ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、電磁調理器用器物の全体的な加熱を実現することにある。
以下、前述の如き課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
すなわち、本発明の第一の態様の特徴とするところは、電磁調理器用器物の周壁部分の外側を全周に亘って離隔して覆う筒状の周壁を有していると共に、上側の開口部が該電磁調理器用器物を挿入する挿入口とされている一方、下側の開口部が、該電磁調理器用器物の底面よりも大きな開口寸法を有する底面露出口とされており、該電磁調理器用器物を内挿せしめた組み合わせ状態において、該底面露出口から該電磁調理器用器物の底面が露出せしめられて、該底面の下端面と同じ平面上に該底面露出口側の端面が位置せしめられると共に、該電磁調理器用器物の周壁部分との間に空気層が形成されるようになっており、且つ、陶器で形成されていて、更に、前記筒状の周壁が透水性を有している電磁調理器用器物の保温壁部材にある。
本発明に従う保温壁部材によれば、電磁調理器用器物の外側を周壁で覆うことによって、電磁調理器用器物と周壁との間に空気層を形成することが出来る。従って、電磁調理器によって器物が温められた場合には、器物の熱、特に器物底部の熱や、底部の熱が伝達して高温状態となっているトッププレートの熱によって、空気層が温められる。そして、かかる空気層の熱によって、電磁調理器用器物の外周面を温めることが出来る。すなわち、保温壁部材で器物の周囲を取り囲むことにより、底部の周囲に伝達される熱を器物の周囲全体にうまく亘らせることができると共に、空気層の断熱効果により器物自体が外気に晒されて熱を奪われることを防止することが出来る。これにより、電磁調理器用器物を略全体的に温めることが出来て、器物に収容された食材を全体的に加熱することが出来る。それと共に、電磁調理器用器物の加熱時間も早められることから、調理時間の短縮を図ることも出来る。このように、本発明に従う保温壁部材を用いることによって優れた加熱効果を得ることが出来て、電磁調理器において不可避的に生じる電磁調理器用器物の底部のみが高温となって、器物の全体が温まり難いという問題を、有利に軽減乃至は回避し得るのである。
さらに、電磁調理器用器物と保温壁部材との組み合わせ状態において、電磁調理器用器物の底面の下端面と同じ平面上に保温壁部材における底面露出口側の端面が位置せしめられることから、電磁調理器用器物と保温壁部材とを組み合わせ状態で電磁調理器のトッププレート上に載置した場合には、電磁調理器用器物の下端面および保温壁部材における底面露出口側の端面の両方がトッププレート上に載置される。そして、特に底面露出口側の端面がトッププレートに対して全周に亘って略隙間無く接触せしめられる。これにより、電磁調理器用器物の底部の熱やトッププレートの熱を外部に逃がすことなく捉えることが出来て、空気層をより有効に温めることが可能とされている。なお、電磁調理器用器物の底面の下端面とは、電磁調理器用器物において最も下端に位置せしめられた面を言い、例えば電磁調理器用器物の底面がフラットな平坦面である場合には、かかる底面と下端面が等しくされるが、底面から突出する脚部が形成されているような場合には、かかる脚部の突出先端面が底面の下端面とされる。
それと共に、空気層が断熱層として作用することによって、電磁調理器用器物内の熱が外部に逃げることを抑制することが出来る。これにより、優れた保温効果を得ることも出来て、特に加熱を停止した場合でも、電磁調理器用器物の温度が急激に低下せしめられることを抑えて、より長時間に亘って器物を高温に保つことが出来る。その結果、例えば電磁調理器による加熱を停止した後でも、器物を加熱することによって確保された余熱を利用した調理を行うこと等が可能となる。
また、本発明に従う構造とされた保温壁部材においては、陶器で形成されていることから、多くの気孔を含んでおり、断熱性や蓄熱性に優れた保温壁部材を提供することができ、より長時間に亘って器物を高温に保つことが出来る。それと共に、本発明に従う構造とされた保温壁部材は陶器で形成されていることから吸水性を有しており、予め含水せしめた保温壁部材を電子レンジで加熱することにより、電磁調理器による加熱以前に保温壁部材を温めておくことも可能である。この場合には、空気層をより高温状態とすることが出来て、より優れた加熱効果および保温効果を得ることが出来る。更に、保温壁部材における筒状の周壁が透水性を有していることから、空気層と外部空間との間で水分の移動が許容されて、空気層の湿度を自動的に調節することが出来る。これにより、空気層内の水蒸気によって電磁調理器用器物の外周面がべた付くようなことを軽減することが出来る。
なお、本発明において吸水性を有するとは、連続的な気孔を内部に有し多孔質とされた保温壁部材を水と接触せしめることにより、保温壁部材の表面に開口せしめられた微小な孔に水が浸入すると共に、浸入した水が表面張力等の作用により内部で保持されるようになっていることを言う。また、本発明において周壁が透水性を有するとは、吸水性に加えて、周壁の内周側の空間と外周側の空間の間で水分の移動が許容されることを言う。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る電磁調理器用器物の保温壁部材において、焼成前の素地に対して釉薬が施釉されていると共に、焼成によって該釉薬に貫入が形成されることにより吸水性が確保されていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた保温壁部材においては、積極的に貫入(素地と釉薬の熱収縮の差によって焼成後の釉薬に形成されるひび割れ)を形成することによって、貫入に水を保持せしめることが可能となることから、吸水性を有利に確保することが出来る。それと共に、焼成前の素地に釉薬を塗布することにより、焼成後の保温壁部材の強度を高めて、耐久性を向上せしめることが出来ると共に、表面が平滑化されることによって、汚れの付着を軽減することも出来る。
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る電磁調理器用器物の保温壁部材において、前記底面露出口が、前記電磁調理器用器物の底面と略相似形状とされていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた保温壁部材においては、底面露出口の内周面と、電磁調理器用器物の底部の外周面との離隔距離を、全周に亘って略一定とすることが出来る。これにより、電磁調理器用器物を全周方向から略均等に加熱することが出来て、熱斑の少ない、より安定した加熱を行うことが出来る。また、電磁調理器用器物の挿入時に、器物の底面を底面露出口に嵌め込むようにして、安定した組付けを行うことが出来ると共に、保温壁部材と器物の底部の外周面が周方向で略一定の離隔距離をもって電磁調理器のトッププレート上に載置されることから、載置状態をより安定せしめることも出来る。
本態様の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れか一つの態様に係る電磁調理器用器物の保温壁部材において、前記電磁調理器用器物の周壁部分との間を封止する封止手段が設けられていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた保温壁部材においては、空気層を封止して外部空間から隔離することによって、空気層に貯えられた空気の外部への流出を有利に防止することが出来る。これにより、空気層の熱が逃がされることを防止して、加熱効果や保温効果を、より有効に発揮することが出来る。
ここにおいて、封止手段の具体的な形状や材料、形成位置などの具体的な態様は、特に限定されるものではないが、例えば、封止手段としては変形容易で気密に封止することが可能なゴム弾性体等が好適に用いられ、保温壁部材の周壁の内周面と電磁調理器用器物の外周面との間にゴム弾性体を配設することによって両面間を封止する態様などが好適に採用され得る。但し、封止手段は、必ずしも周壁の内周面と容器本体の外周面との間を直接に封止するものに限定されるものではなく、周壁の内周面以外の部位において、保温壁部材と電磁調理器用器物との空隙を封止することによって、周壁と電磁調理器用器物の間を間接的に封止する等しても良い。
本態様の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れか一つの態様に係る電磁調理器用器物の保温壁部材において、前記挿入口に、前記電磁調理器用器物を係止せしめる係止部が設けられていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた保温壁部材においては、電磁調理器用器物を係止せしめることによって、組み付け状態における保温壁部材と電磁調理器用器物との軸方向での相対的な位置を安定して位置決めすることが出来る。また、例えば保温壁部材ごと電磁調理器用器物を持ち上げたりすることも可能となって、取扱性も向上せしめられる。
なお、本態様においても、前記第一の態様に記載のように、電磁調理器用器物の底面の下端面と同じ平面上に保温壁部材における底面露出口の端面が位置せしめられる。これにより、電磁調理器用器物を係止部で係止した組み付け状態で電磁調理器のトッププレート上に載置した場合には、電磁調理器用器物の下端面と保温壁部材における底面露出口の端面が何れもトッププレート上に載置せしめられることから、安定した載置を行うことが出来ると共に、電磁調理器用器物の下端面とトッププレートの接触状態を維持することも出来て、電磁調理器による加熱効果を損なうおそれも回避される。
本発明の第六の態様は、前記第四の態様に係る電磁調理器用器物の保温壁部材において、前記挿入口に設けられて前記電磁調理器用器物を係止せしめる係止部にシールゴムが固着されることによって前記封止手段が構成されていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた保温壁部材においては、保温壁部材と電磁調理器用器物との重ね合わせ部位となる係止部を巧く用いて封止手段を形成することが出来る。更に、電磁調理器用器物が重力作用によって係止部に押し付けられることから、電磁調理器用器物をシールゴムに安定して密着せしめることが出来て、より安定した封止状態を得ることが出来る。
本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の何れか一つの態様に係る電磁調理器用器物の保温壁部材において、前記空気層と外部空間とを連通する通気孔が形成されていることを、特徴とする。
本態様に従う保温壁部材においては、空気層内の空気が加熱されて高圧となった場合には、通気孔を通じて空気層内の圧力を逃がすことが出来る。なお、本態様は、前記第五の態様や第七の態様における封止手段と組み合わせて好適に用いられる。即ち、封止手段を設けることによって空気層内の気密性が高められる結果、空気層内が過大に高圧となるおそれがあるが、本態様に従う通気孔を設けることによって、空気層内の過大な高圧化を抑えることが出来る。
本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れか一つの態様に係る電磁調理器用器物の保温壁部材において、前記筒状の周壁に取手が設けられていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた保温壁部材においては、取手を利用することによって、保温壁部材の持ち運びをより容易にすることが出来る。なお、取手の具体的な形状は何等限定されるものではなく、例えば従来公知の鍋に用いられる取手の形状等が適宜に採用可能であって、周壁の外周面から突出して形成したり、或いは、周壁の外周面に手指を引っ掛けることの出来る窪みを設けて、かかる窪みを取手とする等してもよい。更に、取手は、周壁と一体成形しても良いし、周壁とは別体として形成して、周壁に一体的に固着する等してもよい。
本発明の第九の態様は、前記第一乃至第八の何れか一つの態様に係る電磁調理器用器物の保温壁部材において、前記上側の開口部において、上方に凹状に開口せしめられて前記電磁調理器用器物の取手を挿し入れることが可能とされた凹状開口部が形成されていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた保温壁部材においては、電磁調理器用器物の取手を避けるようにして、電磁調理器用器物の外周面を周壁で覆うことが出来る。これにより、例えば取手を備えた鍋等にも有利に適用することが出来る。
本発明の第十の態様は、前記第一乃至第九の何れか一つの態様に係る電磁調理器用鍋の保温壁部材において、前記空気層の軸直方向における寸法が、軸方向の全体に亘って全周で略一定とされていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた保温壁部材においては、電磁調理器用器物の外周の全体に亘って空気層の大きさが略一定とされていることから、電磁調理器用器物の外周面を略均等に加熱せしめることが出来て、熱斑の発生を抑えた略均等な加熱を行うことが出来る。
本発明の第十一の態様は、前記第一乃至第十の何れか一つの態様に係る電磁調理器用鍋の保温壁部材において、前記空気層の軸直方向における最大寸法が、20mm以下とされていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた保温壁部材においては、優れた加熱効果および保温効果を有利に得ることが出来る。即ち、空気層の軸直方向における最大寸法を20mm以下とすることによって、空気層を十分加熱し得る程度の大きさとすることが出来て、有効な加熱効果や保温効果を得ることが出来る。
本発明の第十二の態様は、前記第一乃至第十一の何れか一つの態様に係る電磁調理器用鍋の保温壁部材において、前記下側の開口部を覆蓋することによって、前記電磁調理器用器物の底面との間に下側空気層を形成する下側蓋部材を備えたことを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた保温壁部材においては、電磁調理器用器物の底面の下側に下側空気層が形成される。そして、かかる下側空気層が断熱層として作用することによって、電磁調理器用器物を電磁調理器から降ろした後においても、底面の高温状態をより長く維持することが出来る。これにより、電磁調理器用器物の高温状態をより長く保つことが出来て、蒸らしなどの調理をより有利に行うことが出来る。なお、本態様においては、下側の開口部と下側蓋部材との重ね合わせ面間を封止する封止部材を設けるなどしても良い。このようにすれば、下側空気層の気密性を高めることが出来て、下側空気層延いては電磁調理器用器物の高温状態をより長く維持することが出来る。
電磁調理器用器物に関する本発明の第一の態様は、食品を収容する有底の容器本体と、該容器本体に組み付けられて該容器本体の開口部を覆蓋する蓋部材を備えた電磁調理器用器物において、前記第一乃至第十四の何れか一つの態様に係る電磁調理器用器物の保温壁部材を備え、該保温壁部材と前記容器本体が組み合わされることによって、該保温壁部材における前記底面露出口から該容器本体の底面が露出せしめられて、該容器本体の下端面と同じ平面上に該保温壁部材における底面露出口側の端面が位置せしめられると共に、該容器本体の周壁部分と該保温壁部材との間に第一の空気層が形成されるようになっていることを特徴とする。
本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、前記第一乃至第十四の何れか一つの態様に係る保温壁部材を備えたことによって、前述の如き加熱効果や保温効果を得ることが出来る。これにより、容器本体を全体的に加熱することが出来て、電磁調理器用器物において問題とされていた底部のみが高温となって、その他の部位が加熱され難いという問題を有利に軽減乃至は解消することが出来る。
電磁調理器用器物に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る電磁調理器用器物において、前記蓋部材が内蓋と外蓋を含んで構成されており、該内蓋と該外蓋の各外周縁部が該容器本体の開口部に載置されてそれら内蓋と外蓋が相互に離間して重ね合わされた状態で該容器本体に組み合わされることにより、それら内蓋と外蓋の重ね合わせ面間に前記第一の空気層から隔てられた第二の空気層が形成されていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、第一の空気層に加えて、容器本体の開口部に第二の空気層が形成されている。これにより、第二の空気層が断熱層として作用することによって、容器本体内の熱が開口部から逃がされるのを有利に抑えることが出来る。従って、本態様によれば、保温壁部材によって形成された第一の空気層によって容器本体の外周側が保温されると共に、内外両蓋部材によって形成される第二の空気層によって容器本体の開口部側が保温される。そして、容器本体の底部側は、電磁調理器によって直接に加熱されている。このように、本態様によれば、容器本体を略全方向から包み込むように加熱乃至は保温することが出来て、より優れた加熱効果および保温効果を得ることが出来る。
電磁調理器用器物に関する本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係る電磁調理器用器物において、前記容器本体の開口周縁部にフランジ状の支持部が形成されており、前記内蓋が該支持部の内周部分に重ね合わされて支持されると共に、前記外蓋が該支持部の外周部分に重ね合わされて支持されていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、内蓋と外蓋を容器本体に容易に組み付けることが出来る。それと共に、内蓋と外蓋の対向面間の領域を広く確保することが出来て、第二の空気層を有利に形成することが出来る。
電磁調理器用器物に関する本発明の第四の態様は、前記第二又は第三の態様に係る電磁調理器用器物において、前記内蓋に第一の蒸気抜き孔が形成されて該第一の蒸気抜き孔を通じて前記容器本体の内部空間が前記第二の空気層に連通せしめられていると共に、前記外蓋に第二の蒸気抜き孔が形成されて該第二の蒸気抜き孔を通じて該第二の空気層が外部空間に連通せしめられており、それら第一の蒸気抜き孔と第二の蒸気抜き孔が該内蓋及び該外蓋の周方向で相互に異なる位置に設けられていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、第一蒸気抜き孔と第二蒸気抜き孔の周方向位置を調節することによって、これら蒸気抜き孔を通じた容器本体内の圧力の逃げを適当に調節して、容器内の加圧による食材の迅速な調理を有利に実現することが出来る。
電磁調理器用器物に関する本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の態様に係る電磁調理器用器物において、前記容器本体が陶器で形成されていると共に、該容器本体の底部に導電性材が配設されることによって、該導電性材で該容器本体の底面が構成されている一方、前記蓋部材が陶器で形成されていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、容器本体の底部に導電性材が配設されていることから、電磁調理器上に載置して加熱を開始すると、底部に配設された導電性材に渦電流が生ぜしめられる。これにより、容器本体が陶器で形成されていても、底部を加熱することが可能とされており、陶器製の器物を電磁調理器に用いることが可能とされる。
さらに、本態様においては、保温壁部材を備えたことによって、容器本体を全体的に加熱することが出来る。これにより、熱伝導率の低い陶器で形成された部分も有効に加熱することが出来て、容器全体を有効に加熱することが可能となる。
そして、特に本態様においては、容器本体および蓋部材が陶器で形成されて吸水性を有していることから、容器本体および蓋部材が加熱せしめられた際には、これらに含まれた水分が蒸気化して放出されて、容器本体内に流入せしめられる。これにより、容器本体内の食材の水気が失われて乾燥するおそれも有利に軽減されて、例えば蒸し料理等に好適に使用することが出来る。更に、保温壁部材を備えたことによって、保温効果も得られることから、加熱停止後の容器本体の急激な温度低下を抑えて、余熱を用いた蒸らし等もより効果的に行うことが出来る。
電磁調理器用器物に関する本発明の第六の態様は、前記第五の態様に係る電磁調理器用器物において、前記導電性材としてカーボンが用いられていることを、特徴とする。本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、加熱されたカーボンから発せられる遠赤外線によって、食材の芯まで緩やかに加熱することが出来る。なお、好適には、本態様におけるカーボンとしては、容器本体を構成する陶器と略等しい熱膨張率を有するものが採用される。このようにすれば、容器本体が加熱せしめられて容器本体およびカーボンが膨張せしめられても、カーボンと容器本体との接合部分に隙間などを生じたりするおそれを軽減することが出来る。
電磁調理器用器物に関する本発明の第七の態様は、前記第五又は第六の態様に係る電磁調理器用器物において、前記容器本体及び前記蓋部材の焼成前にそれら容器本体及び蓋部材の素地に対して釉薬が施釉されていると共に、焼成によって該釉薬に貫入が形成されることにより該容器本体と該蓋部材の吸水性が確保されていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、積極的に貫入を形成することによって、貫入に水を保持せしめることが可能となることから、吸水性を有利に確保することが出来る。それと共に、焼成前の素地に釉薬を塗布することにより、焼成後の保温壁部材の強度を高めて、耐久性を向上せしめることが出来ると共に、表面が平滑化されることによって、汚れの付着を軽減することも出来る。
電磁調理器用器物に関する本発明の第八の態様は、前記第五乃至第七の何れか一つの態様に係る電磁調理器用器物において、前記容器本体が透水性を有していることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、容器本体の内側と外側で水分の移動を許容する透水性を有することにより、容器本体内の湿度を自動的に調整することが出来て、湿度の不足による食材の乾燥や湿度の過多によるべた付きを抑えることが出来る。
電磁調理器用器物に関する本発明の第九の態様は、前記第五乃至第八の何れか一つの態様に係る電磁調理器用器物において、乾燥状態下における前記容器本体及び前記蓋部材のかさ密度が1.0g/cm3 〜2.0g/cm3 とされていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、容器本体および蓋部材を、十分な吸水性と保温性を両立して確保することが出来ると共に、容器本体および蓋部材の耐久性を有利に確保することが出来る。即ち、かさ密度が1.0g/cm3 よりも小さいと、陶器の強度が低くなる一方、かさ密度が2.0g/cm3 よりも大きいと、十分な吸水性および保湿性を得られなくなるおそれがある。
電磁調理器用器物に関する本発明の第十の態様は、前記第一乃至第九の何れか一つの態様に係る電磁調理器用器物において、前記容器本体の肉厚寸法が10mm〜15mmとされていることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、有効な強度を得られると共に、重量を増加を抑えつつ、有効な吸水性を確保することが出来る。即ち、肉厚寸法が10mmよりも小さいと、容器本体が薄くなって強度が低下せしめられるおそれや、肉厚寸法が薄いことによって含水量が少なくなるおそれがある一方、肉厚寸法が15mmよりも大きいと、容器本体が重くなるおそれがある。なお、容器本体の肉厚寸法とは、例えば取手などを除いた本体部分の肉厚寸法の平均値を言う。
電磁調理器用器物に関する本発明の第十一の態様は、前記第一乃至第十の何れか一つの態様に係る電磁調理器用器物において、前記容器本体の前記底面から突出する脚部によって該容器本体の前記下端面が構成されており、平面への載置状態において該容器本体の底面が該平面から離隔せしめられることを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、電磁調理器のトッププレートに容器本体を載置した場合に、容器本体の底面がトッププレートから離隔せしめられる。これにより、加熱に際して容器本体の底面が高温になり過ぎて、電磁調理器のセンサによって自動的に加熱が中断されるおそれを低減することが出来る。なお、本態様は、前記第六の態様に従う構造とされた電磁調理器用器物と組み合わせることによって、有利に用いられる。即ち、容器本体の底部をカーボンで構成したことによって、カーボンによる遠赤外線効果が、センサを停止せしめるように作用する。そこで、本態様に従う構造を用いてカーボンを電磁調理器のトッププレートから離隔せしめることによって、目的とする温度に到達する前にセンサが敏感に反応して、加熱が中断されるようなことを低減乃至は回避することが出来る。ここにおいて、容器本体の底面の離隔距離は、1.0mm〜3.0mmとされることが好ましい。即ち、離隔距離が1.0mmよりも小さいと、実質的に容器本体の底面を電磁調理器のトッププレートに接触状態で載置せしめたのと同じこととなる一方、離隔距離が3.0mmよりも大きいと、トッププレートから離れ過ぎることによって、電磁調理器が作動しないおそれがあるからである。なお、脚部、容器本体を安定してトッププレートに載置でき、所望の効果が得られる限り、任意の形状を採用することができる。例えば、円形や矩形断面形状で底部中央に突出する形状や、周辺部に連続して、或いは不連続で突出する形状が採用可能である。更には、格子状や縞状に延びる複数の脚部で形成してもよい。
電磁調理器用器物に関する本発明の第十二の態様は、前記第五乃至第十一の何れか一つの態様に係る電磁調理器用器物において、電磁調理器用炊飯器として使用されることを、特徴とする。
電磁調理器用器物に関する本発明の第十三の態様は、前記第五乃至第十二の何れか一つの態様に係る電磁調理器用器物において、前記容器本体の周壁部分と前記保温壁部材との間に形成された前記第一の空気層、該容器本体の周壁部分の外周面および該保温壁部材の内周面の少なくともいずれかに対して、熱伝導促進壁を設けたことを、特徴とする。
本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、第一の空気層の形成部分を上手く利用して、熱伝導促進壁が設けられている。かかる熱伝導促進壁により、電磁調理器用器物の底部の熱や、トッププレートの熱を、器物の上方に有利に伝達することができる。ここで、高い熱伝導効果を有利に得るためには、熱伝導促進壁は、熱伝導率の高い、銅、ステンレス、アルミ等の金属製であることが好ましい。また、渦電流によるジュール熱を有利に発生させる、銅、ステンレス等のIH対応素材によって、熱伝導促進壁を形成することにより、電磁調理器による誘導加熱を器物本体上方の加熱にも利用でき、さらなる器物上部ひいては全体の加熱を促進することができる。なお、熱伝導促進壁は、第一の空気層に配設される別体の筒状体として形成されてもよいし、また、溶射等により該容器本体の周壁部分の外周面および/または該保温壁部材の内周面に被着されてもよい。また、第一の空気層による空気の対流による電熱性の促進を維持するためには、筒状体の熱伝導促進壁の一部に貫通孔やメッシュ状部を設けたり、或いは、筒状体の高さ寸法を第一の空気層の高さ寸法よりも小さくして、上部に連通空間を設ける等するとよい。また、溶射等により熱伝導促進壁が被着形成される場合は、該容器本体の周壁部分の外周面や該保温壁部材の内周面の透水性を保持するように形成される。
電磁調理器用器物に関する本発明の第十四の態様は、前記第十三の態様に係る電磁調理器用器物において、前記熱伝導促進壁が、金属からなる筒状体として形成されており、前記容器本体の周壁部分と前記保温壁部材との間に、隙間を隔てて配設されていることを特徴とする。熱伝導促進壁を金属製の筒状体とすることにより、熱伝導促進壁の形成が容易になされ得ると共に、かかる筒状体を第一の空気層に配設するのみで、本発明にかかる電磁調理器用器物の加熱促進を容易に達成することができる。なお、金属の材料としては、銅、ステンレス、アルミ等の比較的熱伝導率の高いものが好ましい。また、IH対応素材からなる筒状体の下端部は、電磁調理器の渦電流の影響を受け易くするために、少なくとも一部を器物底面付近まで延び出させることが好ましい。
本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、炊飯に必要とされる十分な蒸らしを行うことが可能となって、従来、電磁調理器では困難であった炊飯を、有利に行うことが出来る。即ち、炊飯には、余熱による蒸らしの工程が重要であるが、従来構造に従う電磁調理器用器物では、主に容器本体の底面のみが高温とされて、容器全体が温まり難かった。それ故、電磁調理器の加熱を停止すると、容器本体の全体的な温度が速やかに低下してしまい、余熱を十分に保持することが困難であった。しかし、本態様に従う構造とされた電磁調理器用器物においては、保温壁部材を備えたことによって、容器本体を全体的に加熱することが出来ると共に、優れた保温効果も得られることから、容器本体の略全体を高温状態に維持することが出来て、余熱による蒸らしを十分に行うことが可能となる。これにより、炊飯を有利に行うことが可能となるのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1〜図6に、本発明の第一の実施形態である電磁調理器用器物としての電磁調理器用器物10を示す。電磁調理器用器物10は、調理対象物としての食品が収容される容器本体12と、容器本体12に取り付けられて、容器本体12の開口部を閉塞せしめる蓋部材14を備えた器物本体16が、本発明の第一の実施形態である保温壁部材としての保温カバー18に挿入された半収容状態とされて構成されている。なお、以下の説明において、上下方向とは、使用状態下において鉛直上下方向となる、図1中の上下を言うものとする。また、以下の説明において軸方向とは、図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、容器本体12は、表面に開口する多数の微小空間を有する多孔質の陶器によって形成されている。図5に示すように、容器本体12は、上下両側に開口する筒状の周壁部20の下端開口部21に、略円板形状を有する底部材30が一体的に固着された略有底円筒形状を呈しており、上方に向かって開口せしめられる開口部23を有している。そして、容器本体12の周壁部20は、開口部23に行くに従って次第に厚肉とされており、内径が小さくされている。更に、容器本体12の開口部23の外周縁部には、全周に亘って径方向外方に向かって突出する支持部としてのフランジ状部24が一体形成されている。また、フランジ状部24の内周縁部には、段差部26が全周に亘って連続的に形成されていると共に、フランジ状部24の外周縁部には、軸方向上方に向かって延び出す筒状の位置決め部28が一体形成されている。
そして、周壁部20の下端開口部21には、導電性材としての底部材30が固着されている。底部材30は、軸方向中間部分から下方が僅かに小径とされた略円板形状とされている。ここにおいて、底部材30を構成する導電性材としては、誘導起電力によって渦電流を生じる比較的電気抵抗の大きな部材が好適に採用され、例えば、ステンレスや鉄などが採用可能であるが、本実施形態においては、底部材30はカーボンから形成されており、更に、周壁部20を形成する多孔質の陶器と熱膨張率が等しいものが採用されている。そして、かかる底部材30が、小径とされた側を下にして周壁部20の開口部23から挿し込まれて、周壁部20の下端開口部21の内周縁部に形成された段差状の係合部33に嵌め込まれることによって、下端開口部21が水密に封止されており、容器本体12の底面32が、底部材30によって構成されている。
さらに、図4に示すように、底面32には、複数(本実施形態においては、4つ)の脚部34が下方に僅かに突出して一体形成されている。脚部34は、底面32の正面視において略扇形状とされており、その円弧形状の外周縁部を底面32の外周縁部に重ね合わせた位置で、底面32の周方向で等間隔に形成されている。これにより、本実施形態においては、脚部34の突出端面35が容器本体12の底面32の下端面とされている。なお、脚部34は、底部材30の底面32を、脚部34に相当する部位を残して切削加工等を施すことによって形成されている。ここにおいて、脚部34の高さ寸法は、1.0mm〜3.0mmとされていることが好ましい。蓋し、脚部34の高さ寸法が1.0mmよりも小さいと、実質的に底面32を電磁調理器のトッププレートに接触状態で載置せしめたのと同じこととなる一方、高さ寸法が3.0mmよりも大きいと、トッププレートから離れ過ぎることによって、電磁調理器が作動しないおそれがあるからである。そして、このような構造とされた底部材30が周壁部20の下端縁部に固着されることによって、周壁部20の下端開口部が水密に覆蓋されている。
なお、容器本体12の肉厚寸法の平均値:T1 は、好適には、10mm≦T1 ≦15mm、より好適には、11mm≦T1 ≦13mmとされており、特に本実施形態では、T1 =12mmに設定されている。蓋し、T1 が小さ過ぎると、充分な保温力や耐久性を確保することが困難となり易い一方、T1 が大き過ぎると、容器本体12の質量が大きくなってしまうおそれがあるからである。ここで、T1 は、容器本体12において、フランジ状部24や脚部34を除いた部分の厚さの平均値をいう。
そして、このような構造とされた容器本体12の開口部23は、蓋部材14が組み付けられて覆蓋されるようになっている。蓋部材14は、内蓋36と外蓋38を含んで構成されており、これら内外蓋36,38は、容器本体12と同様に、何れも連続気孔を有する多孔質の陶器で形成されている。内蓋36は、全体として略円形皿形状とされており、その中央部分が、外周縁部の高さ位置を超えない程度に盛り上げられた形状とされている。そして、内蓋36の上面の中央部分には、アーチ状の把持部40が一体形成されている。また、内蓋36の外周縁部には、全周に亘って径方向外方に延び出すフランジ状の係止片42が一体形成されている。また、図3及び図5に示すように、内蓋36には、第一の蒸気抜き孔としての蒸気抜き用の内通気孔44が、内蓋36を肉厚方向で貫通して形成されている。本実施形態では、図3において破線で示すように、一対の内通気孔44,44が、径方向一方向で把手部40を挟んで対向位置するように形成されている。
なお、内蓋36の肉厚寸法の平均値:T2 は、好適には、10mm≦T2 ≦15mm、より好適には、11mm≦T2 ≦13mmとされており、本実施形態では、T2 =12mmに設定されている。蓋し、T2 が小さ過ぎると、充分な保温力や耐久性を確保することが困難となり易い一方、T2 が大き過ぎると、内蓋36の質量が大きくなってしまうおそれがあるからである。また、本実施形態では、内蓋36が容器本体12よりも厚肉とされて、内蓋36が容器内の圧力によって上方に持ち上げられることが有利に抑えられるようになっている。これにより、後述する加熱調理時に、容器内の圧力が低下するのを有利に防いで、迅速な調理を実現出来る。なお、T2 は、内蓋36において、把手部40等を除いた部分の厚さの平均値である。
一方、外蓋38は、逆向きの略円形皿形状を有しており、上面の中央部分には、上方に向かって突出して半周に亘って延びる板形状が対向せしめられた把手部46が一体形成されている。ここにおいて、図3に示すように、外蓋38には、第二の蒸気抜き孔としての蒸気抜き用の外通気孔48が、外蓋38を肉厚方向で貫通して形成されている。なお、図3に示すように、外通気孔48は、後述する組付状態下において、内蓋36に形成された一対の内通気孔44,44と周方向で離隔する位置に設けられており、本実施形態では、一対の内通気孔44,44の対向する径方向と略直交する位置に外通気孔48が位置せしめられている。
また、外蓋38の肉厚寸法の平均値:T3 は、好適には、5mm≦T3 ≦10mm、より好適には、6mm≦T3 ≦8mmとされており、本実施形態では、T3 =7mmに設定されている。蓋し、T3 が小さ過ぎると、充分な保温力や耐久性を確保することが困難となり易い一方、T3 が大き過ぎると、外蓋38の質量が大きくなってしまうおそれがあるからである。ここで、T3 は、外蓋38において、把手部46を除いた部分の厚さの平均値である。なお、外蓋38は、内蓋36と同様に、容器本体12よりも厚肉とされて、容器本体12内の圧力の逃げがより一層有利に防がれるようになっていても良い。
なお、上述の如き容器本体12、内蓋36および外蓋38は、何れも多孔質の陶器製とされて、水との接触によって内部の微小空間に水を収容、保持する吸水性を有しており、水中に浸漬されることによって、内部に水を保持することが可能とされている。更に、特に本実施形態では、これら容器本体12、内蓋36および外蓋38は、何れも内外両面に吸水性を有しており、内外両面から水を内部に取り入れることが出来るようになっていると共に、内周側の領域と外周側の領域の間で水分の移動を許容する透水性を有している。
また、これら容器本体12、内蓋36および外蓋38の乾燥状態におけるかさ密度は、1.0g/cm3 〜2.0g/cm3 とされていることが望ましく、より好適には、1.0g/cm3 〜1.5g/cm3 とされる。本実施形態では、これら容器本体12、内蓋36および外蓋38のかさ密度が1.5g/cm3 とされている。蓋し、かさ密度が、1.0g/cm3 より小さいと、耐久性が充分に得られ難くなるおそれがあり、2.0g/cm3 よりも大きいと、所望の透水性や保温性が得られ難くなるおそれがあるからである。なお、かさ密度とは、容器本体12乃至は内外蓋36,38自体の体積と、多孔質とされた容器本体12乃至は内外蓋36,38の表面に開口する微小な開気孔の容積と、容器本体12乃至は内外蓋36,38の内部に形成された微小な閉気孔の容積との合計値を、体積として採用して算出した密度のことを言う。
さらに、本実施形態では、容器本体12と内外蓋36,38が、焼成前の素地の略全体に亘って施釉されている。これにより、容器本体12および内外蓋36,38の機械的な強度を高めることが出来ると共に、表面をガラス質の釉薬でコーティングして平滑化することにより、汚れの付着を防ぐことが出来る。なお、本実施形態では、容器本体12および内外蓋36,38の透水性乃至は通気性を有効に得るために、黄瀬戸釉や粉引釉等の一般的な釉薬を、水等の適当な液体で薄めたものが、釉薬として使用されている。このような濃度の低い釉薬を採用することにより、容器本体12および内外蓋36,38の素地の表面に開口して水を保持し得る微小な孔の全てが、釉薬によって閉塞せしめられるのを防いで、透水性が有効に維持されるものと考えられる。また、本実施形態では、水によって薄められた一般的な釉薬に、粉末状に粉砕したラジウム鉱石を混合したものを採用しており、ラジウム鉱石によるマイナスイオン効果も期待できる。更に、本実施形態では、釉に対して積極的に貫入(焼成時における釉薬と素地の収縮率の差によって生じる釉のひび)を生ぜしめることにより、貫入を通じて容器本体12および内外蓋36,38の吸水性が確保されるようになっている。
そして、このような構造とされた内蓋36と外蓋38は、図5および図6に示すように、何れも容器本体12に対して組み付けられるようになっている。即ち、内蓋36の外周縁部に形成された係止片42が、容器本体12の開口部23の内周部分に形成された段差部26に対して、上方から嵌め入れられて重ね合わされることにより、内蓋36が、容器本体12に対して載置されて、容器本体12の開口部23において軸直角方向に広がるように配設される。更に、外蓋38の外周縁部が、容器本体12の開口部23の外周側に形成されたフランジ状部24に対して、上方から重ね合わされることにより、外蓋38が、容器本体12に対して載置されて、容器本体12の開口部23の上方を覆うように配設される。これにより、内蓋36と外蓋38が何れも容器本体12の開口部23を覆うように配設されて、内蓋36と外蓋38によって本実施形態における蓋部材14が構成されるようになっている。
なお、本実施形態では、内蓋36が、段差部26に嵌め入れられることによって径方向で容易に位置決めされるようになっていると共に、外蓋38が、位置決め部28の内周側に嵌め入れられることによって径方向で容易に位置決めされるようになっている。また、本実施形態では、内蓋36と外蓋38が何れも透水性を有していることから、内蓋36と外蓋38の組付状態下において、内蓋36と外蓋38の対向面が何れも吸水性を有する面とされている。
そして、内蓋36と外蓋38の容器本体12への取付状態下において、内蓋36が外蓋38に対して下方に離隔位置せしめられており、もって、内蓋36と外蓋38が、略全体に亘って上下方向で離間して配置されている。これにより、内蓋36と外蓋38の対向面間には、全体に亘って連続する空間が設けられており、該空間によって第二の空気層としての上側空気層52が形成されている。
この上側空気層52は、内蓋36と外蓋38と容器本体12の協働によって容器内の空間及び外部空間から隔てられている。なお、本実施形態では、内蓋36と外蓋38が、容器本体12の内周縁部と外周縁部にそれぞれ載置されるようになっており、内蓋36と外蓋38の対向面間の空間が大きく確保されて、上側空気層52がより広い範囲に亘って形成されるようになっている。更に、上側空気層52は、内蓋36に形成された内通気孔44を通じて容器内に連通せしめられていると共に、外蓋38に形成された外通気孔48(図3参照)を通じて外部空間に連通せしめられている。
そして、これら容器本体12および内外蓋36、38を含んで構成された器物本体16が、保温カバー18に対して、半収容状態で挿入されている。図7乃至図10に、保温カバー18を示す。保温カバー18は、容器本体12等と同様に、表面に開口する多数の微小空間を有する多孔質の陶器によって形成されている。
保温カバー18は、容器本体12の周壁部20の外径寸法よりも大きく、容器本体12のフランジ状部24の外径寸法よりは小さな内径寸法を有する略円筒形状の周壁部54を有している。かかる周壁部54は、軸方向(図5中、上下方向)の両端部が開口せしめられており、その上方の開口部が、挿入口56とされる一方、下方の開口部が、底面露出口58とされている。そして、挿入口56の外周面には、周壁部54の径方向で対向位置せしめられて、径方向外方に突出する一対の取手60が周壁部54と一体的に形成されている。一方、底面露出口58は、容器本体12の底面32よりも一回り大きな略相似形状とされており、本実施形態においては、容器本体12の底面32の径寸法よりもやや大きな径寸法を有する円形状をもって開口せしめられている。
ここにおいて、保温カバー18の肉厚寸法の平均値:T4 は、好適には、10mm≦T4 ≦15mm、より好適には、11mm≦T4 ≦13mmとされて、本実施形態では、T4 =12mmに設定されている。蓋し、T4 が小さ過ぎると、充分な保温力や耐久性を確保することが困難となり易い一方、T4 が大き過ぎると、保温カバー18の質量が大きくなってしまうおそれがあるからである。ここで、T4 は、保温カバー18において、取手60等を除いた部分の厚さの平均値である。
また、保温カバー18は、前述の容器本体12等と同様に、多孔質の陶器製とされており、水との接触によって内部の微小空間に水を収容、保持する吸水性を有している。これにより、保温カバー18を水中に浸漬せしめることによって、保温カバー18の内部に水を保持することが可能とされている。更に、特に本実施形態では、保温カバー18は、内外両面に吸水性を有しており、内外両面から水を内部に取り入れることが出来るようになっていると共に、内周側の領域と外周側の領域の間で水分の移動を許容する透水性を有している。
また、保温カバー18の乾燥状態下におけるかさ密度は、1.0g/cm3 〜2.0g/cm3 とされていることが望ましく、より好適には、1.0g/cm3 〜1.5g/cm3 とされる。本実施形態では、保温カバー18のかさ密度は1.3g/cm3 とされている。蓋し、かさ密度が、1.0g/cm3 より小さいと、耐久性が充分に得られ難くなるおそれがあり、2.0g/cm3 よりも大きいと、所望の透水性や保温性が得られ難くなるおそれがあるからである。
さらに、保温カバー18においても、容器本体12等と同様に、焼成前の素地の略全体に亘って釉薬が施釉されていることによって、機械的な強度が高められていると共に、汚れの付着を防ぐことが出来るようにされている。更に、本実施形態では、釉に対して積極的に貫入を生ぜしめることにより、貫入を通じて保温カバー18の吸水性が確保されるようになっている。
そして、このような構造とされた保温カバー18の挿入口56に対して、図6にも示すように、器物本体16の容器本体12が底面32から挿し入れられることによって、上下方向で相互に組み合わされるようになっている。かかる組付状態において、容器本体12のフランジ状部24の下端面が、保温カバー18の挿入口56の上端面62に係止されるようになっており、本実施形態においては、上端面62によって、係止部が構成されている。これにより、器物本体16と保温カバー18が同一中心軸上に配設された状態で着脱可能に組み合わされており、本実施形態における電磁調理器用器物10が、器物本体16と保温カバー18によって構成されている。
かかる組付状態において、容器本体12の底面32が、保温カバー18の底面露出口58を通じて、外部に露出せしめられると共に、容器本体12における脚部34の突出端面35が、保温カバー18の底面露出口58側の端面である下端面63と同一平面上に位置せしめられるようになっている。また、本実施形態では、容器本体12と保温カバー18が何れも透水性を有していることから、容器本体12と保温カバー18の組付状態下において、容器本体12と保温カバー18の対向面が何れも吸水性を有する面とされている。また、特に本実施形態においては、保温カバー18における周壁部20の内周面において、上端縁部から僅かに下方の位置に、全周に亘って内方に僅かに突出する位置決め部64が形成されている。かかる位置決め部64により、容器本体12が保温カバー18に対して径方向で位置決めされるようになっている。但し、位置決め部64の内径寸法は、容器本体12の外径寸法よりも僅かに大きくされており、保温カバー18への組み付け状態において、位置決め部64と容器本体12の外周面との間には、全周に亘って僅かな空隙が形成され得るようにされている。
そして、保温カバー18と容器本体12との組付状態下では、保温カバー18の周壁部54が容器本体12の周壁部20に対して全周に亘って外周側に離隔位置せしめられていると共に、容器本体12のフランジ状部24の下端面が、保温カバー18の上端面62によって係止されている。これにより、保温カバー18の挿入口56が、容器本体12によって覆蓋されて、保温カバー18の周壁部54の内周面と容器本体12の周壁部20との間に、第一の空気層としての外周側空気層66が形成されている。
外周側空気層66は、保温カバー18と容器本体12の対向面間の全体に亘って連続的に形成されており、特に本実施形態においては、外周側空気層66の軸直角方向の寸法は、保温カバー18の軸方向(図5中、上下方向)の全体に亘って略一定とされている。ここにおいて、外周側空気層66の軸直角方向における最大寸法は、20mm以下とされていることが好ましく、特に本実施形態においては、15mmとされている。蓋し、外周側空気層66の軸直方向における最大寸法が20mmよりも大きいと、外周側空気層66が大きくなり過ぎて、後述する加熱中に外周側空気層66が十分に加熱され難くなることから、有効な加熱効果や保温効果を得ることが困難となるからである。
なお、かかる外周側空気層66は、容器本体12の軸直方向外周側に形成される一方、前述の上側空気層52は、内蓋36と外蓋38、および容器本体12のフランジ状部24によって、外周側空気層66とは分離して形成されており、これら外周側空気層66と上側空気層52は互いに連通することなく、相互に独立せしめられている。また、本実施形態においては、容器本体12の保温カバー18への組付状態下で、保温カバー18の上端面62の略全体に容器本体12のフランジ状部24の下端面が重ね合わされることによって、上端面62とフランジ状部24が互いに略密着状態とされているが、本実施形態における保温カバー18および容器本体12は、何れも多孔質の陶器製とされていることから、これら上端面62およびフランジ状部24の下端面は完全な平坦面ではなく、微小凹凸形状を有する凹凸面とされている。従って、上端面62とフランジ状部24の間には、僅かな空隙が形成されており、かかる空隙によって、外周側空気層66は、外部空間と僅かに連通せしめられている。
上述の如き構造とされた電磁調理器用器物10は、例えば、調理対象としての食品を電磁調理器で加熱調理する際に使用される。即ち、調理対象となる食品を容器本体12の内周側の空間である容器内に収容した後、内蓋36及び外蓋38を容器本体12に組み付けて、容器本体12の開口部23を蓋部材14で覆蓋することによって、器物本体16内に食品を収容せしめる。次に、器物本体16を保温カバー18に内挿せしめて半収容状態で組み付けることによって電磁調理器用器物10を形成する。そして、食品を収容した電磁調理器用器物10を、周知の電磁調理器のトッププレート上に載置して、電磁調理器を作動させることにより、食品を加熱調理できるようになっている。
以下に、本実施形態に従う構造とされた電磁調理器用器物10を用いて、電磁調理器70で炊飯を行う方法を例示する。なお、本実施形態に係る電磁調理器用器物10は、炊飯のみに使用されるものではなく、後述する白米及び水に換えて各種の食品を容器内に収容せしめることにより、種々の食品の煮込みや温め等に好適に用いられる。
具体的には、例えば、先ず、容器本体12と内外蓋36,38、および保温カバー18を何れも水中に浸漬せしめる。なお、種々なる条件によって変化し得るが、それら容器本体12と内外蓋36,38、および保温カバー18を、水中に1分間以上浸けておくことが望ましい。これにより、多孔質の陶器で形成されて吸水性を有する容器本体12と内外蓋36,38、および保温カバー18が、何れも水を吸って内部に水を保持することとなる。ここにおいて、水を含ませた保温カバー18を、電子レンジなどで予め加熱することがより好ましい。これにより、保温カバー18に含まれた水が加熱されることから、保温カバー18を予め高温状態とすることが出来て、後述する加熱効果をより有効に発揮せしめることが出来る。
次に、容器本体12に白米と水をそれぞれ適量ずつ入れた後、容器本体12の開口部23を内蓋36と外蓋38を順に取り付けることによって覆蓋して閉塞せしめ、器物本体16を形成する。そして、器物本体16を保温カバー18の挿入口56に挿し入れることによって、器物本体16を保温カバー18に対して組み付ける。これにより、容器内に白米及び水を収容した電磁調理器用器物10が形成される。そして、図11に示すように、容器内に白米及び水を収容した電磁調理器用器物10を、周知の電磁調理器70のトッププレート72上に載置して、電磁調理器70を作動せしめる。これにより、電磁調理器70に配設されたコイル74から発生せしめられる磁力線の影響により、容器本体12の底部材30に渦電流が生ぜしめられて、底部材30にジュール熱が発生する。このように、本実施形態に従う構造とされた容器本体12においては、底部材30が導電性を有するカーボンで形成されていることから、略全体が陶器製でありながら、電磁調理器70上で使用することが可能とされている。しかも、容器本体12の底面32が脚部34によって僅かにトッププレート72から離隔せしめられていることから、陶器製の周壁部20が十分に温まる前に底部材30が高温となり過ぎて、電磁調理器70のセンサが敏感に反応して自動的に加熱を中止してしまうおそれも有利に回避されており、十分な加熱を行うことが可能とされている。
ここにおいて、本実施形態に従う構造とされた電磁調理器用器物10は、容器本体12の外側に外周側空気層66が形成されている。これにより、高温とされた底部材30の熱や、底部材30の熱が伝達されて高温状態となっているトッププレート72の熱によって、外周側空気層66内の空気が加熱せしめられる。特に本実施形態においては、トッププレート72への載置状態下で保温カバー18の下端面63が全周に亘ってトッププレート72上に略隙間無く接触せしめられている。これにより、底部材30の熱や、トッププレート72の熱を有効に捉えることが可能とされている。そして、対流による熱伝達の促進等によって、外周側空気層66が上部まで温められる結果、容器本体12の周壁部20の上部に至る略全体を、外周側空気層66の熱によって外側から温めることが可能となる。このように、本実施形態においては、底部材30のみが温まり易いという電磁調理器に特有の問題を有利に軽減することが出来て、容器本体12を全体的に温めることが可能とされるのである。特に、本実施形態においては、容器本体12の周壁部20が熱伝導率の低い陶器製であることから、底部材30と周壁部20との温度差がより顕著に生じ易いものの、外周側空気層66から周壁部20を加熱することが出来て、かかる温度差を有利に軽減乃至は解消し得るのである。そして、容器本体12が全体的に加熱されることによって、加熱のムラも軽減乃至は解消することが出来て、仕上がり(炊き上がり)の斑を抑えることが出来る。
さらに、本実施形態においては、容器本体12の上部に上側空気層52が形成されており、加熱せしめられた容器本体12の熱が上昇して、上側空気層52内の空気を加熱する。これにより、高温とされた上側空気層52の熱も作用して、容器本体12内を上側から温めることも可能とされる。
ここにおいて、本実施形態における容器本体12、保温カバー18、および内外蓋36,38は、何れも吸水性を有する多孔質の陶器で形成されており、加熱前に水中に浸けることにより予め吸水せしめられて、内部に保留水を有している。従って、これら容器本体12、保温カバー18、および内外蓋36,38内に含まれた水(保留水)が、電磁調理器70による加熱によって発熱せしめられる。これにより、外周側空気層66および上側空気層52をより高温とすることが出来て、より優れた加熱効果を得ることが出来る。更に、保留水が加熱されて蒸気化すると、外周側空気層66および上側空気層52に蒸気が流れ込むようになっている。従って、電磁調理器用器物10の発熱状態下では、外周側空気層66および上側空気層52に蒸気の流入による気流が生ぜしめられる。そして、外周側空気層66および上側空気層52内の空気(水蒸気)の熱が、対流によって容器本体12および内蓋36に対して有利に伝達されることにより、容器本体12および内蓋36が外部から全体的に満遍なく加熱される。これにより、食品の局所的な加熱をより一層有利に回避することが出来て、食品全体を斑なく加熱することが可能となる。特に本実施形態では、外周側空気層66が全体に亘って略一定の幅で形成されており、対流による熱伝達が容器本体12に対して偏りなく作用するようになっている。
さらに、これら外周側空気層66および上側空気層52は、断熱層としても作用することから、容器本体12内の熱が電磁調理器用器物10の外部に逃がされるのを有利に防ぐことが出来て、より優れた加熱効果を得ることが出来る。
加えて、本実施形態においては、内外蓋36,38が重ね合わされた状態で容器本体12の開口部23を覆蓋せしめている。これにより、内外蓋36,38の重みによって開口部23の覆蓋状態を安定して維持することが出来て、容器本体12内を高圧状態に維持することが出来る。その結果、食品の加熱をより速やかに行うことが可能とされている。更に、内蓋36に形成された内通気孔44と、外蓋38に形成された外通気孔48の周方向位置が離隔せしめられていることから、容器本体12内から内外通気孔44,48を通じて外部に逃げる容器内の圧力を調節することが出来て、容器本体12内の圧力が過大になることを防止しつつ、適当な圧力に維持することが可能とされている。
また、外周側空気層66および上側空気層52が断熱層としても作用することによって、例えば電磁調理器70の作動を停止した後でも、容器本体12を高温状態により長く維持することが出来る。これにより、余熱による煮込みや蒸らし等をより有効に行うことが可能とされており、特に、余熱による最終的な蒸らしが重要であることから電磁調理器では困難とされていた炊飯も、旨みや風味を損なうことなく有利に実施することが出来る。しかも、本実施形態における電磁調理器用器物10によれば、容器本体12が陶器で形成されていることによって、遠赤外線効果による食感や風味に優れた調理結果を得ることも出来る。
さらに、本実施形態では、容器本体12および内蓋36が透水性を有しており、容器本体12および内蓋36の内周側と外周側で水分の移動が許容されている。これにより、加熱調理後に容器内の水分が自動的に調節されて、容器内の結露や乾燥等が抑えられる。その結果、食品に水滴が付いてべた付いたり、食品の水分が容器本体12や内蓋36に吸収されて乾燥する等の問題を回避することが出来る。従って、調理後に、電磁調理器用器物10に食品を入れた状態で比較的長期間に亘って保存する場合等には、これら容器本体12および内蓋36の透水性による調湿効果と、通気性による外部とのガス交換によって、食品の品質低下を抑えることが出来る。しかも、容器本体12および内蓋36の外周側には、外周側空気層66と上側空気層52が容器本体12および内蓋36を取り囲むように設けられている。これにより、容器本体12および内蓋36の内周側(容器内)の乾燥が有利に防がれて、保存時等における食品の乾燥による劣化が軽減乃至は解消されるようになっている。特に、外周側空気層66および上側空気層52が、調理時には水蒸気で満たされる、水分を多く含む空気の層であることから、容器本体12および内蓋36がより有利に湿潤な状態で維持されて、食品の乾燥が一層効果的に防がれるようになっているのである。
次に、図12乃至図16に、本発明の第二の実施形態である電磁調理器用器物としての電磁調理器用器物90を示す。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態としての電磁調理器用器物10と実質的に同様の部材及び部位については、図中に前記第一の実施形態としての電磁調理器用器物10と同一の符号を付することにより、その詳細な説明を省略する。
本実施形態における電磁調理器用器物90は、容器本体92および蓋部材94によって構成された器物本体96が、保温壁部材としての保温カバー98に半収容状態で挿し込まれて組み付けられることによって構成されている。ここにおいて、容器本体92の上端縁部には、全周に亘って径方向外方に広がるフランジ状部24が形成されており、容器本体92の周壁部分は、軸方向上端部においてフランジ状部24に向けて拡径せしめられている。更に、容器本体92の外周面には、径方向で対向する一対の取手100が固着されている。なお、本実施形態における容器本体92は、その底部および周壁部がステンレスによって一体成形されている。また、取手100は、中空成形の陶器によって構成されており、容器本体92の熱が伝達し難いようにされている。
さらに、かかる容器本体92に蓋部材94が載置状態で重ね合わされることによって、容器本体92の開口部が蓋部材94で封止されるようになっている。ここにおいて、蓋部材94は、前記第一の実施形態と同様の陶器製とされている。また、蓋部材94の上面の中央部分には、木製のつまみ102が固着されており、蓋部材94の熱が伝達し難いようにされている。なお、前記第一の実施形態とは異なり、本実施形態における蓋部材は、単一の蓋部材94によって構成されている。
そして、このような容器本体92および蓋部材94によって構成された器物本体96が、保温カバー98に挿し込まれている。図17乃至図20に、保温カバー98を示す。保温カバー98は、前述の第一の実施形態における保温カバー18と略同様の構造とされており、吸水性を有する多孔質の陶器で形成されている。そして、特に本実施形態における保温カバー98には、凹状開口部としての一対の逃がし部104が、径方向で対向して形成されている。逃がし部104は、保温カバー98の周壁部54の上端縁部が切り欠かれることによって形成されており、周壁部54の周方向に所定寸法に亘って延びて軸方向上方に開口する凹状の切欠きとされている。そして、かかる逃がし部104の周方向寸法が、容器本体92の取手100の周方向寸法よりもやや大きくされている。
また、保温カバー98の上端縁部から僅かに下方の内周縁部には、周方向の全周に亘って径方向内方に僅かに突出する係止部106が形成されている。そして、図16に示すように、容器本体92が保温カバー98に挿し入れられて、フランジ状部24の下方において拡径された周壁部分が係止部106で係止せしめられることによって、容器本体92と保温カバー98が互いに組み付けられるようになっている。
そして、本実施形態においては、容器本体92の保温カバー98への組み付け状態において、容器本体92の取手100と、保温カバー98の逃がし部104が略同じ周方向位置に位置せしめられた状態で組み付けられる。これにより、取手100の、容器本体92への接続部108が逃がし部104に挿し入れられる。このように、本実施形態における電磁調理器用器物90においては、容器本体92の保温カバー98への挿入の障害となる取手100を逃がし部104で逃がすことが可能となることから、取手を有する容器本体であっても、保温壁部材に対する良好な組み付け状態を実現することが出来る。そこにおいて、容器本体92と保温カバー98の間には、外周側空気層66が形成されており、第一の実施形態と同様の作用効果が得られる。特に、本実施形態では、容器本体92が、その底部および周壁部の全体に亘ってステンレスによって形成されていることから、加熱される底部から離れた周壁部の中央から上方にわたる部分での放熱が問題となる。この点、外周側空気層66や保温カバー98自体の断熱効果・蓄熱効果により、放熱速度を遅延させることができることから、電磁調理器における熱斑等の従来の問題点を有利に解消することが可能となる。
なお、凹状開口部の具体的な形状や個数などは、容器本体の取手形状などを考慮の上、適宜に設定されるものであり、上記実施形態に記載の構造に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、容器本体が一つの取手のみを有するような場合には、凹状開口部を1つ形成すればよい。
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、図21に示すように、前述の第一の実施形態における保温カバー18において、容器本体12を係止する上端面62の全周に亘って、所定の厚さ寸法を有する円環形状のシールゴム110を配設する等してもよい。このようにすれば、容器本体12の組み付け状態において、上端面62と容器本体12のフランジ状部24の下端面との間にシールゴム110が介在せしめられることによって、容器本体12がシールゴム110に対して全周に亘って密接状態で係止せしめられる。これにより、シールゴム110を封止手段として用いて、保温カバー18の周壁54の内周面と容器本体12の周壁20の外周面との間を略密封状態で封止出来ることから、外周側空気層66の気密性をより高めることが出来て、外周側空気層66内の熱が外部空間に逃がされることをより有効に防ぐことが出来る。
なお、上記態様においては、シールゴム110が上端面62に設けられることによって、保温カバー18の周壁54の内周面と容器本体12の周壁20の外周面との間が、容器本体12のフランジ状部24等の他の部材を介して間接的に封止されていたが、例えば、図22に示すように、保温カバー18の周壁54の内周面に、全周に亘って径方向内方に突出する円環形状のシールゴム112を設ける等してもよい。このようにすれば、容器本体12と保温カバー18との組み付け状態において、周壁20の外周面と周壁54の内周面の間にシールゴム112が介在せしめられることによって、周壁20の外周面と周壁54の内周面の間を直接的に封止することが出来る。なお、このような場合には、シールゴム112によって、外周側空気層66の上面が構成されることとなる。
さらに、このような場合には、外周側空気層66と外部空間を連通する通気孔を形成した態様が、より好適に採用される。例えば図22に示す保温カバー18においては、外周側空気層66を構成する周壁部54、即ち、シールゴム112よりも下方の周壁部54において、厚さ方向に貫通する通気孔114が形成されている。これにより、外周側空気層66が通気孔114を通じて外部空間と連通せしめられている。このようにすれば、封止手段としてのシールゴム112を設けることによって、外周側空気層66の気密性が高められた場合でも、通気孔114を通じて外周側空気層66内の圧力を逃がすことが出来て、外周側空気層66内が必要以上に高圧となるおそれを低減乃至は解消することが可能となる。但し、かかる通気孔は必ずしも封止手段と組み合わせて用いられるものではなく、封止手段を設けることなく、通気孔のみを設けることも可能である。従って、例えば前記第一の実施形態におけるカバー部材18の周壁部54を厚さ方向で貫通することによって、通気孔を形成する等してもよい。
更にまた、例えば前記第一の実施形態において、図23および図24に示すように、周壁部54の底面露出口58を覆蓋する下側蓋部材としての下カバー116を組み合わせて保温カバー18を構成するなどしても良い。図25および図26に、下カバー116を示す。下カバー116は、上方に開口する略カップ形状とされており、略円板形状を有する底板118の外周縁部の全周に亘って、上方に突出する周壁120が一体的に形成されている。ここにおいて、周壁120の内周面には段差部122が形成されており、段差部122の下側が小径部124とされると共に、段差部122の上側が小径部124よりも大きな内径寸法を有する大径部126とされている。
そして、図23および図24に示すように、下カバー116の上方から周壁部54の下端面63が載置状態で重ね合わされる。ここにおいて、周壁部54の下端部の外周面には、全周に亘って切欠状の嵌合部128が形成されている。これにより、周壁部54の嵌合部128と下カバー116の周壁120における大径部126が嵌め合わされることによって、周壁部54と下カバー116の軸直方向の相対的な変位が制限されている。このようにして、周壁部54の底面露出口58が下カバー116で覆蓋されると共に、容器本体12の底面32が下カバー116の底板118から上方に所定距離だけ離隔して位置せしめられることによって、容器本体12の底面32と下カバー116との間に下側空気層130が形成される。ここにおいて、容器本体12の底面32と下カバー116の底板118との軸方向(図24中、上下方向)の離隔距離:T5 は、好適には5mm≦T5 ≦30mm、より好適には10mm≦T5 ≦20mmとされて、本実施形態においてはT5 =10mmに設定されている。そして、かかる組み付け状態において、容器本体12は、その外側部分に外周側空気層66が形成されると共に、その下側部分に下側空気層130が形成されることによって、底面32を含む外周面の全体が外周側空気層66と下側空気層130によって囲まれることとなる。
このようにすれば、例えば容器本体12および周壁部54を電磁調理器から降ろした後に、周壁部54を下カバー116に載置することによって、容器本体12の底面32の下方に、下側空気層130が形成される。これにより、容器本体12の底面32が他部材と接触することに起因して底面32の熱が他部材で吸収されるようなことを回避すると共に、下側空気層130を断熱・蓄熱層として用いることによって、容器本体12、特に底面32を構成する底部材30の高温状態をより有利に維持することが可能とされており、例えば蒸らし等の調理においてより優れた効果を発揮することが出来る。
ここにおいて、下カバー116の材料は特に限定されるものではなく、任意の材料が適宜に採用可能であるが、保温性等の観点から、例えば前述の周壁部54と同様の陶器や、或いは、内部に断熱層を形成する多層構造の金属材料などが好適に採用され得る。
なお、下側空気層130の気密性をより高めるために、例えば図27に示すように、下カバー116の周壁120の上端面に封止部材としてのシールゴム132を設けることも可能である。このようにすれば、周壁部54と周壁120との重ね合せ面間を封止することが出来て、下側空気層130の気密性をより高めることが出来ることから、下側空気層130の高温状態をより長く維持することが出来る。なお、図27においては、周壁120における大径部126の上端面および内周面と段差部122の上端面に亘ってシールゴム132が固着されることによって、周壁部54と周壁120の重ね合わせ面間の全体に亘ってシールゴム132が介在せしめられているが、例えば、周壁120の大径部126の上端面や段差部122の上端面にのみシールゴム132を配設する等してもよい。また、シールゴム132を周壁部54の下端面に設けることも勿論可能である。
また、例えば前記第一の実施形態においては、容器本体12の保温カバー18への組み付け状態で容器本体12が保温カバー18に係止せしめられていたが、容器本体は、必ずしも組付状態において保温壁部材に係止されている必要はない。即ち、前述の第一の実施形態(図5参照)においては、組み付け状態下で容器本体12のフランジ状部24が保温カバー18の上端面62で係止せしめられていたが、例えば、容器本体12の軸方向寸法をより大きくすること等によって、容器本体12と保温カバー18を同一平面上に載置した状態において、フランジ状部24の下面と上端面62が隙間を隔てた非接触状態で、単に容器本体12が保温カバー18に挿入されている状態とする等しても良い。
更にまた、保温壁部材の材料としては、前述の如き陶器に限定されるものではない。例えばステンレスや鉄、アルミニウムなどの金属材料や、従来公知の各種の合成樹脂材料等を適宜に用いて保温壁部材を形成することも可能である。また、保温壁部材を多層構造とし、内部に断熱層を設けること等による更なる断熱効果の向上を図ることもできる。
更にまた、例えば前記第一の実施形態において、図28に示すように、外周側空気層66が形成された保温カバー18と容器本体12の対向面間に、熱伝導促進壁134を配設してもよい。この熱伝導促進壁134は、銅、ステンレス、アルミ等の金属材料から形成されており、全体として、容器本体12および保温カバー18のの湾曲に倣った湾曲筒形状とされており、容器本体12および保温カバー18から所定の隙間を隔てて配設されている。
かかる熱伝導促進壁134は、その下端部は図示しない電磁調理器のトッププレート上に載置されるようになっており、その上端部は、容器本体12のフランジ部から所定量下方に離隔するようにされている。これにより、熱伝導促進壁134と保温カバー18および容器本体12との対向面間に形成される各空気層が、かかる隙間を介して連通状態とされる。これにより、空気の対流による電熱性が、熱伝導促進壁134により阻害されることを阻止している。なお、熱伝導促進壁134の下端部は、底部材30付近まで延び出しており、電磁調理器の誘導加熱が、熱伝導促進壁134に有利に生ぜしめるようになっている。また、熱伝導促進壁134は、好ましくは0.8mm〜1.2mmの肉厚寸法を有している。
このような熱伝導促進壁134を、外周側空気層66内に配設することにより、底部材付近やトッププレートの熱をさらに有利に外周側空気層66内の加熱に利用することができ、容器本体12の上部、ひいては容器本体12全体の加熱促進が図られ得る。さらに、熱伝導促進壁134が銅やステンレス等のIH対応素材からなる場合は、それ自体が電磁調理器の誘導加熱により、加熱されることから、容器本体12の上部および容器本体12全体の加熱の促進を飛躍的に達成することができる。なお、外周側空気層66内の空気の対流による伝熱性を高めるためには、熱伝導促進壁134の一部に連通孔を設けたり、或いは、熱伝導促進壁134の一部または全部をメッシュ構造とすることも好ましい。
なお、図28では、熱伝導促進壁134を別体の筒状体として設ける態様を説明したが、かかる熱伝導促進壁は、保温カバー18の内周面および/または容器本体12の外周面に、溶射等により被着形成することもできる。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。