まず、本発明が解決しようとする課題及びその解決手段について説明する前に、上述の可変抵抗素子の抵抗変化現象につき、本発明の基礎となる技術思想を説明する。
図11は、上部電極と下部電極の間に可変抵抗体を挟持した構造の可変抵抗素子における両電極間への電圧印加による基本的な抵抗変化特性を示す電流電圧特性である。図11に示す電流電圧特性の測定は、電流の上限値(コンプライアンス)を設定できる市販の測定器(例えば、アジレントテクノロジー社のパラメータアナライザ、型番4156B)を用いて行われたものであり、横軸に示される電圧値を可変抵抗素子の両端に印加した際に、当該可変抵抗素子に対して流れる電流値を縦軸にとり、この電流電圧特性でもって抵抗変化特性を表現している。具体的な電圧値及び電流値は、測定対象となる個々の試料の材料、素子構造、製造工程、素子サイズにより異なるが、定性的な特性については、可変抵抗体の種類を問わず、例えば可変抵抗体の材料が、鉄、ニッケル、銅、チタン等の酸化膜である場合に図11に示す特性を示す。
即ち、高抵抗状態の抵抗特性(図中の電流電圧特性曲線Sa)を示す可変抵抗素子に、閾値電圧Va(Va+またはVa−)以上の電圧を印加すると、低抵抗状態の抵抗特性(図中の電流電圧特性曲線Sb)に遷移する。可変抵抗素子を流れる電流は、印加電圧Va以上で電流コンプライアンス値Ic1まで増加する。このとき電流コンプライアンス値Ic1を低抵抗状態(特性Sb)から高抵抗状態(特性Sa)への遷移点Tbでの電流値を越えない値に設定することで、コンプライアンス値Ic1以上の電流は流れず、電流値Ic1を維持したまま印加電圧を低下させると、高抵抗状態(特性Sa)から低抵抗状態(特性Sb)に遷移する。このとき、低抵抗状態に遷移後の印加電圧が遷移点Tbでの閾値電圧Vb(Vb+またはVb−)より低いため、抵抗特性は高抵抗状態(特性Sa)に逆戻りせずに安定的に低抵抗状態(特性Sb)に遷移する。次に、電流コンプライアンス値を、遷移点Tbでの電流値以上に設定するか、或いは、最初の設定を解除し、低抵抗状態の抵抗特性Sbを示す可変抵抗素子に、閾値電圧Vb以上の電圧を印加すると、可変抵抗素子を流れる電流が減少して、高抵抗状態の抵抗特性Saに遷移する。
高抵抗状態(特性Sa)にあるとき、電流コンプライアンス値を設定せずに閾値電圧Va以上の電圧を印加し続けた場合、当該印加電圧が閾値電圧Vbよりも大きいため、高抵抗状態(特性Sa)から低抵抗状態(特性Sb)への遷移が起こると直ぐに低抵抗状態(特性Sb)から高抵抗状態(特性Sa)への遷移が発生する。結果として、可変抵抗素子の抵抗特性が高抵抗状態(特性Sa)と低抵抗状態(特性Sb)の間で変化し続けるという不安定な発振現象が発生することになる。このような発振状態から印加電圧を低下させると、大きい方の閾値電圧Va未満の電圧になったときに発振は停止し、その時点で印加電圧が閾値電圧Vb以上であるため、可変抵抗素子の抵抗特性は低抵抗状態(特性Sb)となり、実際に閾値電圧Va以上の電圧を印加しても高抵抗状態(特性Sa)への遷移は起こらない。つまり、可変抵抗素子単体に対して電流コンプライアンス値を設定せずに電圧印加しても所望のスイッチング動作は実現できない。
可変抵抗素子が高速に抵抗変化を生じさせる場合において、電流コンプライアンスによって可変抵抗素子の抵抗値の制御を的確に行うことは困難と言える。即ち、本方法は抵抗変化が比較的遅い可変抵抗素子にしか適用できない。さらに、本方法では、抵抗値の変化現象が発生している最中に電圧印加の遮断が行われる構成であるため、抵抗値が安定する抵抗状態の遷移現象が完全に完了する前の不安定な状態で抵抗変化を止めるとこととなり、安定した抵抗値に制御することが困難であると言える。
したがって、抵抗値の変化が生じている最中に外部から意図的に電圧印加を遮断させることなく、抵抗値の変化を生じさせるべく所定の条件下で電圧を印加することのみで、当該電圧印加条件に応じて抵抗値の制御を可能にするような抵抗値の制御方法が必要になる。
ここで、可変抵抗素子として安定したスイッチング動作を行うためには、図11に示したグラフより以下の2つの条件を具備することが必要であると言える。即ち、(1)可変抵抗素子の抵抗特性を高抵抗状態Saから低抵抗状態Sbに遷移させる場合には、閾値電圧Vaが閾値電圧Vbより低電圧である可変抵抗素子に対して閾値電圧Vaより高く閾値電圧Vbより低い電圧を印加することが必要となる。又、(2)逆に可変抵抗素子の抵抗特性を高抵抗状態Saから低抵抗状態Sbに遷移させる場合には、閾値電圧Vbが閾値電圧Vaより低電圧である可変抵抗素子に対して閾値電圧Vbより高く閾値電圧Vaより低い電圧を印加することが必要となる。
しかしながら、従来報告されていた対称構造の可変抵抗素子では可変抵抗素子単体でスイッチング動作を行わせる場合、即ち、負荷抵抗がゼロまたは一定の負荷抵抗特性に固定された条件下で可変抵抗素子への印加電圧をオンオフする場合、2つの抵抗状態間を遷移させる夫々の印加電圧が同一極性では、上記2つの条件を同時に満たすことはできなく、安定したスイッチング動作が得られない。そのため、特許文献3に記載されている下記のような非対称構造の可変抵抗素子に対するバイポーラスイッチング特性の非対称性、または、温度上昇による抵抗特性の変化を用いたモノポーラスイッチング動作を用いた場合について考えられる。
図12に、上記2つの条件を満たしてバイポーラスイッチング動作可能な可変抵抗素子の抵抗特性(電流電圧特性)を示す。尚、図12では、可変抵抗素子の2つの抵抗特性Sa、Sbと負荷回路の負荷抵抗特性Scを合わせて表示している。負荷回路は可変抵抗素子に対して電気的に直列に接続して直列回路を形成しており、当該直列回路の両端に電圧を印加することで、可変抵抗素子と負荷回路の抵抗分圧によって決定される電圧が可変抵抗素子に印加される構成である。図12中において、負荷抵抗特性Scと抵抗特性Sa(高抵抗状態)、Sb(低抵抗状態)との交点の電圧が実際に可変抵抗素子に印加される電圧となり、負荷抵抗特性Scと電圧軸との交点が当該直列回路の両端へ印加される電圧を示す。当該直列回路の両端への印加電圧の増減によって、負荷抵抗特性Scが横方向(電圧軸方向)に平行移動する。図12に示す例では、負荷回路として線形な(直線的な)負荷抵抗特性を示す負荷抵抗を想定して説明する。
図12に示す電流電圧特性では、一方の極性(正極性)側の直列回路への電圧印加によって高抵抗状態(特性Sa)から低抵抗状態(特性Sb)へ遷移する閾値電圧VA+が同じ極性(正極性)側で低抵抗状態Sbから高抵抗状態Saへ遷移する閾値電圧VB+よりも絶対値で小さく、絶対値が閾値電圧VA+以上の電圧を直列回路の両端に印加することで、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Va+以上の電圧が印加され、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が起こる。即ち、図12に示す例では、負荷回路の存在が、図11を参照して上述した電流コンプライアンスを設定することによる作用と同様の作用を奏していると言える。つまり、負荷回路の存在によって、高抵抗状態Saから低抵抗状態Sbへの遷移による可変抵抗素子を流れる電流の増加によって負荷回路を介した電圧降下が発生して可変抵抗素子への印加電圧が自動的に低減する。負荷回路の負荷抵抗特性を適正に設定することで、低抵抗状態へ遷移後の可変抵抗素子への印加電圧の絶対値が、抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる閾値電圧Vb+より低電圧となり、安定的に高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が実現する。一方、低抵抗状態へ遷移後に、直列回路へ同一極性(正極性)の閾値電圧VB+以上の電圧を印加しても、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Va+より高電圧の閾値電圧Vb+以上の電圧が印加されるため、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移は起こらない。
しかも、この方法によれば、可変抵抗素子を流れる電流の電流量が基準値を上回った時点(高抵抗状態から低抵抗状態に変化させる場合)で電圧の印加を停止させる特許文献1に記載の方法とは異なり、可変抵抗素子の抵抗値が変化するに連れて当該可変抵抗素子の抵抗値と負荷回路の抵抗比が変化することで、当該抵抗比によって印加電圧が分圧されることで定められる可変抵抗素子の両端に対する印加電圧が連続的に変化する構成であるため、予め負荷抵抗の大きさと印加電圧を所定の条件下に設定してさえおけば、可変抵抗素子の抵抗値の変化と、それに伴う印加電圧の変化に基づいて、可変抵抗素子がそれ以上抵抗状態を変化させることのできない状態(安定状態)に自動的に遷移した後、自動的に抵抗状態の遷移が停止されるため、特許文献1の方法と比較して抵抗値を容易に、且つ厳密に制御することが可能となる。
同様に、他方の極性(負極性)側の直列回路への電圧印加によって低抵抗状態(特性Sb)から高抵抗状態(特性Sa)へ遷移する閾値電圧VB−が同じ極性(負極性)側で高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する閾値電圧VA−よりも絶対値で小さく、絶対値が閾値電圧VB−以上の電圧を直列回路の両端に印加することで、可変抵抗素子の両端子間には絶対値が閾値電圧Vb−以上の電圧が印加され、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が起こる。負荷回路の負荷抵抗特性を負極性側においても正極性側と共通に設定することで、高抵抗状態へ遷移後の可変抵抗素子への印加電圧の絶対値が、抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる閾値電圧Va−より低電圧となり、安定的に低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が実現する。しかし、高抵抗状態へ遷移後に、直列回路へ同一極性(負極性)の絶対値が閾値電圧VA−以上の電圧を印加しても、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Vb−より高電圧の閾値電圧Va−以上の電圧が印加されるため、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移は起こらない。
ここで、注目すべき点は、可変抵抗素子単体では、印加電圧の極性に拘らず、低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移する閾値電圧Vb+及びVb−が高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する閾値電圧Va+及びVa−より夫々低電圧であるにも拘らず、閾値電圧Va+及びVb+の相対関係(例えば、電圧差や電圧比)と閾値電圧Va−及びVb−の相対関係を非対称とすることで、負荷回路の負荷抵抗特性を適正に設定することで、直列回路へ印加電圧の閾値電圧として、正極性側において閾値電圧VA+を閾値電圧VB+よりも絶対値で小さく、負極性側において閾値電圧VB−を閾値電圧VA−よりも絶対値で小さくできる点である。この結果、閾値電圧VA+及びVB+の大小関係と閾値電圧VB−及びVA−の大小関係を反転させることができ、正負両極性の電圧印加によって安定したバイポーラスイッチング動作が可能となる。
しかし、このようなバイポーラスイッチング特性を利用する構成である場合には、正極性側、及び負極性側において、夫々低抵抗状態から高抵抗状態に対する遷移現象、又はその逆の遷移現象を発生させることで低抵抗状態と高抵抗状態の2状態を実現することができるに留まる。即ち、バイポーラスイッチング特性を示す可変抵抗素子を用いて実現できるのは最大で2値の情報の記憶に留まり、3値以上の情報の記憶を行うことができない。このことは、占有面積の増大を抑制しつつ、記憶容量の更なる増大を可能とする半導体記憶装置の実現には一定の限界があることを示唆している。
又、上述したバイポーラスイッチング特性とは別に、可変抵抗素子に対する印加電圧の極性は同一のまま、当該電圧印加時間を変化させることによって可変抵抗素子の抵抗値の変化の制御が可能となる場合があり、かかる特性をモノポーラスイッチング特性という。又、このモノポーラスイッチング特性を利用した可変抵抗素子の抵抗値変化現象を以下では「モノポーラスイッチング動作」という。
図13(A)及び(B)に、上記2つの条件を満たしてモノポーラスイッチング動作可能な可変抵抗素子の抵抗特性(電流電圧特性)を示す。図13(A)はパルス幅(電圧印加時間)が短い電圧パルス印加時の可変抵抗素子の抵抗特性(電流電圧特性)を示し、図13(B)はパルス幅(電圧印加時間)が長い電圧パルス印加時の可変抵抗素子の抵抗特性(電流電圧特性)を示す。尚、図13では、図12と同様の要領で、可変抵抗素子の2つの抵抗特性Sa、Sbと負荷回路の負荷抵抗特性Scを併せて表示している。
図13(A)に示す電流電圧特性では、直列回路への短いパルス幅の電圧パルス印加によって高抵抗状態(特性A)から低抵抗状態(特性B)へ遷移する閾値電圧VAsが、同じパルス幅における低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移する閾値電圧VBsよりも絶対値で小さく、絶対値が閾値電圧VAs以上の電圧パルスを直列回路の両端に印加することで、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Vas以上の電圧が印加され、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が起こる。ここで、図13に示す例では、図12に示した場合と同様、図11に示す電流コンプライアンスを設定する代わりに負荷回路を用いて図12で説明したのと同様の効果を実現している。つまり、負荷回路の存在によって、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移による可変抵抗素子を流れる電流の増加によって負荷回路を介した電圧降下が発生して可変抵抗素子への印加電圧が自動的に低減する。負荷回路の負荷抵抗特性を適正に設定することで、低抵抗状態へ遷移後の可変抵抗素子への印加電圧の絶対値が、抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる閾値電圧Vbsより低電圧となり、安定的に高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が実現する。しかし、低抵抗状態へ遷移後に、同じパルス幅の電圧パルス印加により直列回路へ閾値電圧VBs以上の電圧を印加しても、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Vasより高電圧の閾値電圧Vbs以上の電圧が印加されるため、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移は起こらない。
逆に、図13(B)に示す電流電圧特性では、直列回路への長いパルス幅の電圧パルス印加によって低抵抗状態Sbから高抵抗状態Saへ遷移する閾値電圧VBlが同じ長いパルス幅における高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する閾値電圧VAlよりも絶対値で小さく、絶対値が閾値電圧VBl以上の電圧を直列回路の両端に印加することで、可変抵抗素子の両端子間には絶対値が閾値電圧Vbl以上の電圧が印加され、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が起こる。負荷回路の負荷抵抗特性を長いパルス幅においても短いパルス幅と共通に設定することで、高抵抗状態へ遷移後の可変抵抗素子への印加電圧の絶対値が、抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる閾値電圧Valより低電圧となり、安定的に低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が実現する。しかし、高抵抗状態へ遷移後に、同じ長いパルス幅の電圧パルス印加により直列回路へ閾値電圧VAl以上の電圧を印加しても、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Vblより高電圧の閾値電圧Val以上の電圧が印加されるため、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移は起こらない。
従って、同じパルス幅では、可変抵抗素子の抵抗特性は、高抵抗状態Saと低抵抗状態Sbの一方から他方へのみ遷移するがその逆の遷移ができないため、安定したスイッチング動作が不可能であるところ、上記のモノポーラスイッチング動作では、長短2種類のパルス幅の同一極性の電圧パルス印加を使用することにより、2つの異なるパルス幅の電圧パルス印加の一方で、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移を安定的に実現し、他方で低抵抗状態から高抵抗状態への遷移を安定的に実現できる。
ここで、注目すべき点は、可変抵抗素子単体では、パルス幅の長短に拘らず、低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移する閾値電圧Vbs及びVblが高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する閾値電圧Vas及びValより夫々低電圧であるにも拘らず、閾値電圧Vas及びVbsの相対関係(例えば、電圧差や電圧比)と閾値電圧Val及びVblの相対関係をパルス幅の長短によって異ならせ、負荷回路の負荷抵抗特性を適正に設定することで、直列回路へ印加電圧の閾値電圧として、短いパルス幅において閾値電圧VAsを閾値電圧VBsよりも絶対値で小さく、長いパルス幅において閾値電圧VBlを閾値電圧VAlよりも絶対値で小さくできる点である。この結果、閾値電圧VAs及びVBsの大小関係と閾値電圧VBl及びVAlの大小関係を反転させることができ、パルス幅の異なる電圧パルス印加によって安定したモノポーラスイッチング動作が可能となる。
ここで、図13に示す可変抵抗素子の閾値電圧Val及びVblの相対関係におけるパルス幅の長短による相違は、長いパルス幅の電圧パルス印加時において、可変抵抗素子で発生するジュール熱によって、可変抵抗素子またはその近傍の抵抗成分の抵抗値が変化することにより、可変抵抗素子の高抵抗状態Sa及び低抵抗状態Sbの抵抗特性が変化することで発現すると考えられる。特に、直列回路に印加する電圧パルスの電圧振幅を固定した場合、低抵抗状態Sbの可変抵抗素子に長いパルス幅の電圧パルスを印加する場合において、ジュール熱の発生が顕著となり、低抵抗状態Sbの抵抗特性においてパルス幅の違いによる特性変化が顕著に現れると考えられる。つまり、図14(A)及び(B)を比較すると分かるように、ジュール熱の影響により、長いパルス幅の電圧パルスを印加時の方が、低抵抗状態Sbの抵抗特性がより低抵抗化し(電流電圧特性の勾配が急峻化している)、閾値電圧VBlが、パルス幅が短い場合の閾値電圧VBsより低電圧化する。
上記のモノポーラスイッチング動作を利用すれば、同一極性の電圧の印加によって少なくとも2値の情報を記憶することができる。従って、このモノポーラスイッチング特性と前記のバイポーラスイッチング特性とを組み合わせることにより、一のメモリセルで多値の情報を記憶することも可能であると考えられる。
しかしながら、可変抵抗素子の抵抗値を制御する負荷回路は、半導体からなるトランジスタ或いは金属抵抗で構成されているため、抵抗特性に温度依存性をもつ。すなわち、周辺温度によって負荷回路の抵抗特性が変化し、安定した抵抗値に可変抵抗素子を制御することが困難になる。
例えば、図13(A)において、可変抵抗素子に電圧を印加して高抵抗状態Saから低抵抗状態Sbへ遷移させる場合、負荷抵抗が温度により変化し高抵抗側にずれると、図13(A)の負荷抵抗曲線の傾きが緩やかになるため、可変抵抗素子に印加される電圧が高抵抗状態Saから低抵抗状態Sbへ遷移する閾値電圧Vasより小さくなり、遷移が起こらないことが有り得る。
一方、負荷抵抗が温度により変化し低抵抗側にずれると、負荷抵抗曲線の傾きが急になるため、可変抵抗素子が低抵抗状態Sbに遷移後、可変抵抗素子に印加される電圧が低抵抗状態Sbから高抵抗状態Saへ遷移する閾値電圧Vbsを超えることがあり、高抵抗状態Saから低抵抗状態Sbへ安定に遷移させることができない。
記憶素子の書き換えを温度補償する従来技術として、記憶素子に印加される電圧発生回路からの書き換え電圧条件を温度補償することが容易に考えられる。しかし、本発明の可変抵抗素子は、抵抗を安定に動作させるために、負荷回路の負荷抵抗特性による抵抗制御が不可欠であり、従来の書き換え電圧の温度補償では安定した動作が実現できない。
特に、一のメモリセルで二以上の情報を記憶させようとする場合には、所望の抵抗値に可変抵抗素子を制御することが可能な直列回路の印加電圧条件及び負荷回路の抵抗特性の条件の範囲が狭くなるため、負荷回路の負荷抵抗特性に温度依存性がある場合、印加電圧のみを制御して可変抵抗素子の抵抗値を温度補償するには限界がある。
そこで、本発明は、電圧印加によって抵抗特性が変化する可変抵抗素子を備えた不揮発性半導体記憶装置における従来の抵抗制御における上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上述の問題点を克服できる前記負荷回路の温度を検知する温度検知回路を備えた負荷回路を提供し、精度高く安定した抵抗制御ができる信頼性の高い大規模な不揮発性半導体記憶装置を提供することにある。
本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、両端に所定条件を満足する電圧が印加されることで、当該両端の電流電圧特性で規定される抵抗特性が二以上の異なる抵抗特性の間で可逆的に遷移し、前記二以上の異なる抵抗特性に応じて異なる情報が関連付けられることで二以上の情報の記憶が可能な可変抵抗素子を有するメモリセルを複数配列してなるメモリセルアレイと、前記可変抵抗素子の一方端に直列に接続する負荷回路と、前記可変抵抗素子と前記負荷回路との直列回路の両端に印加する電圧を発生させるための電圧発生回路と、前記負荷回路の温度を検知する温度検知回路と、電圧変換制御回路と、を備えてなる不揮発性半導体記憶装置であって、前記負荷回路は、電流電圧特性で規定される自身の抵抗特性を外部制御信号により変更可能に構成され、前記電圧発生回路は、自身が発生する前記直列回路の両端に電圧を印加するための電圧の発生電圧条件を変更可能に構成され、前記可変抵抗素子は、前記直列回路に前記電圧発生回路からの電圧が印加されると、前記負荷回路の抵抗特性と前記電圧発生回路が発生する発生電圧条件に基づいて決定される一の抵抗特性に、前記二以上の異なる抵抗特性の間で抵抗特性が遷移可能に構成され、前記負荷回路の抵抗特性又は前記電圧発生回路からの発生電圧条件の何れか一方、又は両方を変更することで一の遷移条件を設定し、前記設定された遷移条件の下で、前記電圧発生回路からの発生電圧を書き換え対象である対象メモリセルが有する前記可変抵抗素子と前記負荷回路との直列回路に対して印加して、前記可変抵抗素子の抵抗特性を当該電圧印加前の抵抗特性を含めた前記二以上の異なる抵抗特性の中から選択される一の抵抗特性に選択的に遷移させるものであり、前記電圧変換制御回路は、前記温度検知回路の検知温度に応じて、前記直列回路の両端に電圧を印加することにより前記可変抵抗素子に分圧される電圧が、前記可変抵抗素子の抵抗特性が前記選択される一の抵抗特性へ遷移する閾値電圧以上となり、前記選択される一の抵抗特性に遷移後においては前記選択される一の抵抗特性以外へ遷移する閾値電圧以下となるように、前記負荷回路の抵抗特性を温度変化に対して制御が可能に構成されることにより、前記メモリセルアレイを構成する前記メモリセルの書き換え時に、前記可変抵抗素子に二以上の情報の書き換えが可能に構成されていることを第1の特徴とする。
更に、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、上記第1の特徴に加えて、前記負荷回路は、トランジスタを含んで構成され、前記トランジスタのゲート端子或いはベース端子への電圧印加により、電流電圧特性で規定される自身の抵抗特性を変更可能に構成され、 前記電圧変換制御回路は、所定の電圧を前記負荷回路の前記トランジスタのゲート端子或いはベース端子に印加することにより、前記負荷回路の抵抗特性を温度変化に対して制御が可能に構成されていることを第2の特徴とする。
また、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、上記第1又は第2の何れかの特徴に加えて、前記負荷回路は、前記メモリセルアレイと同一のチップに配置されていることを第3の特徴とする。
更に、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、上記第1から第3の何れかの特徴に加えて、前記メモリセルが有する前記可変抵抗素子は、第1電極と、第2電極と、及び前記両電極の間に形成される可変抵抗体を有し、前記可変抵抗体は、Cu,Ni,V,Zn,Nb,Ti,W,Co,Taの少なくとも何れか一つを含む遷移金属の酸化物又は窒化物又は酸窒化物で構成されることを第4の特徴とする。
更に、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、上記第1から第4の何れかの特徴に加えて、前記温度検知回路は、バイポーラトランジスタ又はMOSトランジスタにより構成され、前記パイポーラトランジスタのエミッタ‐コレクタ間に流れる電流量、又は、前記MOSトランジスタのソース‐ドレイン間に流れる電流量により前記負荷回路の温度を検知することを第5の特徴とする。
更に、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、上記第1から第4の何れかの特徴に加えて、前記温度検知回路は、前記可変抵抗素子を有し、定電流源から前記可変抵抗素子に定電流を流して前記可変抵抗素子の両端に発生する電圧と、温度により電圧が変動しない基準電圧と、をコンパレータにより比較して前記負荷回路の温度を検知することを第6の特徴とする。
本発明の不揮発性半導体記憶装置は、負荷回路の温度を検知するための温度検知回路と、温度検知回路で検知された温度に基づいて負荷回路の抵抗特性を変更制御するための電圧変換制御回路を備え、負荷回路の負荷抵抗特性の温度による変化を補償することによって、精度良く安定した可変抵抗素子の抵抗制御が可能な不揮発性半導体記憶装置を提供することができる。
具体的には、電圧変換制御回路は、温度検知回路の検知温度に応じて、直列回路の両端に電圧を印加することにより可変抵抗素子に分圧される電圧が、可変抵抗素子の抵抗特性が一の抵抗特性へ遷移する閾値電圧以上となって当該一の抵抗特性へ遷移し、遷移後においては当該一の抵抗特性以外へ遷移する閾値電圧以下となって当該一の抵抗特性から他の状態に遷移することがないように、負荷回路の抵抗特性が温度変化に対して一定の範囲を維持するように制御が可能に構成されていることにより、精度良く安定して可変抵抗素子の抵抗制御を可能とするものである。
ここで、負荷回路はトランジスタを含んで構成されることにより、好適に、当該トランジスタのゲート端子或いはベース端子への電圧印加により、自身のソース‐ドレイン間或いはエミッタ‐コレクタ間の電流電圧特性で規定される自身の抵抗特性を変更することができる。電圧変換制御回路は、所定の電圧を当該トランジスタのゲート端子或いはベース端子へ印加して、負荷回路の抵抗特性が温度変化に対して当該一定の範囲を維持するように制御する。
尚、負荷回路は、メモリセルアレイのメモリセルの書き換えに際し、負荷回路の抵抗特性を変更することにより書き換え対象のメモリセルが有する可変抵抗素子と当該負荷回路との直列回路に対して電圧を印加した際に可変抵抗素子に印加される電圧の分圧を制御するためのものであるから、メモリセルアレイと同一のチップに配置することが望ましい。また、可変抵抗素子を構成する可変抵抗体の材料については、その抵抗特性が電圧の印加により二以上の異なる状態間で可逆的に遷移する材料から構成されていれば何でも良いが、特に、Cu,Ni,V,Zn,Nb,Ti,W,Co,Taの少なくとも何れか一つを含む遷移金属の酸化物又は窒化物又は酸窒化物であることが望ましい。上記材料を可変抵抗体として用いて可変抵抗素子を構成することにより、三以上の複数の抵抗特性の間で高精度に安定して可変抵抗素子の抵抗制御が可能な不揮発性半導体記憶装置を提供することができる。
温度検知回路は、例えば、バイポーラトランジスタ、又はMOSトランジスタにより構成することができ、バイポーラトランジスタのエミッタ‐コレクタ間に流れる電流量、又は前記MOSトランジスタのソース‐ドレイン間に流れる電流量の温度特性を利用することで負荷回路の温度検知を行うことができる。
或いは、温度検知回路は、温度特性を有する抵抗素子を有し、定電流源から当該抵抗素子に電流を流して発生する電圧降下分と、温度により電圧が変動しない基準電圧と、を比較することにより負荷回路の温度を検知するものであっても良い。ここで用いる温度特性を有する抵抗素子の例としては本発明のメモリセルで用いられる可変抵抗素子を採用すると製造プロセスが簡易になる。
以上詳細に説明したように、本発明の不揮発性半導体記憶装置によれば、負荷回路の負荷抵抗特性の温度による変化を補償することによって、精度良く高く安定した可変抵抗素子の抵抗制御が可能な不揮発性半導体記憶装置を提供することができる。特に、三以上の複数の抵抗特性の間で安定的に可変抵抗素子の抵抗制御を行う場合に有用である。
以下において、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置(以下、適宜「本発明装置」と称する)の実施形態(以下、適宜「本実施形態」と称する)につき、図面を参照して説明する。
〈本発明装置の構造についての説明〉
図1は、本発明装置の概略構成を示すブロック図の一例である。図1に示すように、本発明装置10は、メモリセルアレイ11、ワード線デコーダ(ワード線選択回路に相当)12、ビット線デコーダ(ビット線選択回路に相当)13、温度補償用の負荷回路14、読み出し回路15、制御回路16、電圧発生回路17、温度検知回路25、及び、電圧変換制御回路26を備えて構成される。
メモリセルアレイ11は、不揮発性のメモリセルを行方向及び列方向に夫々複数配列して構成され、外部からのアドレス入力で指定されるメモリセルに情報を電気的に書き込むことができ、更に、アドレス入力で指定されるメモリセルに記憶された情報を読み出すことができる。より詳細には、アドレス線18から入力されたアドレス信号に対応したメモリセルアレイ11内の特定のメモリセルに情報が記憶され、その情報はデータ線19を通り、外部装置に出力される。ここで、各メモリセルは、上部電極と下部電極との間に可変抵抗体が狭持されることで3層構造体を構成する可変抵抗素子を有する。当該可変抵抗素子は、両電極間に電圧を印加することにより二以上の状態間で抵抗特性が可逆的に遷移するものであり、特に、高抵抗状態と低抵抗状態の二つの抵抗特性を情報の記憶に用いる、上述したバイポーラスイッチング特性を有する可変抵抗素子である。
ワード線デコーダ12は、メモリセルアレイ11の各ワード線に接続し、アドレス線18に入力された行選択用のアドレス信号に対応するメモリセルアレイ11のワード線を選択ワード線として選択し、選択ワード線と選択されなかった非選択ワード線に、書き込み、消去、読み出しの各メモリ動作に応じた選択ワード線電圧と非選択ワード線電圧を各別に印加する。
ビット線デコーダ13は、メモリセルアレイ11の各ビット線に接続し、アドレス線18に入力された列選択用のアドレス信号に対応するメモリセルアレイ11のビット線を選択ビット線として選択し、選択ビット線と選択されなかった非選択ビット線に、書き込み、消去、読み出しの各メモリ動作に応じた選択ビット線電圧と非選択ビット線電圧を各別に印加する。
負荷回路14は、ワード線デコーダ12と電圧発生回路17の間(即ちメモリセルアレイ11の外部)に設けられ、MOSトランジスタにより構成され、書き換え動作時において、メモリセルアレイ11の中からワード線デコーダ12とビット線デコーダ13によって書き換え対象として選択された選択メモリセルの一方端とソース端子或いはドレイン端子を介して電気的に直列接続可能に構成されている。又、当該MOSトランジスタの電流電圧特性で規定される負荷抵抗特性は、電圧変換制御回路26からの外部制御信号としてゲート端子に電圧Vtが印加されることにより温度変化に対して制御が可能に構成されている。また、本発明装置10は、負荷回路14とメモリセルアレイ11とを同一のチップに備える構成となっている。
制御回路16は、メモリセルアレイ11の書き換え、読み出しの各メモリ動作の制御を行う。制御回路16は、アドレス線18から入力されたアドレス信号、データ線19から入力されたデータ入力(書き換え動作時)、制御信号線20から入力された制御入力信号に基づいて、ワード線デコーダ12、ビット線デコーダ13を制御して、メモリセルアレイ11の読み出し、書き換え動作を制御する。具体的には、各メモリ動作において、選択ワード線、非選択ワード線、選択ビット線、及び、非選択ビット線の夫々に対して、各メモリ動作に応じた所定の電圧を印加するための制御を、電圧発生回路17、ワード線デコーダ12、ビット線デコーダ13等に対して実行する。特に、書き換え動作時においては、書き換え対象のメモリセルに負荷回路14を介して印加する各電圧パルスの電圧振幅及びパルス幅の制御を行う。更に、制御回路16は、書き換え動作前において、温度検知回路25を制御し、負荷回路14の温度を検知する。その結果は、電圧変換制御回路26に出力され、電圧変換制御回路26は、温度検知回路25の出力値により負荷回路14への制御電圧を決定し、負荷回路14の温度補償制御を行う。図1に示す例では、制御回路16は、図示しないが一般的なアドレスバッファ回路、データ入出力バッファ回路、制御入力バッファ回路としての機能を具備している。
尚、書き換えとは、メモリセルを構成する可変抵抗素子の抵抗特性の遷移(スイッチング)を意味している。
電圧発生回路17は、メモリセルアレイ11の読み出し、書き換え動作時に必要な選択ワード線電圧、非選択ワード線電圧、選択ビット線電圧、非選択ビット線電圧をワード線デコーダ12及びビット線デコーダ13に与える。Vccは本発明装置10の供給電圧(電源電圧)、Vssは接地電圧、Vppは書き換え用の電圧(処理に応じた電圧とする)、Vrは読み出し用の電圧である。図1の構成では、書き換え動作時の選択ワード線電圧は、負荷回路14を介してワード線デコーダ12に供給され、書き換え対象の選択メモリセルを構成する可変抵抗素子と全負荷回路との直列回路に印加される。ここで、全負荷回路は、選択ワード線電圧が印加される直列回路中の可変抵抗素子を除く回路の全ての合成回路となり、その中に負荷回路14が含まれる。更に、ワード線電圧Vppの発生電圧条件(電圧パルスの電圧振幅及びパルス幅、極性など)は制御回路14により変更可能に構成されている。
温度検知回路25は、制御回路16により制御され、書き換え動作前において負荷回路14の温度検知を行い、電圧変換制御回路26に電気的に直列接続可能に構成されている。検知された負荷回路14の検知温度は電圧変換制御回路26に出力される。
温度検知回路25は、例えばMOSトランジスタにより構成され、トランジスタに流れる電流の温度特性を利用することで負荷回路の温度検知を行うことができる。
図8にMOSトランジスタの温度特性を示す。制御ゲート端子の電圧Vgが増加するにつれ、ドレイン端子とソース端子の間の電流量Idsは増加する。温度が高くなるとMOSトランジスタの閾値電圧が低くなる一方、移動度は減少するため、あるゲート電圧V0を境にしてMOSトランジスタは異なる温度特性を示し、ゲート電圧がV0以下の場合は温度上昇と共にドレイン端子とソース端子の間の電流量Idsは増加するが、ゲート電圧がV0以上の場合は温度上昇と共にドレイン端子とソース端子の間の電流量Idsは減少する。これにより、温度による電流の変化が大きくなるところでトランジスタの制御ゲート端子に電圧を印加し、ドレイン端子とソース端子の間の電流量を検知することにより、負荷回路の温度を知ることができる。
電圧変換制御回路26は、温度検知回路25および負荷回路14に直列に接続されている。温度検知回路25で負荷回路の温度が検知されると、その結果が電圧変換制御回路26に入力される。電圧変換制御回路26は、当該入力された検知温度に基づき、書き換え対象の選択メモリセルの可変抵抗素子と全負荷回路との直列回路の両端に電圧を印加することにより当該可変抵抗素子に分圧される電圧が、可変抵抗素子の抵抗特性が一の抵抗特性へ遷移する閾値電圧以上となって当該一の抵抗特性へ遷移し、遷移後においては当該一の抵抗特性以外へ遷移する閾値電圧以下となって当該一の抵抗特性から他の状態に遷移することがないように、MOSトランジスタで構成される負荷回路14の抵抗特性が温度変化に対して安定的に書き換え可能な一定の範囲を維持するように、当該MOSトランジスタのゲート端子に電圧を印加することにより全負荷回路の抵抗特性(電流電圧特性)を温度補償する。
負荷回路14のMOSトランジスタは、線形領域で動作させることにより、制御電圧Vtに応じてソース‐ドレイン間の電流電圧特性で規定される抵抗特性を制御できる。一方、MOSトランジスタを飽和領域で動作させる場合には、制御されるMOSトランジスタの抵抗特性は、制御電圧Vtに依存し、かつ、可変抵抗素子と全負荷回路の直列回路に印加される書き換え電圧Vppにも依存する。電圧変換制御回路26は、温度検知回路25によって検知された検知温度と電圧発生回路17により設定された発生電圧条件に基づき、予めプログラムされた制御電圧Vtを負荷回路14のMOSトランジスタのゲート端子に印加する。
図2に、本発明装置10のメモリセルアレイ11の部分的な構成を模式的に示す。図2では、メモリセルアレイ11は4本のビット線BL0〜BL3と4本のワード線WL0〜WL3の各交点にメモリセルMが挟持されている。図2に示すように、メモリセルアレイ11は、電気抵抗の変化により情報を記憶する可変抵抗素子を有する2端子構造のメモリセルMを行方向及び列方向に夫々複数配列し、行方向に延伸する複数のワード線と列方向に延伸する複数のビット線を備え、同一行のメモリセルの夫々が、メモリセルの一端側を共通のワード線に接続し、同一列のメモリセルの夫々が、メモリセルの他端側を共通のビット線に接続してなるクロスポイント型のメモリセルアレイ構造を有している。
図3は、本発明装置10の各メモリセルMを構成する可変抵抗素子21の模式的な断面構造図である。メモリセルMを構成する可変抵抗素子21は、図3に示すように、下部電極22と可変抵抗体23と上部電極24からなる3層構造体を構成する。尚、図3では、可変抵抗体23が下部電極22と上部電極24の2電極に上下方向から狭持される構成であるとしているが、狭持される方向については上下方向(即ち基板面に対して鉛直な方向)に限られず、基板面と平行な方向に形成された2電極間に可変抵抗体が狭持される構成であっても良い。以下では、可変抵抗素子21は、図3のように可変抵抗体23が上下方向に形成される2電極間に狭持される構成であるものとして説明する。
可変抵抗素子21は、上下が非対称に構成されており、例えば、下部電極22と上部電極24とが異なる金属材料で構成されているか、電極面積が異なる構成である。或いは、可変抵抗体23と下部電極22との界面の接触状態と、可変抵抗体23と上部電極24との界面の接触状態とに差異を設けることで上下を非対称に構成するものとしても良い。例えば、下部電極22としてNiまたはCoまたはTiNを用い、この下部電極22の上面を酸化させることで形成されるニッケル酸化物(NixOy)またはコバルト酸化物(CoxOy)またはチタン酸窒化物(TiOxNy)を可変抵抗体23とし、この上部にPt、TiN、W、Co、Ni、Ta等を堆積することで上部電極24を構成するものとすることができる。即ち、本発明装置10が備えるメモリセルアレイ11を構成する各メモリセルは、上下非対称な可変抵抗素子21によって構成されており、正負両極性の電圧が印加されることで上記のバイポーラスイッチングが可能な構成であり、可変抵抗素子21の両端に、下部電極22を基準としたときの上部電極24の極性が負極性である第1書き換え電圧と、その逆極性である正極性の第2書き換え電圧とを交互に所定時間印加することで、可変抵抗素子21の抵抗特性を低抵抗状態と高抵抗状態との間で切り換えることが可能である。
〈本発明装置の動作についての説明〉
制御回路16から入力されたアドレスに対して、ワード線デコーダ12はメモリセルアレイ11のワード線を選択し、ビット線デコーダ13はメモリセルアレイ11のビット線の接続される選択素子(例えば、電界効果トランジスタ、PN接合ダイオード、ショットキーダイオード)を選択する。これにより、選択されたアドレスごとに、所定の電圧をワード線とビット線に印加する。
電圧発生回路17は、メモリセルアレイ11の書き換え動作時に必要な電圧を、選択ワード線、非選択ワード線、選択ビット線、非選択ビット線に印加する。この時、選択ワード線には負荷回路14とワード線デコーダ12を介して電圧Vppを、非選択ワード線電圧にはワード線デコーダ12を介して電圧Vpp/2を、選択ビット線にはビット線デコーダ13を介して電圧Vssを、非選択ビット線にはビット線デコーダ13を介して電圧Vpp/2を印加して、メモリセルアレイ11の書き換え動作を行う。
データの読み出しは、メモリセルアレイ11からビット線デコーダ13、読み出し回路15を介して行われる。読み出し回路15は、データの状態を判定し、その結果を制御回路16に送り、データ線19へ出力する。
本発明において、従来の書き換え動作と異なる点は、書き換え動作前に負荷回路14の温度検知を行い、全負荷回路の負荷抵抗特性を温度補償することである。書き換え動作を行う前に、制御回路16により温度検知回路25を制御し、負荷回路14の温度を検知する。その結果は電圧変換制御回路26に出力され、電圧変換制御回路26は、温度検知回路25の出力値に基づき、電圧変換制御回路26からの負荷回路14の印加電圧Vtを決定し、負荷回路14の温度補償制御を行う。
これにより、データ書き換え時において、負荷回路14の温度に応じて、書き換え対象の可変抵抗素子21に直列接続される負荷回路14の負荷抵抗値を電圧変換制御回路26から出力される電圧Vtを介して制御することができ、書き換え特性の温度依存を補償することができる。
図4は、図1の実施例における電圧変換制御回路26から出力される電圧Vtの温度による変化を示す一例であり、可変抵抗素子21の負荷抵抗が温度変化に対して安定的に書き込み可能な一定の範囲を維持するように、高温になるに連れて、電圧変換制御回路26からの負荷回路14の印加電圧Vtを減少させている。
次に、同一の可変抵抗素子21に対して印加電圧及び負荷回路14の負荷抵抗特性を変化させて電圧印加を行い、可変抵抗素子21の抵抗特性の推移を測定した結果について説明する。
図5は、可変抵抗体23としてチタン酸窒化物を、上部電極にTiNを、下部電極にTiNを利用して構成されるバイポーラスイッチングが可能な可変抵抗素子21とMOSトランジスタで構成される負荷回路14を直列に接続し、負荷回路14の負荷抵抗特性並びに電圧発生回路17から発生される発生電圧条件の双方を変更させ、負荷回路14の温度を変更しながら、可変抵抗素子21と負荷回路14との直列回路の両端に電圧を印加し、印加後の可変抵抗素子21の抵抗特性の推移を示すグラフである。尚、以下では印加電圧をVppとして示す。また、各印加時における電圧印加時間については50nsとして共通とした。
図5において、MOSトランジスタで構成される負荷回路14の温度を室温(23℃)にし、初期状態として抵抗特性Rt0(約2kΩ)にある可変抵抗素子を含む直列回路に対し、MOSトランジスタのゲート端子にVt=+5.0Vの電圧を、当該直列回路にVpp=−2.5Vの電圧を印加(以下、この条件で電圧印加を行う場合を「第1遷移条件」と称する。図5のグラフの横軸にも丸数字でその旨を表記)した後(印加#1)、可変抵抗素子21の抵抗特性を測定すると、抵抗特性がRt1(約4kΩ)を示し、高抵抗状態に遷移した。この時、遷移前の可変抵抗素子の抵抗状態において、MOSトランジスタのソースドレイン間の電圧と電流量から負荷抵抗値を求めると100Ωとなっていた。
次に、この抵抗特性Rt1の可変抵抗素子21を含む前記直列回路に対し、負荷回路14の温度は室温(23℃)のままで、MOSトランジスタのゲート端子に負荷抵抗が4.8kΩとなるVt=+4.5Vの電圧を、直列回路にVpp=+2.2Vの電圧を印加(以下、この条件で電圧印加を行う場合を「第2遷移条件」と称する。図5のグラフの横軸にも丸数字でその旨を表記)した後(印加#2)、可変抵抗素子21の抵抗特性を測定すると、抵抗特性がRt2(約1kΩ)を示し、低抵抗状態へ遷移した。この時、遷移前の可変抵抗素子の高抵抗状態において、MOSトランジスタのソースドレイン間の電圧と電流量から負荷抵抗値を求めると4.8kΩとなっていた。以下同様に、第1、及び第2遷移条件で電圧印加を繰り返す(印加#3〜印加#5)ことで、約4kΩと約1kΩとの間で抵抗特性の遷移が繰り返され(抵抗特性Rt3〜Rt5)、ソース‐ドレイン間の電圧と電流量から求められるMOSトランジスタの負荷抵抗値は第1遷移条件では100Ω、第2遷移条件では4.8kΩと、順次切り替えられた。
引き続き抵抗特性Rt5を示す可変抵抗素子21を含む前記直列回路に対し、負荷回路14の温度を80℃にし、Vt=+4.5V、Vpp=+2.2Vの電圧を印加(以下、この条件で電圧印加を行う場合を「第3遷移条件」と称する。図5のグラフの横軸にも丸数字でその旨を表記)した後(印加#6)、可変抵抗素子21の抵抗特性を測定すると、抵抗特性がRt6(約100Ω)を示した。次に、この抵抗特性Rt6の可変抵抗素子21を含む直列回路に対し、負荷回路14の温度は80℃のままで、Vt=+5.0V、Vpp=−2.5Vの電圧を印加(以下、この条件で電圧印加を行う場合を「第4遷移条件」と称する。図5のグラフの横軸にも丸数字でその旨を表記)した後(印加#7)、可変抵抗素子21の抵抗特性を測定すると、抵抗特性がRt2(約2kΩ)を示した。以下同様に、第3遷移条件、及び第4遷移条件で電圧印加を繰り返す(印加#8〜印加#10)ことで、約100Ωと約2kΩとの間で抵抗特性の遷移が繰り返された(抵抗特性Rt8〜Rt10)。
更に引き続き抵抗特性Rt10を示す可変抵抗素子21を含む前記直列回路に対し、負荷回路14の温度を80℃から変更せず、ソースドレイン間の電圧と電流量から求められるMOSトランジスタの負荷抵抗特性が室温(23℃)時と同様の100Ωになるようにゲート端子に印加する電圧を変更し、Vt=+4.0V、Vpp=−2.5Vの電圧を印加(以下、この条件で電圧印加を行う場合を「第5遷移条件」と称する。図5のグラフの横軸にも丸数字でその旨を表記)した後(印加#11)、可変抵抗素子21の抵抗特性を測定すると、抵抗特性がRt11(約3kΩ)を示した。次に、この抵抗特性Rt12の可変抵抗素子21を含む前記直列回路に対し、負荷回路14の温度は80℃のままで、ソースドレイン間の電圧と電流量から求められるMOSトランジスタの負荷抵抗特性が室温(23℃)時と同様の4.8kΩになるようにゲート端子に印加する電圧を変更し、Vt=+3.2V、Vpp=+2.2Vの電圧を印加(以下、この条件で電圧印加を行う場合を「第6遷移条件」と称する。図5のグラフの横軸にも丸数字でその旨を表記)した後(印加#12)、可変抵抗素子21の抵抗特性を測定すると、抵抗特性がRt12(約750Ω)を示した。以下同様に、第5遷移条件、及び第6遷移条件で電圧印加を繰り返す(印加#13〜印加#15)ことで、約3kΩと約750Ωとの間で抵抗特性の遷移が繰り返された(抵抗特性Rt13〜Rt15)。
以上の各印加#1〜#15に係る可変抵抗素子21の抵抗特性の遷移より、以下の(1)〜(2)に示す結論を導くことができる。
(1)負荷回路14の温度が上昇した状態で、可変抵抗素子21と負荷回路14の直列回路に対して電圧印加を行い、書き込み動作を行うと、室温時と異なる抵抗値に抵抗変化がみられた。これは、負荷回路14のMOSトランジスタの負荷抵抗特性が示す抵抗値が室温時より比較的小さくなり、第3及び第4遷移条件が第1及び第2遷移条件と異なったためであり、可変抵抗素子21の抵抗制御の温度依存がみられる(印加#1〜#10)。
(2)負荷回路14の温度が室温より高い状態(80℃)であるが、電圧変換制御回路26からのゲート電圧Vtを変更して室温(23℃)時と同様の負荷抵抗特性を示すように制御し、可変抵抗素子21と負荷回路14の直列回路に対して電圧印加を行うと、可変抵抗素子21は室温時と同様の抵抗値で安定した抵抗変化を示した。これは、負荷回路14のMOSトランジスタの負荷抵抗特性を制御することで、負荷回路14による可変抵抗素子21の抵抗制御の温度依存を補償したことを示す(印加#1〜#5、#11〜#15)。
以上の結果より、可変抵抗素子21は、負荷抵抗の温度に対して負荷回路14の負荷抵抗特性を制御し、可変抵抗素子21と負荷回路14の直列回路に対して印加する発生電圧条件を適宜設定することにより、安定した抵抗変化を示すことができる。尚、遷移後の可変抵抗素子は、新たな遷移条件の下での電圧印加が行われるまでその抵抗状態を持続する。
尚、上述の実施形態では、可変抵抗素子21を構成する可変抵抗体23の抵抗特性に、チタン酸窒化物で構成されるものとしたが、他の金属酸化物で構成されるものとしても良い。図6は、可変抵抗体としてコバルト酸化物を、上部電極にTaを、下部電極にCoを利用してバイポーラスイッチングが可能な可変抵抗素子を構成した場合に同様の抵抗変化を行った結果を、図7は、可変抵抗体としてニッケル酸化物を、上部電極にTaを、下部電極にNiを利用してバイポーラスイッチングが可能な可変抵抗素子を構成した場合に同様の抵抗変化を行った結果を夫々示す。尚、双方の場合において負荷回路14は、図5に示されたチタン酸窒化物の場合と同一のMOSトランジスタにより構成されている。
図6及び図7に示されるように、可変抵抗素子21がコバルト酸化物あるいはニッケル酸化物で構成される場合においても、図5のチタン酸窒化物の場合と同様に、負荷抵抗の温度に対して負荷回路14の負荷抵抗特性を制御し、可変抵抗素子21と負荷回路14の直列回路に対して印加する発生電圧条件を適宜設定することにより、可変抵抗素子21は安定した抵抗変化を示すことが分かる。以下に可変抵抗素子21の各抵抗変化を行った場合の遷移条件を示す。
図6のコバルト酸化物に対して、第1遷移条件:Vt=+5.0V、Vpp=−3.5V、23℃、第2遷移条件:Vt=+4.5V、Vpp=+3.2V、23℃、第3遷移条件:Vt=+4.5V、Vpp=+3.2V、80℃、第4遷移条件:Vt=+5.0V、Vpp=−3.5V、80℃、第5遷移条件:Vt=+4.0V、Vpp=−3.5V、80℃、第6遷移条件:Vt=+3.2V、Vpp=+3.2V、80℃。
図7のニッケル酸化物に対して、第1遷移条件:Vt=+5.0V、Vpp=−2.2V、23℃、第2遷移条件:Vt=+4.5V、Vpp=+3.2V、23℃、第3遷移条件:Vt=+4.5V、Vpp=+3.2V、80℃、第4遷移条件:Vt=+5.0V、Vpp=−2.2V、80℃、第5遷移条件:Vt=+4.0V、Vpp=−2.2V、80℃、第6遷移条件:Vt=+3.2V、Vpp=+3.2V、80℃。
図5〜図7の各結果を参照すれば、一般的に、従来スイッチング動作が確認されている金属酸化物及び金属窒化物及び金属酸窒化物、或いは他の可変抵抗体に対しても、同様に、負荷回路14を温度補償することで安定した抵抗特性の制御が可能であると考えられる。
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施形態の一例である。本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形実施が可能である。
〈別実施形態〉
以下、本発明の別実施形態について説明する。
〈1〉上述の実施形態において、温度検知回路25がMOSトランジスタで構成されている場合を例示したが、バイポーラトランジスタを用いても良く、例えば、電流増幅率hFEの温度依存性を利用することにより、温度変化に伴うコレクタ電流の変動量に基づいて負荷回路の温度を検知することができる。
〈2〉更に、温度検知回路25は、図9の回路図に示されるように、一定の電流を供給する定電流源101と、定電流源101から電流が流れる抵抗成分102と、抵抗成分102の両端の電圧と温度により電圧値の変動しない基準電圧(Vref)を比較するコンパレータ103を用いて構成しても良い。抵抗成分102は、温度により抵抗値が変化する可変抵抗素子で構成されるが、定電流源101は温度によらず一定の電流を供給する。温度により抵抗成分102の抵抗値が変動すると、抵抗成分102の両端の電圧が変動するため、コンパレータ103により、抵抗成分102の両端の電圧と温度により電圧値の変動しない基準電圧(Vref)とを比較することで、負荷回路の温度を検知することができる。抵抗成分102は、温度により抵抗値が変化する可変抵抗素子であればよく、例えば抵抗成分102が本発明装置のメモリセルに用いられる可変抵抗素子21で構成された場合は、高温になると当該抵抗成分102の抵抗値が低減し、抵抗成分102の両端の電圧が小さくなる。よって、コンパレータ103により、抵抗成分102の両端の電圧と、温度により電圧値の変動しない基準電圧(Vref)とを比較することで、負荷回路の温度を検知することができる。
また、温度により電圧値の変動しない基準電圧(Vref)を発生する回路として、図10に示されるバンドギャップ基準電圧発生回路が挙げられる。
〈3〉上述の実施形態においては、可変抵抗素子がバイポーラ型のスイッチング特性を示す構成を例示したが、本発明はモノポーラ型のスイッチング特性を示す可変抵抗素子の書き換え制御にも当然に適用可能である。メモリセルの書き換え動作は、負荷回路の抵抗特性又は電圧発生回路からの発生電圧条件(印加電圧パルスの大きさとパルス幅)の何れか一方、又は両方を変更して可変抵抗素子の抵抗特性を遷移させることにより行われるが、この場合も、書き換え対象の可変抵抗素子21に直列接続される負荷回路14の負荷抵抗特性が温度変化に対して安定的に書き込み可能な一定の範囲を維持するように、電圧変換制御回路26から出力される電圧Vtを制御することにより、書き換え特性の温度依存を補償することができる。
〈4〉上述の実施形態において、負荷回路14の抵抗特性と電圧発生回路17からの発生電圧条件(印加電圧パルスの大きさ)の両方を変更して可変抵抗素子の抵抗特性を遷移させメモリセルの書き換えを行う場合に、書き換え特性の温度依存を補償するものを例示したが、本発明は、負荷回路14の抵抗特性と電圧発生回路17からの発生電圧条件の何れかのみを変更してメモリセルの書き換えを行う場合にも当然に利用可能であり、負荷回路14の抵抗特性を温度補償することにより書き換え特性の温度依存を補償することができる。
〈5〉上述の実施形態において、負荷回路14は一のMOSトランジスタにより構成されている場合を例示したが、当該負荷回路は二以上のMOSトランジスタにより構成されていても良い。また、負荷回路はオーミック抵抗とトランジスタが直列又は並列に接続されて構成されていても良く、オーミック抵抗の温度変化分をトランジスタの電流電圧特性により補償することができる。即ち、負荷回路は、トランジスタを含む抵抗特性の異なる複数の素子が直列或いは並列に接続されて構成され、当該抵抗特性の異なる複数の素子の中から負荷回路の抵抗特性が選択・切替可能になっていても良く、これにより可変抵抗素子の状態を三以上の複数の抵抗特性の間で安定的に制御することが可能になる。この場合、書き換え条件に応じて制御回路16は負荷回路14へ切替信号を送り、当該切替信号に基づき負荷回路は、選択メモリセルに直列に接続する抵抗素子を切り替えると良い。