先ず、本発明が解決しようとする課題及びその解決手段について説明する前に、上述のバイポーラスイッチング特性及びモノポーラスイッチング特性に基づくスイッチング動作が安定的に実現し得るための条件について、本発明の基礎となる技術思想として説明する。つまり、従来現象自体の確認はされているにも拘らず、その安定したスイッチング動作に対する理論的な説明がなされていなかったバイポーラスイッチング特性及びモノポーラスイッチング特性が類似の材料及び構成で発現し得る理由につき、本願発明者等が見出した新知見に基づいて説明する。
図25は、上部電極と下部電極の間に可変抵抗体を挟持した構造の可変抵抗素子における両電極間への電圧印加による基本的な抵抗変化特性を示す電流電圧特性である。図25に示す電流電圧特性の測定は電流の上限値(コンプライアンス)を設定できる市販の測定器(例えば、ヒューレットパッカード社のパラメータアナライザ、型番4156B)を用いた。具体的な電圧値及び電流値は、測定対象となる個々の試料の材料、素子構造、製造工程、素子サイズにより異なるが、定性的な特性については、可変抵抗体の種類を問わず、例えば、可変抵抗体の材料が、鉄、ニッケル、銅、チタン等の酸化膜である場合に、図25に示す特性を示す。
即ち、高抵抗状態の抵抗特性(図中A)を示す可変抵抗素子に、閾値電圧Va(Va+またはVa−)以上の電圧を印加すると、低抵抗状態の抵抗特性(図中B)に遷移する。可変抵抗素子を流れる電流は、印加電圧Va以上で電流コンプライアンス値Ic1まで増加する。このとき電流コンプライアンス値Ic1を低抵抗状態(特性B)から高抵抗状態(特性A)への遷移点Tbでの電流値を越えない値に設定することで、コンプライアンス値Ic1以上の電流は流れず、電流値Ic1を維持したまま印加電圧を低下させると、高抵抗状態(特性A)から低抵抗状態(特性B)に遷移する。このとき、低抵抗状態に遷移後の印加電圧が遷移点Tbでの閾値電圧Vb(Vb+またはVb−)より低いため、抵抗特性は高抵抗状態(特性A)に逆戻りせずに安定的に低抵抗状態(特性B)に遷移する。次に、電流コンプライアンス値を、遷移点Tbでの電流値以上に設定するか、或いは、最初の設定を解除し、低抵抗状態の抵抗特性(図中B)を示す可変抵抗素子に、閾値電圧Vb以上の電圧を印加すると、可変抵抗素子を流れる電流が減少して、高抵抗状態の抵抗特性(図中A)に遷移する。
高抵抗状態(図中A)にあるとき、電流コンプライアンス値を設定せずに閾値電圧Va以上の電圧を印加し続けた場合、当該印加電圧が閾値電圧Vbよりも大きいため、高抵抗状態(特性A)から低抵抗状態(特性B)への遷移が起こると直ぐに低抵抗状態(特性B)から高抵抗状態(特性A)への遷移が発生する。結果として、可変抵抗素子の抵抗特性が高抵抗状態(特性A)と低抵抗状態(特性B)の間で変化し続けるという不安定な発振現象が発生することになる。このような発振状態から印加電圧を低下させると、大きい方の閾値電圧Va未満の電圧になったときに発振は停止し、その時点で印加電圧が閾値電圧Vb以上であるため、可変抵抗素子の抵抗特性は低抵抗状態(特性B)となり、実際に閾値電圧Va以上の電圧を印加しても高抵抗状態(特性A)への遷移は起こらない。つまり、可変抵抗素子単体に対して電流コンプライアンス値を設定せずに電圧印加しても所望のスイッチング動作は実現できない。
また、図25に示した抵抗特性では高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する閾値電圧Vaよりも低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移する閾値電圧Vbの方が低い場合を示したが、この閾値電圧Va、Vbの大小関係は逆の場合もあり得る。この場合、閾値電圧Vaで高抵抗状態から低抵抗状態への遷移は安定して起きるが、閾値電圧Vb以上では上記発振が起こり、閾値電圧Vb以上の電圧パルスを印加しても低抵抗状態への遷移は起こらない。
従って、可変抵抗素子として安定したスイッチング動作を行うためには、高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる動作、低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる動作の夫々において、各々以下の2つの条件を満たすことが必要である。
第1に、可変抵抗素子の抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる場合に、閾値電圧Vaが閾値電圧Vbより低電圧で、閾値電圧Vaより高い電圧を印加することが必要となる。第2に、可変抵抗素子の抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる場合に、閾値電圧Vbが閾値電圧Vaより低電圧で、閾値電圧Vbより高い電圧を印加することが必要となる。
従来報告されていた対称構造の可変抵抗素子では、可変抵抗素子単体でスイッチング動作させる場合、即ち、負荷抵抗がゼロまたは一定の負荷抵抗特性に固定された条件下で可変抵抗素子への印加電圧をオンオフする場合、2つの抵抗状態間を遷移させる夫々の印加電圧が同一極性では、上記2つの条件を同時に満たすことはできない。そのため、上記2つの条件を満たすためには、下記のような非対称構造の可変抵抗素子に対するバイポーラスイッチング特性の非対称性、または、温度上昇による抵抗特性の変化を用いたモノポーラスイッチング動作を用いる必要があった。
図26に、上記2つの条件を満たしてバイポーラスイッチング動作可能な可変抵抗素子の抵抗特性(電流電圧特性)を示す。尚、図26では、可変抵抗素子の2つの抵抗特性A,Bと負荷回路の負荷抵抗特性Cを合わせて表示している。負荷回路は可変抵抗素子に対して電気的に直列に接続して直列回路を形成し、当該直列回路の両端へ電圧印加することで、可変抵抗素子と負荷回路の抵抗分圧によって可変抵抗素子に印加される電圧が決定される。図26中において、負荷抵抗特性Cと抵抗特性A,Bとの交点の電圧が実際に可変抵抗素子に印加される電圧となり、負荷抵抗特性Cと電圧軸との交点が当該直列回路の両端へ印加される電圧を示す。当該直列回路の両端への印加電圧の増減によって、負荷抵抗特性Cを示す特性曲線または特性直線が横方向(電圧軸方向)に平行移動する。図26に示す例では、負荷回路として線形な負荷抵抗特性を示す負荷抵抗を想定して説明する。
図26に示す電流電圧特性では、一方の極性(正極性)側の直列回路への電圧印加によって高抵抗状態(特性A)から低抵抗状態(特性B)へ遷移する閾値電圧VA+が同じ極性(正極性)側で低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移する閾値電圧VB+よりも絶対値で小さく、絶対値が閾値電圧VA+以上の電圧を直列回路の両端に印加することで、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Va+以上の電圧が印加され、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が起こる。ここで、図26に示す例では、電流コンプライアンスを設定する代わりに負荷回路を用いて図25で説明したのと同様の効果を実現している。つまり、負荷回路の存在によって、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移による可変抵抗素子を流れる電流の増加によって負荷回路を介した電圧降下が発生して可変抵抗素子への印加電圧が自動的に低減する。負荷回路の負荷抵抗特性を適正に設定することで、低抵抗状態へ遷移後の可変抵抗素子への印加電圧の絶対値が、抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる閾値電圧Vb+より低電圧となり、安定的に高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が実現する。しかし、低抵抗状態へ遷移後に、直列回路へ同一極性(正極性)の閾値電圧VB+以上の電圧を印加しても、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Va+より高電圧の閾値電圧Vb+以上の電圧が印加されるため、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移は起こらない。
逆に、他方の極性(負極性)側の直列回路への電圧印加によって低抵抗状態(特性B)から高抵抗状態(特性A)へ遷移する閾値電圧VB−が同じ極性(負極性)側で高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する閾値電圧VA−よりも絶対値で小さく、絶対値が閾値電圧VB−以上の電圧を直列回路の両端に印加することで、可変抵抗素子の両端子間には絶対値が閾値電圧Vb−以上の電圧が印加され、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が起こる。負荷回路の負荷抵抗特性を負極性側においても正極性側と共通に設定することで、高抵抗状態へ遷移後の可変抵抗素子への印加電圧の絶対値が、抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる閾値電圧Va−より低電圧となり、安定的に低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が実現する。しかし、高抵抗状態へ遷移後に、直列回路へ同一極性(負極性)の絶対値が閾値電圧VA−以上の電圧を印加しても、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Vb−より高電圧の閾値電圧Va−以上の電圧が印加されるため、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移は起こらない。
ここで、注目すべき点は、可変抵抗素子単体では、印加電圧の極性に拘らず、低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移する閾値電圧Vb+及びVb−が高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する閾値電圧Va+及びVa−より夫々低電圧であるにも拘らず、閾値電圧Va+及びVb+の相対関係(例えば、電圧差や電圧比)と閾値電圧Va−及びVb−の相対関係を非対称とすることで、負荷回路の負荷抵抗特性を適正に設定することで、直列回路へ印加電圧の閾値電圧として、正極性側において閾値電圧VA+を閾値電圧VB+よりも絶対値で小さく、負極性側において閾値電圧VB−を閾値電圧VA−よりも絶対値で小さくできる点である。この結果、閾値電圧VA+及びVB+の大小関係と閾値電圧VB−及びVA−の大小関係を反転させることができ、正負両極性の電圧印加によって安定したバイポーラスイッチング動作が可能となる。
ここで、図26に示す可変抵抗素子の閾値電圧の相対関係における正負両極性間の非対称性は、可変抵抗素子の下部電極及び上部電極の材料、可変抵抗体の組成、素子形状、または、素子サイズ等を上下非対称に構成することで実現できる。特に、安定したバイポーラスイッチングを実現するためには、下部電極と上部電極を別材料としたり、下部電極と可変抵抗体間の界面構造或いは上部電極と可変抵抗体間の界面構造を別構造とする等の極端な非対称性が必要となる場合がある。例えば、下部電極と可変抵抗体間の界面と上部電極と可変抵抗体間の界面の何れか一方側でショットキー接合のような整流特性を示す場合に良好な非対称性が発現し易い。
しかし、従来のバイポーラスイッチング動作では、上述の如く、正負両極性の電圧パルスの印加を利用するために、半導体記憶装置を実現するための回路構成が複雑になり、チップサイズが大きくなり製造コストの増加を招くことに加え、このような可変抵抗素子の構造上の非対称性によって、製造工程において下部電極と上部電極で別材料を使用する必要が生じ、製造工程を複雑化し、更なる製造コスト高騰の要因となる。
上述した非対称構造の可変抵抗素子に対するバイポーラスイッチング動作とは別に、可変抵抗素子への電圧印加時間を2つの異なる値とすると、同一極性の電圧印加でも、上述の安定したスイッチング動作を行うための2つの条件を満足させることができる場合がある。
図27(A)及び(B)に、上記2つの条件を満たしてモノポーラスイッチング動作可能な可変抵抗素子の抵抗特性(電流電圧特性)を示す。図27(A)はパルス幅(電圧印加時間)が短い電圧パルス印加時の可変抵抗素子の抵抗特性(電流電圧特性)を示し、図27(B)はパルス幅(電圧印加時間)が長い電圧パルス印加時の可変抵抗素子の抵抗特性(電流電圧特性)を示す。尚、図27では、図26と同様の要領で、可変抵抗素子の2つの抵抗特性A,Bと負荷回路の負荷抵抗特性Cを合わせて表示している。
図27(A)に示す電流電圧特性では、直列回路への短いパルス幅の電圧パルス印加によって高抵抗状態(特性A)から低抵抗状態(特性B)へ遷移する閾値電圧VAsが、同じパルス幅における低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移する閾値電圧VBsよりも絶対値で小さく、絶対値が閾値電圧VAs以上の電圧パルスを直列回路の両端に印加することで、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Vas以上の電圧が印加され、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が起こる。ここで、図27(A)に示す例では、図25に示す電流コンプライアンスを設定する代わりに負荷回路を用いて図25で説明したのと同様の効果を実現している。つまり、負荷回路の存在によって、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移による可変抵抗素子を流れる電流の増加によって負荷回路を介した電圧降下が発生して可変抵抗素子への印加電圧が自動的に低減する。負荷回路の負荷抵抗特性を適正に設定することで、低抵抗状態へ遷移後の可変抵抗素子への印加電圧の絶対値が、抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる閾値電圧Vbsより低電圧となり、安定的に高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が実現する。しかし、低抵抗状態へ遷移後に、同じパルス幅の電圧パルス印加により直列回路へ閾値電圧VBs以上の電圧を印加しても、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Vasより高電圧の閾値電圧Vbs以上の電圧が印加されるため、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移は起こらない。
逆に、図27(B)に示す電流電圧特性では、直列回路への長いパルス幅の電圧パルス印加によって低抵抗状態(特性B)から高抵抗状態(特性A)へ遷移する閾値電圧VBlが同じ長いパルス幅における高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する閾値電圧VAlよりも絶対値で小さく、絶対値が閾値電圧VBl以上の電圧を直列回路の両端に印加することで、可変抵抗素子の両端子間には絶対値が閾値電圧Vbl以上の電圧が印加され、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が起こる。負荷回路の負荷抵抗特性を長いパルス幅においても短いパルス幅と共通に設定することで、高抵抗状態へ遷移後の可変抵抗素子への印加電圧の絶対値が、抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる閾値電圧Valより低電圧となり、安定的に低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が実現する。しかし、高抵抗状態へ遷移後に、同じ長いパルス幅の電圧パルス印加により直列回路へ閾値電圧VAl以上の電圧を印加しても、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Vblより高電圧の閾値電圧Val以上の電圧が印加されるため、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移は起こらない。
従って、同じパルス幅では、可変抵抗素子の抵抗特性は、高抵抗状態(特性A)と低抵抗状態(特性B)の一方から他方へのみ遷移するがその逆の遷移ができないため、安定したスイッチング動作が不可能であるところ、従来のモノポーラスイッチング動作では、長短2種類のパルス幅の同一極性の電圧パルス印加を使用することで、2つの異なるパルス幅の電圧パルス印加の一方で、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移を安定的に実現し、他方で低抵抗状態から高抵抗状態への遷移を安定的に実現できる。
ここで、注目すべき点は、可変抵抗素子単体では、パルス幅の長短に拘らず、低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移する閾値電圧Vbs及びVblが高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する閾値電圧Vas及びValより夫々低電圧であるにも拘らず、閾値電圧Vas及びVbsの相対関係(例えば、電圧差や電圧比)と閾値電圧Val及びVblの相対関係をパルス幅の長短によって異ならせ、負荷回路の負荷抵抗特性を適正に設定することで、直列回路へ印加電圧の閾値電圧として、短いパルス幅において閾値電圧VAsを閾値電圧VBsよりも絶対値で小さく、長いパルス幅において閾値電圧VBlを閾値電圧VAlよりも絶対値で小さくできる点である。この結果、閾値電圧VAs及びVBsの大小関係と閾値電圧VBl及びVAlの大小関係を反転させることができ、パルス幅の異なる電圧パルス印加によって安定したモノポーラスイッチング動作が可能となる。
ここで、図27に示す可変抵抗素子の閾値電圧Val及びVblの相対関係におけるパルス幅の長短による相違は、長いパルス幅の電圧パルス印加時において、可変抵抗素子で発生するジュール熱によって、可変抵抗素子またはその近傍の抵抗成分の抵抗値が変化することにより、可変抵抗素子の高抵抗状態(特性A)及び低抵抗状態(特性B)の抵抗特性が変化することで発現すると考えられる。特に、直列回路に印加する電圧パルスの電圧振幅を固定した場合、低抵抗状態(特性B)の可変抵抗素子に長いパルス幅の電圧パルスを印加する場合において、ジュール熱の発生が顕著となり、低抵抗状態(特性B)の抵抗特性においてパルス幅の違いによる特性変化が顕著に現れると考えられる。つまり、図27(A)及び(B)を比較すると分かるように、ジュール熱の影響により、長いパルス幅の電圧パルスを印加時の方が、低抵抗状態(特性B)の抵抗特性がより低抵抗化し、閾値電圧VBlが、パルス幅が短い場合の閾値電圧VBsより低電圧化する。
しかし、従来のモノポーラスイッチング動作では、長短2種類のパルス幅の電圧パルスを使用する必要から、上述の如く、書き換え時間及び書き換え消費電力の点で不利となる。
ところで、上記特許文献1に、選択トランジスタと可変抵抗素子の組み合わせによりメモリセルを構成する不揮発性半導体記憶装置において、書き込み或いは消去時に選択トランジスタのゲート電圧に印加する電圧を変更することで可変抵抗素子に流れる電流量を制御し、安定なスイッチング動作を実現する方法が提案されている。この手法では、スイッチングする可変抵抗素子に接続する選択トランジスタのオン抵抗を変化させて上記可変抵抗素子に流れる電流量を制御している。しかしながら、可変抵抗素子の抵抗変化に用いる印加電圧パルスの電圧振幅の大きさや、選択トランジスタの抵抗値を設定するに当たって、動作可能な電圧値、抵抗値の調整方法を提供するに過ぎず、上述の従来のバイポーラスイッチング動作やモノポーラスイッチング動作の問題点に対する根本的な解決策を具体的に示すまでには至っていない。従って、用途に応じた回路設計上の最適な電圧振幅、パルス幅の電圧パルスで安定したスイッチング動作を可能にするには、可変抵抗体や電極の材料、素子形状等の最適化に向けて多大な労力をかけて研究する必要があった。
本発明は、電圧印加によって抵抗特性が変化する可変抵抗素子を備えた不揮発性半導体記憶装置における従来のバイポーラスイッチング動作やモノポーラスイッチング動作における上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、バイポーラスイッチング動作やモノポーラスイッチング動作に対する統一的な現象把握に基づき、可変抵抗素子の構造上の非対称性の実現や、電圧印加時間の長短の区別にのみ依拠せずに、可変抵抗素子に対する安定した高速スイッチング動作可能な不揮発性半導体記憶装置を提供する点にある。
上記目的を達成するための本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、2端子構造の可変抵抗素子であって、一方端子を基準とする他方端子への電圧印加を少なくとも正負何れか一方の極性で行った場合に、2端子間の電流電圧特性で規定される抵抗特性が、低抵抗状態と高抵抗状態の安定的に取り得る2つの抵抗特性間を遷移可能であり、前記抵抗特性が低抵抗状態から高抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第1閾値電圧が、前記抵抗特性が高抵抗状態から低抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第2閾値電圧より低電圧である可変抵抗素子を備えてなる不揮発性半導体記憶装置であって、前記可変抵抗素子の記憶状態が、前記抵抗特性が低抵抗状態と高抵抗状態の何れであるかによって定まり、前記可変抵抗素子の一方端子を基準とする他方端子への同一極性の電圧印加によって、前記抵抗特性が低抵抗状態と高抵抗状態間で遷移することで書き換え可能であり、
前記可変抵抗素子の記憶状態の書き換え時における前記可変抵抗素子の両端子間への電圧印加を実行するための負荷回路が、書き換え対象の前記可変抵抗素子と電気的に直列接続可能に設けられ、前記負荷回路の電流電圧特性で規定される負荷抵抗特性が、2つの異なる負荷抵抗特性間で切り換え可能に構成され、書き換え対象の前記可変抵抗素子の前記抵抗特性が、低抵抗状態から高抵抗状態に遷移する場合と高抵抗状態から低抵抗状態に遷移する場合で、前記負荷回路の前記2つの負荷抵抗特性が選択的に切り換り、
前記可変抵抗素子の前記抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる場合の前記2つの負荷抵抗特性の一方の第1負荷抵抗特性が、前記抵抗特性が低抵抗状態にある前記可変抵抗素子と前記負荷回路の直列回路の両端に、前記可変抵抗素子と前記負荷回路の抵抗分圧によって前記可変抵抗素子の両端子間の印加電圧の絶対値が前記第1閾値電圧となるように第1臨界電圧を印加した状態で、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性が高抵抗状態に遷移した場合の前記可変抵抗素子の両端子間の印加電圧の絶対値が前記第2閾値電圧より低電圧の第2素子電圧となる特性であり、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる場合の前記2つの負荷抵抗特性の他方の第2負荷抵抗特性が、前記抵抗特性が高抵抗状態にある前記可変抵抗素子と前記負荷回路の直列回路の両端に、前記可変抵抗素子と前記負荷回路の抵抗分圧によって前記可変抵抗素子の両端子間の印加電圧の絶対値が前記第2閾値電圧となるように前記第1臨界電圧と同極性の第2臨界電圧を印加した状態で、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性が低抵抗状態に遷移した場合の前記可変抵抗素子の両端子間の印加電圧の絶対値が前記第1閾値電圧より低電圧の第1素子電圧となる特性であり、
前記可変抵抗素子の前記抵抗特性が低抵抗状態における両端子間の電圧が前記第1閾値電圧のときの電流の絶対値を第1閾値電流とし、前記第1素子電圧のときの電流の絶対値を第1素子電流とし、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性が高抵抗状態における両端子間の電圧が前記第2閾値電圧のときの電流の絶対値を第2閾値電流とし、前記第2素子電圧のときの電流の絶対値を第2素子電流とし、前記第2閾値電圧と前記第1閾値電圧の差分を前記第1閾値電流と前記第2閾値電流の差分で除した抵抗値を臨界抵抗値とし、前記第1負荷抵抗特性を、前記第2素子電圧と前記第1閾値電圧の差分を前記第1閾値電流と前記第2素子電流の差分で除した第1抵抗値で表し、前記第2負荷抵抗特性を、前記第2閾値電圧と前記第1素子電圧の差分を前記第1素子電流と前記第2閾値電流の差分で除した第2抵抗値で表した場合、前記第1抵抗値が前記臨界抵抗値より低抵抗で、且つ、前記第2抵抗値が前記臨界抵抗値より高抵抗であり、
前記可変抵抗素子の前記抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる場合に、前記抵抗特性が低抵抗状態にある前記可変抵抗素子と前記負荷回路の直列回路の両端に印加する所定のパルス幅の第1電圧パルスの電圧振幅の絶対値が、前記第1臨界電圧の絶対値より高電圧に設定され、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる場合に、前記抵抗特性が高抵抗状態にある前記可変抵抗素子と前記負荷回路の直列回路の両端に印加する所定のパルス幅の第2電圧パルスの電圧振幅の絶対値が、前記第2臨界電圧の絶対値より高電圧に設定され、前記第1電圧パルスと前記第2電圧パルスが前記直列回路の両端の何れか一方を基準として同極性であることを第1の特徴とする。
上記第1の特徴の不揮発性半導体記憶装置によれば、負荷回路の負荷抵抗特性が2つの異なる負荷抵抗特性間で切り換え可能で、且つ、書き換え対象の可変抵抗素子の抵抗特性が低抵抗状態から高抵抗状態に遷移する場合と高抵抗状態から低抵抗状態に遷移する場合で、2つの負荷抵抗特性が選択的に切り換え可能に構成されているため、可変抵抗素子の素子構造の対称性の如何、電圧印加時間の長短、或いは、印加電圧の極性に関係なく、本願発明者等の新知見である可変抵抗素子として安定したスイッチング動作を行うための2つの条件、即ち、1)可変抵抗素子の抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる場合に、当該遷移の閾値電圧が逆方向の遷移の閾値電圧より低電圧で、当該遷移の閾値電圧より高い電圧を印加すること、2)可変抵抗素子の抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる場合に、当該遷移の閾値電圧が逆方向の遷移の閾値電圧より低電圧で、当該遷移の閾値電圧より高い電圧を印加することを個別に満足する負荷抵抗特性の設定が可能となり、可変抵抗素子の抵抗特性の高抵抗状態と低抵抗状態の相互間で安定したスイッチング動作が実現される。この結果、従来のバイポーラスイッチング動作やモノポーラスイッチング動作における課題が解決され、電圧印加によって抵抗特性が変化する可変抵抗素子を備えた不揮発性半導体記憶装置において、可変抵抗素子に対する安定した高速スイッチング動作、及び、製造コストの高騰の抑制が可能となる。
以下、電圧印加時間の長短に関係なく、与えられた1通りの可変抵抗素子の低抵抗状態と高抵抗状態の抵抗特性に対して、高抵抗状態と低抵抗状態の相互間で安定したモノポーラスイッチング動作が本発明において可能となることを、図面を参照して説明する。
図28(A)及び(B)に、本発明に基づく上記2つの条件を満たしてモノポーラスイッチング動作可能な可変抵抗素子の抵抗特性(電流電圧特性)を示す。図28(A)及び(B)は何れも同じパルス幅(電圧印加時間)の電圧パルス印加時における可変抵抗素子の抵抗特性A,Bを示しており、図28(A)及び(B)間で、各抵抗特性A,Bは同じであるが、負荷抵抗特性C1,C2が異なる。尚、図28では、可変抵抗素子の2つの抵抗特性A,Bと負荷回路の負荷抵抗特性C1またはC2を合わせて表示している。負荷回路は可変抵抗素子に対して電気的に直列に接続して直列回路を形成し、当該直列回路の両端へ電圧印加することで、可変抵抗素子と負荷回路の抵抗分圧によって可変抵抗素子に印加される電圧が決定される。図28中において、負荷抵抗特性C1,C2と抵抗特性A,Bとの交点の電圧が実際に可変抵抗素子に印加される電圧となり、負荷抵抗特性C1,C2と電圧軸との交点が当該直列回路の両端へ印加される電圧を示す。当該直列回路の両端への印加電圧の増減によって、負荷抵抗特性C1,C2を示す特性曲線または特性直線が横方向(電圧軸方向)に平行移動する。図28に示す例では、負荷回路として線形な負荷抵抗特性を示す負荷抵抗を想定して説明するが、負荷抵抗特性は非線形であっても同様の説明が可能である。
図28(A)に示す電流電圧特性では、負荷抵抗特性C1の負荷回路を含む直列回路への電圧パルス印加によって高抵抗状態(特性A)から低抵抗状態(特性B)へ遷移する閾値電圧VA1が、低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移する閾値電圧VB1よりも絶対値で小さく、絶対値が閾値電圧VA1以上の電圧パルスを直列回路の両端に印加することで、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Va1以上の電圧が印加され、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が起こる。負荷抵抗特性C1の負荷回路の存在によって、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移による可変抵抗素子を流れる電流の増加によって負荷回路を介した電圧降下が発生して可変抵抗素子への印加電圧が自動的に低減する。負荷回路の負荷抵抗特性C1を適正に設定することで、低抵抗状態へ遷移後の可変抵抗素子への印加電圧の絶対値が、抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる閾値電圧Vb1より低電圧となり、安定的に高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が実現する。しかし、低抵抗状態へ遷移後に、同じ負荷抵抗特性C1の負荷回路を含む直列回路へ閾値電圧VB1以上の電圧を印加しても、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Va1より高電圧の閾値電圧Vb1以上の電圧が印加されるため、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移は起こらない。つまり、閾値電圧VB1以上の電圧パルスを直列回路の両端に印加した場合は、電圧パルス印加期間中は可変抵抗素子の両端子間に閾値電圧Va1及び閾値電圧Vb1以上の電圧が印加され、高抵抗状態と低抵抗状態間の双方向の遷移が起こるため不安定状態(発振状態)となるが、電圧印加がパルス状であるので、電圧印加期間の最後に印加電圧(電圧パルスの電圧振幅)の絶対値が閾値電圧VA1以上で閾値電圧VB1よりも小さい電圧印加状態となるため、可変抵抗素子の抵抗特性は最終的には低抵抗状態に収束する。
逆に、図28(B)に示す電流電圧特性では、負荷抵抗特性C1より低抵抗の負荷抵抗特性C2の負荷回路を含む直列回路への電圧パルス印加によって低抵抗状態(特性B)から高抵抗状態(特性A)へ遷移する閾値電圧VB2が、高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する閾値電圧VA2よりも絶対値で小さく、絶対値が閾値電圧VB2以上の電圧を直列回路の両端に印加することで、可変抵抗素子の両端子間には絶対値が閾値電圧Vb2(=Vb1)以上の電圧が印加され、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が起こる。負荷回路の負荷抵抗特性C2を適正に設定することで、高抵抗状態へ遷移後の可変抵抗素子への印加電圧の絶対値が、抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる閾値電圧Va2(=Va1)より低電圧となり、安定的に低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が実現する。しかし、高抵抗状態へ遷移後に、同じ負荷抵抗特性C2の負荷回路を含む直列回路へ閾値電圧VA2以上の電圧を印加しても、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Vb2より高電圧の閾値電圧Va2以上の電圧が印加されるため、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移は起こらない。つまり、閾値電圧VA2以上の電圧パルスを直列回路の両端に印加した場合は、電圧パルス印加期間中は可変抵抗素子の両端子間に閾値電圧Va2及び閾値電圧Vb2以上の電圧が印加され、高抵抗状態と低抵抗状態間の双方向の遷移が起こるため不安定状態(発振状態)となるが、電圧印加がパルス状であるので、電圧印加期間の最後に印加電圧(電圧パルスの電圧振幅)の絶対値が閾値電圧VB2以上で閾値電圧VA2よりも小さい電圧印加状態となるため、可変抵抗素子の抵抗特性は最終的には高抵抗状態に収束する。
従って、本発明によれば、同じパルス幅の電圧パルスでも、負荷回路の負荷抵抗特性C1,C2をスイッチング方向に応じて切り換えることにより、負荷抵抗特性C1により高抵抗状態から低抵抗状態への遷移を安定的に実現し、負荷抵抗特性C2により低抵抗状態から高抵抗状態への遷移を安定的に実現できる。
ここで、注目すべき点は、可変抵抗素子単体では、負荷抵抗特性に拘らず、低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移する閾値電圧Vb1(=Vb2)が高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する閾値電圧Va1(=Va2)より夫々低電圧であるにも拘らず、負荷抵抗特性C1,C2を適正に設定してスイッチング方向に応じて切り換えることにより、直列回路へ印加電圧の閾値電圧として、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移において閾値電圧VA1を閾値電圧VB1よりも絶対値で小さく、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移において閾値電圧VB2を閾値電圧VA2よりも絶対値で小さくできる点である。この結果、閾値電圧VA1及びVB1の大小関係と閾値電圧VB2及びVA2の大小関係を反転させることができ、同じパルス幅の電圧パルス印加によって安定したモノポーラスイッチング動作が可能となる。
次に、図29に、本発明に基づく上記2つの条件を満たしてバイポーラスイッチング動作可能な可変抵抗素子の抵抗特性(電流電圧特性)を示す。尚、図29では、可変抵抗素子の2つの抵抗特性A,Bと負荷回路の負荷抵抗特性C1,C2を合わせて表示している。また、従来のバイポーラスイッチング特性(図26参照)と異なり、可変抵抗素子の2つの抵抗特性A,Bは、正極性側と負極性側において対称な特性となっている。負荷回路は可変抵抗素子に対して電気的に直列に接続して直列回路を形成し、当該直列回路の両端へ電圧印加することで、可変抵抗素子と負荷回路の抵抗分圧によって可変抵抗素子に印加される電圧が決定される。図29中において、負荷抵抗特性C1,C2と抵抗特性A,Bとの交点の電圧が実際に可変抵抗素子に印加される電圧となり、負荷抵抗特性C1,C2と電圧軸との交点が当該直列回路の両端へ印加される電圧を示す。当該直列回路の両端への印加電圧の増減によって、負荷抵抗特性C1,C2を示す特性曲線または特性直線が横方向(電圧軸方向)に平行移動する。図29に示す例では、負荷回路として線形な負荷抵抗特性を示す負荷抵抗を想定して説明するが、負荷抵抗特性は非線形であっても同様の説明が可能である。
図29に示す電流電圧特性では、一方の極性(正極性)側の直列回路への電圧印加によって高抵抗状態(特性A)から低抵抗状態(特性B)へ遷移する閾値電圧VA+が同じ極性(正極性)側で低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移する閾値電圧VB+よりも絶対値で小さく、絶対値が閾値電圧VA+以上の電圧を直列回路の両端に印加することで、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Va+以上の電圧が印加され、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が起こる。負荷回路の存在によって、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移による可変抵抗素子を流れる電流の増加によって負荷回路を介した電圧降下が発生して可変抵抗素子への印加電圧が自動的に低減する。負荷回路の負荷抵抗特性C1を適正に設定することで、低抵抗状態へ遷移後の可変抵抗素子への印加電圧の絶対値が、抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる閾値電圧Vb+より低電圧となり、安定的に高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が実現する。しかし、低抵抗状態へ遷移後に、同じ負荷抵抗特性C1の負荷回路を含む直列回路へ同一極性(正極性)の閾値電圧VB+以上の電圧を印加しても、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Va+より高電圧の閾値電圧Vb+以上の電圧が印加されるため、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移は起こらない。つまり、閾値電圧VB+以上の電圧パルスを直列回路の両端に印加した場合は、電圧パルス印加期間中は可変抵抗素子の両端子間に閾値電圧Va+及び閾値電圧Vb+以上の電圧が印加され、高抵抗状態と低抵抗状態間の双方向の遷移が起こるため不安定状態(発振状態)となるが、電圧印加がパルス状であるので、電圧印加期間の最後に印加電圧(電圧パルスの電圧振幅)の絶対値が閾値電圧VA+以上で閾値電圧VB+よりも小さい電圧印加状態となるため、可変抵抗素子の抵抗特性は最終的には低抵抗状態に収束する。
逆に、他方の極性(負極性)側の直列回路への電圧印加によって低抵抗状態(特性B)から高抵抗状態(特性A)へ遷移する閾値電圧VB−が同じ極性(負極性)側で高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する閾値電圧VA−よりも絶対値で小さく、絶対値が閾値電圧VB−以上の電圧を直列回路の両端に印加することで、可変抵抗素子の両端子間には絶対値が閾値電圧Vb−以上の電圧が印加され、低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が起こる。負荷回路の負荷抵抗特性C2を負極性側においても適正に設定することで、高抵抗状態へ遷移後の可変抵抗素子への印加電圧の絶対値が、抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる閾値電圧Va−より低電圧となり、安定的に低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が実現する。しかし、高抵抗状態へ遷移後に、同じ負荷抵抗特性C2の負荷回路を含む直列回路へ同一極性(負極性)の絶対値が閾値電圧VA−以上の電圧を印加しても、可変抵抗素子の両端子間には閾値電圧Vb−より高電圧の閾値電圧Va−以上の電圧が印加されるため、高抵抗状態から低抵抗状態への遷移は起こらない。つまり、絶対値が閾値電圧VA−以上の負電圧パルスを直列回路の両端に印加した場合は、電圧パルス印加期間中は可変抵抗素子の両端子間に絶対値が閾値電圧Va−及び閾値電圧Vb−以上の電圧が印加され、高抵抗状態と低抵抗状態間の双方向の遷移が起こるため不安定状態(発振状態)となるが、電圧印加がパルス状であるので、電圧印加期間の最後に印加電圧(電圧パルスの電圧振幅)の絶対値が閾値電圧VB−以上で閾値電圧VA−よりも小さい電圧印加状態となるため、可変抵抗素子の抵抗特性は最終的には高抵抗状態に収束する。
従って、本発明によれば、可変抵抗素子の2つの抵抗特性A,Bは、正極性側と負極性側において対称であっても、負荷回路の負荷抵抗特性C1,C2を印加電圧の極性(つまり、スイッチング方向)に応じて切り換えることにより、正極性側の電圧印加と負荷抵抗特性C1により高抵抗状態から低抵抗状態への遷移を安定的に実現し、負極性側の電圧印加と負荷抵抗特性C2により低抵抗状態から高抵抗状態への遷移を安定的に実現できる。
ここで、注目すべき点は、可変抵抗素子単体では、負荷抵抗特性及び印加電圧の極性に拘らず、絶対値において低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移する閾値電圧Vb+(=Vb−)が高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移する閾値電圧Va+(=Va−)より夫々低電圧であるにも拘らず、負荷抵抗特性C1,C2を適正に設定して印加電圧の極性(スイッチング方向)に応じて切り換えることにより、直列回路へ印加電圧の閾値電圧として、正極性側において閾値電圧VA+を閾値電圧VB+よりも絶対値で小さく、負極性側において閾値電圧VB−を閾値電圧VA−よりも絶対値で小さくできる点である。この結果、閾値電圧VA+及びVB+の大小関係と閾値電圧VB−及びVA−の大小関係を反転させることができ、可変抵抗素子の素子構造の対称性の如何に拘わらずに、正負両極性の電圧印加によって安定したバイポーラスイッチング動作が可能となる。
上記第1の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記第1電圧パルスと前記第2電圧パルスの夫々の電圧振幅の絶対値が同じであることを第2の特徴とする。
上記第1または第2の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記第1電圧パルスと前記第2電圧パルスのパルス幅が何れも100ns以下であることを第3の特徴とする。
上記第1乃至第3の何れかの特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記第1電圧パルスと前記第2電圧パルスのパルス幅が同じ長さであることを第4の特徴とする。
上記第1乃至第4の何れかの特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記可変抵抗素子が、一方端子を基準とする他方端子への電圧印加を正負何れの極性で行った場合でも、前記可変抵抗素子の両端子間の電流電圧特性で規定される抵抗特性が、低抵抗状態と高抵抗状態の2つの抵抗特性間を遷移可能であり、一方の極性の電圧印加に対し、前記抵抗特性が低抵抗状態から高抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第1閾値電圧と、前記抵抗特性が高抵抗状態から低抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第2閾値電圧が異なり、他方の極性の電圧印加に対しても、前記抵抗特性が低抵抗状態から高抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第3閾値電圧と、前記抵抗特性が高抵抗状態から低抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第4閾値電圧が異なり、前記負荷回路に対して印加する同一極性の電圧の極性が、前記第1閾値電圧と前記第2閾値電圧の高い方の電圧と、前記第3閾値電圧と前記第4閾値電圧の高い方の電圧を比較した場合の低い方の電圧に対応する正負何れか一方の極性であることを第5の特徴とする。
上記第1乃至第5の何れかの特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記負荷回路が、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる場合と高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる場合で、共通に使用される電流経路上で、前記2つの負荷抵抗特性を切り換え可能に構成され、前記共通に使用される電流経路上に、電圧制御または電流制御によって負荷抵抗特性を切り換え可能なトランジスタ素子が設けられていることを第6の特徴とする。
上記第1乃至第6の何れかの特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記負荷回路が、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる場合に活性化する回路と、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる場合に活性化する回路を、少なくとも一部の回路において切り換えることにより、前記2つの負荷抵抗特性を切り換え可能に構成されていることを第7の特徴とする。
上記第2乃至第7の特徴の不揮発性半導体記憶装置によれば、上記第1の特徴の効果を奏する安定したモノポーラスイッチング動作可能な不揮発性半導体記憶装置を具体的に実現できる。
特に、上記第5の特徴の不揮発性半導体記憶装置によれば、書き換え時に印加する電圧パルスの低電圧化が図れ、書き換え時の低消費電力化が促進される。つまり、従来は、バイポーラスイッチング動作可能な可変抵抗素子として利用可能であった非対称素子構造の可変抵抗素子を、低電圧でのモノポーラスイッチング動作に利用することが可能となる。
上記第1乃至第7の何れかの特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記可変抵抗素子を備えて構成されるメモリセルと、前記メモリセルを行方向及び列方向に夫々複数配列し、行方向に延伸する複数のワード線と列方向に延伸する複数のビット線を備え、同一行の前記メモリセルの夫々が、前記メモリセルの一端側を共通の前記ワード線に接続し、同一列の前記メモリセルの夫々が、前記メモリセルの他端側を共通の前記ビット線に接続して構成されるメモリセルアレイと、前記複数のワード線の中から所定数の前記ワード線を選択ワード線として選択するワード線選択回路と、前記複数のビット線の中から所定数の前記ビット線を選択ビット線として選択するビット線選択回路と、前記負荷回路の前記2つの異なる負荷抵抗特性を切り換える制御を行う制御回路と、を備えてなることを第8の特徴とする。
上記第8の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記負荷回路の前記2つの異なる負荷抵抗特性を切り換える負荷抵抗特性可変回路が、前記メモリセルアレイ外に形成され、且つ、前記メモリセルの記憶状態の書き換え時において、前記選択ワード線と前記選択ビット線の少なくとも何れか一方側に電気的に接続可能に構成されていることを第9の特徴とする。
上記第8または第9の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記メモリセルが、前記可変抵抗素子だけを備えて構成されていることを第10の特徴とする。
上記第8または第9の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記メモリセルが、前記可変抵抗素子とダイオードの直列回路、または、前記可変抵抗素子とバリスタの直列回路で構成されていることを第11の特徴とする。
上記第8乃至第11の特徴の不揮発性半導体記憶装置によれば、上記第1の特徴の効果を奏する安定したスイッチング動作可能なクロスポイント型メモリセルアレイ構造を有する不揮発性半導体記憶装置を具体的に実現できる。
特に、上記第9の特徴の不揮発性半導体記憶装置によれば、負荷回路が、メモリセルアレイ外に形成されるため、従来のメモリセルアレイ構成を応用して、上記第1の特徴の効果を奏する安定したスイッチング動作可能なクロスポイント型メモリセルアレイ構造を有する不揮発性半導体記憶装置を具体的に実現できる。
上記第6の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記可変抵抗素子と電圧制御または電流制御によって前記負荷抵抗特性を切り換え可能な前記トランジスタ素子の直列回路で構成されるメモリセルと、前記メモリセルを行方向及び列方向に夫々複数配列し、行方向に延伸する複数のワード線と列方向に延伸する複数のビット線と1または複数のソース線を備え、同一行の前記メモリセルの夫々が、前記メモリセルの前記負荷回路の前記負荷抵抗特性を電圧制御または電流制御によって切り換えるための制御端子を共通の前記ワード線に接続し、同一列の前記メモリセルの夫々が、前記メモリセルの前記直列回路の一端側を共通の前記ビット線に接続し、前記メモリセルの前記直列回路の他端側を共通の前記ソース線に接続して構成されるメモリセルアレイと、前記複数のワード線の中から所定数の前記ワード線を選択ワード線として選択するワード線選択回路と、前記複数のビット線の中から所定数の前記ビット線を選択ビット線として選択するビット線選択回路と、前記負荷回路の前記2つの異なる負荷抵抗特性を切り換える制御を行う制御回路と、を備えてなることを第12の特徴とする。
上記第12の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記制御回路は、前記選択ワード線に印加される電圧または電流を制御することにより、前記負荷回路の前記2つの異なる負荷抵抗特性を切り換えることを第13の特徴とする。
上記第12または第13の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記メモリセルの内の前記トランジスタ素子が、前記メモリセルを書き換え対象として選択するための選択トランジスタとして機能することを第14の特徴とする。
上記第12乃至第14の特徴の不揮発性半導体記憶装置によれば、上記第1の特徴の効果を奏する安定したスイッチング動作可能な1T1R型メモリセルアレイ構造を有する不揮発性半導体記憶装置を具体的に実現できる。ここで、メモリセル内に負荷回路の少なくとも2つの異なる負荷抵抗特性の変化する回路部分であるトランジスタ素子が含まれるので、メモリセルアレイの周辺回路は、従来の回路構成を利用することができる。
上記第1乃至第7の何れかの特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記可変抵抗素子と選択トランジスタの直列回路で構成されるメモリセルと、前記メモリセルを行方向及び列方向に夫々複数配列し、行方向に延伸する複数のワード線と列方向に延伸する複数のビット線と1または複数のソース線を備え、同一行の前記メモリセルの夫々が、前記選択トランジスタのゲート端子を共通の前記ワード線に接続し、同一列の前記メモリセルの夫々が、前記メモリセルの前記直列回路の一端側を共通の前記ビット線に接続し、前記メモリセルの前記直列回路の他端側を共通の前記ソース線に接続して構成されるメモリセルアレイと、前記複数のワード線の中から所定数の前記ワード線を選択ワード線として選択するワード線選択回路と、前記複数のビット線の中から所定数の前記ビット線を選択ビット線として選択するビット線選択回路と、前記負荷回路の前記2つの異なる負荷抵抗特性を切り換える制御を行う制御回路と、を備えてなり、前記負荷回路の前記2つの異なる負荷抵抗特性を切り換える負荷抵抗特性可変回路が、前記メモリセルアレイ外に形成され、且つ、前記メモリセルの記憶状態の書き換え時において、前記選択ビット線または前記ソース線に電気的に接続可能に構成されていることを第15の特徴とする。
上記第15の特徴の不揮発性半導体記憶装置によれば、負荷回路がメモリセルアレイ外に形成されるため、従来のメモリセルアレイ構成を応用して、上記第1の特徴の効果を奏する安定したスイッチング動作可能な1T1R型メモリセルアレイ構造を有する不揮発性半導体記憶装置を、具体的に実現できる。
上記第1、第2、第4乃至第15の何れかの特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記可変抵抗素子が第1電極と第2電極の間に可変抵抗体を挟持してなり、前記可変抵抗体が、遷移金属を含む酸化物または酸窒化物であることを第16の特徴とする。
上記第16の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記可変抵抗体が、Mn、Fe、Ni、Co、Ti、Cu、Vの中から選択される元素を含む酸化物または酸窒化物であることを第17の特徴とする。
上記第17の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記可変抵抗体が、ペロブスカイト型酸化物であることを第18の特徴とする。
上記第16乃至第18の何れかの特徴の不揮発性半導体記憶装置は、更に、前記第1電極と前記第2電極の材料が同一材料であることを第19の特徴とする。
上記第16乃至第19の特徴の不揮発性半導体記憶装置によれば、2端子構造の可変抵抗素子であって、一方端子を基準とする他方端子への電圧印加を少なくとも正負何れか一方の極性で行った場合に、2端子間の電流電圧特性で規定される抵抗特性が、低抵抗状態と高抵抗状態の安定的に取り得る2つの抵抗特性間を遷移可能であり、前記抵抗特性が低抵抗状態から高抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第1閾値電圧と、前記抵抗特性が高抵抗状態から低抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第2閾値電圧が異なる可変抵抗素子が具体的に実現でき、上記第1の特徴の効果を奏する安定したスイッチング動作可能な不揮発性半導体記憶装置を具体的に提供できる。
特に、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置では、対称な素子構造の可変抵抗素子の利用が可能なため、上記第19の特徴の不揮発性半導体記憶装置のように、第1電極と第2電極を同一材料とすることができ、製造工程の簡略化が図れ、結果として製造コストの低廉化を図ることができる。
更に、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置の書き換え方法は、2端子構造の可変抵抗素子であって、一方端子を基準とする他方端子への電圧印加を少なくとも正負何れか一方の極性で行った場合に、2端子間の電流電圧特性で規定される抵抗特性が、低抵抗状態と高抵抗状態の安定的に取り得る2つの抵抗特性間を遷移可能であり、前記抵抗特性が低抵抗状態から高抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第1閾値電圧が、前記抵抗特性が高抵抗状態から低抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第2閾値電圧より低電圧である可変抵抗素子であって、前記可変抵抗素子の記憶状態が、前記抵抗特性が低抵抗状態と高抵抗状態の何れであるかによって定まり、前記可変抵抗素子の一方端子を基準とする他方端子への同一極性の電圧印加によって、前記抵抗特性が低抵抗状態と高抵抗状態間で遷移することで書き換え可能な可変抵抗素子を備えてなる不揮発性半導体記憶装置の書き換え方法であって、
前記可変抵抗素子の記憶状態の書き換え時における前記可変抵抗素子の両端子間への電圧印加を実行するために、書き換え対象の前記可変抵抗素子と電気的に直列接続可能に設けられ、電流電圧特性で規定される負荷抵抗特性が2つの異なる負荷抵抗特性間で切り換え可能に構成された負荷回路であって、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる場合の前記2つの負荷抵抗特性の一方の第1負荷抵抗特性が、前記抵抗特性が低抵抗状態にある前記可変抵抗素子と前記負荷回路の直列回路の両端に、前記可変抵抗素子と前記負荷回路の抵抗分圧によって前記可変抵抗素子の両端子間の印加電圧の絶対値が前記第1閾値電圧となるように第1臨界電圧を印加した状態で、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性が高抵抗状態に遷移した場合の前記可変抵抗素子の両端子間の印加電圧の絶対値が前記第2閾値電圧より低電圧の第2素子電圧となる特性であり、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる場合の前記2つの負荷抵抗特性の他方の第2負荷抵抗特性が、前記抵抗特性が高抵抗状態にある前記可変抵抗素子と前記負荷回路の直列回路の両端に、前記可変抵抗素子と前記負荷回路の抵抗分圧によって前記可変抵抗素子の両端子間の印加電圧の絶対値が前記第2閾値電圧となるように前記第1臨界電圧と同極性の第2臨界電圧を印加した状態で、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性が低抵抗状態に遷移した場合の前記可変抵抗素子の両端子間の印加電圧の絶対値が前記第1閾値電圧より低電圧の第1素子電圧となる特性であり、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性が低抵抗状態における両端子間の電圧が前記第1閾値電圧のときの電流の絶対値を第1閾値電流とし、前記第1素子電圧のときの電流の絶対値を第1素子電流とし、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性が高抵抗状態における両端子間の電圧が前記第2閾値電圧のときの電流の絶対値を第2閾値電流とし、前記第2素子電圧のときの電流の絶対値を第2素子電流とし、前記第2閾値電圧と前記第1閾値電圧の差分を前記第1閾値電流と前記第2閾値電流の差分で除した抵抗値を臨界抵抗値とし、前記第1負荷抵抗特性を、前記第2素子電圧と前記第1閾値電圧の差分を前記第1閾値電流と前記第2素子電流の差分で除した第1抵抗値で表し、前記第2負荷抵抗特性を、前記第2閾値電圧と前記第1素子電圧の差分を前記第1素子電流と前記第2閾値電流の差分で除した第2抵抗値で表した場合、
前記第1抵抗値が前記臨界抵抗値より低抵抗で、且つ、前記第2抵抗値が前記臨界抵抗値より高抵抗となるように構成された前記負荷回路を用い、
前記可変抵抗素子の前記抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる場合に、前記負荷回路の負荷抵抗特性を前記第1負荷抵抗特性に選択的に切り換え、前記抵抗特性が低抵抗状態にある前記可変抵抗素子と前記負荷回路の直列回路の両端に、電圧振幅の絶対値が前記第1臨界電圧の絶対値より高電圧に設定された所定のパルス幅の第1電圧パルスを印加し、前記可変抵抗素子の前記抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる場合に、前記負荷回路の負荷抵抗特性を前記第2負荷抵抗特性に選択的に切り換え、前記抵抗特性が高抵抗状態にある前記可変抵抗素子と前記負荷回路の直列回路の両端に、前記直列回路の両端の何れか一方を基準として前記第1電圧パルスと同極性で、電圧振幅の絶対値が前記第2臨界電圧の絶対値より高電圧に設定された所定のパルス幅の第2電圧パルスを印加することを第1の特徴とする。
上記第1の特徴の不揮発性半導体記憶装置の書き換え方法は、更に、前記可変抵抗素子が、一方端子を基準とする他方端子への電圧印加を正負何れの極性で行った場合でも、前記可変抵抗素子の両端子間の電流電圧特性で規定される抵抗特性が、低抵抗状態と高抵抗状態の2つの抵抗特性間を遷移可能であり、一方の極性の電圧印加に対し、前記抵抗特性が低抵抗状態から高抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第1閾値電圧と、前記抵抗特性が高抵抗状態から低抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第2閾値電圧が異なり、他方の極性の電圧印加に対しても、前記抵抗特性が低抵抗状態から高抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第3閾値電圧と、前記抵抗特性が高抵抗状態から低抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第4閾値電圧が異なり、
前記負荷回路に対して印加する同一極性の電圧の極性として、前記第1閾値電圧と前記第2閾値電圧の高い方の電圧と、前記第3閾値電圧と前記第4閾値電圧の高い方の電圧を比較した場合の低い方の電圧に対応する正負何れか一方の極性を使用することを第2の特徴とする。
以下、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置(以下、適宜「本発明装置」と略称する。)の実施形態を図面に基づいて説明する。
〈第1実施形態〉
図1に、本発明装置10の一実施形態におけるブロック構成を示す。図1に示すように、本発明装置10は、メモリセルアレイ11、ワード線デコーダ(ワード線選択回路に相当)12、ビット線デコーダ(ビット線選択回路に相当)13、負荷抵抗特性可変回路14、読み出し回路15、制御回路16、及び、電圧スイッチ回路17を備えて構成される。
メモリセルアレイ11は、不揮発性のメモリセルを行方向及び列方向に夫々複数配列して構成され、外部からのアドレス入力で指定されるメモリセルに情報を電気的に書き込むことができ、更に、アドレス入力で指定されるメモリセルに記憶された情報を読み出すことができる。より詳細には、アドレス線18から入力されたアドレス信号に対応したメモリセルアレイ11内の特定のメモリセルに情報が記憶され、その情報はデータ線19を通り、外部装置に出力される。
ワード線デコーダ12は、メモリセルアレイ11の各ワード線に接続し、アドレス線18に入力された行選択用のアドレス信号に対応するメモリセルアレイ11のワード線を選択ワード線として選択し、選択ワード線と選択されなかった非選択ワード線に、書き込み、消去、読み出しの各メモリ動作に応じた選択ワード線電圧と非選択ワード線電圧を各別に印加する。
ビット線デコーダ13は、メモリセルアレイ11の各ビット線に接続し、アドレス線18に入力された列選択用のアドレス信号に対応するメモリセルアレイ11のビット線を選択ビット線として選択し、選択ビット線と選択されなかった非選択ビット線に、書き込み、消去、読み出しの各メモリ動作に応じた選択ビット線電圧と非選択ビット線電圧を各別に印加する。
負荷抵抗特性可変回路14は、書き込みまたは消去動作時において、メモリセルアレイ11の中からワード線デコーダ12とビット線デコーダ13によって書き換え対象として選択された選択メモリセルに電気的に直列に接続する負荷回路の内の、当該負荷回路の電流電圧特性で規定される負荷抵抗特性を、異なる2つの負荷抵抗特性(低抵抗状態と高抵抗状態)の間で、制御回路16からの制御により切り換える回路である。本実施形態では、負荷抵抗特性可変回路14が、ワード線デコーダ12と電圧スイッチ回路17の間に設けられている。
制御回路16は、メモリセルアレイ11の書き込み、消去、読み出しの各メモリ動作の制御を行う。制御回路16は、アドレス線18から入力されたアドレス信号、データ線19から入力されたデータ入力(書き込み動作時)、制御信号線20から入力された制御入力信号に基づいて、ワード線デコーダ12、ビット線デコーダ13を制御して、メモリセルアレイ11の読み出し、書き込み、及び、消去動作を制御する。具体的には、各メモリ動作において、選択ワード線、非選択ワード線、選択ビット線、及び、非選択ビット線の夫々に対して、各メモリ動作に応じた所定の電圧を印加するための制御を、電圧スイッチ回路17、ワード線デコーダ12、ビット線デコーダ13等に対して実行する。特に、書き込み及び消去動作時においては、書き換え対象のメモリセルに負荷回路を介して印加する各電圧パルスの電圧振幅及びパルス幅の制御を行う。更に、書き込み動作時と消去動作時において、負荷回路の負荷抵抗特性を切り換えるための制御を負荷抵抗特性可変回路14に対して行う。図1に示す例では、制御回路16は、図示しないが一般的なアドレスバッファ回路、データ入出力バッファ回路、制御入力バッファ回路としての機能を具備している。尚、書き込みと消去は、後述するメモリセルを構成する可変抵抗素子の2つの抵抗特性(低抵抗状態と高抵抗状態)間の遷移(スイッチング)を意味し、一方の抵抗特性から他方の抵抗特性への遷移を書き込み、その逆方向の遷移を消去と定義する。
電圧スイッチ回路17は、メモリセルアレイ11の読み出し、書き込み、消去動作時に必要な選択ワード線電圧、非選択ワード線電圧、選択ビット線電圧、非選択ビット線電圧をワード線デコーダ12及びビット線デコーダ13に与える。Vccは本発明装置10の供給電圧(電源電圧)、Vssは接地電圧、Vppは書き込み用の電圧、Veeは消去用の電圧、Vrは読み出し用の電圧である。本実施形態では、書き込み及び消去動作時の選択ワード線電圧は、負荷抵抗特性可変回路14を介してワード線デコーダ12に供給される。
データの読み出しは、メモリセルアレイ11からビット線デコーダ13、読み出し回路15を通って行われる。読み出し回路15は、データの状態を判定し、その結果を制御回路16に送り、データ線19へ出力する。
図2に、クロスポイント型のメモリセルアレイ11の部分的な構成を模式的に示す。図2では、メモリセルアレイ11は4本のビット線BL0〜3と4本のワード線WL0〜3の交点にメモリセルMが挟持されている。図2に示すように、メモリセルアレイ11は、電気抵抗の変化により情報を記憶する可変抵抗素子を有する2端子構造のメモリセルMを行方向及び列方向に夫々複数配列し、行方向に延伸する複数のワード線と列方向に延伸する複数のビット線を備え、同一行のメモリセルの夫々が、メモリセルの一端側を共通のワード線に接続し、同一列のメモリセルの夫々が、メモリセルの他端側を共通のビット線に接続してなるクロスポイント型のメモリセルアレイ構造を有している。
本実施形態におけるメモリセルとしては、2端子構造の可変抵抗素子の2端子間に書き換え用(書き込み用及び消去用)の電圧パルスが印加されることで、可変抵抗素子の電流電圧特性で規定される抵抗特性が変化することにより、つまり、一定のバイアス条件下での電気抵抗が変化することにより、情報を書き込み可能に構成されているものを想定する。メモリセルMは、図3に示すように、下部電極22と可変抵抗体23と上部電極24からなる3層構造の可変抵抗素子21だけで構成される。本実施形態では、下部電極22と上部電極24は同じ金属材料、例えば、白金(Pt)で作製されており、可変抵抗体23は、遷移金属を含む酸化物または酸窒化物、例えば、Fe2O3で作製されている。下部電極22と上部電極24の何れか一方がワード線に接続し、他方がビット線に接続する。一例として、下部電極22が列方向に延伸してビット線を形成し、上部電極24が行方向に延伸してワード線を形成する構成が可能である。或いは、ワード線やビット線等の配線と、下部電極22と上部電極24の電極を別材料で形成してもよい。尚、可変抵抗素子21は、所定の半導体或いは絶縁体基板上に、スパッタリング法等の既存の薄膜形成方法及びフォトリソグラフィー技術やエッチング技術を用いて作製可能であり、詳細な作製方法についての説明は省略する。
図3に示す構造の可変抵抗素子の抵抗特性は、例えば図4に示すように、高抵抗状態(特性A)と低抵抗状態(特性B)の2通りの抵抗特性を有し、2通りの抵抗特性間を同一極性の電圧印加によって双方向に遷移可能である。可変抵抗素子の素子構造が上下対称であるため、2つの抵抗特性A,Bは、夫々、印加電圧の極性に対して対称な特性となっている。ここで、電圧極性の正負は、例えば、下部電極22を基準とする上部電極24への印加電圧の極性の正負で規定すればよい。
図4に示す抵抗特性は、図25に示す抵抗特性と同様に、電流の上限値(コンプライアンス)を設定できる市販の測定器(例えば、ヒューレットパッカード社のパラメータアナライザ、型番4156B)を用いて、以下の4つの手順で測定されたものである。
(1)電圧スイープ:0V→+2.5V→0V、電流コンプライアンス=+0.5mA
(2)電圧スイープ:0V→+1.0V→0V、電流コンプライアンス=+5.0mA
(3)電圧スイープ:0V→−2.5V→0V、電流コンプライアンス=−0.5mA
(4)電圧スイープ:0V→−1.0V→0V、電流コンプライアンス=−5.0mA
手順(1)は、正極性側の高抵抗状態(特性A)、及び、正極性側の高抵抗状態(特性A)から低抵抗状態(特性B)への遷移を測定する。手順(2)は、正極性側の低抵抗状態(特性B)、及び、正極性側の低抵抗状態(特性B)から高抵抗状態(特性A)への遷移を測定する。手順(3)は、負極性側の高抵抗状態(特性A)、及び、負極性側の高抵抗状態(特性A)から低抵抗状態(特性B)への遷移を測定する。手順(4)は、負極性側の低抵抗状態(特性B)、及び、負極性側の低抵抗状態(特性B)から高抵抗状態(特性A)への遷移を測定する。尚、電圧スイープ時の電圧ステップは20mV、各ステップの間隔は約3秒を想定する。
可変抵抗素子は、最初約20kΩの高抵抗状態(特性A)にあり、手順(1)において、印加電圧が第2閾値電圧(1.5V)に到達したときに高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が発生し、可変抵抗素子を流れる電流量が急激に増大した。印加電圧は、電流量が設定したコンプライアンス値(0.5mA)に到達したまま0.22Vまで低下し、約650Ωの低抵抗状態(特性B)のI‐V曲線に沿って0Vに到達した。続いて、手順(2)において、電圧を印加すると、初め低抵抗状態であったが、第1閾値電圧(約0.5V)に到達すると低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が発生し、高抵抗状態(特性A)のI‐V曲線へと戻った。更に、手順(3)と手順(4)においては、手順(1)と手順(2)と電圧及び電流の値の正負逆転した場合と略同様な現象が起きた。即ち、手順(3)において、印加電圧が−1.5V(絶対値が第4閾値電圧)に到達したときに高抵抗状態から低抵抗状態への遷移が発生し、可変抵抗素子を流れる電流量の絶対値が急激に増大した。印加電圧は、電流量が設定したコンプライアンス値(−0.5mA)に到達したまま絶対値が0.22Vまで低下し、約650Ωの低抵抗状態(特性B)のI‐V曲線に沿って0Vに到達した。続いて、手順(4)において、電圧を印加すると、初め低抵抗状態であったが、−1.5V(絶対値が第3閾値電圧)に到達すると低抵抗状態から高抵抗状態への遷移が発生し、高抵抗状態(特性A)のI‐V曲線へと戻った。
この可変抵抗素子に負荷抵抗を介さず、以下の手順で電圧パルス印加を行い、電圧パルスの印加毎に抵抗値の測定を行った。図5に測定した抵抗値の変化を示す。抵抗値の読み出しはパラメータアナライザを用い、+0.3Vでの読み出し電流を電圧値で除した値を抵抗値としている。図5に示すように、初め680Ωの低抵抗状態であった可変抵抗素子に、電圧振幅+2V、パルス幅35nsの電圧パルスを印加すると、抵抗値は増加し、高抵抗状態に遷移した。更に、繰り返し同じ電圧振幅+2V、パルス幅35nsの電圧パルスを印加したが、抵抗値は殆ど変化せず、高抵抗状態のままであり連続的なスイッチング動作(低抵抗状態と高抵抗状態の間の双方向の遷移)はできなかった。このことは、この可変抵抗素子では、従来のモノポーラスイッチング動作のようにパルス幅を書き込みと消去で変更しないと、そのままではモノポーラスイッチング動作できないことを意味している。
次に、図3に示す上下対称な素子構造の可変抵抗素子に対して書き込みと消去で100ns以下の同じ短いパルス幅(例えば、35ns)で安定したモノポーラスイッチング動作を、異なる2つの負荷抵抗特性を書き込み時と消去時で切り換え可能な負荷回路を用いて可能とする動作原理、及び、最適な負荷抵抗特性の決定方法について、図6を参照して説明する。本発明装置では、書き換え時においてメモリセルである可変抵抗素子と直列に接続する負荷回路としては、ワード線デコーダ12、ビット線デコーダ13、負荷抵抗特性可変回路14、及び、これらの回路間を接続する信号配線の寄生抵抗等の合成回路が想定されるが、説明の簡単のため、負荷回路として線形な負荷抵抗特性を有する単体の負荷抵抗を想定して説明する。
図6(A)は、負荷抵抗を介さない状態で測定した場合の可変抵抗素子の高抵抗状態(特性A)と低抵抗状態(特性B)の2つの抵抗特性を示すI‐V特性曲線である。高抵抗状態では、遷移点Ta(Va,Ia)で高抵抗状態から低抵抗状態へ遷移し、低抵抗状態では、遷移点Tb(Vb,Ib)で低抵抗状態から高抵抗状態へと遷移する。ここで、電圧Vaは第2閾値電圧、電圧Vbは第1閾値電圧、電流Iaは第2閾値電流、電流Ibは第1閾値電流に相当する。
先ず、高抵抗状態から低抵抗状態へと遷移するのに望ましい負荷抵抗特性の範囲と負荷回路と可変抵抗素子(メモリセル)の直列回路に印加する駆動電圧Vda(電圧パルスの電圧振幅)の範囲について説明する。図6(A)に示す抵抗特性を有する可変抵抗素子に、抵抗値R1の負荷抵抗を直列に接続した場合、遷移点Ta(Va,Ia)を通る負荷抵抗特性は、図6(B)において直線C1のように描かれる。尚、このときの駆動電圧Vdaを第2臨界電圧VAとする。高抵抗状態から低抵抗状態への安定した動作を行うためには、この負荷抵抗特性直線C1が低抵抗状態から高抵抗状態へと遷移する遷移点Tb(Vb,Ib)よりも低電圧側の点T1(Vt1,It1)で低抵抗状態のI‐V特性曲線と交差する必要がある。即ち、図6(B)上の遷移点Taを通過する負荷抵抗特性直線C1は、数1に示す関係式で表される。
(数1)
V=−R1×(I−Ia)+Va
ここで、上記条件を満足するためには、I=Ibの時にV<Vbを満たすことである。従って、数1及び当該条件より、下記の数2に示す条件が導出される。
(数2)
(Va−Vb)/(Ib−Ia)<R1
ここで、数2の左辺の抵抗値が臨界抵抗値に相当する。抵抗値R1は、第1抵抗値に相当し、遷移点Ta(Va,Ia)と交点T1(Vt1,It1)の各座標値を用いて、下記の数3で表すことができる。
(数3)
R1=(Va−Vt1)/(It1−Ia)
更に、このとき、負荷抵抗を介して可変抵抗素子を高抵抗状態から低抵抗状態へと遷移させる電圧パルスの電圧振幅Vdaは、第2臨界電圧VAより高電圧である必要がある。即ち、数1に示す負荷抵抗特性直線C1の式に、I=0を代入した値が第2臨界電圧VAであるため、電圧振幅Vdaは、下記の数4に示す条件を満たす必要がある。
(数4)
Vda>Va+R1×Ia
引き続き、低抵抗状態から高抵抗状態へと遷移するのに望ましい負荷抵抗特性の範囲と負荷回路と可変抵抗素子(メモリセル)の直列回路に印加する駆動電圧Vdb(電圧パルスの電圧振幅)の範囲について説明する。図6(A)に示す抵抗特性を有する可変抵抗素子に、抵抗値R2の負荷抵抗を直列に接続した場合、遷移点Tb(Vb,Ib)を通る負荷抵抗特性は、図6(C)において直線C2のように描かれる。尚、このときの駆動電圧Vdbを第1臨界電圧VBとする。低抵抗状態から高抵抗状態への安定した動作を行うためには、この負荷抵抗特性直線C2が高抵抗状態から低抵抗状態へと遷移する遷移点Ta(Va,Ia)よりも低電圧側の点T2(Vt2,It2)で高抵抗状態のI‐V特性曲線と交差する必要がある。即ち、図6(C)上の遷移点Tbを通過する負荷抵抗特性直線C2は、数5に示す関係式で表される。
(数5)
V=−R2×(I−Ib)+Vb
ここで、上記条件を満足するためには、I=Iaの時にV<Vaを満たすことである。従って、数5及び当該条件より、下記の数6に示す条件が導出される。
(数6)
(Va−Vb)/(Ib−Ia)>R2
ここで、数6の左辺の抵抗値が臨界抵抗値に相当する。抵抗値R2は、第2抵抗値に相当し、遷移点Tb(Vb,Ib)と交点T2(Vt2,It2)の各座標値を用いて、下記の数7で表すことができる。
(数7)
R2=(Vt2−Vb)/(Ib−It2)
更に、このとき、負荷抵抗を介して可変抵抗素子を低抵抗状態から高抵抗状態へと遷移させる電圧パルスの電圧振幅Vdbは、第1臨界電圧VBより高電圧である必要がある。即ち、数5に示す負荷抵抗特性直線C2の式に、I=0を代入した値が第1臨界電圧VBであるため、電圧振幅Vdbは、下記の数8に示す条件を満たす必要がある。
(数8)
Vdb>Vb+R2×Ib
以上の説明において、第2臨界電圧VAと第1臨界電圧VBは異なる電圧値となるが、可変抵抗素子を高抵抗状態から低抵抗状態へと遷移させる電圧パルスの電圧振幅Vdaと、低抵抗状態から高抵抗状態へと遷移させる電圧パルスの電圧振幅Vdbは、夫々数4と数8の条件を満たす限りにおいて、同じ電圧に設定することが可能である。
この場合、例えば、低抵抗状態から高抵抗状態へのスイッチング動作において、電圧振幅Vdbが第1臨界電圧VBより大幅に高電圧となって、図6(C)において負荷抵抗特性直線C2が右方向(高電圧方向)に平行移動して、負荷抵抗特性直線C2と高抵抗状態(特性A)のI‐V特性曲線との交点が、遷移点Ta(Va,Ia)よりも高電圧側に移動しても、その時点では、高抵抗状態と低抵抗状態の間での双方向の遷移が起こり不安定な発振状態となるが、電圧パルスの印加が終了する時点で、電圧振幅Vdbの低下に伴い、負荷抵抗特性直線C2が左方向(低電圧方向)に平行移動して、負荷抵抗特性直線C2と高抵抗状態(特性A)のI‐V特性曲線との交点が、遷移点Ta(Va,Ia)よりも低電圧側に移動するため、高抵抗状態への遷移が最終的に生じて抵抗特性が高抵抗状態に安定する。更に、高抵抗状態から低抵抗状態へのスイッチング動作において、電圧振幅Vdaが第2臨界電圧VAより大幅に高電圧となって、図6(B)において負荷抵抗特性直線C1が右方向(高電圧方向)に平行移動して、負荷抵抗特性直線C1と低抵抗状態(特性B)のI‐V特性曲線との交点が、遷移点Tb(Vb,Ib)よりも高電圧側に移動しても、その時点では、高抵抗状態と低抵抗状態の間での双方向の遷移が起こり不安定な発振状態となるが、電圧パルスの印加が終了する時点で、電圧振幅Vdaの低下に伴い、負荷抵抗特性直線C1が左方向(低電圧方向)に平行移動して、負荷抵抗特性直線C1と低抵抗状態(特性B)のI‐V特性曲線との交点が、遷移点Tb(Vb,Ib)よりも低電圧側に移動するため、低抵抗状態への遷移が最終的に生じて抵抗特性が低抵抗状態に安定する。以上の理由から、本発明装置においては、電圧振幅Vdaと電圧振幅Vdbを同電圧に設定することが可能である。
可変抵抗素子の抵抗特性を説明するために、図4に示すように、電流電圧特性を市販のパラメータアナライザを用いて測定したもので説明したが、本発明において意味する各閾値電圧や閾値電流、及び、各臨界電圧等は、実際に負荷回路とメモリセルの直列回路に印加される電圧パルス程度の短いパルス幅の電圧パルスを用いて測定或いは評価すべきであり、図4に例示した数値は、本発明の説明のためのものである。何故なら、可変抵抗素子の抵抗特性が顕著な温度応答性を有する場合は、電圧の印加時間の影響を受けて、各閾値電圧が変化する可能性があるためである。
上記の動作原理、及び、最適な負荷抵抗特性の決定方法についての説明では、負荷回路として線形な負荷抵抗特性を有する単体の負荷抵抗を想定したが、実際の回路構成では、負荷回路には、ワード線デコーダ12やビット線デコーダ13中のワード線やビット線を選択するための非線形な電流電圧特性を有するトランジスタを含むため、負荷抵抗特性は非線形となる。負荷抵抗特性が非線形な場合でも、上記の動作原理、及び、最適な負荷抵抗特性の決定方法についての考え方は同じであるが、負荷回路に含まれるMOSFET特有の電流電圧特性に基づく注意点もあるので、以下、負荷回路として非線形な負荷抵抗特性を有する単体のMOSFETを想定して説明する。
図7(A)は、MOSFETの異なるゲート電圧Vgでのソース・ドレイン間の2つの電流電圧特性で規定される負荷抵抗特性C3,C4を示す。つまり、このMOSFETが、ゲート電圧の電圧制御によって負荷抵抗特性を切り換え可能な負荷抵抗特性可変回路14として機能する。図7(B)及び(C)に示すように、ゲート電圧が低い方(Vg=VL)の負荷抵抗特性C3は、可変抵抗素子の抵抗特性を高抵抗状態(特性A)から低抵抗状態(特性B)へと遷移する場合に用い、ゲート電圧が高い方(Vg=VH)の負荷抵抗特性C4は、可変抵抗素子の抵抗特性を低抵抗状態(特性B)から高抵抗状態(特性A)へと遷移する場合に用いる。
先ず、高抵抗状態から低抵抗状態へと遷移するのに望ましい負荷抵抗特性の範囲と負荷回路と可変抵抗素子(メモリセル)の直列回路に印加する駆動電圧Vda(電圧パルスの電圧振幅)の範囲について説明する。図6(A)に示す抵抗特性を有する可変抵抗素子に、MOSFETのゲート電圧を低レベル(VL)に設定して負荷抵抗特性C3とした場合、遷移点Ta(Va,Ia)を通る負荷抵抗特性は、図7(B)において曲線C3のように描かれる。尚、このときの駆動電圧Vdaを第2臨界電圧VAとする。高抵抗状態から低抵抗状態への安定した動作を行うためには、この負荷抵抗特性曲線C3が、低抵抗状態から高抵抗状態へと遷移する遷移点Tb(Vb,Ib)よりも低電圧側の点T3(Vt3,It3)で低抵抗状態のI‐V特性曲線と交差する必要がある。即ち、図7(B)上の遷移点Taと交点T3(Vt3,It3)を通過する負荷抵抗特性曲線C3は、図6(A)に示す2つの抵抗特性に対しては、下記の数9で遷移点Ta(Va,Ia)と交点T3(Vt3,It3)の各座標値を用いて定義される第1抵抗値R3の負荷抵抗と同等に機能するため、便宜的に第1抵抗値R3で負荷抵抗特性を示すと、数10に示す関係式で表される。
(数9)
R3=(Va−Vt3)/(It3−Ia)
(数10)
V=−R3×(I−Ia)+Va
ここで、上記条件を満足するためには、I=Ibの時にV<Vbを満たすことである。従って、数10及び当該条件より、下記の数11に示す条件が導出される。ここで、数11の左辺の抵抗値が臨界抵抗値に相当する。
(数11)
(Va−Vb)/(Ib−Ia)<R3
尚、MOSFETは、ソース・ドレイン間の電圧を増加しても飽和領域に達すると電流の増加が抑制されるため、この飽和電流を遷移点Tb(Vb,Ib)の電流値(第1閾値電流)Ibより小さくなるようにゲート電圧を設定すれば、数11に示す条件が満足される。
更に、このとき、MOSFETを介して可変抵抗素子を高抵抗状態から低抵抗状態へと遷移させる電圧パルスの電圧振幅Vdaが、第2臨界電圧VAより高電圧(Vda>VA)である必要がある点は、線形な負荷抵抗を用いた場合と同様である。但し、第2臨界電圧VAは、図7(B)において、遷移点Ta(Va,Ia)を通過する負荷抵抗特性曲線C3と電圧軸との交点の電圧値で与えられる。
引き続き、低抵抗状態から高抵抗状態へと遷移するのに望ましい負荷抵抗特性の範囲と負荷回路と可変抵抗素子(メモリセル)の直列回路に印加する駆動電圧Vdb(電圧パルスの電圧振幅)の範囲について説明する。図6(A)に示す抵抗特性を有する可変抵抗素子に、MOSFETのゲート電圧を高レベル(VH)に設定して負荷抵抗特性C4とした場合、遷移点Tb(Vb,Ib)を通る負荷抵抗特性は、図7(C)において曲線C4のように描かれる。尚、このときの駆動電圧Vdbを第1臨界電圧VBとする。低抵抗状態から高抵抗状態への安定した動作を行うためには、この負荷抵抗特性曲線C4が高抵抗状態から低抵抗状態へと遷移する遷移点Ta(Va,Ia)よりも低電圧側の点T4(Vt4,It4)で高抵抗状態のI‐V特性曲線と交差する必要がある。即ち、図7(C)上の遷移点Tbと交点T4(Vt4,It4)を通過する負荷抵抗特性曲線C4は、図6(A)に示す2つの抵抗特性に対しては、下記の数12で遷移点Tb(Vb,Ib)と交点T4(Vt4,It4)の各座標値を用いて定義される第2抵抗値R4の負荷抵抗と同等に機能するため、便宜的に第2抵抗値R4で負荷抵抗特性を示すと、数13に示す関係式で表される。
(数12)
R4=(Vt4−Vb)/(Ib−It4)
(数13)
V=−R4×(I−Ib)+Vb
ここで、上記条件を満足するためには、I=Iaの時にV<Vaを満たすことである。従って、数13及び当該条件より、下記の数14に示す条件が導出される。ここで、数14の左辺の抵抗値が臨界抵抗値に相当する。
(数14)
(Va−Vb)/(Ib−Ia)>R4
尚、負荷抵抗特性曲線C4は遷移点Tb(Vb,Ib)と交差する必要があるため、MOSFETの飽和電流を遷移点Tb(Vb,Ib)の電流値(第1閾値電流)Ibより大きくなるようにゲート電圧を設定する必要がある。
更に、このとき、MOSFETを介して可変抵抗素子を低抵抗状態から高抵抗状態へと遷移させる電圧パルスの電圧振幅Vdbが、第1臨界電圧VBより高電圧(Vdb>VB)である必要がある点は、線形な負荷抵抗を用いた場合と同様である。但し、第1臨界電圧VBは、図7(C)において、遷移点Tb(Vb,Ib)を通過する負荷抵抗特性曲線C4と電圧軸との交点の電圧値で与えられる。
また、線形な負荷抵抗を用いた場合と同様の理由から、第2臨界電圧VAと第1臨界電圧VBが異なるが、可変抵抗素子を高抵抗状態から低抵抗状態へと遷移させる電圧パルスの電圧振幅Vdaと、低抵抗状態から高抵抗状態へと遷移させる電圧パルスの電圧振幅Vdbは、夫々、第2臨界電圧VAより高電圧(Vda>VA)であるという条件と、第1臨界電圧VBより高電圧(Vdb>VB)である必要があるという条件を満たす限りにおいて、同じ電圧に設定することが可能である
次に、異なる2つの負荷抵抗特性を書き込み時と消去時で切り換え可能な負荷回路を用いた場合の効果について、図5との比較において説明する。図5に示す負荷抵抗を介さずに電圧パルスの印加した測定で連続的なモノポーラスイッチング動作を示さなかった可変抵抗素子に対して、MOSFETを負荷回路として用い、ゲート電圧をスイッチング方向に応じて切り換えて使用して電圧パルスの印加を以下の要領で行い、電圧パルスの印加毎に抵抗値の測定を行った。図8に測定した抵抗値の変化を示す。抵抗値の読み出しはパラメータアナライザを用い、+0.3Vでの読み出し電流を電圧値で除した値を抵抗値としている。図8に示すように、初め720Ωの低抵抗状態であった可変抵抗素子に、MOSFETのゲート電圧を3V(オン抵抗が700Ω)に設定し、電圧振幅+2V、パルス幅35nsの電圧パルスを印加すると、抵抗値は増加し、高抵抗状態(21kΩ)に遷移した。次に、MOSFETのゲート電圧を1.8V(オン抵抗が1700Ω)に変更し、同じ電圧振幅+2V、パルス幅35nsの電圧パルスを印加したところ、抵抗値は、680Ωの低抵抗状態に変化した。更に、同じ要領でゲート電圧をスイッチング方向に応じて切り換え、繰り返し同じ電圧振幅+2V、パルス幅35nsの電圧パルスを印加することで、可変抵抗素子の抵抗特性は低抵抗状態と高抵抗状態の間で交互にスイッチングを繰り返し、安定した連続的なモノポーラスイッチング動作を確認できた。
次に、本実施形態で使用する負荷抵抗特性可変回路14の具体的な回路構成について、図9及び図10を参照して説明する。図9は、書き換え対象の選択メモリセルの可変抵抗素子21と負荷回路と電圧スイッチ回路17の関係を模式的に示す。図9では、負荷回路は、電圧スイッチ回路17からの電圧パルスが印加される回路の内の選択メモリセルを除く全ての回路として扱うことができ、ワード線デコーダ12とビット線デコーダ13と負荷抵抗特性可変回路14、及び、選択ワード線や選択ビット線等の信号配線の寄生抵抗を含む。従って、その負荷抵抗特性は、選択メモリセルを除く全ての回路の合成回路の電流電圧特性として規定される。図9に示す例では、電圧スイッチ回路17からビット線デコーダ13を介して選択ビット線に接地電圧Vssが印加され、負荷抵抗特性可変回路14とワード線デコーダ12を介して選択ワード線に書き込み用電圧Vppまたは消去用電圧Veeが印加される。書き込み用電圧Vppと消去用電圧Veeは電圧パルスとして選択ワード線に印加されるが、そのパルス幅(印加時間)は、書き込み用電圧Vppまたは消去用電圧Veeを供給する電圧スイッチ回路17側、或いは、当該電圧を供給される負荷抵抗特性可変回路14またはワード線デコーダ12側において、制御回路からの制御により調整される。
図10(A)〜(E)に、負荷抵抗特性可変回路14の回路構成例を5例示す。図10(A)は、常時オン状態のP型MOSFET31とオンオフが制御信号Sc1によって切り換え可能なP型MOSFET32の並列接続によって構成された負荷抵抗特性可変回路14を示す。P型MOSFET31とP型MOSFET32を同じサイズに設定すると、制御信号Sc1によって、図7(A)に示すような負荷抵抗特性の切り換えが可能となる。尚、常時オン状態のP型MOSFET31に代えて、線形或いは非線形な抵抗特性の抵抗素子または電圧極性に合わせたダイオードを用いても、P型MOSFET32のオンオフによって負荷抵抗特性を切り換え可能な負荷抵抗特性可変回路14を実現できる。
図10(B)は、オンオフが2つの制御信号Sc2,Sc3によって切り換え可能なP型MOSFET33,34の並列接続によって構成された負荷抵抗特性可変回路14を示す。P型MOSFET33,34は一方がオンの時に他方がオフとなるように制御される。図10(B)に示す例では、P型MOSFET33,34の夫々のゲート幅等を異ならせることで、図7(A)に示すような負荷抵抗特性の切り換えが可能となる。また、P型MOSFET33,34を同じサイズとして、夫々或いは何れか一方に対し直列に異なる抵抗値の抵抗成分を付加するようにしても構わない。
図10(C)は、1つの制御信号Sc4でゲート電圧を多段階に制御可能な1つのP型MOSFET35で構成された負荷抵抗特性可変回路14を示す。制御信号Sc4として、P型MOSFET35をオフにする1つの信号レベルと、P型MOSFET35をオンにする2つの信号レベルを出力可能に構成し、P型MOSFET35をオンにする2つの信号レベルを切り換えることで、図7(A)に示すような負荷抵抗特性の切り換えが可能となる。
図10(D)は、2つの制御信号Sc5,Sc6でゲート電圧とバックゲート(基板)電圧を夫々2段階に制御可能な1つのP型MOSFET36で構成された負荷抵抗特性可変回路14を示す。制御信号Sc5でP型MOSFET36のオンオフを制御し、制御信号Sc6でP型MOSFET36のバックゲート電圧を調整して閾値電圧を変化させる。P型MOSFET36をオンにした状態で、バックゲート電圧により閾値電圧を高低2通りに切り換えることで、図7(A)に示すような負荷抵抗特性の切り換えが可能となる。
図10(E)は、1つの制御信号Sc7でゲート電圧を多段階に制御可能な1つの抵抗制御素子37で構成された負荷抵抗特性可変回路14を示す。抵抗制御素子37としては、MOSFET以外で構成されるトランスファゲートや単チャンネルトランジスタ等で構成されるものを利用する。制御信号Sc7の信号レベルを切り換えることで、負荷抵抗特性の切り換えが可能となる。
尚、本実施形態では、図1及び図9に示すように、負荷抵抗特性可変回路14を電圧スイッチ回路17とワード線デコーダ12の間に設けて、電圧スイッチ回路17から負荷抵抗特性可変回路14に対して同じ電圧極性の書き込み用電圧Vpp及び消去用電圧Veeを印加する場合を説明したが、負荷抵抗特性可変回路14はこの構成例に限定されるものではなく、例えば、ワード線デコーダ12の内部、ワード線デコーダ12とメモリセルアレイ11の間、ビット線デコーダ13とメモリセルアレイ11の間、ビット線デコーダ13の内部、ビット線デコーダ13と電圧スイッチ回路17の間、或いは、電圧スイッチ回路17の内部に設けるようにしても構わない。また、負荷抵抗特性可変回路14をワード線デコーダ12の内部、或いは、ビット線デコーダ13の内部に設ける場合は、ワード線デコーダ12やビット線デコーダ13を構成するワード線選択用トランジスタやビット線選択用トランジスタと負荷抵抗特性可変回路14を同じトランジスタで構成するようにしても構わない。更に、負荷抵抗特性可変回路14は、1個所ではなく、複数個所に分散して形成されてもよい。
また、負荷抵抗特性可変回路14を、MOSFETを用いて構成する場合は、その形成個所や書き込み用電圧Vpp及び消去用電圧Veeの電圧極性に応じて、P型MOSFETの使用に代えて、N型MOSFETを使用するようにしてもよい。
次に、本発明装置のメモリセルの書き込み動作について説明する。ここでは、選択メモリセルの可変抵抗素子の抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる場合を書き込み動作として説明する。
先ず、制御回路16は、外部からのアドレス信号、データ入力信号、制御入力信号等により、アドレス信号で指定される書き込み対象のメモリセルへの書き込み動作を指示されると、電圧スイッチ回路17を活性化し、書き込み動作時に選択ワード線、非選択ワード線、選択ビット線、及び、非選択ビット線に夫々印加すべき電圧の出力を指示する。電圧スイッチ回路17は、図示しない電圧発生回路で生成された書き込み用電圧Vppを、負荷抵抗特性可変回路14を介してワード線デコーダ12に供給し、書き込み用電圧Vppの2分の1の電圧の書き込み抑止電圧Vpp/2をワード線デコーダ12とビット線デコーダ13に供給し、接地電圧Vssをビット線デコーダ13に供給する。また、制御回路16は、負荷抵抗特性可変回路14を書き込み動作用の負荷抵抗特性となるように制御する。本実施形態では、負荷抵抗特性がより低抵抗となるように制御する。この結果、書き込み用電圧Vppを上述の第1臨界電圧以上に設定することで、選択ワード線には、負荷抵抗特性可変回路14とワード線デコーダ12を介して書き込み用電圧Vppから両回路での電圧降下分を差し引いた電圧が印加され、選択ビット線には、接地電圧Vssからビット線デコーダ13での電圧降下分上昇した電圧が印加され、選択メモリセルの両端には、抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させるのに必要な第1閾値電圧以上の電圧が印加され、抵抗特性が低抵抗状態から高抵抗状態に遷移して書き込みが完了する。このとき、可変抵抗素子が高抵抗状態に遷移したため、負荷回路とメモリセルの直列回路の合成抵抗値が高くなって、負荷回路を流れる電流が減少して負荷回路での電圧降下が低下するため、高抵抗状態に遷移後の選択メモリセルの両端に印加される電圧は上昇するが、負荷抵抗特性可変回路14の制御により選択された負荷抵抗特性によって選択メモリセルの両端電圧が第2閾値電圧よりも低い電圧状態において安定して高抵抗状態への遷移が起こるため、結局電圧上昇後において、可変抵抗素子は安定して高抵抗状態を維持することができる。
また、非選択ワード線には、ワード線デコーダ12を介して書き込み抑止電圧Vpp/2からワード線デコーダ12での電圧降下分を差し引いた電圧が印加され、非選択ビット線には、ビット線デコーダ13を介して書き込み抑止電圧Vpp/2からビット線デコーダ13での電圧降下分上昇した電圧が印加されるため、非選択ワード線と非選択ビット線に接続する非選択メモリセルには電圧が印加されず、非選択ワード線と選択ビット線に接続する非選択メモリセルと選択ワード線と非選択ビット線に接続する非選択メモリセルには、書き込み抑止電圧Vpp/2からワード線デコーダ12とビット線デコーダ13の電圧降下分を差し引いた電圧が印加される。従って、少なくとも書き込み抑止電圧Vpp/2が、抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させるのに必要な第1閾値電圧より低くなるように、書き込み用電圧Vppを設定しておくことで、非選択メモリセルに対する不要な書き込み動作を防止することができる。
次に、本発明装置のメモリセルの消去動作について説明する。ここでは、選択メモリセルの可変抵抗素子の抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる場合を消去動作として説明する。
先ず、制御回路16は、外部からのアドレス信号、データ入力信号、制御入力信号等により、アドレス信号で指定される消去対象のメモリセルへの消去動作を指示されると、電圧スイッチ回路17を活性化し、消去動作時に選択ワード線、非選択ワード線、選択ビット線、及び、非選択ビット線に夫々印加すべき電圧の出力を指示する。電圧スイッチ回路17は、図示しない電圧発生回路で生成された書き込み用電圧Vppと同極性の消去用電圧Veeを、負荷抵抗特性可変回路14を介してワード線デコーダ12に供給し、消去用電圧Veeの2分の1の電圧の消去抑止電圧Vee/2をワード線デコーダ12とビット線デコーダ13に供給し、接地電圧Vssをビット線デコーダ13に供給する。また、制御回路16は、負荷抵抗特性可変回路14を消去動作用の負荷抵抗特性となるように制御する。本実施形態では、負荷抵抗特性がより高抵抗となるように制御する。この結果、消去用電圧Veeを上述の第2臨界電圧以上に設定することで、選択ワード線には、負荷抵抗特性可変回路14とワード線デコーダ12を介して消去用電圧Veeから両回路での電圧降下分を差し引いた電圧が印加され、選択ビット線には、接地電圧Vssからビット線デコーダ13での電圧降下分上昇した電圧が印加され、選択メモリセルの両端には、抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させるのに必要な第2閾値電圧以上の電圧が印加され、抵抗特性が高抵抗状態から低抵抗状態に遷移して消去が完了する。このとき、可変抵抗素子が低抵抗状態に遷移したため、負荷回路とメモリセルの直列回路の合成抵抗値が低くなって、負荷回路を流れる電流が増大して負荷回路での電圧降下が増大するため、低抵抗状態に遷移後の選択メモリセルの両端に印加される電圧は低下するが、負荷抵抗特性可変回路14の制御により選択された負荷抵抗特性によって選択メモリセルの両端電圧が第1閾値電圧よりも低い電圧状態において安定して低抵抗状態への遷移が起こるため、結局電圧上昇後において、可変抵抗素子は安定して低抵抗状態を維持することができる。
また、非選択ワード線には、ワード線デコーダ12を介して消去抑止電圧Vee/2からワード線デコーダ12での電圧降下分を差し引いた電圧が印加され、非選択ビット線には、ビット線デコーダ13を介して消去抑止電圧Vee/2からビット線デコーダ13での電圧降下分上昇した電圧が印加されるため、非選択ワード線と非選択ビット線に接続する非選択メモリセルには電圧が印加されず、非選択ワード線と選択ビット線に接続する非選択メモリセルと選択ワード線と非選択ビット線に接続する非選択メモリセルには、消去抑止電圧Vee/2からワード線デコーダ12とビット線デコーダ13の電圧降下分を差し引いた電圧が印加される。従って、少なくとも消去抑止電圧Vee/2が、抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させるのに必要な第2閾値電圧より低くなるように、消去用電圧Veeを設定しておくことで、非選択メモリセルに対する不要な消去動作を防止すことができる。
尚、第2臨界電圧VAと第1臨界電圧VBは異なる電圧値となるが、本実施形態では、上述の理由から、書き込み用電圧Vppと消去用電圧Veeを同電圧に設定することが可能である。また、書き込み用電圧Vppと消去用電圧Veeの電圧パルスのパルス幅は、何れも短いパルス幅、例えば、100ns以下に設定でき、両パルス幅を同じ長さにすることもできる。これにより、負荷抵抗特性可変回路14の負荷抵抗特性の切り換え制御だけで、書き込み動作と消去動作の区別を制御でき、回路構成の大幅な簡単化が図れる。
本発明装置のメモリセルの読み出し動作は、従来のモノポーラスイッチング動作やバイポーラスイッチング動作で書き換えられたメモリセルに対する公知の読み出し動作が利用可能である。また、読み出し動作は、本発明の本旨ではないので詳細な説明は省略する。
〈第2実施形態〉
次に、本発明装置の第2実施形態について説明する。本発明の大きな特徴の一つとして、従来は長短異なるパルス幅の電圧パルスの使用や、可変抵抗素子の素子構造を非対称とすることで、安定したモノポーラスイッチング動作やバイポーラスイッチング動作を可能としていたところ、負荷回路の負荷抵抗特性をスイッチング方向に応じて切り換えることで、長短異なるパルス幅の電圧パルスや非対称構造の可変抵抗素子を使用せずとも、安定した高速のモノポーラスイッチング動作が可能となる点である。この点については、上記第1実施形態において詳細に説明した。しかし、本発明の技術的思想は、モノポーラスイッチング動作にのみ限定されるものではなく、バイポーラスイッチング動作についても適用可能である。つまり、本発明装置でのバイポーラスイッチング動作では、可変抵抗素子の素子構造が必ずしも非対称構造である必要がなくなる。
本発明装置は、モノポーラスイッチング動作を前提とするものであるが、本発明の技術的思想は、モノポーラスイッチング動作にのみ限定されるものではなく、バイポーラスイッチング動作についても適用可能であるので、参考として、以下、バイポーラスイッチング動作で書き込み及び消去動作を行う本発明装置の第2実施形態について説明する。
図11に、第2実施形態における本発明装置40のブロック構成を示す。図11に示すように、本発明装置40は、メモリセルアレイ11、ワード線デコーダ(ワード線選択回路に相当)12、ビット線デコーダ(ビット線選択回路に相当)13、負荷抵抗特性可変回路44、読み出し回路15、制御回路46、及び、電圧スイッチ回路17を備えて構成される。
メモリセルアレイ11、ワード線デコーダ12、ビット線デコーダ13、読み出し回路15、及び、電圧スイッチ回路17は第1実施形態のものと同じあるので、重複する説明は割愛する。
負荷抵抗特性可変回路44は、書き込みまたは消去動作時において、メモリセルアレイ11の中からワード線デコーダ12とビット線デコーダ13によって書き換え対象として選択された選択メモリセルに電気的に直列に接続する負荷回路の内の、当該負荷回路の電流電圧特性で規定される負荷抵抗特性を、異なる2つの負荷抵抗特性(低抵抗状態と高抵抗状態)の間で、負荷抵抗特性可変回路44に印加される電圧極性に応じて自動的に切り換える回路(極性依存型負荷抵抗回路に相当)である。本実施形態では、負荷抵抗特性可変回路14が、ワード線デコーダ12と電圧スイッチ回路17の間に設けられている。尚、負荷抵抗特性可変回路44としては、第1実施形態と同様に、制御回路46からの制御により負荷抵抗特性を切り換える第1実施形態の負荷抵抗特性可変回路14(図1及び図10参照)を使用することも可能である。
制御回路46は、メモリセルアレイ11の書き込み、消去、読み出しの各メモリ動作の制御を行うための回路で、基本的な機能は第1実施形態の制御回路16と同じある。第1実施形態の制御回路16と相違する点は、ワード線デコーダ12とビット線デコーダ13に対して電圧スイッチ回路17から供給される各種電圧の書き込み及び消去動作時における供給先の制御である。つまり、第1実施形態では、モノポーラスイッチング動作であったため、同極性の書き込み用電圧Vppと消去用電圧Vee、及び、同極性の書き込み抑止電圧Vpp/2と消去抑止電圧Vee/2は、ワード線デコーダ12とビット線デコーダ13に対して同様に供給されていたが、第2実施形態では、バイポーラスイッチング動作であるため、選択メモリセルに印加される電圧の極性を書き込み動作時と消去動作時で反転させる必要から、書き込み動作時には書き込み用電圧Vppにワード線デコーダ12に供給し、接地電圧Vssをビット線デコーダ13に供給するのに対して、消去動作時には消去用電圧Veeをビット線デコーダ13に供給し、接地電圧Vssをワード線デコーダ12に供給する制御を行う。また、負荷抵抗特性可変回路44が印加される電圧極性に応じて負荷抵抗特性を自動的に切り換えるため、当該切り換え制御は制御回路46からは直接には行わない。その代わり、書き込み動作時と消去動作時で、書き込み用電圧Vppと消去用電圧Veeの供給先を切り換えることで、負荷抵抗特性可変回路44に印加される電圧極性が反転するように構成することで、間接的に負荷抵抗特性の切り換え制御を行う。
第2実施形態で使用するメモリセルは、第1実施形態と同様に図3に示す上下対称な素子構造の可変抵抗素子21を想定する。従って、可変抵抗素子の抵抗特性も、図4に示すように、高抵抗状態(特性A)と低抵抗状態(特性B)の2通りの抵抗特性を有し、2通りの抵抗特性間を同一極性の電圧印加によって双方向に遷移可能である。可変抵抗素子の素子構造が上下対称であるため、2つの抵抗特性A,Bは、夫々、印加電圧の極性に対して対称な特性となっている。
次に、バイポーラスイッチング動作においても、可変抵抗素子が対称な素子構造の場合には、負荷回路の負荷抵抗特性をスイッチング方向に応じて切り換えることで安定なスイッチング動作が可能となることを簡単な実施例を用いて説明する。
先ず、この可変抵抗素子に負荷抵抗を介さず、以下の手順で正負両極性の電圧パルス印加を交互に行い、電圧パルスの印加毎に抵抗値の測定を行った。図12に測定した抵抗値の変化を示す。抵抗値の読み出しはパラメータアナライザを用い、+0.3Vでの読み出し電流を電圧値で除した値を抵抗値としている。図12に示すように、初め660Ωの低抵抗状態であった可変抵抗素子に、電圧振幅+2V、パルス幅35nsの電圧パルスを印加すると、抵抗値は増加し、約21kΩの高抵抗状態に遷移した。引き続き、電圧振幅−2V、パルス幅35nsの逆極性の電圧パルスを印加したが、抵抗値は殆ど変化せず、その後、同じ正負両極性の電圧パルスを交互に印加したが、高抵抗状態のままであり連続的なスイッチング動作(低抵抗状態と高抵抗状態の間の双方向の遷移)はできなかった。このことは、同じパルス幅の電圧パルス印加では、従来のバイポーラスイッチング動作のように抵抗特性が電圧極性に応じて非対称になる程度に可変抵抗素子の素子構造を非対称にしないと、バイポーラスイッチング動作できないことを意味している。
次に、異なる2つの負荷抵抗特性を書き込み時と消去時で切り換え可能な負荷回路を用いた場合の効果について、図12との比較において説明する。図12に示す負荷抵抗を介さずに電圧パルスの印加した測定で連続的なバイポーラスイッチング動作を示さなかった可変抵抗素子に対して、図13に示すような印加電圧極性に対して非対称な電流電圧特性を有する極性依存型負荷抵抗回路を負荷回路として用い、電圧極性をスイッチング方向に応じて反転させて電圧パルスの印加を以下の要領で行い、電圧パルスの印加毎に抵抗値の測定を行った。図14に測定した抵抗値の変化を示す。抵抗値の読み出しはパラメータアナライザを用い、+0.3Vでの読み出し電流を電圧値で除した値を抵抗値としている。図14に示すように、初め780Ωの低抵抗状態であった可変抵抗素子に、電圧振幅+2V、つまり極性依存型負荷抵抗がより低抵抗である極性のパルス幅35nsの電圧パルスを印加すると、抵抗値は増加し、高抵抗状態(18kΩ)に遷移した。次に、電圧振幅−2V、つまり極性依存型負荷抵抗がより高抵抗である極性のパルス幅35nsの逆極性の電圧パルスを印加したところ、抵抗値は、約700Ωの低抵抗状態に変化した。更に、同じ要領でスイッチング方向に応じて電圧極を切り換え、繰り返し電圧振幅+2Vと−2V、パルス幅35nsの正負両極性の電圧パルスを交互に印加することで、可変抵抗素子の抵抗特性は低抵抗状態と高抵抗状態の間で交互にスイッチングを繰り返し、安定した連続的なバイポーラスイッチング動作を確認できた。
次に、第2実施形態で使用する負荷抵抗特性可変回路44の具体的な回路構成について、図15乃至図17を参照して説明する。図15は、書き換え対象の選択メモリセルの可変抵抗素子21と負荷回路と電圧スイッチ回路17の関係を模式的に示す。図15では、負荷回路は、電圧スイッチ回路17からの電圧パルスが印加される回路の内の選択メモリセルを除く全ての回路として扱うことができ、ワード線デコーダ12とビット線デコーダ13と負荷抵抗特性可変回路44、及び、選択ワード線や選択ビット線等の信号配線の寄生抵抗を含む。従って、その負荷抵抗特性は、選択メモリセルを除く全ての回路の合成回路の電流電圧特性として規定される。図15に示す例では、書き込み動作時には、電圧スイッチ回路17からビット線デコーダ13を介して選択ビット線に接地電圧Vssが印加され、負荷抵抗特性可変回路44とワード線デコーダ12を介して選択ワード線に書き込み用電圧Vppが印加される。また、消去動作時には、電圧スイッチ回路17からビット線デコーダ13を介して選択ビット線に消去用電圧Veeが印加され、負荷抵抗特性可変回路44とワード線デコーダ12を介して選択ワード線に接地電圧Vssが印加される。書き込み用電圧Vppと消去用電圧Veeは電圧パルスとして選択ワード線または選択ビット線に印加されるが、そのパルス幅(印加時間)は、書き込み用電圧Vppまたは消去用電圧Veeを供給する電圧スイッチ回路17側、或いは、当該電圧を供給される負荷抵抗特性可変回路44またはワード線デコーダ12側、或いは、ビット線デコーダ13において、制御回路からの制御により調整される。
図16(A)〜(C)に、負荷抵抗特性可変回路44の回路構成例を3例示す。図16(A)は、電流電圧特性の異なる2つのダイオード51,52を相互に逆方向に配置して並列に接続して構成された負荷抵抗特性可変回路44を示す。かかる構成により、図17に示すような電流電圧特性を有し、印加電圧の極性によって負荷抵抗特性が自動的に切り換る極性依存型負荷抵抗回路が実現できる。図16(A)に示す例では、ダイオード51,52の夫々の電流電圧特性を異ならせることで、図16に示すような電圧極性に対して非対称な電流電圧特性が可能となる。また、ダイオード51,52を同じ電流電圧特性として、夫々或いは何れか一方に対し直列に異なる抵抗値の抵抗成分を付加するようにしても、印加電圧の極性によって負荷抵抗特性が自動的に切り換る極性依存型負荷抵抗回路が実現できる。
図16(B)は、ダイオード53と線形な抵抗特性の負荷抵抗54を並列に接続して構成された負荷抵抗特性可変回路44を示す。かかる構成により、ダイオード53に対して順方向に電圧印加された場合の負荷抵抗特性は、ダイオード53の順方向の電流電圧特性と負荷抵抗54の電流電圧特性の合成特性となり、ダイオード53に対して逆方向に電圧印加された場合の負荷抵抗特性は、負荷抵抗54単体での電流電圧特性となり、印加電圧の極性によって負荷抵抗特性が自動的に切り換る極性依存型負荷抵抗回路が実現できる。
図16(C)は、ダイオード55と常時オン状態のMOSFET56を並列に接続して構成された負荷抵抗特性可変回路44を示す。かかる構成により、ダイオード55に対して順方向に電圧印加された場合の負荷抵抗特性は、ダイオード55の順方向の電流電圧特性とMOSFET56のソース・ドレイン間の電流電圧特性の合成特性となり、ダイオード55に対して逆方向に電圧印加された場合の負荷抵抗特性は、MOSFET56単体での電流電圧特性となり、印加電圧の極性によって負荷抵抗特性が自動的に切り換る極性依存型負荷抵抗回路が実現できる。
図16(A)〜(C)に例示した回路構成以外にも、バリスタ等の非線形素子を用いて、図17に示すような電圧極性に対して非対称な電流電圧特性を得ることができる。また、ショットキーバリアダイオードの逆方向バイアス時のリーク電流を増加させることで、図13に示すような電圧極性に対して非対称な電流電圧特性に類似した電流電圧特性を得ることが可能である。
尚、本実施形態では、図11及び図15に示すように、負荷抵抗特性可変回路44を電圧スイッチ回路17とワード線デコーダ12の間に設けて、電圧スイッチ回路17から負荷抵抗特性可変回路44に対して、書き込み動作時に書き込み用電圧Vppを印加し、消去動作時には接地電圧Vssを印加する場合を説明したが、負荷抵抗特性可変回路44はこの構成例に限定されるものではなく、例えば、ワード線デコーダ12の内部、ワード線デコーダ12とメモリセルアレイ11の間、ビット線デコーダ13とメモリセルアレイ11の間、ビット線デコーダ13の内部、ビット線デコーダ13と電圧スイッチ回路17の間、或いは、電圧スイッチ回路17の内部に設けるようにしても構わない。更に、負荷抵抗特性可変回路44は、1個所ではなく、複数個所に分散して形成されてもよい。
第2実施形態における書き込み動作は、第1実施形態の書き込み動作と基本的に同じであるため、重複する説明は省略する。また、第2実施形態における消去動作は、第1実施形態の消去動作と、印加電圧の極性が逆転し、選択ワード線と選択ビット線の関係が反転しただけの関係であるので、選択ワード線に連絡すると負荷抵抗特性可変回路44及びワード線デコーダ12と、選択ビット線に連絡するビット線デコーダ13の関係を、第1実施形態の消去動作と交替すれば同様の説明が妥当であるため、重複する説明は省略する。
〈第3実施形態〉
次に、本発明装置の第3実施形態について説明する。従来のバイポーラスイッチング動作では、高速スイッチング動作は可能なものの、選択メモリセルには書き込みと消去を繰り返すためには、正負両極性の電圧を印加する必要があったため、メモリセルは印加される電圧の極性に拘わらず両方向に電圧を流す必要があった。しかし、本発明装置では、上記第1実施形態において詳細に説明した通り、安定した高速のモノポーラスイッチング動作が可能な点であるので、メモリセルは必ずしもバイポーラ動作可能である必要はない。つまり、メモリセルを、図18に示すように可変抵抗素子61とダイオード62を直列に接続した1D1R型の構造とすることが可能である。このようにメモリセル内にダイオードを設けてメモリセルを流れる電流の方向を制限し、ダイオードがオンして電流が流れ始める閾値電圧を調整することで、クロスポイント型のメモリセルアレイ構成で問題となっている非選択メモリセルを介した不要な回り込み電流の影響を大幅に低減することができ、読み出し動作時の動作マージンを改善できる。
図18(A)は、第3実施形態の本発明装置で使用する1D1R型のメモリセルの断面構造を模式的に示す断面模式図であり、図18(B)は、図18(A)に示すメモリセルの等価回路図である。図18(A)に示すように、下部電極63と可変抵抗体64と上部電極65からなる3層構造の可変抵抗素子61と、P型半導体層66とN型半導体層67のPN接合で構成されるダイオード62を上下に直列に接続されて構成される。P型半導体層66とN型半導体層67は、夫々シリコンにP型とN型の不純物を注入して形成される。可変抵抗素子61は、第1実施形態と同様の材料で形成可能であるが、本実施形態では、Pt/Fe2O3/Pt以外に、可変抵抗体64として、TiNを酸化して作製したTiONを用い、下部電極63にTi、上部電極65にTiNを用いる。下部配線68と上部配線69の何れか一方がワード線となり、他方がビット線となる。下部配線68と上部配線69は、配線抵抗を下げるために、下部電極63及び上部電極65とは異なる材料または構造とし、下部配線68は例えば、AlCuで形成し、上部配線69は例えば、AlCuとTiNの積層構造とする。
図19に、図18に示す1D1R型のメモリセルを用いたクロスポイント型のメモリセルアレイ11の部分的な構成を模式的に示す。図19では、メモリセルアレイ11は4本のビット線BL0〜3と4本のワード線WL0〜3の交点にメモリセルが挟持されている。
メモリセル以外の回路構成は、第1実施形態と同じであるので、第3実施形態の本発明装置を構成する各回路の重複する説明は省略する。
尚、本発明の特徴は、メモリセルと負荷回路の直列回路に対して、書き込み動作時と消去動作時で負荷回路の負荷抵抗特性を切り換える点にあるが、メモリセルにダイオード等の電流制限素子が含まれる場合に、ダイオードの電流電圧特性をメモリセル側の電流電圧特性に含めて負荷回路の負荷抵抗特性を調整しても、或いは、ダイオードの電流電圧特性を負荷回路側の電流電圧特性に含めて負荷回路の負荷抵抗特性を調整しても、何れでも同じように本発明の効果を奏し得る。
〈第4実施形態〉
次に、本発明装置の第4実施形態について説明する。第4実施形態の本発明装置は、メモリセルが可変抵抗素子と選択トランジスタで構成される1T1R型のメモリセルを使用する。以下の説明では、モノポーラスイッチング動作を想定して説明するがバイポーラスイッチング動作にも適応可能である。
図20に、第4実施形態における本発明装置70のブロック構成を示す。図20に示すように、本発明装置70は、メモリセルアレイ71、ワード線デコーダ(ワード線選択回路に相当)72、ビット線デコーダ(ビット線選択回路に相当)73、負荷抵抗特性可変回路74、読み出し回路75、制御回路76、及び、電圧スイッチ回路77を備えて構成される。
図21(A)に、1T1R型のメモリセルの模式的な断面構造を示す。メモリセルアレイ71を構成するメモリセルは、半導体基板上に作成したソース領域86とドレイン領域87、及び、ゲート酸化膜上に形成されたゲート電極88からなる選択トランジスタ82と、下部電極83と可変抵抗体84と上部電極85を積層してなる3層構造の可変抵抗素子81を、選択トランジスタ82のドレイン領域87と可変抵抗素子81の下部電極83とを電気的に接続して、選択トランジスタ82と可変抵抗素子81の直列回路として形成されている。ゲート電極88はワード線WLに接続され、ソース領域86はソース線SLに接続され、上部電極85はビット線BLに接続される。可変抵抗体84としてTiNを酸化して作成したTiONを用い、電極は上部電極、下部電極ともTiNを用いた。図21(B)は、図21(A)に示す断面構造の1T1R型メモリセルの等価回路図である。
図22に、1T1R型のメモリセルをマトリクス状に配置したメモリセルアレイ71の部分的な構成を模式的に示す。図22において、各メモリセルの選択トランジスタのゲートはワード線(WL1〜WLn)に接続されており、各メモリセルの選択トランジスタのソースは共通のソース線SLに接続され、各メモリセルの可変抵抗素子の一方端(上部電極側)はビット線(BL1〜BLm)に接続されている。本実施形態では、モノポーラスイッチング動作を想定しているため、書き込み、消去、読み出しの各メモリ動作において、ソース線には接地電圧が印加されるため、メモリ動作の種類に応じてソース線電圧を切り換える必要がないので、ソース線電圧を切り換えるための電圧スイッチ回路77を介さず直接接地電圧に固定できる。
ワード線デコーダ72は、メモリセルアレイ71の各ワード線に接続し、アドレス線78に入力された行選択用のアドレス信号に対応するメモリセルアレイ71のワード線を選択ワード線として選択し、選択ワード線と選択されなかった非選択ワード線に、書き込み、消去、読み出しの各メモリ動作に応じた選択ワード線電圧と非選択ワード線電圧を各別に印加して、選択ワード線に接続するメモリセルの選択トランジスタをオンさせ、非選択ワード線に接続するメモリセルの選択トランジスタをオフさせる。
ビット線デコーダ73は、メモリセルアレイ71の各ビット線に接続し、アドレス線78に入力された列選択用のアドレス信号に対応するメモリセルアレイ71のビット線を選択ビット線として選択し、選択ビット線と選択されなかった非選択ビット線に、書き込み、消去、読み出しの各メモリ動作に応じた選択ビット線電圧と非選択ビット線電圧を各別に印加する。書き込み及び消去動作時には、選択ビット線に選択ビット線電圧を印加するために、電圧スイッチ回路77からビット線デコーダ73に対して書き込み用電圧Vppと消去用電圧Veeが夫々供給される。また、書き込み及び消去動作時には、非選択ビット線は、電圧印加されないオープン状態か、或いは、接地電圧が印加された状態となる。この結果、1T1R型のメモリセルアレイでは、選択ワード線と選択ビット線に接続する選択メモリセルにのみ負荷回路を介して書き込み用電圧Vppまたは消去用電圧Veeが印加される。
負荷抵抗特性可変回路74は、書き込みまたは消去動作時において、メモリセルアレイ71の中からワード線デコーダ72とビット線デコーダ73によって書き換え対象として選択された選択メモリセルに電気的に直列に接続する負荷回路の内の、当該負荷回路の電流電圧特性で規定される負荷抵抗特性を、異なる2つの負荷抵抗特性(低抵抗状態と高抵抗状態)の間で、制御回路76からの制御により切り換える回路である。本実施形態では、負荷抵抗特性可変回路74は、ビット線デコーダ73と電圧スイッチ回路77の間に設けられている。
また、負荷抵抗特性可変回路74は、図10に例示された第1実施形態の負荷抵抗特性可変回路14と同じ回路構成のものが利用可能である。尚、負荷抵抗特性可変回路74は、図20に示す構成に限らず、ビット線デコーダ73の内部、ビット線デコーダ73とメモリセルアレイ71の間、メモリセルアレイ71とソース線の間、或いは、電圧スイッチ回路77の内部に設けるようにしても構わない。また、負荷抵抗特性可変回路74をビット線デコーダ73の内部に設ける場合は、ビット線デコーダ73を構成するビット線選択用トランジスタと負荷抵抗特性可変回路74を同じトランジスタで構成するようにしても構わない。更に、負荷抵抗特性可変回路74は、1個所ではなく、複数個所に分散して形成されてもよい。また、負荷抵抗特性可変回路74を、MOSFETを用いて構成する場合は、その形成個所や書き込み用電圧Vpp及び消去用電圧Veeの電圧極性に応じて、P型MOSFETの使用に代えて、N型MOSFETを使用するようにしてもよい。
制御回路76は、メモリセルアレイ71の書き込み、消去、読み出しの各メモリ動作の制御を行う。制御回路76は、アドレス線78から入力されたアドレス信号、データ線79から入力されたデータ入力(書き込み動作時)、制御信号線80から入力された制御入力信号に基づいて、ワード線デコーダ72、ビット線デコーダ73を制御して、メモリセルアレイ71の読み出し、書き込み、及び、消去動作を制御する。具体的には、各メモリ動作において、選択ワード線、非選択ワード線、選択ビット線、及び、非選択ビット線の夫々に対して、各メモリ動作に応じた所定の電圧を印加するための制御を、電圧スイッチ回路77、ワード線デコーダ72、ビット線デコーダ73等に対して実行する。特に、書き込み及び消去動作時においては、書き換え対象のメモリセルに負荷回路を介して印加する各電圧パルスの電圧振幅及びパルス幅の制御を行う。更に、書き込み動作時と消去動作時において、負荷回路の負荷抵抗特性を切り換えるための制御を負荷抵抗特性可変回路74に対して行う。図20に示す例では、制御回路76は、図示しないが一般的なアドレスバッファ回路、データ入出力バッファ回路、制御入力バッファ回路としての機能を具備している。
電圧スイッチ回路77は、メモリセルアレイ71の読み出し、書き込み、消去動作時に必要な選択ワード線電圧、非選択ワード線電圧、選択ビット線電圧、非選択ビット線電圧をワード線デコーダ72及びビット線デコーダ75に与える。Vccは本発明装置70の供給電圧(電源電圧)、Vssは接地電圧、Vppは書き込み用の電圧、Veeは消去用の電圧、Vrは読み出し用の電圧である。本実施形態では、書き込み及び消去動作時の選択ビット線電圧は、負荷抵抗特性可変回路74を介してビット線デコーダ75に供給される。
データの読み出しは、メモリセルアレイ71からビット線デコーダ73、読み出し回路75を通って行われる。読み出し回路75は、データの状態を判定し、その結果を制御回路76に送り、データ線79へ出力する。
次に、本発明装置のメモリセルの書き込み動作について説明する。ここでは、選択メモリセルの可変抵抗素子の抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させる場合を書き込み動作として説明する。
先ず、制御回路76は、外部からのアドレス信号、データ入力信号、制御入力信号等により、アドレス信号で指定される書き込み対象のメモリセルへの書き込み動作を指示されると、電圧スイッチ回路77を活性化し、書き込み動作時に選択ワード線、非選択ワード線、選択ビット線、及び、非選択ビット線に夫々印加すべき電圧の出力を指示する。電圧スイッチ回路77は、図示しない電圧発生回路で生成された書き込み用電圧Vppを、負荷抵抗特性可変回路74を介してビット線デコーダ73に供給する。また、制御回路76は、負荷抵抗特性可変回路74を書き込み動作用の負荷抵抗特性となるように制御する。本実施形態では、負荷抵抗特性がより低抵抗となるように制御する。この結果、書き込み用電圧Vppを上述の第1臨界電圧以上に設定することで、選択ビット線つまり選択メモリセルの可変抵抗素子の上部電極には、負荷抵抗特性可変回路74とビット線デコーダ73を介して書き込み用電圧Vppから両回路での電圧降下分を差し引いた電圧が印加され、選択メモリセルの可変抵抗素子の下部電極には、接地電圧Vssから選択メモリセルの選択トランジスタのドレイン・ソース電圧分上昇した電圧が印加され、選択メモリセルの可変抵抗素子の両端子間には、抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させるのに必要な第1閾値電圧以上の電圧が印加され、抵抗特性が低抵抗状態から高抵抗状態に遷移して書き込みが完了する。このとき、可変抵抗素子が高抵抗状態に遷移したため、選択メモリセルの選択トランジスタを含む負荷回路と可変抵抗素子の直列回路の合成抵抗値が高くなって、負荷回路を流れる電流が減少して負荷回路での電圧降下が低下するため、高抵抗状態に遷移後の選択メモリセルの可変抵抗素子の両端子間に印加される電圧は上昇するが、負荷抵抗特性可変回路74の制御により選択された負荷抵抗特性によって当該上昇後の選択メモリセルの可変抵抗素子の両端電圧は、抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させるのに必要な第2閾値電圧より低く抑制されるため、可変抵抗素子は安定して高抵抗状態を維持することができる。尚、非選択ビット線に接続する非選択メモリセルには電圧印加されず、また、非選択ワード線に接続する非選択メモリセルは、選択トランジスタがオフ状態のため、可変抵抗素子に電圧印加されず、何れの非選択メモリセルにもデータの書き込みは起きない。
次に、本発明装置のメモリセルの消去動作について説明する。ここでは、選択メモリセルの可変抵抗素子の抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させる場合を消去動作として説明する。
先ず、制御回路76は、外部からのアドレス信号、データ入力信号、制御入力信号等により、アドレス信号で指定される消去対象のメモリセルへの消去動作を指示されると、電圧スイッチ回路77を活性化し、消去動作時に選択ワード線、非選択ワード線、選択ビット線、及び、非選択ビット線に夫々印加すべき電圧の出力を指示する。電圧スイッチ回路77は、図示しない電圧発生回路で生成された書き込み用電圧Vppと同極性の消去用電圧Veeを、負荷抵抗特性可変回路74を介してビット線デコーダ73に供給する。また、制御回路76は、負荷抵抗特性可変回路74を消去動作用の負荷抵抗特性となるように制御する。本実施形態では、負荷抵抗特性がより高抵抗となるように制御する。この結果、消去用電圧Veeを上述の第2臨界電圧以上に設定することで、選択ビット線つまり選択メモリセルの可変抵抗素子の上部電極には、負荷抵抗特性可変回路74とビット線デコーダ73を介して消去用電圧Veeから両回路での電圧降下分を差し引いた電圧が印加され、選択メモリセルの可変抵抗素子の下部電極には、接地電圧Vssから選択メモリセルの選択トランジスタのドレイン・ソース電圧分上昇した電圧が印加され、選択メモリセルの可変抵抗素子の両端子間には、抵抗特性を高抵抗状態から低抵抗状態に遷移させるのに必要な第2閾値電圧以上の電圧が印加され、抵抗特性が高抵抗状態から低抵抗状態に遷移して消去が完了する。このとき、可変抵抗素子が低抵抗状態に遷移したため、選択メモリセルの選択トランジスタを含む負荷回路と可変抵抗素子の直列回路の合成抵抗値が低くなって、負荷回路を流れる電流が増大して負荷回路での電圧降下が増大するため、低抵抗状態に遷移後の選択メモリセルの可変抵抗素子の両端子間に印加される電圧は低下するが、負荷抵抗特性可変回路74の制御により選択された負荷抵抗特性によって当該低下後の選択メモリセルの可変抵抗素子の両端電圧は、抵抗特性を低抵抗状態から高抵抗状態に遷移させるのに必要な第1閾値電圧より更に低く抑制されるため、可変抵抗素子は安定して低抵抗状態を維持することができる。尚、非選択ビット線に接続する非選択メモリセルには電圧印加されず、また、非選択ワード線に接続する非選択メモリセルは、選択トランジスタがオフ状態のため、可変抵抗素子に電圧印加されず、何れの非選択メモリセルにもデータの消去は起きない。
尚、第2臨界電圧VAと第1臨界電圧VBは異なる電圧値となるが、本実施形態では、第1実施形態と同様の理由から、書き込み用電圧Vppと消去用電圧Veeを同電圧に設定することが可能である。また、書き込み用電圧Vppと消去用電圧Veeの電圧パルスのパルス幅は、何れも短いパルス幅、例えば、100ns以下に設定でき、両パルス幅を同じ長さにすることもできる。これにより、負荷抵抗特性可変回路74の負荷抵抗特性の切り換え制御だけで、書き込み動作と消去動作の区別を制御でき、回路構成の大幅な簡単化が図れる。
次に、本発明装置の別実施形態について説明する。
〈1〉上記各実施形態では、メモリセルを構成する可変抵抗素子として、第1実施形態及び第2実施形態においては、Pt/Fe2O3/Pt構造を、第3実施形態においては、Ti/TiON/TiN構造を、第4実施形態においては、TiN/TiON/TiN構造を、夫々採用したが、各実施形態における可変抵抗素子の構造及び材料は、上記各構造の材料に限定されるものではない。可変抵抗素子としては、一方端子を基準とする他方端子への電圧印加を少なくとも正負何れか一方の極性で行った場合に、2端子間の電流電圧特性で規定される抵抗特性が、低抵抗状態と高抵抗状態の安定的に取り得る2つの抵抗特性間を遷移可能であり、前記抵抗特性が低抵抗状態から高抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第1閾値電圧と、前記抵抗特性が高抵抗状態から低抵抗状態に遷移するのに必要な印加電圧の絶対値の下限値である第2閾値電圧が異なる可変抵抗素子であれば、如何なる材料や構造であっても本発明は適用可能である。
本発明が適用可能な可変抵抗素子の可変抵抗体として、金属酸化物、金属酸窒化物、或いは、有機薄膜等が適用可能であり、特に、遷移金属を含む酸化物または酸窒化物、更に、Mn、Fe、Ni、Co、Ti、Cu、Vの中から選択される元素を含む酸化物または酸窒化物、或いは、PCMO等のペロブスカイト型酸化物を用いた可変抵抗素子は、個々の構造や材料毎に第1閾値電圧と第2閾値電圧の電圧値は相違するが、何れも第1閾値電圧と第2閾値電圧が異なる可変抵抗素子であり、本発明装置に使用して同様の効果を奏し得る。例えば、Pt/NiO/Pt構造の可変抵抗素子では、図23に示すような電流電圧特性を示し、W/CuOX/Pt構造の可変抵抗素子では、図24に示すような電流電圧特性を示し、何れも第1閾値電圧と第2閾値電圧が異なる可変抵抗素子であり、本発明装置に使用して同様の効果を奏し得る。
更に、可変抵抗素子の上部電極及び下部電極の材料、更には、ワード線及びビット線の材料も上記各実施形態のものに限定されるものではない。
〈2〉上記第3実施形態において、メモリセルを構成するダイオード62は、可変抵抗素子61の上下何れの側に形成されても構わない。また、ダイオード62はPN接合型ダイオードに限らず、ショットキーバリアダイオードで構成してもよい。また、ダイオード62の順方向は、印加電圧の極性に合わせて、上記第3実施形態の方向に対して逆転しても構わない。
更に、メモリセルを構成するダイオード62に代えて、整流作用はないものの、一定の印加電圧以上でないと通電しないバリスタ等の非線形素子を用いても、クロスポイント型メモリセルアレイにおける回り込み電流の低減効果を発揮することが可能である。バリスタ等の双方向の非線形素子と可変抵抗素子の直列回路でメモリセルを構成する場合は、モノポーラスイッチング動作だけでなく、バイポーラスイッチング動作にも使用可能である。バイポーラスイッチング動作を適用する場合の回路構成は第2実施形態で例示した装置構成が利用可能である。
〈3〉上記第4実施形態では、メモリセルを構成する選択トランジスタとしてMOSFETを用いたが、選択トランジスタとしてはバイポーラトランジスタを用いてもよい。また、選択トランジスタをビット線と接続し、可変抵抗素子をソース線に接続するメモリセル構成としてもよい。
〈4〉上記各実施形態では、負荷抵抗特性可変回路14,44,74は、メモリセルアレイ11,71の外側に設けられ、選択ワード線或いは選択ビット線に選択的に接続する構成としたが、負荷抵抗特性可変回路を各メモリセル内に可変抵抗素子と直列に接続してメモリセルを構成するのも好ましい。この場合、メモリセルアレイ外に設けられていた負荷抵抗特性可変回路は不要となる。但し、制御回路16,46,76から直接に負荷抵抗特性を切り換えるための制御を受ける負荷抵抗特性可変回路の場合は、選択メモリセルに対して当該制御を行える回路構成が必要となる。
例えば、バイポーラスイッチング動作を前提とする上記第2実施形態に対して、負荷抵抗特性可変回路を各メモリセル内に設ける場合は、負荷抵抗特性可変回路を、印加される電圧の極性によって負荷抵抗特性を自動的に切り換え可能な極性依存型負荷抵抗素子で構成し、当該極性依存型負荷抵抗素子と可変抵抗素子の直列回路でメモリセルを構成する。極性依存型負荷抵抗素子は、例えば、第2実施形態において既説したように、図17に示すような電圧極性に対して非対称な電流電圧特性を示すバリスタ等の非線形素子や、図13に示すような電圧極性に対して非対称な電流電圧特性或いはそれに類似した電流電圧特性を示す逆方向バイアス時のリーク電流を増加させたショットキーバリアダイオードが応用できる。本別実施形態では、極性依存型負荷抵抗素子の負荷抵抗特性が印加される電圧の極性によって自動的に切り換え可能なため、制御回路16からの当該切り換えのための制御を直接受ける必要はなく、制御回路16が書き込み用電圧と消去用電圧の極性を反転させる制御を行うだけでよい。
更に、メモリセルを、電圧制御または電流制御によって負荷抵抗特性を切り換え可能なトランジスタ素子と可変抵抗素子の直列回路で構成するようにしても構わない。この場合、トランジスタ素子がメモリセル内で負荷抵抗特性可変回路として機能し、制御回路16からの電圧制御または電流制御によって負荷抵抗特性が切り換るので、モノポーラスイッチング動作とバイポーラスイッチング動作の何れにも適用できる。尚、トランジスタ素子としてMOSFETを使用した場合は、ゲート電圧の制御によってソース・ドレイン間の電流電圧特性が変化して負荷抵抗特性が切り換る。また、トランジスタ素子としてバイポーラトランジスタを使用した場合は、ベース電流の制御によってコレクタ・エミッタ間の電流電圧特性が変化して負荷抵抗特性が切り換る。
また、メモリセル内に負荷抵抗特性可変回路として設けたトランジスタ素子は、メモリセルを選択するための選択トランジスタとして利用できるので、上記トランジスタ素子のゲート端子、或いは、ベース端子をワード線に接続することで、ワード線電圧或いはワード線電流の制御によって、メモリセルの選択動作と負荷抵抗特性の切り換え動作を1つのトランジスタ素子で行える。例えば、上記第4実施形態におけるメモリセル内の選択トランジスタを負荷抵抗特性可変回路として利用することが可能である。この場合は、選択ワード線の電圧を、選択トランジスタの閾値電圧以上で2通りに制御するようにする。
〈4〉上記各実施形態では、可変抵抗素子の電流電圧特性が印加電圧極性に対して対称、非対称の何れの場合にも適用でき、モノポーラスイッチング動作では、何れか一方側の極性の電圧印加を使用し、バイポーラスイッチング動作では、何れか一方側の極性を書き込み動作に、その他方側の極性を消去動作に使用する場合を説明した。ここで、可変抵抗素子の電流電圧特性が印加電圧極性に対して非対称の場合は、モノポーラスイッチング動作では、何れの電圧極性を使用するのが安定したスイッチング動作或いは低消費電力動作の点で有利か、また、バイポーラスイッチング動作では、何れの電圧極性を書き込み動作に使用するのが安定したスイッチング動作或いは低消費電力動作の点で有利かという問題がある。例えば、モノポーラスイッチング動作の場合では、2つの抵抗特性間のスイッチングに必要な下限電圧値の絶対値で規定される2つの異なる閾値電圧(第1閾値電圧と第2閾値電圧)の高い方の電圧が、より低電圧となる側の電圧極性を使用することで、上記第1臨界電圧と第2臨界電圧の高い方の電圧の低電圧化が図れ、書き込み及び消去動作時の低消費電力化が図れる。更には、安定したスイッチング動作の観点から言えば、一方の電圧極性において、第1閾値電圧と第2閾値電圧の電圧差が小さい場合には、安定したスイッチング動作に必要な2つの可変抵抗特性に要求される条件を満たすことが困難な場合には、上記条件を満足する可変抵抗特性の実現しやすい方の電圧極性を選択することになる。
〈5〉本発明の特徴は、負荷回路の負荷抵抗特性をスイッチング方向に応じて切り換えることで、長短異なるパルス幅の電圧パルスや非対称構造の可変抵抗素子を使用せずとも、安定した高速のスイッチング動作が可能となる点である。そして、上記各実施形態では、負荷回路の定義として、電圧スイッチ回路からの電圧パルス(書き込み用電圧または消去用電圧)が印加される回路の内の選択メモリセルを除く全ての回路として扱うとしたが、逆に、負荷回路を、2つの異なる負荷抵抗特性を切り換える回路部分である負荷抵抗特性可変回路として、残りの回路部分の電流電圧特性を可変抵抗素子側に含めて、負荷抵抗特性可変回路において切り換る2つの異なる負荷抵抗特性を調整するようにしても構わない。