で変性されたSIBS変性共重合体を含むエラストマー組成物であり、
前記第2層は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンブロック共重合体の少なくともいずれかを含むエラストマー組成物であることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記第1層は、SIBS変性共重合体の配合量がエラストマー成分の10質量%〜100質量%の範囲である請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記第2層は、SIBS変性共重合体を含み、その配合量が熱可塑性エラストマー成分の5質量%〜80質量%の範囲である請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体とSIBS変性共重合体の混合物である請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記第1層および第2層のいずれかは、粘着付与剤が配合されている請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記第1層および第2層の少なくともいずれかは、ゴム成分がエラストマー成分の5〜75質量%配合されている請求項1記載の空気入りタイヤ。
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