[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサの概略の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る磁気センサの概略の構成を示す斜視図である。図2は、本実施の形態における方向と角度の定義を示す説明図である。
図1に示したように、本実施の形態に係る磁気センサ1は、方向が回転する外部磁界MFの、基準位置における方向が基準方向に対してなす角度を検出するものである。図1には、方向が回転する外部磁界MFを発生する手段の例として、円柱状の磁石2を示している。この磁石2は、円柱の中心軸を含む仮想の平面を中心として対称に配置されたN極とS極とを有している。この磁石2は、円柱の中心軸を中心として回転する。これにより、磁石2が発生する外部磁界MFの方向は、円柱の中心軸を含む回転中心Cを中心として回転する。磁気センサ1は、磁石2の一方の端面に対向するように配置される。なお、後で、磁気センサ1の使用方法の他の例を示すが、方向が回転する外部磁界MFを発生する手段は、図1に示した磁石2に限られるものではない。
磁気センサ1は、第1の位置における外部磁界MFの方向が第1の方向に対してなす第1の角度を検出するための第1の検出部10と、第2の位置における外部磁界の方向が第2の方向に対してなす第2の角度を検出するための第2の検出部20とを備えている。図1では、理解を容易にするために、第1の検出部10と第2の検出部20を別体として描いているが、第1の検出部10と第2の検出部20は一体化されていてもよい。
ここで、図2を参照して、本実施の形態における方向と角度の定義について説明する。まず、図1に示した回転中心Cに平行で、磁石2の一方の端面から磁気センサ1に向かう方向をZ方向と定義する。次に、Z方向に垂直な仮想の平面上において、互いに直交する2つの方向をX方向とY方向と定義する。図2では、X方向を右側に向かう方向として表し、Y方向を上側に向かう方向として表している。また、X方向とは反対の方向を−X方向と定義し、Y方向とは反対の方向を−Y方向と定義する。
基準位置PRは、磁気センサ1が外部磁界MFを検出する位置である。基準位置PRは、例えば、第1の検出部10が配置されている位置とする。基準方向DRは、Y方向とする。基準位置PRにおける外部磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度を記号θで表す。外部磁界MFの方向DMは、図2において時計回り方向に回転するものとする。角度θは、基準方向DRから時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに負の値で表す。
第1の位置P1は、第1の検出部10が外部磁界MFを検出する位置である。本実施の形態では、第1の位置P1は基準位置PRと一致している。第1の方向D1は、第1の検出部10が外部磁界MFの方向DMを表すときの基準の方向である。本実施の形態では、第1の方向D1は基準方向DRと一致している。外部磁界MFの方向DMが第1の方向D1に対してなす第1の角度を記号θ1で表す。角度θ1の正負の定義は、角度θと同様である。本実施の形態では、角度θ1は角度θと一致する。
第2の位置P2は、第2の検出部20が外部磁界MFを検出する位置である。本実施の形態では、第2の位置P2は、外部磁界MFの回転方向について、第1の位置P1と同じ位置である。本実施の形態では、特に、第2の位置P2は、基準位置PRおよび第1の位置P1と一致している。第2の方向D2は、第2の検出部20が外部磁界MFの方向DMを表すときの基準の方向である。本実施の形態では、第2の方向D2は、XY平面に平行であって、第1の方向D1に対して、外部磁界MFの回転方向について45°傾いている。その理由については、後で詳しく説明する。外部磁界MFの方向DMが第2の方向D2に対してなす第2の角度を記号θ2で表す。角度θ2の正負の定義は、角度θと同様である。本実施の形態では、角度θ2は角度θよりも45°小さい。また、第2の方向D2から90°回転した方向を、記号D3で表す。
次に、図3を参照して、磁気センサ1の構成について詳しく説明する。図3は、磁気センサ1の構成を示す回路図である。磁気センサ1は、前述のように、第1の検出部10と第2の検出部20とを備えている。第1の検出部10は、第1および第2の検出回路11,12と、第1の演算回路13とを有している。第1および第2の検出回路11,12は、それぞれ外部磁界MFの一方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第1の演算回路13は、第1および第2の検出回路11,12の出力信号に基づいて第1の角度θ1の検出値である第1の検出角度θ1sを算出する。第1の検出回路11の出力信号の位相と第2の検出回路12の出力信号の位相は、各検出回路11,12の出力信号の周期の1/4の奇数倍だけ異なっている。
第2の検出部20の構成は、基本的には、第1の検出部10と同様である。すなわち、第2の検出部20は、第3および第4の検出回路21,22と、第2の演算回路23とを有している。第3および第4の検出回路21,22は、それぞれ外部磁界MFの一方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第2の演算回路23は、第3および第4の検出回路21,22の出力信号に基づいて第2の角度θ2の検出値である第2の検出角度θ2sを算出する。第3の検出回路21の出力信号の位相と第4の検出回路22の出力信号の位相は、各検出回路21,22の出力信号の周期の1/4の奇数倍だけ異なっている。
磁気センサ1は、更に、第1の検出部10によって得られた第1の検出角度θ1sと第2の検出部20によって得られた第2の検出角度θ2sとに基づいて、外部磁界MFの、基準位置PRにおける方向DMが基準方向DRに対してなす角度θの検出値θsを算出する第3の演算回路30を備えている。本実施の形態では、第3の演算回路30は、下記の式(1)によって、θsを算出する。
θs=(θ1s+θ2s+π/4)/2 …(1)
第1の検出回路11は、ホイートストンブリッジ回路14と、差分検出器15とを有している。ホイートストンブリッジ回路14は、電源ポートV1と、グランドポートG1と、2つの出力ポートE11,E12と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R11,R12と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R13,R14とを含んでいる。磁気検出素子R11,R13の各一端は、電源ポートV1に接続されている。磁気検出素子R11の他端は、磁気検出素子R12の一端と出力ポートE11に接続されている。磁気検出素子R13の他端は、磁気検出素子R14の一端と出力ポートE12に接続されている。磁気検出素子R12,R14の各他端は、グランドポートG1に接続されている。電源ポートV1には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG1はグランドに接続される。差分検出器15は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1の演算回路13に出力する。
第2の検出回路12は、ホイートストンブリッジ回路16と、差分検出器17とを有している。ホイートストンブリッジ回路16は、電源ポートV2と、グランドポートG2と、2つの出力ポートE21,E22と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R21,R22と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R23,R24とを含んでいる。磁気検出素子R21,R23の各一端は、電源ポートV2に接続されている。磁気検出素子R21の他端は、磁気検出素子R22の一端と出力ポートE21に接続されている。磁気検出素子R23の他端は、磁気検出素子R24の一端と出力ポートE22に接続されている。磁気検出素子R22,R24の各他端は、グランドポートG2に接続されている。電源ポートV2には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG2はグランドに接続される。差分検出器17は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第1の演算回路13に出力する。
第3の検出回路21は、ホイートストンブリッジ回路24と、差分検出器25とを有している。ホイートストンブリッジ回路24は、電源ポートV3と、グランドポートG3と、2つの出力ポートE31,E32と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R31,R32と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R33,R34とを含んでいる。磁気検出素子R31,R33の各一端は、電源ポートV3に接続されている。磁気検出素子R31の他端は、磁気検出素子R32の一端と出力ポートE31に接続されている。磁気検出素子R33の他端は、磁気検出素子R34の一端と出力ポートE32に接続されている。磁気検出素子R32,R34の各他端は、グランドポートG3に接続されている。電源ポートV3には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG3はグランドに接続される。差分検出器25は、出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号を第2の演算回路23に出力する。
第4の検出回路22は、ホイートストンブリッジ回路26と、差分検出器27とを有している。ホイートストンブリッジ回路26は、電源ポートV4と、グランドポートG4と、2つの出力ポートE41,E42と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R41,R42と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R43,R44とを含んでいる。磁気検出素子R41,R43の各一端は、電源ポートV4に接続されている。磁気検出素子R41の他端は、磁気検出素子R42の一端と出力ポートE41に接続されている。磁気検出素子R43の他端は、磁気検出素子R44の一端と出力ポートE42に接続されている。磁気検出素子R42,R44の各他端は、グランドポートG4に接続されている。電源ポートV4には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG4はグランドに接続される。差分検出器27は、出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号を第2の演算回路23に出力する。
本実施の形態では、ホイートストンブリッジ回路(以下、ブリッジ回路と記す。)14,16,24,26に含まれる全ての磁気検出素子として、MR素子、特にTMR素子を用いている。なお、TMR素子の代りにGMR素子を用いてもよい。TMR素子またはGMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、外部磁界MFの方向に応じて磁化の方向が変化する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。TMR素子では、非磁性層はトンネルバリア層である。GMR素子では、非磁性層は非磁性導電層である。TMR素子またはGMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。以下の説明では、ブリッジ回路14,16,24,26に含まれる磁気検出素子をMR素子と記す。図3において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は、MR素子における自由層の磁化の方向を表している。
第1の検出回路11では、MR素子R11,R14における磁化固定層の磁化の方向はX方向であり、MR素子R12,R13における磁化固定層の磁化の方向は−X方向である。この場合、外部磁界MFのX方向の成分の強度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。従って、第1の検出回路11は、外部磁界MFのX方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。図2に示した第1の角度θ1が0°のときと180°のときは、外部磁界MFのX方向の成分の強度は0である。第1の角度θ1が0°よりも大きく180゜よりも小さいときは、外部磁界MFのX方向の成分の強度は正の値である。第1の角度θ1が180°よりも大きく360゜よりも小さいときは、外部磁界MFのX方向の成分の強度は負の値である。
第2の検出回路12では、MR素子R21,R24における磁化固定層の磁化の方向はY方向であり、MR素子R22,R23における磁化固定層の磁化の方向は−Y方向である。この場合、外部磁界MFのY方向の成分の強度に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化する。従って、第2の検出回路12は、外部磁界MFのY方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。図2に示した第1の角度θ1が90°のときと270°のときは、外部磁界MFのY方向の成分の強度は0である。第1の角度θ1が0°以上90゜未満のとき、および270°より大きく360°以下のときは、外部磁界MFのY方向の成分の強度は正の値である。第1の角度θ1が90°よりも大きく270゜よりも小さいときは、外部磁界MFのY方向の成分の強度は負の値である。
図3に示した例では、第2の検出回路12におけるMRの磁化固定層の磁化方向は、第1の検出回路11におけるMR素子の磁化固定層の磁化方向に直交している。理想的には、第1の検出回路11の出力信号の波形はサイン(Sine)波形になり、第2の検出回路12の出力信号の波形はコサイン(Cosine)波形になる。この場合、検出回路11,12の出力信号の位相差は、検出回路11,12の出力信号の周期の1/4である。ここで、第1の検出回路11の出力信号をsinθ1sと表し、第2の検出回路12の出力信号をcosθ1sと表すと、第1の検出角度θ1sは、下記の式(2)によって算出することができる。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
θ1s=atan(sinθ1s/cosθ1s) …(2)
なお、360°の範囲内で、式(2)におけるθ1sの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、sinθ1sとcosθ1sの正負の組み合わせにより、θ1sの真の値が、式(2)におけるθ1sの2つの解のいずれであるかを判別することができる。すなわち、sinθ1sが正の値のときは、θ1sは0°よりも大きく180゜よりも小さい。sinθ1sが負の値のときは、θ1sは180°よりも大きく360゜よりも小さい。cosθ1sが正の値のときは、θ1sは、0°以上90゜未満、および270°より大きく360°以下の範囲内である。cosθ1sが負の値のときは、θ1sは、90°よりも大きく270゜よりも小さい。第1の演算回路13は、式(2)と、上記のsinθ1sとcosθ1sの正負の組み合わせの判定により、360°の範囲内でθ1sを求める。なお、検出回路11,12の出力信号の位相差が、検出回路11,12の出力信号の周期の1/4の場合に限らず、検出回路11,12の出力信号の位相差が、検出回路11,12の出力信号の周期の1/4の奇数倍であれば、θ1sを求めることができる。
第3の検出回路21では、MR素子R31,R34における磁化固定層の磁化の方向は、図2に示した方向D3であり、MR素子R32,R33における磁化固定層の磁化の方向は方向D3とは反対方向である。この場合、外部磁界MFの方向D3の成分の強度に応じて、出力ポートE31,E32の電位差が変化する。従って、第3の検出回路21は、外部磁界MFの方向D3の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。図2に示した第2の角度θ2が0°のときと180°のときは、外部磁界MFの方向D3の成分の強度は0である。第2の角度θ2が0°よりも大きく180゜よりも小さいときは、外部磁界MFの方向D3の成分の強度は正の値である。第2の角度θ2が180°よりも大きく360゜よりも小さいときは、外部磁界MFの方向D3の成分の強度は負の値である。
第4の検出回路22では、MR素子R41,R44における磁化固定層の磁化の方向は、図2に示した方向D2であり、MR素子R42,R43における磁化固定層の磁化の方向は方向D2とは反対方向である。この場合、外部磁界MFの方向D2の成分の強度に応じて、出力ポートE41,E42の電位差が変化する。従って、第4の検出回路22は、外部磁界MFの方向D2の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。図2に示した第2の角度θ2が90°のときと270°のときは、外部磁界MFの方向D2の成分の強度は0である。第2の角度θ2が0°以上90゜未満のとき、および270°より大きく360°以下のときは、外部磁界MFの方向D2の成分の強度は正の値である。第2の角度θ2が90°よりも大きく270゜よりも小さいときは、外部磁界MFの方向D2の成分の強度は負の値である。
図3に示した例では、第4の検出回路22におけるMRの磁化固定層の磁化方向は、第3の検出回路21におけるMR素子の磁化固定層の磁化方向に直交している。理想的には、第3の検出回路21の出力信号の波形はサイン(Sine)波形になり、第4の検出回路22の出力信号の波形はコサイン(Cosine)波形になる。この場合、検出回路21,22の出力信号の位相差は、検出回路21,22の出力信号の周期の1/4である。ここで、第3の検出回路21の出力信号をsinθ2sと表し、第4の検出回路22の出力信号をcosθ2sと表すと、第2の検出角度θ2sは、下記の式(3)によって算出することができる。
θ2s=atan(sinθ2s/cosθ2s) …(3)
第2の演算回路23は、前述のθ1sの求め方と同様に、式(3)と、sinθ2sとcosθ2sの正負の組み合わせの判定により、360°の範囲内でθ2sを求める。なお、検出回路21,22の出力信号の位相差が、検出回路21,22の出力信号の周期の1/4の場合に限らず、検出回路21,22の出力信号の位相差が、検出回路21,22の出力信号の周期の1/4の奇数倍であれば、θ2sを求めることができる。
なお、図2に示した第2の方向D2を、第1の方向D1に対して、外部磁界MFの回転方向について−45°傾けてもよい。この場合には、第3および第4の検出回路21,22に含まれる全てのMR素子の磁化固定層の磁化方向は、図3に示した方向から−90°回転させた方向に設定される。この場合には、第3の演算回路30は、式(1)の代りに、下記の式(4)を用いて、θsを算出する。
θs=(θ1s+θ2s−π/4)/2 …(4)
第1ないし第3の演算回路13,23,30は、例えば、1つのマイクロコンピュータによって実現することができる。
次に、図4を参照して、磁気センサ1におけるブリッジ回路14,16,24,26を一体化したユニット40の一例について説明する。図4は、このユニット40の平面図である。このユニット40は、基板41と、この基板41上に設けられたブリッジ回路14,16,24,26とを備えている。ブリッジ回路14,16,24,26の複数のポートは、基板41上において、基板41の周縁の近傍に配置されている。基板41上には、円形のMR素子配置領域が設けられている。このMR素子配置領域は、円周方向に16個の分割領域に分割されている。この16個の分割領域に、それぞれMR素子R11〜R14,R21〜R24,R31〜R34,R41〜R44が配置されている。また、基板41には、複数のMR素子と複数のポートとを電気的に接続するため配線が形成されている。
次に、図5および図6を参照して、図4に示したユニット40における任意のMR素子の構成の一例について説明する。図5は、図4における1つの分割領域に設けられた複数の下部電極を示す平面図である。図6は、図4における1つのMR素子の一部を示す斜視図である。この例では、1つのMR素子は、複数の下部電極と、複数のMR膜と、複数の上部電極とを有している。図5に示したように、1つの分割領域において、複数の下部電極42は基板41上に配置されている。個々の下部電極42は細長く、複数の下部電極42は、全体としてミアンダ形状となるように配列されている。下部電極42の長手方向に隣接する2つの下部電極42の間には、間隙が形成されている。図6に示したように、下部電極42の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR膜50が配置されている。MR膜50は、下部電極42側から順に積層された自由層51、非磁性層52、磁化固定層53および反強磁性層54を含んでいる。自由層51は、下部電極42に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層53との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層53の磁化の方向を固定する。複数の上部電極43は、複数のMR膜50の上に配置されている。個々の上部電極43は細長く、下部電極42の長手方向に隣接する2つの下部電極42上に配置されて隣接する2つのMR膜50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。複数の上部電極43は、複数の下部電極42と同様に、全体としてミアンダ形状となるように配列されている。このような構成により、図5および図6に示したMR素子は、複数の下部電極42と複数の上部電極43とによって直列に接続された複数のMR膜50を有している。なお、MR膜50における層51〜54の配置は、図6に示した配置とは上下が反対でもよい。
次に、図7ないし図10を参照して、磁気センサ1の作用および効果について説明する。磁気センサ1では、第1の検出部10によって、第1および第2の検出回路11,12の出力信号に基づいて第1の角度θ1の検出値である第1の検出角度θ1sを求める。また、第2の検出部20によって、第3および第4の検出回路21,22の出力信号に基づいて第2の角度θ2の検出値である第2の検出角度θ2sを求める。そして、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sとに基づいて、第3の演算回路30によって、外部磁界MFの、基準位置PRにおける方向DMが基準方向DRに対してなす角度θの検出値θsを算出する。
本実施の形態では、検出回路11,12,21,22の各出力信号の波形は、理想的には正弦曲線となる。しかし、実際には、MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪むことによって、検出回路11,12,21,22の各出力信号の波形は、正弦曲線から歪む。MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪む場合としては、例えば、MR素子の磁化固定層の磁化方向が外部磁界MF等の影響によって変動する場合や、MR素子の自由層の磁化方向が、自由層の形状異方性や保磁力等の影響によって、外部磁界MFの方向と一致しない場合がある。図7は、検出回路の出力信号の波形の歪みの態様を示している。図7には、検出回路11,12,21,22を代表して、検出回路12の出力信号の波形を示している。図7において、横軸は角度θを示し、縦軸は検出回路12の出力信号cosθ1sを示している。符号60は、理想的な正弦曲線を示している。符号61,62で示す2つの波形は、MR素子に起因して歪んだ波形を示している。
上述のようにMR素子に起因して検出回路11,12の出力信号の波形が歪むために、第1の検出角度θ1sは、外部磁界MFの方向DMが理想的に回転する場合に想定される第1の角度θ1の理論値に対する第1の角度誤差dθ1を含んでいる。同様に、MR素子に起因して検出回路21,22の出力信号の波形が歪むために、第2の検出角度θ2sは、外部磁界MFの方向DMが理想的に回転する場合に想定される第2の角度θ2の理論値に対する第2の角度誤差dθ2を含んでいる。第1の角度誤差dθ1と第2の角度誤差dθ2は、外部磁界MFの方向DMの変化に伴って互いに等しい誤差周期で周期的に変化し、且つ第1の角度誤差dθ1の変化は第1の検出角度θ1sの変化に依存し、第2の角度誤差dθ2の変化は第2の検出角度θ2sの変化に依存している。検出回路の出力信号の波形が図7に示したように歪む場合には、誤差周期は、各検出回路の出力信号の周期の1/4、すなわちπ/2(90°)となる。
図8は、第1の検出角度θ1sと第1の角度誤差dθ1との関係を示している。図8において、横軸は角度θ,θ1を示し、縦軸は角度θ1、第1の検出角度θ1sおよび第1の角度誤差dθ1を示している。なお、図8では、便宜上、縦軸における角度θと第1の検出角度θ1sの値については、実際の角度が90°〜270゜の範囲では180°を引いた値で表し、実際の角度が270°〜360゜の範囲では360°を引いた値で表している。これ以降の説明で使用する図8と同様の図においても、図8と同様の表し方を用いる。第2の検出角度θ2sと第2の角度誤差dθ2との関係は、図8と同様である。
本実施の形態では、第1の検出角度θ1sの位相と第2の検出角度θ2sの位相は、誤差周期の1/2すなわちπ/4(45°)だけ異なっている。これを実現するために、本実施の形態では、第2の方向D2を第1の方向D1に対して、外部磁界MFの回転方向について45°傾けている。本実施の形態によれば、第1の角度誤差dθ1と第2の角度誤差dθ2とを相殺することが可能になる。このことを、図9および図10を参照して説明する。図9において、(a)は、図8に示した第1の検出角度θ1sと第1の角度誤差dθ1との関係を示している。図9において、(b)は、第2の検出角度θ2sと第2の角度誤差dθ2との関係を示している。図9に示した例では、第1の角度誤差dθ1および第2の角度誤差dθ2の振幅は±6.7°である。本実施の形態では、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相を、誤差周期の1/2すなわちπ/4の奇数倍だけずらしている。そして、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sを用いて、角度θの検出値θsを算出する。従って、検出値θsを算出する際に、第1の角度誤差dθ1の位相と第2の角度誤差dθ2の位相は、互いに逆相になる。これにより、第1の角度誤差dθ1と第2の角度誤差dθ2とが相殺される。
図10は、上述のようにして算出された検出値θsと、この検出値θsに含まれる角度誤差dθとの関係を表している。図10に示されるように、角度誤差dθは、第1の角度誤差dθ1および第2の角度誤差dθ2に比べて、大幅に小さくなっている。図10に示した例では、角度誤差dθの振幅は±0.3°である。
なお、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相差は、誤差周期の1/2に限らず、誤差周期の1/2の奇数倍であればよい。この場合に、第1の角度誤差dθ1と第2の角度誤差dθ2が相殺されて、検出値θsに含まれる角度誤差dθを大幅に低減することができる。本実施の形態では、第1の位置P1と第2の位置P2は、外部磁界MFの回転方向について同じ位置である。この場合、第1の方向D1と第2の方向D2を、外部磁界MFの回転方向について、誤差周期の1/2の奇数倍に相当する空間上の角度だけ異ならせることにより、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相差を、誤差周期の1/2の奇数倍とすることができる。図2に示した例では、第1の方向D1と第2の方向D2を、外部磁界MFの回転方向について、誤差周期の1/2に相当する空間上の角度すなわち45°だけ異ならせている。
また、本実施の形態では、MR素子における磁化固定層の磁化の方向以外は全く同じ構成の2つの検出部10,20を用いて検出角度を補正している。そのため、各検出部における角度誤差が温度の関数であったとしても、温度による角度誤差の変動分も含めて各検出部における角度誤差を相殺して、検出角度を補正することができる。そのため、本実施の形態によれば、最終的に、温度による誤差の変動の少ない角度検出値を得ることが可能になる。
次に、図11ないし図14を参照して、磁気センサ1の使用方法の他の例について説明する。図11と図12は、それぞれ、1組以上のN極とS極が交互にリング状に配列された回転体71の外周部から発生する外部磁界の方向を、磁気センサ1によって検出する例を示している。これらの例では、図11、図12における紙面がXY平面となり、紙面に垂直な方向がZ方向となる。外部磁界は、Z方向を中心として回転する。なお、図11、図12に示した例では、回転体71は、2組のN極とS極とを含んでいる。この場合、回転体71が1回転する間に、外部磁界は2回転する。
図11に示した例では、第1の検出部10が外部磁界の方向を表すときの基準の方向である第1の方向D1を、回転体71の半径方向に設定している。第2の検出部20が外部磁界の方向を表すときの基準の方向である第2の方向D2は、XY平面内において、第1の方向D1に対して、外部磁界の回転方向について45°傾いている。
図12に示した例では、第1の方向D1と第2の方向D2とがなす角度を45°としながら、第1の方向D1と第2の方向D2を共に、XY平面内において、回転体71の半径方向に対して傾けている。回転体71の半径方向に対して方向D1,D2の各々がなす角度は、絶対値が等しい値すなわち22.5°と−22.5°であることが好ましい。それは、この場合には、検出部10と外部磁界との位置関係と、検出部20と外部磁界との位置関係とが同様になり、これらの位置関係が異なることによる補正が不要になるためである。
図13と図14は、それぞれ、複数組のN極とS極が交互に直線状に配列され、N極とS極が並ぶ方向に移動する移動体72の外周部から発生する外部磁界の方向を、磁気センサ1によって検出する例を示している。これらの例では、図13、図14における紙面がXY平面となり、紙面に垂直な方向がZ方向となる。外部磁界は、Z方向を中心として回転する。
図13に示した例では、第1の方向D1を、XY平面内において、移動体72の移動方向に直交する方向に設定している。第2の方向D2は、XY平面内において、第1の方向D1に対して、外部磁界の回転方向について45°傾いている。
図14に示した例では、第1の方向D1と第2の方向D2とがなす角度を45°としながら、第1の方向D1と第2の方向D2を共に、XY平面内において、移動体72の移動方向に直交する方向に対して傾けている。図12に示した例と同様に、移動体72の移動方向に直交する方向に対して方向D1,D2の各々がなす角度は、絶対値が等しい値すなわち22.5°と−22.5°であることが好ましい。
[第2の実施の形態]
次に、図15ないし図17を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る磁気センサについて説明する。本実施の形態に係る磁気センサ1では、第1の検出部10が外部磁界MFを検出する位置である第1の位置P1と、第2の検出部20が外部磁界MFを検出する位置である第2の位置P2を互いに異なる位置としている。すなわち、本実施の形態では、第1の検出部10と第2の検出部20は、異なる位置に配置されている。第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、誤差周期の1/2の奇数倍に相当する。
図15は、第1の実施の形態における図11と図12に示した例と同様に、回転体71の外周部から発生する外部磁界の方向を、磁気センサ1によって検出する例を示している。この例では、回転体71は、2組のN極とS極とを含み、回転体71が1回転する間に、外部磁界は2回転する。この場合、検出回路11,12,21,22の出力信号における1周期すなわち電気角の360°は、回転体71の1/2回転すなわち回転体71の回転角の180°に相当する。誤差周期は、検出回路の出力信号の周期の1/4であり、これは、電気角の90°、回転体71の回転角の45°に相当する。本実施の形態では、第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、誤差周期の1/2の奇数倍、すなわち電気角の45°の奇数倍、回転体71の回転角の22.5°の奇数倍である。図15には、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、回転体71の回転角の22.5°とした例を示している。
また、図15に示した例では、第1の検出部10が外部磁界の方向を表すときの基準の方向である第1の方向D1と第2の検出部20が外部磁界の方向を表すときの基準の方向である第2の方向D2を、共に回転体71の半径方向に設定している。これにより、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相差は、誤差周期の1/2の奇数倍、すなわち電気角の45°の奇数倍、回転体71の回転角の22.5°の奇数倍となる。
図16は、第1の実施の形態における図13と図14に示した例と同様に、移動体72の外周部から発生する外部磁界の方向を、磁気センサ1によって検出する例を示している。この例では、移動体72が、1ピッチ分すなわちN極とS極の1組分だけ移動すると外部磁界が1回転する。この場合、検出回路11,12,21,22の出力信号における1周期すなわち電気角の360°は、移動体72の1ピッチに相当する。誤差周期は、検出回路の出力信号の周期の1/4であり、これは、1/4ピッチに相当する。本実施の形態では、第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、誤差周期の1/2の奇数倍、すなわち1/8ピッチの奇数倍である。図16には、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、1/8ピッチとした例を示している。
また、図16に示した例では、第1の方向D1と第2の方向D2を、共にXY平面内において、移動体72の移動方向に直交する方向に設定している。これにより、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相差は、誤差周期の1/2の奇数倍、すなわち電気角の45°の奇数倍、1/8ピッチの奇数倍となる。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相差が、誤差周期の1/2の奇数倍であることから、第1の角度誤差dθ1と第2の角度誤差dθ2が相殺されて、検出値θsに含まれる角度誤差dθを大幅に低減することができる。
図17は、第1の検出部10におけるブリッジ回路14,16を一体化したユニット140の一例を示す平面図である。このユニット140は、基板141と、この基板141上に設けられたブリッジ回路14,16とを備えている。ブリッジ回路14,16の複数のポートは、基板141上において、基板141の周縁の近傍に配置されている。基板141上には、円形のMR素子配置領域が設けられている。このMR素子配置領域は、円周方向に8個の分割領域に分割されている。この8個の分割領域に、それぞれMR素子R11〜R14,R21〜R24が配置されている。また、基板141には、複数のMR素子と複数のポートとを電気的に接続するため配線が形成されている。第2の検出部20におけるブリッジ回路24,26を一体化したユニットも、ユニット140と同様に構成することができる。
なお、本実施の形態では、第1の検出部10と第2の検出部20を互いに異なる位置に配置することから、検出部10,20の取り付け精度の問題により、第1の位置P1と第2の位置P2とのずれ量が所望の値からずれて、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相差が、所望の値である電気角の45°の奇数倍からずれる可能性がある。ここで、この第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相差の所望の値からのずれ量を±αと表す。本実施の形態では、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sのピークの位相差等から、±αの値を見積もることが可能である。そして、式(1)の代りに、下記の式(5)を用いてθsを算出することにより、ずれ量±αの分を補正して、より正確な角度θを検出することが可能になる。
θs=(θ1s+θ2s+π/4±α)/2 …(5)
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、図18を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る磁気センサについて説明する。図18は、本実施の形態に係る磁気センサ1の構成を示す回路図である。本実施の形態に係る磁気センサ1では、検出回路11,12,21,22は、いずれも、ホイートストンブリッジ回路の代りにハーフブリッジ回路を有し、差分検出器を有していない。
検出回路11は、直列に接続されて、電源ポートV1とグランドポートG1の間に設けられた一対の磁気検出素子(MR素子)R11,R12を有している。磁気検出素子R11,R12の接続点から検出回路11の出力信号が得られる。検出回路12は、直列に接続されて、電源ポートV2とグランドポートG2の間に設けられた一対の磁気検出素子(MR素子)R21,R22を有している。磁気検出素子R21,R22の接続点から検出回路12の出力信号が得られる。
検出回路21は、直列に接続されて、電源ポートV3とグランドポートG3の間に設けられた一対の磁気検出素子(MR素子)R31,R32を有している。磁気検出素子R31,R32の接続点から検出回路21の出力信号が得られる。検出回路22は、直列に接続されて、電源ポートV4とグランドポートG4の間に設けられた一対の磁気検出素子(MR素子)R41,R42を有している。磁気検出素子R41,R42の接続点から検出回路22の出力信号が得られる。
各磁気検出素子(MR素子)R11,R12,R21,R22,R31,R32,R41,R42の磁化固定層の磁化の方向は、図3における同じ符号の磁気検出素子(MR素子)の磁化固定層の磁化の方向と同じである。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
次に、図19を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る磁気センサについて説明する。図19は、本実施の形態に係る磁気センサ1の構成を示す回路図である。本実施の形態に係る磁気センサ1では、ブリッジ回路14,16,24,26における全ての磁気検出素子として、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子を用いている。この場合には、外部磁界が1回転する間に、検出回路11,12,21,22の出力信号は2周期分変化する。従って、本実施の形態における検出回路11,12,21,22の出力信号の周期は、外部磁界の1/2回転に相当し、第1の実施の形態における検出回路11,12,21,22の出力信号の周期の1/2となる。また、本実施の形態では、誤差周期も、第1の実施の形態における誤差周期の1/2となる。
本実施の形態では、第2の検出部20が外部磁界の方向を表すときの基準の方向である第2の方向D2は、XY平面内において、第1の検出部10が外部磁界の方向を表すときの基準の方向である第1の方向D1に対して、外部磁界の回転方向について22.5°傾いている。
本実施の形態では、第3の演算回路30は、式(1)の代りに、下記の式(6)を用いて、θsを算出する。
θs=(θ1s+θ2s+π/8)/2 …(6)
なお、本実施の形態において、第2の方向D2を、XY平面内において、第1の方向D1に対して外部磁界の回転方向について−22.5°傾けてもよい。この場合には、第3の演算回路30は、式(6)の代りに、下記の式(7)を用いて、θsを算出する。
θs=(θ1s+θ2s−π/8)/2 …(7)
第1の実施の形態と同様に、本実施の形態においても、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相差は、誤差周期の1/2の奇数倍であり、これにより、第1の角度誤差dθ1と第2の角度誤差dθ2が相殺されて、検出値θsに含まれる角度誤差dθを大幅に低減することができる。
本実施の形態において、図11ないし図14に示した例のように磁気センサ1を使用する場合には、第2の方向D2を、XY平面内において、第1の方向D1に対して、外部磁界の回転方向について22.5°傾ける。図12に示した例のように磁気センサ1を使用する場合には、回転体71の半径方向に対して方向D1,D2の各々がなす角度は、絶対値が等しい値すなわち11.25°と−11.25°であることが好ましい。同様に、図14に示した例のように磁気センサ1を使用する場合には、移動体72の移動方向に直交する方向に対して方向D1,D2の各々がなす角度は、絶対値が等しい値すなわち11.25°と−11.25°であることが好ましい。
また、本実施の形態において、第2の実施の形態と同様に、第1の検出部10と第2の検出部20を異なる位置に配置して、第1の位置P1と第2の位置P2を互いに異なる位置としてもよい。この場合には、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、誤差周期の1/2の奇数倍に相当する量とする。この場合、図15に示した回転体71の外周部から発生する外部磁界の方向を、磁気センサ1によって検出する場合には、第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、回転体71の回転角の11.25°の奇数倍である。また、図16に示した移動体72の外周部から発生する外部磁界の方向を、磁気センサ1によって検出する場合には、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、1/16ピッチの奇数倍とする。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態において、AMR素子の代りに、ホール素子を用いてもよい。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態に係る磁気センサについて説明する。本実施の形態に係る磁気センサ1は、外部磁界に起因して発生する角度誤差を低減するのに適している。始めに、図20ないし図22を参照して、外部磁界に起因して角度誤差が発生する理由について説明する。図20は、1組以上のN極とS極が交互にリング状に配列された回転体71の外周部から発生する外部磁界の方向を磁気センサ1によって検出する例を示している。この例において、回転体71の半径方向の外部磁界の成分をHrとし、XY平面内で、Hrに直交する外部磁界の成分をHθとする。図21は、複数組のN極とS極が交互に直線状に配列され、N極とS極が並ぶ方向に移動する移動体72の外周部から発生する外部磁界の方向を磁気センサ1によって検出する例を示している。この例において、XY平面内において、移動体72の移動方向に直交する方向の外部磁界の成分をHrとし、XY平面内で、Hrに直交する外部磁界の成分をHθとする。
ここで、図20または図21に示した例において、第1の検出部10によって外部磁界の方向を検出して第1の検出角度θ1sを得る場合を考える。図22は、この場合におけるHr、Hθ、θ1sならびに第1の角度誤差dθ1の関係の一例を示している。図22において、横軸は、外部磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度θを示し、縦軸は、Hr、Hθ、θ1s、dθ1を示している。図20または図21に示した例では、外部磁界の方向や外部磁界の一方向の成分の強度が正弦関数的に変化しない場合がある。この場合、第1の検出角度θ1sは第1の角度誤差dθ1を含むことになる。この場合における第1の角度誤差dθ1の変化は、外部磁界の方向の変化に依存する。第1の角度誤差dθ1の誤差周期は、外部磁界の方向の回転の周期の1/2である。同様に、第2の検出部20によって外部磁界の方向を検出して第2の検出角度θ2sを得る場合も、第2の検出角度θ2sは、外部磁界の方向の変化に依存して変化する第2の角度誤差dθ2を含むことになる。
次に、図20および図21を参照して、本実施の形態に係る磁気センサ1の構成について説明する。本実施の形態に係る磁気センサ1では、第1の検出部10が外部磁界MFを検出する位置である第1の位置P1と、第2の検出部20が外部磁界MFを検出する位置である第2の位置P2を互いに異なる位置としている。すなわち、本実施の形態では、第1の検出部10と第2の検出部20は、異なる位置に配置されている。第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、誤差周期の1/2の奇数倍に相当する。これは、外部磁界の方向の回転の周期の1/4の奇数倍に相当する。図20および図21には、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、誤差周期の1/2に相当する量とした例を示している。
また、図20に示した例では、第1の検出部10が外部磁界の方向を表すときの基準の方向である第1の方向D1と第2の検出部20が外部磁界の方向を表すときの基準の方向である第2の方向D2を、共に回転体71の半径方向に設定している。図21に示した例では、第1の方向D1と第2の方向D2を、共にXY平面内において、移動体72の移動方向に直交する方向に設定している。これらの例では、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相差は、外部磁界の方向の回転の周期の1/4(電気角90°)となる。これらの例では、第3の演算回路30は、下記の式(8)によって、θsを算出する。
θs=(θ1s+θ2s+π/2)/2 …(8)
次に、図23および図24を参照して、本実施の形態に係る磁気センサ1によって、外部磁界に起因して発生する角度誤差を低減できることを説明する。図23において、(a)は、第1の検出角度θ1sと第1の角度誤差dθ1との関係を示している。図23において、(b)は、第2の検出角度θ2sと第2の角度誤差dθ2との関係を示している。図23に示した例では、第1の角度誤差dθ1および第2の角度誤差dθ2の振幅は±5.45°である。本実施の形態では、第1の位置P1と第2の位置P2を、誤差周期の1/2(電気角90°)の奇数倍に相当する量だけずらしている。そして、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sを用いて、角度θの検出値θsを算出する。従って、検出値θsを算出する際に、第1の角度誤差dθ1の位相と第2の角度誤差dθ2の位相は、互いに逆相になる。これにより、第1の角度誤差dθ1と第2の角度誤差dθ2とが相殺される。
図24は、上述のようにして算出された検出値θsと、この検出値θsに含まれる角度誤差dθとの関係を表している。図24に示されるように、角度誤差dθは、第1の角度誤差dθ1および第2の角度誤差dθ2に比べて、大幅に小さくなっている。図24に示した例では、角度誤差dθの振幅は±0.6°である。
なお、第1の位置P1と第2の位置P2のずれ量は、誤差周期の1/2に相当する量に限らず、誤差周期の1/2の奇数倍に相当する量であればよい。この場合に、第1の角度誤差dθ1と第2の角度誤差dθ2が相殺されて、検出値θsに含まれる角度誤差dθを大幅に低減することができる。
また、本実施の形態では、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相差は、電気角90°に限らず任意の大きさでよい。第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相差をβとすると、第3の演算回路30は、下記の式(9)によって、θsを算出する。
θs=(θ1s+θ2s+β)/2 …(9)
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態において、検出回路11,12,21,22を第3または第4の実施の形態における構成としてもよい。
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態に係る磁気センサについて説明する。本実施の形態に係る磁気センサ1は、MR素子に起因して発生する角度誤差の成分と、外部磁界に起因して発生する角度誤差の成分の両方を低減することを可能にするものである。
初めに、図25および図26を参照して、角度誤差が、MR素子に起因して発生する角度誤差の成分と、外部磁界に起因して発生する角度誤差の成分とを含む場合があることについて説明する。図25は、図20に示した例と同様に、回転体71の外周部から発生する外部磁界の方向を磁気センサ1によって検出する例を示している。図26は、図21に示した例と同様に、移動体72の外周部から発生する外部磁界の方向を磁気センサ1によって検出する例を示している。これらの例では、第5の実施の形態で説明したように、第1および第2の検出角度θ1s,θ2sは、それぞれ、外部磁界に起因して発生する角度誤差の成分を含む場合がある。また、第1の実施の形態で説明したように、第1および第2の検出角度θ1s,θ2sは、それぞれ、MR素子に起因して発生する角度誤差の成分を含む場合がある。
従って、第1の検出角度θ1sにおける第1の角度誤差dθ1と第2の検出角度θ2sにおける第2の角度誤差dθ2は、それぞれ、外部磁界に起因して発生する第1の誤差成分と、MR素子に起因して発生する第2の誤差成分とを含む場合がある。第1の誤差成分は、外部磁界の方向の変化に依存して、外部磁界の方向の回転の周期の1/2すなわち電気角180°の第1の誤差周期で変化する。第2の誤差成分は、検出回路11,12,21,22の出力信号の周期の1/4すなわち電気角90°の第2の誤差周期で変化する。
次に、本実施の形態に係る磁気センサ1の構成について説明する。本実施の形態に係る磁気センサ1では、第5の実施の形態と同様に、第1の検出部10と第2の検出部20を異なる位置に配置して、第1の位置P1と第2の位置P2を互いに異なる位置としている。第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、第1の誤差周期の1/2(電気角90°)の奇数倍に相当する。これは、外部磁界の方向の回転の周期の1/4の奇数倍に相当する。図25および図26には、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、第1の誤差周期の1/2(電気角90°)に相当する量とした例を示している。
また、本実施の形態では、第1の検出角度θ1sの位相と第2の検出角度θ2sの位相を、第2の誤差周期の1/2(電気角45°)の奇数倍だけ異ならせている。具体的には、図25に示した例では、第2の方向D2を、XY平面内において、回転体71の半径方向から45°傾けている。これにより、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相差は、第2の誤差周期の1/2(電気角45°)の3倍である電気角135°となる。また、図26に示した例では、第2の方向D2を、XY平面内において、移動体72の移動方向に直交する方向から45°傾けている。この場合も、第1の検出角度θ1sと第2の検出角度θ2sの位相差は、第2の誤差周期の1/2(電気角45°)の3倍である電気角135°となる。
図25および図26に示した例では、第3の演算回路30は、下記の式(10)によって、θsを算出する。
θs=(θ1s+θ2s+π/2+π/4)/2 …(10)
以上説明したように、本実施の形態では、第1の位置P1と第2の位置P2を、第1の誤差周期の1/2(電気角90°)の奇数倍に相当する量だけずらしている。これにより、検出値θsを算出する際に、第1の角度誤差dθ1中の第1の誤差成分の位相と第2の角度誤差dθ2中の第1の誤差成分の位相は、互いに逆相になる。これにより、第1の角度誤差dθ1中の第1の誤差成分と第2の角度誤差dθ2中の第1の誤差成分とが相殺される。
更に、本実施の形態では、第1の検出角度θ1sの位相と第2の検出角度θ2sの位相を、第2の誤差周期の1/2(電気角45°)の奇数倍だけ異ならせている。これにより、検出値θsを算出する際に、第1の角度誤差dθ1中の第2の誤差成分の位相と第2の角度誤差dθ2中の第2の誤差成分の位相は、互いに逆相になる。これにより、第1の角度誤差dθ1中の第2の誤差成分と第2の角度誤差dθ2中の第2の誤差成分とが相殺される。
以上の作用により、本実施の形態によれば、MR素子に起因して発生する角度誤差の成分と、外部磁界に起因して発生する角度誤差の成分の両方を低減することが可能になる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第5の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態において、検出回路11,12,21,22を第3または第4の実施の形態における構成としてもよい。
[第7の実施の形態]
次に、本発明の第7の実施の形態に係る磁気センサについて説明する。本実施の形態に係る磁気センサ1は、第6の実施の形態と同様に、MR素子に起因して発生する角度誤差の成分と、外部磁界に起因して発生する角度誤差の成分の両方を低減することを可能にするものである。
図27は、本実施の形態に係る磁気センサ1の構成を示すブロック図である。図27に示したように、本実施の形態に係る磁気センサ1は、第1および第2の複合検出部110A,110Bと、第4の演算回路111とを備えている。第4の演算回路111は、例えばマイクロコンピュータによって実現することができる。
複合検出部110A,110Bの構成は、それぞれ、第5の実施の形態に係る磁気センサ1の構成と同様である。具体的には、複合検出部110Aは、第1の検出部10、第2の検出部20および第3の演算回路30と同様の構成の第1の検出部10A、第2の検出部20Aおよび第3の演算回路30Aを備えている。同様に、複合検出部110Bは、第1の検出部10、第2の検出部20および第3の演算回路30と同様の構成の第1の検出部10B、第2の検出部20Bおよび第3の演算回路30Bを備えている。
第1の複合検出部110Aは、第1の基準位置PRAにおける外部磁界の方向が第1の基準方向DRAに対してなす角度θAの検出値θAsを求める。同様に、第2の複合検出部110Bは、第2の基準位置PRBにおける外部磁界の方向が第2の基準方向DRBに対してなす角度θBの検出値θBsを求める。第4の演算回路111は、複合検出部110A,110Bによって得られた検出値θAs,θBsに基づいて、基準位置PRにおける外部磁界の方向が基準方向DRに対してなす角度θの検出値θsを算出する。
検出部10A,20Aの相対的な位置関係は、第5の実施の形態における検出部10,20の相対的な位置関係と同様である。検出部10B,20Bの相対的な位置関係も、第5の実施の形態における検出部10,20の相対的な位置関係と同様である。本実施の形態では、検出部10B,20Bは、検出部10A,20Aに対して、外部磁界の方向の回転の周期の1/8すなわち電気角45°に相当する量だけずれた位置に配置されている。
図28は、図20に示した例と同様に、回転体71の外周部から発生する外部磁界の方向を磁気センサ1によって検出する例を示している。この例では、検出部10A,20Aは、図20に示した検出部10,20と同じ位置に配置されている。検出部10B,20Bは、検出部10A,20Aに対して、外部磁界の方向の回転の周期の1/8(電気角の45°)に相当する量、すなわち回転体71の回転角の22.5°だけずれた位置に配置されている。また、この例では、検出部10A,20A,10B,20Bが外部磁界の方向を表すときの基準の方向を、いずれも回転体71の半径方向に設定している。
図29は、図21に示した例と同様に、移動体72の外周部から発生する外部磁界の方向を磁気センサ1によって検出する例を示している。この例では、検出部10A,20Aは、図21に示した検出部10,20と同じ位置に配置されている。検出部10B,20Bは、検出部10A,20Aに対して、外部磁界の方向の回転の周期の1/8(電気角の45°)に相当する量、すなわち移動体72の1/8ピッチだけずれた位置に配置されている。また、この例では、検出部10A,20A,10B,20Bが外部磁界の方向を表すときの基準の方向を、いずれも、XY平面内において、移動体72の移動方向に直交する方向に設定している。
図28および図29に示した例では、検出値θAsの位相と検出値θBsの位相は、電気角45°だけ異なる。
次に、図30および図31を参照して、本実施の形態に係る磁気センサ1の作用および効果について説明する。第6の実施の形態と同様に、本実施の形態においても、検出部10A,20A,10B,20Bの検出角度における角度誤差は、外部磁界に起因して発生する第1の誤差成分と、MR素子に起因して発生する第2の誤差成分とを含むものとする。
第1の複合検出部110Aは、第1の基準位置PRAにおける外部磁界の方向が第1の基準方向DRAに対してなす角度θAの検出値θAsを求める。第2の複合検出部110Bは、第2の基準位置PRBにおける外部磁界の方向が第2の基準方向DRBに対してなす角度θBの検出値θBsを求める。第5の実施の形態において説明した原理により、検出値θAs,θBsにおいては、第1の誤差成分は低減されている。しかし、検出値θAs,θBsには、第2の誤差成分が含まれている。
本実施の形態では、複合検出部110A,110Bによって得られた検出値θAs,θBsに基づいて、第4の演算回路111によって、基準位置PRにおける外部磁界の方向が基準方向DRに対してなす角度θの検出値θsを算出する。その際、検出値θAsの位相と検出値θBsの位相は、第2の誤差周期の1/2(電気角45°)だけ異なっている。第4の演算回路111は、下記の式(11)によって、θsを算出する。
θs=(θAs+θBs+π/4)/2 …(11)
本実施の形態では、検出値θsを算出する際に、検出値θAs中の第2の誤差成分の位相と検出値θBs中の第2の誤差成分の位相は、互いに逆相になる。これにより、検出値θAs中の第2の誤差成分と検出値θBs中の第2の誤差成分が相殺される。このことを、図30および図31を参照して説明する。
図30において、(a)は、検出値θAsとそれに含まれる角度誤差dθAとの関係を示している。図30において、(b)は、検出値θBsとそれに含まれる角度誤差dθBとの関係を示している。角度誤差dθA,dθBの主要な成分は、第2の誤差成分である。そのため、角度誤差dθA,dθBの周期は、第2の誤差周期(電気角90°)になっている。図30に示した例では、角度誤差dθA,dθBの振幅は±0.6°である。本実施の形態では、前述のように、検出値θAsの位相と検出値θBsの位相は、第2の誤差周期の1/2(電気角45°)だけ異なっている。従って、検出値θsを算出する際に、角度誤差dθAの位相と角度誤差dθBの位相は、互いに逆相になる。これにより、角度誤差dθAと角度誤差dθBとが相殺される。
図31は、上述のようにして算出された検出値θsと、この検出値θsに含まれる角度誤差dθとの関係を表している。図31に示されるように、角度誤差dθは、角度誤差dθA,dθBに比べて、大幅に小さくなっている。図31に示した例では、角度誤差dθの振幅は±0.09°である。なお、検出値θAsと検出値θBsの位相差は、第2の誤差周期の1/2に限らず、第2の誤差周期の1/2の奇数倍であればよい。
以上の作用により、本実施の形態によれば、MR素子に起因して発生する角度誤差の成分と、外部磁界に起因して発生する角度誤差の成分の両方を低減することが可能になる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第5の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態において、検出回路を第3または第4の実施の形態における構成としてもよい。
[第8の実施の形態]
次に、本発明の第8の実施の形態に係る磁気センサについて説明する。本実施の形態に係る磁気センサ1は、第6および第7の実施の形態と同様に、MR素子に起因して発生する角度誤差の成分と、外部磁界に起因して発生する角度誤差の成分の両方を低減することを可能にするものである。
本実施の形態に係る磁気センサ1は、第7の実施の形態と同様に、第1および第2の複合検出部110A,110Bと、第4の演算回路111とを備えている。本実施の形態に係る磁気センサ1の基本的な構成は、図27に示した通りである。ただし、以下で説明するように、本実施の形態における複合検出部110A,110Bは、第7の実施の形態における複合検出部110A,110Bとは異なる点もある。
本実施の形態における複合検出部110A,110Bの構成は、それぞれ、第1の実施の形態に係る磁気センサ1の構成と同様である。具体的には、複合検出部110Aは、第1の検出部10、第2の検出部20および第3の演算回路30と同様の構成の第1の検出部10A、第2の検出部20Aおよび第3の演算回路30Aを備えている。同様に、複合検出部110Bは、第1の検出部10、第2の検出部20および第3の演算回路30と同様の構成の第1の検出部10B、第2の検出部20Bおよび第3の演算回路30Bを備えている。
第1の複合検出部110Aは、第1の基準位置PRAにおける外部磁界の方向が第1の基準方向DRAに対してなす角度θAの検出値θAsを求める。同様に、第2の複合検出部110Bは、第2の基準位置PRBにおける外部磁界の方向が第2の基準方向DRBに対してなす角度θBの検出値θBsを求める。第4の演算回路111は、複合検出部110A,110Bによって得られた検出値θAs,θBsに基づいて、基準位置PRにおける外部磁界の方向が基準方向DRに対してなす角度θの検出値θsを算出する。
検出部10A,20Aの相対的な位置関係は、第1の実施の形態における検出部10,20の相対的な位置関係と同様である。検出部10B,20Bの相対的な位置関係も、第1の実施の形態における検出部10,20の相対的な位置関係と同様である。本実施の形態では、検出部10B,20Bは、検出部10A,20Aに対して、外部磁界の方向の回転の周期の1/4すなわち電気角90°に相当する量だけずれた位置に配置されている。
図32は、図11に示した例と同様に、回転体71の外周部から発生する外部磁界の方向を磁気センサ1によって検出する例を示している。この例では、検出部10A,20Aは、図11に示した検出部10,20と同じ位置に配置されている。検出部10B,20Bは、検出部10A,20Aに対して、外部磁界の方向の回転の周期の1/4(電気角の90°)に相当する量、すなわち回転体71の回転角の45°だけずれた位置に配置されている。
また、図32に示した例では、検出部10A,10Bのそれぞれにおける第1の方向を、回転体71の半径方向に設定している。検出部20Aにおける第2の方向は、XY平面内において、検出部10Aにおける第1の方向に対して、外部磁界の回転方向について45°傾いている。同様に、検出部20Bにおける第2の方向は、XY平面内において、検出部10Bにおける第1の方向に対して、外部磁界の回転方向について45°傾いている。なお、検出部10A,20Aを、図12に示した検出部10,20と同じ位置に配置し、この検出部10A,20Aに対して、検出部10B,20Bを、外部磁界の方向の回転の周期の1/4(電気角の90°)に相当する量、すなわち回転体71の回転角の45°だけずれた位置に配置してもよい。
図33は、図13に示した例と同様に、移動体72の外周部から発生する外部磁界の方向を磁気センサ1によって検出する例を示している。この例では、検出部10A,20Aは、図13に示した検出部10,20と同じ位置に配置されている。検出部10B,20Bは、検出部10A,20Aに対して、外部磁界の方向の回転の周期の1/4(電気角の90°)に相当する量、すなわち移動体72の1/4ピッチだけずれた位置に配置されている。また、この例では、検出部10A,10Bのそれぞれにおける第1の方向を、XY平面内において、移動体72の移動方向に直交する方向に設定している。検出部20Aにおける第2の方向は、XY平面内において、検出部10Aにおける第1の方向に対して、外部磁界の回転方向について45°傾いている。同様に、検出部20Bにおける第2の方向は、XY平面内において、検出部10Bにおける第1の方向に対して、外部磁界の回転方向について45°傾いている。なお、検出部10A,20Aを、図14に示した検出部10,20と同じ位置に配置し、この検出部10A,20Aに対して、検出部10B,20Bを、外部磁界の方向の回転の周期の1/4(電気角の90°)に相当する量、すなわち移動体72の1/4ピッチだけずれた位置に配置してもよい。
図32および図33に示した例では、検出値θAsの位相と検出値θBsの位相は、電気角90°だけ異なる。
次に、図34および図35を参照して、本実施の形態に係る磁気センサ1の作用および効果について説明する。第6および第7の実施の形態と同様に、本実施の形態においても、検出部10A,20A,10B,20Bの検出角度における角度誤差は、外部磁界に起因して発生する第1の誤差成分と、MR素子に起因して発生する第2の誤差成分とを含むものとする。
第1の複合検出部110Aは、第1の基準位置PRAにおける外部磁界の方向が第1の基準方向DRAに対してなす角度θAの検出値θAsを求める。第2の複合検出部110Bは、第2の基準位置PRBにおける外部磁界の方向が第2の基準方向DRBに対してなす角度θBの検出値θBsを求める。第1の実施の形態において説明した原理により、検出値θAs,θBsにおいては、第2の誤差成分は低減されている。しかし、検出値θAs,θBsには、第1の誤差成分が含まれている。
本実施の形態では、複合検出部110A,110Bによって得られた検出値θAs,θBsに基づいて、第4の演算回路111によって、基準位置PRにおける外部磁界の方向が基準方向DRに対してなす角度θの検出値θsを算出する。その際、検出値θAsの位相と検出値θBsの位相は、第1の誤差周期の1/2(電気角90°)だけ異なっている。第4の演算回路111は、下記の式(12)によって、θsを算出する。
θs=(θAs+θBs+π/2)/2 …(12)
本実施の形態では、検出値θsを算出する際に、検出値θAs中の第1の誤差成分の位相と検出値θBs中の第1の誤差成分の位相は、互いに逆相になる。これにより、検出値θAs中の第1の誤差成分と検出値θBs中の第1の誤差成分が相殺される。このことを、図34および図35を参照して説明する。
図34において、(a)は、検出値θAsとそれに含まれる角度誤差dθAとの関係を示している。図34において、(b)は、検出値θBsとそれに含まれる角度誤差dθBとの関係を示している。角度誤差dθA,dθBの主要な成分は、第1の誤差成分である。そのため、角度誤差dθA,dθBの周期は、第1の誤差周期(電気角180°)になっている。本実施の形態では、前述のように、検出値θAsの位相と検出値θBsの位相は、第1の誤差周期の1/2(電気角90°)だけ異なっている。従って、検出値θsを算出する際に、角度誤差dθAの位相と角度誤差dθBの位相は、互いに逆相になる。これにより、角度誤差dθAと角度誤差dθBとが相殺される。
図35は、上述のようにして算出された検出値θsと、この検出値θsに含まれる角度誤差dθとの関係を表している。図35に示されるように、角度誤差dθは、角度誤差dθA,dθBに比べて、大幅に小さくなっている。なお、検出値θAsと検出値θBsの位相差は、第1の誤差周期の1/2に限らず、第1の誤差周期の1/2の奇数倍であればよい。
以上の作用により、本実施の形態によれば、MR素子に起因して発生する角度誤差の成分と、外部磁界に起因して発生する角度誤差の成分の両方を低減することが可能になる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第5の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態において、検出回路を第3または第4の実施の形態における構成としてもよい。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、各実施の形態における複数の検出部の配置は一例であり、複数の検出部の配置は、特許請求の範囲に記載された要件を満たす範囲内で種々の変更が可能である。