JP5133213B2 - ローラ型ワンウェイクラッチ - Google Patents

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Description

本発明は、例えば自動車や産業機械などの駆動装置内でトルク伝達、バックストップ等の部品として使用されるローラ型ワンウェイクラッチに関するものである。
一般に、ローラ型ワンウェイクラッチは、内周にカム面を有する少なくとも一つのポケットが形成された外輪と、外輪と同心に配置されており外周軌道面を有する内輪と、ポケット内に配置されて内輪の外周軌道面と外輪の内周カム面との間でトルクを伝達するローラと、ポケット内で外輪とローラとの間に配置され、ローラをカム面との係合方向に付勢するスプリングなどから成っている。
このような構成において、ローラ型ワンウェイクラッチはローラとカム面とで構成されるカム機構により、外輪に対して内輪を一方向のみに回転するようにしている。すなわち内輪は外輪に対して一方向で空転し、その逆方向でのみカム機構を介して外輪に回転トルクを与える構成になっている。
このようなローラ型ワンウェイクラッチに用いられるスプリングの一例を図8に示す。図8は、図4のX−X線に沿った断面図と同様の図である。
図8に示すように、スプリング55の一端及び他端は本体部77に対して曲げられたタブ部65及び66を備えており、タブ部65は外輪51の軸方向端面72に係止されており、タブ部66はローラ53の軸方向端面と保持器のフランジ部(不図示)との間に挟持されている。
ここでタブ部65と本体部77との曲げ部、すなわち連結部75は外輪51の縁部に当接するように、またタブ部66と本体部77との連結部76はローラ53の縁部に当接するように設けられている。
このように、連結部が外輪やローラなどの相手部材に当接して干渉すると、ワンウェイクラッチの動作の際に、連結部に不必要な力が加わり、連結部の疲労折損や、摩耗による早期折損などを引き起こし、またローラのスムースな動作にも支障をきたし、ワンウェイクラッチの信頼性の低下につながる。
また、ローラ型ワンウェイクラッチでは、確実な噛み合わせを得るため、トルク伝達部材であるローラや、それを付勢するスプリングなどがポケットから軸方向及び径方向に脱落しないようにする必要がある。
例えば二輪車用のスタータに使用されているワンウェイクラッチでは、特許文献1に開示のように、ローラ及びスプリングが脱落するのを防止するために、外輪の両側に側板を設けることが提案されている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
特開2007−064475号公報
従来のローラ型ワンウェイクラッチでは、スプリングのタブ部と本体部との連結部が外輪やローラなどの相手部材に当接して干渉しているために、ワンウェイクラッチの動作の際に、連結部に不必要な力が加わり、連結部の疲労折損や、摩耗による早期折損などを引き起こし、またローラのスムースな動作にも支障をきたし、ワンウェイクラッチの信頼性の低下につながっていた。
一方で、特許文献1に開示されているように、ローラやスプリングの脱落防止のために外輪の軸方向の両側に側板を設けることが必要であった。また、ワンウェイクラッチが内輪に装着される前の状態では、ローラやスプリングの径方向への脱落防止手段を別に設けることが必要であった。いずれの場合でも、コスト低減の支障となっていた。
従って、ワンウェイクラッチの噛み合い及び空転において従来に比べて信頼性が向上しており、且つ従来に比べてコストが低減した、ローラ及びスプリングの脱落防止手段が設けられたローラ型ワンウェイクラッチが望まれている。
そこで本発明ではローラ型ワンウェイクラッチにおいて、ローラを付勢するスプリングを、本体部とタブ部との間の連結部が相手部材に干渉しないように設けることによって、信頼性の向上したローラ型ワンウェイクラッチを提供し、またトルク伝達部材であるローラや、それを付勢するスプリングなどがポケットから軸方向及び径方向に脱落しないようにするために従来設けられていた側板を用いずに脱落を防止することによって、コスト低減を実現することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明のローラ型ワンウェイクラッチは、
カム面を有する凹部として形成された少なくとも一つのポケットを内周に備え、軸方向一端面の内径側に段部が設けられている環状の外輪と、
外輪に対して半径方向内径側に離間され、相対回転自在に同心状に配置され、環状の外周軌道面を有する内輪と、
ポケット内に配置されて内輪の外周軌道面と外輪の内周カム面との間でトルクを伝達するローラと、
ポケット内で外輪とローラとの間に配置され、前記ローラを前記カム面との係合方向に付勢するスプリングと、を備えるワンウェイクラッチにおいて、
スプリングは、一端で外輪に固定され、他端でローラに係合し、一端及び他端のそれぞれは、スプリングの本体部に対して曲げ部で連続しており、曲げ部に外輪及びローラとの干渉を防止する干渉防止部が設けられていることを特徴としている。
また、本発明のローラ型ワンウェイクラッチは、スプリングはアコーディオンスプリングであり、本体部は蛇腹状であり、干渉防止部は曲げ部から外側に湾曲する湾曲部であることを特徴としている。
本発明のローラ型ワンウェイクラッチでは、スプリングのタブ部と本体部との連結部が外輪やローラなどの相手部材に当接しないように設けることにより、連結部と相手部材との干渉を避けることができ、ワンウェイクラッチの動作の際に、連結部に不必要な力が加わることにより、連結部の疲労折損や、摩耗による早期折損などを引き起こすこと、またローラのスムースな動作にも支障をきたすことを防止し、より信頼性が向上したローラ型ワンウェイクラッチが可能となる。
加えて、外輪と、円周方向ではローラ径より小さい円周方向の窓幅を持ち、径方向には貫通しているが、軸方向では両端部とも閉じられている、すなわちローラが着座するように四辺の囲まれたほぼ矩形の窓とポケットの軸方向片側端部にフランジを持った保持器とによりローラの軸方向及び内径方向への保持器からの脱落を防止している。
また、保持器のフランジを外輪端面内径部に設けられた段部に嵌合し、このフランジ側外輪端面にジェネレータなどを固定することにより、保持器の脱落を防止している。
さらに、スプリングの一方の端部を外輪端面に固定することにより、スプリングの脱落を防止している。
従って、従来のローラ型ワンウェイクラッチに必要であった側板が廃止でき、コストを低減することができる。
また、保持器が外輪に対して相対回転自在であることにより、径方向のローラの脱落を防止するために、保持器の円周方向の窓幅をローラ径より小さくしても、ワンウェイクラッチ作動の際の、噛み合い時のローラの移動、また空転時のローラの移動において保持器がローラの動きを妨害しないため、スムースな噛み合い及び空転が可能となり、また全てのローラの動きに対し、保持器が同期作用を及ぼし、より噛み合い信頼性が向上したローラ型ワンウェイクラッチが可能となる。
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一又は対応部分を示すものである。また、以下に説明する実施例は例示として本発明を示しているに過ぎず、その他の変更が可能なことは言うまでもない。
図1は、本発明の一実施例のローラ型ワンウェイクラッチを示す正面図であり、図3は図1の裏側より見た正面図である。また、図2は、図3のA−O−A線に沿った断面図である。
図1乃至図3は、ローラがカム面に噛み合っている状態、すなわちワンウェイクラッチが高負荷の下で噛み合い、ロックしている状態を示している。
図1乃至図3に示すように、ローラ型ワンウェイクラッチ30は、カム面12を有する凹部として形成された複数のポケット4を内周に備えた環状の外輪1と、外輪1に対して半径方向内径側に離間され、相対回転自在に同心状に配置され、環状の外周軌道面11を有する内輪2と、ポケット4内に配置されて内輪2の外周軌道面11と外輪1の内周カム面12との間でトルクを伝達するローラ3と、ポケット4内に配置され、ローラ3をカム面12との係合方向に付勢するスプリング5と、ローラ3を保持する保持器6とから成っている。保持器6は、外輪1及び内輪2のいずれにも固定されておらず、外輪1及び内輪2に対して相対回動自在となっている。
図7は、本実施例のワンウェイクラッチを組み込んだ動力伝達機構の模式図である。ワンウェイクラッチ30の内輪2にクランクシャフト31が嵌合し、ジェネレータ32がボルト7によって外輪1の軸方向端面21に取り付けられている。
不図示のスタータモータからの駆動力がワンウェイクラッチ30のカム機構によりクランクシャフト31に伝達される。
本実施例においては、外輪1に設けられるポケット4は、円周方向等配に3箇所設けられている。また、外輪1をジェネレータ32に固定するために用いられ、軸方向に貫通するボルト孔8も円周方向等分に3箇所設けられており、ポケット4とボルト孔8とは等間隔で交互に配置されている。もちろん、ポケット4の数は、トルクの大きさに応じて、例えば3乃至6個などの複数個の設定が可能であることは言うまでもない。
図2及び図3に示すように、ローラ3を保持する保持器6は、円筒部10と、円筒部10の軸方向一端部から外径方向へ延在する環状のフランジ部17を備えている。尚、図3では、フランジ部17は、ポケット4が見えるように一部破断して示している。
また、保持器6は、ローラ3の数に対応して、窓18を有する。窓18は、径方向には貫通しているが、軸方向では、フランジ部17側も、フランジ部17と対向する端部19側でも閉じられている。円周方向では、ローラ径よりも小さな窓幅となっている。すなわち、ローラ3は、四辺の囲まれたほぼ矩形の窓18内に着座しており、ローラ3の内径方向への脱落を防止できる。窓18とローラ3との関係を示すため、図1においては、図中一番上の窓18は、端部19を破断して示している。
図2及び図3に示すように、外輪1の軸方向端面21の内径部に環状の段部13が設けられ、段部13に保持器6のフランジ部17が嵌合している。段部13の軸方向深さは、フランジ部17の厚さよりわずかに大きくしてあり、フランジ部17が段部13に嵌合すると、外輪1の軸方向端面21とフランジ部17の軸方向端面との間にはクリアランスが生じる。このため、保持器6が外輪1に対して相対回動自在となり、保持器6の軸方向への抜け止めが可能となる。
スプリング5の一方の端部、すなわちタブ15は、図1に示すように外輪1の軸方向端面22に溶接により固定され、他方の端部、すなわちタブ16は、図3に示すようにローラ3の軸方向端面と保持器6のフランジ部17との間に挟持されている。このように構成したため、スプリング5自体が外輪1に対して固定状態に支持され、スプリング5の脱落を防止できると同時に、ローラ3の軸方向への脱落を防止できる。
本実施例では、スプリング5の端部15は、図1及び図5に示すように、スポット溶接で外輪1に固定されている。スポット溶接部36は、端部15に対して2箇所設ける。しかしながら、この端部15の固定には、その他の方法、例えば、溶接、接着、ハンダ付け等の方法も用いることができる。
図4は、図1のポケット4周辺を拡大した部分正面図である。図4は、図1と異なり、ローラ3はカム面12から離れ、非ロック状態のワンウェイクラッチ30を示している。
図5は図4のポケット4を拡大したX−X線に沿った断面図であり、図6は本実施例のスプリング5を拡大した断面図である。
図6に示すように、スプリング5は、外輪1の軸方向端面22にスポット溶接で固定される一方の端部は、蛇腹状の本体部27からほぼ直角に曲げられた曲げ部25を介して本体部27から一体に連続するタブ部15として形成されている。一方、他端部も、同様に本体部27からほぼ直角に曲げられた曲げ部26を介して本体部27から一体的に連続するタブ部16として形成されている。尚、図6は、スプリング5にほとんど負荷のかかっていない状態で示している。
タブ部15は、図1及び図5に示すように外輪1の軸方向端面22にスポット溶接により固定されている。一方、タブ部16は、図3及び図5に示すようにローラ3の軸方向端面と保持器6のフランジ部17との間に挟持されている。
このように構成したため、スプリング5自体が外輪1に対して固定状態に支持され、スプリング5の脱落を防止できると同時に、ローラ3の軸方向への脱落を防止できる。
また図6に詳細を示すように、曲げ部25及び曲げ部26にはそれぞれ外側に湾曲した湾曲部37及び38が形成されている。湾曲部37及び38の内側には図示のように空間が画成されている。スプリング5に負荷のかかった状態を示す図5から分かるように、この空間により、湾曲部37と外輪1の周方向縁部との間には所定のクリアランスが生まれる。また、湾曲部38とローラ3の周方向縁部との間にも所定のクリアランスが生まれる。これにより、スプリング5の曲げ部25と26がそれぞれ外輪1とローラ3と当接して干渉することを防止できる。
湾曲部37及び38は、外輪1及びローラ3との干渉を避けるために、当接しないような構成を取るならば、その他の形状にすることも可能である。例えば、外側に突出する矩形の形状にすることも可能である。
このように曲げ部25及び26を設けることによって、ワンウェイクラッチ30の動作の際に、曲げ部が外輪1またはローラ3に接触することによって曲げ部に不必要な力が加わることはなく、曲げ部の疲労折損や、摩耗による早期折損などを引き起こすこと、またローラのスムースな動作にも支障をきたすことを避けることができる。
曲げ部25及び26は、プレス加工により本体部27から連続するように本体部27と一体に形成することができる。
図1は、本発明の一実施例のローラ型ワンウェイクラッチを示す正面図であり、高負荷で噛み合っている時の状態を示している。 図2は、図3のA−O−A線に沿った断面図である。 図3は、図1の裏側より見た正面図である。 図4は、図1のポケット4周辺を拡大した部分正面図である。 図5は、本発明の一実施例のローラ型ワンウェイクラッチにおけるポケットを拡大した、図4のX−X線に沿った断面図である。 図6は、本発明の一実施例のローラ型ワンウェイクラッチにおけるスプリングを拡大した正面図である。 図7は、本発明の一実施例のローラ型ワンウェイクラッチを組み込んだ動力伝達機構の模式図である。 図8は、図4のX−X線に沿った従来のポケット周辺の断面図である。
符号の説明
1 外輪
2 内輪
3 ローラ
4 ポケット
5 スプリング
6 保持器
7 ボルト
8 ボルト孔
10 円筒部
11 内輪の外周軌道面
12 カム面
13 段部
15 スプリングのタブ部
16 スプリングのタブ部
17 フランジ部
18 窓
19 保持器の端部
21 外輪の軸方向端面
22 外輪の軸方向端面
25 曲げ部
26 曲げ部
27 スプリングの本体部
30 ローラ型ワンウェイクラッチ
31 クランクシャフト
32 ジェネレータ
37 湾曲部
38 湾曲部

Claims (3)

  1. 内周にカム面を有する少なくとも一つのポケットが形成され、軸方向一端面の内径側に段部が設けられている外輪と、
    前記外輪に対して半径方向内径側に離間され、相対回転自在に同心状に配置された内輪と、
    前記ポケット内に配置され、前記カム面に係合し、前記外輪と前記内輪との間でトルクを伝達するローラと、
    円筒部と、前記円筒部から外径方向へ延在し、前記外輪の前記段部に嵌合するフランジ部を備え、前記ローラの径よりも小さい円周方向の窓幅を有し、前記ローラを保持する窓が前記円筒部に設けられている、前記外輪に対して相対回動自在である保持器と、
    前記ポケット内で前記外輪と前記ローラとの間に配置され、前記ローラを前記カム面との係合方向に付勢するスプリングと、を備えるワンウェイクラッチにおいて、
    前記スプリングは、一端で前記外輪に固定され、他端で前記ローラに係合し、前記一端及び他端のそれぞれは、前記スプリングの本体部に対して曲げ部で連続しており、前記曲げ部に前記外輪及び前記ローラとの干渉を防止する干渉防止部が設けられ、前記干渉防止部は前記外輪及び前記ローラの周方向縁部との間にクリアランスを形成することを特徴とするワンウェイクラッチ。
  2. 前記スプリングはアコーディオンスプリングであり、前記本体部は蛇腹状であり、前記干渉防止部は前記曲げ部から外側に湾曲する湾曲部であることを特徴とする請求項1に記載のワンウェイクラッチ。
  3. 前記スプリングは前記外輪と前記ローラとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のローラ型ワンウェイクラッチ。
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