JP5143365B2 - 調湿性塗料、調湿性材料およびそれを使用した結露防止方法 - Google Patents

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Description

本発明は、調湿性塗料、およびそれを塗布した調湿性材料と、それらを使用して密閉系、あるいは準密閉系中空構造物内面に発生する結露を防止する方法に関するものである。詳しくは、水と相溶性のある有機溶媒とラテックスの混合液中に高吸水性樹脂(以下、「SAP」という。)粉末を主体としたものを均一に分散させた塗料、この塗料を支持体に塗布して乾燥させた調湿性材料、およびこの調湿性塗料や調湿性材料を使用して橋梁、屋外照明灯、鉄骨あるいはコンクリート構造物、コンテナ、監視用カメラの筺体、精密電子部品といった密閉系、あるいは準密閉系中空構造物内面に発生する結露を防止するための結露防止方法に関するものである。
従来、橋梁、メガフロート(大規模浮体)などの土木構造物、マンション、ビル、体育館などの建築構造物、海上コンテナ、トラックコンテナ、航空コンテナなどのコンテナ構造物、屋外照明灯などの構造物は、強度を確保しつつ重量を抑えるため、矩形の箱桁構造、パイプ構造などの中空構造物が広く使われている。これらの中空構造物は、屋外で使用されるので、降雨、結露、塩分の付着等により、中空構造物の内面に腐食が発生するといった問題があった。特に結露に関しては、中空構造物の内部に設置された電気設備、電気回路の表面、または電気配線の表面被覆材が、結露水の付着によって劣化をきたし、ショートするなどの電気的な障害を発生するといった問題があった。さらには黴の発生といったように、結露によって生じる様々なトラブルが発生することが問題となっていた。特に中空構造物が、鉄鋼材料またはアルミなどの非鉄金属で構成されている場合、結露水に塩害が重なることによる、これらの構造物の腐食や劣化が深刻な問題になっていた。
前述した問題点を解決するために、以下に示したような対策が採られている。即ち、箱桁構造の大型鋼製橋梁については、箱桁内部が雨水に曝されることはないため、一般的にはプライマー塗装の後、エポキシ樹脂塗料を2回塗装する程度の軽い塗装処理を施すといった結露対策が採られ、定期的に塗装状態の保守点検を行い、付帯設備として除湿機を設置するなどして、内部空間を乾燥させる方法が実用化されている。
特許文献1には、SAP粉末とバインダーとを主成分とする液状混合系を用いて、ウエブ状繊維基材を複合化する方法が提案されている。ここで提案されている液状混合系は、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂等の水系エマルジョン中に粒子状のSAP粉末を分散スラリー化したものであり、これにさらにはミクロフィブリル状の微細セルロース繊維(以下、「MFC」という。)を添加したものである。これらの混合スラリーは、スラリーポンプを用いて流送され、未結合ウエブに各種のアプリケーション装置を用いて添加されるが、添加後の工程としては、真空による脱液、圧搾、熱風による脱水と脱溶剤の工程を経て、シート中に50%以上のSAP粉末を含有させるためのものである。この提案による主な目的は、SAP粉末の吸水性能を最大限に発揮させ、粉落ちの少ない吸水性を有する薄層化したシート状物を得ることであり、水蒸気を吸放湿する調湿性能によって結露防止効果を得ることを目的とするものではない。また、ここで使用される混合スラリーは、攪拌を停止すると固液が容易に分離してしまう液状混合物であり、塗料としての性能を保持できるものではなかった。
特許文献2には、SAP粉末とアクリル系合成樹脂エマルジョン、又は酢酸ビニル系合成樹脂エマルジョンと、若しくはこれら両系の共重合体エマルジョンと、フッ素系合成樹脂エマルジョン又はシリコーン系合成樹脂エマルジョンとを主成分とした結露防止剤が提案されている。この提案は、SAP粉末重量の約30倍の水で水和膨潤した低濃度のSAP粉末分散液に、アクリル樹脂エマルジョン等を添加した白色糊状物質を結露発生箇所に予め塗布する方法で結露水を吸収させたのち、撥水性を有する合成樹脂エマルジョンの効果で結露水の発生を減少させる、としたものである。しかしながら、前記の結露防止剤では長期間に亘って結露条件下に曝された場合の結露防止効果は乏しいという問題があった。また、SAP粉末の機能として、結露水の吸収のみに主眼をおいたものであり、水蒸気を吸放湿する調湿性能についての提案はなされていない。
特許文献3や特許文献4においては、SAP粉末とMFCを用いた結露防止用シートが提案されている。しかしながら特許文献3の提案は通信ケーブルの接続端子函内部の結露防止用途に限定されており、さらには両方の提案とも、特に大面積な用途における使用に際して、塗膜の強度が弱くSAP粉末が脱落し易いこと、長期に亘るシートの耐久性が乏しいことが問題となっている。
特許文献5には、SAP粉末とMFCとバインダーとを混合した調湿材を、刷毛、ローラあるいは吹き付けなどの方法によって中空構造物の内面に塗布することで結露を防止する方法が提案されている。しかし、この提案も前記した特許文献1と同じように塗料としての安定性に欠けたものであり、塗料として簡便に扱うことができないことに加え、塗膜の強度が弱くSAP粉末が脱落し易いという問題があった。
また、高速道路や一般道に沿って設置されている照明灯は円筒状の中空構造物であり、気温の低下によって内面に結露を生じるといった問題を有していた。その結果、結露の発生による腐食、電気配線のショート、あるいは電気機器の動作不良といった電気事故を発生させていた。その対策としては、地面からの湿気の浸入を防ぐために照明灯の内面下部に発泡ウレタンを吹き付け、さらに内部に乾燥剤を設置するといった手段が講じられてきた。
マンションなどの建築構造物では、天井部、窓近傍、空調ダクトに断熱材を設置させることで結露防止の対処をしている。また一般住宅においては、ある程度の吸放湿性能を有する、珪藻土入りの石膏ボードや天井材などを建築材料として用いることで結露対策としてきた。
その他として、輸送用の各種コンテナにおいては、積載物に結露水が滴下するのを防ぐために、SAP粉末を含む吸水シートで天井部を覆ったり、監視用カメラにおいては、筐体内部の結露対策としてシリカゲルなどの乾燥剤の封入などが行われてきた。
また、上記とは別の結露防止方法として、シリカゲルなどの乾燥剤の使用、建築構造物における断熱材や吸放湿性能を有する建材などの使用が提案され、実施されている。しかしながら、これらの方法では、ある程度の結露防止効果は得られるが、これらの結露防止材料では吸放湿量の絶対量が少ないため、長期間に亘って結露条件下に曝された場合の結露防止効果に乏しく、使用や施工コストに見合った効果が得られないという問題があった。
特開2000−034656号 特開平6−158032号 特開2004−842号 特開2004−1272号 特開2005−334738号
鋼製橋梁の箱桁構造の内部は、通常狭い閉鎖空間であるため、構造物の内部に立ち入って検査したり、補修、再塗装するなどの作業は困難な場合が多い。加えて、塗装作業は、有機溶剤の使用をともなうため、爆発、火災、酸素欠乏事故などに対応する必要があった。また、従来の高吸水性シートなどに提案されたような、SAP粉末に対して、少量のMFCをバインダーとして使用した混合スラリーを中空構造物の内面に直接塗布したり、あるいは混合スラリーを塗布し乾燥させた支持体を使用したといったような結露防止方法では、高い吸放湿性能は得られるが、バインダー成分が少量のMFCしかない為に塗膜強度が弱くSAP粉末の脱落や塗膜自体の耐久性に問題があって、長期間にわたる使用には耐えられないといった問題があった。本発明は以上のような問題点を解決することを課題とし、具体的にはSAP粉末に対するバインダーの比率を上げることが困難なMFCを使用しないで、塗膜の強度や耐久性を強化し、調湿性能としては、密閉可能な1mの蓋付き鋼製容器の内面に、気積率A/V=0.1〜6m−1、塗布量0.06〜3.6kg/mの範囲内で、調湿性塗料を塗布するか若しくはそれを塗布した調湿性材料を設置し、温度22℃、相対湿度60%RHの雰囲気中で開封したまま容器内の温湿度を一定にしたのち密閉し、密閉容器の外部の温度差を28℃(22→40→22→12→22℃)の範囲で増減変化させ、到達した容器内の各温度における最大に増減した平衡湿度と60%RHとの差の合計(平衡湿度増減幅)を測定したとき、前記平衡湿度変動幅を20%RH以下に調湿できる調湿性塗料とそれを塗布した調湿性材料、およびそれを使用した結露防止方法を提供するものである。
即ち、本発明の請求項1に係る発明は、水と相溶性のある有機溶媒の単独、若しくは2種類以上を混合した有機溶媒中に、この有機溶媒と混和性のあるラテックスを混合した後、これに高吸水性樹脂粉末を主体としたものを混合し、均一に分散させたことを特徴とする調湿性塗料である。
本発明の請求項2に係る発明は、高吸水性樹脂粉末とラテックスの固形分質量比率が、100/2〜100/150の範囲にあって、塗料濃度を10〜60質量%の範囲に調整した塗料であることを特徴とする請求項1に記載の調湿性塗料である。
本発明の請求項3に係る発明は、高吸水性樹脂粉末の平均粒子径は、150μm以下の球形の粉末を使用したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の調湿性塗料である。
本発明の請求項4に係る発明は、有機溶媒として、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミン類、アミド類、複素環類、スルホオキシド類、スルホン類、スルホン酸塩類からなる群から選択された1種または2種以上の有機溶媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の調湿性塗料である。
本発明の請求項5に係る発明は、ラテックスとして非イオン系乳化剤で乳化されたアクリレート系ラテックスおよび乳化剤を使用しないソープフリーアクリレート系ラテックスを使用したことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の調湿性塗料である。
本発明の請求項6に係る発明は、支持体に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の調湿性塗料を塗布して乾燥したことを特徴とする調湿性材料である。
本発明の請求項7に係る発明は、調湿性塗料をドット状、ストライプ状、格子状、あるいは連続状、非連続状のパターン状のいずれか、あるいは組み合わせて塗布したことを特徴とする請求項6に記載の調湿性材料である。
本発明の請求項8に係る発明は、調湿性塗料の塗布量が、固形分質量換算で10〜600g/mであることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の調湿性材料である。
本発明の請求項9に係る発明は、支持体の裏面に粘着剤または接着剤を塗布したことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の調湿性材料である。
本発明の請求項10に係る発明は、密閉可能な1mの蓋付き鋼製容器の内面に、気積率A/V=0.1〜6m−1、塗布量0.06〜3.6kg/mの範囲内で、調湿性塗料を塗布するか若しくはそれを塗布した調湿性材料を設置し、温度22℃、相対湿度60%RHの雰囲気中で開封したまま容器内の温湿度を一定にしたのち密閉し、密閉容器の外部の温度差を28℃(22→40→22→12→22℃)の範囲で増減変化させ、到達した容器内の各温度における最大に増減した平衡湿度と60%RHとの差の合計(平衡湿度増減幅)を、20%RH以内に調湿することを可能にすることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の調湿性塗料、および請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の調湿性材料である。
本発明の請求項11に係る発明は、密閉系、あるいは準密閉系の中空構造物の内面に、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の調湿性塗料を塗布し、あるいは請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の調湿性材料を設置することで、水蒸気を吸放湿して湿度を調節することにより密閉系、あるいは準密閉系の中空構造物内部の結露を防止することを特徴とする結露防止方法である。
本発明の請求項12に係る発明は、密閉系、あるいは準密閉系の中空構造物の内面は、鉄鋼材料、非鉄金属材料、コンクリート、木材、プラスチックおよびガラスの、少なくとも1つからなることを特徴とする、請求項11に記載の結露防止方法である。
本発明によれば、水と相溶性のある有機溶媒の単独、若しくは2種類以上を混合した有機溶媒中に、この有機溶媒と混和性のあるラテックスを混合した後、これにSAP粉末を主体としたものを混合し、均一に分散させることで調湿性塗料を調製することが可能となる。この塗料の主成分であるSAP粉末に対するラテックスの固形分質量比率を変えることにより、吸放湿性能を損なうことなく、従来のMFC等を用いたSAP粉末混合スラリーよりも、塗料皮膜の強度や耐久性を容易に向上することが可能となった。この塗料を密閉系や準密閉系の中空構造物の内面に直接塗布するか、若しくは該塗料を支持体に担持させた調湿性材料を設置すると、SAP粉末が水蒸気を吸放湿して湿度を調節することによって、中空構造物内面の結露を防止することが可能となる。
本発明者らは、前述した問題点を解決するために、水と相溶性のある有機溶媒と各種のラテックスについて添加量を変化させた混合液を調製し、混合液の貯蔵安定性やゲル化現象の有無を確認した。その結果、水と相溶性のある有機溶媒と混和性のあるラテックスであれば、塗料化が可能であることがわかった。好ましいラテックスとしてはスチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックス、酢酸ビニル樹脂ラテックス、エチレン酢酸ビニル樹脂ラテックス、アクリレート系ラテックス、ソープフリーラテックス等であり、特に好ましいのはアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルの単独もしくは共重合した純アクリルをベースとし、必要に応じてカルボン酸等の各種官能基、アクリロニトリル、スチレンなどのモノマーを共重合した非イオン系乳化剤で乳化したアクリレート系ラテックスと乳化剤を使用しないソープフリーアクリレート系ラテックスが良好な混和性を示した。
以下に、アクリレート系ラテックスを例に挙げて塗料の性状や性能について詳述する。主成分のSAP粉末に対するラテックス固形分の質量比率を高めていくと、SAP粉末の脱落が減少し塗膜の強度は増加していくが、吸放湿速度や吸放湿量は低下していくのは当然のことである。また、固形分濃度の高いラテックスを用いると、従来のMFCを使用したSAP粉末混合スラリーと比較して、SAP粉末に対するバインダーの比率を高めた高濃度の塗料が調製できるのが利点である。検討の結果、SAP粉末とラテックスの有効成分乾燥質量比率は、100/2〜100/150の範囲が好ましく、100/10〜100/50の範囲がより好ましい。有効成分乾燥質量比率が100/2未満になると、皮膜の強度や耐水性が低下し、100/150以上だとラテックス濃度に限界があるため増粘し、塗料調整が困難になるので好ましくない。
また、塗料濃度を10〜60質量%の範囲に調整することが好ましく、塗料濃度が10質量%未満であると塗料粘度が低くSAP粉末が沈降し易いため均一な塗布量の確保が難しくなり、60質量%以上となると粘度が高くなり過ぎて塗布作業が困難になるので好ましくない。
塗膜の硬さ、強度や耐水性は、アクリレート系ラテックスの最低造膜温度(MFT)やそのガラス転移点(Tg)に依存する。通常は、室温内で形成した樹脂膜の硬さや強度にほぼ準じた性状を示す。つまり、メチルメタアクリル酸エステルでは硬い塗膜、2−エチルヘキシルアクリル酸エステルでは柔らかな塗膜となり、強度や耐水性は共重合比率によって異なる。この樹脂膜の硬さは、調製され出来上がった塗料の粘度に影響する。同量のラテックス比率で確認した結果、2−エチルヘキシルアクリル酸エステルからメチルメタアクリル酸エステルまで樹脂膜が硬くなると、同濃度で塗料粘度は低下する傾向にあった。
本発明に用いるSAP粉末とは、多量の水を安定して保持する性質を持つ高吸水性樹脂の総称である。例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸およびその塩や誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの、イソブチレンとマレイン酸との共重合体等の合成樹脂や、微生物起源の高吸水性ポリマー等が挙げられる。本発明では、分散媒体中に均一に分散可能な粒状、顆粒状、球状、フレーク状、ペレット状といった形状のSAP粉末が使用できる。
通常、SAP粉末の平均粒子径は、20〜800μmの範囲にある。SAP粉末に対するラテックスの固形分質量比率は、SAP粉末の粒子径の大小によって異なる。一定質量のSAP粉末に一定質量のラテックス固形分を使用した場合、粒子径が大きいと皮膜の強度が増加し、逆に粒子径が小さいと皮膜の強度は減少する傾向にある。このことは、SAP粉末の全表面積に対する固形分質量比率の大小によるものであるから、選択したSAP粉末の粒子径によって適切なラテックス固形分質量比率を決定する必要がある。比較的なめらかな塗布表面を得たり、塗布後スーパーカレンダー等による加圧処理によって表面の平滑性をさらに高める場合には、SAP粉末の平均粒子径は150μm以下であることが好ましい。平均粒子径が150μm以上のSAP粉末を使用した場合の塗料の皮膜は、粒子径が大き過ぎるため凸凹の表面になり易く、その結果塗布表面における摩耗強度も弱くなるので好ましくない。
SAP粉末の形状は、分散媒体中に均一に分散可能なものであれば粒状、顆粒状、球状、フレーク状、ペレット状といった各種の形状のものが使用可能であるが、塗布表面の形状をなめらかなものにするには球状のものを使用することが好ましい。
本発明に使用する水と相溶性のある有機溶媒としては、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミン類、アミド類、複素環類、スルホオキシド類、スルホン類、スルホン酸塩類からなる群から選択された1種または2種以上の有機溶媒を使用することが好ましく、前記載の混和性のあるラテックスの選択にあたって、混合液の貯蔵安定性が良好でゲル化現象が発生しない有機溶媒が特に好ましく使用できる。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなど。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコールなど。多価アルコールエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテルなど。アミン類としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチレンジエタノールアミン、モルホリン、Nエチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミンなど。アミド類としては、ホルムアミド、N・N−ジメチルホルムアミド、N・N−ジメチルアセトアミドなど。複素環類としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−オキサドリドン、1.3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど。スルホオキシド類としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)など。スルホン類としては、スルホランなど。スルホン酸塩類としては、1−ブタンスルホン酸ナトリウム塩類など。ケトン類としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトンなど。エステル類としては、酢酸メチル、酢酸プロピルなど。ニトリル類としてはアセトニトリルなど。エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジオキサンなどがあるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
本発明では、容器内に水と相溶性のある有機溶媒を入れ、有機溶媒と混和性のあるラテックスを添加混合した後、攪拌しながらSAP粉末を主体としたものを入れ均一に分散させて塗料を調製する。調製される塗料の粘度と濃度は、SAP粉末とラテックス固形分の質量比率とラテックス固形成分、ラテックス原液の固形分質量%などによって異なる。塗料濃度は10〜60質量%、塗料粘度は100〜20000Pa・s(温度25℃、B型粘度計60rpm測定値)の範囲が好適である。塗料濃度が10質量%以下、塗料粘度100Pa・s以下の塗料だと、一回の塗布量も少なく溶媒の使用量も多くなりコスト高となるので好ましくない。また、塗料濃度が60質量%以上、塗料粘度が20000Pa・s以上になると塗布作業が困難となるので好ましくない。
前述した塗料は、塗料中のSAP粉末とラテックス固形分を取り除いた溶液において、有機溶媒/水の混合比が97/3〜60/40の範囲が適当である。なお、この比率は、使用される有機溶媒と、用いるSAP粉末の性質により多少変化するが、前記の範囲内であればSAP粉末の吸水を可能な限り抑制することができ、SAP粉末同士の接近によるゲル化凝集現象をほぼ完全に防止できるので好ましい。さらに、塗料を希釈する場合には前記の範囲内で水および有機溶媒と水の混合液を添加することが可能となる。
本発明では、調湿性塗料の調製において各種の無機填料を使用することができる。通常、白色度や不透明度を付与するために、チタン白、白土、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等を使用する。また、シリカゲル、アルミナゲル、シリカアルミナゲル、合成および天然ゼオライト、セピオライト、アロフェン、珪藻土、珪藻頁岩、活性白土等の吸放湿性粉体やアルミノケイ酸亜鉛系鉱物等の汚染ガス吸着性粉体を単独若しくは併用して使用することもできるが、前記した各種の填料に限定されるものではない。さらには各種の助剤、例えば撥水剤、防腐剤、抗菌剤、防かび剤、粘度調整剤、染料、顔料などを必要に応じて適宜添加することができる。
本発明において、前記したような調湿性塗料を各種の支持体に塗布し、これを乾燥させることで調湿性材料として得ることができる。ここで使用される支持体としては、合成樹脂や半合成樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、アセテート、ポリエステルなどといった各種のフィルムやシート、あるいは紙、布、不織布といった多孔質素材を適宜、使用することができる。また、巻取り作業が可能なアルミ箔や鋼箔、枚葉加工が可能な金属板や木材でも、調湿性塗料が塗布できれば支持体として使用できる。
本発明において調湿性塗料を塗布する支持体として、上記したフィルムやシートおよび金属板等の厚さは20〜1000μmのものが好ましい。支持体の厚さや強度は、選択した材料によって異なるが、一般的には選択した加工機で連続的に塗料を塗布する作業に耐え得るものであれば、特に限定されるものではない。なお、前述した金属板を例に挙げると、金属板に塗料を塗布乾燥した後、所定の寸法に打ち抜き電気機器等の筐体として使用できる強度を有するものが好適である。
本発明において、調湿性塗料を塗布するための多孔質素材としては不織布が好ましく使用できるが、特に限定されるものではない。繊維の素材としては、コットン、レーヨン、木材パルプ、精製セルロース繊維、再生セルロース繊維などの親水性素材や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル繊維などを用いた疎水性素材が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではなく、坪量が20〜70g/mの低密度な不織布が好適である。
調製した調湿性塗料を支持体に塗布する装置としては、調湿性塗料を支持体の所定個所に所定量塗布できる装置であれば、いかなる装置でも使用できる。本発明に用いられる調湿性塗料は、シェアーが加わっても粘度増加のない優れた流動特性を示すため、防爆型のエアーナイフコーター、ロールコーター、メイヤーバーコーター、グラビアコーター、カーテンフローコーター、コンマコーター、シルクスクリーンコーター等の加工機でも塗布が可能であり、塗布量は固形分質量換算で10〜600g/mが好ましい。さらに好ましくは70〜420g/mである。塗布量が10g/m未満だと吸放湿量が不足するため好ましくなく、600g/m以上だと吸放湿量は十分ではあるがコスト高になるので好ましくない。
本発明において支持体に調湿性塗料を塗布するにあたり、全面に調湿性塗料を塗布しても良いが、塗布量が多くなるとシート状物としての剛直性が高まり、調湿性材料としての取り扱いがし難くなる傾向があるので、調湿性塗料を支持体にドット状、ストライプ状、格子状、あるいは連続状、非連続状のパターン状のいずれか、あるいは組み合わせて塗布することで、調湿性材料を施工する際の作業性が向上するので好ましい。
本発明において、上記したような調湿性材料の裏面に粘着剤あるいは接着剤を塗布することで、調湿性材料を施工する際の作業性が向上するので好ましい。粘着剤としてはシート状物に一般的に使用される粘着剤、例えばアクリル系エマルジョン型粘着剤、アクリル系溶剤型粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン型粘着剤、天然および合成ゴム型粘着剤などを適宜使用することができる。接着剤としては、シート状物に一般的に使用されるデンプン系やポリビニルアルコール系といった水系や、あるいはエポキシ系接着剤のような溶剤系の接着剤が必要に応じて適宜使用することができる。
本発明による密閉系、あるいは準密閉系の中空構造物内部の結露を防止する方法としては、中空構造物の内面に調湿性塗料を直接塗布したり、内面に支持層となる支持体を貼り付け、その上に調湿性塗料を塗布してもよい。塗装は、刷毛、ローラなどによって直接塗装したり、吹き付け塗装を行ってもよい。また、調湿性塗料を塗布した調湿性材料を所定量設置してもよい。
本発明による密閉系、あるいは準密閉系の中空構造物内部の結露を防止するための調湿
性能は、構造物の容積(m)に対する調湿性塗料の塗布面積若しくはそれを塗布した調湿性材料の設置面積(m)の比率(気積率A/V)と塗布量(kg/m)の違いによって左右される。気積率とは、密閉系、あるいは準密閉系の中空構造物内部の容積1m当たりに対する塗布または設置面積mの比率であり、通常、m−1(m/m)の単位で表され、気積率A/V=6m−1は、立方体の内部6面体に全て施工したことを意味する。また本発明では、気積率A/V=0.1〜6m−1、塗布量を10〜600g/mの範囲で提案していることから、実際には0.06〜3.6kg/m範囲内の塗料固形分質量の使用により湿度調節を行うことなる。
図1は、密閉可能な1mの蓋付き鋼製容器の内面に、気積率A/V=0.1〜6m−1、塗布量0.06〜3.6kg/mの範囲内で、調湿性塗料を塗布するか若しくはそれを塗布した調湿性材料を設置し、温度22℃、相対湿度60%RHの雰囲気中で開封したまま容器内の温湿度を一定にしたのち密閉し、密閉容器の外部の温度差を28℃(22→40→22→12→22℃)の範囲で増減変化させ、到達した容器内の各温度における最大に増減した平衡湿度と60%RHとの差の合計(平衡湿度増減幅)を測定したものである。調湿材を全く使用しないと55%RHの範囲で平衡湿度が変動するが、塗布量10g/mで6m塗布(0.06kg/m)すると変動幅が12%RH、塗布量600g/mで2m以上塗布(1.2kg/m)すると変動幅が0%RHとなることを示している。
本発明では、前記平衡湿度変動幅を20%RH以下に調湿できる調湿性塗料とそれを塗布した調湿性材料を提案するものである。図中、(1)は600g/m、(2)は10g/mの調湿性塗料を塗布若しくは塗布した調湿性材料を設置した場合である。気積率A/V=0.1m−1に対して調湿性塗料を600g/m塗布した場合と、気積率A/V=6m−1に対して調湿性塗料を10g/m塗布した場合には、両者とも同じ塗料固形分質量(0.06kg/m)を使用したことになり、平衡湿度変動幅は同じになる。また、塗料固形分質量が0.06kg/m以下の使用量(気積率で(1)は0.1m−1以下、(2)は6m−1以下)でも、20%RH以下に調湿できることを図から読み取ることができる。なお、準密閉系では、気密性、換気回数、温湿度変動幅、構造物の材質、耐用年数等を考慮して、前記載の密閉系の使用量を基準に安全率を加算し、調湿効果を確認したうえで使用量を決定することになる。その調湿効果によって、中空構造物のデッドスペース内部の結露発生を防止することが可能となる。また、本発明の結露防止方法は、以上に記載された事例に限定されるものではない。
[実施例1]
水と相溶性のある有機溶剤としてエタノール75gに、水と相溶性のある有機溶剤と混和性のあるラテックス(商品名「プライマルB−15B」日本アクリル化学(株)製、固形分質量46%)4.3gを添加混合した分散媒体溶液に、SAP(商品名「アクアパール211DS」サンダイヤポリマー(株)製)100gを投入して攪拌し、均一に分散した塗料を得た。この塗料のエタノール/水比は97/3、SAP粉末/バインダー比は100/2、濃度は56.9質量%であった。この塗料を坪量38g/mのスパンレース不織布(商品名「RPN−38」、大和紡績(株)製)に固形分で200g/m塗布し、乾燥後坪量238g/mの調湿性材料を得た。
[実施例2]
水と相溶性のある有機溶剤としてエタノール290gに、水と相溶性のある有機溶剤と混和性のあるラテックス(商品名「プライマルB−15B「)54.3gを添加混合した分散媒体溶液に、SAP(商品名「アクアパール211DS」)100gを投入して攪拌し、均一に分散した塗料を得た。この塗料のエタノール/水比は90.8/9.2、SAP粉末/バインダー比は100/25、濃度は28.1質量%であった。この塗料を坪量38g/mのスパンレース不織布(商品名「RPN−38」)に固形分で200g/m塗布し、乾燥後坪量238g/mの調湿性材料を得た。
[実施例3]
水と相溶性のある有機溶剤としてエタノール580gに水と相溶性のある有機溶剤と混和性のあるラテックス(商品名「プライマルB−15B」)326gを添加混合した分散媒体溶液に、SAP(商品名「アクアパール211DS」)100gを投入して攪拌し、均一に分散した塗料を得た。この塗料のエタノール/水比は77/23、SAP粉末/バインダー比は100/150、濃度は24.9質量%であった。この塗料を坪量38g/mのスパンレース不織布(商品名「RPN−38」)に固形分で200g/m塗布し、乾燥後坪量238g/mの調湿性材料を得た。
[比較例
水と相溶性のある有機溶剤としてエタノール100gに水と相溶性のある有機溶剤と混和性のあるラテックス(商品名「プライマルB−15」)2.2gを添加混合した分散媒体溶液に、SAP(商品名「アクアパール211DS」)100gを投入して攪拌し、均一に分散した塗料を得た。この塗料のエタノール/水比は98.8/1.2、SAP粉末/バインダー比は100/1、濃度は50.0質量%であった。この塗料を坪量38g/mのスパンレース不織布(商品名「RPN−38」)に固形分で200g/m塗布し、乾燥後坪量238g/mの調湿性材料を得た。
[比較例
水と相溶性のある有機溶剤としてエタノール580gに水と相溶性のある有機溶剤と混和性のあるラテックス(商品名「プライマルB−15B」)348gを添加混合した分散媒体溶液に、SAP(商品名「アクアパール211DS」)100gを投入して攪拌し、均一に分散した塗料を得た。この塗料のエタノール/水比は76/24、SAP粉末/バインダー比は100/160、濃度は25.3質量%であった。この塗料を坪量38g/mのスパンレース不織布(商品名「RPN−38」)に固形分で200g/m塗布し、乾燥後坪量238g/mの調湿性材料を得た。
[比較例
水と相溶性のある有機溶剤としてエタノール280gに水98mlを加えた液に、6.4%濃度のMFC(平均繊維長0.1mm:特種製紙(株)製)31gを分散した後、SAP(商品名「アクアパール211DS」サンダイヤポリマー(株)製)98gを投入して攪拌し、均一に分散した混合スラリーを得た。この混合スラリーのエタノール/水比は69/31、SAP粉末/MFC比は100/2、混合スラリー濃度は19.7質量%であった。この混合液を坪量38g/mのスパンレース不織布(商品名「RPN−38」)に固形分で200g/m塗布し、乾燥後坪量238g/mの調湿性材料を得た。
[比較例
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)45質量部、吸放湿性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)50質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)5質量部を混合し、離解して得られた均一なスラリーに、紙力増強剤(商品名「ネオタックL−1」、日本食品化工(株)製造)を固形分換算で0.5質量%添加して分散し、さらに高分子アニオン性凝集剤(商品名「ハイホルダー351」、栗田工業(株)製造)を固形分換算で0.006質量%添加した後、常法により長網抄紙機で坪量1000g/mの調湿性シートを得た。
(表1)に実施例と比較例に使用した塗料の性状と塗膜の特性を示した。
Figure 0005143365
[塗料の固液分離]
実施例1〜3、比較例1〜で調製した塗料を、300mlのメスシリンダーに注入し固液分離を観察した。注入後直ちに分離したもの(不適)を×、8時間以上経過しても分離しないもの(適)を◎とした。◎を合格とした。
[塗布適性]
坪量38g/mのスパンレース不織布(商品名「RPN−38」)にNo.22のワイヤーロッドを使用して手塗り加工を行い、作業性の良否を判断した。1回で問題なく塗布できたもの(適)を◎〜○、粘度調整や1回以上の塗布が必要であった(やや不適)ものを△、ワイヤーロッドでは塗布できなかったもの(不適)を×とした。○以上を合格とした。
[塗膜の吸水性]
実施例1〜3、比較例1〜で得た調湿性材料の塗布面上に、スポイトで1滴(0.4mL)の水を滴下し、直ちに吸水したもの(適)を◎、吸水に60秒以上を要するもの(不適)を×とした。◎を合格とした。
[塗膜の剥離強度]
実施例1〜3、比較例1〜で得た調湿性材料の塗布面上に、18mm幅の包装用セロハン粘着テープ(商品名「No.405」、ニチバン(株)製)を貼り接着面を18mm×20mmとし、上から5kgの荷重ロールを3往復した後、180°ピーリングの状態でセロハンテープを剥がし、セロハンテープに付着しているSAPの付着状態を目視にて観察して剥離強度を評価した。全く付着しないもの(適)を◎、ほとんど付着しないもの(適)を○、付着したもの(不適)を△、かなり付着したもの(不適)を×とした。○以上を合格とした。
[30℃−90%RH吸湿量]と [30℃−35%RH吸湿量]の繰り返し測定
実施例1〜3、比較例1〜で得た調湿性材料と調湿性シートを105℃で3日間乾燥した後、30℃−35%RHの恒温恒湿槽内に14時間暴露し吸湿量を測定した。測定後直ちに試料を槽内に戻し30℃−90%RHに設定し2時間曝露し吸湿量を測定した。以後2時間毎に30℃の温度条件下で湿度条件を35%RHと90%RHの繰り返し暴露を行い、乾燥後の塗膜重量および調湿性シート1gに対する暴露後の重量の増減を算出し、5回繰り返したそれぞれの平均値を吸湿量として表1に示した。その数値の増減を見れば、明らかに吸放湿性能があることが認められる。また、実施例2の1.84とは、塗膜乾燥重量の1.84倍の吸湿量があったことを示している。
実施例2と比較例を用いて、前述した低湿と高湿を繰り返した時の吸放湿量を測定した結果を図2に示した。実施例2は比較例と比較して、90%RHでは5倍、35%RHでは4.2倍の吸湿量があり、湿度変化を繰り返しても吸放湿量と吸放湿速度は変わらないことがわかる。なお、比較例は、過去から多用されている乾燥剤のシリカゲルを用いた調湿材料の代表的な例である。
以上の結果、
(1)実施例1〜3は比較例と比較して、塗料の性状と塗膜の特性において優れ、吸(放)湿量も同等以上である。特に実施例2は比較例に比べ12.5倍に相当するバインダーを使用しているのに、吸湿量は殆ど損なわれていないことがわかる。
)比較例は、実施例1〜3と同様なる吸(放)湿量が認められるものもあるが、塗料の性状と塗膜の特性に一長一短があり、実用上問題がある。
)比較例は実施例1〜3と比較して、吸放湿量が極めて少ないこと等が確認できた。
[調湿性能確認試験1]
図3
は、実施例1、2と比較例で得られた調湿性材料をそれぞれ気積率A/V=0.5m−1で使用し、調湿性能を確認したものである。可変空調室内に鋼製の密閉可能な蓋付き容器(1m)の内側面に調湿性材料を貼り、蓋を開けて22℃、60%RHで5時間暴露してから容器を密閉し、容器の外部の温度を5時間毎に22→40→12→22℃と順次変化させていった際の、容器内の温湿度の変化を示したものである。図3のようにSAPに対するラテックス固形分質量比率が増えると、吸放湿量が減少するため平衡湿度に達するまでの時間がかかり、元の平衡湿度に戻り難いことがわかる。また、吸放湿速度が遅くなるため、急激な温度変化に追随して応答する速度が遅くなるため、比較例の如く一時的に容器内の湿度が高くなり結露の可能性があることがわかる。なお、平衡湿度変動幅は、実施例1が8%RH、実施例2が11%RH、比較例が21%RHであった。
[結露防止試験1]
鋼板(縦20cm、横30cm、厚さ10mm)の右半分の表面に、実施例2で得られた調湿性塗料を10g/m刷毛塗りした後乾燥し、結露発生試験用の試料とした。この試料を−5℃の冷凍庫に最低5時間置いた後取り出し、22℃の室内に2時間放置すると、左半分の非塗装面に結露が発生した。そのあと自然乾燥で非塗装面の結露水を消失させてから、前述と同じ条件で冷凍庫保存と室内放置を繰り返して結露させる作業を1週間行った。その結果、調湿性塗料塗装面での結露と錆の発生は全く見られなかったが、非塗装面には結露の繰り返しによる錆の発生が全面に見られた。このことにより、調湿性塗料の有効性を確認することができた。
[結露防止試験2]
日本国内における過去10年間の気象観測結果では、日中平均湿度において、相対湿度100%の連続記録は2日間が最長であった。また、1日の平均相対湿度が97%以上の連続した記録は、1998年北海道の根室での9日間が最長であり、これ以上続くことは日本では稀である。しかし、南西諸島や伊豆・小笠原諸島など特殊環境地域での気象条件も考慮する必要がある。図4は、結露防止効果を示したものである。予め実施例2と比較例で得た調湿性材料を蓋を開けた鋼製の2つの準密閉容器(完全密閉でない蓋付き容器)内に、気積率A/V=0.5m−1の使用量で容器の内壁に別々にセットした。この2つの容器を90%RHの恒温恒湿槽内に1週間入れた後、平衡水分含有率に達したことを確認し準密閉容器の蓋を閉めた。続いて2つの準密閉容器を湿度100%RHの槽内に入れ、準密閉容器内の湿度変化を見たものである。実施例2は10日間経過しても100%RHにならなかったが、比較例は5日間で100%RHになることを確認したのち、直ちに湿度90%RHに調整した槽内に移した。と同時に、湿度が下がり始め、両者に時間差はあるものの準密閉容器内の湿度は90%RHとなり、その後も90%RHで安定した。このことから、実施例2で得られた調湿性材料は比較例に比べて、吸放湿量も多く吸放湿速度も速いことが確認され、結露防止材として極めて優れたものであることがわかった。
本発明による調湿性塗料、調湿性材料およびそれを使用した結露防止方法は、橋梁、屋外照明灯、鉄骨あるいはコンクリート構造物、コンテナ、監視用カメラの筺体、精密電子部品といった密閉系、あるいは準密閉系中空構造物内面に発生する結露を防止することが可能となるので、構造物の内部に立ち入って検査したり、補修、再塗装するなどの作業が緩和され、メンテナンス作業の省力化のために好適に利用できる。
:気積率と平衡湿度変動幅を示す図である。 :繰り返し(低湿⇔高湿)の吸放質性能を示す図である。 :調湿性能確認試験を示す図である。 :結露防止試験を示す図である。

Claims (8)

  1. 水と相溶性のあるアルコールの単独、若しくは2種類以上を混合したアルコール中に、このアルコールと混和性のあるアクリレート系ラテックスを混合した後、これにポリアクリル酸及びその塩を部分架橋した高吸水性樹脂粉末を主体としたものを、高吸水性樹脂粉末とラテックスの固形分質量比率が、100/2〜100/150の範囲にあって、塗料濃度が10〜60質量%の範囲となるように混合し、均一に分散させたことを特徴とする調湿性塗料(但し、シリカを含まない)。
  2. 平均粒子径が150μm以下の球形の高吸水性樹脂粉末を使用したことを特徴とする、請求項1記載の調湿性塗料。
  3. アクリレート系ラテックスとして非イオン系乳化剤で乳化されたアクリレート系ラテックス及び/又は乳化剤を使用しないソープフリーアクリレート系ラテックスを使用したことを特徴とする、請求項1又は2記載の調湿性塗料。
  4. 支持体に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の調湿性塗料を塗布して乾燥したことを特徴とする調湿性材料。
  5. 調湿性塗料をドット状、ストライプ状、格子状、あるいは連続状、非連続状のパターン状のいずれか、あるいは組み合わせて塗布したことを特徴とする、請求項4記載の調湿性材料。
  6. 支持体の裏面に粘着剤または接着剤を塗布したことを特徴とする、請求項4又は5記載の調湿性材料。
  7. 密閉系、あるいは準密閉系の中空構造物の内面に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の調湿性塗料を塗布し、あるいは請求項4〜6のいずれか1項に記載の調湿性材料を設置することで、水蒸気を吸放湿して湿度を調節することにより密閉系、あるいは準密閉系の中空構造物内部の結露を防止することを特徴とする結露防止方法。
  8. 密閉系、あるいは準密閉系の中空構造物の内面は、鉄鋼材料、非鉄金属材料、コンクリート、木材、プラスチックおよびガラスの、少なくとも1つからなることを特徴とする請求項7記載の結露防止方法。
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