JP5131074B2 - 車線逸脱防止装置及び車線逸脱防止方法 - Google Patents
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Description
この特許文献1の車輪逸脱制御では、車両が走行車線から逸脱すると判定した場合には、制御量として逸脱防止出力を車両に付与する。この逸脱防止出力を付与することで、車両が走行車線から逸脱することを防止する。
したがって、逸脱傾向の度合い(例えばヨー角)が小さければ、逸脱防止出力は小さな値となる。このため車両が走行車線を逸脱する可能性がある場合でも、逸脱防止出力が小さいことから、路面の凹凸や傾斜による外乱によって車線逸脱防止制御時の実際の車両挙動が小さくなり、運転者に違和感を与える可能性がある。一方、逸脱傾向の度合いに対する逸脱防止出力を大きくすると、車線逸脱制御開始時の車両挙動が大きくなり、運転者に違和感を与える。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、運転者に違和感を与える事無く車両の走行車線に対する逸脱を防止可能な車線逸脱防止装置及び車線逸脱防止方法を提供することを課題としている。
この結果、初期の目標ヨーモーメントを抑えて、車線逸脱制御開始時の車両挙動が大きくなる事による乗員への違和感を抑える。さらに、すぐに逸脱が解消しなければ付与するヨーモーメントが増大していくことで車両が走行車線を逸脱することを防止し、乗員への違和感を抑えることが可能となる。
(構成)
本実施形態では、本発明に係る車線逸脱防止装置を搭載した後輪駆動車両で説明する。この後輪駆動車両は、自動変速機とコンベンショナルなディファレンシャルギヤとを搭載し、前後輪とも左右輪の制動力を独立制御可能な制動装置を搭載している。
図1中、符号1はブレーキペダル、2はブースタ、3はマスタシリンダ、4はリザーバである。通常は運転者によるブレーキペダル1の踏込み量に応じて、マスタシリンダ3で昇圧した制動流体圧を、各車輪5FL〜5RRの各ホイールシリンダ6FL〜6RRに供給する。また、マスタシリンダ3と各ホイールシリンダ6FL〜6RRとの間に、制動流体圧制御部7を介装する。この制動流体圧制御部7によって、各ホイールシリンダ6FL〜6RRの制動流体圧を個別に制御することも可能となっている。
例えば、制動流体圧制御部7は、液圧供給系にアクチュエータを含んだ構成となっている。アクチュエータとしては、各ホイールシリンダ液圧を任意の制動液圧に制御可能な比例ソレノイド弁が挙げられる。
また、この車両に、画像処理機能付きの撮像部13を装備する。この撮像部13は、車両の車線逸脱傾向検出用として、走行車線内の車両の位置を検出するためのものである。例えば、撮像部13は、CCD(ChargeCoupled Device)カメラからなる単眼カメラで撮像するように構成しておく。その撮像部13を車両前部に設置する。
ここで、画像処理以外の検出手段でレーンマーカを検出するようにしても良い。例えば、車両前方に取り付けられた複数の赤外線センサによりレーンマーカを検出し、その検出結果に基づいて走行車線を検出しても良い。
また、本実施形態の車両に、ナビゲーション装置14を装備する。ナビゲーション装置14は、車両に発生する前後加速度Yg或いは横加速度Xg、又は車両に発生するヨーレイトφ´を検出する。ナビゲーション装置14は、検出した前後加速度Yg、横加速度Xg及びヨーレイトφ´(=dφ/dt)を、道路情報とともに、制駆動力コントロールユニット8に出力する。ここで、道路情報としては、車線数や一般道路か高速道路かを示す道路種別情報がある。
なお、専用のセンサにより各値を検出するようにしても良い。すなわち、加速度センサにより前後加速度Yg及び横加速度Xgを検出し、ヨーレイトセンサによりヨーレイトφ´を検出するようにしても良い。
また、この車両に、マスタシリンダ圧センサ17、アクセル開度センサ18、操舵角センサ19、方向指示スイッチ20、及び車輪速度センサ22FL〜22RRを装備する。
ここで、検出した車両の走行状態データに左右の方向性がある場合には、いずれも右方向を正方向とする。すなわち、ヨーレイトφ´、横加速度Xg及びヨー角φは、右旋回時に正値となり、横変位Xは、走行車線中央から右方にずれているときに正値となる。また、前後加速度Ygは、加速時に正値となり、減速時に負値となる。
図2は、その制駆動力コントロールユニット8で行う車線逸脱防止のための演算処理手順を示す図である。
この演算処理は、例えば10msec.毎の所定サンプリング時間ΔT毎にタイマ割込によって実行するように設定しておく。なお、図2に示す処理には通信処理を図示していないが、演算処理によって得られた情報は、随時、記憶装置に更新記憶すると共に、必要な情報は随時、記憶装置から読み出す。
具体的には、ナビゲーション装置14が得た前後加速度Yg、横加速度Xg、ヨーレイトφ´及び道路情報を読み込む。また、各センサが検出した、各車輪速度Vwi、操舵角δ、アクセル開度θt、マスタシリンダ液圧Pmf,Pmr及び方向スイッチ信号を読み込む。さらに駆動トルクコントロールユニット12からの駆動トルクTw、撮像部13からヨー角φ、横変位X(X0)及び走行車線曲率βを読み込む。
前輪駆動の場合 V=(Vwrl+Vwrr)/2
後輪駆動の場合 V=(Vwfl+Vwfr)/2 ・・・(1)
ここで、Vwfl,Vwfrは左右前輪それぞれの車輪速度であり、Vwrl,Vwrrは左右後輪それぞれの車輪速度である。すなわち、この(1)式では、従動輪の車輪速の平均値として車速Vを算出している。なお、本実施形態では、後輪駆動の車両であるので、後者の式、すなわち前輪の車輪速度により車速Vを算出する。
φt=φ+β ・・・(2)
続いてステップS40において、走行路の凹凸状態(走行路面の凹凸度合い)を示す走行路状態指標値Nを、下記(3)式に基づき、算出する。
N=f1(φ´,φ0´) ・・・(3)
ここで、関数f1は、各処理タイミングにおけるヨーレイトφ´を標本値とし、φ0´を標本平均として、ヨーレイトφ´についての分散値を算出する関数である。すなわち、ヨーレイトφ´の変動と走行路の凹凸状態とが密接に関連することを前提とする。そして、その前提のもと、ヨーレイトφ´についての分散値から走行路の凹凸状態を示す走行路状態指標値Nを推定している。具体的には、分散値が大きくなるほど、走行路の凹凸度合いが大きく(高く)なるとみなして、走行路状態指標値Nが大きくなる。
Xs=Tt・V・(φ+Tt・V・β)+X0 ・・・(4)
この(4)式によれば、推定横変位Xsは、例えばヨー角φに着目した場合、ヨー角φが大きくなるほど、大きくなる。
そして、上記算出した推定横変位Xsと所定の逸脱傾向判定用閾値(横変位限界距離)XLとを比較して、車線逸脱傾向を判定する。
XL=(L−H)/2 ・・・(5)
ここで、Lは車線幅であり、Hは車両の幅である。車線幅Lについては、撮像部13が撮像画像を処理することで得ている。また、ナビゲーション装置14から車両の位置を得たり、ナビゲーション装置14の地図データから車線幅Lを得たりしても良い。
また、車両が走行車線から逸脱する前に逸脱傾向を判定するものに限らない。例えば車輪の少なくとも1つが車線から逸脱した後に逸脱傾向を判定するように、逸脱傾向判定用閾値XLを設定しておいても良い。
|Xs|≧XL ・・・(6)
一方、下記(7)式が成立すれば、車線逸脱傾向がない又は車線逸脱傾向の度合いが低いと判定して、逸脱判断フラグFoutをOFFにする(Fout=OFF)。
|Xs|<XL ・・・(7)
またここで、横変位Xに基づいて逸脱方向Doutを判定する。具体的には、車線中央から左方向に横変位している場合、その方向を逸脱方向Doutとする(Dout=left)。一方、車線中央から右方向に横変位している場合、その方向を逸脱方向Doutとする(Dout=right)。
すなわち、方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と、上記ステップS50で得た逸脱方向Doutが示す方向とが同じである場合は、運転者が意識的に車線変更していると判定する。そして、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更する(Fout=OFF)。すなわち、車線逸脱傾向無しとの判定結果に変更する。
また、方向指示スイッチ20が操作されていない場合には、操舵角δに基づいて運転者の車線変更の意思を判定する。すなわち、運転者が逸脱方向に操舵している場合において、その操舵角δとその操舵角の変化量(単位時間当たりの変化量)Δδとの両方が設定値以上のときには、運転者が意識的に車線変更していると判定する。このように判定した場合にも、逸脱判断フラグFoutをOFFに変更する(Fout=OFF)。
このように、逸脱判断フラグFoutがONである場合において運転者が意識的に車線変更していないと判定したときには、逸脱判断フラグFoutをONに維持している。
続いてステップS70において、上記逸脱判断フラグFoutがONの場合には、車線逸脱回避のための警報として、音出力又は表示出力をする。
なお、後述するように、逸脱判断フラグFoutがONの場合、車線逸脱防止制御として車両へのヨーモーメント付与を開始するから、この車両へのヨーモーメント付与と同時に当該警報出力を行う。しかし、警報の出力タイミングは、これに限定するものではなく、例えば、上記ヨーモーメント付与の開始タイミングよりも早くしても良い。
具体的には、上記ステップS50で算出した推定横変位Xsから横変位限界距離XLを減じて得た減算値(|Xs|−XL)が、減速制御判定用閾値Xβ以上か否かを判定する。
ここで、減速制御判定用閾値Xβは、走行車線曲率βに応じて設定する値であり、その関係は、例えば図4に示すようになる。図4に示すように、走行車線曲率βが小さいときには、減速制御判定用閾値Xβはある一定の大きい値となる。また、走行車線曲率βがある値より大きくなると、走行車線曲率βの増加に対して、減速制御判定用閾値Xβが減少する。走行車線曲率βがさらに大きくなると、減速制御判定用閾値Xβはある一定の小さい値となる。
具体的には、上記ステップS30で得た推定横変位Xsと横変位限界距離XLとを用いて、下記(8)式に基づき、基準目標ヨーモーメントM1を算出する。
M1=K1・K2・(|Xs|−XL) ・・・(8)
ここで、K1は車両諸元から決まる比例ゲインである。K2は車速Vに応じて変動するゲインである。図5はそのゲインK2の例を示す。図5に示すように、低速域では、ゲインK2は、ある一定の大きい値となる。また、車速Vがある値よりも大きくなると、車速Vの増加に対してゲインK2は減少し、その後ある車速Vに達するとゲインK2はある一定の小さい値となる。
更に、算出した基準目標ヨーモーメントM1を、補正目標ヨーモーメントM2に設定しておく。
続いてステップS100において、基準目標ヨーモーメントM1が最小目標ヨーモーメントMmin以下か否かを判定する。基準目標ヨーモーメントM1が最小目標ヨーモーメントMmin以下の場合には、ステップS110に移行する。一方、基準目標ヨーモーメントM1が最小目標ヨーモーメントMminよりも大きい場合には、ステップS105に移行する。
M2 ← max(M2 、Msm )
ステップS110では、タイマーTiをカウントアップしてステップS120に移行する。このタイマーTiは、例えば、ステップS80において、逸脱判断フラグFoutがOFFからONに変更したことを検知すると、ゼロクリアしておく。また、最小制御ヨーモーメントMsmも初期値Msm0に再設定する。
ステップS120では、補正目標ヨーモーメントM2として、最小制御ヨーモーメントMsmを設定する。
ここで、最小制御ヨーモーメントMsmは、予め、図6に示すようなマップとなる、テーブル若しくは関数として設定しておく。この最小制御ヨーモーメントMsmは、タイマーTiが大きくなるほど、大きくなるように設定している。
また、この最小制御ヨーモーメントMsmの初期値Msm0は、図6のように、最小目標ヨーモーメントMminよりも小さな値となっている。
ここで、例えば最小目標ヨーモーメントMminを制御上の目標値として車両の制御を行った場合、実際に車両に付与されるヨーモーメントは、走行路面の凹凸や横断勾配等の外乱によって、ばらつく。そのバラツキの幅は、図6に示すように、ヨーモーメントMminlからヨーモーメントMminhまでの間となる。これに対し、本実施形態においては、最小制御ヨーモーメントMsmの初期値Msm0を、図6に示すように、最小目標ヨーモーメントMminよりも小さいヨーモーメントMminl、若しくはその近傍値の値にする場合を例示している。
続いてステップS130において、走行路状態指標値Nに基づいて、下記(13)式に基づき、後述のステップS140で用いるゲインgrを算出する。
gr=f3(N) ・・・(13)
ここで、関数f3は、走行路状態指標値Nに基づいてゲインgrを得る関数であり、例えば、走行路状態指標値Nが大きくなるほど、ゲインgrを大きくする関数である。すなわち、上記(3)式との関係から、走行路の凹凸度合い(凹凸の大きさや密度)が大きくなるほど、ゲインgrが大きくなる。
M2=gr・Msm ・・・(15)
ここで、grは、補正用のゲインである。
また、(15)式と上記(13)式との関係では、基準目標ヨーモーメントM1が最小目標ヨーモーメントMmin未満となる場合には、走行路状態指標値Nが大きくなるほど、補正目標ヨーモーメントM2は大きくなる。
続いてステップS150において、最終的な制御量としての目標ヨーモーメントMsを算出する。
Ms(0)=f4(M2,Ms(−1)) ・・・(16)
ここで、関数f4は、今回の処理で算出した値である補正目標ヨーモーメントM2と、前回の処理において算出した目標ヨーモーメントMs(−1)とを連続的(線形性を持たせて又は滑らか)に繋げるための関数である。
なお、逸脱判断フラグFoutがONの場合には、前述のような目標ヨーモーメントMs(0)の演算を実行する。一方、逸脱判断フラグFoutがOFFの場合には、目標ヨーモーメントMs(0)に0を設定する。
続いてステップS160において、車線逸脱防止用減速制御における減速度を算出する。
Pgf=Kgv・Kgx・(|Xs|−XL−Xβ) ・・・(17)
ここで、Kgvは車速Vに応じて設定される換算係数であり、Kgxは車両諸元により定まる換算係数である。図7は換算係数Kgvの例を示す。図7に示すように、低速域では、換算係数Kgvは、ある一定の小さい値となる。一方、車速Vがある値よりも大きくなると、車速Vとともに換算係数Kgvが増加し、その後ある車速Vに達すると換算係数Kgvはある一定の大きい値となる。
このようにステップS160において、逸脱回避用の減速度(具体的には目標制動液圧Pgf,Pgr)を得る。
続いてステップS170において、各車輪の目標制動液圧を算出する。すなわち、車線逸脱防止の制動制御の有無に基づいて最終的な制動液圧を算出する。具体的には次のように算出する。
Psfl=Psfr=Pmf ・・・(18)
Psrl=Psrr=Pmr ・・・(19)
ここで、Pmfは前輪用の制動液圧である。また、Pmrは後輪用の制動液圧である。これらの制動液圧は、前後配分を考慮して前輪用の制動液圧Pmfに基づき算出した値になる。例えば、運転者がブレーキ操作をしていれば、制動液圧Pmf,Pmrはそのブレーキ操作の操作量に応じた値になる。
|Ms|<Ms1の場合
ΔPsf=0 ・・・(20)
ΔPsr=Kbr・Ms/LTR ・・・(21)
|Ms|≧Ms1の場合
ΔPsf=Kbf・(Ms/|Ms|)・(|Ms|−Ms1)/LTR
・・・(22)
ΔPsr=Kbr・(Ms/|Ms|)・Ms1/LTR ・・・(23)
ここで、Ms1は設定用閾値を示す。なお、トレッドLTRは、便宜上前後で同じ値にする。また、Kbf,Kbrは、制動力を制動液圧に換算する場合の前輪及び後輪についての換算係数であり、ブレーキ諸元により定まる。
まず、逸脱判断フラグFoutがONの場合、すなわち車線逸脱傾向があるとの判定結果を得ている一方、減速制御作動判断フラグFgsがOFFの場合を説明する。この場合には、車両へのヨーモーメント付与だけを行う場合となる。したがって、下記(24)式に基づき、各車輪の目標制動液圧Psi(i=fl,fr,rl,rr)を算出する。
Psfl=Pmf
Psfr=Pmf+ΔPsf
Psrl=Pmr
Psrr=Pmr+ΔPsr
・・・(24)
Psfl=Pmf+Pgf/2
Psfr=Pmf+ΔPsf+Pgf/2
Psrl=Pmr+Pgr/2
Psrr=Pmr+ΔPsr+Pgr/2
・・・(25)
Psfl=Pmf+ΔPsf
Psfr=Pmf
Psrl=Pmr+ΔPsr
Psrr=Pmr ・・・(26)
動作は次のようになる。
車両走行中、各種データを読み込むとともに(上記ステップS10)、車速Vを算出する(上記ステップS20)。そして、将来の推定横変位(逸脱推定値)Xsに基づいて車線逸脱傾向の判定(逸脱判断フラグFoutの設定)を行うとともに(上記ステップS50)、その車線逸脱傾向の判定結果(逸脱判断フラグFout)を、運転者の車線変更の意思に基づいて修正する(上記ステップS60)。そして、車線逸脱傾向の判定結果に基づいて、警報出力を行う(上記ステップS70)。
また、算出した基準目標ヨーモーメントM1を補正目標ヨーモーメントM2とする(ステップS90)。このとき、算出した基準目標ヨーモーメントM1が最小目標ヨーモーメントMmin以下の場合には、予め設定している最小制御ヨーモーメントMsmを採用して、補正目標ヨーモーメントM2を設置する(ステップS120)。
そして、算出した補正目標ヨーモーメントM2と、前回の処理(1ステップ前の処理)において算出した目標ヨーモーメントMs(−1)とを用いて、今回の処理における目標ヨーモーメントMs(0)を算出する(上記ステップS150)。
ここで、ステップS90はヨーモーメント算出手段を構成する。ステップS80,S150〜S170は、逸脱抑制制御手段を構成する。ステップS100〜S120は、制御モーメント補正手段を構成する。基準目標ヨーモーメントM1は算出したヨーモーメントである。最小目標ヨーモーメントMminは、制御モーメント補正手段で使用する所定閾値である。
(1)制御モーメント補正手段は、ヨーモーメント算出手段が算出したヨーモーメントが所定閾値以下と判定すると、上記目標ヨーモーメントを、上記所定閾値未満の値から上記所定閾値を越える値となるまで、時間の経過と共に連続的若しくは断続的に増大させるように補正する。
すなわち、逸脱傾向の度合いによって算出した基準目標ヨーモーメントM1が、所定閾値である最小目標ヨーモーメントMmin以下の場合には、目標ヨーモーメントMsを、最小目標ヨーモーメントMmin以下の初期値から時間の経過と共に徐々に増加させる。
更に、その後は、目標ヨーモーメントMsが時間の経過と共に徐々に増加する。この結果、時間の経過と共に車両の制御量を増大して、車両が走行車線を逸脱することを防止することが出来る。
この結果、初期の目標ヨーモーメントを抑えて、車線逸脱制御開始時の車両挙動が大きくなる事による乗員への違和感を抑える。さらに、すぐに逸脱が解消しなければ付与するヨーモーメントが増大していくことで車両が走行車線を逸脱することを防止し、乗員への違和感を抑えることが可能となる。
なお、本実施形態では、最小制御ヨーモーメントMsmの初期値Msm0を予め定められた値としている。しかし、これに限定しない。例えば、基準目標ヨーモーメントM1を最小制御ヨーモーメントMsmの初期値とし、時間の経過と共に最小制御ヨーモーメントMsmを増大させても良い。
図10に、この場合のタイムチャート例を示す。図10において、細線がそれぞれヨーモーメント算出手段が算出した基準ヨーモーメントM1と最小制御ヨーモーメントであり、太線が目標ヨーモーメントである。なお、図11及び図12においても同様である。
これにより、車線逸脱傾向に基づいて算出した基準目標ヨーモーメントM1が小さな値である為に、車両が車線中央方向に戻り難い場合でも徐々に目標値が大きくなる。つまり、車両の車線逸脱傾向に基づいて算出した基準目標ヨーモーメントM1が小さくて、車両の制御量が発生し難い場合であっても、徐々に目標値を大きくする事により制御量が大きくなる。この結果、車両が走行車線を逸脱することを防止出来るだけのヨーモーメントを車両に付与可能となると共に、車両が車線中央方向に戻り難い事による乗員の違和感を抑える事ができる。
図11に、このときのタイムチャート例を示す。
最小制御ヨーモーメントMsmを最小目標ヨーモーメントMmin以下の初期値から時間の経過と共に大きくする。また、逸脱傾向の度合いに基づいて算出した基準目標ヨーモーメントM1が最小制御ヨーモーメントMsm以下の場合には、当該最小制御ヨーモーメントMsmを目標ヨーモーメントMsとする。
これによって、バラツキにより実際の車両の制御量が目標値よりも高い制御量となっても、例えば最小目標ヨーモーメントMmin値程度の大きさに制限出来る。これによって、制御介入初期において実際に車両に付与される制御量を、確実に高い制御量とすることはない。これによって、乗員に車両挙動の違和感を与え無いか抑えることが可能となる。
また、初期にできるだけブレーキの液圧を立てた場合には、制動のプレビュー効果により制御レスポンスが向上する。
これによって、走行路の凹凸度合いが大きくほど、ゲインgrが大きくなるので、補正目標ヨーモーメントM2も大きくなる。
走行路の凹凸度合いが大きくなると、ヨーモーメントの付与により変化する車両挙動を運転者が感じにくくなる。すなわち自車両が車線逸脱する可能性が高いことを運転者は認識しにくくなるが、走行路の凹凸度合いが大きくなるほど、補正目標ヨーモーメントM2(より具体的には目標ヨーモーメントMs(0))を大きくしているので、走行路の凹凸度合いが大きい場合でも、運転者は、ヨーモーメントの付与により変化する車両挙動を介して自車両が車線逸脱する可能性が高いことを認識できるようになる。
図8に記載のように、最小制御モーメントMsmの増大率は時間の経過と共に大きくする。
これによって、乗員が、車両が車線逸脱傾向となった時点から、車両が車線逸脱傾向に有る事を認識するまでの時間が長くなるほど、最小制御モーメントMsmの増大率を大きなる、この結果、車両に付与されるヨーモーメントを大きくして、確実に乗員に車両が車線逸脱傾向に有る事を認識させる事ができる。
(8)上記最小制御ヨーモーメントの最大値を、上記所定閾値より大きい値に制限する。
に上限値を設けることで、過大な制御量になることを防ぐ事が出来る。
ここで、逸脱判断フラグFoutがONとなった時点から、上記最小制御ヨーモーメントMsmの増大を開始して、その最小制御ヨーモーメントMsmと上記基準目標ヨーモーメントM1とのうちの大きい値を、目標ヨーモーメントとしても良い。すなわち、車両の車線逸脱傾向に基づいて算出した基準目標ヨーモーメントM1との初期値が最小目標ヨーモーメントMminに対して十分に小さい場合には、基準目標ヨーモーメントM1を目標ヨーモーメントとしても、運転者に違和感を与えるほど車両の挙動が大きくなる事はない。このため、基準目標ヨーモーメントM1の初期値が最小目標ヨーモーメントMminに対して十分に小さい場合(例えばMminl未満の場合)には、最小制御ヨーモーメントMsmと上記基準目標ヨーモーメントM1とのうちの大きい値を、目標ヨーモーメントとしても良い。
この場合のタイムチャート例を図12に示す。
図13に、本実施形態を適用した場合のタイムチャート例を示す。
この図13から分かるように、逸脱傾向の度合いに応じて算出した基準目標ヨーモーメントM1は増加する。しかし、算出した基準目標ヨーモーメントM1が最小目標ヨーモーメントMmin以下の場合には、最小制御ヨーモーメントMsmに基づいて車両のヨーモーメントを制御する。従って、基準目標ヨーモーメントM1が最小目標ヨーモーメントMmin以下であったとしても、最小制御ヨーモーメントMsmに沿って車両に付与するヨーモーメントが増大する。この結果、車両の逸脱が防止できる。
すなわち、図13から分かるように、算出した基準目標ヨーモーメントM1が最小目標ヨーモーメントMmin以下であっても、最小制御ヨーモーメントMsmは最小目標ヨーモーメントMmin以下の初期値Msm0から時間と共に増大して最小目標ヨーモーメントMminより大きい値となる。これによって、全体としてみれば、算出した基準目標ヨーモーメントM1よりも大きな最小制御ヨーモーメントMsmに増大補正して逸脱の抑制が行われる。また、最小制御ヨーモーメントMsmの初期値Msm0は、最小目標ヨーモーメントMmin以下の値として、制御開始時の過大な車両挙動を抑えている。
この場合には、乗員に対する逸脱可能性の報知効果を高めることはできるものの、制御開始時に一気にヨーレイトが増大している。このため、制御開始時に過大な車両挙動となるおそれがある。
8 制駆動力コントロールユニット
12 駆動トルクコントロールユニット
Dout 逸脱方向
Fgs 減速制御作動判断フラグ
Fout 逸脱判断フラグ
M1 基準目標ヨーモーメント
M2 補正目標ヨーモーメント
Mmin 最小目標ヨーモーメント(初期閾値)
Msm 最小制御ヨーモーメント
Msm0 最小制御ヨーモーメントの初期値
Ms 目標ヨーモーメント
Ti タイマー
XL 逸脱傾向判定用閾値(横変位限界距離)
Claims (10)
- 走行車線に対する車両の逸脱傾向に基づき、車両に付与するヨーモーメントを算出するヨーモーメント算出手段と、
上記ヨーモーメント算出手段が算出したヨーモーメントに応じた目標ヨーモーメントを目標値としてヨーモーメントを車両に付与することで、走行車線に対する車両の逸脱傾向を抑制する逸脱抑制制御手段と、を備え、
上記ヨーモーメント算出手段が算出したヨーモーメントが所定閾値以下と判定すると、上記目標ヨーモーメントを、上記所定閾値未満の値から上記所定閾値を越える値となるまで、時間の経過と共に増大させる制御モーメント補正手段を備えることを特徴とする車線逸脱防止装置。 - 制御モーメント補正手段は、
初期値が上記所定閾値未満の値であって且つ上記所定閾値を越える値まで、時間の経過と共に増加する最小制御ヨーモーメントを設定し、
上記ヨーモーメント算出手段が算出したヨーモーメントが所定閾値以下の場合には、上記最小制御ヨーモーメントを上記目標ヨーモーメントとすることを特徴とする請求項1に記載した車線逸脱防止装置。 - 上記ヨーモーメント算出手段が算出したヨーモーメントが上記所定閾値を越えた場合には、
上記ヨーモーメント算出手段が算出したヨーモーメントと、上記最小制御ヨーモーメントとのうちの大きい値を、上記目標ヨーモーメントとすることを特徴とする請求項2に記載した車線逸脱防止装置。 - 上記最小制御ヨーモーメントが上記所定閾値を越えた場合には、
上記ヨーモーメント算出手段が算出したヨーモーメントと、上記最小制御ヨーモーメントとのうちの大きい値を、上記目標ヨーモーメントとすることを特徴とする請求項2に記載した車線逸脱防止装置。 - 上記最小制御ヨーモーメントの初期値は、その値を目標ヨーモーメントとしたときに実際に車両に発生するヨーモーメントが上記所定の閾値以下となるように定めた値であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載した車線逸脱防止装置。
- 上記最小制御ヨーモーメントを、路面の凹凸度合いが大きくなる程大きな値に補正することを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載した車線逸脱防止装置。
- 上記最小制御ヨーモーメントは、時間の経過と共に増大の割合を大きくすることを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載した車線逸脱防止装置。
- 上記最小制御ヨーモーメントの最大値を、上記所定閾値より大きい所定の値以下に制限することを特徴とする請求項2〜請求項7のいずれか1項に記載した車線逸脱防止装置。
- 走行車線に対する車両の逸脱傾向に基づき算出したヨーモーメントに応じた目標ヨーモーメントを目標値としてヨーモーメントを車両に付与することで、走行車線に対する車両の逸脱傾向を抑制する際に、上記逸脱傾向に基づき算出したヨーモーメントが所定閾値以下と判定すると、上記目標ヨーモーメントを、上記所定閾値未満の値から上記所定閾値を越える値となるまで、時間の経過と共に増大させることを特徴とする車線逸脱防止方法。
- 初期値が上記所定閾値未満の値であって且つ上記所定閾値を越える値まで、時間の経過と共に増加する最小制御ヨーモーメントを設定し、
上記逸脱傾向に基づき算出したヨーモーメントが所定閾値以下の場合には、上記最小制御ヨーモーメントを上記目標ヨーモーメントとし、
上記逸脱傾向に基づき算出したヨーモーメントが所定閾値を越えた場合には、上記逸脱傾向に基づき算出したヨーモーメントと上記最小制御ヨーモーメントとのうちの大きい値を、上記目標ヨーモーメントとすることを特徴とする請求項9に記載した車線逸脱防止方法。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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