JP5044152B2 - コーティング用組成物及びその製造方法、並びに樹脂成形体及びその製造方法 - Google Patents

コーティング用組成物及びその製造方法、並びに樹脂成形体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、コーティング用組成物並びに樹脂成形体及びその製造方法に関する。詳しくは、塗工性及び/又は塗工面外観に優れたコーティング用組成物及びその製造方法と、防結露効果、調湿効果、防汚効果、冷却効果及び/又は耐久性を備えた樹脂成形体及びその製造方法に関する。
従来、農業分野において、寒冷地や中間山地地域でのハウス栽培では、日没を過ぎると室内温度が低下し始め、夜間から日の出前に結露が発生して栽培作物に悪影響が出るという課題を抱えていた。
また、建築分野では、室内の通気性が悪いために、家屋自身が自律的な調湿機能を失ったため、種々の課題が発生している。具体的には、床や天井、室壁面等に湿気が溜まり易い、ダニ、カビが発生し易い、更には室壁と外壁の間等に結露が発生し易い、建物そのものの腐食が進み、大きな課題となっていた。
また、倉庫やコンテナなど膜体設備や保管設備等においても、寒冷地や中間山地地域などの立地条件によって、外気温度低下や降雨時等による湿度上昇、設備内に保管した保管物から発生する水蒸気による湿度上昇によって、設備内側に結露を生じるという課題があった。
こうした課題に対して、例えば特許文献1や特許文献2には、多孔材料を含有した湿度調節剤が提案されている。
しかしながら、特許文献1、特許文献2等に記載の従来の湿度調節剤は、樹脂層と基材との間の剥離により耐久性が不良である、風合い硬化による用途展開に大きな制限がある、等の課題を有していた。
従って、農業用栽培ハウス、家屋等の建築物、倉庫やコンテナ等の膜体設備や保管設備において、低コストで防結露効果や調湿効果が高く、耐久性にも優れた材料が求められていた。
また、食品販売等の分野では、食品陳列用の結露防止手段が求められていた。
即ち、スーパーマーケットなどの食品陳列用冷凍・冷蔵庫は、昼間は、買物客が商品を取り易いように、蓋、カバーなどは存在せず、オープン状態となっているが、夜間、休日などの閉店時は、庫内から冷気が漏れることを防止し、省電力を図るため、特定の穴を等間隔に開けた硬質プラスチック製フィルムシートを用いてカバーしている。かかるカバーは、ロールカーテン方式で収納されているためカバーの引き出し巻き戻しが容易であり、省スペース性に優れているが、使用時の結露を防止するための穴により、庫内外の空気遮断は完全ではなく、カバーの使用目的である省電力の効果は十分ではなかった。また、多数の穴が開けられているにも関わらず、実状は結露そのものを抑えることはできず、結露水の商品、床への落下などの課題があった。
これらの課題に対し、特許文献3には、金属層を片面に積層した冷凍・冷蔵ショーケース用カバーシートが提案されている。このカバーは、前記フィルムシート製カバーに比べ、省電力性及び庫内側の結露防止に関する効果は認められるが、特に冷凍庫のような庫内外の温度差が大きい場合には、庫外側表面に結露が発生し、結露水が床へ落下するなどの課題があった。
従って、スーパーマーケットなどの食品陳列等の用途において、省電力性が高く、庫外側の表面結露を防止でき、かつ、軽量でコンパクトな結露防止シートとなり得る材料が求められていた。
また、自動車等の分野では、例えば、自動車の前部に設けられた前照灯として使用される車両用灯具内の結露を防止するための手段として好適な材料が求められていた。
車両用灯具は、ハウジング及びレンズにより構成される光源空間内に光源が収められた構成を有するが、気候や洗車によりその光源空間内に水分が一旦浸入してしまうと、その構造上、極めて排出され難い。光源空間がその内部に水分を含有した状態で急激に冷却されると、内部の水分がレンズの内側に結露して曇ってしまい、光源の点灯時に配光特性が変化してしまったり、或いは消灯時でも部分的な曇りによって見栄えが損なわれてしまうという課題がある。
このため、光源空間内にシリカ等の吸湿剤を配置したり、レンズの内面に防曇コーティングを施す等の方法があるが、これら従来の方法ではコストや耐久性の面で課題があった。よって、低コストで防結露効果や調湿効果が高く、耐久性にも優れた材料が求められていた。
また、プリント配線板等の分野においても、結露を防止する上で適切な材料が求められていた。
従来、自動車等における電子ユニットの高機能、小型化にともなって、プリント配線板に実装された電子部品の高密化が進んでいる。その結果、マイグレーションという不具合が生じている。マイグレーションとは、プリント配線板のランドにはんだにて接続されている露出した導体が、残留物等による電解質を含んだ水分が介在した状態で、バッテリにより電圧が印加されると電気分解反応が起こり、陽極側の導体から溶出した金属が陰極側の導体でデントライト状に析出するものである。このような反応が進行すると、導体間の絶縁性が低下するおそれがある。
そこで、マイグレーションの要因となるプリント配線板の表面に生じる結露を防止するために、プリント配線板を収納した電子ユニットのケース内に、結露防止板を設けたものが知られている(例えば特許文献4参照)。この結露防止板は、プリント配線板表面の露出した導体の中で、特に高電圧が印加されて電気分解によるマイグレーションが発生し易いものの周囲に設けられている。これにより、ケース内に侵入した外気は結露防止板に当たり、外気に含まれた水蒸気によって結露防止板に結露を生じさせるので、露出した導体には、湿度が低くなった外気が吹き付けられる。従って、露出した導体には結露が生じ難くなり、マイグレーションの発生を防止している。
従って、このようなプリント配線板の収納ケース内に使用する結露防止板として、マイグレーションの要因となるプリント配線板表面の露出した導体に水蒸気を含んだ気体が吹き付けられることによって生じる結露を、効果的に防止できるような材料が求められていたが、従来の結露防止材ではコストや耐久性の面で課題があった。よって、低コストで防結露効果や調湿効果が高く、耐久性にも優れた材料が求められていた。
また、自動車のドア等に付設される後方視認用のバックミラー装置、特に、下方視認用のカメラモジュールが内蔵されたカメラ内蔵型バックミラー装置においても、新たな材料が求められていた。
一般に、自動車の左右のドアには後方視認用のバックミラー装置が付設されているが、このバックミラー装置では、その下方から斜め前方にわたる路面を視認することができない。このため、前輪付近の路面を視認できるカメラモジュール及びその照明光源を内蔵したカメラ内蔵型バックミラー装置が種々開発されている(特許文献5及び特許文献6参照)。
この種のカメラ内蔵型バックミラー装置において、前記カメラモジュールは、レンズ及びCCD(Charge Coupled Device)などの画像センサを有するカメラ本体、画像信号処理部、電源部などで構成されており、画像信号処理部からの画像信号を車室内のモニタに出力することで、前輪付近の路面をモニタに画像表示するように構成されている。そして、このようなカメラモジュールを内蔵するミラーハウジングには、カメラ本体のレンズ及び照明光源を臨ませる開口部が形成されており、通常、この開口部は透明カバーによって塞がれている。
しかしながら、透明カバーの内面には通常、防塵、防水対策が施されていないため、ミラーの周囲などからミラーハウジング内に侵入した塵埃が透明カバーの内面に付着することがある。加えて、ミラーハウジング内の湿度の上昇や温度の低下によって透明カバーの内面に曇りや結露が発生し、その結果、透明カバーの透光性が低下することがある。更には、照明光源からの照明光がカメラ本体のレンズに回り込むことがある。また、雨天時や洗車後などに透明カバーの外面に水滴が付着すると、その水滴のレンズ作用によってカメラ本体への入射光が不用意に屈折されてしまうことがある。このような場合、カメラ本体は透明カバーを介して明瞭な画像を撮影できなくなる。
よって、防結露効果、調湿効果等を備える材料をミラーハウジング内に設けることにより、ミラーハウジング内に侵入した水分による透明カバーの曇りや結露を防止することが考えられる。従って、防結露効果や調湿効果を備え、耐久性に優れた材料が求められていた。
また、ハードディスクドライブ(以下「HDD」という場合がある。)等の準密閉型容器においては、相対湿度の変化に伴って生じ得る結露への対応が求められる。例えば、ノート型パーソナルコンピュータを夏季に屋外で携帯した場合、HDDは高温環境下に曝されることになる。その後、ノート型パーソナルコンピュータを空調設備のある屋内に持ち込むと、HDD内での急激な温度低下によって、HDD内が結露する場合がある。従って、HDD内の結露の防止や湿度の調整のために、防結露効果や調湿効果を備え、耐久性に優れた材料が求められていた。
一方、建築等の分野においては、例えば非特許文献1に示すように、ビル等の外壁や屋根に酸化チタンをコーティングし、その表面に雨水を流して形成した薄い水膜で冷却を図ることが提案されている。この冷却技術は、ビル等の外壁に形成した水膜による蒸発潜熱により、建物表面や周辺大気を冷却するものである。また、この冷却技術では、冷却水の出口を外壁の垂直方向に複数設けて冷却水の流量を多くする多段方式を採用すると共に、光触媒を利用し、水膜状態を保持している。この光触媒を利用した技術は、建物の外壁面などに酸化チタンを主原料とする光触媒材料を塗布し、太陽光などの光を照射することにより、親水性を発揮させて水の表面張力を弱めて冷却水の水膜を形成し易くするという特徴を有している。
しかし、上記光触媒を利用した技術では、大型の建築物への応用を考えた場合、建築物全体へ光を照射させることは現実的でない。また、光の照射による温度上昇も生じるため、冷却目的では不適な面がある。更に、光触媒の劣化による性能劣化も懸念される。
そこで、このような冷却技術においては、親水性や耐久性等に優れた材料が求められていた。
また、園芸・造園や土木・建築分野において用いられる緑化材料として、例えば樹脂材料等の構造体に苔類等を固定化させた材料が知られている(例えば特許文献7参照)。このような苔類等を固定化する構造体の材料は、苔類等の生育や栽培を安定化させるために充分な保水性を維持しなければならない。そこで、親水性を備え、耐久性にも優れた材料が求められていた。
特許第3398830号公報 特開2000−43179号公報 特開平11−183023号公報 特開平9−102679号公報 特開2000−115759号公報 米国特許第5497306号公報 特開2004−236518号公報 橋本和仁、"光エネルギーを利用した環境保全"、[online]、東京大学先端科学技術センター橋本研究室、[平成16年2月3日検索]、インターネット<URL:http://www.appchem.t.u-tokyo.ac.jp/appchem/labs/fujisima/pccm/kaiyo.html>
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。
即ち、本発明の目的は、塗工性及び/又は塗工面外観に優れたコーティング用組成物を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、下記特性(i)〜(v)のうち、少なくとも何れかの特性を備えた樹脂成形体及びその製造方法を提供することにある。
(i)防結露効果
(ii)調湿効果
(iii)防汚効果
(iv)冷却効果
(v)耐久性
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、コーティング用組成物の成分として、ケイ素化合物を含む無機多孔体と、特定の物性を有する親水性のバインダ樹脂とを併用することによって、塗工性及び/又は塗工面外観に優れたコーティング用組成物が得られること、また、上記コーティング用組成物を用いることにより、上記(i)〜(v)のうち少なくとも何れかの特性を有する樹脂成形体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、無機多孔体とバインダ樹脂と溶剤とを少なくとも有するコーティング用組成物であって、(1)該無機多孔体が少なくとも1種のケイ素化合物を含んでおり、且つ、その最頻粒径が1.0μm以上、50μm以下であり、(2)該バインダ樹脂において、(a)固形分水酸基価が5mgKOH/g以上、80mgKOH/g以下であり、(b)ガラス転移温度(Tg)が−5℃以上、40℃以下であり、(3)該溶剤が、少なくとも1種の有機溶媒を含んでなり、且つ該バインダ樹脂の固形分に対する全固形分の重量比が、1.6以上、11以下であることを特徴とする、コーティング用組成物に存する(請求項1)。
ここで、該バインダ樹脂の固形分に対する該無機多孔体の重量比が、0.6以上、10.0以下であることが好ましい(請求項2)。
また、コーティング用組成物における該溶剤の比率が40重量%以上98重量%以下であることが好ましい(請求項3)。
また、該溶剤の総量に対する該有機溶媒の比率が5重量%以上であることが好ましい(請求項4)。
また、該バインダ樹脂の平均樹脂粒径が、該無機多孔体の最頻粒径よりも小さく、且つ、該無機多孔体の細孔最頻直径よりも大きいことが好ましい(請求項)。
本発明の別の要旨は、上述のコーティング用組成物を基材に塗工し、該溶剤を除去して得られることを特徴とする、樹脂成形体に存する(請求項)。
なお、上述の各樹脂成形体は、有機フィラーを更に含有することが好ましい(請求項)。
また、該樹脂成形体の該無機多孔体のシラノール含有率が2個/nm2以上、10個/
nm2以下であることが好ましい(請求項)。
また、該バインダ樹脂に対する該無機多孔体の重量比が、0.6以上、10.0以下であることが好ましい(請求項)。
また、該バインダ樹脂の固形分に対する全固形分の重量比が、1.6以上、11.0以下であることが好ましい(請求項10)。
また、基材を更に備えてなるとともに、該基材の少なくとも一部に、該無機多孔体が該バインダ樹脂によって固着されていることが好ましい(請求項11)。
ここで、該基材が、少なくともシートからなることが好ましい(請求項12)。
また、該基材が、少なくともフィルムからなることも好ましい(請求項13)。
また、該基材が、少なくとも繊維からなることも好ましい(請求項14)。
また、本発明の別の要旨は、上述のコーティング用組成物を製造する方法であって、少なくとも該バインダ樹脂、該無機多孔体、及び該溶剤を混合する工程を少なくとも有することを特徴とする、コーティング用組成物の製造方法に存する(請求項15)。
また、本発明の別の要旨は、上述の樹脂成形体を製造する方法であって、少なくとも該バインダ樹脂、該無機多孔体、及び該溶剤を混合する工程と、前記溶剤を除去する工程とを少なくとも有することを特徴とする、樹脂成形体の製造方法に存する(請求項16)。
本発明のコーティング用組成物は、塗工性及び/又は塗工面外観に優れている。
また、本発明の樹脂成形体は、下記特性(i)〜(v)のうち、少なくとも何れかの特性を備えている。
(i)防結露効果
(ii)調湿効果
(iii)防汚効果
(iv)冷却効果
(v)耐久性
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
[1.コーティング用組成物]
本発明のコーティング用組成物は、無機多孔体と、バインダ樹脂と、溶剤とを少なくとも有する。
〔1−1.無機多孔体〕
<1−1−1.無機多孔体の種類>
本発明のコーティング用組成物に用いられる無機多孔体は、少なくとも1種のケイ素化合物を含んだものであれば、その種類は特に制限されない。ケイ素化合物の例としては、シリカ、ゼオライト、多孔質ガラス、アパタイト、珪藻土、カオリナイト、セピオライト、アロフェン、イモゴライト、活性白土、シリカ−アルミナ複合酸化物、シリカ−チタニア複合酸化物、シリカ−ジルコニア、シリカ−酸化マグネシウム、シリカ−酸化ランタン、シリカ−酸化バリウム、シリカ−酸化ストロンチウムなどの複合金属酸化物等が挙げられる。ケイ素化合物以外の無機多孔体の材料の例としては、活性炭、アルミナ、チタニア、ジルコニア等が挙げられる。中でも、無機多孔体の材料としては、シリカ、ゼオライト、アルミナ、チタニア、ジルコニア等が好ましい。これらの無機多孔体の材料は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、本発明のコーティング用組成物においては、無機多孔体として少なくともシリカを使用することが好ましく、以下に説明する特定の物性を備えたシリカ(これを適宜「本発明のシリカ」という。)を使用することがとりわけ好ましい。
本発明のコーティング用組成物に用いる無機多孔体の最頻粒径は、通常1.0μm以上、中でも1.5μm以上、また、通常50μm以下、中でも40μm以下であることが好ましい。コーティング用組成物において、無機多孔体の最頻粒径が小さ過ぎると、沈降した無機多孔体が密に充填されるため、再分散が困難となる。また樹脂成形体において、無機多孔体の最頻粒径が小さ過ぎると、粒子の充填率が増加するため、粒子間空隙が減少し、保水量の低下を生じる場合がある。一方、無機多孔体の最頻粒径が大き過ぎると、粒子の充填率が低下し、粒子間空隙が増加するものの、樹脂成形体表面の空隙開口部の大きさが大きく保水することが困難となるため、保水量の低下を生じる場合がある。また、バインダ樹脂と無機多孔体の接点が少ないため、無機多孔体が脱離し易く、耐擦傷性・耐候性の低下が生じ易くなる。なお、無機多孔体の最頻粒径は、例えば、後出の<1−1−2.シリカの特徴>に記載の、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いた手法等により求めることができる。
また、本発明のコーティング用組成物に用いる無機多孔体の細孔最頻直径は、通常2nm以上、好ましくは2.3nm以上、また、通常20nm以下、更には18nm以下であることが好ましい。本発明では、無機多孔体の細孔最頻直径をこの様に広範な範囲内において適当に調整することにより、得られるコーティング用組成物の吸湿領域を変化させることができる。なお、無機多孔体の細孔最頻直径は、例えば、後出の<1−1−2.シリカの特徴>に記載の、窒素ガス吸脱着法で測定した等温脱着曲線からBJH法により算出される細孔分布曲線を用いた手法等により求めることができる。
<1−1−2.シリカの特徴>
本発明のコーティング用組成物に用いる無機多孔体としては、以下の特徴を有するシリカ(本発明のシリカ)が好適に用いられる。
(a)非晶質であること:
本発明のシリカは、その三次元構造を見るに、非晶質であること、即ち、結晶性構造が認められないことを特徴とする。このことは、本発明のシリカをX線回折で分析した場合に、結晶性ピークが実質的に認められないことを意味する。なお、本明細書において非晶質のシリカとは、X線回折パターンで0.6ナノメートル(nm Units d-spacing)を越えた位置に、結晶構造のピーク(結晶性ピーク)が一つも観察されないものを指す。このようなシリカの例としては有機テンプレートを用いて細孔を形成するミセルテンプレートシリカが挙げられる。非晶質のシリカは、結晶性のシリカに較べて、極めて生産性に優れている。
(b)比表面積:
本発明のシリカは、その比表面積の値が、通常200m2/g以上、好ましくは250m2/g以上、また、通常1000m2/g以下、好ましくは900m2/g以下の範囲である。本発明のシリカがこの様に大きな比表面積を有していることによって、本発明のコーティング用組成物を用いて形成した樹脂成形体(後述する本発明の樹脂成形体)において、シリカの細孔内に吸着される吸着物質(水分)とシリカとの相互作用面積を大きくすることができ、また、シリカの細孔の表面状態を変えることで、物質との相互作用を大きく調整することが可能となる。なお、シリカの比表面積の値は、窒素ガス吸脱着によるBET法で測定される。
(c)細孔容積:
本発明のシリカの単位重量当たりの細孔容積(本明細書ではこの「体積/重量」で表わされる量を、特に断り書きの無い限り単に「細孔容積」という。一方、体積量としての細孔容積を指す場合には「総細孔容積」といい、両者を区別するものとする。)は、通常0.3ml/g以上、好ましくは0.35ml/g以上である。本発明のシリカがこの様に大きな細孔容積を有していることによって、本発明の樹脂成形体は、高い吸放出性能を発揮することができる。細孔容積の上限は特に制限されないが、通常3.0ml/g以下、更には2.5ml/g以下であることが好ましい。なお、シリカの細孔容積は、吸着等温線の相対圧0.98における窒素ガスの吸着量から求めることができる。
(d)細孔最頻直径:
本発明のシリカは、窒素ガス吸脱着法で測定した等温脱着曲線から、E. P. Barrett, L. G. Joyner, P. H. Haklenda, J. Amer. Chem. Soc., vol. 73, 373 (1951) に記載のBJH法により算出される細孔分布曲線、即ち、細孔直径d(nm)に対して微分窒素ガス吸着量(ΔV/Δ(logd);Vは窒素ガス吸着容積)をプロットした図上で求められる細孔の最頻直径(Dmax)が、通常2nm以上、好ましくは2.3nm以上、また、通常20nm以下、好ましくは18nm以下の範囲である。本発明では、シリカ細孔の最頻直径(Dmax)をこの様に広範な範囲内において適当に調整することにより、本発明の樹脂成形体の吸湿領域を変化させることができる。従って、本発明のシリカは、その細孔分布曲線において、細孔の最頻直径(Dmax)を表わす最大ピークがシャープである必要はない。一方、十分な吸湿量を得るためには、上述したように、シリカの細孔容積が前記(c)の範囲内であることが重要である。
なお、後述するように、本発明のシリカの製造方法は特に制限されず、公知の任意の方法によって製造することができるが、その製造方法によっては、細孔直径を任意に調整することができる。本発明の樹脂成形体が発揮する吸放出性能の中には、この細孔直径に応じてその性能を発揮するものがあるため、細孔直径は用途に応じて適宜設定することが望ましい。例えば、吸放出性能の中でも調湿性においては、シリカにより調整される湿度は一般に、その細孔直径に応じたものとなる。
(e)最頻粒径:
本発明のシリカは、その最頻粒径が、通常1.0μm以上、中でも1.5μm以上、また、通常50μm以下、中でも40μm以下であることが好ましい。シリカの最頻粒径が小さいと、粒子の充填率が増加するため、粒子間空隙が減少し、保水量の低下を生じる。一方、シリカの最頻粒径が大きいと、粒子間空隙が増加するものの、保水することができないため、保水量の低下を生じる。そのため、シリカの最頻粒径が小さ過ぎても大き過ぎても適さず、上記範囲内であることが重要である。なお、シリカの最頻粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(例えば、セイシン企業製レーザーマイクロンサイザーLMS−24)等によって粒度分布を測定し、その結果から求めることができる。
(f)シラノール量:
本発明のシリカは、そのシラノール量が、通常2個/nm2以上、好ましくは2.5個/nm2以上、より好ましくは3個/nm2以上、また、通常10個/nm2以下、好ましくは8.5個/nm2以下、より好ましくは7個/nm2以下の範囲である。シラノール量が少な過ぎると、疎水性で湿度感受性が悪化し、吸湿性が低下する。一方、シラノール量が多過ぎると、コーティング用組成物の安定性が悪化し、耐久性の低下、樹脂成形体の不良を生じるため、上記範囲内であることが好ましい。なお、シリカのシラノール量は、例えば以下に説明する、熱重量測定による重量変化に基づく手法によって算出することができる。
まず、シリカの吸着水を除去するため、160℃に加熱して2時間保持した後、1000℃に昇温して更に1時間保持し、その過程におけるシリカの重量変化を測定する。シラノール由来の水分量は、昇温時の重量変化(即ち、160℃から1000℃での減少重量)から、水熱処理時のアルコール由来のCO2重量を除いた値に相当する。具体的には、以下の式を用いて算出することができる。
{シラノール由来の水分量(g)}
={160℃から1000℃での減少重量(g)}
−{アルコール由来のCO2重量(g)}
ここで、シラノール分子2個からH2O分子1個が形成されるとすると、シリカのシラノール数及びシラノール量は、それぞれ以下の式に基づいて算出することができる。
{シラノール数(個)}
=〔{シラノール由来の水分量(g)}
×{アボガドロ定数6.02×1023(個/mol)}×2〕
/{H2O分子量(g/mol)}
{シラノール量(個/nm2)}
={シラノール数(個)}/{表面積(nm2)}
(g)その他の特徴:
本発明のシリカは、上述の(a)〜(f)の特徴を満たしていれば、その他は特に制限されないが、更に以下の特徴を満たしていることが好ましい。
・粒子形状:
シリカの粒子形状については、特開2003−220657号公報に、球状粒子を用いることで無機多孔体の充填率が増し、吸放湿性能を向上させることができると言う記載がある。しかしながら、本発明のシリカの粒子形状は、球状及び破砕状のどちらでもよい。破砕状の方が、粒子間空隙が多くなるため、より好ましい。一方、微粉凝集体が多いと、細孔の利用効率が低下する、更なる凝集を生じて組成物の均一性を低下させる、組成物の保存安定性を悪化させる等の課題が生じる場合がある。よって、粒度分布が狭い方がより好ましい。なお、シリカの粒子形状は、SEM(走査型電子顕微鏡)等の手法により確認することができる。また、シリカの粒度分布は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(セイシン企業製レーザーマイクロンサイザーLMS−24)等の手法により測定することができる。
・耐水熱試験に関する特徴:
また、本発明のシリカは、水中での加熱処理(耐水熱試験)を施されても、細孔特性の変化が少ないことが好ましい。耐水熱試験後におけるシリカの細孔特性の変化は、例えば比表面積、細孔容積、細孔径分布などの多孔性に関する物性の変化として観察される。例えば、本発明のシリカにおいては、200℃、6時間の耐水熱試験をした際、該試験後の比表面積が該試験前の比表面積に対して20%以上(比表面積残存率が20%以上)であることが好ましい。この様な特性を有する本発明のシリカは、長時間の厳しい使用条件下においても、多孔性の特徴が失われないので好ましい。また、この比表面積の残存率は、中でも35%以上、特に50%以上であることが好ましい。
なお、本発明における耐水熱試験とは、密閉系内において、特定温度(200℃)の水とシリカとを一定時間(6時間)接触させることであり、シリカの全てが水中に存在するのであれば、密閉系内が全て水で満たされていても、また、系内の一部が加圧下の気相部を有し、この気相部に水蒸気があってもよい。この場合の気相部の圧力は、例えば60000hPa以上、好ましくは63000hPa以上であればよい。なお、特定温度の誤差は通常±5℃以内、中でも±3℃以内、特に±1℃以内とするのが好ましい。
・固体Si−NMR測定に関する特徴:
更に、本発明のシリカの構造に関しては、固体Si−NMR(nuclear magnetic resonance:核磁気共鳴)測定による分析において、以下の結果が得られることが好ましい。
シリカは非晶質ケイ酸の水和物であり、SiO2・nH2Oの示性式で表されるが、構造的には、Siの四面体の各頂点にOが結合され、これらのOに更にSiが結合して、ネット状に広がった構造を有する。そして、Si−O−Si−O−の繰り返し単位において、Oの一部が他の成員(例えば−H、−CH3など)で置換されているものもあり、一つのSiに注目した場合、下記式(A)に示す様に4個の−OSiを有するSi(Q4)や、下記式(B)に示す様に3個の−OSiを有するSi(Q3)等が存在する〔下記式(A)及び(B)では、上記の四面体構造を無視し、Si−Oのネット構造を平面的に表わしている〕。そして、固体Si−NMR測定において、上記の各Siに基づくピークは、順にQ4ピーク、Q3ピーク、・・・と呼ばれる。
Figure 0005044152
本発明のシリカにおいては、固体Si−NMR測定における、−OSiが3個結合したSi(Q3)と−OSiが4個結合したSi(Q4)とのモル比を示すQ4/Q3の値が、通常1.2以上、中でも1.3以上、更には1.4以上、特に1.5以上であることが好ましい。なお、上限値は特に制限されないが、通常は10以下である。
一般に、この値が高い程、シリカの熱安定性が高いことが知られており、ここから本発明のシリカは、熱安定性に極めて優れていることが判る。つまり、本発明のシリカは熱によって構造が壊れる虞が小さいので、本発明の樹脂成形体は長期間にわたって安定して使用することが可能である。これに対して、結晶性のミセルテンプレートシリカの中には、Q4/Q3の値が1.2を下回るものがあり、熱安定性、特に水熱安定性などが低い。
加えて、本発明のシリカは、骨格を形成するシロキサン結合の結合角に歪みが少ないことが望ましい。ここで、シリカの構造的な歪みは、固体Si−NMR測定におけるQ4ピークのケミカルシフトの値によって表わすことができる。
上記の、シリカの構造的な歪みと、前記のQ4ピークのケミカルシフトの値との関連の点から、本発明のシリカは、上記のQ4ピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合に、δが下記式(1)を満足する〔即ち、δの値が下記式(1)の左辺で表わされる値{−0.0705×(Dmax)−110.36}よりも小さい(よりマイナス側に存在する)〕ことが望ましい。なお、本明細書において「ppm」とは、重量に対する割合を表わすものである。
−0.0705×(Dmax)−110.36>δ (1)
従来のシリカでは、上記のQ4ピークのケミカルシフトの値δは、上記式(1)の左辺に基づいて計算した値よりも、一般に大きくなる(よりプラス側に存在する)。よって、本発明のシリカは、従来のシリカに比べて、Q4ピークのケミカルシフトがより小さな値を有することになる。これは、本発明のシリカにおいて、Q4ピークのケミカルシフトがより高磁場に存在するということに他ならず、ひいては、Siに対して2個の−OSiで表される結合角がより均質であり、構造的な歪みがより少ないことを意味している。
本発明のシリカにおいて、Q4ピークのケミカルシフトδは、上記式(1)の左辺(−0.0705×(Dmax)−110.36)に基づき算出される値よりも、好ましくは0.05%以上小さい値であり、更に好ましくは0.1%以上、特に好ましくは0.15%以上小さい値である。通常、シリカゲルのQ4ピークの最小値は−113ppmである。
本発明のシリカは、優れた耐熱性や耐水性等を有しており、また、物性変化し難い。従って、高温・高湿度下でも長期間調湿機能が持続される。このような点と、上記の様な構造的歪みとの関係については、必ずしも明らかではないが、次の様に推定される。すなわち、シリカは大きさの異なる球状粒子の集合体で構成されているが、上記の様な構造的に歪みの少ない状態においては、球状粒子全体のミクロ構造的な高度の均質性が維持されるので、その結果、優れた耐熱性や耐水性等が発現されるものと考えられる。なお、Q3以下のピークは、Si−Oのネット構造の広がりに制限があるため、シリカの構造的な歪みが現れ難い。
なお、シリカのQ4/Q3及びQ4ピークのケミカルシフトの値は、固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(ピーク位置の決定)は、例えば、ガウス関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
・金属不純物の含有量:
また、本発明のシリカは、シリカの骨格を構成するケイ素を除いた金属元素(金属不純物)の合計の含有率が、通常500ppm以下、中でも100ppm以下、更には50ppm以下、特に30ppm以下と、非常に高純度であることが好ましい。このように不純物の影響が少なければ、耐久性、耐熱性、耐水性などの優れた性質を発現できる。また、金属不純物が少ないことにより、本発明のコーティング用組成物を用いて形成した樹脂成形体(後述する本発明の樹脂成形体)において、バインダ樹脂と金属不純物とが接触することによる光劣化、熱劣化、経時劣化などを抑制することができ、その結果、本発明の樹脂成形体は長期に亘って安定して使用することが可能となる。なお、シリカの金属不純物含有量は、ICP発光分光分析法等の各種の元素分析法を用いて測定することができる。
但し、後述するように、本発明のシリカは、その用途等に応じて、特定の原子や原子団などの他の成分を意図的に含有させることにより、有利な機能を獲得することができる場合もある。従って、本発明のシリカにシリカ以外の成分を含有させるか否かは、その用途等に応じて選択するべきである。
・その他の成分:
また、本発明のシリカは、前記のようにシリカの他の成分を有していてもよい。本発明のシリカが有していてもよいその他の成分について特に制限は無く、各種の助剤、有用な元素(以下適宜、「有用異元素」という)の単体及び/又は化合物、有機基(以下適宜、「有用有機基」)など、任意の成分を含有及び/又は担持していてもよい。
なお、前記のその他の成分は、本発明のコーティング用組成物(及びそれを用いた本発明の樹脂成形体)に、その目的とする機能を失わない状態で含有させることができれば、どのような状態で、製造過程のどの工程で含有させてもよい。例えば、シリカに含有及び/又は担持させる以外に、適宜、バインダ樹脂中に含有させて用いてもよく、コーティング用組成物に用いる溶剤中に含有させてもよい。また、コーティング用組成物を調製中又は調製後、そのコーティング用組成物中に含有させて用いてもよく、樹脂成形体を作製中又は作製後、その樹脂成形体に含有させて用いてもよい。また、前記のようにシリカに含有及び/又は担持させて用いる場合、シリカに含有/又は担持させる方法に制限は無いが、例えば、助剤をシリカの製造中又は製造後に含有・担持させる方法と、本発明のコーティング用組成物を用いて本発明の樹脂成形体を製造した後に、樹脂成形体中のシリカに担持させる方法とがある。また、後述する添加剤も、あらかじめシリカに担持して用いても構わない。更に、これら助剤や添加剤は素材(樹脂成形体+基材)を作製した後に、最後に含浸などの操作によって含有させてもよい。更に、助剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
助剤としては、例えば、吸湿助剤を担持させてもよい。吸湿助剤は、高機能な調湿効果を付与すべくシリカに含有させるためのもので、水分に対する親和性の高いものであればよく、有機化合物,無機化合物,金属塩類などの群に属する様々な物質を選択することができる。なお、吸湿助剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
シリカに担持させる際には、このような群に属する物質の内、少なくとも1種類の含有率が、シリカ重量に対して通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下の範囲で担持させることが望ましい。また、吸湿助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
特に、吸湿助剤が金属塩類であり、且つ、金属塩類を細孔内に含有させる場合には、吸湿助剤の含有量は、使用条件における最高湿度において、吸湿により細孔内に貯留された吸湿助剤の水溶液の体積がシリカの総細孔容積以下の量となるような含有量とすることが望ましい。金属塩類は高湿度条件下で水溶液として細孔内に存在するためである。
つまり、金属塩と金属塩に吸着された湿分とからなる水溶液の量が細孔容積を越えてしまうと、細孔内からこの水溶液が溢れてしまい、このため、脱湿により再びシリカを乾燥した際に、水溶液に含有されて細孔内から排出された金属塩が細孔外部に不要に付着してしまう。この結果、シリカの吸湿特性を悪化させてしまう場合がある。このため、金属塩の含有量が多くなると吸湿能力は増加するが、上記の理由により高湿度域で便用できない場合があり、使用し得る湿度範囲を制限しなければならなくなってしまうことがある。
但し、付帯設備を設けるなど装置的な工夫が許容されるならば、細孔内の水溶液の量が細孔容積以上となる前にシリカを再生させるような運転サイクルを組むことにより、静的な吸着データ上では使用できない高湿度領域においても使用可能とすることができる。
また、上記の吸湿助剤としては、中でもアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩をシリカに含有させると、シリカによる水蒸気吸着量が非常に高くなる。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、水蒸気と非常に親和性が高く、吸湿性能の強化に繋がるため、これらを吸湿助剤として用いることができる。このため、吸湿助剤を使用する場合には、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩の内、少なくとも1種類の金属塩をシリカに吸湿助剤として含有させることが好ましい。
ここで、含有させるアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は何れでもよいが、水蒸気との親和性が特に強いことから、例えば、LiF、NaF、KF、CaF2、MgF2、Li2SO4、Na2SO4、K2SO4、CaSO4、MgSO4、LiNO3、NaNO3、KNO3、Ca(NO32、Mg(NO32、NaCl、LiCl、CaCl2、MgCl2、LiBr、LiI、KBrの中から選択される少なくとも1種、或いは2種以上であることが好ましい。これらの中でも特にリチウム塩が最も吸湿性に優れ好ましく、中でも塩化リチウムが単位重量あたりの吸湿量が大きく好ましい。
上記の吸湿助剤の存在状態は任意であり、例えばシリカ中に分子状、クラスター状、粒子状、その他何れかの状態で均一に分散していても、若しくはそれらがシリカ表面に添着、付着していてもよい。また、上記吸湿助剤の少なくとも一部が、直接又は酸素を介してケイ素原子と結合していてもよい。更に、これらの吸湿助剤は固体状であっても液体状であってもよい。また、これらの吸湿助剤は水和物の状態であってもよく、細孔内で一部が水溶液となっていてもよい。
ここで、吸湿助剤がアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩である場合、その含有率は、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下であることが望ましい。ここで、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩とは、本発明のシリカに含有される、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩のうち、含有率の多いものから順に、通常4種、好ましくは3種、更に好ましくは2種、特に好ましくは1種を指すこととする。また、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群に属する金属塩が2種以上の場合には、その合計の金属塩の含有率が、上記範囲内となるようにする。
ところで、本発明のシリカに吸湿助剤を含有させる場合、本発明のシリカは従来のシリカと比較して金属塩を高分散に担持することができ、担持した後も優れた細孔特性を維持することが可能である。この結果、担持された金属塩はその理論吸湿量に近い高効率な吸湿性能を発揮することができる。その理由は、様々な複合的な要因によるものと思われ、詳細は不明であるが、以下のように推定される。
即ち、担体(シリカ)が非常に高純度であり、且つ、そのシロキサン結合の結合角の歪みが少なく均質な構造とすることができるため、担体の表面状態が均質で金属塩が特異的に吸着する活性点が少ない。従って、一般的に、細孔内に担持される金属塩は、低湿度下では固体で存在するが、本発明のシリカにおいては、細孔内に高分散に(すなわち均一に)担持されて高い表面積を有することとなり、高い吸着能力を発揮することができる。一方、高湿度下では、一般に、金属塩は細孔内に水溶液として存在するが、本発明のシリカにおいては、低湿度下の場合と同様に、細孔内に高分散に(すなわち均一に)担持される。金属塩が例えばリチウム塩だと、上記水溶液は粘度が比較的高く、特に細孔内に不均一に担持されてしまうと粘度の高い個所や液膜の厚い個所が局所的に生じてしまう。このような粘度の高い個所や液膜の厚い個所では、従来のシリカでは細孔内に吸湿された水分の細孔内(つまり粘度の高いリチウム塩水溶液内)での拡散速度が不十分となり、細孔内の全てのリチウム塩が有効に吸湿に寄与しない(細孔内の一部のリチウム塩しか吸湿に寄与しない)状態になりがちであるが、本発明のシリカでは上記のように金属塩水溶液が細孔内に均一に担持されるようになるので、これが抑制される。
なお、調湿助剤等の助剤を担持することにより、シリカの細孔の径は若干小さく変化する。このため、シリカに助剤を担持させる場合には、その変化を考慮して、助剤担持前のシリカの細孔径を予め大きく設計しておくことが好ましい。
また、シリカが有していてもよい他の成分としては、周期表の3A族,4A族及び5A族及び遷移金属等の有用異元素の単体及び化合物が挙げられる。用途によって、これらの有用異元素をシリカが有していてもよい。なお、有用異元素の単体及び化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
シリカがその他の成分として有用異元素の単体又は化合物を有している場合、その有用異元素としては、例えば、周期表の3A族,4A族及び5A族並びに遷移金属等からなる元素群(有用異元素群)から選ばれる少なくとも1種の元素の単体又は化合物が挙げられる。そのうち、好ましいものの具体例としては、B、Al、Ga、In、Tl等の3A族元素、C、Si、Ge、Sn、Pb等の4A族元素、N、P、As、Sb、Bi等の5A族原子、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、ランタノイド類、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、アクチノイド類、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、Mt等の遷移金属元素が挙げられる。中でも、B、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、ランタノイド類、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、アクチノイド類などが、各種用途において活性が高く有用である点から好ましい。
これらの有用異元素のうち、特に固体酸触媒・固体塩基触媒用途としてはB、Al、Ga、In、Tl、Fe、Ti、P、W、Mo、Zn等が好ましい。また、水素化触媒・脱水素触媒用途としては、W、Mo、Tc、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Ni、Cu等が好ましい。更に、酸化還元触媒用途としては、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Ge、Pb等が好ましい。また、光触媒用途としてはTi、Zn、W、Sn、Cd等が好ましい。更に、重合触媒用途としてはTi、Zr、Cr、Fe、Ge、Sb、Bi、V、Mo、W、Mn、Co、Cu、Sc、Nb等が好ましい。
但し、勿論、3A族,4A族及び5A族並びに遷移金属に属する元素の用途は、上述したものに限定されるわけではなく、その他にも抗菌剤用途(Ti、Ag、Cu、Zn等)、耐水性向上(安定性付与)用途(Zr、Ti等)、蛍光体用途(希土類、ランタノイド類)など、各種の用途が挙げられるのは言うまでも無い。
なお、本発明のシリカがこれらの有用異元素の単体及び/又は化合物を有するとは、有用異元素がシリカ内部に取り込まれて含有されている場合や、シリカ表面に担持されている場合などを含むものとする。また、有用異元素の単体及び/又は化合物は、粒子状に形成されていることが好ましい。但し、その粒子の径は、シリカの細孔を塞がない程度に小さいことが望ましい。
また、本発明のシリカは、用途に応じては、他の成分として有機基を有していてもよい。以下適宜、シリカが有する有機基を「有用有機基」と呼び、有用有機基を有するシリカを、以下適宜、「有機基含有シリカ」という。なお、有用有機基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
有機基含有シリカに導入される有用有機基の種類に制限は無いが、例えば、いわゆるシランカップリング剤の有機基として公知のものを、何れも選択して使用することができる。但し、特に有用な有用有機基の条件を挙げると、以下の通りである。
有用有機基は、その炭素数が、通常1以上、また、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは50以下である。
また、有用有機基は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、脂肪芳香族化合物より誘導される1価又は2価以上の有機基であることが望ましい。
更に、有用有機基は、それが有する水素の少なくとも一部が原子や原子団等によって置換されていてもよい。有用有機基に置換する原子や原子団は任意であるが、例えば原子や有機官能基が挙げられ、具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、フェニル基、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、アンモニウム基、アリル基などが挙げられる。
これらの原子又は原子団で置換された有用有機基をシリカに導入すると、有機官能基の各々の官能基特性に基づいた機能性が発現するわけであるが、どのような官能基を選択するかは、官能基を導入したシリカ材料の用途に負うところが大きい。
更に、これらの有機官能基の水素の少なくとも一部は、更にO、N、又はS等の各種の原子又は原子団により置換されていてもよい。但し、ここで例示した有機官能基はシリカに導入し易いものの一例であり、使用目的に応じてこの他各種の化学的反応性、物理化学的機能性を持つ有機官能基を導入してもよい。また、有用有機基に置換する原子や原子団は、1種が単独で置換していてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、有用有機基はその中に連結基としてO、N、又はS等の各種の原子又は原子団を有するものであってもよい。
更に、シリカの表面に有用有機基を担持させると、シリカの表面を改質することになる場合がある。この場合、表面改質により得られる特性のひとつに有機物質との親和性向上がある。この特性を獲得するためには、例えば、有用有機基として、炭素数1〜50のアルキル基の他、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基等の有機樹脂等のマトリックスとの親和性若しくは化学反応性が高い官能基を用いることが好ましい。中でも、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基を有用有機基に用いた場合は、官能基内に二重結合を持ち、同様に二重結合を有する有機樹脂と共有結合により強固に結合するので、得られる有機基含有シリカが高い構造強度及び耐水性を発現する。また、担持させた有用有機基は、各種の機能性材料の骨格としても用いられる。
有用有機基はどのような状態で有機基含有シリカに導入されていてもよい。通常は、有用有機基は、その価数に応じた数のケイ素原子と共有結合により直接結合していて、これにより、有用有機基は有機基含有シリカに含有されている。この場合、有用有機基と結合するケイ素原子はシリカ骨格を形成するものの一部であるので、有用有機基は実質的にシリカ骨格に直接導入された状態となっている。このような状態で有用有機基を本発明のシリカへ導入する場合には、有用有機基にシロキサン結合を形成し得る反応性末端が導入された試薬を用いればよい。このような試薬として最も入手が容易であり代表的なものは、下記に示すシランカップリング剤である。このほかにもシラノールと反応し、シロキサン結合を形成する一般合成試薬(以下適宜、「有機基導入試薬」という)が数種あるが、工業的な入手が容易ではなく、また反応条件に制限のあることが多い。
本明細書においてシランカップリング剤とは、ケイ素原子に前述のような有用有機基が直結しているものの総称であり、具体的には、以下の式(I)〜(IV)で表わされる化合物である。
3SiR1 (I)
式(I)において、Xはそれぞれ独立に、水溶液中、空気中の水分、又は無機質表面に吸着された水分などにより加水分解されて、反応性に富むシラノール基を生成する加水分解性シリル基を表わす。その具体的な種類に制限は無く、従来公知のものを任意に使用することができる。例えば、炭素数が通常1以上4以下の低級アルコキシ基、アセトキシ基、ブタノキシム基、クロル基等が挙げられる。なお、これらの加水分解性シリル基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、R1は上記の有用有機基のうち、1価のものを表わす。
式(I)で表わされるシランカップリング剤は最も汎用であり、その具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、4−クロロフェニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
2SiR23 (II)
式(II)において、Xはそれぞれ独立に、式(I)のXと同様の加水分解性シリル基を表わす。
また、R2及びR3は、それぞれ式(I)のR1と同様、1価の有用有機基を表わす。なお、R2及びR3はそれぞれ同じ基であっても異なる基であってもよい。
式(II)で表わされるシランカップリング剤の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン等を挙げることができる。
XSiR456 (III)
式(III)において、Xは式(I)のXと同様の加水分解性シリル基を表わす。
また、R4,R5,R6は、それぞれ式(I)のR1と同様、1価の有用有機基を表わす。なお、R4,R5,R6はそれぞれ同じ基であっても異なる基であってもよい。
式(III)で表わされるシランカップリング剤の具体例としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン等を挙げることができる。
(X3Si)m7 (IV)
式(IV)において、Xはそれぞれ独立に、式(I)のXと同様の加水分解性シリル基を表わす。
また、R7はm価の有用有機基を表わす。なお、mは2以上の整数を表わす。
式(IV)で表わされるシランカップリング剤の具体例としては、各種有機ポリマーやオリゴマーに側鎖として加水分解性シリル基が複数結合しているものなどが挙げられる。
これら式(I)〜式(IV)に具体的に例示した化合物は、入手容易な市販のシランカップリング剤の一部であり、更に詳しくは、科学技術総合研究所発行の「カップリング剤最適利用技術」第9章のカップリング剤及び関連製品一覧表に記載されている。
また、当然のことながら、本発明に使用できるシランカップリング剤は、これらの例示により制限されるものではない。
また、導入する有用有機基の種類及び量は、有用有機基が機能性を発現する範囲であれば特に限定されない。従って、これらの有用有機基を有するシランカップリング剤又は有機基導入試薬は、どのような種類のものを、どれだけ用いてもよい。また、高純度な有機基含有シリカを得る観点から、有用有機基を含むシランカップリング剤又は有機基導入試薬も高純度なものを用いることが好ましい。
なお、上述した有用異元素や有用有機基をはじめ、シリカが有していてもよいその他の成分は、1種を単独でも用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<1−1−3.シリカの製造方法>
続いて、本発明のシリカの製造方法について説明する。
本発明のシリカの製造方法は特に制限されず、公知の任意の方法によって製造することができる。シリカの製造方法としてよく用いられる方法の例としては、次のような方法が挙げられる。
i.水ガラスを硫酸等の酸により中和してからゲル化する方法。
ii.アルコキシシランを加水分解してからゲル化する方法。
iii.アルコキシシラン又は水ガラスを原料とし、界面活性剤を有機テンプレートとして細孔形成を行なう方法(いわゆる、ミセルテンプレートシリカ)。
以下、本発明のシリカを製造する方法の一例について説明するが、これはあくまでも例であって、本発明のシリカの製造方法は以下の例に制限されるものではない。
この方法は、従来のゾル−ゲル法とは異なり、シリコンアルコキシド又はケイ酸アルカリ塩(好ましくはシリコンアルコキシド)を加水分解する加水分解工程と共に得られたシリカヒドロゾルを縮合する縮合工程を経てシリカヒドロゲルを形成する加水分解・縮合工程と、当該加水分解・縮合工程に引き続き、シリカヒドロゲルを熟成することなく水熱処理することにより、所望の物性範囲のシリカゲルを得る物性調節工程とを、ともに包含する方法である。
本発明のシリカの原料として使用されるシリコンアルコキシドとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の炭素数1〜4の低級アルキル基を有するトリ又はテトラアルコキシシラン或いはそれらのオリゴマーが挙げられる。中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリゴマー、特にテトラメトキシシランやそのオリゴマーを用いると、良好な細孔特性を有するシリカが得られるので好ましい。その主な理由としては、シリコンアルコキシドは蒸留により容易に精製し、高純度品が得られるので、高純度のシリカの原料として好適であることが挙げられる。シリコンアルコキシド中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属に属する金属元素(金属不純物)の総含有量は、通常100ppm以下、中でも50ppm以下、更には10ppm以下、特に1ppm以下が好ましい。これらの金属不純物の含有率は、一般的なシリカ中の不純物含有率の測定法と同じ方法で測定できる。
本発明では、先ず、加水分解・縮合工程において、触媒の不存在下にシリコンアルコキシドを加水分解すると共に得られたシリカヒドロゾルを縮合してシリカヒドロゲルを形成する。
シリコンアルコキシドの加水分解に用いる水の量は任意であるが、シリコンアルコキシド1モルに対して、通常2モル倍以上、好ましくは3モル倍以上、特に好ましくは4モル倍以上、また、通常20モル倍以下、好ましくは10モル倍以下、特に好ましくは8モル倍以下の水を用いて行なう。シリコンアルコキシドの加水分解により、シリカのヒドロゲルとアルコールとが生成し、生成したシリカヒドロゾルは逐次縮合してシリカヒドロゲルとなる。
また、加水分解時の温度も任意であるが、通常室温以上、100℃以下であるが、加圧下で液相を維持することで、より高い温度で行なうことも可能である。加水分解に要する反応時間は反応液組成(シリコンアルコキシドの種類や、水とのモル比)並びに反応温度に依存し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定されない。この反応時間は、本発明のシリカのように細孔特性に優れたシリカを得る為には、ヒドロゲルの破壊応力が6MPaを越えない時間であることが好ましい。
なお、この加水分解反応系に、触媒として、酸、アルカリ、塩類などを共存させることで加水分解を促進させることができる。しかしながら、かかる触媒の使用は、後述のように、生成したヒドロゲルの熟成を引き起こすことになるので、本発明のシリカの製造においてはあまり好ましいことではない。
上述したシリコンアルコキシドの加水分解に際しては、攪拌を充分に行なうことが重要となる。例えば、回転軸に攪拌翼を備えた攪拌装置を用いた場合、その攪拌速度(回転軸の回転数)としては、攪拌翼の形状・枚数・液との接触面積等にもよるが、通常は30rpm以上、好ましくは50rpm以上である。
また、この攪拌速度は、一般的に速過ぎると、槽内で生じた飛沫が各種のガスラインを閉塞させたり、また反応器内壁に付着して熱伝導を悪化させ、物性制御に重要な温度管理に影響を及ぼしたりする場合がある。更に、この内壁の付着物が剥離し、製品に混入して品質を悪化させる場合もある。この様な理由から、攪拌速度は2000rpm以下、中でも1000rpm以下であることが好ましい。
本発明において、分液している二液相(水相及びシリコンアルコキシド相)の攪拌方法は、反応を促進させる方法であれば任意の攪拌方法を用いることができる。中でも、この二液相をより混合させるような装置としては、例えば以下の(i)、(ii)が挙げられる。
(i):回転軸が液面に対し垂直又は僅かに角度を持って挿入され、上下に液の流動が生じる攪拌翼を有する装置。
(ii):回転軸方向を二液相の界面と略平行に設け、二液相間に攪拌を生じさせる攪拌翼を有する攪拌装置。
上述した(i)、(ii)の様な装置を用いた際の攪拌翼の回転速度は、攪拌翼の周速度(攪拌翼先端速度)で、通常0.05m/s以上、中でも0.1m/s以上、また、通常10m/s以下、中でも5m/s以下、更には3m/s以下であることが好ましい。
攪拌翼の形状や長さ等は任意であり、攪拌翼としては例えばプロペラ型、平羽根型、角度付平羽根型、ピッチ付平羽根型、平羽根ディスクタービン型、湾曲羽根型、ファウドラー型、ブルマージン型等が挙げられる。
翼の幅、枚数、傾斜角等は反応器の形状、大きさ、目的とする攪拌動力に応じて適宜選定すればよい。たとえば反応器の槽内径(回転軸方向に対して垂直面を形成する液相面の最長径)に対する翼幅(回転軸方向の翼の長さ)の比率(b/D)は0.05〜0.2、傾斜角(θ)90゜±10゜、翼枚数3〜10枚の攪拌装置が好適な例として挙げられる。
中でも、上述の回転軸を反応容器内の液面よりも上に設け、この回転軸から伸ばした軸の先端部分に攪拌翼を設ける構造が、攪拌効率及び設備メンテナンスの観点から好適に使用される。
上記のシリコンアルコキシドの加水分解反応では、シリコンアルコキシドが加水分解してシリカヒドロゾルが生成するが、引き続いて該シリカヒドロゾルの縮合反応が起こり、反応液の粘度が上昇し、最終的にゲル化してシリカヒドロゲルとなる。
次いで、本発明では、物性調節工程として、上記の加水分解により生成したシリカヒドロゲルの硬さが上昇しないように、実質的に熟成することなく、シリカヒドロゲルの水熱処理を行なう。シリコンアルコキシドを加水分解すると、軟弱なシリカヒドロゲルが生成する。なお、このヒドロゲルの物性を安定させるべく、熟成、或いは乾燥させ、次いで水熱処理を施すという方法では、本発明のシリカを製造することは通常、困難である。
上記にある、加水分解により生成したシリカヒドロゲルを、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうということは、シリカヒドロゲルが生成した直後の軟弱な状態が維持されたままで、次の水熱処理に供するようにするということを意味する。
具体的には、シリカヒドロゲルが生成した時点から、通常10時間以内、中でも8時間以内、更には6時間以内、特に4時間以内にシリカヒドロゲルを水熱処理することが好ましい。
また、工業用プラント等においては、大量に生成したシリカヒドロゲルを一旦サイロ等に貯蔵し、その後水熱処理を行なう場合が考えられる。この様な場合、シリカヒドロゲルが生成してから水熱処理に供されるまでの時間、いわゆる放置時間が、上述の範囲を超える場合が考えられる。この様な場合には、熟成が実質的に生じないように、サイロ内での静置中に、例えばシリカヒドロゲル中の液体成分が乾燥しないようにすればよい。
具体的には、例えば、サイロ内を密閉したり、湿度を調節したりすればよい。また、水やその他の溶媒にシリカヒドロゲルを浸した状態で、シリカヒドロゲルを静置してもよい。
静置の際の温度は、できるだけ低くすることが好ましく、例えば50℃以下、中でも35℃以下、特に30℃以下で静置することが好ましい。また、熟成が実質的に生じないようにする別の方法としては、シリカヒドロゲル中のシリカ濃度が低くなるように、予め原料組成を制御してシリカヒドロゲルを調製する方法が挙げられる。
シリカヒドロゲルを実質的に熟成せずに水熱処理することにより奏する効果と、この効果が得られる理由を考察すると、以下のことが考えられる。
まず、シリカヒドロゲルを熟成させると、−Si−O−Si−結合によるマクロ的網目構造が、シリカヒドロゲル全体に形成されると考えられる。この網目構造がシリカヒドロゲル全体に有ることで、水熱処理の際、この網目構造が障害となり、メソポーラスの形成が困難となることが考えられる。またシリカヒドロゲル中のシリカ濃度が低くなるように、予め原料組成を制御して得られたシリカヒドロゲルは、静置中に生ずるシリカヒドロゲルにおける架橋の進行を抑制できる。その為、シリカヒドロゲルが熟成しないと考える。
よって、このシリカの製造方法では、シリカヒドロゲルを熟成することなく、水熱処理を行なうことが重要である。
シリコンアルコキシドの加水分解反応系に酸、アルカリ、塩類等を混合すること、又は加水分解反応の温度を厳しくし過ぎることなどは、ヒドロゲルの熟成を進行させる場合もある。また、加水分解後の後処理における水洗、乾燥、放置などにおいて、必要以上に温度や時間をかけないことが好ましい。
更に、シリコンアルコキシドの加水分解で得られたシリカヒドロゲルは、水熱処理を行なう前に、これを平均粒径が通常10mm以下、中でも5mm以下、更には1mm以下、特に0.5mm以下となるよう、粉砕処理等を施すことが好ましい。
上述の通り、この本発明のシリカの製造方法では、シリカヒドロゲルの生成の直後に、直ちにこれを水熱処理する方法が重要である。但し、この本発明のシリカの製造方法においては、水熱処理するシリカヒドロゲルが熟成していなければよいので、例えば暫時低温下で静置した後に水熱処理するなど、必ずしもシリカヒドロゲルの生成直後、直ちにこれを水熱処理することを必要としない。
このように、シリカヒドロゲルの生成の直後、直ちにこれを水熱処理しない場合には、例えばシリカヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認してから水熱処理を行なえばよい。ヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認する手段は任意であるが、例えば、ヒドロゲルの硬度を参考にする方法が挙げられる。即ち、先述した通り、この破壊応力が通常6MPa以下の柔らかい状態のヒドロゲルを水熱処理することで、本発明で規定する物性範囲のシリカを得ることができる。この破壊応力は、中でも3MPa以下であることが好ましく、特に2MPa以下であることが好ましい。
この水熱処理の条件は任意であり、水の状態が液体、気体の何れでもよいが、中でも、液体の水を使い、シリカヒドロゲルに加えてスラリー状として、水熱処理を行なうことが好ましい。また、水熱処理においては、まず、処理するシリカヒドロゲルに、シリカヒドロゲルの重量に対して通常0.1重量倍以上、好ましくは0.5重量倍以上、特に好ましくは1重量倍以上、また、通常10重量倍以下、好ましくは5重量倍以下、特に好ましくは3重量倍以下の水を加えてスラリー状とする。そしてこのスラリーを、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは100℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下の温度で、通常0.1時間以上、好ましくは1時間以上、また、通常100時間以下、好ましくは10時間以下にわたって、水熱処理を行なう。水熱処理の温度が低過ぎると、細孔容積を大きくすることが困難となる場合がある。
なお、水熱処理に使用される水には、溶媒が含まれていてもよい。溶媒の具体例としては、低級アルコール類であるメタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。この溶媒は、例えばアルコキシシランを加水分解して得られたシリカヒドロゲルを水熱処理する際には、その原料であるアルコキシシランに由来するアルコール類であってもよい。
熱処理に用いる水における、この様な溶媒の含有量は任意であるが、少ない方が好ましい。例えば、上述した様な、アルコキシシランを加水分解して得られたシリカヒドロゲルを水熱処理する際には、このシリカヒドロゲルを水洗し、水洗されたものを水熱反応に供することにより、150℃程度まで温度を下げて水熱処理を行なった場合でも、細孔特性に優れ且つ細孔容積の大きいシリカを製造することができる。また、溶媒を含んでいる水で水熱処理を行なっても、200℃程度の温度での水熱処理を行なうことで、本発明のシリカを容易に得ることができる。
また、メンブランリアクターなどを作る目的で、シリカを膜状或いは層状に粒子、基板、或いは管などの基体上に形成させた場合にも、この水熱処理方法は適用される。なお、加水分解反応の反応器を用い、続けて温度条件変更により水熱処理を行なうことも可能であるが、加水分解反応とその後の水熱処理では最適条件が通常は異なっているため、この様に水を新たに加えないで行なう方法では、本発明のシリカを得ることは一般的には難しい。
以上の水熱処理の条件において、温度を高くすると、得られるシリカの径、細孔容積が大きくなる傾向がある。また、処理時間とともに、得られるシリカの比表面積は、一度極大に達した後、緩やかに減少する傾向がある。以上の傾向を踏まえて、所望の物性値に応じて条件を適宜選択することが好ましい。例えば、調湿性能に注目すれば、高度な調湿性能を発揮するシリカを製造する場合には、水熱処理温度は、100℃〜200℃の範囲であることが好ましい。水熱処理は、シリカの物性を変化させる目的なので、通常、前記の加水分解の反応条件より高温条件とすることが好ましい。
なお、ミクロ構造的な均質性に優れるシリカを製造するためには、水熱処理の際に、反応系内の温度が5時間以内に目的温度に達する様に、速い昇温速度条件とすることが好ましい。具体的には、槽に充填して処理される場合、昇温開始から目標温度到達までの平均昇温速度として、通常0.1℃/min以上、好ましくは0.2℃/min以上、また、通常100℃/min以下、好ましくは30℃/min以下、更に好ましくは10℃/min以下の範囲の値を採用するのが好ましい。
熱交換器などを利用した昇温方法や、あらかじめ作っておいた熱水を仕込む昇温方法なども、昇温速度を短縮することができて好ましい。また、昇温速度が上記範囲であれば、段階的に昇温を行なってもよい。反応系内の温度が目的温度に達するまでに長時間を要した場合には、昇温中にシリカヒドロゲルの熟成が進み、ミクロ構造的な均質性が低下する場合がある。
上記の目的温度に達するまでの昇温時間は、好ましくは4時間以内、更に好ましくは3時間以内である。昇温時間の短縮化のため、水熱処理に使用する水を予熱することもできる。
水熱処理の温度、時間を上記範囲外に設定すると、本発明のシリカを得ることが困難となる場合がある。例えば、水熱処理の温度が高過ぎると、シリカの細孔径、細孔容積が大きくなり過ぎ、また、細孔分布も広がる場合がある。逆に、水熱処理の温度が低過ぎると、生成するシリカは、架橋度が低く、熱安定性に乏しくなり、細孔分布にピークが発現しなくなったり、前述した固体Si−NMRにおけるQ4/Q3値が極端に小さくなったりする場合がある。
なお、水熱処理をアンモニア水中で行なうと、純水中で行なう場合よりも低温で同様の効果が得られる。また、アンモニア水中で水熱処理すると、アンモニアを含まない水を用いた水熱処理と比較して、最終的に得られるシリカは一般に疎水性となる。この際、水熱処理の温度を通常30℃以上、好ましくは40℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下という比較的高温とすると、特に疎水性が高くなる。ここでのアンモニア水のアンモニア濃度としては、好ましくは0.001重量%以上、特に好ましくは0.005重量%以上、また、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
得られた本発明のシリカは適当な条件下で乾燥させる。乾燥時の条件は任意であるが、通常40℃以上、好ましくは60℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは120℃以下で乾燥する。乾燥方法は特に限定されるものではなく、バッチ式でも連続式でもよく、且つ、常圧でも減圧下でも乾燥することができる。中でも、真空乾燥を行なうことは、乾燥が迅速に行なえるのみならず、得られるシリカの細孔容積、比表面積が大きくなるので好ましい。
必要に応じ、原料のシリコンアルコキシドに由来する炭素分が含まれている場合には、通常400℃〜600℃で焼成除去することができる。また、表面状態をコントロールするため最高900℃の温度で焼成することもある。更に、シランカップリング剤や無機塩,各種有機化合物などにより親疎水性を調節するための表面処理を行なってもよい。なお、この表面処理で用いるシランカップリング剤の種類は任意であるが、例えば、有用有機基導入に用いるものといして上述したシランカップリング剤と同様のものを用いることができる。
更に、得られたシリカを、必要に応じて粉砕、分級することで、最終的に目的としていた本発明のシリカを得る。
なお、上記の水熱処理の後に、シリカに含まれる水を親水性有機溶媒と置換してから乾燥を行なうことが好ましい。これによって、乾燥工程におけるシリカの収縮を抑制し、シリカの細孔容積を大きく維持でき、細孔特性に優れ、且つ細孔容積の大きいシリカを得ることができる。この理由は定かではないが、以下のような現象によるものと考えられる。
水熱処理後のシリカスラリー中における液体成分の多くは水である。この水は、シリカと互いに強く相互作用し合っている為に、シリカから完全に水を除去するには大きなエネルギーが必要であると考えられる。
多量の水分が存在する条件下で乾燥過程(例えば加熱乾燥)を行なうと、熱エネルギーを受けた水が未反応のシラノール基と反応し、本発明のシリカの構造が変化する。この構造変化のうち最も顕著な変化はシリカ骨格の縮合であり、縮合によってシリカが局所的に高密度化することが考えられる。シリカ骨格は3次元的構造を有するので、骨格の局所的な縮合(シリカ骨格の高密度化)はシリカ骨格により構成されているシリカ粒子全体の細孔特性に影響を及ぼし、結果的に粒子が収縮して、細孔容積や細孔径が収縮すると考えられる。
そこで、例えばシリカスラリー中の(水を多量に含む)液体成分を親水性有機溶媒で置換することで、このシリカスラリー中の水を除去し、上述したようなシリカの収縮を抑えることが可能となる。
ここで用いる親水性有機溶媒とは、上述した考えに基づき、水を多く溶かすものであればよい。中でも、分子内分極の大きいものが好ましい。更に好ましくは、比誘電率が15以上のものがよい。
また、ここで説明した本発明のシリカの製造方法においては、純度の高いシリカを得るために、親水性有機溶媒にて水を除去した後の乾燥工程で、この親水性有機溶媒を除去することが好ましい。よって、親水性有機溶媒としては、乾燥(例えば加熱乾燥や真空・減圧乾燥等)により容易に除去可能な低沸点のものが好ましい。親水性有機溶媒の沸点としては、通常150℃以下、中でも120℃以下、特に100℃以下のものが好ましい。
具体的な親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、アルデヒド類、エーテル類等が挙げられる。中でも、アルコール類やケトン類が好ましく、特に、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類やアセトンが好ましい。本発明のシリカの製造時には、これら例示の親水性有機溶媒のうち、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び任意の割合で混合して使用してもよい。
なお、水の除去が可能であれば、使用する親水性有機溶媒中に水が含まれていてもよい。もっとも、親水性有機溶媒における水分含有量は当然少ない方が好ましく、通常20重量%以下、中でも15重量%以下、更には10重量%以下、特に5重量%以下であることが好ましい。
本発明のシリカの製造において、上述の親水性有機溶媒による置換処理時の温度及び圧力は任意である。処理温度は任意であるが、通常0℃以上、中でも10℃以上、また、通常100℃以下、中でも60℃以下とすることが好ましい。処理時の圧力は常圧、加圧、減圧の何れでもよい。
シリカスラリーと接触させる親水性有機溶媒の量も任意である。但し、用いる親水性有機溶媒の量が少な過ぎると水との置換進行速度が充分でなく、逆に多過ぎると水との置換効率は高まるが、親水性有機溶媒の使用量増加に見合う効果が頭打ちとなり、経済的に不利となる場合がある。よって、用いる親水性有機溶媒の量は、シリカの嵩体積に対して通常0.5〜10容量倍である。この親水性有機溶媒による置換操作は、複数回繰り返して行なうと、水の置換がより確実となるので好ましい。
親水性有機溶媒とシリカスラリーとの接触方法は任意であり、例えば攪拌槽でシリカスラリーを攪拌しながら親水性有機溶媒を添加する方法や、シリカスラリーから濾別したシリカを充填塔に詰めて、この充填塔に親水性有機溶媒を通液する方法、また、親水性有機溶媒中にシリカを入れて浸漬し、静置する方法などが挙げられる。
親水性有機溶媒による置換操作の終了は、シリカスラリーの液体成分中の水分測定を行なって決定すればよい。例えば、定期的にシリカスラリーをサンプリングして水分測定を行ない、水分含有量が通常5重量%以下、好ましくは4重量%以下、更に好ましくは3重量%以下となった点を終点とすればよい。水分の測定方法は任意であり、例えばカールフィッシャー法が挙げられる。
親水性有機溶媒による置換操作の後、シリカと親水性有機溶媒とを分離し、乾燥することで、本発明のシリカを製造することができる。この際の分離法としては、従来公知の任意の固液分離方法を用いればよい。即ち、シリカ粒子のサイズに応じて、例えばデカンテーション、遠心分離、濾過等の方法を選択して固液分離すればよい。これらの分離方法は、一種を単独で用いてもよく、また二種以上を任意の組み合わせで用いてもよい。
ところで、上述したように、製造されたシリカは、通常、粉砕、分級などして造粒し、粒子状のシリカとして用いられる。この際製造されるシリカの粒子の形状は限定されず任意であるが、例えば、球状であってもよいし、形の規定されないその他の塊状であってもよいし、破砕して細かな形状(破砕状)としてもよいし、更には、破砕状のものを集めて造粒したものであってもよい。コスト的には、粒径の制御が容易な破砕状又はこれを造粒したものが好ましい。更に、シリカをハニカム状に成形するなどしてもよい。また、シリカの粒径は、その使用条件によって適宜設定されるものである。
更に、シリカの粉砕、分級の方法は、それぞれ任意である。
具体例を挙げると、シリカの分級は、例えば篩、重力分級機、遠心分級機などを使用して行なわれる。
また、シリカの粉砕は、例えば、ボールミル(転動ミル、振動ボールミル、遊星ミル等)、攪拌ミル(塔式粉砕器、攪拌槽型ミル、流通管型ミル、アニュラー(環状)ミル等)、高速回転微粉砕機(スクリーンミル、ターボ型ミル、遠心分級型ミル)、ジェット粉砕機(循環ジェットミル、衝突タイプミル、流動層ジェットミル)、せん断ミル(擂解機、オングミル)、コロイドミル、乳鉢などの装置・器具を用いることができる。これらの中で、シリカを比較的の小さな径(例えば2μm以下)とする場合には、ボールミル、攪拌ミルがより好ましい。また、粉砕時の状態としては、湿式法及び乾式法があり、何れも選択可であるが、シリカを比較的の小さな径とする場合には湿式法がより好ましい。湿式法の場合、使用する分散媒としては、水及びアルコール等の有機溶媒の何れを用いても、また2種以上の混合溶媒としてもよく、目的に応じて使い分ける。微粉砕時に不必要に強い圧力や剪断力を長時間かけ続けることは、シリカの細孔特性を損なう場合がある。
更に、湿式粉砕の中でも繊維用途のシリカを製造する際は、粉砕に用いるビーズ直径を小さくすると好ましい。具体的には、ビーズ直径は、通常0.5mm以下、好ましくは0.3mm以下とすることが望ましい。これにより、繊維用途のシリカ(即ち、基材として繊維を用い、樹脂成形体を作製するために、その繊維にバインダ樹脂によって固着させられるシリカ)の粒子径を好適な範囲{前述の条件(i)}に簡単に収めることができる。
また、粉砕機はビーズ効率(ビーズ当たりの粉砕処理量)が高いほど好ましい。
なお、上述したように製造されたシリカが粉砕等されることで粒子状となっている場合、粉砕されたシリカの粒子(一次粒子)を公知の方法により造粒し、粒状(例えば球状)或いは凝集体の形状としてもよい。シリカは一般に一次粒子径2μm以下の場合、特にバインダ樹脂を混合しなくても水スラリーとしてこれを乾燥するだけで凝集粒子を得ることができるが、2μmを越える粒子の場合、凝集させるためにはバインダ樹脂が必要であることが多い。バインダ樹脂を混合した場合の凝集体は、シリカとバインダ樹脂とからなるものであり、本発明の樹脂成形体に該当する。
凝集粒子を製造する場合にバインダ樹脂として用いることができる物質は任意であるが、例えば水に溶解する場合は砂糖、デキストロース、コーンシロップ、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、その他の水溶性高分子、水ガラス、シリコンアルコキシド加水分解液(これは溶媒系にも使用可)などを用いることができ、溶媒に溶解して用いる場合には各種ワックス、ラッカー、シラック、油溶性高分子等を用いることができる。なお、この際のバインダ樹脂としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。但し、シリカの多孔質性能を損なわずに凝集体とするためには、バインダ樹脂を使用しないことが望ましく、やむを得ず使用する場合には最低限の使用量とし、シリカの物性変化を誘起するような金属不純物量の少ない高純度なものを用いることが好ましい。
ところで、上記のように、シリカの造粒方法(粉砕方法)は公知の何れの方法を用いてもよいが、代表的な方法として、転動法、流動層法、攪拌法、解砕法、圧縮法、押し出し法、噴射法等が挙げられる。このうち、本発明の制御された細孔特性のシリカの粒子を得るためには、バインダ樹脂の種類及び使用量、純度の選択に注意を払い、シリカを造粒する際に不要な圧力をかけないこと等が重要である。
以上、本発明のシリカの製造方法の具体例について説明したが、上述したようにこれはあくまでも本発明のシリカの製造方法の一例に過ぎず、その製造方法は実質的に制限されるべきではない。
ところで、上述したように、本発明のシリカにはその他の成分を含有させることができる。シリカにその他の成分を含有させる際の具体的方法は任意である。
例えば、助剤をシリカに導入する場合、以下のような導入方法を用いることができる。即ち、助剤を水熱処理前にドープして本発明のシリカを製造する場合には、原料であるケイ酸アルカリ塩又はシリコンアルコキシドを加水分解した後、これをゲル化する前に、助剤と混合し、これにより得られたシリカヒドロゲルに水熱処理を行なうことによって、助剤を含有した本発明のシリカを製造することができる。また、この応用例として、好ましくは、シリコンアルコキシドと助剤とを混合して加水分解してから、水熱処理を行なってもよい。
助剤は、シリコンアルコキシドを加水分解しシリカヒドロゲルを得る工程において、1種又は2種以上系内に混合される。その形態などについては、均質なシリカヒドロゲルの形成を妨げない範囲であれば特に限定されず、シリコンアルコキシドの加水分解に対して強い触媒活性を発現しないものが好ましい。また、高純度なシリカを得る観点から、助剤も高純度なものを用いることが好ましい。
助剤の混合方法は、均質なシリカヒドロゲルの形成を妨げない方法であれば特に限定されず、助剤をシリコンアルコキシド加水分解のための水に混合しても、シリコンアルコキシドに混合しても、加水分解直後に均一溶液となったヒドロゾルに混合してもよく、操作性に応じ適宜選択される。また、必要であれば、助剤を前もって加水分解した後に上記の系に混合したり、逆に、シリコンアルコキシドの部分加水分解を行なった後に助剤を混合したりしてもよい。
また、本発明のシリカは、細孔制御後の高純度シリカに助剤を後担持させる方法でも製造できる。この場合、まず、シリカ細孔中に助剤を導入する。その方法としては、公知のいかなる方法でもよいが、例えば、触媒調整法としてよく知られている含浸法が挙げられる。具体例としては、吸着(absorption)法、ポアフィリング(pore-filling)法、“incipient wetness”法、蒸発乾固(evaporation to dryness)法、スプレー(spray)法、ドライコンセントレート法などが挙げられる。但し、助剤として吸湿助剤を担持させる場合、細孔外に吸湿助剤が付着するとこの吸湿助剤が大粒子となり、吸湿特性が低下するため、特にポアフィリング法のように吸湿助剤の水溶液が細孔外にあふれない方法が好ましい。
更に、この場合も、助剤は、シリコンアルコキシドを加水分解し、熟成すること無しに水熱処理して得られたシリカに、上記の方法で担持させることができるが、その形態などは、助剤が機能性を発現する範囲であれば特に限定されない。また、高純度なシリカを得る観点から、助剤も高純度なものを用いることが好ましい。
また、必要に応じて担体であるシリカ表面の親疎水性や表面活性や酸性度などの状態を変化させるための表面処理を施してもよい。助剤を含有させる方法としては、前述のいかなる方法によって行なってもよい。細孔制御を確実に行なうことができ、含有する助剤を幅広く選択可能なことから、担持による方法がより好ましい。
なお、ここで説明した、助剤をシリカに導入する方法は、上記の吸湿助剤等をシリカに導入する場合にも適用可能であることは言うまでもない。
また、シリカにその他の成分として有用異元素の単体又は化合物を含有及び/又は担持させる場合には、上述した助剤の導入方法と同様の方法を用いることができる。
更に、シリカにその他の成分として有用有機基を導入する場合、例えば、上述した助剤の導入方法において、助剤に代えてシリカカップリング剤(若しくは有機基導入試薬)を用いる以外は同様の操作を行なうことで、有用有機基の導入を行なうことができる。
即ち、助剤をシリカに導入する場合、シリコンアルコキシドを加水分解する際に、前述の有用有機基を含むシランカップリング剤(若しくは有機基導入試薬)を混合してからゲル化を行なう。ついで、これにより得られたシリカヒドロゲルを用いて、水熱処理による方法を応用して有機基含有シリカを製造することができる。
また、この応用例として、好ましくはシリコンアルコキシドとシランカップリング剤又は有機基導入試薬とを混合してから加水分解する方法が挙げられる。なお、この工程においては、有機基導入試薬のうち、水分により失活するものを用いることは難しい。
更に、シランカップリング剤や有機基導入試薬は、シリコンアルデヒドを加水分解しシリカヒドロゲルを得る工程において、1種又は2種以上系内に混合される。有機基導入試薬の種類及び量などについては、前述のように均質なシリカヒドロゲルの形成を妨げない範囲であれば特に限定されず、これらのシランカップリング剤や有機基導入試薬は、それらの試薬自身や反応に伴う分解生成物が、均質なヒドロゲルの形成を妨げない限り、どのような種類のものを用いてもよい。また、高純度なシリカゲルを得る観点から、シランカップリング剤や有機基導入試薬も、高純度なものを用いることが好ましい。
また、シランカップリング剤や有機基導入試薬の混合方法は、均質なシリカヒドロゲルの形成を妨げない方法であれば特に限定されず、シランカップリング剤や有機基導入試薬をシリコンアルコキシドの加水分解のための水に混合しても、シリコンアルコキシドに混合しても、加水分解直後に均一溶液となったヒドロゾルに混合してもよく、操作性に応じ適宜選択される。また、必要であれば、シランカップリング剤や有機基導入試薬を前もって加水分解した後に上記の系に混合したり、逆に、シリコンアルコキシドの部分加水分解を行なった後にシランカップリング剤又は有機基導入試薬を混合したりしてもよい。
更に、有機基含有シリカは、細孔制御後の高純度シリカに目的とする有用有機基を含む化合物を後担持させる方法でも製造できる。この場合、まず、シリカの細孔中にシランカップリング剤や有機基導入試薬を導入する。その方法としては、例えば、無機粉体のシランカップリング剤処理法としてよく知られている湿式処理法(水溶媒系、非水溶媒系)、乾式処理法、スラリー法、スプレー法、ドライコンセントレート法等の公知の方法の何れを用いてもよい。
以上のように、有用有機基は、シリコンアルコキシドを加水分解し、熟成すること無しに水熱処理して得られたシリカゲルに、上記の方法で導入させることができるが、目的有機基を後担持させる場合には、担体となる高純度シリカゲルに対して前処理を行なってもよい。例えば、前述した原料由来の炭素分の焼成除去、表面状態をコントロールするための焼成、無機酸による煮沸処理などを行なってもよい。
<1−1−4.その他>
以上説明した本発明のシリカは、大きな細孔容積及び比表面積を有するように、その構造を制御されたものであり、従って、吸着発熱性、調湿性、冷却効果、保水性、薬剤徐放性、吸着性、及び抗菌性などの吸放出性能を効果的に発揮することできる。また、上記の吸湿助剤等のように、助剤を用いることで目的とする特性を更に高めることができる。
また、特に本発明のシリカは、以下に示す理由から優れた調湿機能を有する。
シリカは、高湿度では余剰の水蒸気を吸湿する一方、低湿度では吸湿していた水蒸気を放出する性質があり、平均細孔径を3〜5nmに設定すれば、系内を平均細孔径に対応した湿度(住環境における快適湿度領域40%〜60%)に調湿することができる。また平均細孔径を5nm〜10nmに設定すれば、高湿度(60%〜90%)の水蒸気を吸湿して調湿するため、例えば衣服内の運動後などの高湿度下での蒸れなどを解消することができる。この調湿機能はシリカに対する水蒸気の吸着等温線により評価されるが、細孔径分布がシャープでなくても、吸湿量が最大になるような細孔容積になるように、細孔の最頻直径(Dmax)を上記の範囲内で調整することが必要となる。
吸着物質(ここでは水蒸気)が毛管凝縮を起こしシリカに急激に吸着され始める相対蒸気圧(P/P0)〔ここでは、吸着物質が水蒸気なので、(P/P0×100)が相対湿度(%)に相当する。〕と細孔半径r(nm)との相関関係は、下式(2−1)のケルビン式で表される。
ln(P/P0)=−(2Vmγcosθ)/(rRT) (2−1)
上式(2−1)において、Vmは吸着物質のモル体積、γは吸着物質の表面張力、θは吸着物質の接触角、Rは気体定数、Tは吸着物質の絶対温度(K)である。
ここで、吸着物質を水蒸気とし温度T=298K(=25℃)とすると、モル体積Vm=18.05×10-63/mol、表面張力γ=72.59×10-3N/mとなり、更に、気体定数R=8.3143J/deg・mol、接触角θ=0とすると、上式(2−1)は下式(2−2)となる。
ln(P/P0)=−1.058/r (2−2)
上式(2−2)より、細孔半径r(nm)のシリカでは、相対蒸気圧(P/P0)がexp(−1.058/r)になると、水蒸気が毛細管凝縮してシリカの細孔内に急激に吸着されることが分かる。
このように、シリカの細孔により水蒸気の吸着が行なわれるようになる相対蒸気圧(P/P0)ひいては相対湿度は、その細孔径2r(nm)を主な要因として決定される。吸湿量が最大となる細孔容積になるように、細孔の最頻直径(Dmax)を上記の範囲内で調整することよって、湿度変化に対する吸湿の応答が迅速であり、十分な吸湿量を得ることができる。
本発明のシリカは、シロキサン結合角の歪みの少ない均質で安定な構造とすることができることから、たとえ過酷な環境下(例えば高温・高湿下)においても細孔特性などの物性変化が少ないといった特性を有する。従って、長時間にわたって使用したり、加熱による再生工程を伴う繰り返し行なったりしても、細孔特性ひいては吸放出特性の劣化が少ないという利点がある。
本発明のシリカは、同程度の細孔径を有する他のシリカと比較して、比較的高細孔容積且つ高比表面積という特徴を有しており、このため、同程度の細孔径を有する他のシリカよりも、吸着物質の吸着能力に優れ、且つ、吸着容量が大きい。従って、他のシリカでは調湿性に注目すると、高湿度下のためシリカの吸湿能力が飽和した場合にはシリカが結露してしまい、シリカによる調湿が不可能になるが、本発明のシリカではこのようなことが抑制され少ない量で効率的に調湿を行なえるという利点がある。
また、本発明のシリカは非晶質であることから、極めて生産性に優れているという利点がある。
〔1−2.樹脂〕
本発明のコーティング用組成物に用いられるバインダ樹脂(これを適宜「本発明のバインダ樹脂」という。)は、以下の特徴を有する。
(a)親水性であること(水酸基価に関する特徴):
本発明のバインダ樹脂は、親水性であることが好ましい。本発明において、バインダ樹脂が親水性であることは、組成中に含まれる無機多孔体の凝集を防止し、たとえその無機多孔体が沈降したとしても容易に再分散できる、また、樹脂成形体の表面をより親水性にすることができるという理由で好ましい。なお、バインダ樹脂が「親水性である」とは、主鎖若しくは側鎖に水酸基を有するポリマーを含むことをいう。なお、複数のバインダ樹脂を併用する場合には、バインダ樹脂の混合物が全体として親水性を示せばよい。
また、本発明のバインダ樹脂は、その固形分の水酸基価が、通常5mgKOH/g以上、好ましくは8mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、また、通常80mgKOH/g以下、好ましくは65mgKOH/g以下、より好ましくは50mgKOH/g以下であることを特徴とする。バインダ樹脂の水酸基価が少な過ぎると、コーティング用組成物において無機多孔体の分散安定性の低下、樹脂成形体において、耐擦傷性の低下、基材との密着性の低下を生じる場合がある。バインダ樹脂の水酸基価が多過ぎると、樹脂成形体の耐水性が低下する場合がある。なお、複数のバインダ樹脂を併用する場合には、バインダ樹脂の混合物全体の水酸基価が上記範囲を満たしていればよい。
なお、バインダ樹脂の水酸基価の測定は、JIS K1557の「6.4 水酸基価」に準拠して行なうことができる。即ち、無水フタル酸のピリジン溶液(濃度約140g/1L)をエステル化試薬として用い、測定対象となるバインダ樹脂の水酸基をエステル化した後、過剰の試薬を0.5N水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、その結果からバインダ樹脂中の水酸基価を求めることができる。
また、上記手法で測定が困難な場合には、他の手法として、バインダ樹脂のポリマーを構成するモノマーの各ユニットの分子量と組成比が分かれば、下記式を用いて算出することができる。
Σ(m×χm)/Σ(Mwn×χn)×56.11×1000
但し、上記式において、
Mwn :各ユニットの分子量、
χn :各ユニットのモル分率、
m :水酸基含有モノマー1ユニットあたりに含まれる水酸基のモル数、
χm :水酸基含有モノマーユニットのモル分率、
56.11 :水酸化カリウムの分子量、をそれぞれ表わす。
その他にも、1H−NMR法によってユニットの構成、組成比を推定して算出する方法や、IR(赤外)分光法によってOH吸収ピークの検量線を作成し、ピーク強度と検量線とから算出する方法等を用いることができる。
(b)ガラス転移温度(Tg)に関する特徴:
無機多孔体の細孔にバインダ樹脂が浸入し、細孔を埋めると、吸放出性能が低下する場合がある。従って、本発明のバインダ樹脂は、これを用いた本発明のコーティング用組成物(更には、そのコーティング用組成物を用いた本発明の樹脂成形体)において、無機多孔体の細孔を埋めないものである必要がある。
このため、本発明のバインダ樹脂は、そのガラス転移温度Tgが通常−5℃以上、好ましくは0℃以上、また、通常40℃以下、好ましくは35℃以下であることを特徴とする。Tgが低過ぎると、バインダ樹脂の強度が弱くなり過ぎ、樹脂成形体の吸湿性の低下や、べた付きなどの物性・取り扱い性の悪化を招く場合がある。Tgが高過ぎると、バインダ樹脂の強度が強くなり過ぎ、樹脂成形体にクラックや剥離を生じる原因となる場合がある。
(c)合成樹脂であること:
本発明のバインダ樹脂は、上述の特徴を満たすものであれば、その種類は特に制限されないが、合成樹脂であることが好ましい。合成樹脂の具体例としては、ニトロセルロース、酢酸セルロース、酪酢酸セルロースなどのエステル系セルロース;メチルセルロース、エチルセルロースなどのエーテル系セルロース;ポリアミド樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、若しくはアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン・尿素樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリベンゾチアゾール等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。
また、油脂、ボイル油、煮あまに油、桐油スタンド油、油性フェノール樹脂、マレイン化油などの加工油脂;乾性油変性フタル酸樹脂、不乾性油変性フタル酸樹脂、変性アルキド樹脂、エポキシ−脂肪酸エステル樹脂、エポキシ−アルキド樹脂、油編成ポリウレタン樹脂などの油或いは脂肪酸変性フタル酸樹脂;不飽和ポリエステル樹脂、フッ素変性ポリエステル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂などのポリエステル樹脂;シリコーン変成樹脂;アクリルシリコーン変成樹脂;含フッ素樹脂;無機系樹脂等が挙げられる。
更に、スチレンマレイン樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシエステル樹脂、ポリアミン樹脂も、バインダ樹脂として使用することができる。
更に、後述するように、溶剤として有機溶媒の他に水等の水系溶媒(親水性の溶剤)を併用する場合には、バインダ樹脂としては、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン、熱反応型ウレタン系樹脂、アクリル、イソシアネート系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ポリアクリル酸系エマルジョン、シリコーン系変性樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、高分子ラテックス等のポリマーを用いることが好ましい。
また、粘着性の観点からは、バインダ樹脂として、高分子ラテックスに分類される樹脂を用いることが好ましい。高分子ラテックスの例としては、合成樹脂ラテックスが挙げられる。
合成樹脂ラテックスの具体例としては、ポリウレタンラテックス、アクリル樹脂ラテックス、ポリ酢酸ビニルラテックス及びこれらの変成体、共重合体などが挙げられる。従って、この場合のバインダ樹脂としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル及びこれらの変性体、共重合体などが挙げられる。
代表的な合成樹脂ラテックスであるアクリル酸ラテックスについて、更に詳細に説明する。
特に好ましいアクリル樹脂ラテックスとしては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合体エマルジョンがある。その重合体エマルジョン中のバインダ樹脂の主成分となる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。この主成分と併用して用いられるものとして、共重合可能なエチレン性不飽和単量体があり、単量体としては、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アミド、N−メチロールアクリル酸アミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸などが挙げられる。
上記の単量体と併用する場合、主成分となる(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、50重量%以上とするのがよい。また、アクリル樹脂は乳化重合法により形成したものがよい。例えば窒素置換した反応容器で水、エチレン性不飽和単量体、乳化剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなど)、及びラジカル重合開始剤を混合し、加熱攪拌して所定の温度で重合する。アクリル樹脂の粒子径の制御は、乳化重合時における乳化剤の濃度を調整することにより行なうことができる。
更に、ガラス転移温度Tgが−5℃〜40℃のバインダ樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。
また、上記バインダ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
中でも、本発明のバインダ樹脂は、水性化アニオン系樹脂であることが好ましい。ここで「水性化」の樹脂とは、親水性溶媒によって水性化された樹脂のことをいう。水性化することによって、樹脂組成物に親水性を与えることが容易となり、結露防止性を向上させるという効果を得ることができ、また、細孔を有効に利用できるため、調湿性を向上させるという効果を得ることができる。更には、密着性、柔軟性を向上させるという効果も得ることができる。水性化アニオン系樹脂の具体例としては、ポリエステル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、酢酸ビニル・アクリル系樹脂等が挙げられる。
(d)その他:
上述の条件を満たす限り、本発明に用いるバインダ樹脂は任意である。但し、上述の様に、バインダ樹脂が無機多孔体の細孔を埋めないようにするために、バインダ樹脂としては、バインダ樹脂が自由に動ける状態にあるとき、即ち、バインダ樹脂が液体状態にあるときや何らかの溶剤に溶解又は分散しているとき(例えば、無機多孔体及びバインダ樹脂が溶剤に混合されてコーティング用組成物となっているとき)に、シリカの細孔内に浸入し難いものを用いることが望ましい。これにより、樹脂成形体(本発明の樹脂成形体)を製造した際に無機多孔体の細孔がバインダ樹脂で塞がれることを防止することができ、無機多孔体の吸放出性能を高めることができる。
一般に、本発明のコーティング用組成物中のバインダ樹脂の平均樹脂粒径は、併用する無機多孔体の細孔最頻直径よりも大きいことが好ましい。即ち、バインダ樹脂の平均樹脂粒径は、無機多孔体の細孔最頻直径の1倍よりも大きいことが好ましいが、中でも1.1倍以上であることがより好ましく、1.2倍以上であることが更に好ましい。
また、バインダ樹脂の平均樹脂粒径は、併用する無機多孔体の最頻粒径よりも小さいことが好ましい。即ち、バインダ樹脂の平均樹脂粒径は、無機多孔体の最頻粒径の1倍よりも小さいことが好ましいが、中でも0.95倍以下であることがより好ましく、0.9倍以下であることが更に好ましい。
具体的な数値として、バインダ樹脂の平均樹脂粒径は、通常5nm以上、中でも10nm以上、また、通常10μm以下、中でも1μm以下であることが好ましい。バインダ樹脂の平均樹脂粒径が小さ過ぎると、無機多孔体の細孔に浸入し易くなり、更に無機多孔体の分散安定性が悪く、無機多孔体の沈降が生じ易くなる場合がある。バインダ樹脂の平均樹脂粒径が大き過ぎても、無機多孔体の分散安定性が悪くなる場合がある。
但し、上述のように、溶剤の種類等の違いによって、バインダ樹脂の分散状態が変化するため、その状態によって、適した分子量のバインダ樹脂を用いることができる。例えば、バインダ樹脂が自由に動ける状態にある場合に、バインダ樹脂が無機多孔体の細孔内に浸入しないようにするためには、分子量が通常10000以上、好ましくは20000以上、より好ましくは30000以上、更に好ましくは35000以上、また、通常1000000以下、好ましくは800000以下、より好ましくは500000以下のバインダ樹脂を用いることが望ましい。バインダ樹脂の分子量を10000以上とすることにより、バインダ樹脂が無機多孔体の細孔を埋めることを防止でき、また、分子量を1000000以下とすることにより、無機多孔体及びバインダ樹脂を溶剤と共にコーティング用組成物とした場合に、バインダ樹脂の粘性が高くなり過ぎてコーティング用組成物の取り扱い性が低下することを防止することができる。
また、バインダ樹脂が自由に動ける状態にある場合に、バインダ樹脂が無機多孔体の細孔内に浸入しないようにするためには、「バインダ樹脂の分子量/無機多孔体の細孔最頻直径(Dmax)」で表されるバインダ樹脂の分子量と無機多孔体の細孔最頻直径(Dmax)との比の値(但し、この際の無機多孔体の細孔最頻直径(Dmax)の単位は「nm」とする)が、通常200以上、好ましくは2500以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは35000以上、また、通常500000以下、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下であることが望ましい。これによっても、バインダ樹脂が無機多孔体の細孔を埋めることを防止でき、また、無機多孔体及びバインダ樹脂を溶剤と共にコーティング用組成物とした場合に、バインダ樹脂の粘性が高くなり過ぎてコーティング用組成物の取り扱い性が低下することを防止することができる。
ここで、バインダ樹脂が自由に動ける状態にある場合であっても、バインダ樹脂が無機多孔体の細孔内に浸入するのを防ぐことができる理由を説明する。
上記のように、バインダ樹脂が自由に動ける状態にある場合にバインダ樹脂が無機多孔体の細孔内に浸入しないようにするためには、バインダ樹脂の平均樹脂粒径が無機多孔体の細孔の径よりも大きくなるようにすることなどによって、バインダ樹脂が無機多孔体の細孔内に浸入できないようにすればよい。ここで「バインダ樹脂の平均樹脂粒径」とはコーティング組成物中のバインダ樹脂の分子の径をいうが、バインダ樹脂が有機溶媒や水系溶媒などの溶剤に溶解又は分散して、その分子が凝集した粒子(例えば、凝集塊やコロイドなど)となっているときには、「バインダ樹脂の平均樹脂粒径」とは、その凝集した粒子の平均粒径を指すものとする。
ところで、バインダ樹脂の平均樹脂粒径(大きさ)は、バインダ樹脂の分子量の大きさに関連しており、分子量が大きいバインダ樹脂ほどその径も大きいことが知られている。よって、無機多孔体の細孔に浸入しない程度に大きいバインダ樹脂を選択する場合には、所定の範囲の大きさの分子量を有するバインダ樹脂を選択すればよいことになる。
従って、分子量が上記範囲内にあるバインダ樹脂、又は、バインダ樹脂の分子量と無機多孔体の細孔最頻直径(Dmax)との比が上記範囲内にあるバインダ樹脂は、無機多孔体(特に、本発明のシリカ)の細孔に浸入し難い程度以上の大きさの径を有しているため、バインダ樹脂が自由に動ける状態にある場合であっても、無機多孔体内にバインダ樹脂が入り込むことを防止することができる。これにより、バインダ樹脂が無機多孔体の細孔を埋めることを防止することができる。
なお、バインダ樹脂の分子量は、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)や、バインダ樹脂を溶解させた溶液の粘度測定などにより計測することができる。
また、固体状態におけるバインダ樹脂の平均樹脂粒径D(nm)は、通常、固体状態のバインダ樹脂の密度a(g/ml)とバインダ樹脂の分子量Mとを用いて、下記計算式により算出することができる。
Figure 0005044152
また、溶剤中に溶解又は分散している場合のバインダ樹脂の平均樹脂粒径は、多角度光散乱(Multi-Angle Light Scattering:MALS)検出器などを用い、溶剤にレーザー光を照射し、そこから得られる光散乱強度から測定することができる。更に、透過型電子顕微鏡によりバインダ樹脂を観察して径を測定する方法、バインダ樹脂が溶解又は分散している溶剤の濁り度(turbidity)から径を測定する方法、CHDF(capillary hydrodynamic fractionation)法などによっても、バインダ樹脂の平均樹脂粒径を測定することができる。
なお、バインダ樹脂が溶剤中に溶解や分散している場合も、濃度が高い場合には、バインダ樹脂のポリマー鎖は糸まり状となっており、固体状態の分子径に近い分子径を有していると考えられる。
但し、通常、溶剤に溶解していない状態では、バインダ樹脂はポリマー鎖が球状に縮まって存在するが、溶解した状態においては、バインダ樹脂は分子単独で存在するのではなく、複数の分子が絡み合って分子サイズが大きくなった状態や、膨潤して分子サイズが大きくなった状態となっていることがある。従って、分子量から算出されるバインダ樹脂の平均樹脂粒径が無機多孔体の細孔最頻直径(Dmax)よりも小さくても、溶剤中においてバインダ樹脂が無機多孔体の細孔内に浸入することを防止できる場合がある。具体例としては、平均分子量が95000のアクリル樹脂の場合には、その径(分子サイズ)は6nmとなるが、細孔最頻直径(Dmax)が15nmの無機多孔体の細孔を塞ぐことは無い。
また、溶解した状態のバインダ樹脂の分子サイズは、バインダ樹脂と溶剤との溶解度によっても変化する。しかし、何れの状態においても、バインダ樹脂の分子量と無機多孔体の細孔最頻直径(Dmax)との比、又は、バインダ樹脂の分子量が上記範囲内であれば、バインダ樹脂が無機多孔体の細孔を埋めることを防止することができる。
また、特にバインダ樹脂が溶剤(特に水系溶媒)中でコロイドとなりエマルジョンが形成されている場合には、エマルジョン中のバインダ樹脂(コロイド)は、分子が凝集した構造となって界面活性剤(保護コロイド)により安定化し、無機多孔体の細孔に浸入しない程度に大きくなっている。即ち、バインダ樹脂の平均樹脂粒径(ここでは、エマルジョン中のバインダ樹脂のコロイドの平均粒径)が、無機多孔体の細孔最頻直径よりも大きくなっているのである。
また、仮にバインダ樹脂の分子量が上述した範囲に収まっていない場合であっても、バインダ樹脂の分子量に関わらず、通常、バインダ樹脂のコロイドの大きさは無機多孔体の細孔に浸入しない程度に大きくなる。このため、バインダ樹脂のコロイドが安定している限りはバインダ樹脂が無機多孔体の細孔に浸入することを防止することができる。
ところで、エマルジョン中におけるバインダ樹脂のコロイドの安定性はガラス転移温度Tgに関係している。従って、コロイドが安定するガラス転移温度Tgを有するバインダ樹脂を用いることで、溶剤を用いたエマルジョン中で無機多孔体の細孔にバインダ樹脂が浸入することを防ぐことができる。具体的には、上記のようにガラス転移温度Tgが通常−5℃以上、40℃以下のバインダ樹脂を用いれば、溶剤とともにエマルジョンとなった状態において、バインダ樹脂が無機多孔体(特に、本発明のシリカ)の細孔に浸入することを防止することができる。
更に、ガラス転移温度Tgが−5℃以上となることにより、バインダ樹脂が適当な強度を有することができるため、無機多孔体及びバインダ樹脂の組成物(例えば、本発明のコーティング用組成物)を成形して本発明の樹脂成形体とした場合に、吸湿機能の低下や、べた付きなどの物性・取扱い性が悪くなる虞がなく、また、無機多孔体の分散を行ない易い。また、ガラス転移温度Tgが40℃以下となることにより、バインダ樹脂が硬過ぎることがなく、無機多孔体及びバインダ樹脂の組成物(例えば、本発明のコーティング用組成物)を成形して本発明の樹脂成形体とした場合に、無機多孔体が成形体から脱離する虞を無くすことができ、また、風合いを良好にすることができる。
また、エマルジョンは、分散している粒子の径に応じてコロイダルディスパージョン(粒子径10nm〜50nm)、エマルジョン(50nm〜500nm)、サスペンジョン(0.5μm〜10μm)などの分類がある。
更に、バインダ樹脂の架橋度が大きい場合にも、バインダ樹脂の平均樹脂粒径は大きくなる。従って、バインダ樹脂としては高架橋度のものが好ましい。よって、本発明のコーティング用組成物の製造中や製造後などに、バインダ樹脂を架橋する架橋剤を適宜混合することが好ましい。なお、バインダ樹脂の架橋度は有機溶媒に対する溶解性を調べることで測定することができる。
〔1−3.溶剤〕
本発明のコーティング用組成物に用いられる溶剤(これを適宜「本発明の溶剤」という。)は、以下の特徴を有する。
本発明の溶剤としては、少なくとも一種の有機溶媒を用いる。有機溶媒は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、一種又は二種以上の有機溶媒を、その他の溶媒、例えば、一種又は二種以上の水系溶媒と混合して用いてもよい。以下、有機溶媒と水系溶媒とに分けて説明する。
[1−3−1]有機溶媒:
本発明では、溶媒として少なくとも一種の有機溶媒を用いる。溶媒の種類によって、コーティング用組成物の粘度やバインダ樹脂の平均樹脂粒径が変化する。溶媒として有機溶媒、特にアルコール等の親水性溶媒を用いることで、バインダ樹脂の平均樹脂粒径が小さくなるため、溶媒中によく分散され、無機多孔体の沈降・凝集を抑制することができる。一方、溶媒として有機溶媒を使用せず、水のみを用いると、バインダ樹脂を分散させることができないため、無機多孔体の沈降・凝集が生じたり、乾燥速度が遅いことによって塗工性、塗工面外観が損なわれる場合がある。
有機溶媒の種類について特に制限は無く、公知の有機溶媒を任意に用いることができる。上述したように、バインダ樹脂の平均樹脂粒径と無機多孔体の最頻粒径及び細孔最頻直径(Dmax)との比の値が上記所定の範囲にあれば、バインダ樹脂が無機多孔体の細孔に入り込むことが無いため、本発明の樹脂成形体を安定して製造することができる。
有機溶媒の中でも、特に、無機多孔体の細孔に浸入し難いもの(例えば、無機多孔体に対して大きい接触角を有しているもの)を用いれば、コーティング用組成物において無機多孔体の細孔にバインダ樹脂が浸入することを防止することができ、好ましい。
また、有機溶媒として、バインダ樹脂に対して貧溶媒を用いる、又は、溶剤中に一部貧溶媒を加えることも好ましい。これにより、バインダ樹脂のポリマー鎖を伸ばしきらず(即ち、絡み合ったままとして)有機溶媒中に溶解させることが可能となり、バインダ樹脂が無機多孔体の細孔内に浸入することを抑制することができる。
更に、バインダ樹脂のポリマー鎖を伸ばしきらないという観点から、粘度が高い有機溶媒を用いることも好ましい。但し、使用する際のことを考慮すると、例えばコーティングなどする場合には操作が困難となる場合がある。
使用できる有機溶媒の具体例としては、例えば、ネオペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ソルベッソ等の鎖状炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、セロソブル、ブチルソルブ、セロソルブアセテートなどのエーテル類、ミネラルスピリット(炭化水素油)などが挙げられる。
なお、上記有機溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
中でも、有機溶媒としては、親水性有機溶媒が好ましい。ここで「親水性有機溶媒」とは、親水性を有する有機溶媒を言う。親水性有機溶媒は、水相と樹脂相の両方にバランスよく分散し、バインダ樹脂の集合体のサイズを最適化できるという理由で好ましい。親水性有機溶媒の例としては、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール等)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、エステル類(酢酸エチル、セロソルブアセタート、ブチルセロソルブアセタート等)等が挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン等が特に好ましい。
[1−3−2]水系溶媒:
有機溶媒に加えて水系溶媒を使用する場合、水系溶媒の種類について特に制限は無く、公知の水系溶媒を任意に用いることができる。使用できる水系溶媒の具体例としては、例えば、水や任意の水溶液等が挙げられる。中でも、水系溶媒としては水が好ましい。水を混合する場合、イオン交換水を用いることが好ましい。
即ち、本発明の溶剤としては、親水性有機溶媒を何れか一種単独で、又は二種以上を混合して用いるか、一種又は二種以上の親水性有機溶媒を水と混合して用いることが、特に好ましいということになる。
上述したように、バインダ樹脂のガラス転移温度Tgが上記所定の範囲にあれば、バインダ樹脂がコロイドを形成し、無機多孔体の細孔に入り込むことが無いため、本発明の樹脂成形体を安定して製造することができる。即ち、溶剤として有機溶媒に加えて水系溶媒を併用し、本発明のコーティング用組成物を水系エマルジョンの状態とすると、上述したように、分散状態でのバインダ樹脂の平均樹脂粒径(樹脂サイズ)が無機多孔体の細孔径よりもかなり大きくなることが期待できるため、無機多孔体の細孔内にバインダ樹脂が浸入することを防止できる。但し、バインダ樹脂の平均樹脂粒径が大きくなり過ぎると、上述の様に分散不良による無機多孔体の沈降・凝集が生じる場合があるので、有機溶媒と水系溶媒とを併用する場合には、それらの溶媒の比率を、適切な平均樹脂粒径が得られるように調整する必要がある。
また、水系溶媒を併用することにより、設備の防爆化が不要となったり、防爆化の設備を簡素化することができるという利点もある。
更に、環境上好ましくない物質の使用、発生を抑制できるという利点もある。完全密閉の難しい場合に、できるだけ有機溶媒を発生させないことが好ましいからである。
更に、水系溶媒の併用により、後述の様に本発明の樹脂成形体を成形した場合に、樹脂成形体に残存する有機溶媒の量を容易に減少させることができる上、接着力を向上させることができるという利点もある。
ところで、有機溶媒と水系溶媒とを併用し、バインダ樹脂を水性エマルジョンとして存在させる場合、本発明のコーティング用組成物を適用する対象である基材の種類、用途、使用環境等に応じて、凝固特性が発現する温度が適当な温度となる水性エマルジョンを用いることが望ましい。これにより、基材が耐熱性に優れないものである場合などでも、本発明のコーティング用組成物を適用することができる。なお、水性エマルジョンの凝固特性が発現する温度とは、種々の添加剤を配合したエマルジョンを攪拌しながら昇温した時に、エマルジョンが流動性を失い凝固する温度であり、例えば露点を下げる添加剤などを加えることで凝固温度を調節することが可能である。
また、溶剤として有機溶媒の他に水系溶媒を併用してコーティング用組成物を水系エマルジョンとする場合には、バインダ樹脂よりも無機多孔体を先に水に水系溶媒に分散させておくと、無機多孔体の細孔内が水で満たされて安定化し、また、後から混合するバインダ樹脂も細孔の外部で安定化するため、安定化するもの同士を混合する際、バインダ樹脂が個々のポリマー鎖に解けて無機多孔体の細孔内に浸入することは無いと考えられる。
なお、溶剤として有機溶媒の他に水系溶媒を併用する場合で、溶剤の総量に対する有機溶媒の比率は、通常5重量%以上、中でも20重量%以上、更には30重量%以上とすることが好ましい。有機溶媒の割合が少な過ぎると、有機溶媒の使用による上述の効果が得られなくなる場合がある。
なお、有機溶剤を用いることで、分散性の向上を図ることができるだけでなく、基材との密着性を向上させるという効果も得ることができる。密着性を向上させるためには、5重量%程度の少量の有機溶媒を用いることによって部分的に基材を膨潤、溶解させてアンカー効果を発揮することができる。更に、20重量%以上の有機溶媒を併用することによって、分散性の向上を図ることができる。また、有機溶媒を水系溶媒と併用する場合には、沸点の差が生じると外観や強度を損なう樹脂成形体が形成されやすいため、有機溶媒の沸点が高いものは好ましくない。
〔1−4.他の成分〕
本発明のコーティング用組成物は、上述の無機多孔体、バインダ樹脂、溶剤に加えて、必要に応じて他の成分(添加剤)を含んでいても構わない。本発明のコーティング用組成物の用途、更にはそれを用いて形成した本発明の樹脂成形体の用途等によっては、無機多孔体及びバインダ樹脂に加え、可塑剤、安定剤、界面活性剤、架橋性物質(架橋剤)、充填剤(フィラー)、着色剤(色材)、pH調整剤、難燃剤、導電剤、硬化剤、顔料分散剤、乳化剤、乾燥剤、消泡剤、防腐剤、凍結防止剤、増粘剤、発熱助剤、吸湿助剤、補強材としての繊維(ガラス繊維、炭素繊維など。また、基材としての繊維も使用可能)、消臭剤、抗菌剤、機能性薬剤等のその他の成分を適当量配合してもよい。これらその他の成分は、本発明のコーティング用組成物を製造する何れの段階において配合してもよく、更には、それを用いて本発明の樹脂成形体を製造する段階で配合してもよい。また、予め無機多孔体の細孔内に担持してから本発明のコーティング用組成物を作製してもよい。更に、作製後の本発明のコーティング用組成物又は本発明の樹脂成形体に後から含浸などの操作により混合してもよい。
これらの添加剤のうち、代表的なものについて詳述する。
例えば、本発明のコーティング用組成物又は本発明の樹脂成形体を着色するために色材を混合させてもよい。なお、色材は本発明のコーティング用組成物に混合させてもよく、予め無機多孔体に混合して無機多孔体を着色して用いるようにしたりしてもよい。色材としては、公知の各種色材を任意に選択して用いることができ、例えば、無機顔料、有機顔料、及び染料などを用いることができる。
無機顔料の具体例としては、クレー、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、雲母、雲母状酸化鉄、黄土などの天然無機顔料や、鉛白、鉛丹、黄鉛、銀朱、群青、紺青、酸化コバルト、二酸化チタン、二酸化チタン被覆雲母、ストロンチウムクロメート、チタニウムイエロー、チタンブラック、カーボンブラック、グラファイト、ジンククロメート、鉄黒、モリブデン赤、モリブデンホワイト、リサージ、リトポンなどの合成無機顔料や、アルミニウム、金、銀、銅、亜鉛、鉄などの金属類が挙げられる。
また、有機顔料の具体例としては、染料を体質顔料に染め付けて沈殿剤でレーキとした染色レーキ、溶性アゾ、不溶性アゾ、縮合アゾ等のアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、ニトロソ系顔料、ニトロ系顔料、塩基性染料系顔料、酸性染料系顔料、建染染料系顔料、媒染染料系顔料などが挙げられる。
また、その他使用できる色材の例としては、粒状物、砂状物、粉状物の、ガラス、アイオノマー、AS、ABS、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂(プラスチック)、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、これらは着色物、非着色物を問わない。
なお、上記の色材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、例えば、本発明のコーティング用組成物をエマルジョンとするために界面活性剤を混合させてもよい。界面活性剤としては、公知の各種界面活性剤を任意に選択して用いることができ、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどのトリポリリン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルフォン酸塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、スチレン−マレイン酸共重合体などの合成高分子、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリオキシエチレンフェノールエーテル、ポリオキシブチレンフェノールエーテルなどのポリオキシアルキレンアリールエーテルなどを用いることができる。
なお、上記の界面活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、例えば、pH調整剤を混合させてよい。pH調整剤を用いることで、本発明のコーティング用組成物などにおいて、例えばバインダ樹脂としてアクリル樹脂ラテックス等のアルカリ性領域(通常pH8〜10)で安定化させてある高分子ラテックスと、水系溶媒中で酸性を示す無機多孔体とを用いる場合などに、バインダ樹脂を安定化させることができる。pH調整剤としては、公知の各種pH調整剤を任意に選択して用いることができ、例えば、アンモニア水などを用いることができる。
なお、pH調整剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、例えば、難燃剤を混合させてもよい。難燃剤としては、公知の各種難燃剤を任意に選択して用いることができ、無機系難燃剤及び有機系難燃剤の何れも使用することができる。一般に、難燃剤としては、アンチモン系化合物、リン系化合物、塩素系化合物、臭素系化合物、グアジニン系化合物、ホウ素化合物、アンモニウム化合物、臭素系ジアリールオキサイド、臭素化アレン等が知られている。具体例としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、リン酸第一アンモニウム、リン酸第二アンモニウム、リン酸トリエステル、亜リン酸エステル、フォスフォニウム塩、リン酸トリアミド、塩素化パラフィン、デクロラン、臭化アンモニウム、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモエタン、塩酸グアニジン、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、リン酸グアニル尿素、四ホウ酸ナトリウム10水和物(ほう砂)、硫酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、デカブロモジフェニールオキサイド、ヘキサブロモフェニールオキサイド、ベンタブロモフェニールオキサイド、ヘキサブロモベンゼンなどが挙げられる。
なお、難燃剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、例えば、導電剤、帯電防止剤を混合させてもよい。導電剤としては、公知の各種導電剤を任意に選択して用いることができ、例えば、導電性カーボンブラック、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性高分子、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属粉末、カーボン繊維、金属繊維等の導電性繊維物質、アニオン系、カチオン系、ノニオン系帯電防止剤、第4級アンモニウム化合物等を用いることができる。
なお、導電剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、例えば、充填剤(フィラー)を混合させてもよい。充填剤としては、公知の各種充填剤を任意に選択して用いることができ、例えば、パリゴルスカイト等の含水ケイ酸マグネシウム質粘土鉱物、活性炭、活性炭素繊維、合成ゼオライト、クリストバライトなどの多孔性吸着材料が挙げられる。
なお、充填剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、本発明のコーティング用組成物を塗工して樹脂成形体(本発明の樹脂成形体)として使用する場合、有機フィラーを含有させることによって、樹脂成形体の空隙量を大きくすることが可能となる。
ここで「有機フィラー」とは、有機の微粉末或いは繊維の形状を持つもので、天然品と合成品の両者がある。天然品の有機フィラーとしては、木粉、殻繊維、木綿等を挙げることができ、合成品の有機フィラーとしては、レーヨン、セロハン、ナイロン繊維、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
有機フィラーの形状は、粉末状、繊維状、房状、層状など種々の形状をとることができる。特に、繊維状の有機フィラーを含有させると、繊維が絡み合うことによって、より空隙の多い構造をとることができる。なお、本明細書において「繊維状」の有機フィラーとは、そのアスペクト比が通常1.5以上、好ましくは2.0以上の有機フィラーを言うものとする。なお、「アスペクト比」とは、有機フィラーの短軸に対する長軸の比をいう。有機フィラーのアスペクト比は、フィラーを電子顕微鏡で観察し、フィラーの長軸、短軸を決定した後、計算により得ることができる。
また、例えば、耐光性、耐熱性、耐水性、耐溶剤性等の各種耐久性を改善する目的で、安定剤を混合させてもよい。安定剤としては、公知の各種安定剤を任意に選択して用いることができ、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等を用いることができる。
なお、安定剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、例えば、耐光性、耐熱性、耐水性、耐溶剤性等の各種耐久性を改善する目的で、バインダ樹脂の架橋度を高める架橋剤を混合させてもよい。架橋剤としては、公知の架橋剤を任意に選択して用いることができ、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、ポリカルボジイミド化合物等を用いることができる。
なお、架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、例えば、上述した吸湿助剤などの助剤を混合させてもよい。これら助剤も、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、その他、シリコーン系、フッ素系などの撥水剤、ポリエチレングリコールなどの親水性の剤、補強充填剤、可塑剤、劣化防止剤、分散剤、帯電防止剤などを用いることも可能であり、これらも1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
〔1−5.各成分の組成〕
本発明のコーティング用組成物における上述の無機多孔体、バインダ樹脂、溶剤の組成は、特に制限されないが、以下の範囲であることが好ましい。
即ち、本発明のコーティング用組成物における無機多孔体の比率は、通常2.0重量%以上、中でも2.5重量%以上、また、通常30重量%以下、更には27重量%以下の範囲が好ましい。
無機多孔体の比率が高過ぎると、無機多孔体の凝集が生じ易くなるため、コーティング組成物において無機多孔体の沈降が生じ、塗工性の低下やヒビの発生による塗工面外観の低下が生じ易くなる場合がある。また、樹脂成形体において、無機多孔体とバインダ樹脂の接着点が少なくなるため、バインダ樹脂により十分な接着ができず、無機多孔体の脱離・剥離が生じ易くなる。その結果、耐久性が低下したり、また、空隙の形成が困難となる場合がある。
逆に、無機多孔体の比率が低過ぎると、余分なバインダ樹脂が粒子間空隙を埋めたり、無機多孔体の細孔に浸入し、無機多孔体が被覆されたり細孔が閉塞されてしまい、吸湿に使用できる細孔容積を減らしてしまう場合がある。また、無機多孔体の量が少ないことにより、樹脂成形体としての性能(親水性等)の低下を生じる場合がある。
即ち、バインダ樹脂に対する無機多孔体の比率が低過ぎても高過ぎても、空隙が小さくなる。このため、樹脂成形体における親水性の低下が生じ、保水による結露防止効果、調湿効果等の低下が見られる場合がある。
また、本発明のコーティング用組成物におけるバインダ樹脂の比率は、通常0.2重量%以上、更には0.3重量%以上、また、通常30重量%以下、更には27重量%以下の範囲が好ましい。バインダ樹脂の比率が高過ぎると、粘性が上がって、塗工性の低下を生じ、更にバインダ樹脂が無機多孔体の細孔に浸入し、吸湿に要する細孔容積を減らしてしまう場合がある。また、樹脂成形体の粒子間空隙をバインダ樹脂が埋めてしまう場合がある。逆に低過ぎると、十分な接着ができず、無機多孔体の剥離が生じる場合がある。
また、本発明のコーティング用組成物における溶剤の比率は、通常40重量%以上、中でも45重量%以上、更には50重量%以上、また、通常98重量%以下、中でも95重量%以下、更には93重量%以下の範囲が好ましい。溶剤の比率が高過ぎると、粘性が下がり、塗工面のコーティング用組成物が流れ、色むらを生じるなど塗工性の低下を生じる場合があり、逆に低過ぎると、無機多孔体や樹脂の分散性が低下し、粘性が上がり、均一に塗工することが困難となり、塗工性の低下を生じる場合がある。
また、本発明のコーティング用組成物における無機多孔体とバインダ樹脂の固形分の比率は、(無機多孔体の重量)/(バインダ樹脂の固形分重量)の比で、通常0.6以上、更には0.7以上、また、通常10.0以下、更には9以下の範囲が好ましい。この比の値が高過ぎると、バインダ樹脂で十分な接着ができず、無機多孔体の剥離が生じる場合があり、逆に低過ぎると、バインダ樹脂が無機多孔体の細孔に浸入し、吸湿に要する細孔容積を減らしてしまう場合がある。
また、本発明のコーティング用組成物を塗工して樹脂成形体(本発明の樹脂成形体)として使用する場合を考慮すると、本発明のコーティング用組成物は、バインダ樹脂の固形分に対する全固形分(バインダ樹脂及び無機多孔体、並びに必要に応じて用いられるその他の成分からなる、コーティング用組成物の全固形分)の重量比が、通常1.6以上、中でも1.7以上、また、通常11以下、中でも10以下の範囲であることが好ましい。バインダ樹脂の固形分に対する全固形分の重量比が低過ぎると、バインダ樹脂が無機多孔体の細孔や粒子間空隙を埋めてしまう場合がある。バインダ樹脂の固形分に対する全固形分の重量比が高過ぎると、コーティング用組成物において、無機多孔体の沈降、再分散性の低下等が生じる場合がある。また、樹脂成形体の形成が困難であり、無機多孔体や添加物の脱離等が生じる場合がある。
なお、上述のコーティング用組成物の全固形分は、主に有機フィラーの使用量によって調節することが可能である。有機フィラーの割合が少な過ぎると十分な粒子間空隙を形成することができなくなる場合があり、有機フィラーの割合が多過ぎると無機多孔体の持つ親水性等の性能が低下する場合がある。
〔1−6.性状及び使用法〕
本発明のコーティング用組成物は、通常は、上述の無機多孔体、バインダ樹脂、溶剤、並びに必要に応じて用いられる他の成分を、混合することにより得られる。その性状は、使用する各成分の種類によっても異なるが、通常はスラリー状である。
本発明のコーティング用組成物の調製は、具体的には、例えば以下の手順により行なうことが可能である。
即ち、ビーカー等の容器に、上述の無機多孔体、バインダ樹脂、溶剤、並びに必要に応じて用いられる他の成分を入れ、マグネチックスターラー等の手段を用いて、400〜800rpm程度で攪拌し、混合する。各成分の仕込み・混合の順序は特に制限されず、全ての成分を同時に仕込んでもよく、一部の成分を他の成分の仕込み・混合よりも前又は後に仕込んでもよい。但し、通常は溶剤とバインダ樹脂を混合し、分散させてから、無機多孔体を加えて更に混合し、分散させることが好ましい。また、有機フィラーを用いる場合には、有機フィラーを必要に応じて水等の溶剤により分散液とした上で、溶剤とバインダ樹脂の混合・分散の後に加えて混合することが好ましい。混合後は、各成分(特にバインダ樹脂)の凝集塊がなく、均一に分散されていることを目視で確認することが好ましい。この際、分散が不十分な場合は、ホモジナイザーなどの分散器を使用してもよい。こうしてコーティング用組成物が得られる。得られたコーティング用組成物は、より塗工性、塗工面の外観を向上させるために、濾過してもよい。また、コーティング用組成物を保存する場合には、密閉容器を用いることが好ましい。
本発明のコーティング用組成物は、その粘度が通常10mPa・s以上、中でも15mPa・s以上、更には20mPa・s以上、また、通常12000mPa・s以下、中でも10000mPa・s以下、更には8000mPa・s以下であることが好ましい。コーティング用組成物の粘度が低過ぎても、高過ぎても、塗工量の制御が困難であり、塗工面にムラが生じるなど塗工面の外観を損なうことがあり、コーティング手法が限られる場合がある。
本発明のコーティング用組成物は、適切な基材にコーティングして用いることができる。具体的には、本発明のコーティング用組成物を適当な基材に塗工し、溶剤を除去することにより、無機多孔体がバインダ樹脂によって基材に添着された樹脂成形体を得ることができる。
コーティングの対象となる基材の種類は特に制限されず、繊維、紙、プラスチック、木材、コンクリート、金属、皮革等を素材とするフィルム、シート、ネット、板材、布地等、任意のものを基材として用いることができるが、中でも、ネット、シート及びフィルムが好ましい。また、基材として繊維を用いた場合、その繊維を紡績して糸としたり、織って布としたり、圧縮成形して繊維板としたりして用いてもよい。これらの基材は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
繊維の例としては、天然繊維及び合成繊維の何れでもよく、また、これら両方を用いた繊維でもよい。また、繊維も織布、編布、不織布等、任意の状態のものを用いることができる。具体的には、織物、モケット、タオル地、トリコット、ダブルラッセル、丸編、ニードルパンチ等が挙げられる。また、ここでいう繊維としては、例えば、木綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、或いはレーヨン;アセテート;蛋白質繊維;塩化ゴム;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン−12等のポリアミド;ポリビニルアルコ−ル;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリアクリロニトリル;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリウレタン;ポリシアン化ビニリデン;ポリフルオロエチレン等、更にそれらの共重合体、ブレンド体からなる繊維が挙げられる。汎用性の観点から、ポリエステル、ポリアミドを用いることが好ましい。また、これらは他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料などの添加物を含有していてもよい。
更に、静電気を有効に放散させるために利用されている導電性の布地を用いてもよい。ここでいう導電性の布地とは、銅、アルミニウム、ステンレス、カーボン、導電性高分子などの導電性の物質を、有機質繊維の中に粒子状で混合したり、有機質繊維の表面に真空蒸着法でコーティングしたり、有機質繊維とクラッドさせたもの、又は導電性の物質そのものからなる導電性繊維を上記布地に対して添加したものなどである。布地への導電性繊維の添加方法としては、繊維状態での混合、スライバー状態でのミックス、糸状での撚糸、フィラメント状でのミックス又は撚糸、組織上での配列の何れでもよい。
また、上記繊維の単糸繊度は通常0.01dtex以上、好ましくは0.1dtex以上、より好ましくは1dtex以上、また、通常100dtex以下、好ましくは10dtex以下である。100dtex以下であれば、繊維として十分な表面積があるため、吸湿性能を充分発揮でき、好ましい。また0.01dtex以上であれば、無機多孔体を塗工した場合でも繊維として実用的な機械的強度を確保できるため好ましい。
また、合成繊維の断面形状については丸断面、中空断面、三葉断面等の多葉断面、その他の異形断面についても自由に選択することが可能である。また、合成繊維の形態は、長繊維、短繊維等特に制限は無い。布地としては、用途に応じて織物、編物が使用でき、織物では平織、綾織、朱子織、それらを組み合わせたものなど、編物ではメリヤス編など、何れを用いてもよい。
更に、コーティング用組成物を基材に塗工して本発明の樹脂成形体を形成し、その成形体を吸湿性フィルムとする場合、基材の形状もフィルム状であることが好ましい。
フィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、塩化ビニルなどの合成樹脂等が挙げられる。
また、フィルムの厚みについて特に制限は無いが、その用途に応じて、通常10μm以上5mm以下の適当な厚みに形成することが望ましい。
更に、コーティング用組成物を基材に塗工して本発明の樹脂成形体を形成し、その成形体を吸湿性シートとする場合、基材の形状もシート状であることが好ましい。
シートの例としては、紙又は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、塩化ビニルなどの合成樹脂等が挙げられる。
また、シートの厚みについて特に制限は無いが、その用途に応じて、通常50μm以上1cm以下の適当な厚みに形成することが望ましい。
また、前述したように本発明の樹脂成形体をハニカム状に形成する場合、セラミック製などのハニカム体を基材とし、この基材に本発明のコーティング用組成物を塗工して用いることができる。この場合、例えば無機多孔体及びバインダ樹脂を溶剤に混合して本発明のコーティング用組成物とし、これをハニカム体にコートする。上記ハニカム体としては、例えばコージライト製のものを用いることができる。また、無機多孔体及びバインダ樹脂を溶剤に混合して本発明のコーティング用組成物とし、これを不織布からなるフィルターやシートにコートする。上記フィルターやシートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル製の物を用いることができる。
なお、上記無機多孔体を配したハニカム或いはフィルターやシートに、調湿すべき空間の空気を導入する導入口、そして調湿した空気を吹き出す吹出口を付け、必要であれば空気を循環させる動力機(ポンプ,ファンなど)を取り付けてもよい。上記カラム或いはハニカム体は、空調機に取り付けた場合などに、調湿すべき空間の空気を積極的に通すことにより、より多くの空気が無機多孔体表面や湿度調節剤と接触可能となる。そのため、短時間で空間の湿度を一定に保つことができる。また、これらのフィルターやシートを空調機に取り付けたり、ビルの外壁に取り付け、フィルターやシートに散水することによって、より多くの水が無機多孔体表面と接触可能となり、表面の親水性を利用して水膜を形成し、保水が可能であるため、より多くの水を蒸発させることができる。更に、このときの蒸発潜熱を利用して空気を冷却させ、冷却効果を得ることができる。
また、基材を用いて本発明の樹脂成形体を作製する場合、無機多孔体は基材に固着していればどのような状態で固着していてもよく、例えば、無機多孔体及びバインダ樹脂が基材の全体を被覆するようにして基材に固着していてもよく、基材の一部のみに添着するように固着していてもよい。
なお、基材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
コーティングの手順としては、基材に本発明のコーティング用組成物を塗工して塗膜を形成させ、その塗膜から溶剤を除去してバインダ樹脂を固化させ、本発明の樹脂成形体を得る。
コーティング用組成物の適用対象となる基材については特に制限はなく、上述したように、任意のものを基材として本発明のコーティング用組成物を塗工することができる。基材の具体例としては、紙、プラスチック、木材、コンクリート、金属等を素材とするシート、繊維、フィルム、ネット、板材、布地、皮革などが挙げられる。
具体的方法としては、例えば、塗工対象である基材に本発明のコーティング用組成物を塗工し、溶剤を乾燥除去して、基材表面に本発明の樹脂成形体を塗膜(塗工層)として形成させる方法が挙げられる。形成された塗膜は、無機多孔体とバインダ樹脂とを含有した本発明の樹脂成形体であり、高い吸放出性能を有するので、塗膜が形成された基材は高い吸放出性能を獲得することができる。
ここで、塗工方法については特に制限はなく、通常用いられる方法を任意に用いることができる。具体例としては、ハケ塗り、スプレー、静電塗装、ロールコーティング、ディップコーティング、バーコーティング、フローティング・ナイフコーター、ナイフオーバーロール・コーター、リバースロール・コーター、ロールドクター・コーター、グラビアロール・コーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、キスロールコーター、ニップロールコーター、キャストコーター、コンアダイレクト・コーター、コンアリバースコーター、スリットコーター、ラミネート、ボンディング方式、パッド法、ブレードコーティング法、インクジェット法などが挙げられる。なお、これらの方法は、本発明のコーティング用組成物の粘度や量等の特性、塗工対象である基材の特性などにより種々使い分けることが好ましい。また、これらの塗工方法は適宜組み合わせて行なってもよい。
また、塗工後に本発明のコーティング用組成物を乾燥し、溶剤を除去する方法についても特に制限は無く、任意の手法を用いることができる。例えば、本発明のコーティング用組成物の性質に応じて適宜、自然乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、焼き付け、紫外線照射、電子線照射等の方法を用いればよい。なお、これらの乾燥方法は適宜組み合わせて行なってもよい。また、コーティング用組成物の性質に応じて適宜、乾燥温度を選ぶことができる。また、コーティング用組成物によっては、室温乾燥することによって、より親水性等の性能を発揮し易い樹脂成形体を形成することができる。
本発明のコーティング用組成物は、塗工性、塗工面外観等に優れている。また、本発明の本発明のコーティング用組成物を上記の方法で基材にコーティングすることにより、防結露効果、調湿効果、防汚効果、冷却効果を有し、耐久性に優れた樹脂組成物(後述する本発明の樹脂組成物)を提供することができる。
[2.樹脂成形体]
続いて、本発明の樹脂成形体について説明する。本発明の樹脂成形体は、無機多孔体と、バインダ樹脂とを少なくとも有する樹脂組成物である。通常は、上述した本発明のコーティング用組成物を上記の方法で基材にコーティングして得られるものであり、無機多孔体がバインダ樹脂によって基材に添着されてなる。但し、少なくとも無機多孔体とバインダ樹脂とを備えるとともに、下記の特徴〔2−1〕、〔2−2〕のうち少なくとも何れかを満たすものであれば、本発明の樹脂成形体に該当するものとする。
〔2−1.樹脂成形体の単位面積及び単位厚み当たりの空隙量〕
本発明の樹脂成形体は、以下の式(3−1)及び(3−2)で定義される、樹脂成形体の単位面積及び単位厚み当たりの空隙量(以下「単位体積当たりの空隙量」という場合がある。)が、特定の範囲内に存在することによって特徴付けられる。
(樹脂成形体の空隙量)
=(樹脂成形体の粒子間空隙量)+(樹脂成形体の総細孔容積) (3−1)
Figure 0005044152
具体的に、本発明の樹脂成形体は、無機多孔体とバインダ樹脂とを少なくとも有する樹脂成形体であって、該樹脂成形体の単位面積及び単位厚み当たりの空隙量が、0.33ml/m2・μm以上、0.99ml/m2・μm以下であることを特徴とする。樹脂成形体の単位面積及び単位厚み当たりの空隙量が上記範囲より小さい場合、充填率の増加により、吸湿性、結露防止効果などの性能の低下が生じ易くなる場合がある。また、単位面積及び単位厚み当たりの空隙量が上記範囲より大きくなると、樹脂成形体の強度が大きく低下し、剥離、カール、斑等を生じて、外観が損なわれる場合がある。一方、単位面積及び単位厚み当たりの空隙量が上記範囲内であれば、コーティング層の奥の無機多孔体の細孔まで有効に利用することができる。また、粒子間空隙を経路とするため吸放湿速度が速く、無機多孔体の細孔だけでなく粒子間空隙まで保水できるため、吸湿量が上がるという特徴がある。この単位面積及び単位厚み当たりの空隙量は、前記粒子形状、無機多孔体/樹脂比、バインダ樹脂の種類、溶剤の種類、コーティング方法、乾燥条件等によって変化する。
なお、樹脂成形体の空隙は、樹脂成形体が有する粒子間空隙と、樹脂成形体に含まれる無機多孔体が有する細孔とから構成される。よって、樹脂成形体の空隙量、及び、樹脂成形体の単位面積及び単位面積及び単位厚み当たりの空隙量は、以下の(1)〜(9)に記載の手順により測定することができる。
(1) 測定対象となる、基材に添着された状態の樹脂成形体について、その膜厚及び面積を測定する。ここで「樹脂成形体の膜厚」とは、基材の厚みを除いた、樹脂成形体の部分の厚みをいう。樹脂成形体の膜厚は、基材及び樹脂成形体を併せた膜厚を測定し、そこから基材の厚みを差し引くことにより求めることができる。
(2) 上記(1)で得られた樹脂成形体の膜厚及び面積から、以下の式により、粒子間空隙を含む樹脂成形体の体積(これを「樹脂成形体の見かけ体積」という。)を算出する。
(樹脂成形体の見かけ体積)=(樹脂成形体の膜厚)×(樹脂成形体の面積)
(3) 樹脂成形体を基材から削り取り、乳鉢で粉砕してから、直径10mmの錠剤成型機に充填し、油圧により10t/cm2の圧力を加えることにより、直径10mmの円盤を得る。この円盤の厚みをマイクロメーターで測定し、直径及び厚みから当該円盤の体積を求める。これにより、粒子間空隙を除く樹脂成形体の体積(これを「樹脂成形体の実体積」という。)が得られる。
(4) 上記(2)で得られた樹脂成形体の見かけ体積、及び、上記(3)で得られた樹脂成形体の実体積から、以下の式により、測定対象の樹脂成形体の粒子間空隙量を求める。
(樹脂成形体の粒子間空隙量)=(樹脂成形体の見かけ体積)−(樹脂成形体の実体積)
(5) 上記(3)における測定後の樹脂成形体を600℃で4時間焼成する。これにより、バインダ樹脂(及びその他の成分)を概ね除去することができ、その結果、測定対象の樹脂成形体に含まれていた無機多孔体のみを実質的に得ることができる。
(6) 上記(5)の焼成後に得られた無機多孔体について、その重量と、細孔容積(単位重量当たりの細孔容積)を測定する。なお、無機多孔体の単位重量当たりの細孔容積は、上述の〔1−1.無機多孔体〕に記載の手法により測定することができる。
(7) 上記(6)で得られた樹脂成形体の重量、及び、樹脂成形体の単位重量当たりの細孔容積から、下記式により、測定対象の樹脂成形体に含まれていた無機多孔体の総細孔容積を算出する。
(樹脂成形体の総細孔容積)
=(樹脂成形体の単位重量当たりの細孔容積)×(樹脂成形体の重量)
(8) 上記(4)で得られた樹脂成形体の粒子間空隙と、上記(7)で得られた無機多孔体の総細孔容積から、下記式により、測定対象の樹脂成形体の空隙量を求めることができる。
(樹脂成形体の空隙量)
=(樹脂成形体の粒子間空隙量)+(無機多孔体の総細孔容積)
(9) 上記(8)で得られた樹脂成形体の空隙量と、上記(1)で得られた樹脂成形体の膜厚及び面積から、下記式により、測定対象の樹脂成形体の単位面積及び単位厚み当たりの空隙量を求めることができる。
(樹脂成形体の単位面積及び単位厚み当たりの空隙量)
=(樹脂成形体の空隙量)/[(無機多孔体の膜厚)×(無機多孔体の重量)]
なお、本発明の樹脂成形体の単位面積及び単位厚み当たりの空隙量は、該樹脂成形体が無機多孔体及びバインダ樹脂の他に、前述の有機フィラーを含有するか否かによって異なる。樹脂成形体に有機フィラーを含有させると、有機フィラー同士が絡み合うことによって樹脂成形体の空隙が大きくなるため、上述の単位面積及び単位厚み当たりの空隙量もより大きい値となる。
具体的に、本発明の樹脂成形体が有機フィラーを含有しない場合、その単位面積及び単位厚み当たりの空隙量は、通常0.33ml/m2・μm以上、好ましくは0.35ml/m2・μm以上、また、通常0.95ml/m2・μm以下、好ましくは0.93ml/m2・μm以下である。
一方、本発明の樹脂成形体が有機フィラーを含有する場合、その単位面積及び単位厚み当たりの空隙量は、通常0.50ml/m2・μm以上、好ましくは0.55ml/m2・μm以上、また、通常0.99ml/m2・μm以下、好ましくは0.97ml/m2・μm以下である。
〔2−2.無機多孔体及びバインダ樹脂の特性〕
また、本発明の樹脂成形体は、含有する無機多孔体及びバインダ樹脂の特性によっても特徴付けられる。具体的に、本発明の樹脂成形体は、上述の本発明のコーティング用組成物の欄で説明した、少なくとも1種のケイ素化合物を含有する無機多孔体を含有するとともに、同じく上述の本発明のコーティング用組成物の欄で説明した本発明のバインダ樹脂、即ち、(a)固形分水酸基価が5mgKOH/g以上、80mgKOH/g以下であり、(b)ガラス転移温度(Tg)が−5℃以上、40℃以下であるバインダ樹脂を含有することを、その特徴としている。これら無機多孔体及びバインダ樹脂の詳細については、上述の本発明のコーティング用組成物の欄で説明した通りである。
なお、上述の〔2−1.樹脂成形体の単位面積及び単位厚み当たりの空隙量〕に記載した特徴、及び、〔2−2.無機多孔体及びバインダ樹脂の特性〕に記載した特徴は、少なくとも何れか一方のみを満たしていればよいが、好ましくは双方を満たしていることが望ましい。
〔2−3.樹脂成形体のその他の特徴〕
本発明の樹脂成形体は、上述の〔2−1.樹脂成形体の単位面積及び単位厚み当たりの空隙量〕に記載した特徴(これを「特徴〔2−1〕」という場合がある。)、及び/又は、〔2−2.無機多孔体及びバインダ樹脂の特性〕に記載した特徴(これを「特徴〔2−2〕」という場合がある。)を満たしていれば、その他の特徴は特に制限されないが、具体的には以下の通りである。
本発明の樹脂成形体は、通常は種々の基材の上に、無機多孔体がバインダ樹脂によって添着された構成を有し、更に、必要に応じて用いられるその他の成分(例えば有機フィラー等)等を含有してなる。そして、本発明の樹脂成形体は、通常は、無機多孔体の粒子がバインダ樹脂によって、樹脂成形体の外表面から基材との密着面まで3次元に連結された構造を有する。このように、樹脂成形体の外表面から基材との密着面まで、無機多孔体の粒子がバインダ樹脂により連結されることによって、本発明の樹脂成形体は、その構造の強度が強化され、耐擦傷性や耐候性等の種々の耐久性を発揮する。有機フィラー、中でもアスペクト比の大きい繊維状の有機フィラーを用いると、樹脂成形体の外表面から基材との密着面まで、無機多孔体の粒子がバインダ樹脂により連結される頻度が、その有機フィラーの介在によって格段に向上するため、本発明の効果を一層高めることができて好ましい。一方、樹脂成形体の外表面から基材との密着面までの間において、無機多孔体の粒子とバインダ樹脂との連結が切れていると、耐擦傷性や耐候性等の耐久性が悪くなる場合がある。
また、無機多孔体粒子がバインダ樹脂によって連結された構造が、鎖状又は網目状に形成されることにより、本発明の樹脂多孔体は空隙を有することになる。特に、それらの空隙が樹脂成形体の外表面から基材との密着面まで連通して形成されていることが好ましい。このように、樹脂成形体の外表面から基材との密着面まで、空隙が連通して形成されることにより、本発明の樹脂成形体は、防結露効果や調湿効果等をより顕著に発揮することになる。有機フィラー、中でもアスペクト比の大きい繊維状の有機フィラーを用いると、樹脂成形体の外表面から基材との密着面まで、有機フィラー同士や無機多孔体の粒子がバインダ樹脂により連結され、空隙が多く、連通された構造も増えるため、本発明の効果を一層高めることができて好ましい。一方、空隙の一部がバインダ樹脂で埋まり、空隙が樹脂成形体の外表面と基材との密着面までの間で連通していない場合には、樹脂成形体の中間部に存在する無機多孔体粒子の細孔による吸湿又は空隙での保水が困難になる場合がある。
中でも、本発明の樹脂成形体が有する上述の空隙に対し、無機多孔体の有する細孔の多くが(バインダ樹脂等によって閉塞されることなく)開放されていることがより好ましい。これにより、特に樹脂成形体の中間部に存在する無機多孔体粒子の細孔による吸湿・保水等が促進され、本発明の樹脂成形体の防結露効果や調湿効果等がより顕著となる。
また、本発明の樹脂成形体中において、バインダ樹脂の分布は均一であってもよく、不均一であってもよい。特に、バインダ樹脂が樹脂成形体の外表面付近により多く存在するようにすれば、樹脂成形体の耐擦傷性の向上を図ることができる。
なお、上述した本発明の樹脂成形体の構造(バインダ樹脂による無機多孔体の連結構造の有無や形状、樹脂成形体における空隙の有無や形状、バインダ樹脂の分布等)に関しては、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)や透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いて樹脂成形体の断面を観察することにより、確認することができる。
なお、本発明の樹脂成形体において、上述の無機多孔体とバインダ樹脂との比率は特に制限されない。また、本発明の樹脂成形体は、上述の無機多孔体及びバインダ樹脂の他にその他の任意の成分を含有していてもよい。
但し、上述の特徴〔2−2〕を満たす本発明の樹脂成形体は、上述のように、本発明のコーティング用組成物を基材に基材に塗工し、溶剤を除去して得られるものであるため、その組成(バインダ樹脂の固形分に対する無機多孔体の重量比、バインダ樹脂の固形分に対する全固形分の重量比等)は、製造時に使用した本発明のコーティング用組成物の組成から、溶剤を除いた組成とほぼ等しくなる。
また、上述の特徴〔2−1〕を満たす本発明の樹脂成形体においても、その組成は、製造時に使用した本発明のコーティング用組成物の組成から、溶剤を除いた組成と同様であることが好ましい。
また、本発明の樹脂成形体は、上述の特徴に加えて、無機多孔体の細孔容積の通常30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上が、樹脂成形体の外部に開放されている、即ち、細孔内と成形体外部とが連通していることが好ましい。なお、無機多孔体の細孔のうち、本発明の樹脂成形体の外部に開放されている細孔の容積の割合は、本発明の樹脂成形体、無機多孔体、及びバインダ樹脂のそれぞれについて細孔容積を測定することにより、算出することができる。
また、本発明の樹脂成形体の形状は任意であり、例えば、膜状(基材表面に塗工した場合等の様子)、平板状、フィルム状、シート状、ブロック状、パイプ状、繊維状(練り混みで繊維内に無機多孔体が入っている場合等の様子)などの形状に成形して用いることができる。
更に、本発明の樹脂成形体には、必要に応じて各種の処理、例えば、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深しぼり加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を施すことができる。
なお、本発明の樹脂成形体を層状の成形体とする場合、少なくとも無機多孔体及びバインダ樹脂からなる層を有していれば他に制限は無く、例えば、無機多孔体及びバインダ樹脂を含有する層のみからなる単層構造物として構成してもよく、無機多孔体及びバインダ樹脂を含有する層を1層又は2層以上含む、複数の層からなる積層構造物として構成してもよい。
積層構造物を製造するには、例えば、無機多孔体及びバインダ樹脂を含有する層の片面又は両面に他の材料からなる層をラミネートすればよい。ラミネート方法としては、例えば、無機多孔体及びバインダ樹脂を含有するフィルム、シートに他の樹脂などを溶融押出する方法、逆に他の樹脂などからなる基材に無機多孔体及びバインダを含有する組成物(例えば、本発明のコーティング用組成物)を溶融押出する方法、無機多孔体及びバインダの組成物(例えば、本発明の組成物)と他の樹脂とを共押出する方法、更には無機多孔体及びバインダで形成されたフィルム、シートと他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられる。なお、本発明に言うフィルムとは、シート、テープ、管、容器等の形態を含む広義のフィルムを意味する。
また、例えば、本発明の樹脂成形体は、空調機等に組み込むためにハニカム状に成形することもでき、これは、無機多孔体をバインダ樹脂と混合してこれを成形したり、無機多孔体、バインダ樹脂及び水と混合しスラリーにしたものを用いて成形体(本発明の樹脂成形体)を得たりすることによりできる。なお、場合によっては無機多孔体だけを用いてハニカムを作製することもできる。この際、上記無機多孔体を含むスラリーは、例えば、無機多孔体と、この無機多孔体100重量部に対して通常2〜20重量部の有機結合剤と、通常10〜50重量部の無機結合剤と、通常150〜200重量部の水とからなる。上記有機結合剤としては、例えばメチルセルロース等を用いる。また、上記無機結合剤としては、例えばシリカゾル等を用いる。
更に、本発明の樹脂成形体は、無機多孔体及びバインダ樹脂をそのまま成形する以外に、バインダ樹脂及び無機多孔体が固着した基材を含むことが好ましい。即ち、無機多孔体及びバインダ樹脂を含む組成物が基材に固定されることにより、本発明の樹脂成形体が形成されることが好ましい。このように基材を含む成形体は、例えば、無機多孔体及びバインダ樹脂を溶剤に溶解又は分散させたもの(例えば、本発明のコーティング用組成物)を、基材に塗工することにより製造することができる。
また、ここで、基材について特に制限はなく、繊維、紙、プラスチック、木材、コンクリート、金属、皮革等を素材とするフィルム、シート、ネット、板材、布地等、任意のものを基材として用いることができるが、中でも、ネット、シート及びフィルムが好ましい。また、基材として繊維を用いた場合、その繊維を紡績して糸としたり、織って布としたり、圧縮成形して繊維板としたりして用いてもよい。これらの基材は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
繊維の例としては、天然繊維及び合成繊維の何れでもよく、また、これら両方を用いた繊維でもよい。また、繊維も織布、編布、不織布等、任意の状態のものを用いることができる。具体的には、織物、モケット、タオル地、トリコット、ダブルラッセル、丸編、ニードルパンチ等が挙げられる。また、ここでいう繊維としては、例えば、木綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、或いはレーヨン;アセテート;蛋白質繊維;塩化ゴム;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン−12等のポリアミド;ポリビニルアルコ−ル;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリアクリロニトリル;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリウレタン;ポリシアン化ビニリデン;ポリフルオロエチレン等、更にそれらの共重合体、ブレンド体からなる繊維が挙げられる。汎用性の観点から、ポリエステル、ポリアミドを用いることが好ましい。また、これらは他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料などの添加物を含有していてもよい。
更に、静電気を有効に放散させるために利用されている導電性の布地を用いてもよい。ここでいう導電性の布地とは、銅、アルミニウム、ステンレス、カーボン、導電性高分子などの導電性の物質を、有機質繊維の中に粒子状で混合したり、有機質繊維の表面に真空蒸着法でコーティングしたり、有機質繊維とクラッドさせたもの、又は導電性の物質そのものからなる導電性繊維を上記布地に対して添加したものなどである。布地への導電性繊維の添加方法としては、繊維状態での混合、スライバー状態でのミックス、糸状での撚糸、フィラメント状でのミックス又は撚糸、組織上での配列の何れでもよい。
また、上記繊維の単糸繊度は通常0.01dtex以上、好ましくは0.1dtex以上、より好ましくは1dtex以上、また、通常100dtex以下、好ましくは10dtex以下である。100dtex以下であれば、繊維として十分な表面積があるため、吸湿性能を充分発揮でき、好ましい。また0.01dtex以上であれば、無機多孔体を含浸した場合でも繊維として実用的な機械的強度を確保できるため好ましい。
また、合成繊維の断面形状については丸断面、中空断面、三葉断面等の多葉断面、その他の異形断面についても自由に選択することが可能である。また、合成繊維の形態は、長繊維、短繊維等特に制限は無い。布地としては、用途に応じて織物、編物が使用でき、織物では平織、綾織、朱子織、それらを組み合わせたものなど、編物ではメリヤス編など、何れを用いてもよい。
更に、コーティング用組成物を基材に塗工して本発明の樹脂成形体を形成し、その成形体を吸湿性フィルムとする場合、基材の形状もフィルム状であることが好ましい。
フィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、塩化ビニルなどの合成樹脂等が挙げられる。
また、フィルムの厚みについて特に制限は無いが、その用途に応じて、通常10μm以上5mm以下の適当な厚みに形成することが望ましい。
更に、コーティング用組成物を基材に塗工して本発明の樹脂成形体を形成し、その成形体を吸湿性シートとする場合、基材の形状もシート状であることが好ましい。
シートの例としては、紙又は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、塩化ビニルなどの合成樹脂等が挙げられる。
また、シートの厚みについて特に制限は無いが、その用途に応じて、通常50μm以上1cm以下の適当な厚みに形成することが望ましい。
更に、コーティング用組成物を基材に塗工して本発明の樹脂成形体を形成し、その成形体を光拡散シートとする場合、基材の形状もシート状であることが好ましい。また、その場合は、基材は透明な材質で形成されていることが好ましく、特に、無色透明の材質で形成されていることがより好ましい。
透明な素材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、塩化ビニルなどの合成樹脂等が挙げられる。
また、透明な素材の厚みについて特に制限は無いが、その用途に応じて、通常50μm以上1cm以下の適当な厚みに形成することが望ましい。
また、前述したように本発明の樹脂成形体をハニカム状に形成する場合、セラミック製などのハニカム体を基材とし、この基材に無機多孔体及びバインダ樹脂を含有する本発明のコーティング用組成物を塗工して用いることができる。この場合、例えば無機多孔体及びバインダ樹脂を溶剤に混合して本発明のコーティング用組成物とし、これをハニカム体にコートする。上記ハニカム体としては、例えばコージライト製のものを用いることができる。また、無機多孔体は、これを球状体,柱状体等の粒子形態としてからカラムに充填して用いることができる。この場合、粒子の大きさは、カラムの充填部の通気性の確保や水蒸気との接触面積の確保を考慮して、球状体では、通常、直径0.1〜30mm、また、柱状体では、通常、柱径0.1〜10mmで長さ1〜30mm程度とすることが好ましい。
なお、上記無機多孔体を配したカラム或いはハニカムに、調湿すべき空間の空気を導入する導入口、そして調湿した空気を吹き出す吹出口を付け、必要であれば空気を循環させる動力機(ポンプ,ファンなど)を取り付けてもよい。上記カラム或いはハニカム体は、空調機に取り付けた場合などに、調湿すべき空間の空気を積極的に通すことにより、より多くの空気が無機多孔体表面や湿度調節剤と接触可能となる。そのため、短時間で空間の湿度を一定に保つことができる。
また、基材を用いて本発明の樹脂成形体を作製する場合、無機多孔体は基材に固着していればどのような状態で固着していてもよく、例えば、無機多孔体及びバインダ樹脂が基材の全体を被覆するようにして基材に固着していてもよく、基材の一部のみに添着するように固着していてもよい。
なお、基材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
〔2−4.樹脂成形体の性質〕
以上説明した本発明の樹脂成形体は、上述した無機多孔体及び本発明のバインダ樹脂を含有し、及び/又は、無機多孔体の細孔容積と粒子間空隙との比率が上記特定範囲に存在することによって、優れた防結露効果、調湿効果、防汚効果、冷却効果、耐久性を発揮する。
また、本発明の樹脂成形体は、優れた耐久性や耐水性を有する無機多孔体を用いているので、この性質を損なわないようにバインダ樹脂やその他併用する成分の種類を適切に選択すれば、高い耐久性や耐水性をも備えさせることができる。
更に、本発明の樹脂成形体は、無機多孔体の細孔容積の大部分が成形体外部に開放されているため、無機多孔体が有する優れた吸放出性能を十分に発揮することが可能となるのである。また、大量の物質を吸着できるため、本発明の樹脂成形体は、優れた吸着性(悪臭物質の吸着による消臭性等を含む)を発揮することができ、また、薬剤等の吸着物質の優れた徐放性を発揮することができる。
以下、本発明の樹脂成形体が発現し得る吸放出性能のうち、代表的なものとして、調湿性、防結露性、薬剤徐放性、吸着性、抗菌性等について詳細に説明する。
<調湿性>
シリカ等の無機多孔体は多孔質の材料であり、その細孔径に依存した特定の水蒸気圧で水蒸気を吸着及び脱離する性質がある。従って、無機多孔体の細孔径を制御することで、水蒸気(湿気)の吸着、脱離挙動を制御することができ、湿度制御を行なうことができる。よって、このような無機多孔体の性質を発揮できる本発明の樹脂成形体を用いれば、調湿が可能となる。従って、本発明の樹脂成形体には、例えば、次のような利点がある。何らかの繊維を基材として本発明の樹脂成形体を形成し、その成形体(即ち、繊維)を壁紙などの内装建材等として用いた場合、湿潤時には吸湿により湿度低下、乾燥時には放湿により湿度増加を行なうことができ、人体が体感する快適湿度(40〜70%RH)、又は用途に応じた最適湿度に保持することができる。
<防結露性>
上記のように無機多孔体は多孔質の材料であり、その細孔径に依存した特定の水蒸気圧で水蒸気を吸着及び脱離する性質がある。また無機多孔体表面には親水性を発現する多数のシラノール基が存在するため、本発明の樹脂成形体表面も親水性を有する。従って、本発明の樹脂成形体には、例えば、次のような利点がある。何らかの金属板を基材とした本発明の樹脂成形体において、外気温の低下等で相対湿度が上昇すると、まず細孔へ水分の吸湿が開始される。更に相対湿度が上昇すると細孔が水分で満たされ、相対湿度が100%に到達する。従来の金属板であれば、相対湿度が100%に到達すると表面に結露が生じて液滴が形成され、壁や天井部では液滴の落下が生じることとなる。しかし、本発明の樹脂成形体において、相対湿度が100%に到達すると、細孔から水分が溢れ出てくるものの、無機多孔体の粒子間空隙へ保水が開始される。さらなる気温低下等による湿度上昇が生じても、本発明の樹脂成形体表面の親水性を利用して結露による液滴を形成することなく、僅かな傾斜があれば表面を流れることができる。
上記のように本発明の樹脂成形体を用いることによって、結露を遅延させる効果が得られるとともに、結露液滴の落下を防止する効果が得られる。
<薬剤徐放性>
無機多孔体が有する機能の一つに徐放性がある。これを利用し、本発明の樹脂成形体にも徐放性を備えさせることができる。特に、薬剤徐放性に注目すると、本発明の樹脂成形体の利用可能性が高まると考えられる。例えば、衣服の高機能化として、衣服に薬剤徐放性を備えさせるという方法がある。具体例としては、上記のように本発明の樹脂成形体を用いた繊維で衣服を製造した場合、衣服を構成する本発明の樹脂成形体の無機多孔体に保湿、ビタミン補給、美白、癒し効果などを奏する薬剤を担持させることができる。これにより、香料、スキンケア成分などの徐放効果が高まり、高いスキンケア効果を発揮することできるようになる。また、従来の衣服にこれらの薬剤を担持させた従来品に比べ、洗濯耐久性を向上させる効果もある。なお、担持させる薬剤としては、ビタミンC(アスコルビン酸誘導体など)、ビタミンE、コラーゲン、セリシン、キトサン、ヒパ油(ヒノキチオール)、スクワラン、アロエエキス、プロテインなどが挙げられる。
また、薬剤を担持する際に界面活性剤をともに使用すると、安定性の面から好ましい。界面活性剤は任意のものを用いることができるが、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系界面活性剤を使用できる。具体例としては、各種脂肪酸石鹸、ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルホスホコハク酸ナトリウム、アルキルリン酸カリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。また、これらは適宜、非イオン系界面活性剤とともに用いてもよい。非イオン系界面活性剤も任意であるが、例えば、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタンモノアルキレート、ソルビタンジアルキレート、ソルビタントリアルキレート等を用いることができる。
更に、洗濯耐久性の面から、界面活性剤を無機多孔体の一部に固定化しておくとよい。この場合、本発明の樹脂成形体を作製した後で薬剤の導入を行なうと、樹脂と薬剤との混合が避けられるため好ましい。
<吸着性>
無機多孔体表面に存在する水酸基により、塩基性のガスをイオン結合で成形体の無機多孔体表面に吸着することができる。例えば、アンモニア、ピリジン、トリメチルアミン、インドールなどを吸着することができる。これらの物質は、汗臭、加齢臭、排泄臭、タバコ臭、生ゴミ臭などの悪臭の原因物質であるが、本発明の樹脂成形体を用いることにより、無機多孔体を用いて消臭除去できるため、例えば上記のように本発明の樹脂成形体を用いた繊維で衣服を製造した場合、その衣服内環境を清潔に保つことできる。
<抗菌性>
本発明の樹脂成形体の無機多孔体に予め消臭、抗菌物質を担持させておくことにより、本発明の樹脂成形体に消臭、抗菌効果を備えさせることも可能である。抗菌物質としては、フェノール系、カルボン塩系、ピグアナイド系、ハロゲン系、界面活性剤等の有機系抗菌剤、銀系等の無機系抗菌剤、キトサン、カテキン等の天然由来の抗菌剤などがある。
また、本発明の樹脂成形体に消臭効果を備えさせるためには、無機多孔体に各種金属を担持させたり、無機多孔体を3−メルカプトプロピル基修飾無機多孔体にしたりして、メチルメルカプタン、硫化水素などを吸着消臭することもできる。更に、無機多孔体を3−アミノプロピル基修飾無機多孔体として、ノネナール、アセトアルデヒドなどを消臭することも可能である。このように、無機多孔体の末端基を修飾することも、本発明の樹脂成形体に機能を備えさせるためには有効な手段である。
<その他の効果>
以上説明した各種の効果の他にも、本発明の樹脂成形体によれば、様々な効果を得ることができる。ここでは具体例の一つとして、冷却効果について説明する。
<冷却効果>
本発明の樹脂成形体は、無機多孔体の細孔及び粒子間空隙に、多くの水を保水することができる。また、成形体の表面が親水性を有することから、成形体表面に水膜を形成することができ、更に高表面積であることから、表面により多くの水を保持できる。
従って、本発明の樹脂成形体には、例えば次のような利点がある。何らかの不織布を基材として本発明の樹脂成形体を形成し、その成形体(即ち、不織布)に散水させた場合、その成形体は、速やかに成形体表面に水膜を形成し、速やかに表面から水分を蒸発させることができる。このようにより速やかに多くの水を蒸発させることによって、蒸発潜熱を得ることができ、成形体表面及び、周囲の空気を冷却する効果がある。このような、蒸発潜熱を利用した冷却効果によって、冷房の補完をすることが可能となる。また、省エネ効果を発揮することができる。
特に、本発明の樹脂成形体において、無機多孔体として本発明のシリカを用いた場合、その細孔及び粒子間空隙により多くの水を吸着・保水することができ、より多くの水を蒸発させることができるため、大きな冷却効果を発揮することができる。
〔2−5.その他〕
また、本発明の樹脂組成物を製造する際に、本発明のコーティング用組成物を用いて基材に塗膜を形成する場合などには、他の塗膜や層と組み合わせて実施することもできる。具体例としては、プライマ層や化粧コートなどと組み合わせることができる。
プライマ層は、基材とコーティング用組成物の塗膜との間に形成される層で、基材の種類や無機多孔体及びバインダ樹脂の性質等に応じた適当な素材からなる層である。プライマ層を形成することにより、例えば、コーティング用組成物の塗膜が基材に接着する接着力を向上させて製品の耐久性を向上させたり、基材表面の平滑性を向上させてコーティング用組成物により塗膜を均一に形成したりする上で効果がある。また、基材が金属からなる場合には、適当なプライマ層を形成することによってさび防止の効果を得ることもできる。
化粧コートは、通常はコーティング用組成物の塗膜の外側に形成される層で、基材のデザイン性(意匠性)を高めるために形成される層である。化粧の施しかたには、着色、印刷、エンボス、又はワイピング塗装等の手法があり、これらの化粧の手法は、適宜に二つ以上を組み合わせて、適用することもできる。また、化粧を施した最表面には、透明樹脂コーティング用組成物の塗付、若しくは透明樹脂シートのラミネート等により、透明樹脂保護層を形成してもよい。但し、コーティング用組成物が色材を含む場合は、化粧コートを用いる代わりにコーティング用組成物自体を描画等に用いてデザイン性を高めることも可能である。
なお、これらのプライマ層、化粧コート、透明樹脂保護層などは、基材、或いは塗膜等の本発明の樹脂成形体の層などに直接形成させるほか、適宜な紙やプラスチックシート等の別の部材に施して、基材、或いは塗膜等の本発明の樹脂成形体の層などとは別体のシートとして作製したものを設置するようにしてもよい。更に、基材、プライマ層、塗膜等の本発明の樹脂成形体の層、化粧コート、透明樹脂保護層などの間には、それぞれ接着剤層或いは粘着材層を設けてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、それらは本発明の説明を目的とするものであって、本発明をこれらの態様に限定することを意図したものではない。
[測定方法]
なお、後述する各実施例及び比較例において、無機多孔体として使用したシリカの物性、及び、バインダ樹脂の物性は、文献等により公知のものを除いて、以下の手法により測定した。
〔細孔容積、比表面積、細孔最頻直径〕
シリカについて、カンタクローム社製AS−1にてBET窒素吸着等温線(等温脱着曲線)を測定し、細孔容積(ml/g)、比表面積(m2/g)、細孔最頻直径Dmax(nm)を求めた。具体的には、細孔容積は相対圧P/P0=0.98のときの値を採用し、比表面積はP/P0=0.1,0.2,0.3の3点の窒素吸着量よりBET多点法を用いて算出した。
また、細孔最頻直径(Dmax)が5nm以下のものについては、当業者に公知のHK法又はSF法で、5nm以上のものについてはBJT法で、それぞれ細孔分布曲線を求めることとした。なお、測定する相対圧の各点の間隔は0.025とした。
〔粉末X線回折〕
理学電機社製RAD−RB装置を用い、CuKαを線源として、試料の粉末X線回折図の測定を行なった。測定時の条件は、発散スリット1/2deg、散乱スリット1/2deg、受光スリット0.15mmとした。
〔最頻粒径〕
シリカの最頻粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(セイシン企業製レーザーマイクロンサイザーLMS−24)によって粒度分布を測定し、その結果から求めた。
〔シラノール量〕
シリカのシラノール量は、上述した熱重量測定による重量変化から算出した。
〔バインダ樹脂の水酸基価〕
バインダ樹脂の水酸基価の測定は、JIS K1557の「6.4 水酸基価」に準拠して行なった。即ち、無水フタル酸のピリジン溶液(濃度約140g/1L)をエステル化試薬として用い、測定対象となるバインダ樹脂の水酸基をエステル化した後、過剰の試薬を0.5N水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、その結果からバインダ樹脂中の水酸基価を求めた。
〔バインダ樹脂のエマルジョンサイズ(平均樹脂粒径)〕
種々の粒径(5μm、7μm、12μm、18μm、22μm、45μm、80μm、120μm、300μm)のコロイダルシリカを、水に20重量%の濃度となるように分散させ、判定用分散液を調製した。測定対象の分散液(コーティング用組成物)の透明度を、目視観察によって各判定用分散液の透明度と比較した。測定対象の分散液(コーティング用組成物)の透明度に最も近い透明度を有する判定用分散液のコロイダルシリカの粒径を、バインダ樹脂のエマルジョンサイズ(平均樹脂粒径)とした。
[実施例1]
〔シリカの製造と物性の測定〕
ガラス型で、上部に大気開放の水冷コンデンサが取り付けてある5Lセパラプルフラスコ(ジャケット付き)に、純水1000gを仕込んだ。80rpmで攪拌しながら、これにテトラメトキシシラン1400gを3分間かけて仕込んだ。
水/テトラメトキシシランのモル比は約6/1である。セバラプルフラスコのジャケットには50℃の温水を通水した。引き続き攪拌を継続し、内容物が沸点に到達した時点で、攪拌を停止した。引き続き約0.5時間、ジャケットに50℃の温水を通水して、生成したゾルをゲル化させた。
その後、速やかにゲルを取り出し、目開き600ミクロンのナイロン製網を通してゲルを粉砕し、粉体状のウェットゲル(シリカヒドロゲル)を得た。このヒドロゲル450gと純水450gとを1Lのガラス製オートクレーブに仕込み、180℃で3時間、水熱処理を実施した。その後、目開き100ミクロンのナイロン製網を通して液を切り、濾滓を水洗することなく160℃で恒量となるまで減圧乾燥した。
得られたシリカゲル(本発明のシリカ)を粉砕機(ホソカワミクロンAFG−200型)で粉砕し、更に気力分級を行なうことによって、平均粒径5μmのシリカ粉体(シリカゲル)を得た。
得られたシリカ粉体中の各々の粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、これらの粒子は何れも破断面を持った破砕状の粒子であった。
得られたシリカについて、上述の手法によりその物性を測定したところ、比表面積が497m2/g、細孔容積が1.06ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が8.3nm、最頻粒径が4.9μm、シラノール量が3.9個/nm2であった。
また、粉末X線回折図には結晶性のピークは出現しておらず、周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピークも認められなかった。
〔コーティング用組成物の製造〕
バインダ樹脂として、固形分濃度50重量%のアクリルラテックス水分散液(平均樹脂粒径115nm、Tg=18℃、水酸基価40mgKOH/g)を用い、溶剤として、メタノール及びメチルエチルケトンを用いた。
上述のシリカ、アクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合となるように混合、撹拌し、スラリー状の組成物を調製した(粘度=50mPa・s)。
組成物の調製は、具体的には以下の手順で行なった。
ビーカーに、67.5gのメタノール、7.5gのメチルエチルケトンを入れ、マグネチックスターラーを用いて400〜800rpmで攪拌、混合した。更に、12.5gのアクリルラテックス水分散液を加え、溶媒中に分散・攪拌混合した。この際に、バインダ樹脂の塊がなく、均一に分散されていることを目視確認した。そこで、更に均一に分散できているのを目視確認しながら、12.5gのシリカを少量ずつ加え、十分に分散させた。こうして100gの組成物を得た。これを実施例1のコーティング用組成物とする。
〔樹脂成形体の製造〕
得られた実施例1のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ49μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例1の樹脂成形体とする。
[比較例1]
実施例1と同様のシリカ、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に5.0:20.0:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=114mPa・s)。これを比較例1のコーティング用組成物とする。
得られた比較例1のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ15μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを比較例1の樹脂成形体とする。
[実施例2]
実施例1と同様のシリカ、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に8.3:16.7:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=92mPa・s)。これを実施例2のコーティング用組成物とする。
得られた実施例2のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ21μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例2の樹脂成形体とする。
[実施例3]
実施例1と同様のシリカ、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に15.0:10.0:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=52mPa・s)。これを実施例3のコーティング用組成物とする。
得られた実施例3のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ47μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例3の樹脂成形体とする。
[実施例4]
実施例1と同様のシリカ、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に17.9:7.1:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=31mPa・s)。これを実施例4のコーティング用組成物とする。
得られた実施例4のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ86μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例4の樹脂成形体とする。
[比較例2]
実施例1と同様のシリカ、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に21.4:3.6:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=5mPa・s未満)。これを比較例2のコーティング用組成物とする。
得られた比較例2のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ415μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを比較例2の樹脂成形体とする。
[比較例3]
シリコーン樹脂微粒子(GE東芝シリコーン社製トスパール、真球状、平均樹脂粒径4.5μm)、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=27mPa・s)。これを比較例3のコーティング用組成物とする。
得られた比較例3のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ21μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを比較例3の樹脂成形体とする。
[実施例5]
無機多孔体として、シリコーン樹脂微粒子(GE東芝シリコーン社製トスパール、真球状、平均樹脂粒径4.5μm、細孔容積0.025ml/g)と実施例1に用いたシリカを重量比で1:1の割合になるように混合して用いた。この無機多孔体と、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=37mPa・s)。これを実施例5のコーティング用組成物とする。
得られた実施例5のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ26μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例5の樹脂成形体とする。
[実施例6]
実施例1と同様のシリカ、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:75.0の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=238mPa・s)。これを実施例6のコーティング用組成物とする。
得られた実施例6のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ57μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例6の樹脂成形体とする。
[実施例7]
実施例1と同様のシリカ、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、エタノール及びイソブチルメチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=176mPa・s)。これを実施例7のコーティング用組成物とする。
得られた実施例7のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ41μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例7の樹脂成形体とする。
[実施例8]
実施例1と同様のシリカ、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、アセトンを、重量比で順に12.5:12.5:75.0の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=255mPa・s)。これを実施例8のコーティング用組成物とする。
得られた実施例8のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ44μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例8の樹脂成形体とする。
[比較例4]
実施例1と同様のシリカ、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、イオン交換水を、重量比で順に12.5:12.5:75.0の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=5mPa・s)。これを比較例4のコーティング用組成物とする。
得られた比較例4のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ25μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを比較例4の樹脂成形体とする。
[比較例5]
実施例1と同様のシリカ、実施例1と同様のアクリルウレタンラテックス水分散液(固形分50重量%、平均樹脂粒径150nm、Tg30℃)、イオン交換水を、重量比で順に12.5:12.5:75.0で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=5mPa・s)。これを比較例5のコーティング用組成物とする。
得られた比較例5のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ25μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを比較例5の樹脂成形体とする。
[比較例6]
実施例1と同様のシリカ、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液(固形分50重量%、平均樹脂粒径300nm、Tg30℃)、メタノール、メチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した。これを比較例6のコーティング用組成物とする。
得られた比較例6のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ40μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを比較例6の樹脂成形体とする。
[比較例7]
実施例1と同様のシリカ、ウレタンラテックス水分散液(固形分50重量%、平均樹脂粒径80nm、Tg100℃)、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した。これを比較例7のコーティング用組成物とする。
得られた比較例7のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ40μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを比較例7の樹脂成形体とする。
[実施例9]
実施例1と同様のシリカ、アクリルウレタンラテックス水分散液(固形分50重量%、平均樹脂粒径150nm、Tg30℃)、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した。これを実施例9のコーティング用組成物とする。
得られた実施例9のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ40μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例9の樹脂成形体とする。
[比較例8]
実施例1と同様のシリカ、アクリルラテックス水分散液(固形分43重量%、平均樹脂粒径130nm、Tg30℃)、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:33.8:41.2の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した。これを比較例8のコーティング用組成物とする。
得られた比較例8のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ32μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを比較例8の樹脂成形体とする。
参考例10]
実施例1と同様のシリカ、アクリルラテックス水分散液(固形分46重量%、平均樹脂粒径60nm、Tg30℃)、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:50.3:24.7の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した。これを参考例10のコーティング用組成物とする。
得られた参考例10のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ32μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを参考例10の樹脂成形体とする。
[実施例11]
実施例1と同様のシリカ、アクリルラテックス水分散液(固形分40重量%、平均樹脂粒径200nm、Tg10℃)、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:50.3:24.7の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した。これを実施例11のコーティング用組成物とする。
得られた実施例11のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ30μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例11の樹脂成形体とする。
[比較例9]
実施例1と同様のシリカ、ポリビニルアルコール系ラテックス水分散液(固形分10重量%、平均樹脂粒径200nm、Tg10℃)、イソプロパノール及びイオン交換水を、重量比で順に7.4:46.3:18.5:28.0の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した。これを比較例9のコーティング用組成物とする。
得られた比較例9のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ28μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを比較例9の樹脂成形体とする。
[比較例10]
実施例1と同様のシリカ、エポキシ樹脂(固形分60重量%、平均樹脂粒径200nm、Tg80℃)、メチルエチルケトン及びイオン交換水を、重量比で順に12.5:6.7:70.8:10.0の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した。これを比較例10のコーティング用組成物とする。
得られた実施例12のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ25μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを比較例10の樹脂成形体とする。
[比較例11]
実施例1と同様の条件で調製した後、分級された最頻粒径0.5μmのシリカ(細孔最頻直径8.2nm)、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=16mPa・s)。これを比較例11のコーティング用組成物とする。
得られた比較例11のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ45μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを比較例11の樹脂成形体とする。
[実施例12]
実施例1と同様の条件で調製された後、分級された最頻粒径1μmのシリカ(細孔最頻直径8.3nm)、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=11mPa・s)。これを実施例12のコーティング用組成物とする。
得られた実施例12のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ58μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例12の樹脂成形体とする。
[実施例13]
実施例1と同様の条件で調製した後、分級して得られた最頻粒径3μmのシリカ(細孔最頻直径8.3nm)、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=16mPa・s)。これを実施例13のコーティング用組成物とする。
得られた実施例13のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ36μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例13の樹脂成形体とする。
[実施例14]
水熱処理後に数mmサイズのシリカを乳鉢で粉砕した他は、実施例1と同様の手順により得られた最頻粒径35μmのシリカ(細孔最頻直径8.3nm)、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=16mPa・s)。これを実施例14のコーティング用組成物とする。
得られた実施例14のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ36μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例14の樹脂成形体とする。
[比較例12]
水熱処理後に数mmサイズのシリカをコーミル粉砕機で粉砕し、網を用いて分級した他は、実施例1と同様の手順により得られた最頻粒径100μmのシリカ(細孔最頻直径8.3nm)、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=50mPa・s)。これを比較例12のコーティング用組成物とする。
得られた比較例12のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ115μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを比較例12の樹脂成形体とする。
[比較例13]
水熱処理後に数mmサイズのシリカをコーミル粉砕機で粉砕し、網を用いて分級した他は、実施例1と同様の手順により得られた最頻粒径200μmのシリカ(細孔最頻直径8.3nm)、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=250mPa・s)。これを比較例13のコーティング用組成物とする。
得られた比較例13のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ273μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを比較例13の樹脂成形体とする。
[実施例15]
水熱処理を60℃で行なった他は実施例1と同様の条件で調製された細孔最頻直径1nm以下のミクロポアのシリカ(最頻粒径5μm、シラノール量6個/nm2)、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=22mPa・s)。これを実施例15のコーティング用組成物とする。
得られた実施例15のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ36μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例15の樹脂成形体とする。
[実施例16]
水熱処理を130℃で行なった他は実施例1と同様の条件で調製された細孔最頻直径5nmのシリカ(最頻粒径5μm、シラノール量5個/nm2)、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=50mPa・s)。これを実施例16のコーティング用組成物とする。
得られた実施例16のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ62μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例16の樹脂成形体とする。
[実施例17]
水熱処理を200℃で行なった他は実施例1と同様の条件で調製された細孔最頻直径15nmのシリカ(最頻粒径5μm、シラノール量4個/nm2)、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した(粘度=84mPa・s)。これを実施例17のコーティング用組成物とする。
得られた実施例17のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ59μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例17の樹脂成形体とする。
[実施例18]
無機多孔体としてアルミナ(細孔最頻直径7.1nm、細孔容積0.45ml/g、比表面積188m2/g、シラノール量0個/nm2)を用いた。このアルミナと、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した。これを実施例18のコーティング用組成物とする。
得られた実施例18のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ70μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例18の樹脂成形体とする。
[実施例19]
無機多孔体としてシリカアルミナ(細孔最頻直径5.7nm、細孔容積0.97ml/g、比表面積577m2/g、シラノール量1.5個/nm2)を用いた。このシリカアルミナと、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:67.5:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した。これを実施例19のコーティング用組成物とする。
得られた実施例19のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ112μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例19の樹脂成形体とする。
[実施例20]
水中に、シリカ:20重量%テトラエチルアンモニウム水酸化物(TEAOH)水溶液:セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTMABr)を、順に0.2:0.25:35の重量組成で含有するゲル混合物を調製した。具体的には、まず、水404gに62gのCTMABrを加え、室温で混合・攪拌した。攪拌を続けながら、次いでTEAOH溶液100g、最後に41gのヒュームドシリカを加え、ゲル混合物とした。
得られたゲル混合物を、更に70℃で2時間攪拌し、室温で24時間熟成させた。次にオートクレーブを用いて、150℃で48時間加熱し、合成を行なった。冷却後、生成物を濾過洗浄、自然乾燥し、600℃で6時間焼成することにより、結晶性を有するシリカ(MCM−41)を得た。
得られたシリカについて、上述の手法によりその物性を測定したところ、比表面積が985m2/g、細孔容積が0.78ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が3.60nmであった。
上述のシリカを用いた他は、実施例1と同様にしてスラリー状の組成物を調製した。これをコーティング用組成物とする。
得られたコーティング用組成物を用いて、実施例1と同様にして厚さ89μmの調湿性シートを作製した。これを実施例20の樹脂成形体とする。
[実施例21]
実施例1と同様のシリカ、並びに、有機フィラーである粉末セルロース(平均粒径24μm、灰分0.25%)、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:12.5:55.0:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した。これを実施例21のコーティング用組成物とする。
得られた実施例21のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ89μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例21の樹脂成形体とする。
[実施例22]
実施例1と同様のシリカ、並びに、有機フィラーである粉末セルロース(平均粒径24μm、灰分0.25%)、実施例1と同様のアクリルラテックス水分散液、メタノール及びメチルエチルケトンを、重量比で順に12.5:12.5:12.5:55.0:7.5の割合で用い、実施例1と同様の手順で混合・撹拌することにより、スラリー状の組成物を調製した。これを実施例22のコーティング用組成物とする。
得られた実施例22のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ31μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例22の樹脂成形体とする。
[実施例23]
上述の実施例1のコーティング用組成物を、塩化ビニル製シート(厚さ0.5mm)にスプレーで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ17μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例23の樹脂成形体とする。
[実施例24]
上述の実施例1のコーティング用組成物を、PET製フィルム(厚さ100μm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ40μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例24の樹脂成形体とする。
[実施例25]
上述の実施例1のコーティング用組成物を、PET製フィルム(厚さ100μm)にグラビアコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ18μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例25の樹脂成形体とする。
[実施例26]
上述の実施例1のコーティング用組成物を、PET製フィルム(厚さ100μm)にダイコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ15μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例26の樹脂成形体とする。
[実施例27]
上述の実施例1のコーティング用組成物を、ポリエステル製織布(厚さ250μm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ80μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例27の樹脂成形体とする。
[実施例28]
上述の実施例1のコーティング用組成物を、ポリエステル製織布(厚さ250μm)にディッピングで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ33μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例28の樹脂成形体とする。
[実施例29]
上述の実施例1のコーティング用組成物を、PET製不織布(厚さ80μm)にバーコーターで塗工し、室温で乾燥することにより、厚さ300μmの調湿層を設けた調湿性シートを作製した。これを実施例29の樹脂成形体とする。
[評価]
上記手順により得られた各実施例及び比較例のコーティング用組成物及び樹脂成形体について、以下の手法によって各性能の判定を行ない、それぞれ○(良好)、△(良)、×(不良)で評価した。
〔分散性(沈降性)〕
コーティング用組成物調製時における無機多孔体の分散性(沈降性)として、無機多孔体がコーティング用組成物中に均一に分散可能であるか、コーティング用組成物をポリ瓶で1週間保管した際に固形成分が沈降するかどうか、及び、沈降した固形成分の再分散が可能であるかどうかについて目視判定した。コーティング用組成物の再分散が可能であれば、コーティング用組成物の保存安定性があるとみなされ、長期保存が可能となる。
○→容易に均一分散可能。
△→分散器の使用により均一分散可能。
×→分散困難。
〔塗工性〕
調湿性シート(樹脂成形体)の作製時に、コーティング用組成物をバーコーター(#75)で塩化ビニル製シートに塗工した際の塗工表面の流れやクレタリング、フィッシュアイなどによる塗工性について目視判定した。塗工性に不良が生じた場合、均一な樹脂成形体を形成することが困難となり、塗工面外観に不具合を生じる原因となる。
○→塗工表面を平滑、均一にコーティング可能。
△→塗工表面に不良が生じる。
×→塗工困難により、成形体の形成不良。
〔塗工面外観〕
コーティング用組成物を塗工した調湿性シート(樹脂成形体)の表面の塗工面外観として、ピンホール、クラッキング、ハガレ、色むらなどの外観について目視判定した。塗工面外観で不具合が生じると、樹脂成形体の性能の低下の原因に成り得る。
○→不具合なし。
△→成形体の一部で、不具合が生じる。
×→成形体の全体で、不具合を生じる。
〔親水性〕
調湿性シート(樹脂成形体)の塗工面にピペットを用いて50μLの水滴を滴下し、形成された液滴の広がり方(液滴の直径を計測)、液滴の染み込み方(吸水による樹脂成形体の透明化を目視判定)で親水性を評価した。親水性を有してなければ、樹脂成形体表面で水を広げ、水膜を形成することができないため、防汚性や冷却効果などの性能の低下を生じる。
○→液滴の広がりが素早く、均一に染み込む。
△→液滴の広がりが遅い、若しくは不均一に染み込む。
×→液滴の広がり、染み込みがなく、液滴をはじいている。
〔防結露性〕
調湿性シート(樹脂成形体)の塗工面を下向き(10°の傾斜)で設置し、上面(塗工面の反対側)に氷を置き、温度20℃、湿度60%の環境下にて結露液滴を発生させ、その際の結露液滴の生成状態について目視判定した。樹脂成形体の表面が親水性で濡れていれば、結露による液滴の生成を遅延でき、更に生成した結露の液滴が傾斜に沿ってシート末端まで流れることによって、液滴の途中落下を防止することができる。
○→液滴の生成遅延効果、液滴の傾斜途中における落下防止効果有り。
△→液滴の生成遅延効果有り、一部液滴の傾斜途中落下有り。
×→液滴の生成遅延効果なし、液滴の傾斜上部・途中落下有り。
〔冷却効果〕
調湿性シート(樹脂成形体)を30分間水中に浸水させた。引き上げた調湿性シートに風速0.5m/sの風を当てて、温度25℃、湿度30%の環境下で表面の水分を蒸発させた時の調湿性シート表面の温度を、赤外温度計を用いて測定し、外気温からの温度降下を算出した。得られた温度降下の大きさで冷却効果を判断した。より大きな温度降下を得ることによって、より外気を冷却することができる。
○→3℃以上の温度降下有り。
△→0〜3℃の温度降下有り。
×→温度降下なし。
〔吸湿性〕
温度を20℃に保ち、湿度を60%から95%に変化させ、その雰囲気下における調湿性シート(樹脂成形体)の重量を測定し、その重量変化から吸湿量を算出し、更に最大吸湿量に到達するまでの時間を測定して応答性を含め、吸湿性について判定した。吸湿量は、無機多孔体の吸放湿に使用可能な細孔容積(最大吸湿量)と付着量によるものであり、更に湿度の変化に素早く追従して吸湿・放湿できれば、素早い調湿が可能である。
○→吸放湿量変化が湿度変化に追従する。更に、最大吸湿量が細孔容積の50%以上に相当する。
△→吸放湿量変化が湿度変化よりやや遅れる。若しくは、最大吸湿量が細孔容積の5〜50%以上に相当する。
×→吸放湿量変化が湿度変化に追従できない。若しくは、最大吸湿量が細孔容積以下に相当。
〔防汚性・耐久性〕
調湿性シート(樹脂成形体)を屋外に90日間放置して風雨に曝し、塵や砂埃などの汚染物による汚れの影響に対する防汚性について目視判定した。また、樹脂成形体のハクリ、クラッキング、変色が見られるかどうかについて目視判定し、耐久性の目安にした。
*防汚性
○→水で汚染物質を洗い流せる。
△→水で汚染物質の一部を洗い流せない。
×→水で汚染物質を洗い流せない。
*耐久性
○→樹脂成形体の外観に変化なし。
△→変色、クラッキングなど変質の発生。
×→樹脂成形体のハクリ、成形体の破壊の発生。
〔耐擦傷性〕
調湿性シート(樹脂成形体)の表面をコットンで50回擦って、成形体のキズやハクリなど損傷具合を目視判定した。
○→樹脂成形体表面の外観に変化なし。
△→表層の一部に、キズやハクリの発生。
×→成形体の一部が破壊され、基材が見える。
〔樹脂成形体の単位体積当たりの空隙量〕
また、各実施例及び比較例の樹脂成形体における、樹脂成形体の単位体積当たりの空隙量(樹脂成形体の単位面積及び単位厚み当たりの空隙量)は、上述の〔2−1.樹脂成形体の単位面積及び単位厚み当たりの空隙量〕の欄に記載の方法により算出した。
[結果]
各実施例、各比較例、及び参考例10のコーティング用組成物及び樹脂成形体の組成、物性、評価結果当を、下記の表1〜10に示す。なお、以下の記載において、「単位体積当たりの空隙量」は、樹脂成形体における単位体積当たりの空隙量(樹脂成形体の単位面積及び単位厚み当たりの空隙量)を表わし、「粒子間空隙/細孔容積」は体積比を表わし、「無機多孔体/バインダ樹脂」は、コーティング用組成物又は樹脂成形体における、バインダ樹脂の固形分に対する無機多孔体の重量比を表わし、「全固形分/バインダ固形分」は、コーティング用組成物又は樹脂成形体における、バインダ樹脂の固形分に対する全固形分の重量比を表わす。
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表1では、コーティング用組成物中及び樹脂成形体中における無機多孔体とバインダ樹脂の固形分の重量比(バインダ樹脂の固形分に対する無機多孔体の重量比。これを以下「無機多孔体/バインダ樹脂比」という場合がある。)を変化させた場合の、コーティング用組成物及び樹脂成形体の各種性能についてまとめた。
表1の結果より、コーティング用組成物において、バインダ樹脂の比率が多過ぎると、バインダ樹脂の凝集が生じ易く、バインダ樹脂が少な過ぎると、無機多孔体の凝集が生じ易くなる。これにより、塗工性の低下やヒビの発生による塗工面外観の低下等が生じることが分かる。
また、樹脂成形体において、無機多孔体/バインダ樹脂比が小さいほど、バインダ樹脂によって無機多孔体が被覆され、細孔が閉塞されて吸水に使用できなくなってしまう。また、粒子間空隙がバインダ樹脂によって埋まってしまうため、空隙の低下が生じ、親水性等の性能が低下することが分かる。
一方、無機多孔体/バインダ樹脂比が大きいほど、より親水性等の性能の向上が図れるものの、無機多孔体とバインダ樹脂との接着点が少ないため、無機多孔体が脱離し易く、空隙の形成が困難となり、また、耐擦傷性等の耐久性の低下が生じることが分かる。
このように、無機多孔体/バインダ樹脂比が小さ過ぎても大き過ぎても、空隙が小さくなる。空隙の減少が生じると、親水性の低下が生じ、保水による結露防止効果、調湿効果等の低下が見られる。
また、表2の結果より、無機多孔体として球状の微粒子を用いると、破砕状の微粒子を用いた場合と比べて、塗工性、塗工面外観の低下が見られる。また、球状の微粒子は、破砕状の微粒子に比べて、塗膜形成時に密に充填され易く、微粒子が秩序的な配列を成すため粒子間空隙が形成され難いことが分かる。また、球状の微粒子ほど、粒子間空隙が小さいので、保水量の低下により、結露防止効果等の性能の低下が生じることが分かる。一方、球状の微粒子に破砕状の微粒子を一部加えることによって、秩序的な配列を崩すことができるため、より大きな粒子間空隙を得ることができる。
表3の結果より、使用する溶媒の種類によって、コーティング用組成物の粘度や、コーティング用組成物中におけるバインダ樹脂の樹脂サイズが変化することが分かる。即ち、アルコール等の親水性溶媒を用いることで、バインダ樹脂の樹脂サイズが小さくなり、よく分散され、無機多孔体の沈降・凝集を抑制することができる。一方、溶媒として水のみを用いると、バインダ樹脂を分散することができないため、無機多孔体の沈降・凝集が生じることや、乾燥速度が遅いことによって、塗工性、塗工面外観が損なわれる。
表4の結果より、バインダ樹脂のTgが低過ぎても、高過ぎても、耐擦傷性や耐久性の低下が生じることが分かる。即ち、バインダ樹脂のTgが低過ぎると、基材に対する柔軟性に優れるものの、より強度の低い樹脂成形体が形成されてしまうため、耐擦傷性等が損なわれる傾向がある。一方、バインダ樹脂のTgが高過ぎると強度のある樹脂成形体を形成することができるものの、基材に対する柔軟性が低いため、ハクリやヒビが生じ易く、耐擦傷性が損なわれる傾向がある。
表5の結果より、バインダ樹脂の固形分の水酸基価が低過ぎると、コーティング用組成物中における無機多孔体の分散性の低下を生じることが分かる。また、樹脂成形体においても、バインダ樹脂の水酸基価が低いことによって、樹脂成形体表面の親水性等の低下が生じることが分かる。一方、バインダ樹脂の水酸基価が高いと、樹脂成形体の強度が低く、特に耐水性の低い樹脂成形体が形成されることが分かる。
表6の結果より、無機多孔体の最頻粒径が大きくなると、粘度が高くなり、良好な塗工性、塗工面外観が得られ難いことが分かる。また、無機多孔体の最頻粒径が大きくなることによって、無機多孔体が層を成すことができ難いため、粒子間の空隙が形成され難く、防結露性等の低下が生じ易くなることが分かる。また、無機多孔体とバインダ樹脂との接点が少なくなるため、無機多孔体が脱離し易く、耐擦傷性等の性能の低下が生じることが分かる。一方、無機多孔体の最頻粒径が小さくなると、コーティング用組成物中で沈降した無機多孔体が凝集してしまい、再分散が困難になることが分かる。
表7の結果より、細孔最頻直径の異なる無機多孔体を用いた場合のコーティング用組成物及び樹脂成形体の各種性能について比較を行なうと、細孔容積の低下による吸湿量の低下等の性能低下が見られるものの、種々の性能において大きな差が見られないことから、コーティング用組成物及び樹脂成形体において、無機多孔体の細孔最頻直径によらず、多孔体であることで、種々の性能を発揮できることが分かる。
表8の結果より、種々の無機多孔体を用いたときのコーティング用組成物、樹脂成形体の各種性能について比較を行なうと、シリカを用いた場合により親水性等の効果を発揮できるものの、何れの無機多孔体を用いた場合でも冷却効果等の性能は十分に発揮できることが分かる。よってシリカ以外の無機多孔体を用いることが可能であることが分かる。
表9の結果より、有機フィラーを添加することによって、コーティング用組成物としては全固形分が増加するために、粘性の増加、沈降が生じ易くなることが分かる。樹脂成形体としては、有機フィラーが添加されたことで、親水性等の一部の性能の低下が見られるものの、単位体積あたりの空隙量が大きく増加することが分かる。このように空隙量が大きく増えたことによって、より多くの水分を保持することができるため、防結露性や冷却効果として優れた性能を発揮することができる。
表10の結果より、コーティング用組成物を基板に塗工する際には、種々のコーティング手法を用いることが可能であり、また、種々の基材を用いて樹脂成形体を形成することが可能であることが分かる。即ち、何れのコーティング手法・基材を用いても十分な性能を発揮できることが分かる。
本発明の用途は特に制限されず、建材用途分野、内装・インテリア分野、触媒用途分野、空調分野、塗料・インク分野、樹脂用添加剤用途分野、製紙用途分野、食品用途分野、医農薬分野、分離材料分野、農業用途分野、運輸分野、電気・電子分野、精密機器分野、生活関連分野、衣料分野など、各種の用途に好適に使用することができる。

Claims (16)

  1. 無機多孔体とバインダ樹脂と溶剤とを少なくとも有するコーティング用組成物であって、
    (1)該無機多孔体が少なくとも1種のケイ素化合物を含んでおり、且つ、その最頻粒径が1.0μm以上、50μm以下であり、
    (2)該バインダ樹脂において、
    (a)固形分水酸基価が5mgKOH/g以上、80mgKOH/g以下であり、
    (b)ガラス転移温度(Tg)が−5℃以上、40℃以下であり、
    (3)該溶剤が、少なくとも1種の有機溶媒を含んでなり、且つ
    該バインダ樹脂の固形分に対する全固形分の重量比が、1.6以上、11以下である
    ことを特徴とする、コーティング用組成物。
  2. 該バインダ樹脂の固形分に対する該無機多孔体の重量比が、0.6以上、10.0以下である
    ことを特徴とする、請求項1に記載のコーティング用組成物。
  3. コーティング用組成物における該溶剤の比率が40重量%以上98重量%以下である
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のコーティング用組成物。
  4. 該溶剤の総量に対する該有機溶媒の比率が5重量%以上である
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のコーティング用組成物。
  5. 該バインダ樹脂の平均樹脂粒径が、該無機多孔体の最頻粒径よりも小さく、且つ、該無機多孔体の細孔最頻直径よりも大きい
    ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のコーティング用組成物
  6. 請求項1〜の何れか一項に記載のコーティング用組成物を基材に塗工し、該溶剤を除去して得られることを特徴とする、樹脂成形体。
  7. 有機フィラーを更に含有する
    ことを特徴とする、請求項記載の樹脂成形体。
  8. 該樹脂成形体の該無機多孔体のシラノール含有率が2個/nm2以上、10個/nm2以下である
    ことを特徴とする、請求項又は請求項に記載の樹脂成形体。
  9. 該バインダ樹脂の固形分に対する該無機多孔体の重量比が、0.6以上、10.0以下である
    ことを特徴とする、請求項の何れか一項に記載の樹脂成形体。
  10. 該樹脂成形体において、該バインダ樹脂の固形分に対する全固形分の重量比が、1.6以上、11.0以下である
    ことを特徴とする、請求項の何れか一項に記載の樹脂成形体。
  11. 基材を更に備えてなるとともに、
    該基材の少なくとも一部に、該無機多孔体が該バインダ樹脂によって固着されている
    ことを特徴とする、請求項10の何れか一項に記載の樹脂成形体。
  12. 該基材が、少なくともシートからなる
    ことを特徴とする、請求項11記載の樹脂成形体。
  13. 該基材が、少なくともフィルムからなる
    ことを特徴とする、請求項11記載の樹脂成形体。
  14. 該基材が、少なくとも繊維からなる
    ことを特徴とする、請求項11記載の樹脂成形体。
  15. 請求項1〜の何れか一項に記載のコーティング用組成物を製造する方法であって、
    少なくとも該バインダ樹脂、該無機多孔体、及び該溶剤を混合する工程を少なくとも有する
    ことを特徴とする、コーティング用組成物の製造方法。
  16. 請求項14の何れか一項に記載の樹脂成形体を製造する方法であって、
    少なくとも該バインダ樹脂、該無機多孔体、及び該溶剤を混合する工程と、前記溶剤を除去する工程とを少なくとも有する
    ことを特徴とする、樹脂成形体の製造方法。
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