JP5140238B2 - 塗料組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、耐汚染性に優れた塗料組成物に関するものである。
建築物、土木構築物等においては、その躯体の保護や美観性の向上等を目的として、各種の塗料によって塗装仕上げが行われている。しかし、近年、都市部等においては、自動車等からの排出ガスによって大気中に油性の汚染物質等が浮遊しており、これら汚染物質により塗膜表面が汚染されやすい状況となっている。
これに対し、耐汚染性の向上を図る技術として、塗料にテトラアルコキシシラン化合物を配合する手法が種々提案されている。例えば、WO94/06870号公報(特許文献1)には、有機塗料組成物にメチルシリケート等のテトラアルコキシシラン化合物を混合して得られる上塗り塗料組成物が開示されている。また、特開平9-169847号公報(特許文献2)には、有機樹脂に、重量平均分子量が600〜2200であるテトラアルコキシシラン化合物を配合してなる硬化性組成物が開示されている。これら特許文献に記載の塗料では、テトラアルコキシシラン化合物によって塗膜表面に親水性が付与され、塗膜に付着した汚染物質が降雨時に洗い流される、という作用により耐汚染性が発現される。
しかしながら、このような特許文献に記載の塗料では、塗膜形成初期段階では十分な耐汚染性効果が得られにくい等、耐汚染性の点において改善の余地がある。
上記問題点に対し、特開平10−36775号公報(特許文献3)では、樹脂及びテトラアルコキシシラン化合物を含有する塗料組成物に、アミノ基含有化合物を配合することが提案されている。この特許文献3の塗料では、アミノ基含有化合物の作用により、形成塗膜の耐汚染性を向上させることができ、さらに塗料の硬化性が改善できることも記載されている。
WO94/06870号公報 特開平9-169847号公報 特開平10−36775号公報
ところで、上記特許文献のようにテトラアルコキシシラン化合物を含有する塗料は、通常、樹脂成分等を含む主剤と、テトラアルコキシシラン化合物等を含む硬化剤からなる2液型塗料として提供されている。これは、樹脂成分とテトラアルコキシシラン化合物が長期にわたり混在した状態では、テトラアルコキシシラン化合物の反応を制御することが難しく、安定した性能の塗料が得られない等の理由によるものである。
主剤と硬化剤からなる2液型塗料では、塗装前に主剤と硬化剤を混合した後、その混合物を塗装に供する。このような2液型塗料における重要な性能のひとつとして、ポットライフが挙げられる。ポットライフとは「幾つかの成分に分けて供給される塗料を混合した後、使用できる最長の時間」のことである。2液型塗料を用いて塗装を行う際、このようなポットライフは、安定した性能を得るための指標となるものである。
上記特許文献3の塗料では、主剤・硬化剤混合直後に形成した塗膜については、耐汚染性等の改善効果を得ることができる。しかし、主剤・硬化剤混合後、塗装を行うまでの時間が長くなると、その効果は発現され難くなる傾向がある。すなわち、形成塗膜における耐汚染性等の性能発現の観点からすると、特許文献3記載の塗料のポットライフは十分とは言えず、実用上改善の余地がある。
本発明は、かかる実情に鑑みなされたものであり、テトラアルコキシシラン化合物を含有する塗料において、実用上十分なポットライフを確保し、耐汚染性等の性能を改善することを目的とするものである。
上記目的を達成するため本発明者は鋭意検討の結果、樹脂成分、テトラアルコキシシラン化合物、アミノ基含有化合物と併せて特定のケトン化合物を配合せしめることによって、ポットライフ内におけるテトラアルコキシシラン化合物とアミノ基との相互作用を最適化することができ、耐汚染性等の性能が向上できることを見出し、本発明の完成に到った。
すなわち、本発明の塗料組成物は以下の特徴を有するものである。
1.(A)水酸基含有非水系樹脂、
(B)テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの縮合物、及びこれらの変性物、から選ばれるテトラアルコキシシラン化合物、
(C)アミン化合物として光安定剤、
(D)沸点が260℃以下であるβ‐ジケトン化合物、及び
(E)イソシアネート化合物、
を必須成分とし、(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分をSiO換算で0.1〜50重量部、(C)成分を0.01〜20重量部、(D)成分を0.01〜50重量部含み、
(A)成分、(C)成分、及び(D)成分を含む主剤と、(B)成分及び(E)成分を含む硬化剤からなる2液型塗料であることを特徴とする塗料組成物。
2.(A)水酸基含有非水系樹脂、
(B)テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの縮合物、及びこれらの変性物、から選ばれるテトラアルコキシシラン化合物、
(D)沸点が260℃以下であるβ‐ジケトン化合物及び
(E)イソシアネート化合物、
を必須成分とし、前記(A)成分として(A')アミノ基含有非水系樹脂を含み、
(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分をSiO換算で0.1〜50重量部、(D)成分を0.01〜50重量部含み、
(A)成分及び(D)成分を含む主剤と、(B)成分及び(E)成分を含む硬化剤からなる2液型塗料であることを特徴とする塗料組成物。



本発明の塗料組成物では、主剤と硬化剤を混合後、塗装を行うまでの時間経過が塗料性能や塗膜性能に与える影響を抑えることができる。すなわち、本発明組成物では、実用上十分なポットライフを確保することができ、耐汚染性等において安定した性能を発揮することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の塗料組成物では、樹脂成分として(A)非水系樹脂(以下「(A)成分」という)を使用するものである。この(A)成分は、水以外の有機溶剤を媒体とする樹脂である。
(A)成分の媒体の種類は特に限定されず、芳香族炭化水素系溶剤を主成分とする強溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする弱溶剤等が使用可能である。具体的に芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等が挙げられ、脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカンのほか、テルピン油やミネラルスピリット等が挙げられる。このうち、脂肪族炭化水素系溶剤は、安全衛生や環境対応の点において好ましいものである。
(A)成分を構成する樹脂の種類としては、例えば、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコン樹脂、ふっ素樹脂等、あるいはこれらを複合したもの等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。(A)成分の形態は、溶剤可溶形樹脂、非水分散形樹脂のいずれであってもよく、これら両方の形態の樹脂を併用することもできる。
(A)成分が架橋反応基を有する場合は、当該架橋反応基と反応可能な架橋剤を併せて使用することもできる。例えば、(A)成分が水酸基を有する場合には、イソシアネート化合物を架橋剤として使用することができる。
(A)成分のガラス転移温度(以下「Tg」という)は、通常−20〜80℃、好ましくは−5〜60℃である。(A)成分のTgが−20℃より低い場合は、耐汚染性が不十分となるおそれがある。Tgが80℃より高い場合は、塗膜に割れが発生しやすくなる。なお、ここに言うTgは、(A)成分を構成するモノマーの種類とその構成比率から、Foxの計算式によって求められる値である。
(A)成分の重量平均分子量は、通常2000〜500000、好ましくは10000〜300000である。なお、ここに言う重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算で算出される値である。
本発明では、(A)成分として、(A')アミノ基含有非水系樹脂(以下「(A')成分」という)を使用することができる。(A')成分のアミノ基は、後述の(B)テトラアルコキシシラン化合物との相互作用により、耐汚染性、硬化性等の向上効果をもたらすものである。このような(A')成分を使用する場合、後述の(C)アミン化合物は配合しなくてもよい。(A)成分全体に占める(A’)成分の固形分比率は、通常5重量%以上(好ましくは10重量%以上)とすればよい。(A)成分として(A’)成分のみを使用することもできる。
(A')成分のアミン価は、通常0.05〜5KOHmg/g、好ましくは0.1〜3KOHmg/gである。なお、ここに言うアミン価は、樹脂1g中に含まれるアミノ基を中和するのに必要な塩酸のmg数であり、電位差滴定法によって測定した後、水酸化カリウムの当量に換算した値である。
(A')成分にアミノ基を導入するには、樹脂重合時にアミノ基含有モノマーをその他のモノマーと共重合すればよい。アミノ基含有モノマーとしては、例えば、第1級アミノ基含有モノマー、第2級アミノ基含有モノマー、第3級アミノ基含有モノマーが挙げられ、これらモノマーから選ばれる1種または2種以上を使用することができる。この中でも第3級アミノ基含有モノマーが好適である。
第1級アミノ基含有モノマーの具体例としては、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート、p−アミノスチレン、アリルアミン等が例示できる。
第2級アミノ基含有モノマーとしては、例えば、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド,N−メチロールアクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタアクリルアミド、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
第3級アミノ基含有モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸またはメタアクリル酸のエステル;ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジヘキシルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;ジメチルアミノエチルスチレン、ジエチルアミノエチルスチレン、ジプロピルアミノエチルスチレン、ジオクチルアミノエチルスチレン等のスチレン誘導体;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等のピペリジン化合物誘導体;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等のピリジル基含有ビニル化合物等が挙げられる。
本発明における(B)テトラアルコキシシラン化合物(以下「(B)成分」という。)は、塗膜表面を親水化し、耐汚染性を高める役割を担うものである。(B)成分としては、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの縮合物、及びこれらの変性物等が使用できる。テトラアルコキシシランとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、モノエトキシトリメトキシシラン、モノブトキシトリメトキシシラン、モノペントキシトリメトキシシラン、モノヘトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン等が挙げられる。(B)成分の平均縮合度は、通常1〜100、好ましくは4〜20程度である。
(B)成分としては、(A)成分との相溶性、塗膜表面への局在化のしやすさ、あるいは表面親水化の早期発現の点等により、(B−1)炭素数が1〜2のアルコキシル基と、炭素数が3〜12のアルコキシル基を含有するアルコキシシランの縮合物(以下「(B−1)成分」という。)を使用することが望ましい。特に、(B−1)成分としては、その化合物全体のアルコキシル基のうち、5〜50当量%が炭素数3〜12のアルコキシル基となるようにしたものが好適である。炭素数3〜12のアルコキシル基としては、例えば、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基等の直鎖アルコキシル基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、1−メチルヘキシルオキシ基、1−エチルペンチルオキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、1,5−ジメチルヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、1−メチルヘプチルオキシ基、t−オクチルオキシ基等の分岐アルコキシル基等が挙げられる。(B−1)成分が分岐アルコキシル基を有する場合は、とりわけ塗膜の表面親水化や耐割れ性等の点において好適である。
このような(B−1)成分は、公知の方法により製造することができる。(B−1)成分の製造方法としては、例えば、炭素数1〜2のアルコキシル基を有するテトラアルコキシシラン縮合物を、炭素数3〜12のアルコールでエステル交換反応により変性する方法等が挙げられる。
(B)成分の混合比率は、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、SiO換算で通常0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部である。(B)成分が0.1重量部未満では塗膜の親水性が十分とならないため耐汚染性に劣り、50重量部を越えると、硬化塗膜の外観が悪化したり、クラックが生じるといった問題が発生しやすくなる。
なお、本発明におけるSiO換算とは、アルコキシシランやシリケート等のSi−O結合をもつ化合物を、完全に加水分解した後に、900℃で焼成した際にシリカ(SiO)となって残る重量分にて表したものである。
一般に、アルコキシシランやシリケートは、水と反応して加水分解反応が起こりシラノールとなり、さらにシラノール同士やシラノールとアルコキシにより縮合反応を起こす性質を持っている。この反応を究極まで行うと、シリカ(SiO)となる。これらの反応は
RO(Si(OR)O)nR+(n+1)HO→nSiO+(2n+2)ROH
(Rはアルキル基を示す。nは整数。)
という反応式で表される。本発明におけるSiO換算は、この反応式をもとに残るシリカ成分の量を換算したものである。
本発明における(C)アミン化合物(以下「(C)成分」という)は、上記(B)成分との相互作用により、耐汚染性、硬化性等の物性向上を担う成分である。また(C)成分は、本発明組成物を塗り重ね(リコート)する際の密着性向上にも寄与するものである。なお、前述の(A’)成分も(C)成分と同様の効果をもたらす成分である。
(C)成分としては、例えば、エチルアミン、ジメチルアミン、ジアミルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、モルホリン等のほか、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルフェニルエタノールアミン等のアルカノール基含有アミン化合物、トリエチレンジアミン(〔2,2,2〕ジアザビシクロオクタン)、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン等のアミノアルキル基含有アミン化合物、アミノメチルトリエトキシシラン、ジアミノメチルジエトキシシラン、γ−アミノイソブチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有アミン化合物等が挙げられる。
また本発明では、ビス(2,2,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等の光安定剤も(C)成分として使用できる。
なお、(C)成分は、その分子量が通常2000未満、好ましくは1000以下の化合物であり、前記(A’)成分とは異なる化合物である。(A)成分として、(A')成分を使用する場合は、この(C)成分は配合しなくてもよい。
本発明における(C)成分としては、pKbが3以上10以下(好ましくは4以上8以下)であるアミン化合物が好適である。このような化合物を使用することにより、耐汚染性、硬化性等の物性をいっそう高めることができる。
(C)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.02〜5重量部である。(C)成分が0.01重量部より少ない場合は、耐汚染性、硬化性、リコート性等において改善効果を得ることが難しい。(C)成分が20重量部より多い場合は、ポットライフが短くなりやすく、また塗膜の鮮映性、耐候性、耐水性等において支障をきたすおそれがある。
本発明では(D)成分として、沸点が260℃以下であるケトン化合物(以下「(D)成分」という)を使用する。本発明では、この(D)成分の配合により、実用上十分なポットライフを確保することができ、特に耐汚染性、硬化性等において安定した性能を発揮することができる。
本発明における(D)成分の役割は、概ね以下の作用機構によるものと推定される。すなわち(D)成分は、主剤中において、まず(A')成分または(C)成分のアミノ基を一時的にマスクした状態となる。そのため、主剤に硬化剤を混合した後の塗料内においては、(A')成分または(C)成分のアミノ基は、直接的に(B)成分と作用することが抑制される。そして、塗装後の塗膜形成段階において、(D)成分は塗膜外に揮発する。これにより(A')成分または(C)成分のアミノ基は活性な状態となり、(B)成分への触媒的な作用がはたらき、耐汚染性、硬化性等の物性向上効果が発揮されるものである。
(D)成分の沸点は、通常260℃以下、好ましくは200℃以下である。(D)成分の沸点が260℃より高い場合は、塗膜形成段階において塗膜外に揮発し難くなり、耐汚染性、硬化性等の物性向上効果が発揮され難くなる。(D)成分の沸点の下限は通常50℃以上、好ましくは100℃以上である。なお、本発明における沸点は1気圧における値である。
具体的に(D)成分としては、例えば、アセトン(沸点56℃) 、メチルエチルケトン(沸点80℃)、メチルイソブチルケトン(沸点116℃)、ジイソブチルケトン(沸点163℃)、メチル−n−へキシルケトン(沸点173℃)、メチルアミルケトン(沸点152℃)、シクロヘキサノン(沸点156℃)、ダイアセトンアルコール(沸点168℃)等のほか、β-ケトエステル化合物、β−ジケトン化合物等が使用できる。β−ジケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン(沸点141℃) 、2,4−ヘキサンジオン(沸点158℃)、2,4−ヘプタンジオン(沸点174℃)、3,5−ヘプタンジオン(沸点183℃)、2,4−オクタンジオン(沸点204℃)、2,4−ノナンジオン(沸点224℃)、べンゾイルアセトン(沸点260℃)、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(沸点203℃)等を挙げることができる。本発明における(D)成分としては、β−ジケトン化合物が好適であり、この中でも特にアセチルアセトンが好適である。
(D)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜20重量部である。(D)成分が0.01重量部より少ない場合は、主剤・硬化剤混合後、塗装までの時間が長くなるにつれ、耐汚染性等の性能が発現され難くなる。(D)成分が50重量部より多い場合は、主剤・硬化剤混合後、直ぐに塗装を行っても、耐汚染性、硬化性等の向上効果が得られ難くなる。
本発明組成物には、上述の成分に加え、着色顔料を混合することもできる。このような着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、黄色酸化鉄、群青、コバルトグリーン等の無機系顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料等が使用できる。このような着色顔料の1種または2種以上を適宜使用することにより、所望の色相の塗料組成物を得ることができる。
また、本発明組成物では、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土、樹脂ビーズ等の体質顔料を使用することも可能である。このような体質顔料を使用することで、形成塗膜の艶調整等を行うことができる。
この他、本発明組成物には、通常塗料に使用可能な各種添加剤を配合することも可能である。このような添加剤としては、例えば、架橋剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、触媒、硬化促進剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
本発明組成物は通常、(A)成分、(C)成分、及び(D)成分を含む主剤と、(B)成分を含む硬化剤からなる2液型塗料とする。このような形態であれば、塗料の安定性確保、耐汚染性能の発現等の点で好適である。主剤、硬化剤を製造する際には、それぞれの構成成分を常法により均一に混合すればよい。着色顔料や体質顔料は通常、主剤側に混合すればよい。
(A)成分が架橋反応基を有するものであって、当該反応基と反応可能な架橋剤を使用する場合、該架橋剤は硬化剤に混合すればよい。具体的に、(A)成分が水酸基を有する場合には、イソシアネート化合物を硬化剤に混合することができる。
本発明組成物は、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、磁器タイル、金属、ガラス、プラスチック等の各種基材の表面仕上げに使用することができ、主に建築物、土木構築物等の躯体の保護に使用するものである。この際、本発明組成物は、最終の仕上面として施されるものであり、基材に直接塗装することもできるし、何らかの表面処理(シーラー、サーフェーサー、フィラー等による下地処理等)を施した上に塗装することも可能である。塗装方法としては、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装等の方法を適宜採用することができる。また、乾式建材に塗装を行う場合は、フローコーター、ロールコーター等により工場等においてプレコートすることも可能である。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
(主剤の製造)
表1に示す配合に従い、各成分を常法にて均一に混合・撹拌することにより、主剤1〜4を製造した。なお、塗料の製造には以下の原料を使用した。
・非水系樹脂1:非水分散形アクリルポリオール(重量平均分子量85000、Tg35℃、水酸基価50KOHmg/g、固形分50重量%、媒体:ミネラルスピリット)
・非水系樹脂2:溶剤可溶形アクリルポリオール(重量平均分子量20000、Tg35℃、水酸基価50KOHmg/g、アミン価1.0KOHmg/g、固形分50重量%、媒体:ミネラルスピリット)
・着色顔料:酸化チタン
・アミン化合物:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(分子量508、pKb5.5)
・ケトン化合物:アセチルアセトン(沸点141℃)
・溶剤1:ミネラルスピリット
・消泡剤:シリコーン系消泡剤
Figure 0005140238
(硬化剤1の製造)
イソシアネート化合物40重量部に対し、溶剤2を26重量部、テトラアルコキシシラン化合物1を34重量部均一に混合することにより、硬化剤1を製造した。なお、硬化剤の製造には以下の原料を使用した。
・イソシアネート化合物:イソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート(不揮発分100重量%、NCO含有量20重量%)
・テトラアルコキシシラン化合物1:テトラメトキシシラン縮合物のn−ヘキシルアルコール変性物(平均縮合度:8、エステル交換率22当量%、シリカ残量比率:44重量%)
・溶剤2:ソルベッソ100(エクソンケミカル社製)
(硬化剤2の製造)
イソシアネート化合物40重量部に対し、溶剤2を26重量部、下記テトラアルコキシシラン化合物2を34重量部均一に混合することにより、硬化剤2を製造した。
・テトラアルコキシシラン化合物2:テトラメトキシシラン縮合物のn−ブチルアルコール変性物(平均縮合度:4、エステル交換率30当量%、シリカ残量比率:41重量%)
(硬化剤3の製造)
イソシアネート化合物40重量部に対し、溶剤2を26重量部、下記テトラアルコキシシラン化合物3を34重量部均一に混合することにより、硬化剤3を製造した。
・テトラアルコキシシラン化合物3:テトラメトキシシラン縮合物のイソブチルアルコール変性物(平均縮合度:4、エステル交換率30当量%、シリカ残量比率:41重量%)
(試験方法)
(1)接触角
150mm×75mm×1mmのアルミニウム板に対し、「SK#1000プライマー」(エスケー化研株式会社製)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装したものを試験基材とした。
主剤と硬化剤を均一に混合して塗料を作製し、所定時間経過後(混合直後、混合4時間後、混合8時間後)、乾燥膜厚が40μmとなるように上記試験基材にスプレー塗装を行い、標準状態(温度23℃、相対湿度50%)で72時間養生させることにより試験体を作製した。この試験体を23℃の水に6時間浸漬した後、協和界面科学株式会社製CA−A型接触角測定装置にて接触角を測定した。
(2)汚れの染み込み抵抗性
主剤と硬化剤を均一に混合して塗料を作製し、所定時間経過後(混合直後、混合8時間後)、すきま125μmのフィルムアプリケータを用いて150×120×3mmの透明なガラス板に塗料を塗付し、ガラス板を水平に置いて標準状態で48時間養生した。この塗膜表面に汚れ成分(カーボンブラック15重量%水分散液)を滴下し、標準状態で24時間放置した。次いで塗膜表面をスポンジで水洗した後、汚れ成分の残存の程度を確認した。評価基準は以下のとおりである。
○:汚れが除去された
△:汚れがわずかに残存した
×:汚れが明らかに残存した
(3)耐雨筋汚染性
300mm×150mm×1mmのアルミニウム板に対し、「SK#1000プライマー」(エスケー化研株式会社製)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装したものを試験基材とした。
主剤と硬化剤を均一に混合して塗料を作製し、所定時間経過後(混合直後、混合8時間後)、乾燥膜厚が40μmとなるように上記試験基材にスプレー塗装を行い、標準状態で72時間養生させることにより試験体を作製した。
この試験体を長辺の1/3のところで45°に折り曲げ、面積の広い面を垂直にして大阪府茨木市で南面向きに設置し、1ヵ月間屋外曝露を行った。評価は、垂直面の雨筋汚れの有無を目視観察することにより行った。評価基準は以下の通りである。
○:雨筋汚れがみられない
△:雨筋汚れがわずかにみられる
×:著しい雨筋汚染がみられる
(実施例1)
実施例1では、主剤1と硬化剤1を86:14の重量比率で混合した塗料1について試験を行った。この塗料1におけるテトラアルコキシシラン化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で7重量部である。
試験結果を表2に示す。実施例1では、いずれの試験においても良好な結果を得ることができた。
(実施例2)
実施例2では、主剤2と硬化剤1を86:14の重量比率で混合した塗料2について試験を行った。この塗料2におけるテトラアルコキシシラン化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で7重量部である。
試験結果を表2に示す。実施例2では、いずれの試験においても良好な結果を得ることができた。
(実施例3)
実施例3では、主剤3と硬化剤1を86:14の重量比率で混合した塗料3について試験を行った。この塗料3におけるテトラアルコキシシラン化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で7重量部である。
試験結果を表2に示す。実施例3では、いずれの試験においても良好な結果を得ることができた。
(実施例4)
実施例4では、主剤3と硬化剤2を86:14の重量比率で混合した塗料4について試験を行った。この塗料4におけるテトラアルコキシシラン化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で7重量部である。
試験結果を表2に示す。実施例4では、いずれの試験においても良好な結果を得ることができた。
(実施例5)
実施例5では、主剤3と硬化剤3を86:14の重量比率で混合した塗料5について試験を行った。この塗料5におけるテトラアルコキシシラン化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で7重量部である。
試験結果を表2に示す。実施例5では、いずれの試験においても良好な結果を得ることができた。
(比較例1)
比較例1では、主剤4と硬化剤1を86:14の重量比率で混合した塗料6について試験を行った。この塗料6におけるテトラアルコキシシラン化合物の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対してSiO換算で7重量部である。
試験結果を表2に示す。比較例1では、主剤と硬化剤を混合した後、塗装までの時間が長くなると、塗膜表面の接触角が高くなり、耐汚染性において不十分な結果となった。
Figure 0005140238

Claims (2)

  1. (A)水酸基含有非水系樹脂、
    (B)テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの縮合物、及びこれらの変性物、から選ばれるテトラアルコキシシラン化合物、
    (C)アミン化合物として光安定剤、
    (D)沸点が260℃以下であるβ‐ジケトン化合物、及び
    (E)イソシアネート化合物、
    を必須成分とし、(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分をSiO換算で0.1〜50重量部、(C)成分を0.01〜20重量部、(D)成分を0.01〜50重量部含み、
    (A)成分、(C)成分、及び(D)成分を含む主剤と、(B)成分及び(E)成分を含む硬化剤からなる2液型塗料であることを特徴とする塗料組成物。
  2. (A)水酸基含有非水系樹脂、
    (B)テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの縮合物、及びこれらの変性物、から選ばれるテトラアルコキシシラン化合物、
    (D)沸点が260℃以下であるβ‐ジケトン化合物及び
    (E)イソシアネート化合物、
    を必須成分とし、前記(A)成分として(A')アミノ基含有非水系樹脂を含み、
    (A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分をSiO換算で0.1〜50重量部、(D)成分を0.01〜50重量部含み、
    (A)成分及び(D)成分を含む主剤と、(B)成分及び(E)成分を含む硬化剤からなる2液型塗料であることを特徴とする塗料組成物。
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