JP3707930B2 - 内装用塗料組成物 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、ローラー塗りを始めとする各種塗装方法によってパターンを付与することができる比較的厚塗りにて塗装が可能な内装用塗料組成物に係り、さらに詳しくは、室内空気中の揮発性有機化合物を吸着する多孔質で汚染し難い塗膜を形成することができる内装用塗料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
昨今、戸建住宅やマンションにおいて、アレルギー性の健康被害に関する問題が、社会問題として大きく取り上げられている。これは通称「シックハウス症候群」と呼ばれ、室内に存在するホルムアルデヒドを始めとした揮発性有機化合物(以下「VOC」という。)が主たる原因と考えられている。このVOCは、室内で使用する合板や家具、またはそれに使用する接着剤、断熱材や畳などに主に含まれ、これが室内に放出されることで、人体に対して頭痛、眼痛、呼吸器障害等の健康障害をもたらすものと考えられている。
【0003】
そこで最近これらの問題に対する規定、基準値などの取り決めを行なう動きが活発化し、有害物質排除の機運が高まってきている。従来このようなVOCを除去する方法としては、室内の換気を頻繁に行なったり、特定の吸着剤によって吸着除去する方法しかなかった。このような吸着剤としては、多孔質物質や層状化合物があげられ、方法としては、吸着剤をVOCと接触するような状況に維持して吸着除去するものである。通常、室内においては天井や壁面が室内の空気と接する面積が大きく、この面に吸着剤を維持することにより、VOCの効果的な除去が可能となる。この点に着目し、天井用、壁用のVOC吸着塗料として、吸着剤を配合したものが検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなVOC吸着塗料においては、塗膜とVOCとの接触面積が広くても、実際、塗料に配合された吸着剤とVOCとの接触が生じないと吸着除去の効率が低下するという問題がある。効率よくVOCを吸着するためには、吸着剤を塗膜の表面部分に配向する必要があるが技術的に難しく、また、凹凸模様によるテクスチャーを付与するような厚膜の場合は、膜厚に比例して吸着剤を増量しなければならないが、吸着剤のコストが高いため、コスト面で不利であり、せっかくの吸着剤の機能を十分に発揮させられないという問題があった。
【0005】
また、これら吸着剤は通常VOCを物理吸着する機構のものがほとんどであり、温度を上げると吸着したVOCを逆に脱着してしまうという問題があった。室内においては、四季を通じて温度の変化があり、また冬期には暖房により室内温度が上昇することがあり、このような場合に吸着したVOCを脱着するならば全く意味がなくなる。
【0006】
さらに、室内においては湿度の変化も大きく、壁面や床面において結露を生じることがある。このような結露が発生した場合には、吸着剤とVOCとの接触を水膜が遮ることになり、十分な吸着効果が発揮されなくなる。したがって、結露を生じないような多孔質塗膜を設けて、水膜による遮蔽を防止することが有効であるが、多孔質塗膜は塗膜表面が緻密なものと比較すると、手垢等の汚染物質の付着性が高く、また付着した汚染物質の除去効果も低いものであった。
【0007】
また、室内において多用されているクロス(壁紙)上に、従来の薄膜塗料を用いた場合、クロスの目開き部分を充分に充填隠蔽することができず、外観上問題があった。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、
▲1▼吸着剤を含有するVOC吸着塗料でありながら、比較的厚膜のため凹凸模様によるテクスチャーを付与できる。
▲2▼吸着したVOCを脱着しない。
▲3▼その表面に結露を生じることがない多孔質な塗膜でありながら、手垢等の汚染物質が付着し難く、汚染した物質の除去がしやすい。
▲4▼クロスの改装用として用いた場合にクロスの目開きによる外観不良を防止する。
等の効果を有する内装用塗料組成物である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、本発明者らはVOCを化学吸着して脱着しない吸着剤と多孔質粉粒体を複合し、さらに特定の物性を有する無機質粉体を組み合せることにより、このような課題を解決することができることを見出した。
【0012】
すなわち本発明は、
1.合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、粒子径20μm以下、かさ密度0.6g/cc以下のゼオライト、シリカゲル、活性炭、シラスバルーン、パーライト、発泡バーミキュライト、珪藻土、アルミノケイ酸マグネシウムからなる群から選択される多孔質粉粒体を20〜100重量部、揮発性有機化合物(以下、「VOC」という。)の化学吸着性吸着剤であるアミン化合物をインターカレートした結晶性層状リン酸塩を1〜20重量部、吸油量50( ml/100g)以下、粒子径0.5〜10μmの珪酸質系無機粉体を50〜200重量部含有することを特徴とする内装用塗料組成物。
2. 前記多孔質粉粒体がシリカゲル及び/又は珪藻土である1.に記載の内装用塗料組成物。
【0013】
3.粒子径20μm以下、かさ密度0.6g/cc以下の多孔質粉粒体が珪藻土であることを特徴とする1.に記載の内装用塗料組成物。
【0014】
4.吸油量50( ml/100g)以下、粒子径0.5〜10μmの珪酸質系無機粉体がクレーであることを特徴とする1.〜3の何れかに記載の内装用塗料組成物。
【0015】
【発明の実施の態様】
本発明の合成樹脂エマルションは、重合性不飽和二重結合を有するモノマーをエマルション重合して得られるもの、または、あらかじめ合成した樹脂を、水系分散媒に乳化剤を使用して乳化したもののいずれでもよく、反応硬化形架橋タイプ、すなわちエマルション粒子に架橋基をもち自己架橋するタイプや、架橋剤を加えて、架橋反応をさせる二液硬化タイプでもよい。さらに粉末型のエマルションでもよい。但し、粉末型の場合は、使用時に水の添加が必要となる。
【0016】
これらの合成樹脂エマルションの種類としては、ポリ酢酸ビニル系、ポリアクリル酸エステル系、アクリル酸エステル−スチレン共重合体系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体系、エチレン−塩化ビニル共重合体系、酢酸ビニル−ベオバ共重合体系、ウレタン系、エポキシ系、シリコン変性アクリル系、フッ素系等のうち少なくとも1種類以上を使用する。
【0017】
次に粒子径20μm以下、かさ密度0.6g/cm3以下の多孔質粉粒体は、本発明において、VOCが化学吸着性吸着剤へと到達する頻度を増大させる効果をもち、さらにこの効果により、塗料における化学吸着性吸着剤の配合量が少なくても吸着性能が発揮できるようにするものである。また、室内における調湿効果を有することにより、塗膜表面での結露を防止し、VOCの化学吸着性吸着剤への到達が結露の水膜によって妨害されるのを防ぎ、さらに、被塗面から移行してくる可塑剤や、ヤニ、アクの成分等を吸着し、塗膜表面へと表出しないようにするという重要な機能を担うものである。粒径20μm、またはかさ密度0.6g/cm3を超えた場合は、調湿効果や吸着効果が低下する。
【0018】
このような多孔質粉粒体は、効果の程度は異なるが、このような粒径、およびかさ密度の条件を満たす限り、一般にその表面ないしは内部に多数の気孔を有するものであればよい。例えば、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、シラスバルーン、パーライト、発泡バーミキュライト、珪藻土、アルミノケイ酸マグネシウム、発泡フォームの粉砕物等のように天然、人工物を問わず使用することが可能である。このような多孔質粉粒体のうち、珪藻土が好ましく用いられる。
ここで、この多孔質粉粒体の配合量は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、20〜100重量部とするのが好ましい。20重量部未満の場合は、調湿効果や吸着効果が低下する傾向にある。100重量部を超える場合は、手垢等の汚れがやや付きやすくなり、また塗膜強度が低下する傾向にある。
【0019】
VOCの化学吸着性吸着剤は、吸着剤−吸着質間の相互作用が非常に強く、化学変化を起こして非可逆吸着を行なう機構を有するものであれば特に限定はされないが、シクロデキストリン等の包接化合物の内壁や、結晶性層状リン酸塩等の層状化合物の層間にアミン化合物を結合ないしはインターカレートしたものが効果的であり、また、多孔質粉粒体との複合作用が発揮されやすい。特に結晶性層状リン酸塩等の層状化合物の層間にアミン化合物をインターカレートしたものは、ホルムアルデヒドの吸着効果に優れておりより望ましい。このようなアミン化合物をインターカレートした結晶性層状リン酸塩で、市販されているものとしては、テイカ株式会社製のK−FRESH ZAがあげられる。
ここで、このVOCの化学吸着性吸着剤の配合量は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、1〜20重量部とするのが好ましい。1重量部未満の場合は、VOCの吸着効果が低下する傾向にある。20重量部を超える場合は、コスト的に不利である。
【0020】
吸油量50(ml/100g)以下、粒子径0.5〜10μmの珪酸質系無機粉体は、手垢等の汚染物質の付着を抑え、また付着した汚染物質を除去する効果を発現するのに不可欠なものであるる。具体的には、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、ホワイトカーボン、タルク、ウォラストナイト等の珪酸質系無機粉体があげられるが、このような吸油量と粒子径に相当するものでなければならない。吸油量が50(ml/100g)より大きいと、珪酸質系無機質粉体の分散性が低下し、塗料全体の粘性が低下するため、厚塗りできなくなる。また、形成塗膜の肉痩せやひび割れを生じる。一方、粒子径が10μmより大きいと、塗膜表面の平滑性が低下し、肌ざわりが悪くなり、手垢汚れが付きやすくなる。0.5μmより小さいものについては良好に分散することが困難である。
ここで、この珪酸質系無機質粉体の配合量は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、50〜200重量部とするのが好ましい。50重量部未満の場合は、手垢等の汚れがやや付きやすくなる。200重量部を超える場合は、塗膜にひび割れを生じやすく、また強度が低下する傾向にある。
【0021】
本発明における吸油量とは、顔料を液体と機械的に湿潤混合させて堅いペースト状にするために必要な油の量であり、顔料100gに対する精製あまに油のml数で表す。測定方法は、「JISK 5101 顔料試験方法 19.吸油量」に基づいて行ったものである。
【0022】
本発明においては、以上の必須成分によって、前述の課題を解決することが可能であるが、さらに塗料組成物としてのより高い物性や外観、塗装作業性や凹凸模様意匠の付与しやすさ等の目的から、本発明の効果を失わない程度において、通常塗料組成物に配合する各種添加剤や、充填材、顔料、骨材を配合しても良い。添加剤としては、分散剤、増粘剤、湿潤調整剤、防腐剤、抗菌剤、防藻剤、防カビ剤、難燃剤等を配合することができる。
【0023】
充填材、顔料としては、重質炭酸カルシウム、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック、黄鉛、オーカー等の無機系、木粉、ココナツ・ヤシ殻粉、コルク粉末、繊維粉等の有機系のものがあげられる。骨材としては、通常塗材に用いられるものであれば特に限定はされないが、例えば、珪砂、寒水石、山砂、川砂、天然石粉砕物、陶磁器・セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、金属粒等やそれらの表面を着色コーティングしたものがあげられる。
【0024】
本発明の内装用塗料組成物を適用する被塗物としては、建築物の内壁面、天井、床、土木構築物の内壁面、無機質、有機質の建材表面等、VOCが発生し滞留するような部位があげられる。特に塩化ビニル製のクロスの表面に塗装する場合は、本発明の内装用塗料組成物が比較的厚膜を形成でき、クロスの目開き部分を充填し隠蔽することができるため、継ぎ目の見えないシームレスな表面とすることが可能となる。また、クロスの可塑剤をシールする効果があるポリウレタン系やポリカーボネート系、アクリロニトリル等の極性官能基を有するモノマーを共重合したアクリル系等のシーラーをクロス面に塗付した後に、本発明の内装用塗料組成物を塗付すると、シーラーとの複合作用により、可塑剤の塗膜表面への染み出し防止効果を高めることができる。
【0025】
本発明の塗料組成物は、被塗面への施工について特に限定されず、吹付け、ローラー塗り等各種の方法を用いることが可能である。
【0026】
【実施例】
以下に実施例、比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
(試験方法)
▲1▼ホルムアルデヒド吸着試験
(1)7×15cmのアルミ板に各塗料を1.0kg/m2になるように塗付(刷毛塗り)後、20℃にて14日間養生したものを試験体とする。
(2)試験体を臭い袋(容量3L)に入れる。
(3)試験体の入っている臭い袋に、予め20ppmに調製をしているホルムアルデヒドガスを入れる。
(4)24時間後に、臭い袋内ホルムアルデヒドガス残存濃度をガス検知機にて測定する。
評価基準は、24時間後のホルムアルデヒド残存量が、0ppmのものを○、0より多く0.5ppm以下のものを△、0.5ppmより多いものを×とした。
【0027】
▲2▼ホルムアルデヒド脱着試験
(1)上記▲1▼ホルムアルデヒド吸着試験の終了後、臭い袋内残存ガスをすべて追い出し、新たに窒素ガスを注入する。
(2)臭い袋を60℃乾燥機に入れ1時間静置する。
(3)乾燥機より取り出し、ガス検知管にて脱着ホルムアルデヒド濃度を測定する。
評価基準は、ホルムアルデヒド量が、0ppmのものを○、0より多く0.5ppm以下のものを△、0.5ppmより多いものを×とした。
【0028】
▲3▼鉛筆汚れ性試験
10×20cmのスレート板にシーラー処理後、各塗料を2mm厚になるようこてにて平滑に塗付し、20℃で24時間乾燥させたものを試験体とする。HBの鉛筆で試験体を黒く塗り、消しゴムでの除去性にて評価を行う。
評価基準は消しゴムにて消えるものを○、ごく微少な跡が残るものを△、跡が残るものを×とした。
【0029】
▲4▼外観試験
10×20cmのスレート板にシーラー処理後、各塗料を2mm厚になるようこてにて平滑に塗付し、20℃で24時間乾燥させ、塗膜の表面状態を観察する。
評価基準は、塗膜表面に何ら異常のないものを○、表面が多少荒れているものを△、クラックを生じているものを×とした。
【0030】
表1に示した原料を使用して、表2に示した配合にて各内装用塗料組成物を製造した後、各試験を行った。結果を表3に示した。
【0031】
(実施例1〜実施例2)
ホルムアルデヒド吸着試験、鉛筆汚れ性試験、外観試験の全てにおいて、良好な結果となった。
【0032】
(実施例3)
多孔質粉粒体が最適配合より若干多いため、鉛筆汚れ性試験ではごく微少な跡残ったが、ほとんど意識できない程度であった。
【0033】
(実施例4)
吸着剤が最適配合より若干少ないため、ホルムアルデヒド吸着試験において、ごく微少なホルムアルデヒドが残存したが、ほとんどの部分を吸着することができた。
【0034】
(実施例5)
無機質粉体1が最適配合より若干少ないため、鉛筆汚れ性試験ではごく微少な跡残ったが、ほとんど意識できない程度であった。
【0035】
(比較例1〜4)本発明の規定範囲のいずれかにおいて外れているため、本発明の目的である吸着性、汚れ除去性、外観において問題を生じた。
【表1】
【表2】
【表3】
【0036】
【発明の効果】
本発明の内装用塗料は、凹凸模様によるテクスチャーを付与するような厚膜にすることが可能であり、含有する吸着剤がVOCを化学吸着する機構のため吸着したVOCを脱着せず、調湿性に優れるため、結露発生を抑制し、吸着剤とVOCとの接触を水膜が遮ることがなく、十分な吸着効果が発揮される。また、多孔質塗膜でありながら手垢等の汚染物質の付着性が低く、また付着した汚染物質の除去効果が高い。さらに内装用クロス(壁紙)上に用いた場合、クロスの目開き部分を充分に充填隠蔽することができるという効果がある。
Claims (4)
- 合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、粒子径20μm以下、かさ密度0.6g/cc以下のゼオライト、シリカゲル、活性炭、シラスバルーン、パーライト、発泡バーミキュライト、珪藻土、アルミノケイ酸マグネシウムからなる群から選択される多孔質粉粒体を20〜100重量部、揮発性有機化合物(以下、「VOC」という。)の化学吸着性吸着剤であるアミン化合物をインターカレートした結晶性層状リン酸塩を1〜20重量部、吸油量50( ml/100g)以下、粒子径0.5〜10μmの珪酸質系無機粉体を50〜200重量部含有することを特徴とする内装用塗料組成物。
- 前記多孔質粉粒体がシリカゲル及び/又は珪藻土である請求項1に記載の内装用塗料組成物。
- 前記多孔質粉粒体が珪藻土であることを特徴とする請求項1に記載の内装用塗料組成物。
- 吸油量50( ml/100g)以下、粒子径0.5〜10μmの珪酸質系無機粉体がクレーであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の内装用塗料組成物。
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