[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る回転磁界センサの概略の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る回転磁界センサの概略の構成を示す斜視図である。図2は、本実施の形態における方向と角度の定義を示す説明図である。
図1に示したように、本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、基準位置における回転磁界MFの方向が基準方向に対してなす角度を検出するものである。図1には、方向が回転する回転磁界MFを発生する手段の例として、円柱状の磁石2を示している。この磁石2は、円柱の中心軸を含む仮想の平面を中心として対称に配置されたN極とS極とを有している。この磁石2は、円柱の中心軸を中心として回転する。これにより、磁石2が発生する回転磁界MFの方向は、円柱の中心軸を含む回転中心Cを中心として回転する。回転磁界センサ1は、磁石2の一方の端面に対向するように配置される。なお、後で、他の実施の形態で説明するように、方向が回転する回転磁界MFを発生する手段は、図1に示した磁石2に限られるものではない。
回転磁界センサ1は、第1の位置において回転磁界MFを検出する第1の検出部10と、第2の位置において回転磁界MFを検出する第2の検出部20とを備えている。図1では、理解を容易にするために、第1の検出部10と第2の検出部20を別体として描いているが、第1の検出部10と第2の検出部20は一体化されていてもよい。
ここで、図2を参照して、本実施の形態における方向と角度の定義について説明する。まず、図1に示した回転中心Cに平行で、磁石2の一方の端面から回転磁界センサ1に向かう方向をZ方向と定義する。次に、Z方向に垂直な仮想の平面上において、互いに直交する2つの方向をX方向とY方向と定義する。図2では、X方向を右側に向かう方向として表し、Y方向を上側に向かう方向として表している。また、X方向とは反対の方向を−X方向と定義し、Y方向とは反対の方向を−Y方向と定義する。
基準位置PRは、回転磁界センサ1が回転磁界MFを検出する位置である。基準位置PRは、例えば、第1の検出部10が配置されている位置とする。基準方向DRは、Y方向とする。基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度を記号θで表す。回転磁界MFの方向DMは、図2において時計回り方向に回転するものとする。角度θは、基準方向DRから時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに負の値で表す。
第1の検出部10は、第1の位置P1において、回転磁界MFの第1の方向D1の成分と、回転磁界MFの第2の方向D2の成分とを検出する。第2の検出部20は、第2の位置P2において、回転磁界MFの第3の方向D3の成分と、回転磁界MFの第4の方向D4の成分とを検出する。本実施の形態では、第1の方向D1と第2の方向D2は直交し、第3の方向D3と第4の方向D4も直交している。第1の位置P1と第2の位置P2は、回転磁界MFの回転方向について同じ位置であり、基準位置PRと一致している。第1の方向D1と第3の方向D3は、回転磁界MFの回転方向について60°だけ異なっている。
また、本実施の形態では、第2の方向D2は、基準方向DR(Y方向)と一致している。ここで、第1の位置P1において回転磁界MFの方向DMが第2の方向D2に対してなす角度を第1の角度と呼び、記号θ1で表す。角度θ1の正負の定義は、角度θと同様である。本実施の形態では、角度θ1は角度θと一致する。第1の方向D1は、第2の方向D2から90°回転した方向である。
第3の方向D3は第1の方向D1から−60°回転した方向であり、第4の方向D4は第2の方向D2から−60°回転した方向である。また、第3の方向D3は、第4の方向D4から90°回転した方向である。ここで、第2の位置P2において回転磁界MFの方向DMが第4の方向D4に対してなす角度を第2の角度と呼び、記号θ2で表す。角度θ2の正負の定義は、角度θと同様である。本実施の形態では、角度θ2は角度θよりも60°だけ大きい。
次に、図3を参照して、回転磁界センサ1の構成について詳しく説明する。図3は、回転磁界センサ1の構成を示す回路図である。回転磁界センサ1は、前述のように、第1の検出部10と第2の検出部20とを備えている。第1の検出部10は、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する第1の検出回路11と、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する第2の検出回路12とを有している。第2の検出部20は、回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する第3の検出回路21と、回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する第4の検出回路22とを有している。第1ないし第4の検出回路11,12,21,22は、少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。
第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の出力信号は、互いに等しい信号周期Tで周期的に変化する。第3の検出回路21の出力信号の位相は、第1の検出回路11の出力信号の位相と異なっている。第4の検出回路22の出力信号の位相は、第2の検出回路12の出力信号の位相と異なっている。本実施の形態では、第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の出力信号の位相の関係は、特に以下のようになっていることが好ましい。
第2の検出回路12の出力信号の位相は、第1の検出回路11の出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。第4の検出回路22の出力信号の位相は、第3の検出回路21の出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。ただし、磁気検出素子の作製の精度等の観点から、第1の検出回路11の出力信号と第2の検出回路12の出力信号の位相差と、第3の検出回路21の出力信号と第4の検出回路22の出力信号の位相差は、それぞれ、信号周期Tの1/4の奇数倍から、わずかにずれていてもよい。
第3の検出回路21の出力信号の位相は、第1の検出回路11の出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/2の整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍だけ異なっていることが好ましい。なお、「信号周期Tの1/2の整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍」というのは、信号周期Tの1/6の整数倍となる複数の位相差であって、そのうち、信号周期Tの1/2の整数倍(0倍を含む)となる複数の位相差を除いたものを指す。以下の説明では、第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の出力信号の位相の関係が上記の好ましい関係になっているものとする。
第1ないし第4の検出回路11,12,21,22は、それぞれ、少なくとも1つの磁気検出素子として、直列に接続された一対の磁気検出素子を含んでいてもよい。この場合、第1ないし第4の検出回路11,12,21,22は、それぞれ、直列に接続された第1の対の磁気検出素子と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子とを含むホイートストンブリッジ回路を有していてもよい。以下、第1ないし第4の検出回路11,12,21,22が、それぞれ上記ホイートストンブリッジ回路を有している場合の例について説明する。
第1の検出回路11は、ホイートストンブリッジ回路14を有している。ホイートストンブリッジ回路14は、電源ポートV1と、グランドポートG1と、2つの出力ポートE11,E12と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R11,R12と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R13,R14とを含んでいる。磁気検出素子R11,R13の各一端は、電源ポートV1に接続されている。磁気検出素子R11の他端は、磁気検出素子R12の一端と出力ポートE11に接続されている。磁気検出素子R13の他端は、磁気検出素子R14の一端と出力ポートE12に接続されている。磁気検出素子R12,R14の各他端は、グランドポートG1に接続されている。電源ポートV1には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG1はグランドに接続される。
第2の検出回路12は、ホイートストンブリッジ回路16を有している。ホイートストンブリッジ回路16は、電源ポートV2と、グランドポートG2と、2つの出力ポートE21,E22と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R21,R22と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R23,R24とを含んでいる。磁気検出素子R21,R23の各一端は、電源ポートV2に接続されている。磁気検出素子R21の他端は、磁気検出素子R22の一端と出力ポートE21に接続されている。磁気検出素子R23の他端は、磁気検出素子R24の一端と出力ポートE22に接続されている。磁気検出素子R22,R24の各他端は、グランドポートG2に接続されている。電源ポートV2には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG2はグランドに接続される。
第3の検出回路21は、ホイートストンブリッジ回路24を有している。ホイートストンブリッジ回路24は、電源ポートV3と、グランドポートG3と、2つの出力ポートE31,E32と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R31,R32と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R33,R34とを含んでいる。磁気検出素子R31,R33の各一端は、電源ポートV3に接続されている。磁気検出素子R31の他端は、磁気検出素子R32の一端と出力ポートE31に接続されている。磁気検出素子R33の他端は、磁気検出素子R34の一端と出力ポートE32に接続されている。磁気検出素子R32,R34の各他端は、グランドポートG3に接続されている。電源ポートV3には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG3はグランドに接続される。
第4の検出回路22は、ホイートストンブリッジ回路26を有している。ホイートストンブリッジ回路26は、電源ポートV4と、グランドポートG4と、2つの出力ポートE41,E42と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R41,R42と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R43,R44とを含んでいる。磁気検出素子R41,R43の各一端は、電源ポートV4に接続されている。磁気検出素子R41の他端は、磁気検出素子R42の一端と出力ポートE41に接続されている。磁気検出素子R43の他端は、磁気検出素子R44の一端と出力ポートE42に接続されている。磁気検出素子R42,R44の各他端は、グランドポートG4に接続されている。電源ポートV4には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG4はグランドに接続される。
本実施の形態では、ホイートストンブリッジ回路(以下、ブリッジ回路と記す。)14,16,24,26に含まれる全ての磁気検出素子として、MR素子、特にTMR素子を用いている。なお、TMR素子の代りにGMR素子を用いてもよい。TMR素子またはGMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、回転磁界MFの方向に応じて磁化の方向が変化する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。TMR素子では、非磁性層はトンネルバリア層である。GMR素子では、非磁性層は非磁性導電層である。TMR素子またはGMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。以下の説明では、ブリッジ回路14,16,24,26に含まれる磁気検出素子をMR素子と記す。図3において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は、MR素子における自由層の磁化の方向を表している。
第1の検出回路11では、MR素子R11,R14における磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向D1に平行な方向であり、MR素子R12,R13における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R11,R14における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。従って、第1の方向D1は、第1の検出回路11が回転磁界MFを検出するときの基準の方向であり、第1の検出回路11は、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。具体的には、出力ポートE11,E12の電位差が、第1の検出回路11の出力信号である。図3に示した例では、MR素子R11,R14における磁化固定層の磁化の方向はX方向であり、MR素子R12,R13における磁化固定層の磁化の方向は−X方向である。この例では、第1の方向D1は、X方向と同じ方向になる。
第2の検出回路12では、MR素子R21,R24における磁化固定層の磁化の方向は、第2の方向D2に平行な方向であり、MR素子R22,R23における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R21,R24における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化する。従って、第2の方向D2は、第2の検出回路12が回転磁界MFを検出するときの基準の方向であり、第2の検出回路12は、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。具体的には、出力ポートE21,E22の電位差が、第2の検出回路12の出力信号である。図3に示した例では、MR素子R21,R24における磁化固定層の磁化の方向はY方向であり、MR素子R22,R23における磁化固定層の磁化の方向は−Y方向である。この例では、第2の方向D2は、Y方向と同じ方向になる。
第3の検出回路21では、MR素子R31,R34における磁化固定層の磁化の方向は、第3の方向D3に平行な方向であり、MR素子R32,R33における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R31,R34における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度に応じて、出力ポートE31,E32の電位差が変化する。従って、第3の方向D3は、第3の検出回路21が回転磁界MFを検出するときの基準の方向であり、第3の検出回路21は、回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。具体的には、出力ポートE31,E32の電位差が、第3の検出回路21の出力信号である。図3に示した例では、MR素子R31,R34における磁化固定層の磁化の方向は、図2に示した第3の方向D3と同じ方向であり、MR素子R32,R33における磁化固定層の磁化の方向は第3の方向D3とは反対方向である。
第4の検出回路22では、MR素子R41,R44における磁化固定層の磁化の方向は、第4の方向D4に平行な方向であり、MR素子R42,R43における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R41,R44における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度に応じて、出力ポートE41,E42の電位差が変化する。従って、第4の方向D4は、第4の検出回路22が回転磁界MFを検出するときの基準の方向であり、第4の検出回路22は、回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。具体的には、出力ポートE41,E42の電位差が、第4の検出回路22の出力信号である。図3に示した例では、MR素子R41,R44における磁化固定層の磁化の方向は、図2に示した第4の方向D4と同じ方向であり、MR素子R42,R43における磁化固定層の磁化の方向は第4の方向D4とは反対方向である。
なお、検出回路11,12,21,22内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
ここで、図4を参照して、MR素子の構成の一例について説明する。図4は、図3に示した回転磁界センサ1における1つのMR素子の一部を示す斜視図である。この例では、1つのMR素子は、複数の下部電極と、複数のMR膜と、複数の上部電極とを有している。複数の下部電極42は図示しない基板上に配置されている。個々の下部電極42は細長い形状を有している。下部電極42の長手方向に隣接する2つの下部電極42の間には、間隙が形成されている。図4に示したように、下部電極42の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR膜50が配置されている。MR膜50は、下部電極42側から順に積層された自由層51、非磁性層52、磁化固定層53および反強磁性層54を含んでいる。自由層51は、下部電極42に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層53との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層53の磁化の方向を固定する。複数の上部電極43は、複数のMR膜50の上に配置されている。個々の上部電極43は細長い形状を有し、下部電極42の長手方向に隣接する2つの下部電極42上に配置されて隣接する2つのMR膜50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。このような構成により、図4に示したMR素子は、複数の下部電極42と複数の上部電極43とによって直列に接続された複数のMR膜50を有している。なお、MR膜50における層51〜54の配置は、図4に示した配置とは上下が反対でもよい。
回転磁界センサ1は、更に、演算部30を備えている。図3に示したように、演算部30は、第1ないし第3の演算回路31,32,33を有している。第1の演算回路31は、第1および第3の検出回路11,21の出力信号に基づいて、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度と回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度の両方と対応関係を有する第1の信号を生成する。第2の演算回路32は、第2および第4の検出回路12,22の出力信号に基づいて、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度と回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度の両方と対応関係を有する第2の信号を生成する。第3の演算回路33は、第1の信号および第2の信号に基づいて、基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度θと対応関係を有する角度検出値θsを算出する。第1ないし第3の演算回路31,32,33は、例えば、1つのマイクロコンピュータによって実現することができる。第1および第2の信号の生成方法と角度検出値θsの算出方法については、後で詳しく説明する。
演算部30は、更に、8つの入力ポートIN1〜IN8と、出力ポートOUT1とを有している。入力ポートIN1〜IN8は、それぞれ、出力ポートE11,E12,E21,E22,E31,E32,E41,E42に接続されている。
演算部30は、更に、8つのアナログ−デジタル変換器(以下、A/D変換器と記す。)AD1〜AD8と、8つのスイッチSW1〜SW8とを有している。スイッチSW1〜SW8は、それぞれ、第1のポートと第2のポートとを有し、第1のポートと第2のポートとの間における導通状態と非導通状態が選択されるようになっている。A/D変換器AD1〜AD8の入力端は、それぞれ、入力ポートIN1〜IN8に接続されている。A/D変換器AD1〜AD8は、それぞれ、出力ポートE11,E12,E21,E22,E31,E32,E41,E42に現れる電位をデジタル信号に変換して出力する。スイッチSW1〜SW8の第1のポートは、それぞれ、A/D変換器AD1〜AD8の出力端に接続されている。
演算部30は、更に、4つの差分回路111,112,121,122を有している。差分回路111,112,121,122は、それぞれ、第1および第2の入力端と出力端とを有している。差分回路111の第1の入力端は、スイッチSW1の第2のポートに接続されている。差分回路111の第2の入力端は、スイッチSW2の第2のポートに接続されている。差分回路112の第1の入力端は、スイッチSW3の第2のポートに接続されている。差分回路112の第2の入力端は、スイッチSW4の第2のポートに接続されている。差分回路121の第1の入力端は、スイッチSW5の第2のポートに接続されている。差分回路121の第2の入力端は、スイッチSW6の第2のポートに接続されている。差分回路122の第1の入力端は、スイッチSW7の第2のポートに接続されている。差分回路122の第2の入力端は、スイッチSW8の第2のポートに接続されている。
第1ないし第3の演算回路31〜33は、それぞれ第1および第2の入力端と出力端とを有している。第1の演算回路31の第1の入力端は、差分回路111の出力端に接続されている。第1の演算回路31の第2の入力端は、差分回路121の出力端に接続されている。第2の演算回路32の第1の入力端は、差分回路112の出力端に接続されている。第2の演算回路32の第2の入力端は、差分回路122の出力端に接続されている。第3の演算回路33の第1の入力端は、第1の演算回路31の出力端に接続されている。第3の演算回路33の第2の入力端は、第2の演算回路32の出力端に接続されている。第3の演算回路33の出力端は、出力ポートOUT1に接続されている。
通常時には、スイッチSW1〜SW8は導通状態になっている。このとき、差分回路111は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1の演算回路31に出力する。差分回路112は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第2の演算回路32に出力する。差分回路121は、出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号を第1の演算回路31に出力する。差分回路122は、出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号を第2の演算回路32に出力する。
また、演算部30は、フェイルセーフ(Fail safe)機能を有している。演算部30は、フェイルセーフ機能を制御する制御部34を有している。制御部34は、スイッチSW1〜SW8を制御する。制御部34は、第1ないし第3の演算回路31〜33と同様にマイクロコンピュータによって実現することができる。フェイルセーフ機能については、後で詳しく説明する。
次に、通常時における第1および第2の信号の生成方法と角度検出値θsの算出方法について説明する。図3に示した例では、理想的には、第2の検出回路12におけるMR素子の磁化固定層の磁化方向は、第1の検出回路11におけるMR素子の磁化固定層の磁化方向に直交している。理想的には、差分回路111の出力信号の波形は、第1の角度θ1に依存したサイン(Sine)波形になり、差分回路112の出力信号の波形は、第1の角度θ1に依存したコサイン(Cosine)波形になる。この場合、差分回路112の出力信号の位相は、差分回路111の出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4すなわちπ/2(90°)だけ異なっている。
第1の角度θ1が0°よりも大きく180゜よりも小さいときは、差分回路111の出力信号は正の値であり、第1の角度θ1が180°よりも大きく360゜よりも小さいときは、差分回路111の出力信号は負の値である。また、第1の角度θ1が0°以上90゜未満のとき、および270°より大きく360°以下のときは、差分回路112の出力信号は正の値であり、第1の角度θ1が90°よりも大きく270゜よりも小さいときは、差分回路112の出力信号は負の値である。以下、差分回路111の出力信号をsinθ1と表し、差分回路112の出力信号をcosθ1と表す。出力信号sinθ1は、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を表す信号である。出力信号cosθ1は、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を表す信号である。
また、図3に示した例では、理想的には、第4の検出回路22におけるMR素子の磁化固定層の磁化方向は、第3の検出回路21におけるMR素子の磁化固定層の磁化方向に直交している。理想的には、差分回路121の出力信号の波形は、第2の角度θ2に依存したサイン波形になり、差分回路122の出力信号の波形は、第2の角度θ2に依存したコサイン波形になる。この場合、差分回路122の出力信号の位相は、差分回路121の出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4すなわちπ/2(90°)だけ異なっている。
第2の角度θ2が0°よりも大きく180゜よりも小さいときは、差分回路121の出力信号は正の値であり、第2の角度θ2が180°よりも大きく360゜よりも小さいときは、差分回路121の出力信号は負の値である。また、第2の角度θ2が0°以上90゜未満のとき、および270°より大きく360°以下のときは、差分回路122の出力信号は正の値であり、第2の角度θ2が90°よりも大きく270゜よりも小さいときは、差分回路122の出力信号は負の値である。以下、差分回路121の出力信号をsinθ2と表し、差分回路122の出力信号をcosθ2と表す。出力信号sinθ2は、回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度を表す信号である。出力信号cosθ2は、回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度を表す信号である。
第1の演算回路31は、差分回路111の出力信号sinθ1および差分回路121の出力信号sinθ2に基づいて、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度と回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度の両方と対応関係を有する第1の信号sinθsを生成する。例えば、出力信号sinθ1と出力信号sinθ2を加算して、これを第1の信号sinθsとすることができる。本実施の形態では、出力信号sinθ1の位相と出力信号sinθ2の位相は、π/3(60°)だけ異なっている。ここで、θ1,θ2を、それぞれα−π/6,α+π/6と表し、sinθ1,sinθ2を、それぞれsin(α−π/6),sin(α+π/6)と表すと、第1の信号sinθsは、下記の式(1)によって表される。
sinθs=sinθ1+sinθ2
=sin(α−π/6)+sin(α+π/6)
=sinα・cos(−π/6)+cosα・sin(−π/6)
+sinα・cos(π/6)+cosα・sin(π/6)
=2sinα・cos(π/6)
=1.73sinα …(1)
第2の演算回路32は、差分回路112の出力信号cosθ1および差分回路122の出力信号cosθ2に基づいて、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度と回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度の両方と対応関係を有する第2の信号cosθsを生成する。例えば、出力信号cosθ1と出力信号cosθ2を加算して、これを第2の信号cosθsとすることができる。本実施の形態では、出力信号cosθ1の位相と出力信号cosθ2の位相は、π/3(60°)だけ異なっている。ここで、前述のように、θ1,θ2を、それぞれα−π/6,α+π/6と表し、cosθ1,cosθ2を、それぞれcos(α−π/6),cos(α+π/6)と表すと、第2の信号cosθsは、下記の式(2)によって表される。
cosθs=cosθ1+cosθ2
=cos(α−π/6)+cos(α+π/6)
=cosα・cos(−π/6)−sinα・sin(−π/6)
+cosα・cos(π/6)−sinα・sin(π/6)
=2cosα・cos(π/6)
=1.73cosα …(2)
第3の演算回路33は、第1の信号sinθsおよび第2の信号cosθsに基づいて、基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度θと対応関係を有する角度検出値θsを算出する。具体的には、例えば、第3の演算回路33は、下記の式(3)によって、θsを算出する。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
θs=atan(sinθs/cosθs)−π/6
=atan(1.73sinα/1.73cosα)−π/6 …(3)
式(3)におけるatan(1.73sinα/1.73cosα)は、αを求めるアークタンジェント計算を表している。式(3)から、θs=α−π/6=θ1の関係が導かれる。なお、360°の範囲内で、式(3)におけるαの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、sinθsとcosθsの正負(これはsinαとcosαの正負と等しい)の組み合わせにより、αの真の値が、式(3)におけるαの2つの解のいずれであるかを判別することができる。すなわち、sinθsが正の値のときは、αは0°よりも大きく180゜よりも小さい。sinθsが負の値のときは、αは180°よりも大きく360゜よりも小さい。cosθsが正の値のときは、αは、0°以上90゜未満、および270°より大きく360°以下の範囲内である。cosθsが負の値のときは、αは90°よりも大きく270゜よりも小さい。第3の演算回路33は、式(3)と、上記のsinθsとcosθsの正負の組み合わせの判定により、360°の範囲内でαを求める。
次に、演算部30のフェイルセーフ機能について詳しく説明する。フェイルセーフ機能は、第1ないし第4の検出回路11,12,21,22のいずれかが故障した場合であっても、演算部30が角度検出値θsを出力できるようにする機能である。以下、図3を参照して、フェイルセーフ機能の動作、すなわち制御部34の動作について説明する。通常時、すなわち第1ないし第4の検出回路11,12,21,22がいずれも正常に動作している場合には、制御部34は、図3に示したスイッチSW1〜SW8を導通状態にする。この場合、演算部30は、式(1)〜(3)を参照して説明した方法によって角度検出値θsを算出する。
第3および第4の検出回路21,22の一方または両方が故障した場合には、制御部34は、スイッチSW1〜SW4を導通状態にすると共に、スイッチSW5〜SW8を非導通状態にする。この場合、第1の演算回路31には、差分回路111の出力信号sinθ1のみが入力され、第2の演算回路32には、差分回路112の出力信号cosθ1のみが入力される。この場合には、第1の信号sinθsは出力信号sinθ1と等しくなり、第2の信号cosθsは出力信号cosθ1と等しくなる。そして、第3の演算回路33は、下記の式(4)によって、θsを算出する。
θs=atan(sinθs/cosθs)
=atan(sinθ1/cosθ1)
=θ1 …(4)
第3の演算回路33は、前述のαの求め方と同様に、式(4)と、sinθ1とcosθ1の正負の組み合わせの判定により、360°の範囲内でθ1(θs)を求める。
第1および第2の検出回路11,12の一方または両方が故障した場合には、制御部34は、スイッチSW1〜SW4を非導通状態にすると共に、スイッチSW5〜SW8を導通状態にする。この場合、第1の演算回路31には、差分回路121の出力信号sinθ2のみが入力され、第2の演算回路32には、差分回路122の出力信号cosθ2のみが入力される。この場合には、第1の信号sinθsは出力信号sinθ2と等しくなり、第2の信号cosθsは出力信号cosθ2と等しくなる。そして、第3の演算回路33は、下記の式(5)によって、θsを算出する。
θs=atan(sinθs/cosθs)−π/3
=atan(sinθ2/cosθ2)−π/3
=θ2−π/3 …(5)
第3の演算回路33は、前述のαの求め方と同様に、式(5)と、sinθ2とcosθ2の正負の組み合わせの判定により、360°の範囲内でθ2およびθsを求める。
制御部34は、第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の故障を、例えば、以下のようにして判定する。制御部34は、図3に示したブリッジ回路14の抵抗値、出力ポートE11,E12の電位、A/D変換器AD1,AD2の出力値のうち、少なくとも1つを監視する。なお、ブリッジ回路14の抵抗値とは、電源ポートV1とグランドポートG1との間の抵抗値を言う。制御部34は、制御部34によって監視される値が、予め決められた正常値の範囲内であるか否かによって、あるいは異常値であるか否かによって、第1の検出回路11が故障しているか否かを判定する。一例として、制御部34が出力ポートE11,E12の電位を監視する場合、電源ポートV1に入力される電源電圧が5Vであり、出力ポートE11,E12の電位が0Vまたは5Vである場合には、制御部34は、出力ポートE11,E12の電位が異常値であると判定し、第1の検出回路11が故障していると判定する。制御部34は、第1の検出回路11の故障の判定方法と同様の方法によって、他の検出回路12,21,22についても、故障しているか否かを判定する。
次に、図5ないし図10を参照して、回転磁界センサ1の作用および効果について説明する。前述のように、第1の演算回路31は、第1および第3の検出回路11,21の出力信号に対応する差分回路111,121の出力信号sinθ1,sinθ2に基づいて第1の信号sinθsを生成し、第2の演算回路32は、第2および第4の検出回路12,22の出力信号に対応する差分回路112,122の出力信号cosθ1,cosθ2に基づいて第2の信号cosθsを生成する。第3の演算回路33は、第1の信号sinθsおよび第2の信号cosθsに基づいて、基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度θと対応関係を有する角度検出値θsを算出する。
本実施の形態では、検出回路11,12,21,22の各出力信号(2つの出力ポートの電位差)に対応する差分回路111,112,121,122の各出力信号の波形は、理想的には正弦曲線(サイン(Sine)波形とコサイン(Cosine)波形を含む)となる。しかし、実際には、MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪むことによって、差分回路111,112,121,122の各出力信号は、正弦曲線から歪む。MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪む場合としては、例えば、MR素子の磁化固定層の磁化方向が回転磁界MF等の影響によって変動する場合や、MR素子の自由層の磁化方向が、自由層の形状異方性や保磁力等の影響によって、回転磁界MFの方向と一致しない場合がある。正弦曲線から歪んだ出力信号は、理想的な正弦曲線の成分の他に、誤差成分を含んでいる。図5および図6は、正弦曲線から歪んだ出力信号の波形を示している。図5には、差分回路111の出力信号sinθ1の波形を示している。図6には、差分回路112の出力信号cosθ1の波形を示している。図5および図6において、横軸は角度θ1を示し、縦軸は規格化出力を示している。なお、規格化出力とは、角度毎の出力信号を、出力信号の最大値で割った値である。符号61,64は、理想的な正弦曲線を示している。符号62で示す波形は、MR素子に起因して歪んだ出力信号sinθ1の波形を示している。符号63で示す波形は、出力信号sinθ1に含まれる誤差成分の波形を示している。符号65で示す波形は、MR素子に起因して歪んだ出力信号cosθ1の波形を示している。符号66で示す波形は、出力信号cosθ1に含まれる誤差成分の波形を示している。なお、図5および図6に示した各波形は、シミュレーションによって作成したものである。
図5に示したように、出力信号sinθ1に含まれる誤差成分の変化は、出力信号sinθ1の変化に依存している。また、図6に示したように、出力信号cosθ1に含まれる誤差成分の変化は、出力信号cosθ1の変化に依存している。同様に、出力信号sinθ2に含まれる誤差成分の変化は、出力信号sinθ2の変化に依存している。また、出力信号cosθ2に含まれる誤差成分の変化は、出力信号cosθ2の変化に依存している。各差分回路の出力信号の波形が図5および図6に示したように歪む場合には、各差分回路の出力信号に含まれる誤差成分の周期は、図5および図6において符号63,66で示す波形から分かるように、信号周期Tの1/3、すなわち2π/3(120°)となる。
なお、MR素子に起因して各差分回路の出力信号が正弦曲線から歪む例は、図5および図6に示した例に限られない。図5および図6に示した例では、各差分回路の出力信号は、理想的な正弦曲線から三角波形に近づくように歪んでいる。しかし、図5および図6に示した例とは逆に、各差分回路の出力信号は、理想的な正弦曲線から矩形波形に近づくように歪んでいてもよい。この場合にも、各差分回路の出力信号は、誤差成分を含むことになる。いずれの場合にも、各差分回路の出力信号に含まれる誤差成分の周期(以下、誤差成分周期と言う。)は、信号周期Tの1/3、すなわち2π/3(120°)となる。
第1の演算回路31は、出力信号sinθ1と出力信号sinθ2に基づいて、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度と回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、出力信号sinθ1,sinθ2に比べて、誤差成分が低減された第1の信号sinθsを生成する。本実施の形態では、特に、出力信号sinθ1の位相と出力信号sinθ2の位相は、誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)、すなわちπ/3(60°)だけ異なっている。これを実現するために、本実施の形態では、第1の方向D1と第3の方向D3を、回転磁界MFの回転方向について60°だけ異ならせている。本実施の形態によれば、出力信号sinθ1に含まれる誤差成分と出力信号sinθ2に含まれる誤差成分とを相殺することが可能になる。このことを、図7を参照して説明する。図7において、(a)は、図5に示した差分回路111の出力信号sinθ1の波形を示している。図7において、(b)は、差分回路121の出力信号sinθ2の波形を示している。図7(a)、(b)における横軸は、角度θを示している。符号71は、理想的な正弦曲線を示している。符号72で示す波形は、MR素子に起因して歪んだ出力信号sinθ2の波形を示している。符号73で示す波形は、出力信号sinθ2に含まれる誤差成分の波形を示している。本実施の形態では、出力信号sinθ1と出力信号sinθ2を加算して、第1の信号sinθsを生成する。従って、第1の信号sinθsを生成する際に、出力信号sinθ1に含まれる誤差成分の位相と出力信号sinθ2に含まれる誤差成分の位相は、互いに逆相になる。これにより、出力信号sinθ1,sinθ2に含まれる誤差成分が相殺される。
また、第2の演算回路32は、出力信号cosθ1と出力信号cosθ2に基づいて、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度と回転磁界MFの第4の方向D4の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、出力信号cosθ1,cosθ2に比べて、誤差成分が低減された第2の信号cosθsを生成する。本実施の形態では、特に、出力信号cosθ1の位相と出力信号cosθ2の位相は、誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)、すなわちπ/3(60°)だけ異なっている。本実施の形態によれば、出力信号sinθ1,sinθ2と同様に、出力信号cosθ1に含まれる誤差成分と出力信号cosθ2に含まれる誤差成分とを相殺することが可能になる。このことを、図8を参照して説明する。図8において、(a)は、図6に示した差分回路112の出力信号cosθ1の波形を示している。図8において、(b)は、差分回路122の出力信号cosθ2の波形を示している。図8(a)、(b)における横軸は、角度θを示している。符号74は、理想的な正弦曲線を示している。符号75で示す波形は、MR素子に起因して歪んだ出力信号cosθ2の波形を示している。符号76で示す波形は、出力信号cosθ2に含まれる誤差成分の波形を示している。本実施の形態では、出力信号cosθ1と出力信号cosθ2を加算して、第2の信号cosθsを生成する。従って、第2の信号cosθsを生成する際に、出力信号cosθ1に含まれる誤差成分の位相と出力信号cosθ2に含まれる誤差成分の位相は、互いに逆相になる。これにより、出力信号cosθ1,cosθ2に含まれる誤差成分が相殺される。
図9は、図7に示した出力信号sinθ1,sinθ2を加算して得られた第1の信号sinθsの波形(符号91)と、図8に示した出力信号cosθ1,cosθ2を加算して得られた第2の信号cosθsの波形(符号92)を示している。図9における横軸は、角度θを示している。図9に示したように、出力信号sinθ1,sinθ2に含まれる誤差成分が相殺されて、第1の信号sinθsの波形は、歪みが低減された、すなわち誤差成分が低減された正弦曲線となる。同様に、出力信号cosθ1,cosθ2に含まれる誤差成分が相殺されて、第2の信号cosθsの波形は、歪みが低減された、すなわち誤差成分が低減された正弦曲線となる。
図10は、図9に示した第1の信号sinθsおよび第2の信号cosθsに基づいて算出された角度検出値θsと、この角度検出値θsに含まれる角度誤差の波形を示している。なお、角度誤差とは、回転磁界MFの方向DMが理想的に回転する場合に想定される角度検出値θsの理論値に対する誤差を言う。図10では、角度誤差を記号dθで表している。図10において、横軸は角度θを示し、縦軸は角度検出値θsおよび角度誤差dθを示している。なお、図10では、便宜上、縦軸における角度検出値θsの値については、実際の角度が180°〜360゜の範囲では180°を引いた値で表している。シミュレーションでは、図10に示されるように、角度誤差dθは0になる。なお、後で、実際の測定結果を参照して、本実施の形態によれば角度誤差dθが低減されることを示す。
このように、本実施の形態によれば、MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪んだ場合であっても、MR素子に起因した角度検出値θsの誤差を低減することが可能になる。
なお、本実施の形態において、出力信号sinθ1,sinθ2の位相差は、誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)に限らず、誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の奇数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)であればよい。この場合に、出力信号sinθ1,sinθ2を加算して第1の信号sinθsを生成する際に、出力信号sinθ1,sinθ2に含まれる誤差成分が相殺されて、角度検出値θsの誤差を低減することができる。同様に、出力信号cosθ1,cosθ2の位相差は、誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)に限らず、誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の奇数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)であればよい。この場合に、出力信号cosθ1,cosθ2を加算して第2の信号cosθsを生成する際に、出力信号cosθ1,cosθ2に含まれる誤差成分が相殺されて、角度検出値θsの誤差を低減することができる。
本実施の形態では、第1の位置P1と第2の位置P2は、回転磁界MFの回転方向について同じ位置である。この場合、第1の方向D1と第3の方向D3を、回転磁界MFの回転方向について、誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の奇数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)に相当する空間上の角度だけ異ならせることにより、出力信号sinθ1,sinθ2の位相差を、誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の奇数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)とすることができる。図2に示した例では、第1の方向D1と第3の方向D3を、回転磁界MFの回転方向について、誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)に相当する空間上の角度すなわち60°だけ異ならせている。
また、出力信号sinθ1,sinθ2の位相差は、誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の奇数倍に限らず、誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の偶数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)であってもよい。この場合、出力信号sinθ1に含まれる誤差成分の位相と出力信号sinθ2に含まれる誤差成分の位相は、第1の信号sinθsを生成する際に、同じ位相になる。この場合、例えば、出力信号sinθ1から出力信号sinθ2を減算して、これを第1の信号sinθsとする。これにより、出力信号sinθ1,sinθ2に含まれる誤差成分を相殺することができる。同様に、出力信号cosθ1,cosθ2の位相差は、誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の奇数倍に限らず、誤差成分周期の1/2(信号周期Tの1/6)の偶数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)であってもよい。この場合、出力信号cosθ1に含まれる誤差成分の位相と出力信号cosθ2に含まれる誤差成分の位相は、第2の信号cosθsを生成する際に、同じ位相になる。この場合、例えば、出力信号cosθ1から出力信号cosθ2を減算して、これを第2の信号cosθsとする。これにより、出力信号cosθ1,cosθ2に含まれる誤差成分を相殺することができる。
出力信号sinθ1,sinθ2の位相差、ならびに出力信号cosθ1,cosθ2の位相差は、信号周期Tの1/2の整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍であることが好ましい。しかし、第1の信号sinθsにおいて、出力信号sinθ1,sinθ2に比べて、信号周期Tの1/3の周期の誤差成分が低減され、第2の信号cosθsにおいて、出力信号cosθ1,cosθ2に比べて、信号周期Tの1/3の周期の誤差成分が低減される範囲内であれば、出力信号sinθ1,sinθ2の位相差、ならびに出力信号cosθ1,cosθ2の位相差は、信号周期Tの1/2の整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍からずれていてもよい。
また、本実施の形態では、MR素子における磁化固定層の磁化の方向以外は全く同じ構成の2つの検出部10,20を用いて角度検出値を求めている。そのため、各差分回路の出力信号に含まれる誤差成分が温度の関数であったとしても、温度による誤差成分の変動分も含めて各差分回路の出力信号に含まれる誤差成分を相殺して、角度検出値を求めることができる。そのため、本実施の形態によれば、最終的に、温度による誤差の変動の少ない角度検出値を得ることが可能になる。
次に、第1および第2の比較例の回転磁界センサと比較しながら、本実施の形態に係る回転磁界センサ1の効果について更に詳しく説明する。もし、回転磁界センサが、第1の検出部10と第2の検出部20のうち、第1の検出部10のみを備えている場合には、式(4)を参照して説明した方法と同様の方法によって、角度検出値θsが算出される。この場合には、MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪むために、角度検出値θsは、回転磁界の方向が理想的に回転する場合に想定される角度検出値θsの理論値に対する角度誤差を含む可能性がある。この角度誤差は、回転磁界の方向の変化に伴って周期的に変化し、且つ角度誤差の変化は角度検出値θsの変化に依存する。
図11は、図5に示した出力信号sinθ1の波形と、図6に示した出力信号cosθ1の波形に基づいて、式(4)によって算出された角度検出値θsに含まれる角度誤差dθ1を示している。図11において、横軸は角度θ1を示し、縦軸は角度誤差dθ1を示している。図11に示したように、差分回路111,112の出力信号の波形が図5および図6に示したように歪む場合には、角度誤差dθ1の周期は、信号周期Tの1/4、すなわちπ/2(90°)となる。
以下、図12ないし図14を参照して、第1の検出部10と第2の検出部20のうち、第1の検出部10のみを備えた回転磁界センサ(以下、第1の比較例の回転磁界センサと言う。)と、本実施の形態に係る回転磁界センサ1について、角度誤差を比較した結果について説明する。図12は、差分回路111,112の出力信号sinθ1,cosθ1の実測値を示している。図12において、横軸は角度θを示し、縦軸は規格化出力を示している。図13は、差分回路121,122の出力信号sinθ2,cosθ2の実測値を示している。図13において、横軸は角度θを示し、縦軸は規格化出力を示している。
第1の比較例の回転磁界センサの構成は、第2の検出部20を備えていない点を除いて、図3に示した回転磁界センサ1の構成と同様である。第1の比較例の回転磁界センサでは、図12に示した出力信号sinθ1,cosθ1に基づいて、式(4)によって、角度検出値θsを算出する。本実施の形態に係る回転磁界センサ1では、図12に示した出力信号sinθ1と図13に示した出力信号sinθ2に基づいて、式(1)によって、第1の信号sinθsを生成し、図12示した出力信号cosθ1と図13に示した出力信号cosθ2に基づいて、式(2)によって、第2の信号cosθsを生成し、第1の信号sinθsと第2の信号cosθsに基づいて、式(3)によって、角度検出値θsを算出する。
図14は、上述のようにして算出された角度検出値θsに含まれる角度誤差を示している。なお、図14において、第1の比較例の回転磁界センサによって得られた角度検出値θsに含まれる角度誤差を記号dθ1で表し、本実施の形態に係る回転磁界センサ1によって得られた角度検出値θsに含まれる角度誤差を記号dθで表している。図14において、横軸は角度θを示し、縦軸は角度誤差dθ,dθ1を示している。図14に示されるように、角度誤差dθは、角度誤差dθ1に比べて小さくなっている。図14に示した例では、角度誤差dθ1の振幅は±0.16°であり、角度誤差dθの振幅は±0.07°であった。
このように、本実施の形態によれば、回転磁界センサが、第1の検出部10と第2の検出部20のうち、第1の検出部10のみを備えている場合に比べて、角度検出値θsに含まれる角度誤差dθを小さくすることができる。
なお、図11および図14に示したように、出力信号sinθ1,cosθ1に基づいて算出された角度検出値θsに含まれる角度誤差dθ1の周期は、π/2(90°)となる。この場合、以下で説明する第2の比較例の回転磁界センサを用いて角度誤差を小さくすることも考えられる。
第2の比較例の回転磁界センサは、本実施の形態に係る回転磁界センサ1と同様に、第1および第2の検出部を備えている。第1の検出部は、第1および第2の検出回路11,12と同様の構成の2つの検出回路と、これらの検出回路の出力信号に基づいて、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度と対応関係を有する第1の角度検出値を算出する第1の演算回路とを有している。第1の演算回路は、式(4)を参照して説明した方法と同様の方法によって、第1の角度検出値を算出する。第1の角度検出値は、MR素子に起因した第1の角度誤差を含んでいる。第1の角度誤差の周期は、π/2(90°)となる。
第2の検出部は、第3および第4の検出回路21,22と同様の構成の2つの検出回路と、これらの検出回路の出力信号に基づいて、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度と対応関係を有する第2の角度検出値を算出する第2の演算回路とを有している。第2の演算回路は、式(4)を参照して説明した方法と同様の方法によって、第2の角度検出値を算出する。第2の角度検出値は、MR素子に起因した第2の角度誤差を含んでいる。第2の角度誤差の周期は、π/2(90°)となる。
第2の比較例の回転磁界センサは、更に、第1の角度検出値と第2の角度検出値に基づいて、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度の検出値を算出する第3の演算回路を備えている。第2の比較例の回転磁界センサでは、第1の角度検出値と第2の角度検出値の位相を、第1および第2の角度誤差の周期の1/2、すなわちπ/4(45°)だけ異ならせている。従って、第3の演算回路では、上記の検出値を算出する際に、第1の角度誤差の位相と第2の角度誤差の位相は、互いに逆相になる。そのため、上記の検出値を算出する際に、第1の角度検出値と第2の角度検出値が加算されるようにすることによって、第1の角度誤差と第2の角度誤差とを相殺することができる。
図15は、第1および第2の角度誤差と、上述のようにして算出された検出値に含まれる角度誤差を示している。図15では、第1の角度誤差を記号dθ1で表し、第2の角度誤差を記号dθ2で表し、上記の検出値に含まれる角度誤差を記号dθで表している。また、図15では、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度を記号θで表している。図15において、横軸は角度θを示し、縦軸は、dθ1,dθ2,dθを示している。図15に示されるように、角度誤差dθは、第1の角度誤差dθ1および第2の角度誤差dθ2に比べて小さくなっている。
第2の比較例の回転磁界センサでは、第1の演算回路によって第1の角度検出値を算出し、第2の演算回路によって第2の角度検出値を算出する。前述のように、第1および第2の角度検出値を算出するためには、式(4)のようにアークタンジェント計算を含む演算と、2つの出力信号の正負の組み合わせの判定が、2回ずつ必要である。このような第1および第2の角度検出値を算出するための演算処理は比較的複雑であり、多くの処理時間を必要とする。そのため、第2の比較例では、演算処理を行うマイクロコンピュータのコストが高くなったり、処理時間が長くなることにより回転磁界センサの精度が劣化したりするという不具合がある。
これに対し、本実施の形態では、第1の演算回路31によって第1の信号sinθsを生成し、第2の演算回路32によって第2の信号cosθsを生成し、第1の信号sinθsおよび第2の信号cosθsに基づいて、第3の演算回路33によって角度検出値θsを算出する。第1および第2の演算回路31,32による演算処理は、加算または減算であり、これは、アークタンジェント計算を含む演算に比べて簡単である。また、本実施の形態では、アークタンジェント計算を含む演算は、第3の演算回路33による1回だけである。従って、本実施の形態によれば、第2の比較例の回転磁界センサに比べて、角度検出値を算出するための演算処理が簡単である。その結果、本実施の形態によれば、演算処理を行うマイクロコンピュータのコストを低減することができると共に、処理時間が長くなることにより回転磁界センサの精度が劣化することを防止することができる。
[変形例]
次に、図16ないし図18を参照して、本実施の形態における第1ないし第3の変形例について説明する。始めに、図16を参照して、本実施の形態における第1の変形例について説明する。図16は、第1の変形例における演算部を示す回路図である。第1の変形例における回転磁界センサは、図3に示した演算部30の代りに、図16に示した演算部130を備えている。第1の変形例における回転磁界センサのその他の構成は、図3に示した回転磁界センサ1と同じである。
演算部130は、図3に示した演算部30と同様に、第1ないし第3の演算回路31,32,33と、制御部34と、入力ポートIN1〜IN8および出力ポートOUT1とを有している。また、演算部130は、図3に示した演算部30におけるA/D変換器AD1〜AD8、スイッチSW1〜SW8および差分回路111,112,121,122の代りに、A/D変換器AD11,AD12,AD21,AD22、スイッチSW11,SW12,SW21,SW22および差分検出器(差動増幅器)311,312,321,322を有している。スイッチSW11,SW12,SW21,SW22は、それぞれ、第1のポートと第2のポートとを有し、第1のポートと第2のポートとの間における導通状態と非導通状態が選択されるようになっている。差分検出器311,312,321,322は、それぞれ、第1および第2の入力端と出力端とを有している。
差分検出器311の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN1,IN2に接続されている。差分検出器312の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN3,IN4に接続されている。差分検出器321の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN5,IN6に接続されている。差分検出器322の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN7,IN8に接続されている。A/D変換器AD11,AD12,AD21,AD22の入力端は、それぞれ、差分検出器311,312,321,322の出力端に接続されている。スイッチSW11,SW12,SW21,SW22の第1のポートは、それぞれ、A/D変換器AD11,AD12,AD21,AD22の出力端に接続されている。
差分検出器311は、図3に示した出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を出力する。A/D変換器AD11は、差分検出器311から出力された信号をデジタル信号に変換して出力する。差分検出器312は、図3に示した出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を出力する。A/D変換器AD12は、差分検出器312から出力された信号をデジタル信号に変換して出力する。差分検出器321は、図3に示した出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号を出力する。A/D変換器AD21は、差分検出器321から出力された信号をデジタル信号に変換して出力する。差分検出器322は、図3に示した出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号を出力する。A/D変換器AD22は、差分検出器322から出力された信号をデジタル信号に変換して出力する。理想的には、A/D変換器AD11,AD21の出力信号の波形は、それぞれ角度θ1,θ2に依存したサイン波形になる。理想的には、A/D変換器AD12,AD22の出力信号の波形は、それぞれ角度θ1,θ2に依存したコサイン波形になる。以下、A/D変換器AD11,AD12,AD21,AD22の出力信号を、それぞれ、sinθ1,cosθ1,sinθ2,cosθ2と表す。
第1の変形例では、第1の演算回路31の第1の入力端は、スイッチSW11の第2のポートに接続されている。第1の演算回路31の第2の入力端は、スイッチSW21の第2のポートに接続されている。第2の演算回路32の第1の入力端は、スイッチSW12の第2のポートに接続されている。第2の演算回路32の第2の入力端は、スイッチSW22の第2のポートに接続されている。
通常時には、スイッチSW11,SW12,SW21,SW22は導通状態になっている。このとき、A/D変換器AD11は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号(sinθ1)を第1の演算回路31に出力する。A/D変換器AD12は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号(cosθ1)を第2の演算回路32に出力する。A/D変換器AD21は、出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号(sinθ2)を第1の演算回路31に出力する。A/D変換器AD22は、出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号(cosθ2)を第2の演算回路32に出力する。
第1の変形例では、通常時、すなわち図3に示した第1ないし第4の検出回路11,12,21,22がいずれも正常に動作している場合には、制御部34は、スイッチSW11,SW12,SW21,SW22を導通状態にする。図3に示した第3および第4の検出回路21,22の一方または両方が故障した場合には、制御部34は、スイッチSW11,SW12を導通状態にすると共に、スイッチSW21,SW22を非導通状態にする。図3に示した第1および第2の検出回路11,12の一方または両方が故障した場合には、制御部34は、スイッチSW11,SW12を非導通状態にすると共に、スイッチSW21,SW22を導通状態にする。
また、第1の変形例では、制御部34は、図3に示した第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の故障を、例えば、以下のようにして判定する。制御部34は、図3に示したブリッジ回路14の抵抗値、出力ポートE11,E12の電位、差分検出器311の出力値、A/D変換器AD11の出力値のうち、少なくとも1つを監視して、第1の検出回路11が故障しているか否かを判定する。制御部34は、第1の検出回路11の故障の判定方法と同様の方法によって、他の検出回路12,21,22についても、故障しているか否かを判定する。
次に、図17を参照して、本実施の形態の第2の変形例について説明する。図17は、第2の変形例における演算部を示す回路図である。第2の変形例における回転磁界センサは、図3に示した演算部30の代りに、図17に示した演算部230を備えている。第2の変形例における回転磁界センサのその他の構成は、図3に示した回転磁界センサ1と同じである。
演算部230は、図16に示した演算部130と同様に、第1ないし第3の演算回路31,32,33と、制御部34と、入力ポートIN1〜IN8および出力ポートOUT1と、スイッチSW11,SW12,SW21,SW22と、差分検出器311,312,321,322とを有している。演算部230は、図16に示した演算部130におけるA/D変換器AD11,AD12,AD21,AD22を有していない。
第2の変形例では、差分検出器311の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN1,IN2に接続されている。差分検出器312の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN3,IN4に接続されている。差分検出器321の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN6,IN5に接続されている。差分検出器322の第1および第2の入力端は、それぞれ、入力ポートIN8,IN7に接続されている。スイッチSW11,SW12,SW21,SW22の第1のポートは、それぞれ、差分検出器311,312,321,322の出力端に接続されている。
差分検出器311は、図3に示した出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を出力する。差分検出器312は、図3に示した出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を出力する。差分検出器321は、図3に示した出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号であって、第1の変形例における差分検出器321が出力する信号とは正負の符号が反対の信号を出力する。差分検出器322は、図3に示した出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号であって、第1の変形例における差分検出器322が出力する信号とは正負の符号が反対の信号を出力する。以下、差分検出器311,312,321,322の出力信号を、それぞれ、sinθ1,cosθ1,−sinθ2,−cosθ2と表す。
また、第2の変形例では、第1の演算回路31は、差分検出器331と、A/D変換器AD31とを有している。差分検出器331は、第1および第2の入力端と出力端とを有している。差分検出器331の第1の入力端は、スイッチSW11の第2のポートに接続されている。差分検出器331の第2の入力端は、スイッチSW21の第2のポートに接続されている。A/D変換器AD31の入力端は、差分検出器331の出力端に接続されている。第3の演算回路33の第1の入力端は、A/D変換器AD31の出力端に接続されている。通常時には、スイッチSW11,SW21は導通状態になっている。このとき、差分検出器311は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号(sinθ1)を差分検出器331に出力する。差分検出器321は、出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号(−sinθ2)を差分検出器331に出力する。差分検出器331は、差分検出器311の出力信号から差分検出器321の出力信号を減算した信号(sinθ1+sinθ2)を出力する。A/D変換器AD31は、差分検出器331から出力された信号をデジタル信号に変換して出力する。
また、第2の変形例では、第2の演算回路32は、差分検出器332と、A/D変換器AD32とを有している。差分検出器332は、第1および第2の入力端と出力端とを有している。差分検出器332の第1の入力端は、スイッチSW12の第2のポートに接続されている。差分検出器332の第2の入力端は、スイッチSW22の第2のポートに接続されている。A/D変換器AD32の入力端は、差分検出器332の出力端に接続されている。第3の演算回路33の第2の入力端は、A/D変換器AD32の出力端に接続されている。通常時には、スイッチSW12,SW22は導通状態になっている。このとき、差分検出器312は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号(cosθ1)を差分検出器332に出力する。差分検出器322は、出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号(−cosθ2)を差分検出器332に出力する。差分検出器332は、差分検出器312の出力信号から差分検出器322の出力信号を減算した信号(cosθ1+cosθ2)を出力する。A/D変換器AD32は、差分検出器332から出力された信号をデジタル信号に変換して出力する。
第2の変形例では、制御部34は、図3に示した第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の故障を、例えば、以下のようにして判定する。制御部34は、図3に示したブリッジ回路14の抵抗値、出力ポートE11,E12の電位、差分検出器311の出力値、差分検出器331の出力値、A/D変換器AD31の出力値のうち、少なくとも1つを監視して、第1の検出回路11が故障しているか否かを判定する。制御部34は、第1の検出回路11の故障の判定方法と同様の方法によって、他の検出回路12,21,22についても、故障しているか否かを判定する。
次に、図18を参照して、本実施の形態の第3の変形例について説明する。図18は、第3の変形例における演算部を示す回路図である。第3の変形例における回転磁界センサは、図3に示した演算部30の代りに、図18に示した演算部330を備えている。第3の変形例における回転磁界センサのその他の構成は、図3に示した回転磁界センサ1と同じである。
演算部330は、図17に示した演算部230と同様に、第1ないし第3の演算回路31,32,33と、制御部34と、入力ポートIN1〜IN8および出力ポートOUT1と、スイッチSW11,SW12,SW21,SW22と、差分検出器311,312,321,322とを有している。差分検出器311,312,321,322の各入力端には、図16に示した第1の変形例と同じ入力ポートが接続されている。第1の演算回路31は、差分検出器331と、A/D変換器AD31と、3つの抵抗器R51,R52,R53とを有している。第2の演算回路32は、差分検出器332と、A/D変換器AD32と、3つの抵抗器R61,R62,R63とを有している。
第3の変形例では、スイッチSW11,SW21の第2のポートは、それぞれ、抵抗器R51,R52を介して差分検出器331の第1の入力端に接続されている。また、差分検出器331の出力端は、抵抗器R53を介して差分検出器331の第1の入力端に接続されている。差分検出器331の第2の入力端は、グランドに接続されている。通常時には、スイッチSW11,SW21は導通状態になっている。このとき、差分検出器311は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号(sinθ1)を差分検出器331に出力する。差分検出器321は、出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号(sinθ2)を差分検出器331に出力する。差分検出器331は、差分検出器311の出力信号と差分検出器321の出力信号を加算した信号(sinθ1+sinθ2)を出力する。
また、第3の変形例では、スイッチSW12,SW22の第2のポートは、それぞれ、抵抗器R61,R62を介して差分検出器332の第1の入力端に接続されている。また、差分検出器332の出力端は、抵抗器R63を介して差分検出器332の第1の入力端に接続されている。差分検出器332の第2の入力端は、グランドに接続されている。通常時には、スイッチSW12,SW22は導通状態になっている。このとき、差分検出器312は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号(cosθ1)を差分検出器332に出力する。差分検出器322は、出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号(cosθ2)を差分検出器332に出力する。差分検出器332は、差分検出器312の出力信号と差分検出器322の出力信号を加算した信号(cosθ1+cosθ2)を出力する。
第3の変形例では、制御部34は、図3に示した第1ないし第4の検出回路11,12,21,22の故障を、例えば、第2の変形例と同様の方法によって判定する。
[第2の実施の形態]
次に、図19を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。図19は、本実施の形態に係る回転磁界センサの構成を示す説明図である。図19には、方向が回転する回転磁界を発生する手段の例として、1組以上のN極とS極が交互にリング状に配列された磁石102を示している。図19に示した例では、磁石102は、2組のN極とS極とを含んでいる。本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、磁石102の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。図19に示した例では、図19における紙面がXY平面となり、紙面に垂直な方向がZ方向となる。磁石102のN極とS極は、Z方向に平行な回転中心を中心として対称な位置に配置されている。磁石102は、回転中心を中心として回転する。これにより、磁石102が発生する磁界に基づいて、回転磁界が発生される。回転磁界は、回転中心(Z方向)を中心として回転する。図19に示した例では、磁石102は反時計回り方向に回転し、回転磁界は時計回り方向に回転する。
図19に示した例では、第1の検出部10が検出する回転磁界の一成分の方向を表す第1の方向D1を、磁石102の半径方向に設定している。第2の検出部20が検出する回転磁界の一成分の方向を表す第3の方向D3は、XY平面内において、第1の方向D1から、回転磁界の回転方向について−60°回転した方向である。従って、第1の方向D1と第3の方向D3は、回転磁界の回転方向について60°だけ異なっている。なお、第3の方向D3は、XY平面内において、第1の方向D1から回転磁界の回転方向について60°回転した方向であってもよい。
第1の方向D1と、第1の検出部10が検出する回転磁界の他の一成分の方向を表す第2の方向(図示せず)の関係は、第1の実施の形態における図2に示した第1の方向D1と第2の方向D2の関係と同じである。同様に、第3の方向D3と、第2の検出部20が検出する回転磁界の他の一成分の方向を表す第4の方向(図示せず)の関係は、第1の実施の形態における図2に示した第3の方向D3と第4の方向D4の関係と同じである。なお、第1の方向D1の代りに、第2の方向を磁石102の半径方向に設定してもよい。この場合、第4の方向は、XY平面内において、第2の方向から、回転磁界の回転方向について−60°回転した方向である。
[変形例]
次に、図20ないし図22を参照して、本実施の形態における第1ないし第3の変形例について説明する。始めに、図20を参照して、本実施の形態における第1の変形例について説明する。図20は、本実施の形態における第1の変形例の回転磁界センサの構成を示す説明図である。第1の変形例における回転磁界センサ1の構成は、基本的には、図19に示した回転磁界センサと同様である。図20に示した例では、第1の方向D1と第3の方向D3を、回転磁界の回転方向について60°だけ異ならせながら、第1の方向D1と第3の方向D3を共に、XY平面内において、磁石102の半径方向に対して傾けている。磁石102の半径方向に対して第1の方向D1と第3の方向D3の各々がなす角度は、絶対値が等しい値すなわち30°と−30°(回転磁界の回転方向を正とする)であることが好ましい。それは、この場合には、検出部10と回転磁界との位置関係と、検出部20と回転磁界との位置関係とが同様になり、これらの位置関係が異なることによる補正が不要になるためである。
次に、図21を参照して、本実施の形態における第2の変形例について説明する。図21は、本実施の形態における第2の変形例の回転磁界センサの構成を示す説明図である。図21には、方向が回転する回転磁界を発生する手段の例として、複数組のN極とS極が交互に直線状に配列された磁石103を示している。第2の変形例における回転磁界センサ1は、磁石103の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。図21に示した例では、図21における紙面がXY平面となり、紙面に垂直な方向がZ方向となる。磁石103は、対象物の直線的な運動に連動して、その長手方向に直線的に移動する。これにより、磁石103が発生する磁界に基づいて、回転磁界が発生される。回転磁界は、Z方向を中心として回転する。
図21に示した例では、第1の方向D1を、XY平面内において、磁石103の移動方向に直交する方向に設定している。第3の方向D3は、XY平面内において、第1の方向D1から、回転磁界の回転方向について−60°回転した方向である。従って、第1の方向D1と第3の方向D3は、回転磁界の回転方向について60°だけ異なっている。
次に、図22を参照して、本実施の形態における第3の変形例について説明する。図22は、本実施の形態における第3の変形例の回転磁界センサの構成を示す説明図である。第3の変形例における回転磁界センサ1の構成は、基本的には、図21に示した回転磁界センサ1と同様である。図22に示した例では、第1の方向D1と第3の方向D3を、回転磁界の回転方向について60°だけ異ならせながら、第1の方向D1と第3の方向D3を共に、XY平面内において、磁石103の移動方向に直交する方向に対して傾けている。第1の変形例と同様に、磁石103の移動方向に直交する方向に対して第1の方向D1と第3の方向D3の各々がなす角度は、絶対値が等しい値すなわち30°と−30°(回転磁界の回転方向を正とする)であることが好ましい。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、図23を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。図23は、本実施の形態に係る回転磁界センサの構成を示す説明図である。本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、第2の実施の形態における図19および図20に示した例と同様に、磁石102の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。本実施の形態に係る回転磁界センサ1では、第1の検出部10が回転磁界を検出する位置である第1の位置P1と、第2の検出部20が回転磁界を検出する位置である第2の位置P2を互いに異なる位置としている。すなわち、本実施の形態では、第1の検出部10と第2の検出部20は、異なる位置に配置されている。第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、信号周期Tの1/2の整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍に相当する。
図23に示した例では、磁石102は、2組のN極とS極とを含み、磁石102が1回転する間に、回転磁界は2回転する。この場合、第1の実施の形態における図3に示した差分回路111,112,121,122の出力信号における1周期すなわち電気角の360°は、磁石102の1/2回転すなわち磁石102の回転角の180°に相当する。各差分回路の出力信号に含まれる誤差成分の周期(誤差成分周期)は、信号周期Tの1/3であり、これは、電気角の120°、磁石102の回転角の60°に相当する。本実施の形態では、第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、信号周期Tの1/6の整数倍、すなわち誤差成分周期の1/2(電気角の60°)の整数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)に相当する。図23に示した例では、第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、磁石102の回転角の30°の整数倍(回転角の90°の整数倍となる場合を除く)である。図23には、特に、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、磁石102の回転角の30°とした例を示している。
また、図23に示した例では、第1の検出部10が検出する回転磁界の一成分の方向を表す第1の方向D1と第2の検出部20が検出する回転磁界の一成分の方向を表す第3の方向D3を、共に磁石102の半径方向に設定している。第1の方向D1と、第1の検出部10が検出する回転磁界の他の一成分の方向を表す第2の方向(図示せず)の関係は、第1の実施の形態における図2に示した第1の方向D1と第2の方向D2の関係と同じである。同様に、第3の方向D3と、第2の検出部20が検出する回転磁界の他の一成分の方向を表す第4の方向(図示せず)の関係は、第1の実施の形態における図2に示した第3の方向D3と第4の方向D4の関係と同じである。これにより、第1の位置P1における回転磁界の第1の方向D1の成分の強度を表す信号である出力信号sinθ1と第2の位置P2における回転磁界の第3の方向D3の成分の強度を表す信号である出力信号sinθ2の位相差、および第1の位置P1における回転磁界の第2の方向の成分の強度を表す信号である出力信号cosθ1と第2の位置P2における回転磁界の第4の方向の成分の強度を表す信号である出力信号cosθ2の位相差は、いずれも、信号周期Tの1/6の整数倍、すなわち誤差成分周期の1/2(電気角の60°)の整数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)となる。
なお、第1の方向D1と第3の方向D3の代りに、第2の方向と第4の方向を磁石102の半径方向に設定してもよい。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、出力信号sinθ1,sinθ2の位相差が、誤差成分周期の1/2の整数倍であることから、第1の信号sinθsを生成する際に、出力信号sinθ1,sinθ2に含まれる誤差成分が相殺される。また、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、出力信号cosθ1,cosθ2の位相差が、誤差成分周期の1/2の整数倍であることから、第2の信号cosθsを生成する際に、出力信号cosθ1,cosθ2に含まれる誤差成分が相殺される。これらのことから、本実施の形態によれば、角度検出値θsの誤差を低減することができる。
[変形例]
次に、図24を参照して、本実施の形態における変形例の回転磁界センサについて説明する。図24は、本実施の形態における変形例の回転磁界センサの構成を示す説明図である。変形例の回転磁界センサ1は、第2の実施の形態における図21および図22に示した例と同様に、磁石103の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。図24に示した例では、磁石103が、1ピッチ分すなわちN極とS極の1組分だけ移動すると回転磁界が1回転する。この場合、差分回路111,112,121,122の出力信号における1周期すなわち電気角の360°は、磁石103の1ピッチに相当する。出力信号に含まれる誤差成分の周期(誤差成分周期)は、信号周期Tの1/3であり、これは、1/3ピッチに相当する。本実施の形態では、第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、信号周期Tの1/6の整数倍、すなわち誤差成分周期の1/2(電気角の60°)の整数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)に相当する。図24に示した例では、第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、磁石103の1/6ピッチの整数倍(1/2ピッチの整数倍となる場合を除く)である。図24には、特に、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、1/6ピッチとした例を示している。
また、図24に示した例では、第1の方向D1と第3の方向D3を、共にXY平面内において、磁石103の移動方向に直交する方向に設定している。これにより、出力信号sinθ1,sinθ2の位相差と出力信号cosθ1,cosθ2の位相差は、いずれも、信号周期Tの1/6の整数倍、すなわち誤差成分周期の1/2(電気角の60°)の整数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)となる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
次に、図25を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。図25は、本実施の形態に係る回転磁界センサの構成を示す回路図である。本実施の形態に係る回転磁界センサ1では、ブリッジ回路14,16,24,26における全ての磁気検出素子として、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子を用いている。この場合には、回転磁界が1回転する間に、検出回路11,12,21,22の出力信号に対応する差分回路111,112,121,122の出力信号は2周期分変化する。従って、本実施の形態における差分回路111,112,121,122の出力信号の周期は、回転磁界の1/2回転に相当し、第1の実施の形態における差分回路111,112,121,122の出力信号の周期の1/2となる。また、本実施の形態では、出力信号に含まれる誤差成分の周期(誤差成分周期)も、第1の実施の形態における誤差成分周期の1/2となる。
図25には、第1の検出回路11が回転磁界を検出するときの基準の方向である第1の方向D1と、第3の検出回路21が回転磁界を検出するときの基準の方向である第3の方向D3も示している。図25に示した例では、第3の方向D3は、XY平面内において、第1の方向D1から、回転磁界の回転方向について−30°回転した方向である。第1の方向D1と第3の方向D3は、回転磁界の回転方向について30°だけ異なっている。なお、本実施の形態において、第3の方向D3は、XY平面内において、第1の方向D1から、回転磁界の回転方向について30°回転した方向であってもよい。また、第2の検出回路12が回転磁界を検出するときの基準の方向である第2の方向(図示せず)は、第1の方向D1から、回転磁界の回転方向について−45°回転した方向である。また、第4の検出回路22が回転磁界を検出するときの基準の方向である第4の方向(図示せず)は、第3の方向D3から、回転磁界の回転方向について−45°回転した方向である。
第1の実施の形態と同様に、本実施の形態においても、出力信号sinθ1,sinθ2の位相差は、誤差成分周期の1/2の整数倍であり、第1の信号sinθsを生成する際に、出力信号sinθ1,sinθ2に含まれる誤差成分が相殺される。また、第1の実施の形態と同様に、本実施の形態においても、出力信号cosθ1,cosθ2の位相差は、誤差成分周期の1/2の整数倍であり、第2の信号cosθsを生成する際に、出力信号cosθ1,cosθ2に含まれる誤差成分が相殺される。これらのことから、本実施の形態によれば、角度検出値θsの誤差を低減することができる。
本実施の形態において、方向が回転する回転磁界を発生する手段として、第2の実施の形態における図19および図20に示した磁石102を使用する場合、または第2の実施の形態における図21および図22に示した磁石103を使用する場合を使用する場合には、第1の方向D1と第3の方向D3を、回転磁界の回転方向について30°だけ異ならせる。図20に示した例のように第1の方向D1と第3の方向D3を傾ける場合には、磁石102の半径方向に対して第1の方向D1と第3の方向D3の各々がなす角度は、絶対値が等しい値すなわち15°と−15°(回転磁界の回転方向を正とする)であることが好ましい。同様に、図22に示した例のように第1の方向D1と第3の方向D3を傾ける場合には、磁石103の移動方向に直交する方向に対して第1の方向D1と第3の方向D3の各々がなす角度は、絶対値が等しい値すなわち15°と−15°(回転磁界の回転方向を正とする)であることが好ましい。
また、本実施の形態において、第3の実施の形態と同様に、第1の検出部10と第2の検出部20を異なる位置に配置して、第1の位置P1と第2の位置P2を互いに異なる位置としてもよい。この場合には、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、信号周期Tの1/6の整数倍、すなわち誤差成分周期の1/2の整数倍(信号周期Tの1/2の整数倍となる場合を除く)に相当する量とする。この場合、図23に示した磁石102の外周部から発生する回転磁界の方向を、回転磁界センサ1によって検出する場合には、第1の位置P1と第2の位置P2のずれは、磁石102の回転角の15°の整数倍(回転角の45°の整数倍となる場合を除く)である。また、図24に示した磁石103の外周部から発生する回転磁界の方向を、回転磁界センサ1によって検出する場合には、第1の位置P1と第2の位置P2のずれを、磁石103の1/12ピッチの整数倍(1/4ピッチの整数倍となる場合を除く)とする。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態、第2の実施の形態または第3の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態において、AMR素子の代りに、ホール素子を用いてもよい。
[第5の実施の形態]
次に、図26ないし図28を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。図26は、本実施の形態に係る回転磁界センサの構成を示すブロック図である。図27は、本実施の形態に係る回転磁界センサの構成を示す説明図である。図28は、本実施の形態における変形例の回転磁界センサの概略の構成を示す斜視図である。始めに、本実施の形態に係る回転磁界センサ201の構成について説明する。図27には、方向が回転する回転磁界を発生する手段の例として、第2の実施の形態における図19および図20に示した磁石102を示している。回転磁界センサ201は、第2の実施の形態における図19および図20に示した例と同様に、磁石102の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。
図26に示したように、回転磁界センサ201は、第1および第2の複合検出部210A,210Bを備えている。第1の複合検出部210Aは、第1の基準位置PRAにおける回転磁界の方向が第1の基準方向DRAに対してなす角度θAを検出するものである。第2の複合検出部210Bは、第2の基準位置PRBにおける回転磁界の方向が第2の基準方向DRBに対してなす角度θBを検出するものである。図27には、第1および第2の基準位置PRA,PRBと、第1および第2の基準方向DRA,DRBも示している。図27に示したように、第2の基準位置PRBは、第1の基準位置PRAに対して、回転磁界の回転の周期の1/4すなわち電気角90°に相当する量だけずれている。また、第1および第2の基準方向DRA,DRBを、いずれも、磁石102の半径方向に設定している。第2の基準位置PRBにおける回転磁界の方向が第2の基準方向DRBに対してなす角度θBは、第1の基準位置PRAにおける回転磁界の方向が第1の基準方向DRAに対してなす角度θAに対して、電気角90°に相当する角度だけ異なっている。
複合検出部210A,210Bの構成は、それぞれ、第1の実施の形態に係る回転磁界センサ1の構成と同様である。具体的には、第1の複合検出部210Aは、第1の検出部10、第2の検出部20、第1の演算回路31、第2の演算回路32および第3の演算回路33と同様の構成の第1の検出部10A、第2の検出部20A、第1の演算回路31A、第2の演算回路32Aおよび第3の演算回路33Aを備えている。同様に、第2の複合検出部210Bは、第1の検出部10、第2の検出部20、第1の演算回路31、第2の演算回路32および第3の演算回路33と同様の構成の第3の検出部10B、第4の検出部20B、第4の演算回路31B、第5の演算回路32Bおよび第6の演算回路33Bを備えている。なお、図26では図示を省略しているが、第1および第2の複合検出部210A,210Bは、それぞれ、上記の構成要素の他に、図3に示したA/D変換器AD1〜AD8、スイッチSW1〜SW8、差分回路111,112,121,122および制御部34を有している。第1の検出部10Aは第1の位置に配置され、第2の検出部20Aは第2の位置に配置され、第3の検出部10Bは第3の位置に配置され、第4の検出部20Bは第4の位置に配置されている。
第1および第2の検出部10A,20Aの、磁石102に対する相対的な位置関係は、第2の実施の形態における第1および第2の検出部10,20の、磁石102に対する相対的な位置関係と同様である。第3および第4の検出部10B,20Bの、磁石102に対する相対的な位置関係も、第2の実施の形態における第1および第2の検出部10,20の、磁石102に対する相対的な位置関係と同様である。第3および第4の検出部10B,20Bは、第1および第2の検出部10A,20Aに対して、回転磁界の回転の周期の1/4すなわち電気角90°に相当する量だけずれた位置に配置されている。
第1の検出部10Aが配置された位置が第1の位置であり、第2の検出部20Aが配置された位置が第2の位置である。第1の基準位置PRAと第1および第2の位置の関係は、第1の実施の形態における図2に示した基準位置PRと第1および第2の位置P1,P2と同じである。第1の基準位置PRA、第1の位置、第2の位置は、それぞれ、図2に示した基準位置PR、第1の位置P1、第2の位置P2に対応する。第1の位置と第2の位置は、回転磁界の回転方向について同じ位置であり、第1の基準位置PRAと一致している。
第1の検出部10Aは、第1の位置において、回転磁界の第1の方向の成分と、回転磁界の第2の方向の成分とを検出する。第2の検出部20Aは、第2の位置において、回転磁界の第3の方向の成分と、回転磁界の第4の方向の成分とを検出する。第1の基準方向DRAと第1ないし第4の方向の関係は、第1の実施の形態における図2に示した基準方向DRと第1ないし第4の方向D1〜D4の関係と同じである。第1の基準方向DRA、第1の方向、第2の方向、第3の方向、第4の方向は、それぞれ、図2に示した基準方向DR、第1の方向D1、第2の方向D2、第3の方向D3、第4の方向D4に対応する。第1の方向と第2の方向は直交し、第3の方向と第4の方向も直交している。第1の方向と第3の方向は、回転磁界の回転方向について60°だけ異なっている。第2の方向は、第1の基準方向DRAと一致している。
また、第3の検出部10Bが配置された位置が第3の位置であり、第4の検出部20Bが配置された位置が第4の位置である。第2の基準位置PRBと第3および第4の位置の関係は、第1の実施の形態における図2に示した基準位置PRと第1および第2の位置P1,P2と同じである。第2の基準位置PRB、第3の位置、第4の位置は、それぞれ、図2に示した基準位置PR、第1の位置P1、第2の位置P2に対応する。第3の位置と第4の位置は、回転磁界の回転方向について同じ位置であり、第2の基準位置PRBと一致している。
第3の検出部10Bは、第3の位置において、回転磁界の第5の方向の成分と、回転磁界の第6の方向の成分とを検出する。第4の検出部20Bは、第4の位置において、回転磁界の第7の方向の成分と、回転磁界の第8の方向の成分とを検出する。第2の基準方向DRBと第5ないし第8の方向の関係は、第1の実施の形態における図2に示した基準方向DRと第1ないし第4の方向D1〜D4の関係と同じである。第2の基準方向DRB、第5の方向、第6の方向、第7の方向、第8の方向は、それぞれ、図2に示した基準方向DR、第1の方向D1、第2の方向D2、第3の方向D3、第4の方向D4に対応する。第5の方向と第6の方向は直交し、第7の方向と第8の方向も直交している。第5の方向と第7の方向は、回転磁界の回転方向について60°だけ異なっている。第6の方向は、第2の基準方向DRBと一致している。
第1の検出部10Aは、第1の検出回路11Aと第2の検出回路12Aとを有している。第1の検出回路11Aおよび第2の検出回路12Aの構成は、第1の実施の形態における第1の検出回路11および第2の検出回路12と同じである。第1の検出回路11Aは、回転磁界の第1の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第2の検出回路12Aは、回転磁界の第2の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第1の方向は、第1の検出回路11Aが回転磁界を検出するときの基準の方向である。第2の方向は、第2の検出回路12Aが回転磁界を検出するときの基準の方向である。
第2の検出部20Aは、第3の検出回路21Aと第4の検出回路22Aとを有している。第3の検出回路21Aおよび第4の検出回路22Aの構成は、第1の実施の形態における第3の検出回路21および第4の検出回路22と同じである。第3の検出回路21Aは、回転磁界の第3の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第4の検出回路22Aは、回転磁界の第4の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第3の方向は、第3の検出回路21Aが回転磁界を検出するときの基準の方向である。第4の方向は、第4の検出回路22Aが回転磁界を検出するときの基準の方向である。
第3の検出部10Bは、第5の検出回路11Bと第6の検出回路12Bとを有している。第5の検出回路11Bおよび第6の検出回路12Bの構成は、第1の実施の形態における第1の検出回路11および第2の検出回路12と同じである。第5の検出回路11Bは、回転磁界の第5の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第6の検出回路12Bは、回転磁界の第6の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第5の方向は、第5の検出回路11Bが回転磁界を検出するときの基準の方向である。第6の方向は、第6の検出回路12Bが回転磁界を検出するときの基準の方向である。
第4の検出部20Bは、第7の検出回路21Bと第8の検出回路22Bとを有している。第7の検出回路21Bおよび第8の検出回路22Bの構成は、第1の実施の形態における第3の検出回路21および第4の検出回路22と同じである。第7の検出回路21Bは、回転磁界の第7の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第8の検出回路22Bは、回転磁界の第8の方向の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を出力する。第7の方向は、第7の検出回路21Bが回転磁界を検出するときの基準の方向である。第8の方向は、第8の検出回路22Bが回転磁界を検出するときの基準の方向である。
図27に示した例では、磁石102は、2組のN極とS極とを含み、磁石102が1回転する間に、回転磁界は2回転する。この場合、検出回路11A,12A,21A,22A,11B,12B,21B,22Bの出力信号における1周期すなわち電気角の360°は、磁石102の1/2回転すなわち磁石102の回転角の180°に相当する。また、第1ないし第8の検出回路11A,12A,21A,22A,11B,12B,21B,22Bの出力信号は、互いに等しい信号周期Tで周期的に変化する。第3の検出回路21Aの出力信号の位相は、第1の検出回路11Aの出力信号の位相と異なっている。第4の検出回路22Aの出力信号の位相は、第2の検出回路12Aの出力信号の位相と異なっている。第7の検出回路21Bの出力信号の位相は、第5の検出回路11Bの出力信号の位相と異なっている。第8の検出回路22Bの出力信号の位相は、第6の検出回路12Bの出力信号の位相と異なっている。本実施の形態では、第1ないし第8の検出回路11A,12A,21A,22A,11B,12B,21B,22Bの出力信号の位相の関係は、特に以下のようになっていることが好ましい。
第2の検出回路12Aの出力信号の位相は、第1の検出回路11Aの出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。第4の検出回路22Aの出力信号の位相は、第3の検出回路21Aの出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。ただし、磁気検出素子の作製の精度等の観点から、第1の検出回路11Aの出力信号と第2の検出回路12Aの出力信号の位相差と、第3の検出回路21Aの出力信号と第4の検出回路22Aの出力信号の位相差は、それぞれ、信号周期Tの1/4の奇数倍から、わずかにずれていてもよい。第3の検出回路21Aの出力信号の位相は、第1の検出回路11Aの出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/2の整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍だけ異なっていることが好ましい。
第6の検出回路12Bの出力信号の位相は、第5の検出回路11Bの出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。第8の検出回路22Bの出力信号の位相は、第7の検出回路21Bの出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。ただし、磁気検出素子の作製の精度等の観点から、第5の検出回路11Bの出力信号と第6の検出回路12Bの出力信号の位相差と、第7の検出回路21Bの出力信号と第8の検出回路22Bの出力信号の位相差は、それぞれ、信号周期Tの1/4の奇数倍から、わずかにずれていてもよい。第7の検出回路21Bの出力信号の位相は、第5の検出回路11Bの出力信号の位相に対して、信号周期Tの1/2の整数倍を除く信号周期Tの1/6の整数倍だけ異なっていることが好ましい。以下の説明では、第1ないし第8の検出回路11A,12A,21A,22A,11B,12B,21B,22Bの出力信号の位相の関係が上記の好ましい関係になっているものとする。
第1の演算回路31Aは、第1および第3の検出回路11A,21Aの出力信号に基づいて、回転磁界の第1の方向の成分の強度と回転磁界の第3の方向の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、第1および第3の検出回路11A,21Aの出力信号に比べて、信号周期Tの1/3の周期の誤差成分が低減された第1の信号を生成する。第2の演算回路32Aは、第2および第4の検出回路12A,22Aの出力信号に基づいて、回転磁界の第2の方向の成分の強度と回転磁界の第4の方向の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、第2および第4の検出回路12A,22Aの出力信号に比べて、信号周期Tの1/3の周期の誤差成分が低減された第2の信号を生成する。第3の演算回路33Aは、第1の信号および第2の信号に基づいて、第1の基準位置PRAにおける回転磁界の方向が第1の基準方向DRAに対してなす角度θAの検出値を算出する。以下、第3の演算回路33Aによって算出された検出値を第1の角度検出値と呼び、記号θAsで表す。第1の角度検出値θAsの算出方法は、第1の実施の形態における角度検出値θsの算出方法と同じである。第1の角度検出値θAsは、誤差を考慮しなければ、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度との差が一定値(0を含む)になるという関係を有している。従って、第1の角度検出値θAsは、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度と対応関係を有する。
第4の演算回路31Bは、第5および第7の検出回路11B,21Bの出力信号に基づいて、回転磁界の第5の方向の成分の強度と回転磁界の第7の方向の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、第5および第7の検出回路11B,21Bの出力信号に比べて、信号周期Tの1/3の周期の誤差成分が低減された第3の信号を生成する。第5の演算回路32Bは、第6および第8の検出回路12B,22Bの出力信号に基づいて、回転磁界の第6の方向の成分の強度と回転磁界の第8の方向の成分の強度の両方と対応関係を有し、且つ、第6および第8の検出回路12B,22Bの出力信号に比べて、信号周期Tの1/3の周期の誤差成分が低減された第4の信号を生成する。第6の演算回路33Bは、第3の信号および第4の信号に基づいて、第2の基準位置PRBにおける回転磁界の方向が第2の基準方向DRBに対してなす角度θBの検出値を算出する。以下、第6の演算回路33Bによって算出された検出値を第2の角度検出値と呼び、記号θBsで表す。第2の角度検出値θBsの算出方法は、第1の実施の形態における角度検出値θsの算出方法と同じである。第2の角度検出値θBsは、誤差を考慮しなければ、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度との差が一定値(0を含む)になるという関係を有している。従って、第2の角度検出値θBsは、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度と対応関係を有する。
図26に示したように、回転磁界センサ201は、更に、第3の演算回路33Aによって算出された第1の角度検出値θAsと、第6の演算回路33Bによって算出された第2の角度検出値θBsとに基づいて、回転磁界センサ201の基準位置における回転磁界の方向が回転磁界センサ201の基準方向に対してなす角度と対応関係を有する角度検出値θsを算出する第7の演算回路211を備えている。第7の演算回路211は、例えばマイクロコンピュータによって実現することができる。なお、回転磁界センサ201の基準位置と基準方向は、それぞれ、第1の基準位置PRAと第1の基準方向DRAと一致していてもよいし、第2の基準位置PRBと第2の基準方向DRBと一致していてもよいし、これらの位置および方向と異なる任意の位置と方向であってもよい。
次に、図28を参照して、本実施の形態における変形例の回転磁界センサ201の構成について説明する。図28には、方向が回転する回転磁界を発生する手段の例として、第2の実施の形態における図21および図22に示した磁石103を示している。変形例の回転磁界センサ201は、第2の実施の形態における図21および図22に示した例と同様に、磁石103の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。
図28には、第1および第2の基準位置PRA,PRBと、第1および第2の基準方向DRA,DRBも示している。図28に示したように、第2の基準位置PRBは、第1の基準位置PRAに対して、回転磁界の回転の周期の1/4すなわち電気角90°に相当する量、すなわち磁石103の1/4ピッチだけずれている。また、図28に示した例では、第1および第2の基準方向DRA,DRBを、いずれも、XY平面内において、磁石103の移動方向に直交する方向に設定している。
第1および第2の検出部10A,20Aの、磁石103に対する相対的な位置関係は、第2の実施の形態における第1および第2の検出部10,20の、磁石103に対する相対的な位置関係と同様である。第3および第4の検出部10B,20Bの、磁石103に対する相対的な位置関係も、第2の実施の形態における第1および第2の検出部10,20の、磁石103に対する相対的な位置関係と同様である。変形例では、第3および第4の検出部10B,20Bは、第1および第2の検出部10A,20Aに対して、回転磁界の回転の周期の1/4すなわち電気角90°に相当する量、すなわち磁石103の1/4ピッチだけずれた位置に配置されている。
次に、第7の演算回路211における角度検出値θsの算出方法について説明する。本実施の形態では、複合検出部210Aの第3の演算回路33Aによって算出された第1の角度検出値θAsと、複合検出部210Bの第6の演算回路33Bによって算出された第2の角度検出値θBsとに基づいて、第7の演算回路211によって、角度検出値θsを算出する。図27および図28に示した例では、複合検出部210Bの第3および第4の検出部10B,20Bは、複合検出部210Aの第1および第2の検出部10A,20Aに対して、電気角90°に相当する量だけずれた位置に配置されている。そのため、複合検出部210Aによって得られる第1の角度検出値θAsの位相と、複合検出部210Bによって得られる第2の角度検出値θBsの位相は、電気角90°だけ異なる。これらの例では、第7の演算回路211は、下記の式(6)によって、θsを算出する。
θs=(θAs+θBs+π/2)/2 …(6)
次に、回転磁界センサ201の作用および効果について説明する。回転磁界センサ201では、第1および第3の検出回路11A,21Aの出力信号に基づいて生成された第1の信号と、第2および第4の検出回路12A,22Aの出力信号に基づいて生成された第2の信号とに基づいて、第3の演算回路33Aによって、第1の角度検出値θAsが算出される。また、回転磁界センサ201では、第5および第7の検出回路11B,21Bの出力信号に基づいて生成された第3の信号と、第6および第8の検出回路12B,22Bの出力信号に基づいて生成された第4の信号とに基づいて、第6の演算回路33Bによって、第2の角度検出値θBsが算出される。そして、第1の角度検出値θAsと第2の角度検出値θBsとに基づいて、第7の演算回路211によって、式(6)を用いて、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度と対応関係を有する角度検出値θsを算出する。
本実施の形態に係る回転磁界センサ201は、回転磁界に起因して発生する角度誤差を低減するのに適している。ここで、図27ないし図29を参照して、回転磁界に起因して角度誤差が発生する理由について説明する。図示しないが、図27に示した例では、回転磁界は、それぞれ、磁石102の半径方向の成分Hrと、XY平面内において、Hrに直交する方向の成分Hθとを含んでいる。また、図示しないが、図28に示した例では、回転磁界は、XY平面内において、磁石103の移動方向に直交する方向の成分Hrと、XY平面内において、Hrに直交する方向の成分Hθとを含んでいる。
ここで、図27または図28に示した例において、第1および第2の検出部10A,20Aによってそれぞれ回転磁界を検出し、これら検出部10A,20Aの出力信号に基づいて第1の角度検出値θAsを得る場合を考える。図29は、この場合におけるHr、Hθ、θAsならびに第1の角度誤差dθAの関係の一例を示している。図29において、横軸は、角度θAを示し、縦軸は、Hr、Hθ、θAs、dθAを示している。なお、図29では、便宜上、縦軸における角度θAsの値については、実際の角度が90°〜270゜の範囲では180°を引いた値で表し、実際の角度が270°〜360゜の範囲では360°を引いた値で表している。これ以降の説明で使用する図29と同様の図においても、図29と同様の表し方を用いる。また、理解を容易にするために、図29における第1の角度誤差dθAの波形は、振幅を実際よりも大きく描いている。図27または図28に示した例では、回転磁界の方向や回転磁界の一方向の成分の強度が正弦関数的に変化しない場合がある。この場合、第1の角度検出値θAsは、回転磁界の方向が理想的に回転する場合に想定される第1の角度検出値θAsの理論値に対する第1の角度誤差dθAを含むことになる。同様に、第3および第4の検出部10B,20Bによってそれぞれ回転磁界を検出し、これら検出部10B,20Bの出力信号に基づいて第2の角度検出値θBsを得る場合も、第2の角度検出値θBsは、回転磁界の方向が理想的に回転する場合に想定される第2の角度検出値θBsの理論値に対する第2の角度誤差dθBを含むことになる。第1および第2の角度誤差dθA,dθBは、回転磁界の方向の変化に伴って互いに等しい角度誤差周期で周期的に変化し、且つ第1および第2の角度誤差dθA,dθBの変化は、回転磁界の方向の変化に依存する。角度誤差周期は、回転磁界の方向の回転の周期の1/2である。
次に、図30および図31を参照して、回転磁界センサ201によって、回転磁界に起因して発生する角度誤差を低減できることを説明する。図30において、(a)は、第1の角度検出値θAsと、第1の角度検出値θAsに含まれる第1の角度誤差dθAとの関係を示している。図30において、(b)は、第2の角度検出値θBsと、第2の角度検出値θBsに含まれる第2の角度誤差dθBとの関係を示している。図30に示した例では、第1の角度誤差dθAおよび第2の角度誤差dθBの振幅は±0.17°である。本実施の形態では、第3の位置と第4の位置は、それぞれ、第1の位置と第2の位置に対して、角度誤差周期の1/2(電気角90°)に相当する量だけずれており、角度検出値θAs,θBsの位相は、角度誤差周期の1/2(電気角90°)だけ異なる。従って、角度検出値θsを算出する際に、第1の角度誤差dθAの位相と第2の角度誤差dθBの位相は、互いに逆相になる。これにより、第1の角度誤差dθAと第2の角度誤差dθBとが相殺される。
図31は、上述のようにして算出された角度検出値θsと、この角度検出値θsに含まれる角度誤差dθとの関係を表している。図31では、基準位置における回転磁界の方向が基準方向に対してなす角度を記号θで表している。図31に示されるように、角度誤差dθは、第1の角度誤差dθAおよび第2の角度誤差dθBに比べて、大幅に小さくなっている。図31に示した例では、角度誤差dθの振幅は±0.03°である。
なお、本実施の形態では、第3の位置と第4の位置は、それぞれ、第1の位置と第2の位置に対して、角度誤差周期の1/2に相当する量だけずれている。しかし、第3の位置と第4の位置は、それぞれ、第1の位置と第2の位置に対して、角度誤差周期の1/2の奇数倍に相当する量だけずれていればよい。この場合に、角度誤差dθAと角度誤差dθBが相殺されて、角度検出値θsに含まれる角度誤差dθを大幅に低減することができる。
また、本実施の形態では、第1の角度検出値θAsと第2の角度検出値θBsの位相差は、電気角90°に限らず任意の大きさでよい。第1の角度検出値θAsと第2の角度検出値θBsの位相差をβとすると、第7の演算回路211は、下記の式(7)によって、θsを算出する。
θs=(θAs+θBs+β)/2 …(7)
また、本実施の形態では、第1の角度検出値θAsの算出方法は、第1の実施の形態における角度検出値θsの算出方法と同じである。従って、第1の実施の形態で説明したように、MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪んだ場合に、第1の検出回路11Aの出力信号に含まれる誤差成分の位相と第3の検出回路21Aの出力信号に含まれる誤差成分の位相は、第1の信号を生成する際に互いに逆相になり、第2の検出回路12Aの出力信号に含まれる誤差成分の位相と第4の検出回路22Aの出力信号に含まれる誤差成分の位相は、第2の信号を生成する際に互いに逆相になる。そのため、本実施の形態によれば、第1の実施の形態における説明と同じ理由によって、MR素子に起因した第1の角度検出値θAsの誤差を低減することが可能になる。
同様に、本実施の形態では、第2の角度検出値θBsの算出方法は、第1の実施の形態における角度検出値θsの算出方法と同じである。従って、第1の実施の形態で説明したように、MR素子に起因してMR素子の出力信号波形が歪んだ場合に、第5の検出回路11Bの出力信号に含まれる誤差成分の位相と第7の検出回路21Bの出力信号に含まれる誤差成分の位相は、第3の信号を生成する際に互いに逆相になり、第6の検出回路12Bの出力信号に含まれる誤差成分の位相と第8の検出回路22Bの出力信号に含まれる誤差成分の位相は、第4の信号を生成する際に互いに逆相になる。そのため、本実施の形態によれば、第1の実施の形態における説明と同じ理由によって、MR素子に起因した第2の角度検出値θBsの誤差を低減することが可能になる。このように、本実施の形態によれば、MR素子に起因した角度検出値θAs,θBsの誤差を低減することが可能になることから、最終的に得られる角度検出値θsについても、MR素子に起因した誤差を低減することが可能になる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、各実施の形態における複数の検出部の配置は一例であり、複数の検出部の配置は、特許請求の範囲に記載された要件を満たす範囲内で種々の変更が可能である。