JP5127021B2 - 調湿性塗料 - Google Patents

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Description

本発明は、調湿性塗料に関するものである。詳しくは、美術館・博物館の収蔵庫や展示室および展示ケース等の内装材に使用される、有害ガス吸着性能と調湿性能を具備した調湿性塗料に関するものである。
建築構造物の内壁面等に適用する調湿性塗料と塗料組成物、およびその工法等に関する従来の技術は、次に示した特許文献1〜5に開示されている。即ち、特許文献1には、特定粒子径の合成樹脂エマルジョンと珪藻土を必須成分とする塗料が開示されており、珪藻土を高比率に含有させることにより吸放湿性能を得ている。また、特許文献2では、合成樹脂エマルジョン、珪藻土、及び高吸水ポリマーを含有する高顔料体積濃度の塗料が開示されており、高比率の珪藻土に対して低比率の高吸水ポリマーを含有させることによって吸放湿性能を発揮させている。しかしながら、これらの両技術とも、珪藻土の吸放湿性を活かしたものであり、特定した有害ガスを積極的に吸着して除去するためのものではなかった。また、特許文献3に開示されている脱臭機能も、本来珪藻土が具備している性能を示したものにすぎない。さらに、特許文献4、5には、吸放湿性合成樹脂微粒子または吸放湿性樹脂エマルジョンを主成分とする吸放湿性塗料等が開示されているが、有害ガスを吸着して除去するためのものではなかった。
近年、美術館や博物館等において保存・展示環境を改善し、収蔵品の安全性を高めたいとの認識が一層強まってきているのは周知の事実である。特に新設、若しくは増改築した直後に、打設した新しいコンクリートの躯体や内装材から発生するアンモニアを主体とするアルカリ性物質と放湿される水分によって、収蔵品が変色、変形、変質、劣化してしまうことが大きな問題点になっている。また、収蔵品の収蔵や展示期間中における収蔵品自体からの有害ガスの発生と収蔵扉からの進入による庫内の空気質汚染、展示ケース材料や館内空気流入によるケース内の空気質汚染に対する対策は、漸く着手され始めた段階である。さらに、有害ガスの問題は、保存環境以外にも人に対する生活環境の悪化の問題としても重要視されている。
従来、前述したような問題を解決するめに、新設あるいは増改築後の美術館や博物館では、竣工直後の収蔵品の搬入や展示を避け、館内の有害ガス濃度、空気質pH、湿度等が一定のレベル以下になるまで空のまま放置する、いわゆる「枯らし」が行われてきた。つまり、半年から数年にも及ぶコンクリートの乾燥期間を置き、この間に室内の換気・除湿を強制的に行っているのが一般的であった。また、開館後も空調設備に取り付けられた吸着フィルターによって、アンモニア等の有害ガスを除去するという方法が試みられてきた。しかし、工期を延長してまでコンクリートの十分な乾燥期間を確保することは困難であり、また、コンクリートから発生するアルカリ性物質を低濃度に抑えることは難しく根本的な解決には至らず、短期間で保存・展示環境を改善して早期にかつ安全に開館できる方法が求められてきた。
特許文献6には、コンクリートから発生するアルカリ性物質を遮断するための吸着材を設けた建築構造が提案されている。この方法を採用すれば、短期間で収蔵庫内部のアンモンア濃度を一定のレベル以下に低減することが可能となり、施工後の「枯らし」期間を大幅に短縮でき早期の開館が可能となったが、コンクリートから放湿された水分による湿度を安全の範囲に調節するには不十分であった。
一方、収蔵庫内部の湿度を調節するための基材として、古来より調湿性能の高い桐、杉または檜等の木材が使用され、近年に至って不燃性の珪酸カルシウム板、天然の珪藻土やゼオライト板などが使用されるようになった。しかしながら、前記の木材には有害ガス吸着性能は殆ど無く、吸放湿量も少ないことに加え、短時間内における吸放湿速度が遅いことの欠点を有していた。また、後記の珪酸カルシウム板等では幾つかの有害ガス吸着性能は有しているが、温度の上昇と共に一度吸着した有害ガスを再び脱着する危険性があり、確実に有害ガスを除去する材料としては問題を有していた。さらに、吸放湿量は多いが短時間内における吸放湿速度が非常に遅いため、調湿性能の面からの改善が求められていた。
本発明者は、前記の問題点を解決するために、吸放湿量が多く、短時間内における吸放湿速度が速く、かつアンモニアを吸着して脱着しないアンモニア吸着シート(特許文献7)の提案を行った。さらには、収蔵庫や展示室等に、前記アンモニア吸着シートと珪酸カルシウム板とを積層した内装材を施工することにより、室内の有害ガスの除去と適切な湿度調節を満たす性能を得るに至った。
しかしながら、現時点で実用上幾つかの問題点があることが判明した。即ち、(1)アンモニア吸着シートと珪酸カルシウム板を積層加工する際に生じる傷、汚れの発生とその対策、
(2)積層加工後、建設現場に運搬する際に生じる傷、汚れの発生とその対策、(3)収蔵庫等に内装する際に生じる傷、汚れの発生とその対策、
(4)前記の積層内装材を使用しないで、展示期間中のみ展示ケース内を安全な環境に保つための対策、
(5)経費節減のため前記の積層内装材を使用しないで、有害ガス吸着性能と調湿性能を付与しながら収蔵庫等のリフォームを行う時の対策、
(6)従来の調湿性塗料にはない、請求項8で特定したような有害ガスを吸着し脱着しない機能を付与すること、などの諸問題に対処する必要性が生じたのである。
特開昭57−151661号 特開昭62−74966号 特開平11−141091号 特開2002−80798号 特開2004−307752号 特許第2897609号 特開2005−319367号
本発明は、具体的には前述した1〜5の5項目の問題点を解決し、好ましくは6項目の問題点をも解決し、特定した有害ガスを吸着して脱着しない機能を有する調湿性塗料を提供するものである。また、調湿性能としては、密閉可能な1mの蓋付き鋼製容器の内面に、気積率A/V=1〜6m−1、塗布量0.15〜4.8kg/mの範囲内で調湿性塗料を塗布し、温度22℃、相対湿度60%の雰囲気中で開封したまま容器内の温湿度を一定にしたのち密閉し、密閉容器の外部の温度差を28℃(22→40→22→12→22℃)の範囲で増減変化させ、到達した容器内の各温度における最大に増減した際の平衡湿度と、相対湿度60%との差の合計(平衡湿度増減幅)を測定したとき、前記平衡湿度変動幅を相対湿度で20%以下に調湿できる調湿性塗料を提供するものである。
即ち、本発明の請求項1に係る発明は、ガス吸着性粉体5〜40質量部と吸放湿性無機粉体60〜95質量部とを主成分とした粉体100質量部に対して、接着剤を5〜30質量部配合し、塗料濃度を35〜55質量%の範囲に調整したことを特徴とする調湿性塗料である。
本発明の請求項2に係る発明は、吸放湿性無機粉体が、シリカゲルであることを特徴とする請求項1に記載の調湿性塗料である。
本発明の請求項3に係る発明は、ガス吸着性粉体が、疎水性ガス吸着性粉体および/または親水性ガス吸着性粉体から選択された1種または2種以上混合されていることを特徴とする請求項1、または2に記載の調湿性塗料である。
本発明の請求項4に係る発明は、疎水性ガス吸着性粉体が、平均粒子径50μm以下の粉末活性炭であることを特徴とする請求項3に記載の調湿性塗料である。
本発明の請求項5に係る発明は、親水性ガス吸着性粉体が、二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物、若しくは二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物、若しくは消石灰から選択された任意の1種類であることを特徴とする請求項3に記載の調湿性塗料である。
本発明の請求項6に係る発明は、親水性ガス吸着性粉体が、二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物、若しくは二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物、若しくは消石灰から選択された任意の2種類であることを特徴とする請求項3に記載の調湿性塗料である。
Figure 0005127021
本発明の請求項7に係る発明は、親水性ガス吸着性粉体が、二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物、若しくは二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物、若しくは消石灰の混合物であることを特徴とする請求項3に記載の調湿性塗料である。
本発明の請求項8に係る発明は、有害ガスとして、アンモニア、ホルムアルデヒド、酢酸、硫化水素、二酸化硫黄、二酸化窒素、二酸化炭素を吸着し、脱着しないことが可能な請求項1〜請求項7に記載の調湿性塗料である。
本発明の請求項9に係る発明は、密閉可能な1mの蓋付き鋼製容器の内面に、気積率A/V=1〜6m−1、塗布量0.15〜4.8kg/m範囲内で調湿性塗料を塗布し、温度22℃、相対湿度60%の雰囲気中で開封したまま容器内の温湿度を一定にしたのち密閉し、密閉容器の外部の温度差を28℃(22→40→22→12→22℃)の範囲で増減変化させ、到達した容器内の各温度における最大に増減した際の平衡湿度と、相対湿度60%との差の合計(平衡湿度増減幅)を、相対湿度で20%以内に調湿することを可能にすることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の調湿性塗料である。
本発明によれば、内装材の傷や汚れ箇所の補修のため、或いは各種の展示ケース材料や壁装材料の表面に塗布するため、有害ガス吸着性能と調湿性能を具備した調湿性塗料の使用によって、前記載の両性能を損なうことなく、望ましい保存・展示環境を提供することができる。
本発明では、前述した諸問題を解決するために、調湿性能を付与する粉体に加え、有害ガス吸着性能に優れた粉体を見出し、これらを使用して塗料とした。また、内装材として固定され長期的に使用する場合は、吸着した有害ガスを脱着しないものとし、展示ケースとして展示期間中のみ使用する場合は、有害ガスの吸着を重視し特に脱着には拘らないもので塗料化を図った。
本発明者は、優れた有害ガス吸着性能を有する粉体を見出すために、各種の粉体を以下に述べるような2つのグループに分けて検討を行った。また有害ガスは、主として文化財に与える影響の大きいアンモニア、ホルムアルデヒド、酢酸、硫化水素、二酸化硫黄、二酸化窒素、二酸化炭素の7種類を対象とした。そのために、製紙用繊維を主体として製造した坪量60g/mの木材パルプ紙の片面に、各種のガス吸着性粉体100質量部と接着剤15質量部を主体とする塗料を25g/m塗工して、坪量が85g/mの塗工紙を得た。次いでガス吸着性能評価として、各種の塗工紙を10×10cm角に裁断して評価用のサンプルとした。さらにブランクとして前記した坪量60g/mの木材パルプ紙も同じように用意した。これらのサンプルを温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置して前処理し、次いでこのサンプルをテドラーバッグに入れて脱気し、既知の濃度に調製した各種のガス2リットルを注入して直ちに検知管(ガステック(株)製造)を使用してその濃度を温度23℃の条件下で測定し、これを初期濃度とした。温度を23℃のまま5時間放置した後で、再度テドラーバッグ内のガス濃度を測定した。その後直ちに、40℃に設定したオーブンに入れ、1時間経過した後テドラーバッグ内のガス濃度を測定し脱着の有無を確認した。各サンプルのガス吸着性能は、初期濃度から残存濃度を差し引きして各塗工紙の吸着量(ppm)とした。各種のガスは、既知濃度として60〜100ppmの範囲に調整し使用した。
ガス吸着性粉体の第1のグループは疎水性ガス吸着性粉体で、ハイシリカゼオライト(SiO/Alの比が5以上のもので、この比が高い程疎水性を示す)や活性炭等の吸着剤である。活性炭は、その形状から大別すると粒状活性炭と粉末活性炭の2つに分類できる。本発明においては、吸放湿性無機粉体とガス吸着性粉体とを主成分とした粉体に接着剤を添加した塗料を支持体表面に形成させるため、平均粒子径が50μm以下の粉末活性炭を使用することが好ましい。その理由は、これよりも平均粒子径が大きいと粒子の凹凸によって塗膜表面が荒れることと、活性炭の比表面積が小さくなるので有害ガス吸着性能が低下してくる傾向があり好ましくないからである。また、平均粒子径が小さくなるほど比表面積が増大するので有害ガス吸着性能の向上効果としては好ましいが、小さくなるにつれてコストが高くなる傾向にあるので、平均粒子径としては3〜50μmの範囲のものが好ましい。
一般的に活性炭の原料としては木炭、木材、椰子殻、石炭、亜炭、瀝青炭、ピート等が使用される。使用される原料の違いにより、ガス吸着性能に影響を及ぼす平均細孔半径と細孔径分布が大きく異なるので、各種ガスへの吸着性能に差が生じてくるのが特徴である。平均細孔半径のピークが1.0nm付近に集中している椰子殻活性炭は、平均細孔半径が2.0〜3.5nmに分布している木質活性炭より平均細孔半径が遙かに小さいために、キシレン等の揮発性有機化合物(以下、「VOC」という)に対する吸着性能が優れていると言われている。従って本発明で使用する活性炭としては木質活性炭も使用できるが、椰子殻活性炭の方が好ましい。しかしながら、活性炭の吸着機構は分子間引力による物理的吸着が主であるため、脱着する危険性を有することを考慮しておく必要がある。また、特定のガスを吸着し脱着させないことを目的に、前記の粒状若しくは粉末状の活性炭を燐酸や炭酸カリウムなどで化学的に処理したり、銀等の金属類を添着させたりした特殊な機能性活性炭についても、平均粒子径や価格が適正なものであれば本発明に使用することは一向に差し支えない。
ガス吸着性粉体の第2のグループは親水性ガス吸着性粉体で、例えば二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物、二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物、シリカゲル、シリカアルミナ質ゲル状粘土、合成ゼオライト、天然ゼオライト、アルミナゲル、消石灰、珪藻土、珪藻頁岩、活性白土等の吸着剤である。これらの吸着剤は親水性であって、水のような極性分子を選択的に吸着するのが特徴であり、本発明で言う吸放湿性無機粉体に属するものが多い。そしてこれらの単独、あるいは2種類以上を併用することができ、それぞれのガス吸着性能を補填するために、前述した疎水性ガス吸着性粉体である活性炭の他、数種類の粉体を併用しても一向に構わない。本発明は、コンクリートや内装材等から発生するアンモニアや酢酸の除去が主目的である。しかし、同時に庫内の亜硫酸ガス等の大気汚染ガスも除去できれば更に有用なものとなる。また、新築した建物において、建材や家具から発散するVOC等の有害ガスも除去できれば、新築やリフォームされた住宅、あるいは保存施設にとって欠くべからざるものとなる。
表1に代表的な各種塗工紙の有害ガスに対する吸着性と脱着性を、以下の評価内容で示した。
◎:初期濃度に対して60%以上のガス吸着性能を示し、40℃に昇温してもガスを脱着(ガス濃度が増加しなかった)しなかったもの
○:初期濃度に対して60%以上のガス吸着性能を示したが、40℃に昇温するとガスを脱着(ガス濃度が増加した)したもの
×:初期濃度に対して60%未満のガス吸着性能しかなかったもの
(表1)
Figure 0005127021
なお、表中の(1)はシリカゲル、(2)は椰子殻活性炭、(3)は二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物、(4)は二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物、(5)は消石灰、(6)は木材パルプ紙を示している。
表1の結果から以下のことがわかった。
シリカゲルは、硫化水素と二酸化炭素以外の有害ガスを吸着するが、昇温によって脱着する危険性がある
椰子殻活性炭は、アンモニア、ホルムアルデヒド、硫化水素、二酸化炭素以外の有害ガスを吸着するが、昇温によって脱着する危険性がある
シリカゲルと椰子殻活性炭の酢酸に対する吸着は、塗工した木材パルプ紙の影響によると考えられる
二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物と二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物は、二酸化炭素以外の有害ガスを吸着し、昇温によって脱着する危険性がない
消石灰は、アンモニア以外の有害ガスを吸着し、昇温によって脱着する危険性がない
本発明者は、以上の検討結果から、親水性ガス吸着性粉体の内、二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物、二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物、消石灰が有害ガス吸着性に優れ、且つ脱着試験により一度吸着した有害ガスを脱着しない粉体であることを見出し、これらを吸放湿性無機粉体と混合し、接着剤を加え塗料として調製することを目指したのである。
二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物と二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物は、「セブントールN」と「ミズカナイトHP」の商品名で水澤化学工業(株)から市販されている。これらの親水性ガス吸着性粉体は、本発明が提案する全ての有害ガスに対して吸着性能を有している訳ではないので、併用する方が除去対象とする有害ガスが増えるので好ましい。
前記した親水性ガス吸着性粉体が、温度が上昇しても一度吸着した有害ガスを脱着しなかった理由は、これらの吸着剤が多孔質で比表面積が大きいことによる物理的なガス吸着だけでなく、以下に示すような化学反応に基づく化学吸着を主体としているからと考える。
二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物によるアンモニアの吸着機構は、吸着剤の表面に存在する活性水酸基とアンモニアとの化学反応に基づくものであり、この反応は不可逆反応であるためアンモニアは脱着しないと考える。反応機構は次式の通りである。
(1) M(四価金属)−OH+NHOH→M−O・NH+H
また、硫化水素もアンモニア同様化学吸着で固体化され、酢酸は水素結合により吸着するため、両者とも脱着することはないと考える。
次に、二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物によるアンモニアの吸着機構は、二酸化珪素(固体酸)による中和反応と酸化亜鉛による配位子交換反応の2つに分けることができ、この反応は不可逆反応であるためアンモニアは脱着しないと考える。アンモニアに対する中和反応は次式の通りである。
(1) NH+HO+−SiO(−)−→NH (+)SiO(−)+OH(−)
また配位子交換反応による吸着は、硫化水素、酢酸のような酸性ガスと酸化亜鉛成分とが次のような化学反応によるものと考えられる。
(2) HS+−ZnO−→ZnS+H
(3) 2CHCOOH+−ZnO−→Zn(OCOCH+H
また、消石灰による有害ガスとの反応は不可逆反応で次式の通りであるため、吸着した有害ガスは脱着しないと考える。
硫化水素(HS)は、消石灰(水酸化カルシウム)と反応して無臭の硫化物になる。
(1) Ca(OH)+HS→CaS+2H
ホルムアルデヒド(HCHO)は、消石灰と反応して無害なギ酸カルシウム(Ca(HCOO))になる。
(2) Ca(OH)+2HCHO→Ca(COOH)+2H
炭酸ガス(CO)は、消石灰に吸収され炭酸カルシウムになる。
(3) Ca(OH)+CO→CaCO+H
以上の他、消石灰は吸放湿性と防黴性も有るため、本発明には極めて有用な粉体となる。
本発明では、ガス吸着性粉体と吸放湿性無機粉体とを主成分とした粉体100質量部に
対して、前述した疎水性ガス吸着性粉体と親水性ガス吸着性粉体から選択された1種また
は2種以上の粉体を5〜40質量部配合する。5質量部以下だとガス吸着量が少なくなっ
て好ましくなく、40質量部以上だとガス吸着量がほぼ一定になるのでこれ以上の使用は
不要である。
本発明では、調湿性能を付与するために吸放湿性無機粉体を使用する。吸放湿性無機粉
体とは、珪藻土、珪藻頁岩、活性白土、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、シリカアル
ミナゲル、アルミナゲル、石灰、アロフェン、イモゴライト、軽石、シラスバルーン、パ
ーライト、バーミキュライト、ベントナイト、セピオライト、アルミノ珪酸マグネシウム
等の天然および合成の無機粉体である。また、無機質ではないが架橋アクリロニトリル系
重合体微粒子であって、残存ニトリル基の1mmol/g以上が塩型カルボキシル基に変
換された吸放湿性合成樹脂微粒子等も使用できる。無機粉体の吸放湿性能には、低湿度領
域で優れた吸放湿性を示すものと高湿度領域で優れた吸放湿性を示すものがある。また、
目的とする調湿条件に適応した調湿性能を付与する必要があるので、前記した無機粉体を
数種類併用することが望ましい。係る目的を達成するためには任意の着色塗料に調製でき
る白色粉体が好ましい。白色粉体の中ではシリカゲルが最適であり、低湿度領域で優れた
吸放湿性を示す平均細孔直径2nmのシリカゲルA型と、高湿度領域で優れた吸放湿性を
示す平均細孔直径8nmのシリカゲルB型を適宜併用することが特に好ましい。吸放湿性
無機粉体の使用量は、塗料中に使用される粉体100質量部の内、60〜95質量部を混
合することが好ましい。60質量部以下だと調湿性能が低下するため好ましくなく、95
質量部以上だとガス吸着性粉体の使用量が少なくなるので好ましくない。
前述した吸放湿性無機粉体は親水性ガス吸着性粉体に属するものも多く、種々の有害ガ
スを吸着する性質を有している。しかしながら、その吸着機構は主に物理的な吸着である
ため、温度の上昇と共に一度吸着した有害ガスを再び脱着する危険性はあるが、展示ケー
スとして展示期間中のみ使用する場合は、有害ガスの吸着を重視し特に脱着には拘らない
塗料材料として極めて有用である。本発明が特定した7種類の有害ガス以外には、アセト
アルデヒド、キシレン、オゾン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、トリメチルアミ
ン、n−吉草酸、メチルメルカプタン、酸化エチレン、酸化プロピレン、ヨウ化メチル、
塩素ガスなどが挙げられるが、これらの有害ガスを吸着するものは使用できる。
本発明は、前述したガス吸着性粉体と吸放湿性無機粉体のほか、接着剤を使用する。ま
た、本発明の効果を妨げない範囲で、体質顔料、無機充填材、亜麻仁油などの油、スサな
どの繊維、光触媒活性を有する無機酸化物、顔料、顔料分散剤、湿潤剤、消泡剤、凍結融
解安定剤、皮膜形成助剤、レオロジー調整剤、pH調整剤、イオン交換樹脂、界面活性剤、
可塑剤、減水剤、防腐剤、抗菌剤、流動化剤、防水剤、凝結剤又は凝結促進剤等を配合す
ることもできる。以下に、主な使用材料について述べる。
本発明で使用する接着剤は、スチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル・
ブタジエン系ラテックス、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エチレン酢酸ビニル樹脂エマル
ジョン、アクリルエマルジョン、塩化ビニルエマルジヨン、塩化ビニリデンエマルジョン、
およびこれらの共重合エマルジョン等、カゼイン、澱粉、PVA等々を適宜組み合わせて
使用する。また、前記載の吸放湿性合成樹脂微粒子のエマルジョンに接着剤を併用して使
用することもできる。接着剤の使用量は、吸放湿性無機粉体とガス吸着性粉体とを主成分
とした粉体100質量部に対して、5〜30質量部配合することが好ましい。5質量部以
下だと塗料の塗膜強度が弱くなり、30質量部以上だと有害ガス吸着量が低下するので好
ましくない。また、塗料濃度は35〜55質量%の範囲に調整することが好ましい。35
質量%以下だと塗料粘度が低くなり一回の塗布で一定以上の塗布量を得るのが困難となり、
55質量%以上だと吸放湿性無機粉体の保水量が多いため高濃度の塗料化が困難になるの
で好ましくない。
本発明で使用する無機質成分は、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム(軽質お
よび重質)、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、
シリカ等の体質顔料;珪砂、寒水砂、パーライト,バーミキュライト,シラス球及び汚泥
焼成骨材といった再生骨材等の無機充填材;酸化チタン(アナターゼ形)、酸化ルビジウ
ム、酸化コバルト、酸化セシウム、酸化クロム、酸化ロジウム、酸化バナジウム、酸化亜
鉛、酸化マンガン、酸化レニウム、酸化第二鉄、三酸化タングステン、酸化ジルコニウム、
酸化スズ、酸化ビスマス、酸化ルテニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化モリブデン、
酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化銅、酸化ニオブ及び酸化タンタル等の
光触媒活性を有する無機酸化物;酸化チタンや亜鉛華等の白色顔料;黒色酸化鉄(鉄黒)、
べんがら(赤色酸化鉄)、黄色酸化鉄(黄鉄)等の酸化鉄や群青等の酸化金属からなる着
色顔料;等を配合して使用できる。
本発明での顔料分散剤は、ポリアクリル酸ソーダ、アルキルナフタレンスルホン酸ソー
ダのホルマリン縮合物、ポリアクリル酸アンモニウム、低分子量スチレン−マレイン酸ア
ンモン共重合体、ポリオキシエチレンの脂肪酸エステルやアルキルフェノールエーテル、
スルホコハク酸誘導体、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドとのブロッ
クポリマー等があり、湿潤剤はグリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール等を
配合して使用できる。
また消泡剤には、通常塗料や塗材および建築用吹き付け材に配合して用いられるものの
中から適宜選択することができ、オクチルアルコール、グリコール誘導体、シクロヘキサ
ン、シリコン、プルロニック系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテ
ル等の各種の抑泡剤及び破泡剤を配合して使用できる。
さらに増粘剤には、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸/アクリ
ル酸エステル共重合体、アクリル酸ナトリウム/アクリルアミド共重合体、アクリルアミ
ド/2−アクリロイルアミノ−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体、デン
プン/アクリル酸/アクリル酸ナトリウムなどのアクリル系増粘剤;ヒドロキシエチルセ
ルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースな
どのセルロースエーテル系の増粘剤;カルボキシメチルセルロースまたはそのナトリウム
塩;酢酸ビニル/マレイン酸ソーダ共重合体;アルギン酸ソーダ、ポリエチレンオキサイ
ド等の有機系増粘剤、アルミニウムステアレート、ジンクステアレート、ベントナイト、
ケイ酸系増粘剤等の無機系増粘剤、並びに上記有機系増粘剤とベントナイト等の無機系増
粘剤との併用系等、適宜選択して使用することができる。
本発明による密閉系、あるいは準密閉系の収蔵庫や展示ケースの内部を調湿するための
調湿性能は、収蔵庫の容積(m)に対する調湿性塗料の塗布面積(m)の比率(気積率
A/V)と塗布量(kg/m)の違いによって左右される。気積率とは、密閉系、ある
いは準密閉系の収蔵庫の容積1mあたりに対する塗布面積(m)の比率であり、通常、
−1(m/m)の単位で表され、気積率A/V=6m−1は、立方体の内部6面体に全
て塗布したことを意味する。また本発明では、気積率A/V=1〜6m−1、塗布量を15
0〜800g/mの範囲で提案していることから、実際には0.15〜4.8kg/m
範囲内の塗料固形分質量の使用により湿度調節を行うことになる。塗布量が150g/m
未満だと吸放湿量と有害ガス吸着量が不足するため好ましくなく、800g/m以上だ
と吸放湿量と有害ガス吸着量は十分ではあるがコスト高になるので好ましくない。
図1は、密閉可能な1mの蓋付き鋼製容器の内面に、気積率A/V=0.5〜6m−1
塗料固形分質量の塗布量0.075〜4.8kg/m範囲内で、調湿性塗料を塗布し、
温度22℃、相対湿度60%の雰囲気中で開封したまま容器内の温湿度を一定にしたのち
密閉し、密閉容器の外部の温度差を28℃(22→40→22→12→22℃)の範囲で
増減変化させ、到達した容器内の各温度における最大に増減した平衡湿度と相対湿度6
0%との差の合計(平衡湿度増減幅)を測定したものである。調湿性塗料を全く使用しな
いと相対湿度55%の範囲で平衡湿度が変動するが、塗布量150g/mで6m塗布
(0.9kg/m)すると変動幅が相対湿度で4%、塗布量800g/mで4m以上
塗布(3.2kg/m)すると変動幅が相対湿度で0%となることを示している。
本発明では、前記平衡湿度変動幅を相対湿度で20%以下に調湿できる調湿性塗料を提
案するものである。図中、(1)は800g/m、(2)は150g/mの調湿性塗料
を塗布した場合である。気積率A/V=1m−1に対して調湿性塗料を800g/m塗布
した場合と、気積率A/V=5.5m−1に対して調湿性塗料を150g/m塗布した場
合には、両者ともほぼ同じ塗料固形分質量(0.8kg/m)を使用したことになり、
ほぼ平衡湿度変動幅は同じになる。また、塗料固形分質量が0.15kg/m以上の塗
布量(気積率で(1)は0.5m−1以上、(2)は1m−1以上)なら、相対湿度で20%
以下に調湿できることを図から読み取ることができる。なお、準密閉系では、気密性、換
気回数、温湿度変動幅、構造物の材質、耐用年数等を考慮して、前記載の密閉系の使用量
を基準に安全率を加算し、調湿効果を確認したうえで使用量を決定することになる。その
調湿効果によって、収蔵庫内部の湿度を調節することが可能となる。また、本発明の湿度
調節方法は、以上に記載された事例に限定されるものではない。
[実施例1]
シリカゲルA型30質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」、富士シリシア化学
(株)製)とシリカゲルB型(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学
(株)製)45質量部に、二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物
の複合物10質量部(商品名「セブントールN」、水澤化学工業(株)製)、消石灰5質
量部(商品名「カルテックLT」、鈴木工業(株)製)、ルチル型酸化チタン10質量部
(商品名「R−820」、石原産業(株)製)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤
(商品名「アロンT−50」、ポリアクリル酸ソーダ、東亜合成(株)製)を添加した水
100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペ
ラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」、日本アクリル化学(株)
製、46%)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗
料を調製した。この調湿性塗料の濃度は45質量%、粘度は850Pa・s(25℃、B
型粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[実施例2]
シリカゲルA型30質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型
(商品名「シリカゲルPA−270B」)45質量部に、二酸化珪素と酸化亜鉛および酸
化アルミニウムの複合物10質量部(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)
製)、消石灰5質量部(商品名「カルテックLT」)、ルチル型酸化チタン10質量部(商
品名「R−820」)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「アロンT−5
0」)を添加した水100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この
粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」)
と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料を調製した。
この調湿性塗料の濃度は46質量%、粘度は860Pa・s(25℃、B型粘度計、No.
6ロータで測定)であった。
[実施例3]
シリカゲルA型30質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型
(商品名「シリカゲルPA−270B」)45質量部に、消石灰10質量部(商品名「カ
ルテックLT」)、ルチル型酸化チタン10質量部(商品名「R−820」)、カオリン
クレー5質量部(商品名「白土一級」、金谷工業(株)製)を混合した後、0.5質量部
の顔料分散剤(商品名「アロンT−50」)を添加した水100質量部を加えディスパー
ジョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部
(商品名「プライマルB−15B」)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌
しながら添加し調湿性塗料を調製した。この調湿性塗料の濃度は44質量%、粘度は83
0Pa・s(25℃、B型粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[実施例4]
シリカゲルA型30質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型
(商品名「シリカゲルPA−270B」)45質量部に、二酸化珪素とチタンの水不溶性
リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物10質量部(商品名「セブントールN」)、消石
灰5質量部(商品名「カルテックLT」)、椰子殻活性炭10質量部(商品名「粉末活性
炭CB」、二村化学工業(株)製)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「ア
ロンT−50」)を添加した水100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を
得た。この粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−
15B」)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料
を調製した。この調湿性塗料の濃度は45質量%、粘度は870Pa・s(25℃、B型
粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[実施例5]
シリカゲルA型30質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型
(商品名「シリカゲルPA−270B」)45質量部に、二酸化珪素と酸化亜鉛および酸
化アルミニウムの複合物10質量部(商品名「ミズカナイトHP」)、消石灰5質量部(商
品名「カルテックLT」)、椰子殻活性炭10質量部(商品名「粉末活性炭CB」)を混
合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「アロンT−50」)を添加した水100
質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペラーに
移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」)と増粘剤(2質量%アルギ
ン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料を調製した。この調湿性塗料の濃度は
44質量%、粘度は855Pa・s(25℃、B型粘度計、No.6ロータで測定)であ
った。
[実施例6]
シリカゲルA型30質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型(商品名「シリカゲルPA−270B」)45質量部に、消石灰5質量部(商品名「カルテックLT」)、椰子殻活性炭10質量部(商品名「粉末活性炭CB」)、カオリンクレー10質量部(商品名「白土一級」)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「アロンT−50」)を添加した水100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料を調製した。この調湿性塗料の濃度は44質量%、粘度は840Pa・s(25℃、B型粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[実施例7]
シリカゲルA型30質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型(商品名「シリカゲルPA−270B」)45質量部に、二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物5質量部(商品名「セブントールN」)、二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物5質量部(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製)、消石灰5質量部(商品名「カルテックLT」、鈴木工業(株)製)、ルチル型酸化チタン10質量部(商品名「R−820」、石原産業(株)製)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「アロンT−50」、ポリアクリル酸ソーダ、東亜合成(株)製)を添加した水100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」、日本アクリル化学(株)製、46%)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料を調製した。この調湿性塗料の濃度は45質量%、粘度は850Pa・s(25℃、B型粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[実施例8]
シリカゲルA型30質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型(商品名「シリカゲルPA−270B」)45質量部に、二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物5質量部(商品名「セブントールN」)、二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物5質量部(商品名「ミズカナイトHP」、消石灰5質量部(商品名「カルテックLT」)、椰子殻活性炭10質量部(商品名「粉末活性炭CB」、二村化学工業(株)製)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「アロンT−50」)を添加した水100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料を調製した。この調湿性塗料の濃度は45質量%、粘度は870Pa・s(25℃、B型粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[比較例1]
ルチル型酸化チタン10質量部(商品名「R−820」)とカオリンクレー90質量部(商品名「白土一級」)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「アロンT−50」)を添加した水100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料を調製した。この調湿性塗料の濃度は47質量%、粘度は840Pa・s(25℃、B型粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[比較例2]
シリカゲルA型20質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型(商品名「シリカゲルPA−270B」)30質量部に、ルチル型酸化チタン10質量部(商品名「R−820」)、カオリンクレー40質量部(商品名「白土一級」)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「アロンT−50」)を添加した水100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料を調製した。この調湿性塗料の濃度は47質量%、粘度は860Pa・s(25℃、B型粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[比較例3]
シリカゲルA型36質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型(商品名「シリカゲルPA−270B」)54質量部に、ルチル型酸化チタン10質量部(商品名「R−820」)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「アロンT−50」)を添加した水100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料を調製した。この調湿性塗料の濃度は43質量%、粘度は830Pa・s(25℃、B型粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[比較例4]
シリカゲルA型30質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型(商品名「シリカゲルPA−270B」)45質量部に、二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物10質量部(商品名「セブントールN」)、ルチル型酸化チタン10質量部(商品名「R−820」)、カオリンクレー5質量部(商品名「白土一級」)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「アロンT−50」)を添加した水100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料を調製した。この調湿性塗料の濃度は46質量%、粘度は870Pa・s(25℃、B型粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[比較例5]
シリカゲルA型30質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型(商品名「シリカゲルPA−270B」)45質量部に、二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物10質量部(商品名「ミズカナイトHP」)、ルチル型酸化チタン10質量部(商品名「R−820」)、カオリンクレー5質量部(商品名「白土一級」)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「アロンT−50」)を添加した水100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料を調製した。この調湿性塗料の濃度は44質量%、粘度は850Pa・s(25℃、B型粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[比較例6]
シリカゲルA型30質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型(商品名「シリカゲルPA−270B」)45質量部に、椰子殻活性炭10質量部(商品名「粉末活性炭CB」)、カオリンクレー15質量部(商品名「白土一級」)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「アロンT−50」)を添加した水100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料を調製した。この調湿性塗料の濃度は43質量%、粘度は850Pa・s(25℃、B型粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[比較例7]
シリカゲルA型30質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型(商品名「シリカゲルPA−270B」)45質量部に、二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物10質量部(商品名「セブントールN」)、椰子殻活性炭10質量部(商品名「粉末活性炭CB」)、カオリンクレー5質量部(商品名「白土一級」)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「アロンT−50」)を添加した水100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料を調製した。この調湿性塗料の濃度は47質量%、粘度は840Pa・s(25℃、B型粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[比較例8]
シリカゲルA型30質量部(商品名「シリカゲルPA−270A」)とシリカゲルB型(商品名「シリカゲルPA−270B」)45質量部に、二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物10質量部(商品名「ミズカナイトHP」)、椰子殻活性炭10質量部(商品名「粉末活性炭CB」)、カオリンクレー5質量部(商品名「白土一級」)を混合した後、0.5質量部の顔料分散剤(商品名「アロンT−50」)を添加した水100質量部を加えディスパージョンミルで粉体分散液を得た。この粉体分散液をインペラーに移し、接着剤44質量部(商品名「プライマルB−15B」)と増粘剤(2質量%アルギン酸ソーダ溶液)を攪拌しながら添加し調湿性塗料を調製した。この調湿性塗料の濃度は45質量%、粘度は860Pa・s(25℃、B型粘度計、No.6ロータで測定)であった。
[調湿性能確認試験]
図2は、実施例1と比較例1、2で得られた調湿性塗料をそれぞれ150g/m塗布して気積率A/V=1m−1で使用し、調湿性能を確認したものである。なお、塗膜中のシリカゲル含有量は、実施例1は94g/m、比較例1は0、比較例2は63g/mであった。この調湿性塗料を、可変空調室内に鋼製の密閉可能な蓋付き容器(1m)の内側面に塗布し、蓋を開けて22℃、相対湿度60%で24時間暴露してから容器を密閉し、容器の外部の温度を5時間毎に22→40→12→22℃と順次変化させていった際の、容器内の温湿度の変化を示したものである。図2のようにシリカゲルの固形分質量比率が増えると、吸放湿量が増加するため元の平衡湿度に戻り易いことがわかる。平衡湿度変動幅は、実施例1が相対湿度で18%、比較例1が相対湿度で53%、比較例2が相対湿度で22%であった。
[有害ガス吸脱着確認試験]
実施例1〜8、比較例3〜8で得た各種の調湿性塗料を、No.22のワイヤーロッドを使用して手塗り塗工を行い、坪量38g/mのスパンレース不織布(商品名「RPN−38」、大和紡績(株)製)に固形分質量で150g/m塗布して、乾燥後坪量188g/mの調湿性材料量を得た。ここで得られた調湿性材料を10×10cm角に裁断して、有害ガス(アンモニア、ホルムアルデヒド、酢酸、硫化水素、二酸化硫黄、二酸化窒素、二酸化炭素)の吸着と脱着試験用のサンプルとした。これらのサンプルを温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置して前処理し、次いでこのサンプルをテドラーバッグに入れて脱気し、既知の濃度に調製した各種のガス2リットルを注入して直ちに検知管(ガステック(株)製造)を使用してその濃度を温度23℃の条件下で測定し、これを初期濃度とした。温度を23℃のまま5時間放置した後で、再度テドラーバッグ内のガス濃度を測定して有害ガスの吸着性能を確認した。その後直ちに各サンプルを40℃に設定したオーブンに入れ、1時間経過した後テドラーバッグ内のガス濃度を測定し、有害ガス脱着の有無を確認した。各サンプルのガス吸着性能は、初期濃度から残存濃度を差し引きして各調湿性材料の吸着量(ppm)とした。各種のガスは、既知濃度として60〜100ppmの範囲に調整し使用した。
表2に実施例1〜8、比較例3〜8の有害ガスに対する吸着性と脱着性を、以下の評価内容で示した。
(合格):初期濃度に対して60%以上のガス吸着性能を示し、40℃に昇温してもガスを脱着(ガス濃度が増加しなかった)しなかったもの
○ (合格):初期濃度に対して60%以上のガス吸着性能を示したが、40℃に昇温するとガスを脱着(ガス濃度が増加した)したもの
×(不合格):初期濃度に対して60%未満のガス吸着性能しかなかったもの
(表2)
Figure 0005127021
(実1〜8は実施例1〜8を示し、比3〜8は比較例3〜8を示している)
この結果、実施例1〜8は比較例3〜8と比較して、特定した7種類の有害ガスを全て吸着し、一部のガスを除いて脱着しない性能を有していることが確認できた。また、アンモニアに対しては実施例3と6が脱着の可能性もあるが、展示期間中に限り展示ケース内を安全な環境に保つためのものとして有益なものと判断した。
本発明による調湿性塗料、有害ガス吸着性能と調湿性能を具備した内装材の傷や汚れ箇所の補修、或いは各種の展示ケース材料や壁装材料の表面に塗布することにより、有害ガスを吸着し脱着しない性能と調湿性能を付与することが可能となるので、長期に亘って望ましい保存・展示環境を保つために好適に利用できる。
:気積率と平衡湿度変動幅を示す図である。 :調湿性能確認試験を示す図である。

Claims (2)

  1. 石灰5〜10質量部と、シリカゲル60〜95質量部とを主成分とした粉体100質量部に対して、接着剤を5〜30質量部配合し、塗料濃度を35〜55質量%の範囲に調整したことを特徴とする塗料。
  2. 有害ガスとして、アンモニア、ホルムアルデヒド、酢酸、硫化水素、二酸化硫黄、二酸化窒素、二酸化炭素を吸着し、脱着しないことが可能な請求項に記載の塗料。
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