JP4281953B2 - 調湿性、ホルムアルデヒド吸着性塗材 - Google Patents

調湿性、ホルムアルデヒド吸着性塗材 Download PDF

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Description

本発明は、調湿性能及び、ホルムアルデヒド吸着性塗材に関するもので、詳しくはアクリル樹脂系エマルジョンをバインダー成分とし、多孔質骨材として吸放湿性能を持った含水非晶質二酸化ケイ素を配合している。さらに、ホルムアルデヒド吸着剤として、1,2,3.4-ブタンテトラカルボン酸ヒドラジドを配合している。これらを含んだ塗材をコテ、ローラー、刷毛もしくは吹き付けなどの塗布手段により壁、天井などの下地に塗布されて仕上げられる調湿性、ホルムアルデヒド吸着性塗材に関する。
従来、調湿性を有する塗装材としては、ケイ藻土とポリビニルアルコールを含有する塗装材(特開平3-287672号)やケイ藻土および酢酸ビニル−アクリル共重合樹脂エマルジョンを含有する塗装材(特開平3-287971号)が提案されているが、これらの塗装材は、コスト的に充分満足できるものではなかった。さらに、住宅の密閉性向上に伴ない、湿気や有害揮発性物質の居住空間における濃度が非常に高まって、人体への悪影響の問題が生じてきており、例えばアトピ−、アレルギ−や発ガン性との関連も指摘されるようになってきている。
ホルムアルデヒドや可塑剤類などの有害物を遮断、又は吸収する塗膜を形成しうる室内汚染対策用塗料として、カルボニル基含有共重合体エマルションと、架橋剤としてヒドラジド基又はセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体からなる樹脂主成分と、固形顔料を配合することを特徴とする室内汚染対策用塗料(特開平10-183023号)や、粉状或いは微粒子状活性炭と、アミン化合物、酸化チタン等の有害物質除去剤を添着してなる活性炭、セピオライト、ゼオライト等の粉状或いは微粒子状の多孔質体との少なくとも何れか一方を含有した、塗料組成物(特開平10-140045号)が提案されている。しかしながら、多孔質骨材で吸着したホルムアルデヒドは時間と共に再放散することが問題となっている。
特開平3-287672号 特開平3-287971号 特開平10-183023号 特開平10-140045号 特許第3053499号
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のアクリル樹脂系エマルジョンをバインダーとし、含水非晶質二酸化ケイ素、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸ヒドラジドを配合する塗材が調湿性能、ホルマリンなどの有害物を吸収する効果が高いことを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、コア層のガラス転移点が0℃以下、シェル層のガラス転移点が20℃以上のコア・シェル構造のアクリル樹脂系エマルジョンを主成分とし、調湿性、ホルムアルデヒド吸着剤として、含水非晶質二酸化ケイ素を全固形分に対して5〜15重量%、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸ヒドラジドを全固形分に対して0.05〜0.5重量%を配合することを特徴とする室内汚染対策用塗料を提供するものであり、該塗料を、床、壁面、天井に適用される内装材表面に塗装してなるものである。
本発明における、コア・シェル構造のアクリル樹脂系エマルジョンについて蒸気透過性を測定してみると、JISZ0208に規定する測定方法による蒸気透過量が150g/m ・24h以上、更にはガラス転移点が常温より低いコア層と、常温より高いガラス転移点を持つシェル層とからなるコア・シェル構造のアクリル樹脂系エマルジョンが200g/m・24h以上と蒸気透過性に優れることが確認された。
コア・シェル構造のアクリル樹脂系エマルジョンが蒸気透過性に優れる理由は必ずしも明らかではないが、ガラス転移点が常温より低い樹脂成分からなるコア層の樹脂成分が造膜に関与し、ガラス転移点が常温より高い樹脂成分のシェル層が破断した殻として塗膜中に分散した状態になるため、一様に連続した被膜にはならず被膜中にミクロな孔が生じ、通気孔として作用するため蒸気透過性が高くなると推定される。
コア・シエル構造の樹脂エマルジョンはアクリル系モノマー等を乳化重合して得られたシード粒子をコア層として、その周囲にアクリル系モノマー等が乳化重合されてシェル層を形成させてなるものであつて、コア層に採用されたアクリル系モノマー並びにシェル層に採用されたアクリル系モノマー等により、様々な性状のコア・シェル構造のアクリル樹脂系エマルジョンが得られる。
中でも、本発明の調湿塗材には、塗材としての常温での造膜性があり、かつ塗膜中にシェル層の殻がそのまま分散された状態となりうるために、コア層のガラス転移点が0℃以下、シェル層のガラス転移点が20℃以上のアクリル樹脂系エマルジョンが適している。コア層のガラス転移点が0℃以下でないとフルシーズンにおける造膜が期待できなくなるため好ましくない。シェル層のガラス転移点が20℃以上ないと夏季において殻のままで分散された状態となりにくいため好ましくない。
コア・シェル構造のアクリル樹脂系エマルジョンは、例えば、シェル層を構成するためシラン系モノマーを含む親水性のビニルモノマーを乳化重合して親水性のシェル層を形成し、シェル層を構成する重合体をシード粒子として、エマルジョン中に油溶性の重合開始剤を加えてシード粒子に吸収させたのち、親油性のモノマーをエマルジョン中に徐々に加えシード粒子に吸収させ、シード粒子内で重合させることによりシード粒子内で親油性のコア層を形成させてコア・シェル構造のアクリル樹脂系エマルジョンが得られる。
シェル層を形成するモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどが挙げられ、その他コモノマーとしてスチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
また、塗膜の耐水性、耐汚染性、耐久性などの向上のためにシェル層に重合性ニ重結合を持ち、加水分解性のアルコキシ基を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系モノマーが併用されてもよい。
コア層用のモノマーとして、親性の例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸デシルなどがメインモノマーとして使用され、その他スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニルなどがコモノマーとして挙げられる。また、塗膜に耐水性、耐汚染性、耐久性などを向上させるために適量の重合性ニ重結合と加水分解性のアルコキシ基を持つビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系モノマーが併用されてもよい。
吸放湿性能を持った多孔質骨材としては、ケイ藻土、ゼオライト、セピオライト、鹿沼土、火山灰(白州灰)、木炭、竹炭、シリカゲル等が知られている。しかし、含水非晶質二酸化ケイ素に比べると、吸放湿性能に劣る。本発明で使用する含水非晶質二酸化ケイ素は、化学式SiO2・nH2O、平均粒子系が約4〜13μm、細孔ピーク半径が約3〜12nmのものが、吸放湿性能が大きいために使用に適している。この軽量骨材は塗材の調湿性能を確保するために全固形分換算で、5〜15重量%添加されることが好ましい。また、15重量%を超えると塗材の保存安定性が著しく落ちるため適さない。
ホルムアルデヒド吸着剤として使用する1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸ヒドラジドは、アセトアルデヒドの化学的除去を目的に開発されたアルデヒド専用のキャッチャー剤であり、特許第3053499号に記載されている。キャッチャー剤の特徴としてアルデヒド類と化学的な結合をつくり、ホルムアルデヒド吸着後のリリースが認められない点が挙げられる。このキャッチャー剤は、ホルムアルデヒドの吸着性能を確保するために、全固形分換算で、0.05〜0.5重量%添加されることが好ましい。また、0.5重量%を超えても差し支えはないが、性能の差が小さくなりコストが上がるため適さない。
充填材として、粒子径5〜300μm程度の水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硅砂、セラミック粉、ガラス粉、陶土、クレー、タルク、カオリン、消石灰、パーライト、炭酸マグネシウムなどが、固形分の調整、粘度・塗布性の調整、コスト調整などのために配合されるが、中でも水酸化アルミニウムは水酸基を包含するため塗材の難燃性が向上でき、白色であるために塗材の各種調色に好都合である。充填材の配合量は塗材の固形分換算で10〜60重量%が適当である。10重量%以下では塗材の粘度が低くなりすぎ塗布性が低下するため適さない。60重量%以上では塗材の粘度が高くなりすぎ塗布性が低下するため好ましくない。
着色に使用される顔料としては酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化鉄、ベンガラなどが適量配合されて調色される。顔料の粒度としては50μm以下のものが好ましい。50μm以上では粒子が凝集したままで分散しづらく生産作業に時間がかかること、保存性が悪くなるなどの問題がのこり好ましくない。
その他の配合材としては、分散剤、消泡剤、防カビ剤などが配合される。
分散剤としては、例えばポリカルボン酸ナトリウム、ポリカルボン酸アンモニウム、有機酸エステル系、エーテル系若しくは反応系界面活性剤、アルコールエトキシ系若しくはナフタレン系無機塩などが使用されるが、中でも分散が良好で環境汚染にならないポリカルボン酸ナトリウムが好ましい。
消泡剤としては、シリカシリコーン系、ポリエーテル系、鉱物油系、金属石鹸系、ポリアマイド系、変性シリコン系、ワックスエマルジョン系などが使用できるが、中でも、消泡性並びに水分散性の点から鉱物油系が適している。
防カビ剤としては、有機窒素硫黄化合物、含窒素有機環状化合物、含窒素ハロゲン系化合物、特殊尿素系化合物などが使用されるが、中でも防カビ性、持続性、環境面から有機窒素硫黄化合物系が好ましい。
多孔質骨材である含水非晶質二酸化ケイ素と1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸ヒドラジドからなるホルムアルデヒドキャッチャー剤を透湿度の高いアクリル樹脂系エマルジョンに添加することにより調湿性、ホルムアルデヒド吸着性に極めて優れ、吸着したホルムアルデヒドガスのリリース量が無い塗材を得ることが出来た。多孔質骨材は調湿機能を付与するだけではなく、ホルムアルデヒドの吸着機能も有し、この塗材を室内の壁、天井などの表面仕上材として塗工仕上されれば、優れた調湿性能及び、ホルムアルデヒド吸着性を発揮することができる。
以下、本発明に関して実施例、比較例に従って詳細に説明する。配合比率は重量部を単に部として記載する。なお、本願発明はこれに限定されるものではない。
吸放湿性試験
調湿性能の評価方法/日本仕上工業会の規定の測定方法に準じる。
イ.試験体の調整
厚さ9.5mm、縦300mm、横300mmの石膏ボードに実施例、比較例の調湿塗材を2kg/m塗布し、養生室に12日間静置し、側面及び裏面をシリコーン樹脂シーリング材で塗り込んでシールし、温度20±2℃、湿度45±5%の恒温恒湿室内に48時間静置したものを試験体とする。
ロ.試験方法
予め試験体の重量を測定したのち、温度20±2℃、湿度90±5%に調整した恒温恒湿器に24時間静置し、重量を測定する。次いで温度20±2℃、湿度45±5%に調整した恒温恒室器に24時間静置したのち重量を測定する。
この操作を2回繰り返し、吸放湿特性値を算出する。
ホルムアルデヒド吸着性能試験
5Lの二方コックテドラーバックに塗布試験体(有効面積100cm)を挿入し、熱シールで密封した後、バック内の残空気を吸引した後、窒素ベースのホルムアルデヒドガス(約16ppm)を注入。ガス検知管{ガステック(株)社製No.91L}を用いて、バック内の残存ガス濃度を経時的に測定。
ホルムアルデヒド吸着・加熱リリース量試験
1Lの二方コックテドラーバックに塗布試験体(有効面積100cm)を挿入し、熱シールで密封した後、バック内の残空気を吸引した後、窒素ベースのホルムアルデヒドガス(約15ppm)を注入し、室温で60時間保存。バック内の残存ガスを吸引置換し、新たに窒素ガスを封入して40℃、3時間加熱後、バック内の気体をDNPH捕集管に通過させてカルボニル化合物の誘導化を行い、アセトニトリルを用いて誘導体の抽出を行いHPLCにて定量分析を行った。
実施例1
コア・シェル構造を持ち、コア層のガラス転移点が0℃、シェル層のガラス転移点が20℃の樹脂固形分50%のアクリル樹脂エマルジョン(透湿度200g/m・24h以上、以下AE1)、含水非晶質二酸化ケイ素{塩野義製薬(株)、カープレックス(登録商標)}、キャッチャー剤として1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ヒドラジド、水を表1に示す配合で混合容器中に投入し完全に混合して調湿性ホルムアルデヒド吸着性塗材を調製した。
比較例1
実施例1配合より、キャッチャー剤を含まない塗材を調製した。
比較例2
実施例1の配合より、含水非晶質二酸化ケイ素を含まない塗材を調製した。
比較例3
実施例1の配合より、含水非晶質二酸化ケイ素とキャッチャー剤を含まず、代わりにケイ藻土を混合容器中投入し完全に混合して塗材を調製した。
比較例4
実施例1配合より、含水非晶質二酸化ケイ素、キャッチャー剤を含まない汎用塗材{透湿度150g/m ・24h以上、アイカ工業(株)製JQ−20}を配合して塗材を調製した。
以上により調製された実施例、比較例の調湿性能試験、ホルムアルデヒド吸着性能試験、ホルムアルデヒド吸着・加熱リリース量試験は表1の通りであった。

Claims (4)

  1. バインダーとしてコア・シェル構造からなるアクリル樹脂系エマルジョンと、含水非晶質二酸化ケイ素、ホルムアルデヒド吸着剤を含むことを特徴とする調湿性、ホルムアルデヒド吸着性塗材。
  2. 前記アクリル樹脂系エマルジョンがコア層のガラス転移点が0℃以下、シェル層のガラス転移点が20℃以上であることを特徴とする請求項1記載の調湿性、ホルムアルデヒド吸着性塗材。
  3. 前記含水非晶質二酸化ケイ素の配合率が固形分中に5〜15重量%配合されていることを特徴とする請求項1乃至いすれか記載の調湿性、ホルムアルデヒド吸着性塗材。
  4. 前記ホルムアルデヒド吸着剤の配合率が固形分中に0.05〜0.5重量%配合されている請求項1乃至いずれか記載の調湿性、ホルムアルデヒド吸着性塗材。
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