[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る回転磁界センサの概略の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る回転磁界センサの概略の構成を示す斜視図である。図2は、本実施の形態における方向と角度の定義を示す説明図である。
図1に示したように、本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、基準位置における回転磁界MFの方向が基準方向に対してなす角度を検出するものである。図1には、方向が回転する回転磁界MFを発生する手段の例として、円柱状の磁石2を示している。この磁石2は、円柱の中心軸を含む仮想の平面を中心として対称に配置されたN極とS極とを有している。この磁石2は、円柱の中心軸を中心として回転する。これにより、磁石2が発生する回転磁界MFの方向は、円柱の中心軸を含む回転中心Cを中心として回転する。回転磁界センサ1は、磁石2の一方の端面に対向するように配置される。なお、後で、本実施の形態における変形例で説明するように、方向が回転する回転磁界MFを発生する手段は、図1に示した磁石2に限られるものではない。
ここで、図2を参照して、本実施の形態における方向と角度の定義について説明する。まず、図1に示した回転中心Cに平行で、磁石2の一方の端面から回転磁界センサ1に向かう方向をZ方向と定義する。次に、Z方向に垂直な仮想の平面上において、互いに直交する2つの方向をX方向とY方向と定義する。図2では、X方向を右側に向かう方向として表し、Y方向を上側に向かう方向として表している。また、X方向とは反対の方向を−X方向と定義し、Y方向とは反対の方向を−Y方向と定義する。
基準位置PRは、回転磁界センサ1が回転磁界MFを検出する位置である。基準位置PRは、例えば、回転磁界センサ1が配置されている位置とする。基準方向DRは、Y方向とする。基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度を記号θで表す。回転磁界MFの方向DMは、図2において時計回り方向に回転するものとする。角度θは、基準方向DRから時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに負の値で表す。
回転磁界センサ1は、基準位置PRにおいて、回転磁界MFの第1の方向D1の成分と、回転磁界MFの第2の方向D2の成分とを検出する。本実施の形態では、第2の方向D2は、第1の方向D1に直交している。また、本実施の形態では、第2の方向D2は、基準方向DR(Y方向)と一致している。第1の方向D1は、第2の方向D2(基準方向DR)から90°回転した方向である。
次に、図3を参照して、回転磁界センサ1の構成について詳しく説明する。図3は、回転磁界センサ1の構成を示す回路図である。回転磁界センサ1は、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を検出して、その強度を表す第1の信号S1を出力する第1の検出回路11と、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を検出して、その強度を表す第2の信号S2を出力する第2の検出回路12と、第1の信号S1および第2の信号S2に基づいて、基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度θと対応関係を有する角度検出値θsを算出する演算回路13とを備えている。演算回路13は、例えば、マイクロコンピュータによって実現することができる。角度検出値θsの算出方法については、後で詳しく説明する。
第1の信号S1と第2の信号S2は、互いに等しい信号周期Tで周期的に変化する。本実施の形態では、第2の信号S2の位相は、第1の信号S1の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。ただし、磁気抵抗効果素子の作製の精度等の観点から、第1の信号S1と第2の信号S2の位相差は、信号周期Tの1/4の奇数倍から、わずかにずれていてもよい。以下の説明では、第1の信号S1の位相と第2の信号S2の位相の関係が上記の好ましい関係になっているものとする。
第1および第2の検出回路11,12は、それぞれ、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子列(以下、MR素子列と記す。)を含んでいる。各MR素子列は、直列に接続された複数の磁気抵抗効果素子(以下、MR素子と記す。)によって構成されている。後で詳しく説明するが、各MR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、回転磁界の方向に応じて磁化の方向が変化する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。各MR素子列を構成する複数のMR素子の数は、2以上の偶数である。各MR素子列を構成する複数のMR素子は、MR素子の対を1つ以上含んでいる。対を構成する2つのMR素子における磁化固定層の磁化方向は、0°および180°を除く所定の相対角度をなしている。
第1および第2の検出回路11,12は、それぞれ、少なくとも1つのMR素子列として、直列に接続された2つのMR素子列を含んでいてもよい。あるいは、第1および第2の検出回路11,12は、それぞれ、少なくとも1つのMR素子列として、直列に接続された第1および第2のMR素子列と、直列に接続された第3および第4のMR素子列とを含んでいてもよい。この場合、第1ないし第4のMR素子列はホイートストンブリッジ回路を構成していてもよい。以下、第1ないし第4のMR素子列が上記ホイートストンブリッジ回路を構成する場合の例について説明する。
第1の検出回路11は、ホイートストンブリッジ回路14と、差分検出器15とを有している。ホイートストンブリッジ回路14は、電源ポートV1と、グランドポートG1と、2つの出力ポートE11,E12と、直列に接続された第1および第2のMR素子列R11,R12と、直列に接続された第3および第4のMR素子列R13,R14とを含んでいる。MR素子列R11〜R14は、いずれも、直列に接続された複数のMR素子によって構成されている。第1ないし第4のMR素子列R11〜R14は、それぞれ、第1の端部と第2の端部とを有している。
第1のMR素子列R11の第1の端部と第3のMR素子列R13の第1の端部は、電源ポートV1に接続されている。第1のMR素子列R11の第2の端部は、第2のMR素子列R12の第1の端部と出力ポートE11に接続されている。第3のMR素子列R13の第2の端部は、第4のMR素子列R14の第1の端部と出力ポートE12に接続されている。第2のMR素子列R12の第2の端部と第4のMR素子列R14の第2の端部は、グランドポートG1に接続されている。電源ポートV1には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG1はグランドに接続される。差分検出器15は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1の信号S1として演算回路13に出力する。
第2の検出回路12は、ホイートストンブリッジ回路16と、差分検出器17とを有している。ホイートストンブリッジ回路16は、電源ポートV2と、グランドポートG2と、2つの出力ポートE21,E22と、直列に接続された第1および第2のMR素子列R21,R22と、直列に接続された第3および第4のMR素子列R23,R24とを含んでいる。MR素子列R21〜R24は、いずれも、直列に接続された複数のMR素子によって構成されている。第1ないし第4のMR素子列R21〜R24は、それぞれ、第1の端部と第2の端部とを有している。
第1のMR素子列R21の第1の端部と第3のMR素子列R23の第1の端部は、電源ポートV2に接続されている。第1のMR素子列R21の第2の端部は、第2のMR素子列R22の第1の端部と出力ポートE21に接続されている。第3のMR素子列R23の第2の端部は、第4のMR素子列R24の第1の端部と出力ポートE22に接続されている。第2のMR素子列R22の第2の端部と第4のMR素子列R24の第2の端部は、グランドポートG2に接続されている。電源ポートV2には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG2はグランドに接続される。差分検出器17は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第2の信号S2として演算回路13に出力する。
本実施の形態では、ホイートストンブリッジ回路(以下、ブリッジ回路と記す。)14,16に含まれる全てのMR素子として、TMR素子を用いている。なお、TMR素子の代りにGMR素子を用いてもよい。TMR素子またはGMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、回転磁界MFの方向に応じて磁化の方向が変化する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。TMR素子では、非磁性層はトンネルバリア層である。GMR素子では、非磁性層は非磁性導電層である。TMR素子またはGMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。図3において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化方向を表し、白抜きの矢印は、MR素子における自由層の磁化の方向を表している。
第1の検出回路11では、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化するように、複数のMR素子の磁化固定層の磁化方向が固定されている。従って、第1の方向D1は、第1の検出回路11が回転磁界MFを検出するときの基準の方向であり、第1の検出回路11は、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を検出して、その強度を表す第1の信号S1を出力する。図3に示した例では、回転磁界MFのX方向の成分の強度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化するように、複数のMR素子の磁化固定層の磁化方向が固定されている。この例では、第1の方向D1は、X方向と同じ方向になる。
第2の検出回路12では、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化するように、複数のMR素子の磁化固定層の磁化方向が固定されている。従って、第2の方向D2は、第2の検出回路12が回転磁界MFを検出するときの基準の方向であり、第2の検出回路12は、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を検出して、その強度を表す第2の信号S2を出力する。図3に示した例では、回転磁界MFのY方向の成分の強度に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化するように、複数のMR素子の磁化固定層の磁化方向が固定されている。この例では、第2の方向D2は、Y方向と同じ方向になる。
次に、各MR素子列を構成する複数のMR素子について詳しく説明する。まず、ブリッジ回路14の第1ないし第4のMR素子列R11,R12,R13,R14を構成する複数のMR素子について説明する。第1ないし第4のMR素子列R11,R12,R13,R14は、それぞれ、直列に接続された2つのMR素子によって構成されている。第1のMR素子列R11は、一対のMR素子R111,R112によって構成されている。第2のMR素子列R12は、一対のMR素子R121,R122によって構成されている。第3のMR素子列R13は、一対のMR素子R131,R132によって構成されている。第4のMR素子列R14は、一対のMR素子R141,R142によって構成されている。
MR素子R111の一端は、第1のMR素子列R11の第1の端部を構成している。MR素子R111の他端は、MR素子R112の一端に接続されている。MR素子R112の他端は、第1のMR素子列R11の第2の端部を構成している。
MR素子R121の一端は、第2のMR素子列R12の第1の端部を構成している。MR素子R121の他端は、MR素子R122の一端に接続されている。MR素子R122の他端は、第2のMR素子列R12の第2の端部を構成している。
MR素子R131の一端は、第3のMR素子列R13の第1の端部を構成している。MR素子R131の他端は、MR素子R132の一端に接続されている。MR素子R132の他端は、第3のMR素子列R13の第2の端部を構成している。
MR素子R141の一端は、第4のMR素子列R14の第1の端部を構成している。MR素子R141の他端は、MR素子R142の一端に接続されている。MR素子R142の他端は、第4のMR素子列R14の第2の端部を構成している。
なお、第1のMR素子列R11を構成するMR素子R111,R112は、第1のMR素子列R11の第1の端部と第2の端部との間で直列に接続されていればよく、それらの順序は図3に示した例とは逆であってもよい。同様に、他のMR素子列の各々を構成する2つのMR素子も、各MR素子列の第1の端部と第2の端部との間で直列に接続されていればよく、それらの順序は図3に示した例とは逆であってもよい。
ここで、MR素子R111,R112,R121,R122,R131,R132,R141,R142の各々における磁化固定層の磁化方向について説明する。図4は、第1のMR素子列R11を構成する一対のMR素子R111,R112の磁化固定層の磁化方向を示す説明図である。図4において、符号D111,D112を付した矢印は、それぞれ、MR素子R111,R112の磁化固定層の磁化方向を表している。MR素子R111,R112の磁化固定層の磁化方向D111,D112は、これらの中間の方向が第1の方向D1と同じ方向(X方向)になるように固定されている。MR素子R111,R112の磁化固定層の磁化方向D111,D112は、0°および180°を除く所定の相対角度2φをなしている。MR素子R111の磁化固定層の磁化方向D111は、第1の方向D1から時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。MR素子R112の磁化固定層の磁化方向D112は、第1の方向D1から反時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。
第2のMR素子列R12を構成する一対のMR素子R121,R122の磁化固定層の磁化方向は、これらの中間の方向が第1の方向D1とは反対の方向(−X方向)になるように固定されている。第3のMR素子列R13を構成する一対のMR素子R131,R132の磁化固定層の磁化方向も、これらの中間の方向が第1の方向D1とは反対の方向になるように固定されている。MR素子R131の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R121の磁化固定層の磁化方向と同じである。MR素子R132の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R122の磁化固定層の磁化方向と同じである。MR素子R121,R131の磁化固定層の磁化方向は、図4に示したMR素子R111の磁化固定層の磁化方向D111の反対方向である。MR素子R122,R132の磁化固定層の磁化方向は、図4に示したMR素子R112の磁化固定層の磁化方向D112の反対方向である。
MR素子R121,R122の磁化固定層の磁化方向は、相対角度2φをなしている。MR素子R131,R132の磁化固定層の磁化方向も、相対角度2φをなしている。MR素子R121,R131の磁化固定層の磁化方向は、第1の方向D1とは反対の方向から時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。MR素子R122,R132の磁化固定層の磁化方向は、第1の方向D1とは反対の方向から反時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。
第4のMR素子列R14を構成する一対のMR素子R141,R142の磁化固定層の磁化方向は、これらの中間の方向が第1の方向D1と同じ方向(X方向)になるように固定されている。MR素子R141の磁化固定層の磁化方向は、図4に示したMR素子R111の磁化固定層の磁化方向D111と同じ方向である。MR素子R142の磁化固定層の磁化方向は、図4に示したMR素子R112の磁化固定層の磁化方向D112と同じ方向である。
MR素子R141,R142の磁化固定層の磁化方向は、相対角度2φをなしている。MR素子R141の磁化固定層の磁化方向は、第1の方向D1から時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。MR素子R142の磁化固定層の磁化方向は、第1の方向D1から反時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。
次に、ブリッジ回路16の第1ないし第4のMR素子列R21,R22,R23,R24を構成する複数のMR素子について説明する。第1ないし第4のMR素子列R21,R22,R23,R24は、それぞれ、直列に接続された2つのMR素子によって構成されている。第1のMR素子列R21は、一対のMR素子R211,R212によって構成されている。第2のMR素子列R22は、一対のMR素子R221,R222によって構成されている。第3のMR素子列R23は、一対のMR素子R231,R232によって構成されている。第4のMR素子列R24は、一対のMR素子R241,R242によって構成されている。
MR素子R211の一端は、第1のMR素子列R21の第1の端部を構成している。MR素子R211の他端は、MR素子R212の一端に接続されている。MR素子R212の他端は、第1のMR素子列R21の第2の端部を構成している。
MR素子R221の一端は、第2のMR素子列R22の第1の端部を構成している。MR素子R221の他端は、MR素子R222の一端に接続されている。MR素子R222の他端は、第2のMR素子列R22の第2の端部を構成している。
MR素子R231の一端は、第3のMR素子列R23の第1の端部を構成している。MR素子R231の他端は、MR素子R232の一端に接続されている。MR素子R232の他端は、第3のMR素子列R23の第2の端部を構成している。
MR素子R241の一端は、第4のMR素子列R24の第1の端部を構成している。MR素子R241の他端は、MR素子R242の一端に接続されている。MR素子R242の他端は、第4のMR素子列R24の第2の端部を構成している。
なお、第1のMR素子列R21を構成するMR素子R211,R212は、第1のMR素子列R21の第1の端部と第2の端部との間で直列に接続されていればよく、それらの順序は図3に示した例とは逆であってもよい。同様に、他のMR素子列の各々を構成する2つのMR素子も、各MR素子列の第1の端部と第2の端部との間で直列に接続されていればよく、それらの順序は図3に示した例とは逆であってもよい。
ここで、MR素子R211,R212,R221,R222,R231,R232,R241,R242の各々における磁化固定層の磁化方向について説明する。第1のMR素子列R21を構成する一対のMR素子R211,R212の磁化固定層の磁化方向は、これらの中間の方向が第2の方向D2と同じ方向(Y方向)になるように固定されている。第4のMR素子列R24を構成する一対のMR素子R241,R242の磁化固定層の磁化方向も、これらの中間の方向が第2の方向D2と同じ方向になるように固定されている。MR素子R241の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R211の磁化固定層の磁化方向と同じ方向である。MR素子R242の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R212の磁化固定層の磁化方向と同じ方向である。MR素子R211,R241の磁化固定層の磁化方向は、図4に示したMR素子R112の磁化固定層の磁化方向D112を反時計回り方向に90°回転させた方向である。MR素子R212,R242の磁化固定層の磁化方向は、図4に示したMR素子R111の磁化固定層の磁化方向D111を反時計回り方向に90°回転させた方向である。
MR素子R211,R212の磁化固定層の磁化方向は、相対角度2φをなしている。MR素子R241,R242の磁化固定層の磁化方向も、相対角度2φをなしている。MR素子R211,R241の磁化固定層の磁化方向は、第2の方向D2から反時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。MR素子R212,R242の磁化固定層の磁化方向は、第2の方向D2から時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。
第2のMR素子列R22を構成する一対のMR素子R221,R222の磁化固定層の磁化方向は、これらの中間の方向が第2の方向D2とは反対の方向(−Y方向)になるように固定されている。第3のMR素子列R23を構成する一対のMR素子R231,R232の磁化固定層の磁化方向も、これらの中間の方向が第2の方向D2とは反対の方向になるように固定されている。MR素子R231の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R221の磁化固定層の磁化方向と同じ方向である。MR素子R232の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R222の磁化固定層の磁化方向と同じ方向である。MR素子R221,R231の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R212,R242の磁化固定層の磁化方向の反対方向である。MR素子R222,R232の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R211,R241の磁化固定層の磁化方向の反対方向である。
MR素子R221,R222の磁化固定層の磁化方向は、相対角度2φをなしている。MR素子R231,R232の磁化固定層の磁化方向も、相対角度2φをなしている。MR素子R221,R231の磁化固定層の磁化方向は、第2の方向D2とは反対の方向から時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。MR素子R222,R232の磁化固定層の磁化方向は、第2の方向D2とは反対の方向から反時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。
以上説明したように、第1および第2の検出回路11,12の各MR素子列は、所定の方向に磁化方向が固定された磁化固定層を有する一対のMR素子によって構成されている。第1の検出回路11の第1ないし第4のMR素子列R11,R12,R13,R14は、第1の方向D1(X方向)または第1の方向D1とは反対方向(−X方向)に磁化方向が固定された磁化固定層を有するMR素子を含んでいない。また、第2の検出回路12の第1ないし第4のMR素子列R21,R22,R23,R24は、第2の方向D2(Y方向)または第2の方向D2とは反対方向(−Y方向)に磁化方向が固定された磁化固定層を有するMR素子を含んでいない。
なお、検出回路11,12内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
次に、図5を参照して、回転磁界センサ1におけるブリッジ回路14,16をそれぞれ一体化した2つのユニットの一例について説明する。図5は、ブリッジ回路14,16をそれぞれ一体化したユニットの一例を示す平面図である。図5において、(a)は、ブリッジ回路14を一体化したユニット40Aを示している。図5において、(b)は、ブリッジ回路16を一体化したユニット40Bを示している。ユニット40Aは、基板41Aと、基板41Aの上に設けられたブリッジ回路14とを備えている。ブリッジ回路14の複数のポートは、基板41A上において、基板41Aの周縁の近傍に配置されている。基板41A上には、円形のMR素子配置領域が設けられている。このMR素子配置領域は、円周方向に8個の分割領域に分割されている。この8個の分割領域に、それぞれMR素子R111,R112,R121,R122,R131,R132,R141,R142が配置されている。また、基板41Aには、複数のMR素子と複数のポートとを電気的に接続するため配線が形成されている。
ユニット40Bは、基板41Bと、基板41Bの上に設けられたブリッジ回路16とを備えている。ブリッジ回路16の複数のポートは、基板41B上において、基板41Bの周縁の近傍に配置されている。基板41B上には、円形のMR素子配置領域が設けられている。このMR素子配置領域は、円周方向に8個の分割領域に分割されている。この8個の分割領域に、それぞれMR素子R211,R212,R221,R222,R231,R232,R241,R242が配置されている。また、基板41Bには、複数のMR素子と複数のポートとを電気的に接続するため配線が形成されている。
なお、図5では、ユニット40A,40Bを別体として描いているが、ユニット40A,40Bは、一体化されていてもよい。この場合、1つの基板上に並ぶようにブリッジ回路14,16を設けてもよい。あるいは、基板41A,41BをZ方向に積層してもよい。
次に、図6および図7を参照して、図5に示したユニット40A,40Bにおける任意のMR素子の構成の一例について説明する。図6は、図5における1つの分割領域に設けられた複数の下部電極を示す平面図である。図7は、図5における1つのMR素子の一部を示す斜視図である。この例では、1つのMR素子は、複数の下部電極と、複数のMR膜と、複数の上部電極とを有している。基板41Aまたは41B上の1つの分割領域において、図6に示したように複数の下部電極42が配置されている。個々の下部電極42は細長く、複数の下部電極42は、全体としてミアンダ形状となるように配列されている。下部電極42の長手方向に隣接する2つの下部電極42の間には、間隙が形成されている。図7に示したように、下部電極42の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR膜50が配置されている。MR膜50は、下部電極42側から順に積層された自由層51、非磁性層52、磁化固定層53および反強磁性層54を含んでいる。自由層51は、下部電極42に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層53との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層53の磁化方向を固定する。複数の上部電極43は、複数のMR膜50の上に配置されている。個々の上部電極43は細長く、下部電極42の長手方向に隣接する2つの下部電極42上に配置されて隣接する2つのMR膜50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。複数の上部電極43は、複数の下部電極42と同様に、全体としてミアンダ形状となるように配列されている。このような構成により、図6および図7に示したMR素子は、複数の下部電極42と複数の上部電極43とによって直列に接続された複数のMR膜50を有している。なお、MR膜50における層51〜54の配置は、図7に示した配置とは上下が反対でもよい。
次に、演算回路13における角度検出値θsの算出方法について説明する。本実施の形態では、第2の検出回路12が回転磁界MFを検出するときの基準の方向である第2の方向D2は、第1の検出回路11が回転磁界MFを検出するときの基準の方向である第1の方向D1に直交している。理想的には、第1の検出回路11より出力される第1の信号S1の波形は、角度θに依存したサイン(Sine)波形になり、第2の検出回路12より出力される第2の信号S2の波形は、角度θに依存したコサイン(Cosine)波形になる。この場合、第2の信号S2の位相は、第1の信号S1の位相に対して、信号周期Tの1/4すなわちπ/2(90°)だけ異なっている。
角度θが0°よりも大きく180°よりも小さいときは、第1の信号S1は正の値であり、角度θが180°よりも大きく360°よりも小さいときは、第1の信号S1は負の値である。また、角度θが0°以上90°未満のとき、および270°より大きく360°以下のときは、第2の信号S2は正の値であり、角度θが90°よりも大きく270°よりも小さいときは、第2の信号S2は負の値である。第1の信号S1は、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を表す信号である。第2の信号S2は、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を表す信号である。
演算回路13は、第1の信号S1および第2の信号S2に基づいて、基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度θと対応関係を有する角度検出値θsを算出する。具体的には、例えば、演算回路13は、下記の式(1)によって、θsを算出する。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
θs=atan(S1/S2) …(1)
式(1)におけるatan(S1/S2)は、θsを求めるアークタンジェント計算を表している。なお、360°の範囲内で、式(1)におけるθsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S1とS2の正負の組み合わせにより、θsの真の値が、式(1)におけるθsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。すなわち、S1が正の値のときは、θsは0°よりも大きく180°よりも小さい。S1が負の値のときは、θsは180°よりも大きく360°よりも小さい。S2が正の値のときは、θsは、0°以上90°未満、および270°より大きく360°以下の範囲内である。S2が負の値のときは、θsは90°よりも大きく270°よりも小さい。演算回路13は、式(1)と、上記のS1とS2の正負の組み合わせの判定により、360°の範囲内でθsを求める。
次に、回転磁界センサ1の作用および効果について説明する。回転磁界センサ1では、回転磁界MFの方向DMの回転に伴って、MR素子の抵抗値は周期的に変化する。MR素子の抵抗値が周期的に変化すると、MR素子の両端間の電位差も周期的に変化する。MR素子の抵抗値のうち、周期的に変化する成分の波形は、理想的には正弦曲線(サイン(Sine)波形とコサイン(Cosine)波形を含む)となる。同様に、MR素子の両端間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形は、理想的には正弦曲線となる。しかし、実際には、例えば、MR素子の磁化固定層の磁化方向が回転磁界MF等の影響によって変動する場合や、MR素子の自由層の磁化方向が、自由層の形状異方性や保磁力等の影響によって、回転磁界MFの方向と一致しない場合がある。このような場合には、上記の周期的に変化する成分の波形は、正弦曲線から歪む。
本実施の形態では、第1の検出回路11の第1の信号S1の波形と、第2の検出回路12の第2の信号S2の波形は、理想的には正弦曲線となる。しかし、上述のように、MR素子の両端間の電位差のうち周期的に変化する成分の波形が歪むと、第1の信号S1の波形と第2の信号S2の波形も、正弦曲線から歪む。その結果、第1の信号S1と第2の信号S2に基づいて算出される角度検出値θsは、回転磁界MFの方向DMが理想的に回転する場合に想定される角度検出値θsの理論値に対する角度誤差を含む可能性がある。
上述のように、MR素子の抵抗値のうち周期的に変化する成分の波形が歪むということは、抵抗値の周期的に変化する成分が、理想的な正弦曲線の成分の他に、高調波成分(以下、抵抗値高調波成分と言う。)を含むということである。同様に、MR素子の両端間の電位差のうち周期的に変化する成分の波形が歪むということは、電位差の周期的に変化する成分が、理想的な正弦曲線の成分の他に、高調波成分(以下、電位差高調波成分と言う。)を含むということである。電位差高調波成分は、抵抗値高調波成分に起因して発生する。電位差高調波成分の大きさは、抵抗値高調波成分の大きさに比例する。
本実施の形態では、第1の検出回路11は、直列に接続された第1および第2のMR素子列R11,R12と、直列に接続された第3および第4のMR素子列R13,R14とを含んでいる。第2の検出回路12は、直列に接続された第1および第2のMR素子列R21,R22と、直列に接続された第3および第4のMR素子列R23,R24とを含んでいる。各MR素子列は、直列に接続された一対のMR素子によって構成されている。対を構成する2つのMR素子における磁化固定層の磁化方向は、0°および180°を除く所定の相対角度2φをなしている。
MR素子の両端間の電位差は、回転磁界MFの方向DMの回転に伴って周期的に変化する。MR素子の両端間の電位差のうち、周期的に変化する成分は、理想的な正弦曲線の成分の他に、電位差高調波成分を含む場合がある。この場合、MR素子列(一対のMR素子)の両端間の電位差のうち、周期的に変化する成分も、理想的な正弦曲線の成分の他に、電位差高調波成分を含む場合がある。本実施の形態によれば、対を構成する2つのMR素子の各々において発生する2つの電位差高調波成分が合成されることによって、1つのMR素子における電位差高調波成分に比べて、MR素子列(一対のMR素子)における電位差高調波成分を低減することが可能になる。以下、これについて詳しく説明する。
まず、図4に示した第1のMR素子列R11の抵抗値について説明する。ここで、第1のMR素子列R11、MR素子R111、MR素子R112の各抵抗値を、それぞれR11、Ra、Rbとする。抵抗値Ra,Rbは、それぞれ、回転磁界MFの方向DMの回転に伴って周期的に変化する周期成分と、回転磁界MFの方向DMの変化に依存しない初期成分とを含んでいる。周期成分は、理想的な正弦曲線の成分である理想成分と、周期成分の波形を歪ませる抵抗値高調波成分とを含んでいる。以下の説明では、回転磁界センサ1に含まれる全てのMR素子において、理想成分の振幅は等しいものとする。また、回転磁界センサ1に含まれる全てのMR素子において、初期成分は等しいものとする。
図4に示したように、MR素子R111の磁化固定層の磁化方向D111は、第1の方向D1から時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。従って、MR素子R111における理想成分と抵抗値高調波成分は、初期位相を−φとした、変数θの周期関数である。理想成分の振幅をαで表し、初期成分をβで表すと、MR素子R111の抵抗値Raは、下記の式(2)によって表される。
Ra=−α・sin(θ−φ)−e(θ−φ)+β …(2)
式(2)において、−α・sin(θ−φ)は、理想成分を表している。−e(θ−φ)は、初期位相を−φとした、変数θの周期関数である抵抗値高調波成分を表している。
また、図4に示したように、MR素子R112の磁化固定層の磁化方向D112は、第1の方向D1から反時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。従って、MR素子R112における理想成分と抵抗値高調波成分は、初期位相をφとした、変数θの周期関数である。MR素子R112の抵抗値Rbは、下記の式(3)によって表される。
Rb=−α・sin(θ+φ)−e(θ+φ)+β …(3)
式(3)において、−α・sin(θ+φ)は、理想成分を表している。−e(θ+φ)は、初期位相をφとした、変数θの周期関数である抵抗値高調波成分を表している。
第1のMR素子列R11の抵抗値R11は、式(2),(3)を用いて、下記の式(4)によって表される。
R11=Ra+Rb
=−α・sin(θ−φ)−e(θ−φ)+β
−α・sin(θ+φ)−e(θ+φ)+β
=−α・{sin(θ−φ)+sin(θ+φ)}
−{e(θ−φ)+e(θ+φ)}+2β
=−2α・cosφ・sinθ−{e(θ−φ)+e(θ+φ)}+2β …(4)
次に、第2のMR素子列R12の抵抗値R12と第3のMR素子列R13の抵抗値R13について説明する。前述のように、MR素子R121,R131の磁化固定層の磁化方向は、図4に示したMR素子R111の磁化固定層の磁化方向D111の反対方向である。MR素子R122,R132の磁化固定層の磁化方向は、図4に示したMR素子R112の磁化固定層の磁化方向D112の反対方向である。従って、第2のMR素子列R12の抵抗値R12と第3のMR素子列R13の抵抗値R13は、下記の式(5)によって表される。
R12=R13=α・sin(θ−φ)+e(θ−φ)+β
+α・sin(θ+φ)+e(θ+φ)+β
=α・{sin(θ−φ)+sin(θ+φ)}
+{e(θ−φ)+e(θ+φ)}+2β
=2α・cosφ・sinθ+{e(θ−φ)+e(θ+φ)}+2β …(5)
次に、第4のMR素子列R14の抵抗値R14について説明する。前述のように、MR素子R141の磁化固定層の磁化方向は、図4に示したMR素子R111の磁化固定層の磁化方向D111と同じ方向である。MR素子R142の磁化固定層の磁化方向は、図4に示したMR素子R112の磁化固定層の磁化方向D112と同じ方向である。従って、第4のMR素子列R14の抵抗値R14は、式(4)によって表されるMR素子列R11の抵抗値R11と等しい。
次に、第1のMR素子列R21の抵抗値R21と第4のMR素子列R24の抵抗値R24について説明する。前述のように、MR素子R211,R241の磁化固定層の磁化方向は、図4に示したMR素子R112の磁化固定層の磁化方向D112を反時計回り方向に90°回転させた方向である。MR素子R212,R242の磁化固定層の磁化方向は、図4に示したMR素子R111の磁化固定層の磁化方向D111を反時計回り方向に90°回転させた方向である。従って、第1のMR素子列R21の抵抗値R21と第4のMR素子列R24の抵抗値R24は、下記の式(6)によって表される。
R21=R24=−α・cos(θ+φ)−f(θ+φ)+β
−α・cos(θ−φ)−f(θ−φ)+β
=−α・{cos(θ−φ)+cos(θ+φ)}
−{f(θ−φ)+f(θ+φ)}+2β
=−2α・cosφ・cosθ−{f(θ−φ)+f(θ+φ)}+2β …(6)
なお、式(6)において、f(θ−φ)は、初期位相を−φとした、変数θの周期関数である抵抗値高調波成分を表している。f(θ+φ)は、初期位相をφとした、変数θの周期関数である抵抗値高調波成分を表している。
次に、第2のMR素子列R22の抵抗値R22と第3のMR素子列R23の抵抗値R23について説明する。前述のように、MR素子R221,R231の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R212,R242の磁化固定層の磁化方向の反対方向である。MR素子R222,R232の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R211,R241の磁化固定層の磁化方向の反対方向である。従って、第2のMR素子列R22の抵抗値R22と第3のMR素子列R23の抵抗値R23は、下記の式(7)によって表される。
R22=R23=α・cos(θ−φ)+f(θ−φ)+β
+α・cos(θ+φ)+f(θ+φ)+β
=α・{cos(θ−φ)+cos(θ+φ)}
+{f(θ+φ)+f(θ−φ)}+2β
=2α・cosφ・cosθ+{f(θ−φ)+f(θ+φ)}+2β …(7)
式(4)ないし(7)から理解されるように、各MR素子列の抵抗値の理想成分は、初期位相が0である、変数θのサインまたはコサインの関数である。ここで、MR素子列を構成する2つのMR素子における磁化固定層の磁化方向の中間の方向の磁化方向の磁化固定層を有する仮想のMR素子を考える。各MR素子列の抵抗値の理想成分の位相は、上記の仮想のMR素子の抵抗値の理想成分の位相と同じになる。これにより、本実施の形態によれば、第1の検出回路11は、第1の方向D1または第1の方向D1とは反対方向に磁化方向が固定された磁化固定層を有するMR素子を含んでいなくても、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を検出して、その強度を表す第1の信号S1を出力することができる。同様に、第2の検出回路11は、第2の方向D2または第2の方向D2とは反対方向に磁化方向が固定された磁化固定層を有するMR素子を含んでいなくても、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を検出して、その強度を表す第2の信号S2を出力することができる。
次に、MR素子列における抵抗値高調波成分について説明する。MR素子列の抵抗値は、MR素子の抵抗値と同様に、周期成分と初期成分とを含んでいる。周期成分は、理想成分と抵抗値高調波成分とを含んでいる。式(4)における−{e(θ−φ)+e(θ+φ)}は、第1および第4のMR素子列R11,R14における抵抗値高調波成分を表している。これは、MR素子列R11,R14の各々を構成する2つのMR素子における抵抗値高調波成分−e(θ−φ)と−e(θ+φ)が合成されたものである。式(5)におけるe(θ−φ)+e(θ+φ)は、第2および第3のMR素子列R12,R13における抵抗値高調波成分を表している。これは、MR素子列R12,R13の各々を構成する2つのMR素子における抵抗値高調波成分e(θ−φ)とe(θ+φ)が合成されたものである。式(6)における−{f(θ−φ)+f(θ+φ)}は、第1および第4のMR素子列R21,R24における抵抗値高調波成分を表している。これは、MR素子列R21,R24の各々を構成する2つのMR素子における抵抗値高調波成分−f(θ−φ)と−f(θ+φ)が合成されたものである。式(7)におけるf(θ−φ)+f(θ+φ)は、第2および第3のMR素子列R22,R23における抵抗値高調波成分を表している。これは、MR素子列R22,R23の各々を構成する2つのMR素子における抵抗値高調波成分f(θ−φ)とf(θ+φ)が合成されたものである。
本実施の形態では、MR素子列における抵抗値高調波成分の絶対値の最大値が、MR素子における抵抗値高調波成分の絶対値の最大値よりも小さくなるように、φを選択する。具体的には、式(4)、(5)における{e(θ−φ)+e(θ+φ)}の絶対値の最大値が、e(θ−φ)の絶対値の最大値およびe(θ+φ)の絶対値の最大値よりも小さくなり、式(6)、(7)における{f(θ−φ)+f(θ+φ)}の絶対値の最大値が、f(θ−φ)の絶対値の最大値およびf(θ+φ)の絶対値の最大値よりも小さくなるように、φを選択する。このようにφを選択することによって、MR素子列における電位差高調波成分の絶対値の最大値を、MR素子における電位差高調波成分の絶対値の最大値よりも小さくすることができる。なお、MR素子列における電位差高調波成分は、MR素子列を構成する2つのMR素子における電位差高調波成分が合成されたものである。本実施の形態では、特に、MR素子列における抵抗値高調波成分の絶対値の最大値が最小となるようにφを選択することが好ましい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、MR素子列を構成する2つのMR素子における電位差高調波成分が合成されることによって、個々のMR素子に比べて、MR素子列における電位差高調波成分を低減することが可能になる。これにより、本実施の形態によれば、第1の検出回路11の第1の信号S1の波形と、第2の検出回路12の第2の信号S2の波形が、正弦曲線から歪むことを抑制することができる。その結果、本実施の形態によれば、回転磁界センサ1の検出角度の誤差を低減することが可能になる。
次に、MR素子列における抵抗値高調波成分の絶対値の最大値が最小となるφの具体例について説明する。まず、MR素子における抵抗値高調波成分が、理想成分に対する3次の高調波成分のみを含む場合について説明する。ここでは、3次の高調波成分の振幅をγとし、一例として、式(4),(5)におけるe(θ−φ)を−γ・sin3(θ−φ)と表し、式(4),(5)におけるe(θ+φ)を−γ・sin3(θ+φ)と表し、式(6),(7)におけるf(θ−φ)をγ・cos3(θ−φ)と表し、式(6),(7)におけるf(θ+φ)をγ・cos3(θ+φ)と表す。この場合、式(4),(5)では、e(θ+φ)+e(θ−φ)=−2γ・cos3φ・sin3θとなる。また、式(6),(7)では、f(θ+φ)+f(θ−φ)=2γ・cos3φ・cos3θとなる。ここで、φをπ/6(30°)とすると、式(4),(5)におけるe(θ+φ)+e(θ−φ)と、式(6),(7)におけるf(θ+φ)+f(θ−φ)は、いずれも0になる。従って、MR素子における抵抗値高調波成分が3次の高調波成分のみを含む場合、φをπ/6とすると、MR素子列における抵抗値高調波成分の絶対値の最大値は0(最小)となる。
図8および図9は、MR素子の両端間の電位差のうち周期的に変化する成分の波形の例を示す波形図である。なお、図8および図9では、MR素子における抵抗値高調波成分が3次の高調波成分のみを含む場合の波形を示している。また、図8および図9は、φをπ/6にすることによって、MR素子列における電位差高調波成分が低減されることを示す説明図でもある。図8において、(a)は、MR素子R121の両端間の電位差のうち周期的に変化する成分の波形を示している。図8において、(b)は、MR素子R122の両端間の電位差のうち周期的に変化する成分の波形を示している。図9において、(a)は、MR素子R221の両端間の電位差のうち周期的に変化する成分の波形を示している。図9において、(b)は、MR素子R222の両端間の電位差のうち周期的に変化する成分の波形を示している。図8および図9において、横軸は角度θを示し、縦軸の「規格化出力」は、電位差の周期的に変化する成分に含まれる理想的な正弦曲線の成分の最大値が1になるように表した電位差の値を示している。符号60,65,70,75は、MR素子の両端間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形を示している。符号61,66,71,76は、理想的な正弦曲線を示している。符号63,68,73,78で示す波形は、MR素子における抵抗値高調波成分に対応する電位差高調波成分を示している。なお、図8および図9に示した各波形は、シミュレーションによって作成したものである。
電位差の周期的に変化する成分(符号60,65,70,75)の周期は、第1および第2の信号S1,S2の信号周期Tと等しくなる。また、図8および図9に示した例では、MR素子における抵抗値高調波成分(3次の高調波成分)に対応する電位差高調波成分(符号63,68,73,78)は、信号周期Tの1/3、すなわち2π/3(120°)の周期で、電位差の周期的に変化する成分に同期して変化する。この場合、電位差の周期的に変化する成分の波形は、図8および図9に示したように歪む。
なお、3次の抵抗値高調波成分に起因して、電位差の周期的に変化する成分の波形が正弦曲線から歪む例は、図8および図9に示した例に限られない。図8および図9に示した例では、電位差の周期的に変化する成分の波形は、理想的な正弦曲線から三角波形に近づくように歪んでいる。しかし、図8および図9に示した例とは逆に、3次の抵抗値高調波成分に起因して、電位差の周期的に変化する成分の波形が、理想的な正弦曲線から矩形波形に近づくように歪む場合もある。なお、MR素子における抵抗値高調波成分が2次の高調波成分を含む場合については、後で説明する。
前述のように、MR素子における抵抗値高調波成分が3次の高調波成分のみを含む場合、MR素子列における抵抗値高調波成分の絶対値の最大値が最小となるφはπ/6(30°)である。図8および図9は、φをπ/6にすることによって、MR素子列における電位差高調波成分が低減されることを示している。図8に示したように、MR素子R121における電位差高調波成分(符号63)の位相とMR素子R122における電位差高調波成分(符号68)の位相は、互いに逆相になる。本実施の形態では、MR素子R121,R122は、第2のMR素子列R12の第1の端部と第2の端部との間で直列に接続されている。これにより、第2のMR素子列R12において、MR素子R121,R122における電位差高調波成分が相殺される。その結果、MR素子R121,R122に比べて、第2のMR素子列R12における電位差高調波成分を低減することができる。
図9に示したように、MR素子R221における電位差高調波成分(符号73)の位相とMR素子R222における電位差高調波成分(符号78)の位相は、互いに逆相になる。本実施の形態では、MR素子R221,R222は、第2のMR素子列R22の第1の端部と第2の端部との間で直列に接続されている。これにより、第2のMR素子列R22において、MR素子R221,R222における電位差高調波成分が相殺される。その結果、MR素子R221,R222に比べて、第2のMR素子列R22における電位差高調波成分を低減することができる。
図10は、MR素子の対の両端間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形を示す波形図である。図10において、横軸は角度θを示し、縦軸は図8および図9と同じ規格化出力を示している。符号91で示す波形は、MR素子R121,R122によって構成されるMR素子の対の両端間の電位差、すなわち第2のMR素子列R12の第1の端部と第2の端部との間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形を示している。符号92で示す波形は、MR素子R221,R222によって構成されるMR素子の対の両端間の電位差、すなわち第2のMR素子列R22の第1の端部と第2の端部との間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形を示している。図10に示したように、MR素子R121,R122における電位差高調波成分が相殺されて、符号91で示す電位差の周期的に変化する成分の波形は、歪みが低減された、すなわち電位差高調波成分が低減された正弦曲線となる。同様に、MR素子R221,R222における電位差高調波成分が相殺されて、符号92で示す電位差の周期的に変化する成分の波形は、歪みが低減された、すなわち電位差高調波成分が低減された正弦曲線となる。
同様に、他のMR素子列においても、MR素子列を構成する個々のMR素子に比べて、MR素子列における電位差高調波成分を低減することができる。
次に、MR素子における抵抗値高調波成分が、理想成分に対する2次の高調波成分と3次の高調波成分を含む場合について説明する。以下、MR素子における抵抗値高調波成分が2次の高調波成分と3次の高調波成分を含む場合に、MR素子列における抵抗値高調波成分の大きさが最小となるφ(以下、φtと記す。)求めた第1のシミュレーションの結果について説明する。第1のシミュレーションでは、理想成分の振幅に対して、2次の高調波成分の振幅の割合と、3次の高調波成分の振幅の割合を変化させて、φtを求めた。ここで、理想成分の振幅に対する2次の高調波成分の振幅の割合を記号p1で表し、理想成分の振幅に対する3次の高調波成分の振幅の割合を記号p2で表す。第1のシミュレーションでは、2次の高調波成分の振幅の割合p1を0〜10%の範囲内で1%ずつ変化させた。また、3次の高調波成分の振幅の割合p2を0.1〜1%の範囲内で0.1%ずつ変化させた。そして、p1とp2の全ての組み合わせについて、φtを求めた。具体的には、式(4),(5)におけるe(θ+φ)+e(θ−φ)と、式(6),(7)におけるf(θ+φ)+f(θ−φ)を、それぞれ、2次の高調波成分と3次の高調波成分を含む関数として表して、これらの関数の絶対値の最大値を最小にするφをφtとした。
図11は、第1のシミュレーションによって求めたφtの値を示している。図11において、横軸は3次の高調波成分の振幅の割合p2を示し、縦軸はφtを示している。図11から、2次の高調波成分の振幅の割合p1が0%の場合(2次の高調波成分を含まない場合)には、3次の高調波成分の振幅の割合p2によらずに、φtは30°(π/6)になることが分かる。また、図11から、p1が0%以外の場合には、p2がある程度大きい範囲において、p2が大きくなるほど、また、p1が小さくなるほど、φtは30°(π/6)に近づくことが分かる。
次に、本実施の形態によれば、回転磁界センサ1の検出角度の誤差を低減することが可能になることを示すシミュレーションの結果について説明する。以下、比較例の回転磁界センサと本実施の形態に係る回転磁界センサ1について、角度誤差を比較した第2のシミュレーションの結果について説明する。まず、比較例の回転磁界センサの構成について説明する。比較例の回転磁界センサは、本実施の形態に係る回転磁界センサ1と同様に、第1および第2の検出回路と演算回路とを備えている。比較例における第1の検出回路は、図3に示したブリッジ回路14の代りに、4つのMR素子によって構成された第1のブリッジ回路を有している。比較例における第2の検出回路は、図3に示したブリッジ回路16の代りに、4つのMR素子によって構成された第2のブリッジ回路を有している。第1のブリッジ回路を構成する4つのMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向D1と同じ方向または第1の方向D1とは反対の方向である。第2のブリッジ回路を構成する4つのMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、第2の方向D2と同じ方向または第2の方向D2とは反対の方向である。比較例の回転磁界センサにおけるその他の構成は、本実施の形態に係る回転磁界センサ1と同じである。
第2のシミュレーションでは、第1のシミュレーションと同様に、2次の高調波成分の振幅の割合p1と、3次の高調波成分の振幅の割合p2を変化させて、比較例の回転磁界センサと本実施の形態に係る回転磁界センサ1について、角度検出値θsに含まれる角度誤差を求めた。具体的には、式(1)によって算出される角度検出値θsと、回転磁界MFの方向DMが理想的に回転する場合に想定される角度検出値θsの理論値との差を、角度誤差とした。なお、比較例の回転磁界センサにおけるMR素子の抵抗値として、式(4)ないし(7)においてφ=0とすることによって表される抵抗値を用いた。また、本実施の形態に係る回転磁界センサ1には、第1のシミュレーションで求めたφtを適用した。具体的には、本実施の形態に係る回転磁界センサ1におけるMR素子列の抵抗値として、式(4)ないし(7)においてφ=φtとすることによって表される抵抗値を用いた。
図12および図13は、第2のシミュレーションによって求めた角度誤差を示している。図12は、比較例の回転磁界センサにおける角度誤差を示している。図13は、本実施の形態に係る回転磁界センサ1における角度誤差を示している。図12および図13において、横軸は3次の高調波成分の割合p2を示し、縦軸はφtを示している。図12および図13から、2次の高調波成分の振幅の割合p1と、3次の高調波成分の割合p2を変化させた場合、比較例の回転磁界センサの角度誤差は0.6°以下になり、本実施の形態に係る回転磁界センサ1の角度誤差は0.2°以下になることが分かる。この第2のシミュレーションから、本実施の形態によれば、最適なφすなわちφtを選択することにより、回転磁界センサ1の検出角度の誤差を低減することが可能になることが分かる。実際の回転磁界センサ1では、回転磁界センサ1が使用される状況に応じて、最適なφを選択すればよい。
次に、上述の第2のシミュレーションの結果を検証するために行った第1および第2の実験の結果について説明する。第1の実験では、φが異なる複数の回転磁界センサ1を実際に作製して、φと角度誤差との関係を調べた。第1の実験では、それぞれφを19°、21°、23°、30°、45°とした5つの回転磁界センサ1を作製して、それらにおける角度誤差の最大値を調べた。第1の実験では、回転磁界MFの強度を400Oe(1Oe=79.6A/m)とした。図14は、第1の実験の結果を示している。図14において、横軸はφを示し、縦軸は角度誤差を示している。図14から、φによって角度誤差が異なり、最適なφを選択することによって角度誤差を低減することが可能であることが分かる。第1の実験で作製した5つの回転磁界センサ1の中では、φが23°である回転磁界センサ1において最も角度誤差が小さくなっている。
第2の実験では、比較例の回転磁界センサと、第1の実験で作製したφが23°である回転磁界センサ1(以下、実施例の回転磁界センサ1と言う。)とを用いて、回転磁界MFの強度と角度誤差との関係について調べた。第2の実験における比較例の回転磁界センサの構成は、第2のシミュレーションにおける比較例の回転磁界センサの構成と同じである。第2の実験では、比較例の回転磁界センサと実施例の回転磁界センサ1について、回転磁界MFの強度を100Oe〜700Oeの範囲内で100Oeずつ変化させて、各強度における角度誤差を調べた。図15および図16は、第2の実験の結果を示している。図15は比較例の回転磁界センサについて示し、図16は実施例の回転磁界センサ1について示している。図15および図16において、横軸は角度θを示し、縦軸は角度誤差を示している。図15および図16から、実施例の回転磁界センサ1では、比較例の回転磁界センサに比べて角度誤差が小さくなっていると共に、回転磁界MFの強度の広い範囲において角度誤差が小さくなっていることが分かる。この第2の実験から、最適なφを選択することによって、回転磁界MFの強度によらずに、角度誤差を低減することが可能であることが分かる。
次に、本実施の形態におけるその他の効果について説明する。本実施の形態では、第1の検出回路11は、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を検出して、その強度を表す第1の信号S1を出力する。しかし、第1の検出回路11の第1ないし第4のMR素子列R11,R12,R13,R14は、第1の方向D1または第1の方向D1とは反対方向に磁化方向が固定された磁化固定層を有するMR素子を含んでいない。また、第2の検出回路12は、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を検出して、その強度を表す第2の信号S2を出力する。しかし、第2の検出回路12の第1ないし第4のMR素子列R21,R22,R23,R24は、第2の方向D2または第2の方向D2とは反対方向に磁化方向が固定された磁化固定層を有するMR素子を含んでいない。従って、本実施の形態によれば、第1の検出回路11が第1の方向D1または第1の方向D1とは反対方向に磁化方向が固定された磁化固定層を有するMR素子を含み、第2の検出回路12が第2の方向D2または第2の方向D2とは反対方向に磁化方向が固定された磁化固定層を有するMR素子を含む場合に比べて、各検出回路11,12に含まれるMR素子を少なくすることができると共に、各検出回路11,12の設計が容易になる。このように、本実施の形態によれば、簡単な構成で、検出角度の誤差を低減することが可能になる。
ところで、回転磁界センサの角度誤差を低減する方法としては、以下のような方法も考えられる。この方法では、前述の比較例の第1および第2の検出回路の他に、比較例の第1の検出回路と同じ回路構成であって比較例の第1の検出回路の出力信号に対して所定の位相差を有する信号を出力する第3の検出回路と、比較例の第2の検出回路と同じ回路構成であって比較例の第2の検出回路の出力信号に対して所定の位相差を有する信号を出力する第4の検出回路とを設ける。そして、第1の検出回路の出力信号と第3の検出回路の出力信号を合成した信号と、第2の検出回路の出力信号と第4の検出回路の出力信号を合成した信号とに基づいて、角度検出値を算出する。しかし、この方法には、4つの検出回路が必要となり、回転磁界センサが大型化するという問題点と、4つの検出回路の出力信号を処理するための演算が複雑になるという問題点がある。
これに対し、本実施の形態では、上記の第3および第4の検出回路を設けることなく、MR素子の対(MR素子列)の各々において電位差高調波成分を低減することができるため、上記の方法に比べて、回転磁界センサを小型化でき、且つ演算が容易になる。
また、本実施の形態では、対を構成する2つのMR素子は、磁化固定層の磁化方向を除いて、同じ構造にすることができる。そのため、各MR素子における電位差高調波成分が温度の関数であったとしても、各MR素子における電位差高調波成分における温度による変動分が等しくなるため、各MR素子における電位差高調波成分が合成されることによって、各MR素子に比べて、MR素子列における電位差高調波成分を低減することが可能になる。そのため、本実施の形態によれば、最終的に、温度による誤差の変動の少ない角度検出値を得ることが可能になる。
[変形例]
次に、図17および図18を参照して、本実施の形態における第1および第2の変形例について説明する。始めに、図17を参照して、本実施の形態における第1の変形例について説明する。図17は、本実施の形態における第1の変形例の回転磁界センサの構成を示す説明図である。図17には、方向が回転する回転磁界を発生する手段の例として、1組以上のN極とS極が交互にリング状に配列された磁石3を示している。図17に示した例では、磁石3は、2組のN極とS極とを含んでいる。第1の変形例の回転磁界センサ1は、磁石3の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。図17に示した例では、図17における紙面がXY平面となり、紙面に垂直な方向がZ方向となる。磁石3のN極とS極は、Z方向に平行な回転中心を中心として対称な位置に配置されている。磁石3は、回転中心を中心として回転する。これにより、磁石3が発生する磁界に基づいて、回転磁界が発生される。回転磁界は、回転中心(Z方向)を中心として回転する。図17に示した例では、磁石3は反時計回り方向に回転し、回転磁界は時計回り方向に回転する。
図17に示した例では、基準方向DRを、磁石3の半径方向に設定している。図示しないが、回転磁界センサ1は、回転磁界の第1の方向の成分と、回転磁界の第2の方向の成分とを検出する。基準方向DRと第1の方向および第2の方向の関係は、図2に示した基準方向DRと第1の方向D1および第2の方向D2の関係と同じである。
次に、図18を参照して、本実施の形態における第2の変形例について説明する。図18は、本実施の形態における第2の変形例の回転磁界センサの構成を示す説明図である。図18には、方向が回転する回転磁界を発生する手段の例として、複数組のN極とS極が交互に直線状に配列された磁石4を示している。第2の変形例における回転磁界センサ1は、磁石4の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。図18に示した例では、図18における紙面がXY平面となり、紙面に垂直な方向がZ方向となる。磁石4は、対象物の直線的な運動に連動して、その長手方向に直線的に移動する。これにより、磁石4が発生する磁界に基づいて、回転磁界が発生される。回転磁界は、Z方向を中心として回転する。
図18に示した例では、基準方向DRを、XY平面内において、磁石4の移動方向に直交する方向に設定している。図示しないが、回転磁界センサ1は、回転磁界の第1の方向の成分と、回転磁界の第2の方向の成分とを検出する。基準方向DRと第1の方向および第2の方向の関係は、図2に示した基準方向DRと第1の方向D1および第2の方向D2の関係と同じである。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。本実施の形態に係る回転磁界センサの回路構成は、図3に示した第1の実施の形態に係る回転磁界センサ1と同じである。
第1の実施の形態で説明したように、第1の検出回路11において、第3のMR素子列R13を構成するMR素子R131,R132の磁化固定層の磁化方向は、第2のMR素子列R12を構成するMR素子R121,R122の磁化固定層の磁化方向と同じ方向である。また、第1の検出回路11において、第4のMR素子列R14を構成するMR素子R141,R142の磁化固定層の磁化方向は、第1のMR素子列R11を構成するMR素子R111,R112の磁化固定層の磁化方向と同じ方向である。
また、第2の検出回路12において、第3のMR素子列R23を構成するMR素子R231,R232の磁化固定層の磁化方向は、第2のMR素子列R22を構成するMR素子R221,R222の磁化固定層の磁化方向と同じ方向である。また、第2の検出回路12において、第4のMR素子列R24を構成するMR素子R241,R242の磁化固定層の磁化方向は、第1のMR素子列R21を構成するMR素子R211,R212の磁化固定層の磁化方向と同じ方向である。
本実施の形態では、異なる2つのMR素子列における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士を隣接させている。具体的には、第1の検出回路11では、第1のMR素子列R11と第4のMR素子列R14における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士を隣接させ、第2のMR素子列R12と第3のMR素子列R13における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士を隣接させている。第2の検出回路12では、第1のMR素子列R21と第4のMR素子列R24における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士を隣接させ、第2のMR素子列R22と第3のMR素子列R23における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士を隣接させている。
図19は、図3に示したブリッジ回路14,16を一体化したユニット40の平面図である。このユニット40は、基板41と、基板41上に設けられたブリッジ回路14,16とを備えている。ブリッジ回路14は、図19における下方に配置されている。ブリッジ回路16は、図19における上方に配置されている。ブリッジ回路14,16の複数のポートは、基板41上において、基板41の周縁の近傍に配置されている。
ブリッジ回路14は、4つのMR素子配置領域141,142,143,144を有している。各MR素子配置領域141〜144には、2つのMR素子が配置されている。MR素子配置領域141,142では、第1のMR素子列R11と第4のMR素子列R14における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士が隣接している。MR素子配置領域143,144では、第2のMR素子列R12と第3のMR素子列R13における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士が隣接している。なお、各MR素子配置領域141〜144内の数字は、MR素子の磁化固定層の磁化方向が基準方向DRに対してなす角度の一例を表している。
ブリッジ回路16は、4つのMR素子配置領域161,162,163,164を有している。各MR素子配置領域161〜164には、2つのMR素子が配置されている。MR素子配置領域161,162では、第1のMR素子列R21と第4のMR素子列R24における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士が隣接している。MR素子配置領域163,164では、第2のMR素子列R22と第3のMR素子列R23における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士が隣接している。なお、各MR素子配置領域161〜164内の数字は、MR素子の磁化固定層の磁化方向が基準方向DRに対してなす角度の一例を表している。
本実施の形態では、各MR素子配置領域において、磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士を隣接させている。MR素子の磁化固定層の磁化方向を固定する方法としては、例えば、ユニット40に外部磁界が印加された状態で、1つのMR素子配置領域に局所的にレーザ光を照射することによって、1つのMR素子配置領域内の2つのMR素子の温度を上昇させた後、下降させる方法が考えられる。本実施の形態では、磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士を隣接させるため、隣接する2つのMR素子に対して同時にレーザ光を照射することによって、2つのMR素子の磁化固定層の磁化方向を同時に固定することができる。従って、本実施の形態によれば、磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士が隣接していない場合に比べて、レーザ光を照射する回数を少なくすることができ、その結果、回転磁界センサを作製するのに要する時間を短縮することができる。
また、上述のようにレーザ光を照射してMR素子の磁化固定層の磁化方向を固定する場合において、磁化固定層の磁化方向が異なるMR素子同士が近接していると、レーザ光の照射対象であるMR素子の周辺のMR素子にもレーザ光が照射されたり、照射対象であるMR素子へのレーザ光照射によって周辺のMR素子が熱を受けたりして、周辺のMR素子が不良になるおそれがある。これは、特に、レーザ光照射領域の分解能が高くない場合に顕著になる。そのため、磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士が隣接していない場合には、上記の問題を避けるために、隣接するMR素子の間隔をある程度大きくする必要が生じ、その結果、ブリッジ回路14,16が大型化してしまう。これに対し、本実施の形態では、磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士を隣接させるため、この隣接する2つのMR素子に対して同時にレーザ光を照射することができる。従って、この隣接する2つのMR素子の間隔を小さくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、ブリッジ回路14,16を小型化することが可能になる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、図20を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。図20は、本実施の形態に係る回転磁界センサ5の構成を示す回路図である。本実施の形態に係る回転磁界センサ5は、第1の実施の形態における第1の検出回路11、第2の検出回路12および演算回路13の代りに、第1の検出回路21、第2の検出回路22および演算回路23を備えている。第1の検出回路21は、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を検出して、その強度を表す第1の信号S1を出力する。第2の検出回路22は、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を検出して、その強度を表す第2の信号S2を出力する。演算回路23は、第1の信号S1および第2の信号S2に基づいて、基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度θと対応関係を有する角度検出値θsを算出する。演算回路23における角度検出値θsの算出方法は、第1の実施の形態と同じである。基準方向DRと第1の方向D1および第2の方向D2の関係は、図2に示した基準方向DRと第1の方向D1および第2の方向D2の関係と同じである。
以下、第1および第2の検出回路21,22の構成について詳しく説明する。第1の検出回路21は、ブリッジ回路24と、差分検出器25とを有している。ブリッジ回路24は、電源ポートV3と、グランドポートG3と、2つの出力ポートE31,E32と、直列に接続された第1および第2のMR素子列R31,R32と、直列に接続された第3および第4のMR素子列R33,R34とを含んでいる。第1ないし第4のMR素子列R31〜R34は、いずれも、直列に接続された複数のMR素子によって構成されている。第1ないし第4のMR素子列R31〜R34は、それぞれ、第1の端部と第2の端部とを有している。
第1のMR素子列R31の第1の端部と第3のMR素子列R33の第1の端部は、電源ポートV3に接続されている。第1のMR素子列R31の第2の端部は、第2のMR素子列R32の第1の端部と出力ポートE31に接続されている。第3のMR素子列R33の第2の端部は、第4のMR素子列R34の第1の端部と出力ポートE32に接続されている。第2のMR素子列R32の第2の端部と第4のMR素子列R34の第2の端部は、グランドポートG3に接続されている。電源ポートV3には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG3はグランドに接続される。差分検出器25は、出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号を第1の信号S1として演算回路23に出力する。
第1の検出回路21では、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度に応じて、出力ポートE31,E32の電位差が変化するように、MR素子の磁化固定層の磁化方向が固定されている。従って、第1の方向D1は、第1の検出回路21が回転磁界MFを検出するときの基準の方向であり、第1の検出回路21は、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を検出して、その強度を表す第1の信号S1を出力する。図20に示した例では、回転磁界MFのX方向の成分の強度に応じて、出力ポートE31,E32の電位差が変化するように、MR素子の磁化固定層の磁化方向が固定されている。この例では、第1の方向D1は、X方向と同じ方向になる。
第2の検出回路22は、ブリッジ回路26と、差分検出器27とを有している。ブリッジ回路26は、電源ポートV4と、グランドポートG4と、2つの出力ポートE41,E42と、直列に接続された第1および第2のMR素子列R41,R42と、直列に接続された第3および第4のMR素子列R43,R44とを含んでいる。第1ないし第4のMR素子列R41〜R44は、いずれも、直列に接続された複数のMR素子によって構成されている。第1ないし第4のMR素子列R41〜R44は、それぞれ、第1の端部と第2の端部とを有している。
第1のMR素子列R41の第1の端部と第3のMR素子列R43の第1の端部は、電源ポートV4に接続されている。第1のMR素子列R41の第2の端部は、第2のMR素子列R42の第1の端部と出力ポートE41に接続されている。第3のMR素子列R43の第2の端部は、第4のMR素子列R44の第1の端部と出力ポートE42に接続されている。第2のMR素子列R42の第2の端部と第4のMR素子列R44の第2の端部は、グランドポートG4に接続されている。電源ポートV4には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG4はグランドに接続される。差分検出器27は、出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号を第2の信号S2として演算回路23に出力する。
第2の検出回路22では、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度に応じて、出力ポートE41,E42の電位差が変化するように、MR素子の磁化固定層の磁化方向が固定されている。従って、第2の方向D2は、第2の検出回路22が回転磁界MFを検出するときの基準の方向であり、第2の検出回路22は、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を検出して、その強度を表す第2の信号S2を出力する。図20に示した例では、回転磁界MFのY方向の成分の強度に応じて、出力ポートE41,E42の電位差が変化するように、MR素子の磁化固定層の磁化方向が固定されている。この例では、第2の方向D2は、Y方向と同じ方向になる。
次に、各MR素子列を構成する複数のMR素子について詳しく説明する。まず、ブリッジ回路24の第1ないし第4のMR素子列R31,R32,R33,R34を構成する複数のMR素子について説明する。第1ないし第4のMR素子列R31,R32,R33,R34は、それぞれ、直列に接続された4つのMR素子によって構成されている。第1のMR素子列R31は、第1の対のMR素子R311,R312と、第2の対のMR素子R313,R314によって構成されている。第2のMR素子列R32は、第1の対のMR素子R321,R322と、第2の対のMR素子R323,R324によって構成されている。第3のMR素子列R33は、第1の対のMR素子R331,R332と、第2の対のMR素子R333,R334によって構成されている。第4のMR素子列R34は、第1の対のMR素子R341,R342と、第2の対のMR素子R343,R344によって構成されている。
MR素子R311の一端は、第1のMR素子列R31の第1の端部を構成している。MR素子R311の他端は、MR素子R312の一端に接続されている。MR素子R312の他端は、MR素子R313の一端に接続されている。MR素子R313の他端は、MR素子R314の一端に接続されている。MR素子R314の他端は、第1のMR素子列R31の第2の端部を構成している。
MR素子R321の一端は、第2のMR素子列R32の第1の端部を構成している。MR素子R321の他端は、MR素子R322の一端に接続されている。MR素子R322の他端は、MR素子R323の一端に接続されている。MR素子R323の他端は、MR素子R324の一端に接続されている。MR素子R324の他端は、第2のMR素子列R32の第2の端部を構成している。
MR素子R331の一端は、第3のMR素子列R33の第1の端部を構成している。MR素子R331の他端は、MR素子R332の一端に接続されている。MR素子R332の他端は、MR素子R333の一端に接続されている。MR素子R333の他端は、MR素子R334の一端に接続されている。MR素子R334の他端は、第3のMR素子列R33の第2の端部を構成している。
MR素子R341の一端は、第4のMR素子列R34の第1の端部を構成している。MR素子R341の他端は、MR素子R342の一端に接続されている。MR素子R342の他端は、MR素子R343の一端に接続されている。MR素子R343の他端は、MR素子R344の一端に接続されている。MR素子R344の他端は、第4のMR素子列R34の第2の端部を構成している。
なお、第1のMR素子列R31を構成するMR素子R311,R312,R313,R314は、第1のMR素子列R31の第1の端部と第2の端部との間で直列に接続されていればよく、その順序は、図20に示した例に限られず任意である。同様に、他のMR素子列の各々を構成する4つのMR素子も、各MR素子列の第1の端部と第2の端部との間で直列に接続されていればよく、その順序は、図20に示した例に限られず任意である。
ここで、MR素子R311〜R314,R321〜R324,R331〜R334,R341〜R344の各々における磁化固定層の磁化方向について説明する。図21は、第1のMR素子列R31を構成する第1の対のMR素子R311,R312と第2の対のMR素子R313,R314の磁化固定層の磁化方向を示す説明図である。図21において、符号D311,D312,D313,D314を付した矢印は、それぞれ、MR素子R111,R112,R313,R314の磁化固定層の磁化方向を表している。また、図21において、符号D3を付した矢印は、第1のMR素子列R31において第1の対を構成する2つのMR素子R311,R312における磁化固定層の磁化方向D311,D312の中間の方向を表している。また、図21において、符号D4を付した矢印は、第1のMR素子列R31において第2の対を構成する2つのMR素子R313,R314における磁化固定層の磁化方向D313,D314の中間の方向を表している。以下、第1ないし第4のMR素子列R31〜R34において、第1の対を構成する2つのMR素子における磁化固定層の磁化方向の中間の方向を第3の方向と呼び、第2の対を構成する2つのMR素子における磁化固定層の磁化方向の中間の方向を第4の方向と呼ぶ。
図21に示したように、MR素子R311,R312,R313,R314の磁化固定層の磁化方向D311,D312,D313,D314は、第3の方向D3と第4の方向D4の中間の方向が第1の方向D1と同じ方向(X方向)になるように固定されている。第3の方向D3と第4の方向D4は、0°および180°を除く所定の相対角度2φをなしている。第3の方向D3は、第1の方向D1から時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。第4の方向D4は、第1の方向D1から反時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。第1の対のMR素子R311,R312の磁化固定層の磁化方向D311,D312は、0°および180°を除く所定の相対角度2ψをなしている。第2の対のMR素子R313,R314の磁化固定層の磁化方向D313,D314も、0°および180°を除く所定の相対角度2ψをなしている。MR素子R311の磁化固定層の磁化方向D311は、第3の方向D3から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R312の磁化固定層の磁化方向D312は、第3の方向D3から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R313の磁化固定層の磁化方向D313は、第4の方向D4から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R314の磁化固定層の磁化方向D314は、第4の方向D4から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。角度φ,ψは互いに異なる。角度φは、例えば45°である。角度ψは、例えば30°である。
第2のMR素子列R32を構成するMR素子R321〜R324の磁化固定層の磁化方向は、第2のMR素子列R32における第3の方向と第4の方向の中間の方向が第1の方向D1とは反対の方向(−X方向)になるように固定されている。第3のMR素子列R33を構成するMR素子R331〜R334の磁化固定層の磁化方向も、第3のMR素子列R33における第3の方向と第4の方向の中間の方向が第1の方向D1とは反対の方向になるように固定されている。MR素子R331,R332,R333,R334の磁化固定層の磁化方向は、それぞれ、MR素子R321,R322,R323,R324の磁化固定層の磁化方向と同じである。
MR素子R321,R331の磁化固定層の磁化方向は、図21に示したMR素子R311の磁化固定層の磁化方向D311の反対方向である。MR素子R322,R332の磁化固定層の磁化方向は、図21に示したMR素子R312の磁化固定層の磁化方向D312の反対方向である。MR素子R323,R333の磁化固定層の磁化方向は、図21に示したMR素子R313の磁化固定層の磁化方向D313の反対方向である。MR素子R324,R334の磁化固定層の磁化方向は、図21に示したMR素子R314の磁化固定層の磁化方向D314の反対方向である。
第2のMR素子列R32における第3の方向と第4の方向は、相対角度2φをなしている。第3の方向は、第1の方向D1とは反対の方向から時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。第4の方向は、第1の方向D1とは反対の方向から反時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。MR素子R321,R322の磁化固定層の磁化方向は、相対角度2ψをなしている。MR素子R323,R324の磁化固定層の磁化方向も、相対角度2ψをなしている。MR素子R321の磁化固定層の磁化方向は、第3の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R322の磁化固定層の磁化方向は、第3の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R323の磁化固定層の磁化方向は、第4の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R324の磁化固定層の磁化方向は、第4の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。
第3のMR素子列R33における第3の方向と第4の方向は、第2のMR素子列R32における第3の方向と第4の方向と同じである。MR素子R331,R332の磁化固定層の磁化方向は、相対角度2ψをなしている。MR素子R333,R334の磁化固定層の磁化方向も、相対角度2ψをなしている。MR素子R331の磁化固定層の磁化方向は、第3の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R332の磁化固定層の磁化方向は、第3の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R333の磁化固定層の磁化方向は、第4の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R334の磁化固定層の磁化方向は、第4の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。
第4のMR素子列R34を構成するMR素子R341〜R344の磁化固定層の磁化方向は、第4のMR素子列R34における第3の方向と第4の方向の中間の方向が第1の方向D1と同じ方向(X方向)になるように固定されている。MR素子R341,R342,R343,R344の磁化固定層の磁化方向は、それぞれ、MR素子R311,R312,R313,R314の磁化固定層の磁化方向と同じである。
第4のMR素子列R34における第3の方向と第4の方向は、第1のMR素子列R31における第3の方向と第4の方向と同じである。MR素子R341,R342の磁化固定層の磁化方向は、相対角度2ψをなしている。MR素子R343,R344の磁化固定層の磁化方向も、相対角度2ψをなしている。MR素子R341の磁化固定層の磁化方向は、第3の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R342の磁化固定層の磁化方向は、第3の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R343の磁化固定層の磁化方向は、第4の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R344の磁化固定層の磁化方向は、第4の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。
次に、ブリッジ回路26の第1ないし第4のMR素子列R41,R42,R43,R44を構成するMR素子について説明する。第1ないし第4のMR素子列R41,R42,R43,R44は、直列に接続された4つのMR素子によって構成されている。第1のMR素子列R41は、第3の対のMR素子R411,R412と、第4の対のMR素子R413,R414によって構成されている。第2のMR素子列R42は、第3の対のMR素子R421,R422と、第4の対のMR素子R423,R424によって構成されている。第3のMR素子列R43は、第3の対のMR素子R431,R432と、第4の対のMR素子R433,R434によって構成されている。第4のMR素子列R44は、第3の対のMR素子R441,R442と、第4の対のMR素子R443,R444によって構成されている。
MR素子R411の一端は、第1のMR素子列R41の第1の端部を構成している。MR素子R411の他端は、MR素子R412の一端に接続されている。MR素子R412の他端は、MR素子R413の一端に接続されている。MR素子R413の他端は、MR素子R414の一端に接続されている。MR素子R414の他端は、第1のMR素子列R41の第2の端部を構成している。
MR素子R421の一端は、第2のMR素子列R42の第1の端部を構成している。MR素子R421の他端は、MR素子R422の一端に接続されている。MR素子R422の他端は、MR素子R423の一端に接続されている。MR素子R423の他端は、MR素子R424の一端に接続されている。MR素子R424の他端は、第2のMR素子列R42の第2の端部を構成している。
MR素子R431の一端は、第3のMR素子列R43の第1の端部を構成している。MR素子R431の他端は、MR素子R432の一端に接続されている。MR素子R432の他端は、MR素子R433の一端に接続されている。MR素子R433の他端は、MR素子R434の一端に接続されている。MR素子R434の他端は、第3のMR素子列R43の第2の端部を構成している。
MR素子R441の一端は、第4のMR素子列R44の第1の端部を構成している。MR素子R441の他端は、MR素子R442の一端に接続されている。MR素子R442の他端は、MR素子R443の一端に接続されている。MR素子R443の他端は、MR素子R444の一端に接続されている。MR素子R444の他端は、第4のMR素子列R44の第2の端部を構成している。
なお、第1のMR素子列R41を構成するMR素子R411,R412,R413,R414は、第1のMR素子列R41の第1の端部と第2の端部との間で直列に接続されていればよく、その順序は、図20に示した例に限られず任意である。同様に、他のMR素子列の各々を構成する4つのMR素子も、各MR素子列の第1の端部と第2の端部との間で直列に接続されていればよく、その順序は、図20に示した例に限られず任意である。
ここで、MR素子R411〜R414,R421〜R424,R431〜R434,R441〜R444の各々における磁化固定層の磁化方向について説明する。第1ないし第4のMR素子列R41〜R44において、第3の対を構成する2つのMR素子における磁化固定層の磁化方向の中間の方向を第5の方向と呼び、第4の対を構成する2つのMR素子における磁化固定層の磁化方向の中間の方向を第6の方向と呼ぶ。第1のMR素子列R41を構成するMR素子R411〜R414の磁化固定層の磁化方向は、第1のMR素子列R41における第5の方向と第6の方向の中間の方向が第2の方向D2と同じ方向(Y方向)になるように固定されている。第4のMR素子列R44を構成するMR素子R441〜R444の磁化固定層の磁化方向も、第4のMR素子列R44における第5の方向と第6の方向の中間の方向が第2の方向D2と同じ方向になるように固定されている。MR素子R441,R442,R443,R444の磁化固定層の磁化方向は、それぞれ、MR素子R411,R412,R413,R414の磁化固定層の磁化方向と同じである。
MR素子R411,R441の磁化固定層の磁化方向は、図21に示したMR素子R314の磁化固定層の磁化方向D314を反時計回り方向に90°回転させた方向である。MR素子R412,R442の磁化固定層の磁化方向は、図21に示したMR素子R313の磁化固定層の磁化方向D313を反時計回り方向に90°回転させた方向である。MR素子R413,R443の磁化固定層の磁化方向は、図21に示したMR素子R312の磁化固定層の磁化方向D312を反時計回り方向に90°回転させた方向である。MR素子R414,R444の磁化固定層の磁化方向は、図21に示したMR素子R311の磁化固定層の磁化方向D311を反時計回り方向に90°回転させた方向である。
第1のMR素子列R41における第5の方向と第6の方向は、相対角度2φをなしている。第5の方向は、第2の方向D2から反時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。第6の方向は、第2の方向D2から時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。MR素子R411,R412の磁化固定層の磁化方向は、相対角度2ψをなしている。MR素子R413,R414の磁化固定層の磁化方向も、相対角度2ψをなしている。MR素子R411の磁化固定層の磁化方向は、第5の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R412の磁化固定層の磁化方向は、第5の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R413の磁化固定層の磁化方向は、第6の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R414の磁化固定層の磁化方向は、第6の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。
第4のMR素子列R44における第5の方向と第6の方向は、第1のMR素子列R41における第5の方向と第6の方向と同じである。MR素子R441,R442の磁化固定層の磁化方向は、相対角度2ψをなしている。MR素子R443,R444の磁化固定層の磁化方向も、相対角度2ψをなしている。MR素子R441の磁化固定層の磁化方向は、第5の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R442の磁化固定層の磁化方向は、第5の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R443の磁化固定層の磁化方向は、第6の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R444の磁化固定層の磁化方向は、第6の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。
第2のMR素子列R42を構成するMR素子R421〜R424の磁化固定層の磁化方向は、第2のMR素子列R42における第5の方向と第6の方向の中間の方向が第2の方向D2とは反対の方向(−Y方向)になるように固定されている。第3のMR素子列R43を構成するMR素子R431〜R434の磁化固定層の磁化方向も、第3のMR素子列R43における第5の方向と第6の方向の中間の方向が第2の方向D2とは反対の方向になるように固定されている。MR素子R431,R432,R433,R434の磁化固定層の磁化方向は、それぞれ、MR素子R421,R422,R423,R424の磁化固定層の磁化方向と同じである。
MR素子R421,R431の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R414,R444の磁化固定層の磁化方向の反対方向である。MR素子R422,R432の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R413,R443の磁化固定層の磁化方向の反対方向である。MR素子R423,R433の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R412,R442の磁化固定層の磁化方向の反対方向である。MR素子R424,R434の磁化固定層の磁化方向は、MR素子R411,R441の磁化固定層の磁化方向の反対方向である。
第2のMR素子列R42における第5の方向と第6の方向は、相対角度2φをなしている。第5の方向は、第2の方向D2とは反対の方向から時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。第6の方向は、第2の方向D2とは反対の方向から反時計回り方向に角度φだけ回転した方向である。MR素子R421,R422の磁化固定層の磁化方向は、相対角度2ψをなしている。MR素子R423,R424の磁化固定層の磁化方向も、相対角度2ψをなしている。MR素子R421の磁化固定層の磁化方向は、第5の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R422の磁化固定層の磁化方向は、第5の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R423の磁化固定層の磁化方向は、第6の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R424の磁化固定層の磁化方向は、第6の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。
第3のMR素子列R43における第5の方向と第6の方向は、第2のMR素子列R42における第5の方向と第6の方向と同じである。MR素子R431,R432の磁化固定層の磁化方向は、相対角度2ψをなしている。MR素子R433,R434の磁化固定層の磁化方向も、相対角度2ψをなしている。MR素子R431の磁化固定層の磁化方向は、第5の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R432の磁化固定層の磁化方向は、第5の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R433の磁化固定層の磁化方向は、第6の方向から時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。MR素子R434の磁化固定層の磁化方向は、第6の方向から反時計回り方向に角度ψだけ回転した方向である。
以上説明したように、第1および第2の検出回路21,22の各MR素子列は、所定の方向に磁化方向が固定された磁化固定層を有する複数のMR素子によって構成されている。第1の検出回路21の第1ないし第4のMR素子列R31,R32,R33,R34は、第1の方向D1(X方向)または第1の方向D1とは反対方向(−X方向)に磁化方向が固定された磁化固定層を有するMR素子を含んでいない。また、第2の検出回路22の第1ないし第4のMR素子列R41,R42,R43,R44は、第2の方向D2(Y方向)または第2の方向D2とは反対方向(−Y方向)に磁化方向が固定された磁化固定層を有するMR素子を含んでいない。
次に、MR素子の磁化固定層の磁化方向の具体例に説明する。まず、第1の検出回路21の各MR素子列を構成する複数のMR素子について説明する。MR素子の磁化固定層の磁化方向は、基準方向DRに対してなす角度を用いて表すことができる。同様に、第1ないし第4のMR素子列R31〜R34における第3の方向と第4の方向も、基準方向DRに対してなす角度を用いて表すことができる。ここで、第3の方向と第4の方向の中間の方向が基準方向DRに対してなす角度を第1の種類の角度と呼び、第3の方向または第4の方向が基準方向DRに対してなす角度を第2の種類の角度と呼び、第1の検出回路21に含まれる各MR素子の磁化固定層の磁化方向が基準方向DRに対してなす角度を第3の種類の角度と呼ぶ。また、図21に示した角度φは45°であり、角度ψは30°であるものとする。
図22は、第1の検出回路21における第1ないし第3の種類の角度の関係を示す説明図である。図22において、符号101で示した枠内の数字は第1の種類の角度を表し、符号102で示した枠内の数字は第2の種類の角度を表し、符号103で示した枠内の数字は第3の種類の角度を表している。本実施の形態では、第1の方向D1は、基準方向DRから90°回転した方向である。従って、第1の種類の角度は、90°と270°である。第1の種類の角度90°に対応する第2の種類の角度は、45°と135°である。第1の種類の角度270°に対応する第2の種類の角度は、225°と315°である。第2の種類の角度45°に対応する第3の種類の角度は、15°と75°である。第2の種類の角度135°に対応する第3の種類の角度は、105°と165°である。第2の種類の角度225°に対応する第3の種類の角度は、195°と255°である。第2の種類の角度315°に対応する第3の種類の角度は、285°と345°である。
磁化固定層の磁化方向が15°と75°である2つのMR素子からなるMR素子の対の抵抗値の理想成分の位相は、15°と75°の中間の45°の磁化方向の磁化固定層を有する仮想のMR素子の抵抗値の理想成分の位相と同じになる。他のMR素子の対の抵抗値の理想成分についても同様である。そして、磁化固定層の磁化方向が15°、75°、105°、165°である4つのMR素子からなるMR素子列R31,R34の抵抗値の理想成分の位相は、磁化固定層の磁化方向が90°である仮想のMR素子の抵抗値の理想成分の位相と同じになる。同様に、磁化固定層の磁化方向が195°、255°、285°、345°である4つのMR素子からなるMR素子列R32,R33の抵抗値の理想成分の位相は、磁化固定層の磁化方向が270°である仮想のMR素子の抵抗値の理想成分の位相と同じになる。これにより、本実施の形態によれば、第1の検出回路21は、第1の方向D1または第1の方向D1とは反対方向に磁化方向が固定された磁化固定層を有するMR素子を含んでいなくても、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を検出して、その強度を表す第1の信号S1を出力することができる。
次に、第2の検出回路22の各MR素子列を構成する複数のMR素子について説明する。第3および第4の方向と同様に、第1ないし第4のMR素子列R41〜R44における第5の方向と第6の方向も、基準方向DRに対してなす角度を用いて表すことができる。ここで、第3および第4の方向と同様に、第5の方向と第6の方向の中間の方向が基準方向DRに対してなす角度を第1の種類の角度と呼び、第5の方向または第6の方向が基準方向DRに対してなす角度を第2の種類の角度と呼び、第2の検出回路22に含まれる各MR素子の磁化固定層の磁化方向が基準方向DRに対してなす角度を第3の種類の角度と呼ぶ。
図23は、第2の検出回路22における第1ないし第3の種類の角度の関係を示す説明図である。図23において、符号111で示した枠内の数字は第1の種類の角度を表し、符号112で示した枠内の数字は第2の種類の角度を表し、符号113で示した枠内の数字は第3の種類の角度を表している。本実施の形態では、第2の方向D2は、基準方向DRと一致している。従って、第1の種類の角度は、0°と180°である。第1の種類の角度0°に対応する第2の種類の角度は、45°と315°である。第1の種類の角度180°に対応する第2の種類の角度は、135°と225°である。第2の種類の角度45°に対応する第3の種類の角度は、15°と75°である。第2の種類の角度315°に対応する第3の種類の角度は、285°と345°である。第2の種類の角度135°に対応する第3の種類の角度は、105°と165°である。第2の種類の角度225°に対応する第3の種類の角度は、195°と255°である。
第1の検出回路21の場合と同様に、第2の検出回路22は、第2の方向D2または第2の方向D2とは反対方向に磁化方向が固定された磁化固定層を有するMR素子を含んでいなくても、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を検出して、その強度を表す第2の信号S2を出力することができる。
次に、本実施の形態における複数のMR素子の配置について説明する。本実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、異なる2つのMR素子列における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士を隣接させている。具体的には、第1の検出回路21では、第1のMR素子列R31と第4のMR素子列R34における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士を隣接させ、第2のMR素子列R32と第3のMR素子列R33における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士を隣接させている。第2の検出回路22では、第1のMR素子列R41と第4のMR素子列R44における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士を隣接させ、第2のMR素子列R42と第3のMR素子列R43における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士を隣接させている。
図24は、図20に示したブリッジ回路24,26を一体化したユニット80の平面図である。このユニット80は、基板81と、基板81上に設けられたブリッジ回路24,26とを備えている。ブリッジ回路24は、図24における下方に配置されている。ブリッジ回路26は、図24における上方に配置されている。ブリッジ回路24,26の複数のポートは、基板81上において、基板81の周縁の近傍に配置されている。
ブリッジ回路24は、8つのMR素子配置領域241,242,243,244,245,246,247,248を有している。各MR素子配置領域241〜248には、2つのMR素子が配置されている。MR素子配置領域241〜244では、第1のMR素子列R31と第4のMR素子列R34における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士が隣接している。MR素子配置領域245〜248では、第2のMR素子列R32と第3のMR素子列R33における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士が隣接している。なお、各MR素子配置領域241〜248内の数字は、図22に示した第3の種類の角度、すなわち各MR素子の磁化固定層の磁化方向が基準方向DRに対してなす角度を表している。
ブリッジ回路26は、8つのMR素子配置領域261,262,263,264,265,266,267,268を有している。各MR素子配置領域261〜268には、2つのMR素子が配置されている。MR素子配置領域261〜264では、第1のMR素子列R41と第4のMR素子列R44における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士が隣接している。MR素子配置領域265〜268では、第2のMR素子列R42と第3のMR素子列R43における磁化固定層の磁化方向が同じMR素子同士が隣接している。なお、各MR素子配置領域261〜268内の数字は、図23に示した第3の種類の角度、すなわち各MR素子の磁化固定層の磁化方向が基準方向DRに対してなす角度を表している。
本実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、MR素子の磁化固定層の磁化方向を固定する方法として、例えば、ユニット80に外部磁界が印加された状態で、1つのMR素子配置領域に局所的にレーザ光を照射することによって、1つのMR素子配置領域内の2つのMR素子の温度を上昇させた後、下降させる方法を用いることができる。
次に、図25ないし図33を参照して、回転磁界センサ5の作用および効果について説明する。ここでは、第1の検出回路21の第2のMR素子列R32を例にとって、仮想のMR素子および仮想のMR素子列と比較しながら説明する。まず、第1ないし第3の仮想のMR素子と仮想のMR素子列について説明する。第1の仮想のMR素子は、第2のMR素子列R32を構成する4つのMR素子R321,R322,R323,R324の磁化固定層の磁化方向を一方向に揃えて構成した仮想のMR素子である。第2の仮想のMR素子は、第2の対のMR素子R323,R324の磁化固定層の磁化方向を一方向に揃えて構成した仮想のMR素子である。第3の仮想のMR素子は、第1の対のMR素子R321,R322の磁化固定層の磁化方向を一方向に揃えて構成した仮想のMR素子である。
仮想のMR素子列は、直列に接続された第2の仮想のMR素子と第3の仮想のMR素子によって構成されている。仮想のMR素子列は、第2のMR素子列R32と同様に、第1の端部と第2の端部とを有している。第2の仮想のMR素子の一端は、仮想のMR素子列の第1の端部を構成する。第2の仮想のMR素子の他端は、第3の仮想のMR素子の一端に接続されている。第3の仮想のMR素子の他端は、仮想のMR素子列の第2の端部を構成する。
第1の仮想のMR素子における磁化固定層の磁化方向は、第1の方向D1とは反対の方向である。第2および第3の仮想のMR素子における磁化固定層の磁化方向の中間の方向も、第1の方向D1とは反対の方向である。第2の仮想のMR素子における磁化固定層の磁化方向は、第1の方向D1とは反対の方向から反時計回り方向に45°回転した方向である。第3の仮想のMR素子における磁化固定層の磁化方向は、第1の方向D1とは反対の方向から時計回り方向に45°回転した方向である。
図25ないし図33は、MR素子の両端間の電位差またはMR素子列の第1の端部と第2の端部との間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形を示している。図25ないし図33において、横軸は角度θを示し、縦軸の「規格化出力」は、図33に示した第2のMR素子列R32の第1の端部と第2の端部との間の電位差のうち、周期的に変化する成分の最大値が1になるように表した電位差の値を示している。なお、図25ないし図33に示した各波形は、シミュレーションによって作成したものである。
図25は、第1の仮想のMR素子の両端間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形を示す波形図である。符号300は、電位差の周期的に変化する成分の波形を示している。符号301は、理想的な正弦曲線を示している。符号302で示す波形は、MR素子の抵抗値高調波成分のうちの2次の高調波成分に起因して発生する2次の電位差高調波成分を示している。符号303で示す波形は、MR素子の抵抗値高調波成分のうちの3次の高調波成分に起因して発生する3次の電位差高調波成分を示している。図25に示したように、符号300で示す電位差の周期的に変化する成分の波形は、2次および3次の電位差高調波成分を含んでいるために、正弦曲線から歪んでいる。
図26は、第2の仮想のMR素子の両端間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形を示す波形図である。図27は、第3の仮想のMR素子の両端間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形を示している。図26および図27において、符号310,320は、電位差の周期的に変化する成分の波形を示している。符号311,321は、理想的な正弦曲線を示している。符号312,322で示す波形は、MR素子の抵抗値高調波成分のうちの2次の高調波成分に起因して発生する2次の電位差高調波成分を示している。符号313,323で示す波形は、MR素子の抵抗値高調波成分のうちの3次の高調波成分に起因して発生する3次の電位差高調波成分を示している。図26に示した各波形の位相は、図25に示した各波形の位相に対してπ/4(45°)だけ異なっている。図27に示した各波形の位相は、図25に示した各波形の位相に対して−π/4(−45°)だけ異なっている。
図28は、仮想のMR素子列の第1の端部と第2の端部との間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形(符号330)を示している。図28には、図27および図28に示した電位差の周期的に変化する成分の波形(符号310,320)も示している。図26および図27に示したように、符号312,322で示す2次の電位差高調波成分の位相は、互いに逆相になる。従って、仮想のMR素子列では、2次の電位差高調波成分は相殺される。しかし、仮想のMR素子列では、符号313,323で示す3次の電位差高調波成分は相殺されず、符号320で示す電位差の周期的に変化する成分の波形は、正弦曲線から歪んでいる。
図29は、MR素子R323の両端間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形を示している。図30は、MR素子R324の両端間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形を示している。図31は、MR素子R322の両端間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形を示している。図32は、MR素子R321の両端間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形を示している。図29ないし図32に示した波形は、図21に示した角度φを45°とし、角度ψを30°とした場合における波形である。図29ないし図32において、符号340,350,360,370は、電位差の周期的に変化する成分の波形を示している。符号341,351,361,371は、理想的な正弦曲線を示している。符号342,352,362,372で示す波形は、MR素子の抵抗値高調波成分のうちの2次の高調波成分に起因して発生する2次の電位差高調波成分を示している。符号343,353,363,373で示す波形は、MR素子の抵抗値高調波成分のうちの3次の高調波成分に起因して発生する3次の電位差高調波成分を示している。
図29に示した各波形の位相は、図25に示した各波形の位相に対してπ/12(15°)だけ異なり、図26に示した各波形の位相に対して−π/6(−30°)だけ異なっている。図30に示した各波形の位相は、図25に示した各波形の位相に対して5π/12(75°)だけ異なり、図26に示した各波形の位相に対してπ/6(30°)だけ異なっている。図31に示した各波形の位相は、図25に示した各波形の位相に対して−π/12(−15°)だけ異なり、図27に示した各波形の位相に対してπ/6(30°)だけ異なっている。図32に示した各波形の位相は、図25に示した各波形の位相に対して−5π/12(−75°)だけ異なり、図27に示した各波形の位相に対してπ/6(30°)だけ異なっている。
図33は、第2のMR素子列R32の第1の端部と第2の端部との間の電位差のうち、周期的に変化する成分の波形(符号380)を示している。図33に示した波形は、図29ないし図32と同様に、図21に示した角度φを45°とし、角度ψを30°とした場合における波形である。図33には、図29ないし図32に示した電位差の周期的に変化する成分の波形(符号340,350,360,370)も示している。図29および図32に示したように、符号342,372で示す2次の電位差高調波成分の位相は、2φ(90°)だけ位相が異なるため、互いに逆相になる。図30および図31に示したように、符号352,362で示す2次の電位差高調波成分の位相は、2φ(90°)だけ位相が異なるため、互いに逆相になる。図29および図30に示したように、符号343,353で示す3次の電位差高調波成分の位相は、2ψ(60°)だけ位相が異なるため、互いに逆相になる。図31および図32に示したように、符号363,373で示す3次の電位差高調波成分の位相は、2ψ(60°)だけ位相が異なるため、互いに逆相になる。これにより、第2のMR素子列R32では、それを構成する4つのMR素子における2次および3次の電位差高調波成分が相殺される。その結果、符号380で示す電位差の周期的に変化する成分の波形は、図25において符号300で示した波形および図28おいて符号330で示した波形に比べて歪みが低減された、すなわち、電位差高調波成分が低減された正弦曲線となる。このようにして、本実施の形態によれば、第2のMR素子列R32において、次数の異なる2つ(2次および3次)の電位差高調波成分を低減することができる。他のMR素子列においても同様である。
本実施の形態によれば、φを45°とし、ψを30°とすることにより、上述のように各MR素子列において2次および3次の電位差高調波成分を低減することができる。その結果、本実施の形態によれば、2次および3次の電位差高調波成分に起因した回転磁界センサ5の検出角度の誤差を低減することが可能になる。
なお、ここまでは、φを45°とし、ψを30°として、各MR素子列において2次および3次の電位差高調波成分を低減する例について説明してきた。しかし、本実施の形態では、φまたはψを、それぞれ低減したい電位差高調波成分の周期の1/4に設定することにより、各MR素子列において、2種類の任意の次数の電位差高調波成分を低減することが可能である。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、各MR素子列がMR素子の対を4つ以上含み、各MR素子列において、3種類以上の次数の電位差高調波成分を低減できるようにしてもよい。例えば、第3の実施の形態における各MR素子の代りに、磁化固定層の磁化方向が、第3の実施の形態における各MR素子における磁化固定層の磁化方向に対して−22.5°、22.5°だけ異なる2つのMR素子を設けることによって、2次、3次および4次の電位差高調波成分に起因した回転磁界センサの検出角度の誤差を低減することが可能になる。