[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、本発明の第1の実施の形態に係る検出装置を含むセンサシステムについて説明する。本実施の形態に係る検出装置は、検出対象の情報に応じて変化する物理情報を検出して、検出対象の情報と対応関係を有する検出値を生成するものである。検出装置は、各々が物理情報と対応関係を有する検出データを生成する複数のセンサを備えている。
本実施の形態では特に、検出装置は磁気式の角度センサ1であり、検出対象の情報は検出対象の角度であり、複数のセンサは複数の磁気センサである。以下、検出対象の角度を、対象角度と言い、記号θで表す。角度センサ1は、物理情報として、対象角度θに応じて方向が変化する検出対象磁界を検出して、対象角度θと対応関係を有する検出値を生成する。複数の磁気センサの各々は、対象角度θと対応関係を有する検出データを生成する。
図1は、検出装置として角度センサ1を含むセンサシステム100の概略の構成を示している。センサシステム100は、更に、物理情報発生部5を含んでいる。本実施の形態における物理情報発生部5は、物理情報としての検出対象磁界を発生する磁界発生部である。図1には、磁界発生部の一例として、回転軸C上に中心軸が位置する円柱状の磁石6を示している。磁石6は、円柱の中心軸を含む仮想の平面を中心として対称に配置されたN極とS極とを有している。この磁石6は、回転軸Cを中心として回転する。本実施の形態における対象角度θは、磁石6の回転位置に対応する角度である。
複数の磁気センサは、互いに異なる検出位置において検出対象磁界を検出するように構成されている。角度センサ1は、更に、複数の電子部品を備えている。複数の磁気センサは、複数の電子部品のうちの互いに異なるものに含まれている。複数の電子部品は、本体同士は物理的に分離されている。複数の電子部品は、後述するサンプリングクロックを伝送する信号線を介して、電気的に接続されていてもよい。
本実施の形態では、複数の磁気センサは、第1の磁気センサ10Aと第2の磁気センサ20Aであり、複数の電子部品は、2つの電子部品10,20である。第1の磁気センサ10Aは、電子部品10に含まれている。第2の磁気センサ20Aは、電子部品20に含まれている。電子部品10,20は、磁石6の一方の端面に対向するように配置される。
第1の磁気センサ10Aは、第1の検出位置P1において検出対象磁界を含む第1の印加磁界MF1を検出して、第1の検出データを生成する。第2の磁気センサ20Aは、第2の検出位置P2において検出対象磁界を含む第2の印加磁界MF2を検出して、第2の検出データを生成する。第1の検出位置P1と第2の検出位置P2は、磁石6を通過する仮想の直線上の互いに異なる位置である。この仮想の直線は、回転軸Cと一致していてもよいし、一致していなくてもよい。図1には、前者の場合の例を示している。本実施の形態では特に、第2の検出位置P2は、第1の検出位置P1よりも磁石6からより遠い位置である。
以下、第1の検出位置P1における検出対象磁界を第1の部分磁界MFaと言い、第2の検出位置P2における検出対象磁界を第2の部分磁界MFbと言う。第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向は、対象角度θに応じて変化する。第1および第2の検出位置P1,P2が互いに異なっていることにより、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの強度は互いに異なっている。
角度センサ1には、検出対象磁界の他に、検出対象磁界以外のノイズ磁界Mexが印加される場合がある。第2の検出位置P2におけるノイズ磁界Mexの方向および強度は、それぞれ第1の検出位置P1におけるノイズ磁界Mexの方向および強度と等しい。ノイズ磁界Mexは、その方向と強度が時間的に一定の磁界であってもよいし、その方向と強度が時間的に周期的に変化する磁界であってもよいし、その方向と強度が時間的にランダムに変化する磁界であってもよい。
角度センサ1にノイズ磁界Mexが印加されている場合、第1の印加磁界MF1は、第1の部分磁界MFaとノイズ磁界Mexとの合成磁界であり、第2の印加磁界MF2は、第2の部分磁界MFbとノイズ磁界Mexとの合成磁界である。
ここで、図1および図2を参照して、本実施の形態における方向、角度、基準平面および基準方向の定義について説明する。まず、図1に示した回転軸Cに平行で、図1における下から上に向かう方向をZ方向とする。図2では、Z方向を図2における奥から手前に向かう方向として表している。次に、Z方向に垂直な2方向であって、互いに直交する2つの方向をX方向とY方向とする。図2では、X方向を右側に向かう方向として表し、Y方向を上側に向かう方向として表している。また、X方向とは反対の方向を−X方向とし、Y方向とは反対の方向を−Y方向とする。
本実施の形態では、第1の検出位置P1に対応する第1の基準平面PL1と、第2の検出位置P2に対応する第2の基準平面PL2が定義される。第1および第2の基準平面PL1,PL2は、Z方向に垂直な仮想の平面である。従って、第1および第2の基準平面PL1,PL2は、互いに平行である。第1の検出位置P1は、第1の基準平面PL1と前記の仮想の直線との交点である。第2の検出位置P2は、第2の基準平面PL2と前記の仮想の直線との交点である。
また、本実施の形態では、第1および第2の印加磁界MF1,MF2の方向を表す基準として、基準方向DRが定義される。本実施の形態では、X方向を基準方向DRとする。
ここで、第1の印加磁界MF1の第1の基準平面PL1に平行な成分を第1の印加磁界成分MF1cと言い、第2の印加磁界MF2の第2の基準平面PL2に平行な成分を第2の印加磁界成分MF2cと言う。第1および第2の印加磁界成分MF1c,MF2cの方向は、いずれも、図2において反時計回り方向に回転するものとする。図2に示したように、第1の印加磁界成分MF1cの方向が基準方向DRに対してなす角度を第1の角度と言い、記号θ1で表す。また、第2の印加磁界成分MF2cの方向が基準方向DRに対してなす角度を第2の角度と言い、記号θ2で表す。第1および第2の角度θ1,θ2は、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから時計回り方向に見たときに負の値で表す。
第1の印加磁界MF1の主成分は、第1の部分磁界MFaである。第2の印加磁界MF2の主成分は、第2の部分磁界MFbである。第1の部分磁界MFaの方向と第2の部分磁界MFbの方向は、同じ方向になる。また、前述のように、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向は、対象角度θに応じて変化する。従って、第1および第2の角度θ1,θ2は、対象角度θに応じて変化する。
第1の部分磁界MFaの方向は、第1の基準平面PL1に平行であるか、ほぼ平行である。第2の部分磁界MFbの方向は、第2の基準平面PL2に平行であるか、ほぼ平行である。以下、第1の部分磁界MFaの方向が基準方向DRに対してなす角度を第1の回転磁界角度と言い、第2の部分磁界MFbの方向が基準方向DRに対してなす角度を第2の回転磁界角度と言う。第1の回転磁界角度と第2の回転磁界角度は、互いに等しくなる。また、磁石6が理想的な回転磁界を発生する場合には、第1および第2の回転磁界角度は、いずれも対象角度θと一致する。本実施の形態では、第1および第2の回転磁界角度は、いずれも対象角度θと一致するものとする。以下、第1および第2の回転磁界角度を代表して、単に回転磁界角度と言い、記号θMで表す。回転磁界角度θMの正負の定義は、第1および第2の角度θ1,θ2と同様である。
第1の印加磁界MF1の主成分は第1の部分磁界MFaであることから、第1の印加磁界MF1の方向は、第1の基準平面PL1に平行であるか、ほぼ平行である。従って、第1の印加磁界MF1の方向が基準方向DRに対してなす角度は、第1の角度θ1と等しいか、ほぼ等しい。同様に、第2の印加磁界MF2の主成分は第2の部分磁界MFbであることから、第2の印加磁界MF2の方向は、第2の基準平面PL2に平行であるか、ほぼ平行である。従って、第2の印加磁界MF2の方向が基準方向DRに対してなす角度は、第2の角度θ2と等しいか、ほぼ等しい。
なお、本実施の形態におけるセンサシステム100の構成は、図1に示した例に限られない。例えば、図1に示したように配置された物理情報発生部5と電子部品10,20において、物理情報発生部5が固定されて電子部品10,20が回転してもよいし、物理情報発生部5と電子部品10,20が互いに反対方向に回転してもよいし、物理情報発生部5と電子部品10,20が同じ方向に互いに異なる角速度で回転してもよい。
また、電子部品10,20は、第1および第2の検出位置P1,P2が、回転軸Cに垂直な1つの仮想の平面内に位置するように配置されていてもよい。この場合、この1つの仮想の平面が、第1および第2の検出位置P1,P2に共通する基準平面として定義されてもよい。
次に、図3を参照して、角度センサ1の構成について詳しく説明する。図3は、角度センサ1の構成を示す機能ブロック図である。前述の通り、角度センサ1は、各々が対象角度θと対応関係を有する検出データを生成する複数の磁気センサを備えている。複数の磁気センサの各々は、物理情報としての検出対象磁界を検出して、検出対象の情報である対象角度θと対応関係を有する少なくとも1つのアナログ検出信号を生成する少なくとも1つの検出器と、少なくとも1つの検出器によって生成されたアナログ検出信号をサンプリングしデジタル検出信号に変換して出力する少なくとも1つのアナログ−デジタル変換器(以下、ADCと記す。)とを含んでいる。複数の磁気センサの各々において、検出データは、少なくとも1つのデジタル検出信号に基づくものである。複数の磁気センサのADCにおけるサンプリングの時刻は一致する。
角度センサ1は、更に、サンプリングの時刻を決定するサンプリングクロックを発生するクロック発生器を備えている。複数の磁気センサのADCはいずれも、クロック発生器によって発生されたサンプリングクロックによってサンプリングの時刻が決定されるように構成されている。
本実施の形態では、複数の磁気センサは、第1の磁気センサ10Aと第2の磁気センサ20Aである。第1の磁気センサ10Aは、少なくとも1つの検出器として第1の検出器11および第2の検出器12を含んでいる。第1の検出器11は、第1の角度θ1の余弦と対応関係を有する第1のアナログ検出信号S1aを生成する。第2の検出器12は、第1の角度θ1の正弦と対応関係を有する第2のアナログ検出信号S2aを生成する。第1のアナログ検出信号S1aは、第1の印加磁界MF1のX方向の成分の強度と対応関係を有していてもよい。第2のアナログ検出信号S2aは、第1の印加磁界MF1のY方向の成分の強度と対応関係を有していてもよい。
第2の磁気センサ20Aは、少なくとも1つの検出器として第3の検出器21および第4の検出器22を含んでいる。第3の検出器21は、第2の角度θ2の余弦と対応関係を有する第3のアナログ検出信号S3aを生成する。第4の検出器22は、第2の角度θ2の正弦と対応関係を有する第4のアナログ検出信号S4aを生成する。第3のアナログ検出信号S3aは、第2の印加磁界MF2のX方向の成分の強度と対応関係を有していてもよい。第4のアナログ検出信号S4aは、第2の印加磁界MF2のY方向の成分の強度と対応関係を有していてもよい。
第1ないし第4の検出器11,12,21,22の各々は、少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。少なくとも1つの磁気検出素子は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を含んでいてもよい。磁気抵抗効果素子は、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子でもよいし、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子でもよいし、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子でもよい。また、少なくとも1つの磁気検出素子は、ホール素子等、磁気抵抗効果素子以外の磁界を検出する素子を、少なくとも1つ含んでいてもよい。
検出対象磁界の方向が所定の周期で回転すると、第1および第2の角度θ1,θ2は所定の周期で変化する。この場合、第1ないし第4のアナログ検出信号S1a〜S4aは、いずれも、上記所定の周期と等しい信号周期で周期的に変化する。第2のアナログ検出信号S2aの位相は、第1のアナログ検出信号S1aの位相に対して、信号周期の1/4の奇数倍だけ異なっている。第3および第4のアナログ検出信号S3a,S4aの位相は、それぞれ、第1および第2のアナログ検出信号S1a,S2aの位相と一致している。なお、磁気検出素子の作製の精度等の観点から、これらの信号の位相の関係は、上記の関係からわずかにずれていてもよい。
第1の磁気センサ10Aは、少なくとも1つのADCとして第1のADC13および第2のADC14を含んでいる。第1および第2のADC13,14は、それぞれ第1および第2のアナログ検出信号S1a,S2aを第1および第2のデジタル検出信号S1d,S2dに変換する。第1の磁気センサ10Aは、更に、第1および第2のデジタル検出信号S1d,S2dを用いた演算を行って第1の検出データθ1sを生成する第1のデータ生成器15を含んでいる。第1の検出データθ1sは、第1の角度θ1を表すデータである。
第2の磁気センサ20Aは、少なくとも1つのADCとして第3のADC23および第4のADC24を含んでいる。第3および第4のADC23,24は、それぞれ第3および第4のアナログ検出信号S3a,S4aを第3および第4のデジタル検出信号S3d,S4dに変換する。第2の磁気センサ20Aは、更に、第3および第4のデジタル検出信号S3d,S4dを用いた演算を行って第2の検出データθ2sを生成する第2のデータ生成器25を含んでいる。第2の検出データθ2sは、第2の角度θ2を表すデータである。
角度センサ1は、更に、サンプリングの時刻を決定するサンプリングクロックCLKを発生するクロック発生器10Bを備えている。サンプリングクロックCLKは、電圧が所定の周期で変化する信号である。サンプリングクロックCLKは、電圧が高い一定の状態と電圧が低い一定の状態とを交互に繰り返す信号であってもよい。この場合、サンプリングの時刻は、例えば、サンプリングクロックCLKの電圧が低い状態から高い状態に立ち上がるタイミングに合わせて規定される。
クロック発生器10Bは、電子部品10に含まれている。第1ないし第4のADC13,14,23,24はいずれも、クロック発生器10Bによって発生されたサンプリングクロックCLKによってサンプリングの時刻が決定されるように構成されている。クロック発生器10Bと第1ないし第4のADC13,14,23,24は、サンプリングクロックCLKを伝送する信号線を介して、電気的に接続されている。
角度センサ1は、更に、サンプリングクロックを発生するクロック発生器20Bを備えている。クロック発生器20Bは、電子部品20に含まれている。本実施の形態では、クロック発生器20Bが発生するサンプリングクロックは、第1ないし第4のADC13,14,23,24におけるサンプリングの時刻を決定するのには用いられない。
第1および第2のADC13,14、第1のデータ生成器15ならびにクロック発生器10Bは、例えば、1つの特定用途向け集積回路(ASIC)によって実現することができる。第3および第4のADC23,24、第2のデータ生成器25ならびにクロック発生器20Bは、例えば、他の1つのASICによって実現することができる。
角度センサ1は、更に、複数の磁気センサによって生成された複数の検出データ、すなわち第1および第2の検出データθ1s,θ2sを用いた演算を行って、検出値θsを生成する演算器50を備えている。前述のように、本実施の形態では、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの強度は互いに異なっている。そのため、第1および第2の検出データθ1s,θ2sに与えるノイズ磁界Mexの相対的な影響に違いが生じる。その結果、第1および第2の検出データθ1s,θ2s間には、ノイズ磁界Mexに依存した違いが生じ得る。演算器50は、この性質を利用して、第1の検出データθ1sまたは第2の検出データθ2sのみに基づいて検出値θsを生成する場合に比べて、ノイズ磁界Mexに起因した検出値θsの誤差が低減されるように、第1および第2の検出データθ1s,θ2sを用いた演算を行って、検出値θsを生成する。演算器50は、例えば、ASICまたはマイクロコンピュータによって実現することができる。検出値θsの生成方法については、後で説明する。
次に、第1ないし第4の検出器11,12,21,22の構成について説明する。図4は、第1の検出器11の具体的な構成の一例を示している。この例では、第1の検出器11は、ホイートストンブリッジ回路17と、差分検出器18とを有している。ホイートストンブリッジ回路17は、4つの磁気検出素子R11,R12,R13,R14と、電源ポートV1と、グランドポートG1と、2つの出力ポートE11,E12とを含んでいる。磁気検出素子R11は、電源ポートV1と出力ポートE11との間に設けられている。磁気検出素子R12は、出力ポートE11とグランドポートG1との間に設けられている。磁気検出素子R13は、電源ポートV1と出力ポートE12との間に設けられている。磁気検出素子R14は、出力ポートE12とグランドポートG1との間に設けられている。電源ポートV1には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG1はグランドに接続される。
第3の検出器21の構成は、第1の検出器11の構成と同じである。そのため、以下の説明では、第3の検出器21の構成要素について、第1の検出器11の構成要素と同じ符号を用いる。
図5は、第2の検出器12の具体的な構成の一例を示している。この例では、第2の検出器12は、ホイートストンブリッジ回路27と、差分検出器28とを有している。ホイートストンブリッジ回路27は、4つの磁気検出素子R21,R22,R23,R24と、電源ポートV2と、グランドポートG2と、2つの出力ポートE21,E22とを含んでいる。磁気検出素子R21は、電源ポートV2と出力ポートE21との間に設けられている。磁気検出素子R22は、出力ポートE21とグランドポートG2との間に設けられている。磁気検出素子R23は、電源ポートV2と出力ポートE22との間に設けられている。磁気検出素子R24は、出力ポートE22とグランドポートG2との間に設けられている。電源ポートV2には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG2はグランドに接続される。
第4の検出器22の構成は、第2の検出器12の構成と同じである。そのため、以下の説明では、第4の検出器22の構成要素について、第2の検出器12の構成要素と同じ符号を用いる。
磁気検出素子R11〜R14,R21〜R24の各々は、直列に接続された複数の磁気抵抗効果素子(MR素子)を含んでいてもよい。複数のMR素子の各々は、例えばスピンバルブ型のMR素子である。このスピンバルブ型のMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、検出対象磁界の方向に応じて磁化の方向が変化する磁性層である自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。スピンバルブ型のMR素子は、TMR素子でもよいし、GMR素子でもよい。TMR素子では、非磁性層はトンネルバリア層である。GMR素子では、非磁性層は非磁性導電層である。スピンバルブ型のMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。図4および図5において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は、MR素子における自由層の磁化の方向を表している。
第1の検出器11では、磁気検出素子R11,R14に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向はX方向であり、磁気検出素子R12,R13に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は−X方向である。この場合、第1の角度θ1の余弦に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1のアナログ検出信号S1aとして出力する。従って、第1のアナログ検出信号S1aは、第1の角度θ1の余弦と対応関係を有する。
第2の検出器12では、磁気検出素子R21,R24に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向はY方向であり、磁気検出素子R22,R23に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は−Y方向である。この場合、第1の角度θ1の正弦に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化する。差分検出器28は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第2のアナログ検出信号S2aとして出力する。従って、第2のアナログ検出信号S2aは、第1の角度θ1の正弦と対応関係を有する。
第3の検出器21では、第2の角度θ2の余弦に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第3のアナログ検出信号S3aとして出力する。従って、第3のアナログ検出信号S3aは、第2の角度θ2の余弦と対応関係を有する。
第4の検出器22では、第2の角度θ2の正弦に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化する。差分検出器28は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第4のアナログ検出信号S4aとして出力する。従って、第4のアナログ検出信号S4aは、第2の角度θ2の正弦と対応関係を有する。
なお、検出器11,12,21,22内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
ここで、図6を参照して、磁気検出素子の構成の一例について説明する。図6は、図4および図5に示した検出器11,12における1つの磁気検出素子の一部を示す斜視図である。この例では、1つの磁気検出素子は、複数の下部電極162と、複数のMR素子150と、複数の上部電極163とを有している。複数の下部電極162は図示しない基板上に配置されている。個々の下部電極162は細長い形状を有している。下部電極162の長手方向に隣接する2つの下部電極162の間には、間隙が形成されている。図6に示したように、下部電極162の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR素子150が配置されている。MR素子150は、下部電極162側から順に積層された自由層151、非磁性層152、磁化固定層153および反強磁性層154を含んでいる。自由層151は、下部電極162に電気的に接続されている。反強磁性層154は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層153との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層153の磁化の方向を固定する。複数の上部電極163は、複数のMR素子150の上に配置されている。個々の上部電極163は細長い形状を有し、下部電極162の長手方向に隣接する2つの下部電極162上に配置されて隣接する2つのMR素子150の反強磁性層154同士を電気的に接続する。このような構成により、図6に示した磁気検出素子は、複数の下部電極162と複数の上部電極163とによって直列に接続された複数のMR素子150を有している。
なお、MR素子150における層151〜154の配置は、図6に示した配置とは上下が反対でもよい。また、磁化固定層153は、単一の強磁性層ではなく、2つの強磁性層とこの2つの強磁性層の間に配置された非磁性金属層とを含む人工反強磁性構造であってもよい。また、MR素子150は、反強磁性層154を含まない構成であってもよい。
次に、第1ないし第4のADC13,14,23,24の構成について説明する。第1ないし第4のADC13,14,23,24の構成は同じである。
ADCは、アナログ検出信号のサンプリングを行うサンプルホールド回路を含むものでもよいし、サンプルホールド回路を含まないものでもよい。サンプルホールド回路を含むADCの例としては、逐次比較型のADCがある。サンプルホールド回路を含まないADCの例としては、並列比較型のADCと、オーバーサンプリング型のADCがある。オーバーサンプリング型のADCとして代表的なものとしては、デルタ・シグマ型のADCがある。
以下、逐次比較型のADCとして構成された第1ないし第4のADC13,14,23,24のうちの任意のADCを、第1の例のADC70と言う。また、並列比較型のADCとして構成された第1ないし第4のADC13,14,23,24のうちの任意のADCを、第2の例のADC80と言う。また、オーバーサンプリング型のADCとして構成された第1ないし第4のADC13,14,23,24のうちの任意のADCを、第3の例のADC90と言う。また、ADC70,80,90の各々に対応するアナログ検出信号とデジタル検出信号を、それぞれ記号Sa,Sdで表す。
図7は、第1の例のADC70の構成を示す機能ブロック図である。ADC70は、サンプルホールド回路71を含んでいる。サンプルホールド回路71には、アナログ検出信号SaとサンプリングクロックCLKが入力される。サンプルホールド回路71は、出力信号Sbを生成する。サンプルホールド回路71は、サンプリングクロックCLKに従ったタイミングで、出力信号Sbをアナログ検出信号Saに追従させる追従モードと、出力信号Sbを一定値に保持する保持モードとが交互に切り替えられるように構成されている。ADC70におけるサンプリングの時刻は、サンプルホールド回路71において追従モードから保持モードに切り替わる時刻である。
ADC70は、更に、サンプルホールド回路71の保持モードにおける出力信号Sbを量子化する量子化回路72を含んでいる。第1の例では特に、量子化回路72は、出力信号Sbの量子化および符号化を行う。量子化とは、電圧値等の連続値を離散値に変換することである。符号化とは、離散値を所定の規則のデジタルデータに変換することである。量子化回路72には、出力信号SbとサンプリングクロックCLKが入力される。量子化回路72は、保持モードにおける出力信号Sbを量子化および符号化して、デジタル検出信号Sdを生成する。量子化回路72としては、例えば、比較器と逐次比較レジスタ回路とデジタル−アナログ変換器(以下、DACと記す。)を含むものが用いられる。
図8は、第2の例のADC80の構成を示す機能ブロック図である。ADC80は、アナログ検出信号Saのサンプリングおよび量子化を同時に行う量子化回路を含んでいる。ADC80におけるサンプリングの時刻は、量子化回路においてアナログ検出信号Saのサンプリングおよび量子化を行う時刻である。
ここで、ADC80の分解能(単位はビット)をN(Nは1以上の整数)で表す。第2の例では特に、ADC80は、量子化回路として、基準電圧Vrefを2N−1個の電圧に分圧するための分圧回路81と、2N−1個の比較器とを含んでいる。分圧回路81は、基準電圧Vrefが印加される電源端子と、グランドに接続されるグランド端子と、電源端子とグランド端子との間において直列に接続された複数の抵抗器とを含んでいる。
2N−1個の比較器の各々は、非反転入力端と反転入力端とクロック入力端と出力端を有している。非反転入力端には、アナログ検出信号Saが入力される。反転入力端は、分圧回路81の複数の抵抗器のうち、その比較器に対応し且つ回路構成上隣接する2つの抵抗器の接続点に接続されている。クロック入力端には、サンプリングクロックCLKが入力される。2N−1個の比較器の各々は、非反転入力端に入力されたアナログ検出信号Saと反転入力端に入力された電圧とを比較して、比較結果を量子化された出力信号として出力端から出力する。2N−1個の比較器における上記の比較は、サンプリングクロックCLKに基づいて同時に行われる。
ADC80は、更に、エンコーダ83を含んでいる。エンコーダ83には、2N−1個の比較器の2N−1個の出力信号と、サンプリングクロックCLKが入力される。エンコーダ83は、2N−1個の出力信号を符号化して、デジタル検出信号Sdを生成する。
図8には、ADC80の分解能が3ビットであり、2N−1個の比較器が7個の比較器82A,82B,82C,82D,82E,82F,82Gである例を示している。
図9は、第3の例のADC90の構成を示す機能ブロック図である。ADC90は、アナログ検出信号Saのサンプリングおよび量子化を同時に行う量子化回路93を含んでいる。量子化回路93には、サンプリングクロックCLKが入力される。量子化回路93は、サンプリングクロックCLKに従ったタイミングで、アナログ検出信号Saのサンプリングおよび量子化を行う。ADC90におけるサンプリングの時刻は、量子化回路93においてサンプリングおよび量子化を行う時刻である。サンプリングクロックCLKの周波数は、符号化された所定のビット数のデジタル検出信号Sdのサンプリング周波数よりも高い。従って、量子化回路93は、オーバーサンプリングを行う。
図9には、ADC90がデルタ・シグマ型のADCとして構成された例を示している。この例では、量子化回路93は、比較器である。また、ADC90は、量子化回路93の他に、微分器91と、積分器92と、遅延回路94と、DAC95とを含んでいる。
微分器91には、アナログ検出信号SaとDAC95から出力されるアナログ信号が入力される。微分器91は、アナログ検出信号SaとDAC95の出力信号の差を出力信号として積分器92に出力する。積分器92は、微分器91の出力信号を積分した信号を量子化回路93に出力する。
量子化回路93には、積分器92の出力信号とサンプリングクロックCLKが入力される。量子化回路93は、積分器92の出力信号と所定の基準電圧とを比較して、積分器92の出力信号を量子化して、1ビットの信号Sd1を出力する。信号Sd1は、遅延回路94に入力される。
遅延回路94は、信号Sd1を、サンプリングクロックCLKの1周期だけ遅延させてDAC95に出力する。DAC95は、入力した信号をアナログ信号に変換して微分器91に出力する。
ADC90は、更に、量子化回路93から出力された信号Sd1を入力して、量子化誤差を除去する処理を行い、所定のビット数のデジタル検出信号Sdを出力するデジタルフィルタを含んでいてもよい。
次に、第1および第2の検出データθ1s,θ2sの生成方法について説明する。第1の検出データθ1sは、第1のデータ生成器15によって、例えば下記の式(1)によって算出される。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
θ1s=atan(S2d/S1d) …(1)
θ1sが0°以上360°未満の範囲内では、式(1)におけるθ1sの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S1d,S2dの正負の組み合わせにより、θ1sの真の値が、式(1)におけるθ1sの2つの解のいずれであるかを判別することができる。第1のデータ生成器15は、式(1)と、上記のS1d,S2dの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθ1sを求める。
第2の検出データθ2sは、第2のデータ生成器25によって、例えば下記の式(2)によって算出される。
θ2s=atan(S4d/S3d) …(2)
θ2sが0°以上360°未満の範囲内では、式(2)におけるθ2sの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S3d,S4dの正負の組み合わせにより、θ2sの真の値が、式(2)におけるθ2sの2つの解のいずれであるかを判別することができる。第2のデータ生成器25は、式(2)と、上記のS3d,S4dの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθ2sを求める。
次に、検出値θsの算出方法について説明する。始めに、第1および第2の角度θ1,θ2と回転磁界角度θMとの関係について説明する。ノイズ磁界Mexが存在しない場合には、第1の角度θ1は、回転磁界角度θMと等しくなる。しかし、ノイズ磁界Mexが存在すると、第1の印加磁界成分MF1cの方向が第1の部分磁界MFaの方向からずれて、その結果、第1の角度θ1が回転磁界角度θMとは異なる値になる場合がある。以下、第1の角度θ1と回転磁界角度θMの差を、第1の角度θ1の角度誤差と言う。第1の角度θ1の角度誤差は、ノイズ磁界Mexに起因して生じる。
同様に、ノイズ磁界Mexが存在しない場合には、第2の角度θ2は、回転磁界角度θMと等しくなる。しかし、ノイズ磁界Mexが存在すると、第2の印加磁界成分MF2cの方向が、第2の部分磁界MFbの方向からずれて、その結果、第2の角度θ2が回転磁界角度θMとは異なる値になる場合がある。以下、第2の角度θ2と回転磁界角度θMの差を、第2の角度θ2の角度誤差と言う。第2の角度θ2の角度誤差は、ノイズ磁界Mexに起因して生じる。
ここで、ノイズ磁界Mexを第1ないし第3の成分に分けて考える。第1の成分は、第1および第2の基準平面PL1,PL2に平行であって且つ第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向に対して直交する方向の成分である。第2の成分は、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向に平行な方向の成分である。第3の成分は、第1および第2の基準平面PL1,PL2に垂直な方向の成分である。図10は、第1および第2の印加磁界成分MF1c,MF2cとノイズ磁界Mexとの関係を模式的に示す説明図である。図10では、ノイズ磁界Mexの第1の成分を、記号Mex1で表している。図10における(a)は第1の印加磁界成分MF1cとノイズ磁界Mexの第1の成分Mex1との関係を示している。図10における(b)は第2の印加磁界成分MF2cとノイズ磁界Mexの第1の成分Mex1との関係を示している。なお、図10では、第1の成分Mex1の大きさを強調して描いている。図10に示したように、第1および第2の印加磁界成分MF1c,MF2cの方向は、第1の成分Mex1の影響によって、それぞれ第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向からずれる。
なお、本実施の形態では、第1および第2の印加磁界成分MF1c,MF2cの方向のずれに対するノイズ磁界Mexの第2の成分の影響を無視することができる程度に、ノイズ磁界Mexの強度は、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの強度に比べて十分に小さいものとする。また、ノイズ磁界Mexの第3の成分は、第1および第2の印加磁界成分MF1c,MF2cの方向に影響しない。図10では、第1の印加磁界成分MF1cを、第1の部分磁界MFaとノイズ磁界Mexの第1の成分Mex1との合成磁界として表し、第2の印加磁界成分MF2cを、第2の部分磁界MFbとノイズ磁界Mexの第1の成分Mex1との合成磁界として表している。
図10における(a)に示したように、第1の印加磁界成分MF1cの方向が第1の部分磁界MFaの方向からずれると、第1の角度θ1には角度誤差が生じる。第1の部分磁界MFaの強度をB1とし、ノイズ磁界Mexの第1の成分Mex1の強度をBexとすると、第1の角度θ1の角度誤差は、atan(Bex/B1)になる。
また、図10における(b)に示したように、第2の印加磁界成分MF2cの方向が第2の部分磁界MFbの方向からずれると、第2の角度θ2には角度誤差が生じる。第2の部分磁界MFbの強度をB2とすると、第2の角度θ2の角度誤差は、atan(Bex/B2)になる。
第1の角度θ1は、回転磁界角度θMと、第1の角度θ1の角度誤差とを用いて表すことができる。同様に、第2の角度θ2は、回転磁界角度θMと、第2の角度θ2の角度誤差とを用いて表すことができる。具体的には、第1および第2の角度θ1,θ2は、それぞれ下記の式(3)、(4)によって表すことができる。
θ1=θM−atan(Bex/B1) …(3)
θ2=θM−atan(Bex/B2) …(4)
ところで、xが十分に小さいときには、atan(x)をAT・xと近似することができる。ATは、定数であり、例えば56.57である。本実施の形態では、ノイズ磁界Mexの第1の成分Mex1の強度Bexは、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの強度B1,B2に比べて十分に小さいため、atan(Bex/B1)、atan(Bexx/B2)をそれぞれAT・(Bex/B1)、AT・(Bex/B2)と近似することができる。この近似を式(3)に適用して変形すると、Bexは下記の式(5)で表すことができる。
Bex=−B1・(θ1−θM)/AT …(5)
また、上記の近似を適用して式(4)を変形し、変形後の式に式(5)を代入すると、下記の式(6)が得られる。
θ2=θM+B1・(θ1−θM)/B2 …(6)
式(6)を変形すると、回転磁界角度θMは下記の式(7)で表すことができる。
θM={θ2−(B1/B2)・θ1}/{1−(B1/B2)} …(7)
式(7)において、“B1/B2”は、第2の部分磁界MFbの強度B2に対する第1の部分磁界MFaの強度B1の比を表している。以下、この比を記号B12で表す。本実施の形態では、比B12の値は、第1および第2の検出位置P1,P2の位置関係によって決まり、回転磁界角度θMの値によらずに一定になる。
次に、演算器50における検出値θsの生成方法について具体的に説明する。演算器50は、複数の検出データを用いた演算として、第1および第2の角度θ1,θ2の検出データであるθ1s,θ2sと上記の比B12とを用いた演算を行う。具体的には、演算器50は、複数の検出データを用いた演算として、式(7)と同様の下記の式(8)で表される演算を行って、検出値θsを生成する。
θs=(θ2s−B12・θ1s)/(1−B12) …(8)
式(8)は、式(7)におけるθM,θ1,θ2,B1/B2を、それぞれθs,θ1s,θ2s,B12に置き換えたものである。
演算器50は、検出値θsを算出する演算処理部51と、第2の部分磁界MFbの強度B2に対する第1の部分磁界MFaの強度B1の比B12の値を保持する記憶部52とを含んでいる。演算処理部51は、第1の磁気センサ10Aの第1のデータ生成器15によって算出されたθ1sと、第2の磁気センサ20Aの第2のデータ生成器25によって算出されたθ2sと、記憶部52によって保持された比B12とを用いて、式(8)によって、検出値θsを算出する。
なお、比B12は、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの強度B1,B2を測定することによって求めることができる。強度B1,B2の測定は、角度センサ1の出荷前または使用前に、角度センサ1の外部の図示しない制御部によって実行される。強度B1,B2の測定は、第1および第2の磁気センサ10A,20Aを用いてもよいし、他の磁気センサを用いてもよい。
本実施の形態によれば、第1および第2の検出データθ1s,θ2sを用いた演算を行うことにより、第1の検出データθ1sまたは第2の検出データθ2sのみに基づいて検出値θsを生成する場合に比べて、ノイズ磁界Mexに起因した誤差が低減された検出値θsを生成することができる。以下、その理由について詳しく説明する。
式(3)に示したように、第1の角度θ1は、ノイズ磁界Mexに起因した角度誤差“atan(Bex/B1)”によって変化する。また、式(4)に示したように、第2の角度θ2は、ノイズ磁界Mexに起因した角度誤差“atan(Bex/B2)”によって変化する。本実施の形態では、第1の検出データθ1sは第1の角度θ1を表し、第2の検出データθ2sは角度θ2を表している。従って、式(3)、(4)は、第1および第2の検出データθ1s,θ2sがノイズ磁界Mexの影響を受けることを表している。
また、本実施の形態では、第1の部分磁界MFaの強度B1と第2の部分磁界MFbの強度B2は、互いに異なる。そのため、第1および第2の検出データθ1s,θ2sに与えるノイズ磁界Mexの相対的な影響に違いが生じる。その結果、第1および第2の検出データθ1s,θ2s間には、ノイズ磁界Mexに依存した違いが生じ得る。具体的には、第1および第2の角度θ1,θ2の角度誤差の値に、ノイズ磁界Mexに依存した違いが生じる。式(7)に示した回転磁界角度θMは、この性質を利用して導かれたものである。本実施の形態では、第1および第2の検出データθ1s,θ2sを用いた演算、具体的には式(8)に示した演算を行って、検出値θsを生成する。
ところで、第1の検出データθ1sは、第1の検出データθ1sみに基づいて生成された検出値θsに相当し、第2の検出データθ2sは、第2の検出データθ2sみに基づいて生成された検出値θsに相当する。前述のように、第1および第2の角度θ1,θ2は、ノイズ磁界Mexに起因した角度誤差を含むことから、第1および第2の検出データθ1s,θ2sも、ノイズ磁界Mexに起因した誤差を含んでいる。一方、回転磁界角度θMは、ノイズ磁界Mexに起因した角度誤差を含まないことから、式(8)に示した演算を行って生成された検出値θsも、理論上、ノイズ磁界Mexに起因した誤差を含まない。これにより、本実施の形態によれば、第1および第2の検出データθ1s,θ2sに比べて、ノイズ磁界Mexに起因した誤差が低減された検出値θsを生成することができる。
本実施の形態によれば、第1ないし第4のADC13,14,23,24のサンプリングの時刻が一致することにより、検出値θsに誤差が生じることを防止することができる。以下、この効果について、比較例の角度センサと比較しながら説明する。
始めに、比較例の角度センサの構成について説明する。比較例の角度センサの構成は、基本的には、図3に示した本実施の形態に係る角度センサ1の構成と同じである。ただし、比較例では、第3および第4のADC23,24は、クロック発生器10Bによって発生されたサンプリングクロックCLKの代わりに、クロック発生器20Bによって発生されたサンプリングクロックによってサンプリングの時刻が決定されるように構成されている。
次に、比較例の角度センサが生成する検出値の誤差について説明する。ここでは、磁石6は、所定の角速度ωで回転しているものとする。また、第1の磁気センサ10Aが第1の印加磁界MF1を検出するタイミングを第1のタイミングとし、第2の磁気センサ20Aが第2の印加磁界MF2を検出するタイミングを第2のタイミングとし、第1のタイミングから第2のタイミングまでの時間を時間差DTとする。また、θ1s,θ2sは、第1のタイミングにおいて第1および第2の磁気センサ10A,20Aが同時に第1および第2の印加磁界MF1,MF2を検出して得られた第1および第2の検出データであると仮定する。この場合、第2のタイミングにおいて、第2の磁気センサ20Aが第2の印加磁界MF2を検出して得られた第2の検出データは、およそ、θ2s+ω・DTとなる。ω・DTは、時間差DTによる対象角度θの変化量である。時間差DTを考慮すると、演算器50が生成する検出値θsは、下記の式(9)で表すことができる。
θs={(θ2s+ω・DT)−B12・θ1s}/(1−B12) …(9)
第1のタイミングと第2のタイミングが一致している場合には、時間差DTは0になり、式(9)は式(8)と一致する。一方、第1のタイミングと第2のタイミングが一致していない場合には、時間差DTは0にはならず、式(9)は式(8)とは一致しない。以下、式(9)で表される検出値θsと式(8)で表される検出値θsとの差を、時間差DTに起因した検出値θsの誤差と言い、記号θEで表す。誤差θEは、下記の式(10)で表される。
θE=ω・DT/(1−B12) …(10)
本実施の形態では、B12は、1よりも大きい。もし、B12が1より大きく2より小さい値であるとすると、(1−B12)の絶対値は、1よりも小さくなる。この場合、誤差θEが、時間差DTによる対象角度θの変化量ω・DTよりも大きくなる。また、B12が1に近づき、(1−B12)の絶対値が0に近づくに従って、誤差θEは大きくなる。
図11は、磁石6の回転速度RSと検出値θsの誤差θEとの関係の一例を示す特性図である。図11において、横軸は回転速度RSを示し、縦軸は誤差θEを示している。回転速度RSは、角速度ωに比例する。この例では、時間差DTを12.5マイクロ秒としている。図11において、符号61を付した直線は、B12が1.2の場合における回転速度RSと誤差θEとの関係を示している。また、符号62を付した直線は、B12が2の場合における回転速度RSと誤差θEとの関係を示している。図11に示したように、回転速度RSを同じにして比較すると、B12が1.2の場合における誤差θE(符号61)は、B12が2の場合における誤差θE(符号62)よりも大きい。
本実施の形態では、第1ないし第4のADC13,14,23,24はいずれも、クロック発生器10Bによって発生されたサンプリングクロックCLKによってサンプリングの時刻が決定されるように構成されている。そのため、第1ないし第4のADC13,14,23,24のサンプリングの時刻は一致する。従って、本実施の形態では、第1の磁気センサ10Aが第1の印加磁界MF1を検出するタイミングと第2の磁気センサ20Aが第2の印加磁界MF2を検出するタイミングは一致し、時間差DTは0になる。その結果、時間差DTに起因した誤差θEも0になる。このように、本実施の形態によれば、複数の磁気センサが検出対象磁界を検出するタイミングがずれることによって検出値θsに誤差が生じることを防止することができる。
なお、本実施の形態において、第1ないし第4のADC13,14,23,24は、クロック発生器10Bではなくクロック発生器20Bによって発生されたサンプリングクロックによってサンプリングの時刻が決定されるように構成されていてもよい。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図12は、本実施の形態に係る角度センサの構成を示す機能ブロック図である。本実施の形態に係る角度センサ1は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態では、第1の実施の形態におけるクロック発生器10B,20Bが設けられていない。代わりに、本実施の形態に係る角度センサ1は、クロック発生器10Cを備えている。クロック発生器10Cは、第1の磁気センサ10Aを含む電子部品10および第2の磁気センサ20Aを含む電子部品20とは別体に構成されている。
クロック発生器10Cは、クロック発生器10Bと同様に、サンプリングの時刻を決定するサンプリングクロックCLKを発生する。第1の磁気センサ10Aの第1および第2のADC13,14と、第2の磁気センサ20Aの第3および第4のADC23,24は、いずれも、クロック発生器10Cによって発生されたサンプリングクロックCLKによってサンプリングの時刻が決定されるように構成されている。クロック発生器10Cと第1ないし第4のADC13,14,23,24は、サンプリングクロックCLKを伝送する信号線を介して、電気的に接続されている。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。始めに、図13を参照して、本実施の形態に係る角度センサ1の構成について説明する。本実施の形態に係る角度センサ1は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態では、第1の実施の形態における第1および第2のデータ生成器15,25が設けられていない。
また、本実施の形態では、第1の磁気センサ10Aの第1および第2の検出器11,12は、第1の印加磁界MF1の、互いに異なる方向の2つの成分の強度を表す第1および第2のアナログ検出信号S1a,S2aを生成する。本実施の形態では特に、この2つの成分は、第1の印加磁界MF1の、互いに直交する方向の2つの成分である。本実施の形態では、この2つの成分の基準となる2つの方向を、X方向とY方向(図2参照)とする。第1のアナログ検出信号S1aは、第1の印加磁界MF1のX方向の成分の強度を表す。第2のアナログ検出信号S2aは、第1の印加磁界MF1のY方向の成分の強度を表す。
同様に、本実施の形態では、第2の磁気センサ20Aの第3および第4の検出器21,22は、第2の印加磁界MF2の、互いに異なる方向の2つの成分の強度を表す第3および第4のアナログ検出信号S3a,S4aを生成する。本実施の形態では特に、この2つの成分は、第2の印加磁界MF2の、互いに直交する方向の2つの成分である。本実施の形態では、この2つの成分の基準となる2つの方向を、X方向とY方向とする。第3のアナログ検出信号S3aは、第2の印加磁界MF2のX方向の成分の強度を表す。第4のアナログ検出信号S4aは、第2の印加磁界MF2のY方向の成分の強度を表す。
なお、上述のように、第1ないし第4のアナログ検出信号S1a〜S4aが磁界の一方向の成分の強度を表すようにするためには、第1ないし第4のアナログ検出信号S1a〜S4aの大きさが、第1および第2の印加磁界MF1,MF2の強度の範囲内では飽和しないという条件の下で、第1ないし第4の検出器11,12,21,22を使用する必要がある。
第1の磁気センサ10Aの第1および第2のADC13,14は、それぞれ上述の第1および第2のアナログ検出信号S1a,S2aを第1および第2のデジタル検出信号S1d,S2dに変換する。本実施の形態では、第1の磁気センサ10Aが生成する第1の検出データは、第1および第2のデジタル検出信号S1d,S2dを含んでいる。
第2の磁気センサ20Aの第3および第4のADC23,24は、それぞれ上述の第3および第4のアナログ検出信号S3a,S4aを第3および第4のデジタル検出信号S3d,S4dに変換する。本実施の形態では、第2の磁気センサ20Aが生成する第2の検出データは、第3および第4のデジタル検出信号S3d,S4dを含んでいる。
また、本実施の形態に係る角度センサ1は、第1の実施の形態における演算器50の代わりに、演算器250を備えている。演算器250は、第1および第2の検出データを用いた演算を行って、検出値θsを生成する。演算器250は、例えば、ASICまたはマイクロコンピュータによって実現することができる。
次に、本実施の形態における第1ないし第4の検出器11,12,21,22の構成について説明する。本実施の形態における第1および第3の検出器11,21の各々の構成は、第1の実施の形態における第1の検出器11の構成と同じである。そのため、以下の説明では、本実施の形態における第1および第3の検出器11,21の構成要素について、第1の実施の形態における図4に示した第1の検出器11の構成要素と同じ符号を用いる。同様に、本実施の形態における第2および第4の検出器12,22の各々の構成は、第1の実施の形態における第2の検出器12の構成と同じである。そのため、以下の説明では、第2および第4の検出器12,22の構成要素について、第1の実施の形態における図5に示した第2の検出器12の構成要素と同じ符号を用いる。
第1の検出器11では、第1の印加磁界MF1のX方向の成分の強度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。第1の検出器11の差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1のアナログ検出信号S1aとして出力する。
第2の検出器12では、第1の印加磁界MF1のY方向の成分の強度に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化する。第2の検出器12の差分検出器28は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第2のアナログ検出信号S2aとして出力する。
第3の検出器21では、第2の印加磁界MF2のX方向の成分の強度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。第3の検出器21の差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第3のアナログ検出信号S3aとして出力する。
第4の検出器22では、第2の印加磁界MF2のY方向の成分の強度に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化する。第4の検出器22の差分検出器28は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第4のアナログ検出信号S4aとして出力する。
次に、本実施の形態における演算器250による検出値θsの生成方法について説明する。演算器250は、第1の実施の形態における演算器50と同様に、第1の検出データまたは第2の検出データのみに基づいて検出値θsを生成する場合に比べて、ノイズ磁界Mexに起因した検出値θsの誤差が低減されるように、第1および第2の検出データを用いた演算を行って、検出値θsを生成する。
ここで、第1の印加磁界MF1の方向と強度を表すベクトルを記号H1で表し、第2の印加磁界MF2の方向と強度を表すベクトルを記号H2で表し、第1の部分磁界MFaの方向と強度を表すベクトルをHaで表し、第2の部分磁界MFbの方向と強度を表すベクトルを記号Hbで表し、ノイズ磁界Mexの方向と強度を表すベクトルを記号Hexで表す。第1の印加磁界MF1は、第1の部分磁界MFaとノイズ磁界Mexとの合成磁界である。従って、ベクトルH1は、ベクトルHa,Hexを用いて、下記の式(11)で表すことができる。
H1=Ha+Hex …(11)
式(11)に示したように、ベクトルH1の方向と大きさは、ベクトルHexによって変化する。言い換えると、式(11)は、ベクトルH1がノイズ磁界Mexの影響を受けることを表している。
また、第2の印加磁界MF2は、第2の部分磁界MFbとノイズ磁界Mexとの合成磁界である。従って、ベクトルH2は、ベクトルHb,Hexを用いて、下記の式(12)で表すことができる。
H2=Hb+Hex …(12)
式(12)に示したように、ベクトルH2の方向と大きさは、ベクトルHexによって変化する。言い換えると、式(12)は、ベクトルH2がノイズ磁界Mexの影響を受けることを表している。
ここで、ベクトルH3を下記の式(13)のように定義する。
H3=H1−H2 …(13)
式(11)、(12)を式(13)に代入すると、下記の式(14)が得られる。
H3=H1−H2
=Ha+Hex−(Hb+Hex)
=Ha−Hb …(14)
第1の実施の形態で説明したように、第1の部分磁界MFaの方向と第2の部分磁界MFbの方向は同じ方向になることから、ベクトルHaの方向とベクトルHbの方向は同じ方向になる。また、第1の部分磁界MFaの強度と第2の部分磁界MFbの強度は互いに異なることから、ベクトルHaの大きさとベクトルHbの大きさは互いに異なる。式(14)に示したように、ベクトルH1とベクトルH2の差を求める演算を行うと、ベクトルHexを相殺して、ベクトルHa,Hbと同じ方向を有し且つノイズ磁界Mexの影響が排除されたベクトルH3を生成することができる。演算器250は、ベクトルH3の方向を求めることによって、ノイズ磁界Mexの影響が排除された検出値θsを生成する。
本実施の形態では、第1および第2のデジタル検出信号S1d,S2dを、直交座標系におけるベクトルH1の2つの成分とし、第3および第4のデジタル検出信号S3d,S4dを、直交座標系におけるベクトルH2の2つの成分とする。
図13には、演算器250の構成の一例を示している。この例では、演算器250は、第1の演算部251と、第2の演算部252と、偏角演算部253とを含んでいる。演算器250では、直交座標系におけるベクトルH1の2つの成分である第1および第2のデジタル検出信号S1d,S2dを、ベクトルH1を複素数で表現したときの実部と虚部として扱う。また、演算器250では、直交座標系におけるベクトルH2の2つの成分である第3および第4のデジタル検出信号S3d,S4dを、ベクトルH2を複素数で表現したときの実部と虚部として扱う。
第1の演算部251は、第1のデジタル検出信号S1dと第3のデジタル検出信号S3dの差を求める演算を行って、ベクトルH3を複素数で表現したときの実部Reを求める。第2の演算部252は、第2のデジタル検出信号S2dと第4のデジタル検出信号S4dの差を求める演算を行って、ベクトルH3を複素数で表現したときの虚部Imを求める。実部Reと虚部Imは、それぞれ下記の式(15)、(16)によって表される。
Re=S1d−S3d …(15)
Im=S2d−S4d …(16)
実部Reと虚部Imから算出される複素数の偏角は、ベクトルH3の方向に対応する。本実施の形態では、上記の偏角を、検出値θsとする。偏角演算部253は、例えば、下記の式(17)によって検出値θsを算出する。
θs=atan(Im/Re) …(17)
θsが0°以上360°未満の範囲内では、式(17)におけるθsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、Re,Imの正負の組み合わせにより、θsの真の値が、式(17)におけるθsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。偏角演算部253は、式(17)と、上記のRe,Imの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθsを求める。
ところで、第1の実施の形態におけるθ1sは、本実施の形態における第1の検出データのみに基づいて生成された検出値θsに相当し、第1の実施の形態におけるθ2sは、本実施の形態における第2の検出データのみに基づいて生成された検出値θsに相当する。第1の実施の形態で説明したように、θ1s,θ2sは、ノイズ磁界Mexに起因した誤差を含んでいる。一方、式(14)に示したように、ベクトルH3は、ベクトルHaとベクトルHbの差で表されることから、上述のようにして生成された検出値θsは、理論上、ノイズ磁界Mexに起因した誤差を含まない。これにより、本実施の形態によれば、θ1s,θ2sに比べて、ノイズ磁界Mexに起因した誤差が低減された検出値θsを生成することができる。
なお、本実施の形態において、第1ないし第4のADC13,14,23,24のサンプリングの時刻を決定するサンプリングクロックCLKを発生するクロック発生器は、第2の実施の形態と同様に、電子部品10,20とは別体に構成されていてもよい。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第2の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。始めに、図14を参照して、本実施の形態に係る角度センサ1の構成について説明する。図14は、センサシステム100の概略の構成を示す斜視図である。本実施の形態に係る角度センサ1は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る角度センサ1は、複数の磁気センサとして、第1の実施の形態における第1および第2の磁気センサ10A,20Aの他に、第3の磁気センサ30Aと第4の磁気センサ40Aを備えている。また、角度センサ1は、複数の電子部品として、第1の実施の形態における電子部品10,20の他に、2つの電子部品30,40を備えている。第1の実施の形態と同様に、第1の磁気センサ10Aは電子部品10に含まれている。第2の磁気センサ20Aは電子部品20に含まれている。
第3の磁気センサ30Aは、電子部品30に含まれている。第4の磁気センサ40Aは、電子部品40に含まれている。電子部品10,20,30,40は、磁石6の一方の端面に対向するように配置される。
第1ないし第4の磁気センサ10A,20A,30A,40Aは、互いに異なる検出位置において、検出対象磁界を含む印加磁界を検出するように構成されている。第1の実施の形態と同様に、第1の磁気センサ10Aは、第1の検出位置P1において検出対象磁界を含む第1の印加磁界MF1を検出して、第1の検出データを生成する。第2の磁気センサ20Aは、第2の検出位置P2において検出対象磁界を含む第2の印加磁界MF2を検出して、第2の検出データを生成する。
第3の磁気センサ30Aは、第3の検出位置P3において検出対象磁界を含む第3の印加磁界MF3を検出して、第3の検出データを生成する。第4の磁気センサ40Aは、第4の検出位置P4において検出対象磁界を含む第4の印加磁界MF4を検出して、第4の検出データを生成する。
第1ないし第4の検出位置P1〜P4は、磁石6を通過する仮想の直線上の互いに異なる位置である。この仮想の直線は、回転軸Cと一致していてもよいし、一致していなくてもよい。図14には、前者の場合の例を示している。この例では、第1ないし第4の検出位置P1〜P4は、磁石6から遠ざかる方向に、この順に並んでいる。なお、必ずしも、第1ないし第4の検出位置P1〜P4の全てが同一直線上にある必要はない。
第1の実施の形態と同様に、第1の検出位置P1における検出対象磁界を第1の部分磁界MFaと言い、第2の検出位置P2における検出対象磁界を第2の部分磁界MFbと言う。また、本実施の形態において、第3の検出位置P3における検出対象磁界を第3の部分磁界MFcと言い、第4の検出位置P4における検出対象磁界を第4の部分磁界MFdと言う。第1ないし第4の部分磁界MFa〜MFdの方向は、対象角度θに応じて変化する。第1ないし第4の検出位置P1〜P4が互いに異なっていることにより、第1ないし第4の部分磁界MFa〜MFdの強度は互いに異なっている。
第1の実施の形態で説明したように、角度センサ1には、検出対象磁界の他に、検出対象磁界以外のノイズ磁界Mexが印加される場合がある。第1ないし第4の検出位置P1〜P4におけるノイズ磁界Mexの方向は互いに等しく、第1ないし第4の検出位置P1〜P4におけるノイズ磁界Mexの強度は互いに等しい。角度センサ1にノイズ磁界Mexが印加されている場合、第1の印加磁界MF1は、第1の部分磁界MFaとノイズ磁界Mexとの合成磁界であり、第2の印加磁界MF2は、第2の部分磁界MFbとノイズ磁界Mexとの合成磁界であり、第3の印加磁界MF3は、第3の部分磁界MFcとノイズ磁界Mexとの合成磁界であり、第4の印加磁界MF4は、第4の部分磁界MFdとノイズ磁界Mexとの合成磁界である。
また、本実施の形態に係る角度センサ1は、第1の実施の形態と同様に、クロック発生器10Bを備えている。クロック発生器10Bは、電子部品10に含まれている。また、角度センサ1は、第1の実施の形態における演算器50の代わりに、第1ないし第4の検出データを用いた演算を行って、検出値θsを生成する演算器350を備えている。なお、演算器350は、後で説明する図16に示されている。前述のように、本実施の形態では、第1ないし第4の部分磁界MFa〜MFdの強度は互いに異なっている。そのため、第1ないし第4の検出データに与えるノイズ磁界Mexの相対的な影響に違いが生じる。その結果、第1ないし第4の検出データ間には、ノイズ磁界Mexに依存した違いが生じ得る。演算器350は、この性質を利用して、第1ないし第4の検出データのうちの任意の1つのみに基づいて検出値θsを生成する場合に比べて、ノイズ磁界Mexに起因した検出値θsの誤差が低減されるように、第1ないし第4の検出データを用いた演算を行って、検出値θsを生成する。演算器350は、例えば、ASICまたはマイクロコンピュータによって実現することができる。
ここで、図14および図15を参照して、本実施の形態における方向、角度、基準平面および基準方向の定義について説明する。X方向、Y方向、Z方向、−X方向、−Y方向、第1の基準平面PL1、第2の基準平面PL2および基準方向DRの定義は、第1の実施の形態と同じである。
本実施の形態では、第1および第2の基準平面PL1,PL2の他に、第3の検出位置P3に対応する第3の基準平面PL3と、第4の検出位置P4に対応する第4の基準平面PL4が定義される。第3および第4の基準平面PL3,PL4は、第1および第2の基準平面PL1,PL2と同様に、Z方向に垂直な仮想の平面である。従って、第1ないし第4の基準平面PL1〜PL4は、互いに平行である。第3の検出位置P3は、第3の基準平面PL3と前記の仮想の直線との交点である。第4の検出位置P4は、第4の基準平面PL4と前記の仮想の直線との交点である。
第1の実施の形態と同様に、第1の印加磁界MF1の第1の基準平面PL1に平行な成分を第1の印加磁界成分MF1cと言い、第2の印加磁界MF2の第2の基準平面PL2に平行な成分を第2の印加磁界成分MF2cと言い、第1の印加磁界成分MF1cの方向が基準方向DRに対してなす角度を第1の角度θ1と言い、第2の印加磁界成分MF2cの方向が基準方向DRに対してなす角度を第2の角度θ2と言う。また、第3の印加磁界MF3の第3の基準平面PL3に平行な成分を第3の印加磁界成分MF3cと言い、第4の印加磁界MF4の第4の基準平面PL4に平行な成分を第4の印加磁界成分MF4cと言う。図15に示したように、第3の印加磁界成分MF3cの方向が基準方向DRに対してなす角度を第3の角度と言い、記号θ3で表す。また、第4の印加磁界成分MF4cの方向が基準方向DRに対してなす角度を第4の角度と言い、記号θ4で表す。第3および第4の角度θ3,θ4の正負の定義は、第1および第2の角度θ1,θ2と同様である。
第1の印加磁界MF1の主成分は、第1の部分磁界MFaである。第2の印加磁界MF2の主成分は、第2の部分磁界MFbである。第3の印加磁界MF3の主成分は、第3の部分磁界MFcである。第4の印加磁界MF4の主成分は、第4の部分磁界MFdである。第1ないし第4の部分磁界MFa〜MFdの方向は、同じ方向になる。また、前述のように、第1ないし第4の部分磁界MFa〜MFdの方向は、対象角度θに応じて変化する。従って、第1ないし第4の角度θ1〜θ4は、対象角度θに応じて変化する。
第3の印加磁界MF3の主成分は第3の部分磁界MFcであることから、第3の印加磁界MF3の方向は、第3の基準平面PL3に平行であるか、ほぼ平行である。従って、第3の印加磁界MF3の方向が基準方向DRに対してなす角度は、第3の角度θ3と等しいか、ほぼ等しい。同様に、第4の印加磁界MF4の主成分は第4の部分磁界MFdであることから、第4の印加磁界MF4の方向は、第4の基準平面PL4に平行であるか、ほぼ平行である。従って、第4の印加磁界MF4の方向が基準方向DRに対してなす角度は、第4の角度θ4と等しいか、ほぼ等しい。なお、第1の実施の形態で説明したように、第1の印加磁界MF1の方向が基準方向DRに対してなす角度は、第1の角度θ1と等しいか、ほぼ等しい。また、第2の印加磁界MF2の方向が基準方向DRに対してなす角度は、第2の角度θ2と等しいか、ほぼ等しい。
次に、図16を参照して、角度センサ1の構成について詳しく説明する。図16は、角度センサ1の構成を示す機能ブロック図である。第1の磁気センサ10Aの構成は、第1の実施の形態と同じである。すなわち、第1の磁気センサ10Aは、第1および第2の検出器11,12と、第1および第2のADC13,14と、第1のデータ生成器15とを含んでいる。本実施の形態では、第1および第2の検出器11,12は、第3の実施の形態と同様に、第1の印加磁界MF1の、互いに異なる方向の2つの成分の強度を表す第1および第2のアナログ検出信号S1a,S2aを生成する。第1のアナログ検出信号S1aは、第1の印加磁界MF1のX方向の成分の強度を表す。第2のアナログ検出信号S2aは、第1の印加磁界MF1のY方向の成分の強度を表す。
また、第2の磁気センサ20Aの構成は、第1の実施の形態と同じである。すなわち、第2の磁気センサ20Aは、第3および第4の検出器21,22と、第3および第4のADC23,24と、第2のデータ生成器25とを含んでいる。本実施の形態では、第3および第4の検出器21,22は、第3の実施の形態と同様に、第2の印加磁界MF2の、互いに異なる方向の2つの成分の強度を表す第3および第4のアナログ検出信号S3a,S4aを生成する。第3のアナログ検出信号S3aは、第2の印加磁界MF2のX方向の成分の強度を表す。第4のアナログ検出信号S4aは、第2の印加磁界MF2のY方向の成分の強度を表す。
第3の磁気センサ30Aは、第5の検出器31および第6の検出器32を含んでいる。第5および第6の検出器31,32は、第3の印加磁界MF3の、互いに異なる方向の2つの成分の強度を表す第5および第6のアナログ検出信号S5a,S6aを生成する。本実施の形態では特に、この2つの成分は、第3の印加磁界MF3の、互いに直交する方向の2つの成分である。本実施の形態では、この2つの成分の基準となる2つの方向を、X方向とY方向とする。第5のアナログ検出信号S5aは、第3の印加磁界MF3のX方向の成分の強度を表す。第6のアナログ検出信号S6aは、第3の印加磁界MF3のY方向の成分の強度を表す。
第4の磁気センサ40Aは、第7の検出器41および第8の検出器42を含んでいる。第7および第8の検出器41,42は、第4の印加磁界MF4の、互いに異なる方向の2つの成分の強度を表す第7および第8のアナログ検出信号S7a,S8aを生成する。本実施の形態では特に、この2つの成分は、第4の印加磁界MF4の、互いに直交する方向の2つの成分である。本実施の形態では、この2つの成分の基準となる2つの方向を、X方向とY方向とする。第7のアナログ検出信号S7aは、第4の印加磁界MF4のX方向の成分の強度を表す。第8のアナログ検出信号S8aは、第4の印加磁界MF4のY方向の成分の強度を表す。
なお、上述のように、第1ないし第8のアナログ検出信号S1a〜S8aが印加磁界の一方向の成分の強度を表すようにするためには、第1ないし第8のアナログ検出信号S1a〜S8aの大きさが、第1ないし第4の印加磁界MF1〜MF4の強度の範囲内では飽和しないという条件の下で、第1ないし第8の検出器11,12,21,22,31,32,41,42を使用する必要がある。
第5ないし第8の検出器31,32,41,42の各々は、第1ないし第4の検出器11,12,21,22と同様に、少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。少なくとも1つの磁気検出素子は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を含んでいてもよい。
検出対象磁界の方向が所定の周期で回転すると、第1ないし第4の角度θ1〜θ4は所定の周期で変化する。この場合、第1ないし第8のアナログ検出信号S1a〜S8aは、いずれも、上記所定の周期と等しい信号周期で周期的に変化する。第2のアナログ検出信号S2aの位相は、第1のアナログ検出信号S1aの位相に対して、信号周期の1/4の奇数倍だけ異なっている。第3、第5および第7のアナログ検出信号S3a,S5a,S7aの位相は、第1のアナログ検出信号S1aの位相と一致している。第4、第6および第8のアナログ検出信号S4a,S6a,S8aの位相は、第2のアナログ検出信号S2aの位相と一致している。なお、磁気検出素子の作製の精度等の観点から、これらの信号の位相の関係は、上記の関係からわずかにずれていてもよい。
第3の磁気センサ30Aは、第5のADC33および第6のADC34を含んでいる。第5および第6のADC33,34は、それぞれ第5および第6のアナログ検出信号S5a,S6aを第5および第6のデジタル検出信号S5d,S6dに変換する。第3の磁気センサ30Aは、更に、第5および第6のデジタル検出信号S5d,S6dを用いた演算を行って第3の検出データを生成する第3のデータ生成器35を含んでいる。第5および第6のADC33,34ならびに第3のデータ生成器35は、例えば、1つのASICによって実現することができる。
第4の磁気センサ40Aは、第7のADC43および第8のADC44を含んでいる。第7および第8のADC43,44は、それぞれ第7および第8のアナログ検出信号S7a,S8aを第7および第8のデジタル検出信号S7d,S8dに変換する。第4の磁気センサ40Aは、更に、第7および第8のデジタル検出信号S7d,S8dを用いた演算を行って第4の検出データを生成する第4のデータ生成器45を含んでいる。第7および第8のADC43,44ならびに第4のデータ生成器45は、例えば、1つのASICによって実現することができる。
第1ないし第8のADC13,14,23,24,33,34,43,44の構成は同じである。第1ないし第8のADC13,14,23,24,33,34,43,44はいずれも、クロック発生器10Bによって発生されたサンプリングクロックCLKによってサンプリングの時刻が決定されるように構成されている。クロック発生器10Bと第1ないし第8のADC13,14,23,24,33,34,43,44は、サンプリングクロックCLKを伝送する信号線を介して、電気的に接続されている。
次に、第1ないし第8の検出器11,12,21,22,31,32,41,42の構成について説明する。第1ないし第4の検出器11,12,21,22の構成は、第3の実施の形態と同じである。
第5および第7の検出器31,41の各々の構成は、第1の検出器11の構成と同じである。そのため、以下の説明では、第5および第7の検出器31,41の構成要素について、第1の実施の形態における図4に示した第1の検出器11の構成要素と同じ符号を用いる。同様に、第6および第8の検出器32,42の各々の構成は、第2の検出器12の構成と同じである。そのため、以下の説明では、第6および第8の検出器32,42の構成要素について、第1の実施の形態における図5に示した第2の検出器12の構成要素と同じ符号を用いる。
第5の検出器31では、第3の印加磁界MF3のX方向の成分の強度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。第5の検出器31の差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第5のアナログ検出信号S5aとして出力する。
第6の検出器32では、第3の印加磁界MF3のY方向の成分の強度に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化する。第6の検出器32の差分検出器28は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第6のアナログ検出信号S6aとして出力する。
第7の検出器41では、第4の印加磁界MF4のX方向の成分の強度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。第7の検出器41の差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第7のアナログ検出信号S7aとして出力する。
第8の検出器42では、第4の印加磁界MF4のY方向の成分の強度に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化する。第8の検出器42の差分検出器28は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第8のアナログ検出信号S8aとして出力する。
第1の印加磁界MF1のX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度は、それぞれ第1の印加磁界成分MF1cのX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度と等しい。第2の印加磁界MF2のX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度は、それぞれ第1の印加磁界成分MF2cのX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度と等しい。第3の印加磁界MF3のX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度は、それぞれ第3の印加磁界成分MF3cのX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度と等しい。第4の印加磁界MF4のX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度は、それぞれ第4の印加磁界成分MF4cのX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度と等しい。
次に、第1ないし第4の検出データの生成方法について説明する。第1の磁気センサ10Aの第1のデータ生成器15は、第1の検出データとして、第1の印加磁界成分MF1cの方向と強度を表すベクトルY1を生成する。ベクトルY1の方向は、第1の印加磁界成分MF1cの方向に対応する。本実施の形態では、ベクトルY1の方向を、第1の角度θ1を表すθ1sを用いて表す。第1のデータ生成器15は、例えば、第1の実施の形態における式(1)によって、θ1sを算出する。
また、ベクトルY1の大きさMa1は、第1の印加磁界成分MF1cの強度に対応する。第1のデータ生成器15は、第1のデジタル検出信号S1dの二乗と第2のデジタル検出信号S2dの二乗との和S1d2+S2d2を計算して大きさMa1を求める。S1d2+S2d2は、第1の印加磁界成分MF1cの強度と対応関係を有するパラメータである。
第2の磁気センサ20Aの第2のデータ生成器25は、第2の検出データとして、第2の印加磁界成分MF2cの方向と強度を表すベクトルY2を生成する。ベクトルY2の方向は、第2の印加磁界成分MF2cの方向に対応する。本実施の形態では、ベクトルY2の方向を、第2の角度θ2を表すθ2sを用いて表す。第2のデータ生成器25は、例えば、第1の実施の形態における式(2)によって、θ2sを算出する。
また、ベクトルY2の大きさMa2は、第2の印加磁界成分MF2cの強度に対応する。第2のデータ生成器25は、第3のデジタル検出信号S3dの二乗と第4のデジタル検出信号S4dの二乗との和S3d2+S4d2を計算して大きさMa2を求める。S3d2+S4d2は、第2の印加磁界成分MF2cの強度と対応関係を有するパラメータである。
第3の磁気センサ30Aの第3のデータ生成器35は、第3の検出データとして、第3の印加磁界成分MF3cの方向と強度を表すベクトルY3を生成する。ベクトルY3の方向は、第3の印加磁界成分MF3cの方向に対応する。本実施の形態では、ベクトルY3の方向を、第3の角度θ3を表すθ3sを用いて表す。第3のデータ生成器35は、例えば、下記の式(18)によって、θ3sを算出する。
θ3s=atan(S6d/S5d) …(18)
θ3sが0°以上360°未満の範囲内では、式(18)におけるθ3sの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S5d,S6dの正負の組み合わせにより、θ3sの真の値が、式(18)におけるθ3sの2つの解のいずれであるかを判別することができる。第3のデータ生成器35は、式(18)と、上記のS5d,S6dの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθ3sを求める。
また、ベクトルY3の大きさMa3は、第3の印加磁界成分MF3cの強度に対応する。第3のデータ生成器35は、第5のデジタル検出信号S5dの二乗と第6のデジタル検出信号S6dの二乗との和S5d2+S6d2を計算して大きさMa3を求める。S5d2+S6d2は、第3の印加磁界成分MF3cの強度と対応関係を有するパラメータである。
第4の磁気センサ40Aの第4のデータ生成器45は、第4の検出データとして、第4の印加磁界成分MF4cの方向と強度を表すベクトルY4を生成する。ベクトルY4の方向は、第4の印加磁界成分MF4cの方向に対応する。本実施の形態では、ベクトルY4の方向を、第4の角度θ4を表すθ4sを用いて表す。第4のデータ生成器45は、例えば、下記の式(19)によって、θ4sを算出する。
θ4s=atan(S8d/S7d) …(19)
θ4sが0°以上360°未満の範囲内では、式(19)におけるθ4sの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S7d,S8dの正負の組み合わせにより、θ4sの真の値が、式(19)におけるθ4sの2つの解のいずれであるかを判別することができる。第4のデータ生成器45は、式(19)と、上記のS7d,S8dの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθ4sを求める。
また、ベクトルY4の大きさMa4は、第4の印加磁界成分MF4cの強度に対応する。第4のデータ生成器45は、第7のデジタル検出信号S7dの二乗と第8のデジタル検出信号S8dの二乗との和S7d2+S8d2を計算して大きさMa4を求める。S7d2+S8d2は、第4の印加磁界成分MF4cの強度と対応関係を有するパラメータである。
大きさMa1,Ma2,Ma3,Ma4は、それぞれ、S1d2+S2d2、S3d2+S4d2、S5d2+S6d2、S7d2+S8d2そのものであってもよい。あるいは、大きさMa1,Ma2,Ma3,Ma4は、それぞれ、S1d2+S2d2、S3d2+S4d2、S5d2+S6d2、S7d2+S8d2から求めた印加磁界成分MF1c,MF2c,MF3c,MF4cの強度であってもよい。あるいは、データ生成器15,25,35,45は、それぞれ、S1d2+S2d2、S3d2+S4d2、S5d2+S6d2、S7d2+S8d2以外の、印加磁界成分MF1c,MF2c,MF3c,MF4cの強度と対応関係を有するパラメータの値を求めて、これらのパラメータの値に基づいて大きさMa1,Ma2,Ma3,Ma4を求めてもよい。
次に、演算器350の構成と検出値θsの生成方法について説明する。始めに、本実施の形態における検出値θsの生成方法について、概念的に説明する。演算器350が行う演算は、最小二乗法を用いた演算を含んでいる。演算器350は、第1の未知数Mと、第2の未知数Eと、複数の想定データとを想定する。第1の未知数Mは、検出値θsに対応する方向の情報と所定の位置における検出対象磁界の強度に対応する大きさの情報とを含む。第2の未知数Eは、ノイズ磁界Mexの方向に対応する方向の情報とノイズ磁界Mexの強度に対応する大きさの情報とを含む。複数の想定データは、第1および第2の未知数M,Eに基づいて想定される、複数の検出データに対応する情報である。
演算器350は、複数の検出データと複数の想定データの対応するもの同士の差の二乗和が最小になるように第1および第2の未知数M,Eを推定し、推定された第1の未知数Mに基づいて検出値θsを決定する。
本実施の形態では、複数の想定データを、下記の式(20)のようにモデル化する。
z=Hx …(20)
式(20)におけるzは、求めるべき第1および第2の未知数M,Eに基づいて生成された複数の想定データと対応関係を有するm個の要素を含むm次元列ベクトルである。なお、mは、複数の想定データの数を表す整数であり、これは、複数の検出データの数と同じである。式(20)におけるHは、複数の検出位置における検出対象磁界とノイズ磁界Mexの態様に応じて規定されるm行2列の行列である。式(20)におけるxは、第1の未知数Mと第2の未知数Eを要素とする2次元列ベクトルである。
本実施の形態では、列ベクトルxを決定することにより、第1および第2の未知数M,Eを推定する。ここで、複数の検出データと対応関係を有するm個の要素を含むm次元列ベクトルを記号yで表す。列ベクトルxは、列ベクトルyのm個の要素と列ベクトルzのm個の要素の対応するもの同士の差の二乗和が最小になるように決定される。これは、具体的には、列ベクトルxを決定するための最小二乗コスト関数を定義して、この関数の値を最小にする列ベクトルxを求めることによって実現される。第1および第2の未知数M,Eを推定するための列ベクトルxは、下記の式(21)で表される。
x=(HTH)-1HTy …(21)
演算器350は、式(21)によって算出された列ベクトルxの2つの要素の一方である第1の未知数Mに基づいて、検出値θsを決定する。
次に、図17を参照して、演算器350の構成と検出値θsの生成方法について具体的に説明する。演算器350における演算は、例えば、複素数を用いて行われる。図17は、演算器350の構成の一例を示すブロック図である。この例では、演算器350は、第1の変換部351と、第2の変換部352と、第3の変換部353と、第4の変換部354と、未知数推定部355と、偏角演算部356とを含んでいる。
第1の変換部351は、第1の検出データであるベクトルY1を複素数C1に変換する。複素数C1の実部Re1と虚部Im1は、それぞれ下記の式(22A)、(22B)によって表される。
Re1=Ma1・cosθ1s …(22A)
Im1=Ma1・sinθ1s …(22B)
第2の変換部352は、第2の検出データであるベクトルY2を複素数C2に変換する。複素数C2の実部Re2と虚部Im2は、それぞれ下記の式(21A)、(21B)によって表される。
Re2=Ma2・cosθ2s …(23A)
Im2=Ma2・sinθ2s …(23B)
第3の変換部353は、第3の検出データであるベクトルY3を複素数C3に変換する。複素数C3の実部Re3と虚部Im3は、それぞれ下記の式(24A)、(24B)によって表される。
Re3=Ma3・cosθ3s …(24A)
Im3=Ma3・sinθ3s …(24B)
第4の変換部354は、第4の検出データであるベクトルY4を複素数C4に変換する。複素数C4の実部Re4と虚部Im4は、それぞれ下記の式(25A)、(25B)によって表される。
Re4=Ma4・cosθ4s …(25A)
Im4=Ma4・sinθ4s …(25B)
未知数推定部355は、ベクトルY1〜Y4と対応関係を有する複素数C1〜C4を用いて、第1および第2の未知数M,Eを推定する。ここで、それぞれ第1ないし第4の検出データに基づいて想定される第1ないし第4の想定データを、記号z1,z2,z3,z4で表す。本実施の形態では、第1ないし第4の想定データz1〜z4を、下記の式(26)のようにモデル化する。
式(26)の左辺の4次元列ベクトルは、式(20)におけるzに対応する。
式(26)の右辺の4行2列の行列は、式(20)におけるHに対応する。以下、この行列を記号Heで表す。行列Heの第1列の4つの要素は、第1ないし第4の検出位置P1〜P4における検出対象磁界、すなわち第1ないし第4の部分磁界MFa〜MFdの態様に応じて規定される。本実施の形態では、第1ないし第4の部分磁界MFa〜MFdの方向が互いに等しく、検出対象磁界の強度が磁石6から検出位置までの距離の3乗に反比例して小さくなると仮定して、行列Heの第1列の4つの要素を規定した。具体的には、式(26)に示したように、行列Heの第1列の4つの要素を、r1,r2,r3,r4を用いて規定した。r1,r2,r3,r4は、それぞれ、磁石6から前記所定の位置までの距離に対する、磁石6から検出位置P1,P2,P3,P4までの距離の比率である。
行列Heの第2列の4つの要素は、第1ないし第4の検出位置P1〜P4におけるノイズ磁界Mexの態様に応じて規定される。本実施の形態では、第1ないし第4の検出位置P1〜P4におけるノイズ磁界Mexの方向が互いに等しく、第1ないし第4の検出位置P1〜Pにおけるノイズ磁界Mexの強度が互いに等しいと仮定して、行列Heの第2列の4つの要素を規定した。具体的には、式(26)に示したように、行列Heの第2列の4つの要素を、いずれも1とした。
式(26)の右辺の2次元列ベクトルは、式(20)におけるxに対応する。以下、この列ベクトルを記号xeで表す。列ベクトルxeは、第1の未知数Mと第2の未知数Eを要素として含んでいる。本実施の形態では、第1および第2の未知数M,Eは、いずれも複素数である。第1の未知数Mの偏角は、検出値θsに対応する方向の情報を表す。第1の未知数Mの絶対値は、所定の位置における検出対象磁界の強度に対応する大きさの情報を表す。本実施の形態では、所定の位置を、第1の検出位置P1とする。第2の未知数Eの偏角は、ノイズ磁界Mexの方向に対応する方向の情報を表す。第2の未知数Eの絶対値は、ノイズ磁界Mexの強度に対応する大きさの情報を表す。
未知数推定部355は、式(21)に基づいて、列ベクトルxeを決定する。ここで、複素数C1〜C4を要素とする4次元列ベクトルを、記号yeで表す。列ベクトルyeは、下記の式(27)によって表わされる。
ye T=[C1,C2,C3,C4] …(27)
未知数推定部355は、式(27)におけるH,x,yをそれぞれHe,xe,yeに置き換えた式を用いて、xeを算出する。これにより、第1の未知数Mと第2の未知数Eが推定される。
偏角演算部356は、未知数推定部355によって推定された第1の未知数Mに基づいて、検出値θsを決定する。本実施の形態では、第1の未知数Mの偏角を、検出値θsとする。従って、偏角演算部356は、第1の未知数Mの偏角を求めることによって、検出値θsを算出する。具体的には、偏角演算部356は、例えば、第1の未知数Mの実部ReMと虚部ImMを用いて、下記の式(28)によってθsを算出する。
θs=atan(ImM/ReM) …(28)
θsが0°以上360°未満の範囲内では、式(28)におけるθsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、ReM,ImMの正負の組み合わせにより、θsの真の値が、式(28)におけるθsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。偏角演算部356は、式(28)と、上記のReM,ImMの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθsを求める。
ところで、第1の角度θ1を表すθ1sは、第1の検出データのみに基づいて生成された検出値θsに相当し、第2の角度θ2を表すθ2sは、第2の検出データのみに基づいて生成された検出値θsに相当し、第3の角度θ3を表すθ3sは、第3の検出データのみに基づいて生成された検出値θsに相当し、第4の角度θ4を表すθ4sは、第2の検出データのみに基づいて生成された検出値θsに相当する。第1の実施の形態で説明したように、θ1s,θ2sは、ノイズ磁界Mexに起因した誤差を含んでいる。同様に、θ3s,θ4sも、ノイズ磁界Mexに起因した誤差を含んでいる。
これに対し、本実施の形態では、第1ないし第4の磁気センサ10A,20A,30A,40Aによって生成される第1ないし第4の検出データに基づいて、最小二乗法を用いて、検出値θsが生成される。第1ないし第4の検出位置P1〜P4は、互いに異なる。これにより、第1ないし第4の検出データに与えるノイズ磁界Mexの相対的な影響に違いが生じる。その結果、第1ないし第4の検出データ間には、ノイズ磁界Mexに依存した違いが生じ得る。本実施の形態では特に、磁石6から検出位置までの距離が大きくなるに従って、ノイズ磁界Mexの相対的な影響が大きくなる。
上記の性質を利用すると、所定の位置における理想的な検出対象磁界(以下、理想磁界と言う。)と、ノイズ磁界Mexを推定することができる。理想磁界とは、その方向が基準方向DRに対してなす角度が、角度センサ1の真の対象角度θに相当することになる仮想の磁界である。
本実施の形態において、未知数推定部355によって推定された第1の未知数Mは、推定された理想磁界に対応し、未知数推定部355によって推定された第2の未知数Eは、推定されたノイズ磁界Mexに対応する。本実施の形態では、第1の未知数Mに基づいて検出値θsを決定する。これにより、本実施の形態によれば、ノイズ磁界Mexの影響が排除された検出値θsを推定することができる。すなわち、本実施の形態によれば、θ1s〜θ4sに比べて、ノイズ磁界Mexに起因した誤差が低減された検出値θsを生成することができる。
なお、本実施の形態において、第1ないし第8のADC13,14,23,24,33,34,43,44のサンプリングの時刻を決定するサンプリングクロックCLKを発生するクロック発生器は、第2の実施の形態と同様に、電子部品10,20,30,40とは別体に構成されていてもよい。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1ないし第3の実施の形態のいずれかと同様である。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。始めに、図18を参照して、本実施の形態におけるセンサシステム400について説明する。センサシステム400は、本実施の形態に係る角度センサ401と、物理情報発生部405とを含んでいる。角度センサ401は、特に、磁気式の角度センサである。角度センサ401は、物理情報として、対象角度θに応じて方向が変化する検出対象磁界を検出して、対象角度θと対応関係を有する検出値を生成する。
本実施の形態における物理情報発生部405は、物理情報としての検出対象磁界を発生する磁界発生部である。図18には、1組以上のN極とS極が交互にリング状に配列された磁石406を示している。図18に示した例では、磁石406は、2組のN極とS極とを含んでいる。角度センサ401は、磁石406の外周部から発生する検出対象磁界の方向を検出する。図18に示した例では、図18における紙面がXY平面となり、紙面に垂直な方向がZ方向となる。磁石406のN極とS極は、Z方向に平行な回転中心を中心として対称な位置に配置されている。磁石406は、回転中心を中心として回転する。これにより、検出対象磁界は、回転中心(Z方向)を中心として回転する。
本実施の形態では、対象角度θは、所定の基準位置における検出対象磁界の方向を表す角度であり、検出値は、基準位置における検出対象磁界の方向を表すものである。角度センサ401は、各々が対象角度θと対応関係を有する検出データを生成する複数の磁気センサを備えている。本実施の形態では、複数の磁気センサに共通の基準平面が定義される。基準平面は、Z方向に垂直な仮想の平面である。
基準位置は、基準平面内に位置する。この基準平面内において、磁石406が発生する検出対象磁界の方向は、基準位置を中心として回転する。以下の説明において、基準位置における検出対象磁界の方向とは、基準平面内に位置する方向を指す。
また、本実施の形態では、検出対象磁界の方向を表す基準として、基準方向が定義される。基準方向は、基準平面内に位置して、基準位置と交差する。図18に示した例では、磁石406は反時計回り方向に回転し、検出対象磁界の方向は時計回り方向に回転する。基準位置における検出対象磁界の方向が基準方向に対してなす角度は、基準方向から時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向から反時計回り方向に見たときに負の値で表す。
本実施の形態では、複数の磁気センサは、第1の磁気センサ410A、第2の磁気センサ420Aおよび第3の磁気センサ430Aである。角度センサ401は、更に、3つの電子部品410,420,430を備えている。第1の磁気センサ410Aは、電子部品410に含まれている。第2の磁気センサ420Aは、電子部品420に含まれている。第3の磁気センサ430Aは、電子部品430に含まれている。電子部品410,420,430は、磁石406の回転方向について異なる位置に配置されている。
第1の磁気センサ410Aは、第1の検出位置P41において検出対象磁界を検出して、第1の検出データを生成する。第2の磁気センサ420Aは、第2の検出位置P42において検出対象磁界を検出して、第2の検出データを生成する。第3の磁気センサ430Aは、第3の検出位置P43において検出対象磁界を検出して、第3の検出データを生成する。第1ないし第3の検出位置P41,P42,P43は、基準平面内にある。基準位置は、例えば、第2の検出位置P42とする。
次に、図19を参照して、角度センサ401の構成について詳しく説明する。図19は、角度センサ401の構成を示す機能ブロック図である。第1の磁気センサ410Aは、第1の検出器411を含んでいる。第2の磁気センサ420Aは、第2の検出器421を含んでいる。第3の磁気センサ430Aは、第3の検出器431を含んでいる。第1ないし第3の検出器411,421,431は、それぞれ、少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。
第1ないし第3の検出器411,421,431は、それぞれ、検出対象磁界の方向に対応した第1のアナログ検出信号S41a、第2のアナログ検出信号S42aおよび第3のアナログ検出信号S43aを生成する。具体的に説明すると、第1の検出器411は、検出対象磁界の方向と第1の方向D1との相対角度に対応した第1のアナログ検出信号S41aを生成する。第2の検出器421は、検出対象磁界の方向と第2の方向D2との相対角度に対応した第2のアナログ検出信号S42aを生成する。第3の検出器431は、検出対象磁界の方向と第3の方向D3との相対角度に対応した第3のアナログ検出信号S43aを生成する。
図18には、第1ないし第3の方向D1〜D3を示している。第1の方向D1は、磁石406の半径方向であって、磁石406の回転中心から第1の検出位置P41に向かう方向である。第2の方向D2は、磁石406の半径方向であって、磁石406の回転中心から第2の検出位置P42に向かう方向である。第3の方向D3は、磁石406の半径方向であって、磁石406の回転中心から第3の検出位置P43に向かう方向である。
第1ないし第3のアナログ検出信号S41a,S42a,S43aの各々は、理想的な正弦曲線(サイン(Sine)波形とコサイン(Cosine)波形を含む)を描くように所定の信号周期で周期的に変化する理想成分を含んでいる。第1ないし第3の磁気センサ410A,420A,430Aは、第1ないし第3のアナログ検出信号S41a,S42a,S43aのそれぞれの理想成分の位相が、互いに異なるように構成されている。ここで、第1のアナログ検出信号S41aの理想成分と第2のアナログ検出信号S42aの理想成分の位相差の絶対値をPH1とし、第2のアナログ検出信号S42aの理想成分と第3のアナログ検出信号S43aの理想成分の位相差の絶対値をPH2とする。
PH1、PH2は、いずれも60°である。第1ないし第3の検出位置P41,P42,P43は、PH1、PH2がいずれも60°になるように規定される。第1の検出位置P41と第2の検出位置P42のずれと第2の検出位置P42と第3の検出位置P43のずれは、いずれも、電気角の60°、すなわち磁石406の回転角の30°である。また、第1の検出位置P41と第3の検出位置P43のずれは、電気角の120°、すなわち磁石406の回転角の60°である。
第1の磁気センサ410Aは、更に、第1のADC412を含んでいる。第1のADC412は、第1のアナログ検出信号S41aを第1のデジタル検出信号S41dに変換する。第1のデジタル検出信号S41dは、第1の検出データである。
第2の磁気センサ420Aは、更に、第2のADC422を含んでいる。第2のADC422は、第2のアナログ検出信号S42aを第2のデジタル検出信号S42dに変換する。第2のデジタル検出信号S42dは、第2の検出データである。
第3の磁気センサ430Aは、更に、第3のADC432を含んでいる。第3のADC432は、第3のアナログ検出信号S43aを第3のデジタル検出信号S43dに変換する。第3のデジタル検出信号S43dは、第3の検出データである。
角度センサ401は、更に、サンプリングの時刻を決定するサンプリングクロックCLKを発生するクロック発生器410Bを備えている。クロック発生器410Bは、電子部品410に含まれている。第1ないし第3のADC412,422,432はいずれも、クロック発生器410Bによって発生されたサンプリングクロックCLKによってサンプリングの時刻が決定されるように構成されている。クロック発生器410Bと第1ないし第3のADC412,422,432は、サンプリングクロックCLKを伝送する信号線を介して、電気的に接続されている。
第1ないし第3のADC412,422,432の構成は同じである。第1ないし第3のADC412,422,432の各々の具体的な構成は、第1の実施の形態における第1ないし第4のADC13,14,23,24の各々の構成と同じである。
角度センサ401は、更に、第1ないし第3の検出データすなわち第1ないし第3のデジタル検出信号S41d,S42d,S43dを用いた演算を行って、検出値θsを生成する演算器450を備えている。演算器450は、例えば、ASICまたはマイクロコンピュータによって実現することができる。検出値θsの生成方法については、後で説明する。
次に、第1ないし第3の検出器411,421,431の構成について説明する。第1ないし第3の検出器411,421,431の各々の構成は、第1の実施の形態における第1の検出器11の構成と同じである。そのため、以下の説明では、第1ないし第3の検出器411,421,431の構成要素について、第1の実施の形態における図4に示した第1の検出器11の構成要素と同じ符号を用いる。
第1の検出器411では、磁気検出素子R11,R14に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第1の方向D1であり、磁気検出素子R12,R13に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第1の方向D1とは反対の方向である。この場合、検出対象磁界の方向と第1の方向D1との相対角度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1のアナログ検出信号S41aとして出力する。
第2の検出器421では、磁気検出素子R11,R14に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第2の方向D2であり、磁気検出素子R12,R13に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第2の方向D2とは反対の方向である。この場合、検出対象磁界の方向と第2の方向D2との相対角度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第2のアナログ検出信号S42aとして出力する。
第3の検出器431では、磁気検出素子R11,R14に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第3の方向D3であり、磁気検出素子R12,R13に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第3の方向D3とは反対の方向である。この場合、検出対象磁界の方向と第3の方向D3との相対角度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第3のアナログ検出信号S43aとして出力する。
なお、検出器411,421,431内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
次に、図19を参照して、演算器450の構成について説明する。演算器450は、第1の演算回路451と、第2の演算回路452と、第3の演算回路453とを有している。
第1の演算回路451は、第1および第2のデジタル検出信号S41d,S42dを受け、これらの和である第1の演算後信号S1を生成する。第2の演算回路452は、第2および第3のデジタル検出信号S42d,S43dを受け、これらの和である第2の演算後信号S2を生成する。第3の演算回路453は、第1および第2の演算後信号S1,S2を受け、これらに基づいて、検出値θsを算出する。
以下、検出値θsの算出方法について説明する。始めに、第1および第2の演算後信号S1,S2の生成方法について説明する。第1および第2の演算後信号S1,S2は、第1ないし第3のデジタル検出信号S41d〜S43dに基づいて生成される。理想的には、第1ないし第3のアナログ検出信号S41a〜S43aは、前述の理想成分のみを含み、第1ないし第3のアナログ検出信号S41a〜S43aの波形は、正弦曲線となる。しかし、実際には、MR素子に起因して、第1ないし第3のアナログ検出信号S41a〜S43aの波形は、正弦曲線から歪む。MR素子に起因して第1ないし第3のアナログ検出信号S41a〜S43aの波形が歪む場合の例としては、磁化固定層の磁化方向が検出対象磁界等の影響によって変動する場合が挙げられる。これは、検出対象磁界の強度が比較的大きい場合に発生しやすい。MR素子に起因して第1ないし第3のアナログ検出信号S41a〜S43aの波形が歪む場合の他の例としては、自由層の磁化方向が、自由層の形状異方性や保磁力等の影響によって、検出対象磁界の方向と一致しない場合が挙げられる。これは、検出対象磁界の強度が比較的小さい場合に発生しやすい。
正弦曲線から歪んだ第1ないし第3のアナログ検出信号S41a〜S43aは、理想成分の他に、誤差成分を含んでいる。誤差成分の主要な成分は、信号周期の1/3の周期の高調波に相当する誤差成分である。そのため、第1ないし第3のアナログ検出信号S41a〜S43aは、それぞれ、信号周期の1/3の周期の高調波に相当する誤差成分を含んでいる。
第1ないし第3のデジタル検出信号S41d〜S43dは、それぞれ、アナログ検出信号の理想成分に相当する理想成分と、アナログ検出信号の誤差成分に相当する誤差成分とを含んでいる。前述のように、PH1、PH2は、いずれも60°(π/3)である。そこで、第1ないし第3のデジタル検出信号S41d,S42d,S43dの理想成分を、それぞれ、cos(θ−π/3)、cosθ、cos(θ+π/3)と表す。
また、第1ないし第3のデジタル検出信号S41d,S42d,S43dの誤差成分は、それぞれ、p・cos{3(θ−π/3)}、p・cos3θ、p・cos{3(θ+π/3)}と表すことができる。第1および第3のデジタル検出信号S41d,S43dの誤差成分を変形すると、第1および第3のデジタル検出信号S41d,S43dの各々の誤差成分は、−p・cos3θとなる。なお、pは、第1ないし第3のデジタル検出信号S41d,S42d,S43dの各々の誤差成分の振幅であり、0<|p|<1を満たす任意の値である。
第1のデジタル検出信号S41dと第2のデジタル検出信号S42dの和を求めて第1の演算後信号S1を生成することにより、第1のデジタル検出信号S41dの誤差成分すなわち−p・cos3θと第2のデジタル検出信号S42dの誤差成分すなわちp・cos3θが完全に相殺されて、第1の演算後信号S1の誤差成分は0になる。
また、第2のデジタル検出信号S42dと第3のデジタル検出信号S43dの和を求めて第2の演算後信号S2を生成することにより、第2のデジタル検出信号S42dの誤差成分すなわちp・cos3θと第3のデジタル検出信号S43dの誤差成分すなわち−p・cos3θが完全に相殺されて、第2の演算後信号S2の誤差成分は0になる。
次に、図20を参照して、第3の演算回路453の構成と、第3の演算回路453による検出値θsの算出方法について説明する。図20は、第3の演算回路453の構成を示すブロック図である。第3の演算回路453は、正規化回路N1,N2,N3,N4と、加算回路453Aと、減算回路453Bと、演算部453Cとを有している。
正規化回路N1は、第1の演算後信号S1を正規化した値を加算回路453Aおよび減算回路453Bに対して出力する。正規化回路N2は、第2の演算後信号S2を正規化した値を加算回路453Aおよび減算回路453Bに対して出力する。正規化回路N1,N2は、例えば、演算後信号S1,S2の最大値が共に1になり、演算後信号S1,S2の最小値が共に−1になるように、演算後信号S1,S2を正規化する。
加算回路453Aは、正規化回路N1の出力値と正規化回路N2の出力値を加算して、加算信号S11を生成する。また、減算回路453Bは、正規化回路N1の出力値から正規化回路N2の出力値を減算して、減算信号S12を生成する。
正規化回路N3は、加算信号S11を正規化した値S21を演算部453Cに対して出力する。正規化回路N4は、減算信号S12を正規化した値S22を演算部453Cに対して出力する。正規化回路N3,N4は、例えば、信号S11,S12の最大値が共に1になり、信号S11,S12の最小値が共に−1になるように、信号S11,S12を正規化する。
演算部453Cは、値S21と値S22に基づいて、対象角度θと対応関係を有する検出値θsを算出する。具体的には、例えば、演算部453Cは、下記の式(29)によって、θsを算出する。なお、式(29)におけるαは、基準位置と基準方向によって決まる定数である。
θs=atan(S22/S21)+α …(29)
θsが0°以上360°未満の範囲内では、式(29)におけるatan(S22/S21の解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S21,S22の正負の組み合わせにより、atan(S22/S21)の真の値が、式(29)におけるatan(S22/S21の2つの解のいずれであるかを判別することができる。演算部453Cは、式(29)と、上記のS21,S22の正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθsを求める。
以上説明したように、本実施の形態では、第1の演算後信号S1を生成する際に、第1のデジタル信号S41dの誤差成分と第2のデジタル信号S42dの誤差成分が相殺され、第2の演算後信号S2を生成する際に、第2のデジタル信号S42dの誤差成分と第3のデジタル信号S43dの誤差成分が相殺される。そして、第1および第2の演算後信号S1,S2に基づいて、検出値θsが算出される。理論上、第1および第2の演算後信号S1,S2の誤差成分は0になる。これにより、本実施の形態によれば、誤差成分に起因した誤差が低減された検出値θsを生成することができる。
なお、本実施の形態において、第1ないし第3のADC412,422,432のサンプリングの時刻を決定するサンプリングクロックCLKを発生するクロック発生器は、第2の実施の形態と同様に、電子部品410,420,430とは別体に構成されていてもよい。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第2の実施の形態と同様である。
[第6の実施の形態]
次に、図21および図22を参照して、本発明の第6の実施の形態について説明する。図21は、本実施の形態に係る角度センサを含むセンサシステムの概略の構成を示す説明図である。図22は、本実施の形態に係る角度センサの構成を示す機能ブロック図である。本実施の形態におけるセンサシステム400は、第5の実施の形態に係る角度センサ401の代わりに、本実施の形態に係る角度センサ501を含んでいる。角度センサ501は、特に、磁気式の角度センサである。角度センサ501は、物理情報として、対象角度θに応じて方向が変化する検出対象磁界を検出して、対象角度θと対応関係を有する検出値を生成する。角度センサ501は、磁石406の外周部から発生する検出対象磁界の方向を検出する。角度センサ501は、各々が対象角度θと対応関係を有する検出データを生成する第1の磁気センサ510Aおよび第2の磁気センサ520Aを備えている。
角度センサ501は、更に、2つの電子部品510,520を備えている。第1の磁気センサ510Aは、電子部品510に含まれている。第2の磁気センサ520Aは、電子部品520に含まれている。電子部品510,520は、磁石406の回転方向について異なる位置に配置されている。
第1の磁気センサ510Aは、第1の検出位置P51において検出対象磁界を検出して、第1の検出データを生成する。第2の磁気センサ520Aは、第2の検出位置P52において検出対象磁界を検出して、第2の検出データを生成する。本実施の形態では、第5の実施の形態と同様に、基準平面と基準位置が定義される。本実施の形態では特に、第1および第2の磁気センサ510A,520Aに共通の基準平面が定義される。基準平面は、Z方向に垂直な仮想の平面である。第1および第2の検出位置P51,P52は、基準平面内にある。基準位置は、例えば、第1の検出位置P51とする。
なお、第5の実施の形態で説明したように、対象角度θは、所定の基準位置における検出対象磁界の方向を表す角度であり、検出値は、基準位置における検出対象磁界の方向を表すものである。また、検出対象磁界の方向を表す基準として、基準方向が定義される。基準方向は、基準平面内に位置して、基準位置と交差する。図21に示した例では、磁石406は反時計回り方向に回転し、検出対象磁界の方向は時計回り方向に回転する。基準位置における検出対象磁界の方向が基準方向に対してなす角度は、基準方向から時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向から反時計回り方向に見たときに負の値で表す。
第1の磁気センサ510Aは、第1の検出器511を含んでいる。第2の磁気センサ520Aは、第2の検出器521を含んでいる。第1および第2の検出器511,521は、それぞれ、少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。
第1の検出器511は、検出対象磁界の方向に対応した第1のアナログ検出信号S51aを生成する。具体的に説明すると、第1の検出器511は、検出対象磁界の方向と第1の方向D11との相対角度に対応した第1のアナログ検出信号S51aを生成する。また、第2の検出器521は、検出対象磁界の方向に対応した第2のアナログ検出信号S52aを生成する。具体的に説明すると、第2の検出器521は、検出対象磁界の方向と第2の方向D12との相対角度に対応した第2のアナログ検出信号S52aを生成する。
図21には、第1および第2の方向D11,D12を示している。第1の方向D11は、磁石406の半径方向であって、磁石406の回転中心から第1の検出位置P51に向かう方向である。第2の方向D12は、磁石406の半径方向であって、磁石406の回転中心から第2の検出位置P52に向かう方向である。
第1および第2の磁気センサ510A,520Aは、第1および第2のアナログ検出信号S51a,S52aの位相が、互いに異なるように構成されている。第1の検出位置P51と第2の検出位置P52のずれは、第1のアナログ検出信号S51aと第2のアナログ検出信号S52aの位相差に相当する。位相差は、90°である。第1および第2の検出位置P51,P52は、位相差が90°になるように規定される。第1の検出位置P51と第2の検出位置P52のずれは、電気角の90°、すなわち磁石406の回転角の45°である。
第1の磁気センサ510Aは、更に、第1のADC512を含んでいる。第1のADC512は、第1のアナログ検出信号S51aを第1のデジタル検出信号S51dに変換する。第1のデジタル検出信号S51dは、第1の検出データである。
第2の磁気センサ520Aは、更に、第2のADC522を含んでいる。第2のADC522は、第2のアナログ検出信号S52aを第2のデジタル検出信号S52dに変換する。第2のデジタル検出信号S52dは、第2の検出データである。
角度センサ501は、更に、サンプリングの時刻を決定するサンプリングクロックCLKを発生するクロック発生器510Bを備えている。クロック発生器510Bは、電子部品510に含まれている。第1および第2のADC512,522はいずれも、クロック発生器510Bによって発生されたサンプリングクロックCLKによってサンプリングの時刻が決定されるように構成されている。クロック発生器510Bと第1および第2のADC512,522は、サンプリングクロックCLKを伝送する信号線を介して、電気的に接続されている。
第1および第2のADC512,522の構成は同じである。第1および第2のADC512,522の各々の具体的な構成は、第1の実施の形態における第1ないし第4のADC13,14,23,24の各々の構成と同じである。
角度センサ501は、更に、第1および第2の検出データすなわち第1および第2のデジタル検出信号S51d,S52dを用いた演算を行って、検出値θsを生成する演算器550を備えている。演算器550は、例えば、ASICまたはマイクロコンピュータによって実現することができる。検出値θsの生成方法については、後で説明する。
次に、第1および第2の検出器511,521の構成について説明する。第1および第2の検出器511,521の各々の構成は、第1の実施の形態における第1の検出器11の構成と同じである。そのため、以下の説明では、第1および第2の検出器511,521の構成要素について、第1の実施の形態における図4に示した第1の検出器11の構成要素と同じ符号を用いる。
第1の検出器511では、磁気検出素子R11,R14に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第1の方向D11であり、磁気検出素子R12,R13に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第1の方向D11とは反対の方向である。この場合、検出対象磁界の方向と第1の方向D11との相対角度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。第1の検出器511の差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1のアナログ検出信号S51aとして出力する。
第2の検出器521では、磁気検出素子R11,R14に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第2の方向D12であり、磁気検出素子R12,R13に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第2の方向D12とは反対の方向である。この場合、検出対象磁界の方向と第2の方向D12との相対角度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。第1の検出器521の差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第2のアナログ検出信号S52aとして出力する。
なお、検出器511,521内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
次に、検出値θsの算出方法について説明する。演算器550は、第1および第2の検出データすなわち第1および第2のデジタル検出信号S51d,S52dを用いた演算を行って、対象角度θと対応関係を有する検出値θsを算出する。具体的には、例えば、演算器550は、下記の式(30)によって、θsを算出する。なお、式(30)におけるβは、基準位置と基準方向によって決まる定数である。
θs=atan(S51d/S52d)+β …(30)
θsが0°以上360°未満の範囲内では、式(30)におけるatan(S51d/S52d)の解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S51d,S52dの正負の組み合わせにより、atan(S51d/S52d)の真の値が、式(30)におけるatan(S51d/S52d)の2つの解のいずれであるかを判別することができる。演算器550は、式(30)と、上記のS51d,S52dの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθsを求める。
なお、本実施の形態において、第1および第2のADC512,522のサンプリングの時刻を決定するサンプリングクロックCLKを発生するクロック発生器は、第2の実施の形態と同様に、電子部品510,520とは別体に構成されていてもよい。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第5の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、請求の範囲の要件を満たす限り、磁気センサの数および配置と、ADCおよびクロック発生器の構成は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。
また、本発明は、磁気式の角度センサに限らず、検出対象の情報に応じて変化する物理情報を検出して、検出対象の情報と対応関係を有する検出値を生成する検出装置であって、物理情報と対応関係を有する検出データを生成する複数のセンサと、複数のセンサによって生成された複数の検出データを用いた演算を行って検出値を生成する演算器とを備えた検出装置全般に適用することができる。角度センサ以外の検出装置としては、例えば、物体の位置に応じて変化する物理情報を検出して、物体の位置と対応関係を有する検出値を生成する位置検出装置がある。位置検出装置は、各々が物理情報として物体までの距離と対応関係を有する検出データを生成する複数の距離センサと、検出値を生成する演算器とを備えていてもよい。複数の距離センサの各々は、少なくとも1つの検出器と、少なくとも1つのADCとを含んでいる。検出器は、レーザ光を使用するものであってもよいし、超音波を使用するものであってもよい。位置検出装置では、複数の距離センサのADCにおけるサンプリングの時刻が一致するように構成される。演算器は、例えば、複数の距離センサによって生成された複数の検出データに基づいて、物体の位置を表す検出値を生成する。複数の距離センサは、それらが同一平面上には無い位置関係で配置されていてもよい。
磁気式の角度センサとしては、種々の目的のために、複数の磁気センサと、複数の磁気センサの検出データを用いた演算によって検出値を生成する演算器とを備えたものが知られている。このような角度センサは、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1における複数の合成磁界情報生成部は上記複数の磁気センサに対応し、特許文献1における角度演算部は上記演算器に対応する。特許文献1に記載された角度センサは、ノイズ磁界に起因した検出値の誤差を低減するために、複数の磁気センサと演算器とを備えている。
ところで、xが十分に小さいときには、atan(x)をAT・xと近似することができる。ATは、定数であり、例えば56.57である。本実施の形態では、ノイズ磁界Mexの第1の成分Mex1の強度Bexは、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの強度B1,B2に比べて十分に小さいため、atan(Bex/B1)、atan(Bex/B2)をそれぞれAT・(Bex/B1)、AT・(Bex/B2)と近似することができる。この近似を式(3)に適用して変形すると、Bexは下記の式(5)で表すことができる。
第1の印加磁界MF1のX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度は、それぞれ第1の印加磁界成分MF1cのX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度と等しい。第2の印加磁界MF2のX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度は、それぞれ第2の印加磁界成分MF2cのX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度と等しい。第3の印加磁界MF3のX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度は、それぞれ第3の印加磁界成分MF3cのX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度と等しい。第4の印加磁界MF4のX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度は、それぞれ第4の印加磁界成分MF4cのX方向の成分の強度およびY方向の成分の強度と等しい。
第2の検出器521では、磁気検出素子R11,R14に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第2の方向D12であり、磁気検出素子R12,R13に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第2の方向D12とは反対の方向である。この場合、検出対象磁界の方向と第2の方向D12との相対角度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。第2の検出器521の差分検出器18は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第2のアナログ検出信号S52aとして出力する。