JP5143039B2 - センサ付車輪用軸受 - Google Patents
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特に、振幅値を用いる演算では少なくとも1周期の信号が必要となるうえ、低速回転時には振幅の推定精度がさらに低下することは避けられず、荷重推定誤差が大きくなってしまう。
車輪のタイヤと路面間に荷重が作用すると、車輪用軸受の固定側部材(例えば外方部材)にも荷重が印加されて変形が生じる。ここではセンサユニットにおける歪み発生部材の2つ以上の接触固定部が、外方部材に接触固定されているので、外方部材の歪みが歪み発生部材に拡大して伝達され易く、その歪みがセンサで感度良く検出される。
特に、センサユニットのセンサの出力信号の平均値を用いて車輪用軸受に作用する荷重を演算・推定する第1の荷重推定手段と、センサ出力信号の振幅値、またはその振幅値と前記平均値とを用いて車輪用軸受に作用する荷重を演算・推定する第2の荷重推定手段とを設け、これら両荷重推定手段のうちいずれかの推定する荷重値を、車輪回転速度に応じて切り替え選択して出力する選択出力手段を設けているので、車輪が静止あるいは低速状態にあるときには時間平均処理をすることなく求められる平均値から得られる第1の荷重推定手段の推定荷重値を出力することで、検出処理時間を短くできる。また、車輪が通常回転状態にあるときには、センサ出力信号の平均値と振幅値を精度良く演算できるので、振幅値、または平均値と振幅値とから得られる第2の荷重推定手段の推定荷重値を出力することで、推定荷重値の誤差が小さくなり、検出遅延時間も十分小さくなる。
その結果、車輪にかかる荷重を正確に推定でき、かつ検出した荷重信号を遅延なく出力できる。このため、その荷重信号を利用した車両の制御の応答性や制御性が向上し、より安全性や走行安定性を高めることができる。
この場合に、例えば、前記第1の荷重推定手段および第2の荷重推定手段における前記2つのセンサの出力信号の平均値は、前記2つのセンサの出力信号を加算することで得て、前記第2の荷重推定手段における前記振幅値は、前記2つのセンサの出力信号の差分値より算出しても良い。
軸受回転による発熱や周辺環境などにより車輪用軸受の温度が変化すると、荷重が変化しなくても、センサユニットのセンサ出力信号は熱膨張などにより変動するので、検出された荷重に温度の影響が残る。そこで、車輪用軸受の温度またはその周辺温度に応じてセンサ出力信号の平均値を補正する温度補正手段を設けると、温度による検出荷重誤差を低減することができる。
車輪が静止あるいは低速状態では、振幅値を演算するのにセンサ出力信号の1周期分の時間を要し、推定荷重値の出力の時間遅れが大きくなるが、平均値のみから荷重値を演算する第1の荷重推定手段からは検出した荷重信号を遅延なく出力できる。
内方部材2は回転側部材となるものであって、車輪取付用のハブフランジ9aを有するハブ輪9と、このハブ輪9の軸部9bのインボード側端の外周に嵌合した内輪10とでなる。これらハブ輪9および内輪10に、前記各列の転走面4が形成されている。ハブ輪9のインボード側端の外周には段差を持って小径となる内輪嵌合面12が設けられ、この内輪嵌合面12に内輪10が嵌合している。ハブ輪9の中心には貫通孔11が設けられている。ハブフランジ9aには、周方向複数箇所にハブボルト(図示せず)の圧入孔15が設けられている。ハブ輪9のハブフランジ9aの根元部付近には、車輪および制動部品(図示せず)を案内する円筒状のパイロット部13がアウトボード側に突出している。
F=M1×S ……(1)
という関係で表すことができ、この関係式(1)から荷重Fを推定することができる。ここで、M1は所定の補正係数行列である。
前記第1の荷重推定手段31では、複数のセンサユニットからの平均値信号からオフセット分を除外した平均値ベクトルAを用いて、この変数に所定の補正係数M1を乗算した一次式、つまり
F=M1×A ……(2)
から荷重Fを演算・推定する。
F=M2×A+M3×B ……(3)
から荷重Fを演算・推定する。このように2種類の変数を用いることで、荷重推定精度をさらに向上させることができる。
上記各演算式における各補正係数の値は、予め試験やシミュレーションで求めておいて設定する。前記第1の荷重推定手段31および第2の荷重推定手段32による演算は並行して行なわれる。なお、式(3)において、変数である平均値Aを省略しても良い。つまり、第2の荷重推定手段32では、振幅値Bのみを変数として用いて荷重Fを演算・推定することもできる。
この場合に、2つの歪みセンサ22A,22Bの前記円周方向の間隔を、転動体5の配列ピッチPの{1/2+n(n:整数)}倍、またはこれらの値に近似した値としても良い。この場合にも、両歪みセンサ22A,22Bの出力信号a,bの和として求められる平均値Aは転動体5の通過による変動成分をキャンセルした値となり、差分から求められる振幅値Bは温度の影響を受けにくいため安定しており、さらに2つの信号を使用するため検出精度が高められる。
車輪の低速回転時には、センサ出力信号の振幅を検出するための処理時間が長くなり、さらに静止時には振幅の検出そのものが不可能になる。そこで、このように、車輪回転速度が所定の下限速度よりも低い場合に、平均値Aだけを用いた第1の荷重推定手段31からの荷重推定値を選択して出力することにより、検出した荷重信号を遅延なく出力することができる。
軸受回転による発熱や周辺環境などにより車輪用軸受の温度が変化すると、荷重が変化しなくても、センサユニット20A,20Bのセンサ出力信号は熱膨張などにより変動するので、検出された荷重に温度の影響が残る。そこで、車輪用軸受の温度またはその周辺温度に応じてセンサ出力信号の平均値Aを補正する温度補正手段35を設けると、温度による検出荷重誤差を低減することができる。
その結果、車輪にかかる荷重を正確に推定でき、かつ検出した荷重信号を遅延なく出力できる。このため、その荷重信号を利用した車両の制御の応答性や制御性が向上し、より安全性や走行安定性を高めることができる。
このように4つのセンサユニット20A〜20Dを配置することで、車輪用軸受に作用する垂直方向荷重Fz 、駆動力や制動力となる荷重Fx 、軸方向荷重Fy を推定することができる。
また、これらの実施形態では第3世代型の車輪用軸受に適用した場合につき説明したが、この発明は、軸受部分とハブとが互いに独立した部品となる第1または第2世代型の車輪用軸受や、内方部材の一部が等速ジョイントの外輪で構成される第4世代型の車輪用軸受にも適用することができる。また、このセンサ付車輪用軸受は、従動輪用の車輪用軸受にも適用でき、さらに各世代形式のテーパころタイプの車輪用軸受にも適用することができる。
2…内方部材
3,4…転走面
5…転動体
20,20A〜20D…センサユニット
21…歪み発生部材
21a…接触固定部
22,22A,22B…歪みセンサ
31…第1の荷重推定手段
32…第2の荷重推定手段
33…選択出力手段
34…温度センサ
Claims (12)
- 複列の転走面が内周に形成された外方部材と、前記転走面と対向する転走面が外周に形成された内方部材と、両部材の対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、
上記外方部材および内方部材のうちの固定側部材に、この固定側部材に接触して固定される2つ以上の接触固定部を有する歪み発生部材、およびこの歪み発生部材に取付けられてこの歪み発生部材の歪みを検出する1つ以上のセンサからなる荷重検出用センサユニットを設けてなるセンサ付車輪用軸受であって、
前記センサの出力信号の平均値を用いて車輪用軸受に作用する荷重を演算・推定する第1の荷重推定手段と、前記センサの出力信号の振幅値、またはその振幅値と前記平均値とを用いて車輪用軸受に作用する荷重を演算・推定する第2の荷重推定手段と、車輪回転速度に応じて、前記第1および第2の荷重推定手段のうちいずれか一方の推定荷重値を切り替え選択して出力する選択出力手段とを設け、前記センサユニットは3つ以上の接触固定部と2つのセンサを有し、隣り合う第1および第2の接触固定部の間、および隣り合う第2および第3の接触固定部の間に各センサをそれぞれ取付け、隣り合う接触固定部もしくは隣り合うセンサの前記固定部材の円周方向についての間隔を、転動体の配列ピッチの{1/2+n(n:整数)}倍とし、前記第1および第2の荷重推定手段は前記2つのセンサの出力信号の和を平均値として用いるものとしたことを特徴とするセンサ付車輪用軸受。 - 請求項1において、前記第1の荷重推定手段は前記2つのセンサの出力信号の平均値を用いて車輪用軸受に作用する荷重を演算・推定するものとし、前記第2の荷重推定手段は前記2つのセンサの出力信号の平均値と振幅値とを用いて車輪用軸受に作用する荷重を演算・推定するものとしたセンサ付車輪用軸受。
- 請求項2において、前記第1の荷重推定手段および第2の荷重推定手段における前記2つのセンサの出力信号の平均値は、前記2つのセンサの出力信号を加算することで得るものとしたセンサ付車輪用軸受。
- 請求項1ないし請求項3いずれか1項において、前記第1および第2の荷重推定手段は、いずれも、前記3つ以上のセンサユニットのセンサの出力信号から車輪用軸受の径方向の上下および前後に作用する各径方向荷重と、車輪用軸受の軸方向に作用する軸方向荷重との3方向の荷重を演算・推定するものとしたセンサ付車輪用軸受。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記センサユニットを、タイヤ接地面に対して上下位置および左右位置となる前記固定側部材の外径面の上面部、下面部、右面部、および左面部に円周方向90度の位相差で4つ等配したセンサ付車輪用軸受。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記センサユニットに温度センサを取付け、この温度センサの検出信号により前記センサ出力信号の平均値を補正する温度補正手段を設けたセンサ付車輪用軸受。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、車輪回転速度が、設定された下限速度よりも低い場合に、前記選択出力手段は第1の荷重推定手段の推定荷重値を選択して出力するものとしたセンサ付車輪用軸受。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記第1および第2の荷重推定手段は並行して荷重を演算・推定し、前記選択出力手段は、車輪回転速度に応じて前記両荷重推定手段のうちいずれか一方の推定荷重値を選択して出力するものとしたセンサ付車輪用軸受。
- 請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記選択出力手段は、外部から車輪回転速度の情報を受けて前記車輪回転速度に応じた前記選択を行うものとしたセンサ付車輪用軸受。
- 請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、前記選択出力手段は、前記センサの出力信号から転動体の通過周波数を検出して車輪回転速度を推定し、その推定した車輪回転速度により前記車輪回転速度に応じた前記選択を行うものとしたセンサ付車輪用軸受。
- 請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、前記選択出力手段は、車体側から供給される回転センサ信号から車輪回転速度を推定し、その推定した車輪回転速度により、前記車輪回転速度に応じた前記選択を行うものとしたセンサ付車輪用軸受。
- 請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、前記選択出力手段は、車体側の制御装置から車輪回転速度に応じた切り替え選択指令を受けて、前記選択を行うものとしたセンサ付車輪用軸受。
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