JP5130013B2 - 車両用シートのパワースライド装置 - Google Patents
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Description
特許文献1のパワースライド装置は、車両床面に固定した前後方向に延びるロアレール1と、シートを支持すると共にロアレール1に対して前後方向にスライド可能なアッパレール2と、ロアレール1の底面に固定したナット部材32と、アッパレール2に該アッパレール2の長手方向に相対移動不能かつ自身の軸線回りに回転可能として設けた、ナット部材32の貫通雌ねじ孔と螺合するスクリュシャフト31と、ギヤ機構を介してスクリュシャフト31に回転力を付与するモータと、を具備している。
このパワースライド装置では、上記モータを作動させるとスクリュシャフト31が自身の軸線回りに回転し、該スクリュシャフト31がロアレール1と一体化しているナット部材32に対して自身の軸線方向に相対移動する。すると、アッパレール2と一体化しているシートがアッパレール2及びスクリュシャフト31と一緒にロアレール1に対して前方または後方に相対スライドする。
即ち、特許文献1の図2に示されたように、一般的にパワースライド装置においてはスクリューシャフトからアッパレールまでの上下方向距離よりスクリューシャフトからロアレールまでの上下方向距離が長い。衝突による衝撃力が大きい場合、スクリュシャフトは周辺の部材に接触するまで座屈する。そのため、仮にスクリュシャフトが下方に座屈した場合には、スクリュシャフトはロアレールに接触するまで大きく座屈してしまう。これに対して、スクリュシャフトが上方に座屈した場合には、僅かに座屈した段階でスクリュシャフトがアッパレールに接触し、スクリュシャフトのそれ以上の座屈が規制されるので、下方に座屈した場合に比べてスクリュシャフトの座屈量が抑えられる。
しかし、従来のパワースライド装置においては車両の後突時におけるスクリュシャフトの座屈方向を上方に規制することができなかった。
しかし、本発明では上記衝突によりロアレールがアッパレールに対して前方に相対スライドしようとし、その結果、結合手段に所定値を超える前向きの荷重が掛かると、結合手段の機能によってスクリューロッドがアッパレールに対して前方に相対スライドするので、座屈方向規制部材の後端傾斜面にスクリューロッドに設けた被押圧部材が衝突する。このときに座屈方向規制部材の後端傾斜面から被押圧部材に掛かる後ろ斜め上向きの力は、軸方向後ろ向きの圧縮荷重である第1分力と、上向きの力からなる第2分力とからなるので、この第2分力の作用によってスクリューロッドの座屈方向が上方に規制される。
このようにスクリューロッドが上方に座屈すると、スクリューロッドはスクリューロッドからあまり距離が離れていない(ロアレールよりも近い)アッパレールに接触し、接触することによりそれ以上の座屈が規制されるので、本発明によればスクリューロッドの座屈量を小さく抑えることができる。
車両内の床面(図示略)上には対をなす前側ブラケット11と後側ブラケット12が左右に並べて固定してある。左右の前側ブラケット11及び後側ブラケット12の上面には、左右一対のロアレール13の下面の前端部と後端部がそれぞれリベットR1、リベットR2によって固定してある。
図1に示すようにロアレール13は前後方向に直線的に延びる金属製のチャンネル材であり、その左右両側壁の上端からは水平な上片14が内向きに突出しており、左右の上片14の対向縁部からはそれぞれ垂下片15が下向きに突出している。
左右のロアレール13には、前後方向に延びる金属製のチャンネル材である左右一対のアッパレール17がそれぞれスライド可能に嵌合している。アッパレール17は断面下向きU字形をなす本体部18と、本体部18の左右両側部から一旦外側に延びた後に上方に延びる上向き嵌合片19と、を有している。アッパレール17は、その左右の上向き嵌合片19がロアレール13の側壁と垂下片15の間の空間内に位置し、かつその本体部18がロアレール13の左右の垂下片15の間に位置する状態で対応するロアレール13にスライド自在に嵌合している。さらに、左右のアッパレール17の上面にはそれぞれシート用ブラケット20が複数のボルトとナットにより固定してあり、左右のシート用ブラケット20には図示を省略したシートの下面の左側部と右側部がそれぞれ固定してある。
金属製ケース26の上部には該金属製ケース26を前後方向に貫通する断面略円形の貫通孔27が形成してある。貫通孔27の周面には貫通孔27の前端から後方に向かって延びるねじ溝28が切削加工により形成してあり、ねじ溝28を形成していない部分はねじ溝28より内周側に突出した環状突部29となっている。
樹脂製ナット32はアウトサート成形によって金属製ケース26のねじ溝28に一体成形した筒状部材であり、樹脂製ナット32の内周面は雌ねじ孔33となっている。さらに、樹脂製ナット32の後端面は環状突部29の前端面に接触しており、樹脂製ナット32の前端位置は金属製ケース26の前端位置と一致している。
このような構造のナットユニット25は、ロアレール13の底面に形成した孔を貫通した前後一対のボルトB1を金属製ケース26の下面に形成した雌ねじ孔34に螺合することによりロアレール13の底面に固定してある。
左右のスクリューロッド35の後端軸受部36は、左右のアッパレール17の後端部に固定した後端軸受部材40の軸受用凹部41に、スクリューロッド35の軸線回りに相対回転可能かつ該軸線方向に相対スライド可能として軸受けしてある。さらに、スクリューロッド35のナット螺合用雄ねじ部38の前端部及び前端部近傍には、前後一対のナットN1とナット(被押圧部材)N2が螺合してある。ナットN1及びナットN2は、かしめることによりスクリューロッド35に対して固定してある。
さらに、左右のスクリューロッド35のナット螺合用雄ねじ部38には、ナットユニット25の後方に位置するナットNSが螺合してある。このナットNSは、かしめることによりナット螺合用雄ねじ部38に固定してある。
左右のスクリューロッド35の前端部37には、前後方向に延びる軸線を有する樹脂製のウォームホイル45が固着してある。このウォームホイル45は、金属製のギヤボックス50に形成した前後方向に延びるウォームホイル収納孔52に回転可能かつスライド不能として収納してある。
左側のギヤボックス50の右側面には左側に直線的に延びるウォーム収納凹部53が凹設してあり、右側のギヤボックス50の左側面には右側に直線的に延びるウォーム収納凹部53(図示略)が凹設してある。左右のウォーム収納凹部53には、左右方向に延びる軸線を有する樹脂製のウォーム55が相対回転可能かつ相対スライド不能として収納してあり、左右のギヤボックス50内において各ウォームホイル45とウォーム55が互いに噛合している。
さらに、左右の連結部材60は左右方向に延びる金属製の連結ブラケット70によって互いに連結されている。この連結ブラケット70の左右両端部には、垂直片71と、垂直片71の上端から水平に延出する水平片72と、を設けてある。左側の垂直片71にはモータ(駆動手段)80がねじ止めしてある。さらに、左右の垂直片71の外側面には両端が開口する筒状突部73が突設してあり、左右の水平片72には、切欠74と円形貫通孔75(図2参照)が形成してある。
連結ブラケット70の左右の水平片72の下面には左右の連結部材60の水平片62の上面がそれぞれ当接しており、左右一対のボルトB2を水平片62の貫通孔(図示略)及び水平片72の切欠74に下方から上方に通し、さらに水平片72の上方に位置するナットN3をボルトB2に螺合させ、該ナットN3を水平片72の上面に当接させている。さらに、連結部材60の上面に突設した嵌合突起64を水平片72の円形貫通孔75に嵌合させることにより、左右の連結部材60を連結ブラケット70の左右の水平片72にそれぞれ固定している。
フレキシブルシャフトFS1の左端部は左側の垂直片71の筒状突部73を通って左側のギヤボックス50のウォーム収納凹部53内に進入し、ウォーム収納凹部53内においてウォーム55に同軸的に固着している。一方、フレキシブルシャフトFS2の右端部は右側の垂直片71の筒状突部73を通って右側のギヤボックス50のウォーム収納凹部53内に進入し、ウォーム収納凹部53内においてウォーム55に同軸的に固着している。さらに、フレキシブルシャフトFS2の周囲には、その左端部をモータ80の右端面に固定すると共にその右端部を右側の垂直片71の左側面に固定した可撓性材料からなるパイプ状カバー部材67が位置している。
そして、左側の座屈方向規制部材90のボルト挿通用切欠95を下方から上方に向かって貫通するボルトB3を左右のアッパレール17の本体部18の前端部に穿設した円形孔23及びシート用ブラケット20の底板部の前端部に形成した貫通孔に通し、さらにシート用ブラケット20の底板部の上方に位置するナットN4をボルトB3に螺合させることにより、左右の座屈方向規制部材90、アッパレール17及びシート用ブラケット20を互いに固定している。
図2及び図5に示すように、このようにアッパレール17と一体化している座屈方向規制部材90の前後長(底板部91の前後長)は、ナットN1とナットN2の前後間距離より短い。
車両の室内(例えば、スライドさせようとするシートの側面)には、OFF位置(中立位置)から第1ON位置(前方スライド位置)と第2ON位置(後方スライド位置)とに移動可能なスライドスイッチ(図示略)が設けてある。例えば、OFF位置に位置しているスライドスイッチを第1ON位置(前方スライド位置)に移動させると、図示を省略したバッテリからモータ80に電流が流れモータ80が正転するので、モータ80の回転出力軸と一体化しているフレキシブルシャフトFS1及びフレキシブルシャフトFS2が図2において時計方向に回転する。すると、左右のギヤボックス50内においてウォーム55が同方向に回転し、さらにウォーム55と噛合しているウォームホイル45及びスクリューロッド35が前方から見て反時計方向に回転する。このようにスクリューロッド35が回転すると、スクリューロッド35がナットユニット25(樹脂製ナット32及び雌ねじ孔33)に対して回転しながら前方に移動するので、ウォームホイル45、ギヤボックス50、連結部材60、座屈方向規制部材90及びアッパレール17がスクリューロッド35と一緒に左右のロアレール13(車両床面)に対して前方に移動する。アッパレール17及びシートは、ナットNSが金属製ケース26の後端面に当接するまでロアレール13に対して前方にスライド可能である。スライドスイッチを第1ON位置からOFF位置に復帰させれば、バッテリからモータ80への電流の供給が遮断されるので、アッパレール17及びシートのスライド動作は停止する。
一方、スライドスイッチを第2ON位置側に移動させると、バッテリからモータ80に電流が流れモータ80が逆転するので、ウォームホイル45及びスクリューロッド35が前方から見て時計方向に回転する。すると、スクリューロッド35がナットユニット25(樹脂製ナット32及び雌ねじ孔33)に対して回転しながら後方に移動するので、ウォームホイル45、ギヤボックス50、連結部材60、座屈方向規制部材90及びアッパレール17がスクリューロッド35と一緒に後方にスライドする。アッパレール17及びシートは、ナットN2が金属製ケース26の前端面に当接するまでロアレール13に対して後方にスライド可能である。スライドスイッチを第2ON位置からOFF位置に復帰させれば、バッテリからモータ80への電流の供給が遮断されるので、アッパレール17及びシートはスライド動作を停止する。
即ち、ナットN2がナットユニット25から前方に十分離れた状態においてパワースライド装置10を搭載した車両に別の車両が後方から衝突(後突)すると、その衝撃による前向きの外力が前側ブラケット11及び後側ブラケット12を介して左右のロアレール13に伝わるので、ロアレール13及びスクリューロッド35にアッパレール17に対して前方に相対スライドしようとする加速度が生じる。すると、スクリューロッド35との相対スライドが規制されているギヤボックス50からアッパレール17及び座屈方向規制部材90と一体化している連結部材60に連結ピンPを介して前向きの荷重が伝わる。そして、このときに連結部材60に伝わる荷重が連結部材60の形状や材質によって定まる所定値を超えると(モータ80の動力によってスクリューロッド35が前方に移動するときは当該所定値を超えることはない)、連結ピンPがギヤボックス50に対して図2の時計方向に回転し、かつ左右の側方垂下片63が変形するので(衝突による衝撃が大きい場合には連結部材60の他の部分、例えば垂直片61も変形する)、左右のスクリューロッド35と一体化している左右のナットN2が左右のアッパレール17と一体化している左右の座屈方向規制部材90の傾斜後壁部92に衝突する。
図5に示すように、このときに座屈方向規制部材90の傾斜後壁部92からナットN2に掛かる後ろ斜め上向きの力Fは、スクリューロッド35の軸方向後ろ向きの圧縮荷重である第1分力F1と、上向きの第2分力F2とからなるものなので、第1分力F1がスクリューロッド35の座屈荷重を超えている場合は第2分力F2の作用によってスクリューロッド35が上方に座屈する。このようにスクリューロッド35が上方に座屈すると、スクリューロッド35がアッパレール17の本体部18の下面に接触し、接触することによりスクリューロッド35のそれ以上の座屈が規制される。本実施形態においては、スクリューロッド35の上面から本体部18の下面までの距離が短い(スクリューロッド35の下面からロアレール13の底面までの距離より短い)ので、車両の後突時に生じるスクリューロッド35の座屈量を小さく抑えることが可能である。
例えば、上記実施形態ではスクリューロッド35に被押圧部材であるナットN2を螺合させているが、スクリューロッド35に被押圧部材を一体的に成形してもよい。
11 前側ブラケット
12 後側ブラケット
13 ロアレール
14 上片
15 垂下片
17 アッパレール
18 本体部
19 上向き嵌合片
20 シート用ブラケット
23 円形孔
25 ナットユニット
26 金属製ケース
27 貫通孔
28 ねじ溝
29 環状突部
32 樹脂製ナット(ナット部材)
33 雌ねじ孔
34 雌ねじ孔
35 スクリューロッド
36 後端軸受部
37 前端部
38 ナット螺合用雄ねじ部
40 後端軸受部材
41 軸受用凹部
45 ウォームホイル
50 ギヤボックス
52 ウォームホイル収納孔
53 ウォーム収納凹部
55 ウォーム
60 連結部材(結合手段)
61 垂直片
62 水平片
63 側方垂下片
64 嵌合突起
67 パイプ状カバー部材
70 連結ブラケット
71 垂直片
72 水平片
73 筒状突部
74 切欠
75 円形貫通孔
80 モータ(駆動手段)
90 座屈方向規制部材
91 底板部
92 傾斜後壁部(後端傾斜面)
93 天井部
94 スクリューロッド挿通孔
95 ボルト挿通用切欠
B1 ボルト
B2 ボルト
FS1 FS2 フレキシブルシャフト
N1 N4 ナット
N2 ナット(被押圧部材)
N3 ナット
P 連結ピン
R1 R2 リベット
Claims (3)
- 車両内の床面に固定した前後方向に延びるロアレールと、
シートを支持し、かつ上記ロアレールに対して該ロアレールの長手方向にスライド可能なアッパレールと、
上記ロアレールに固定した、貫通孔からなる雌ねじ孔を有するナット部材と、
駆動手段の動力によって上記ロアレールと平行な自身の軸線回りに回転する、ナット部材の上記雌ねじ孔と螺合するスクリューロッドと、
上記アッパレールと上記スクリューロッドを結合し、上記駆動手段の動力によって上記スクリューロッドが回転したときは上記アッパレールを該スクリューロッドと一緒にスライドさせ、かつ、上記ロアレールが上記アッパレールに対して前方に相対スライドしようとすることにより所定値を超える前向きの荷重を受けたときは上記ロアレール及びスクリューロッドが上記アッパレールに対して前方に相対スライドするのを許容する結合手段と、
上記スクリューロッドと上記軸線方向に一緒に移動する被押圧部材と、
上記被押圧部材の前方において上記アッパレールと一緒にスライドし、かつ上記被押圧部材と上記軸線方向に対向する後端部に下方から上方に向かうに連れて前方に傾斜する後端傾斜面を有する座屈方向規制部材と、を備えることを特徴とする車両用シートのパワースライド装置。 - 請求項1記載の車両用シートのパワースライド装置において、
上記結合手段が、
上記スクリューロッドの前端部に固定したウォームホイル、及び該ウォームホイルと噛合し上記駆動手段の駆動力によって回転するウォームを収納するギヤボックスと、上記座屈方向規制部材とを結合し、かつ、上記所定値を超える前向きの荷重を受けたときに変形して上記ギヤボックスを上記座屈方向規制部材に対して前方に相対移動させる連結部材と、を備えている車両用シートのパワースライド装置。 - 請求項1または2記載の車両用シートのパワースライド装置において、
上記被押圧部材が、上記スクリューロッドに螺合するナットであり、
上記座屈方向規制部材が、上記スクリューロッドが貫通するスクリューロッド挿通孔を具備する金属部材である車両用シートのパワースライド装置。
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