JP6804937B2 - 塗り壁材とその施工方法、及び塗り壁構造 - Google Patents
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Description
しかし、クロスの素材又はクロス貼りに用いる接着剤にはシックハウス症候群の原因となる有機溶剤などの化学物を含んでいることが多い。更に、調湿機能がないため、湿度の高い日本に適しているとは言い難い。
そして、特許文献2に示す塗り壁材は、廃石膏と難燃性炭化物の混合物或いはこれに廃石膏を焼成して形成した焼成石膏を混合したものである。これにより、建築廃材中の廃石膏のリサイクル化を図ることができる。
前記木粉は、ヒノキ、スギ、ヒバ、又はクスであり、
前記難燃剤は、シラス、ゼオライト、珪砂、貝殻焼成カルシウムのうち少なくとも一種以上含有することを特徴とする塗り壁材。
2.難燃性に優れた塗り壁材であって、前記難燃剤を18〜24重量部含有する1.に記載の塗り壁材。
3.10cm×10cm、厚さ12.5mmの石膏ボード上に、焼石膏84重量%以上、バーミキュライト5重量%以下、炭酸カルシウム10重量%以下、粉末合成樹脂1重量%以下の組成の下塗り層を1mmの厚さで塗工形成し、更に前記下塗り層の上に前記塗り壁材からなる塗り壁層を1.5〜1.9mm塗工形成した試験体について、ISO5660−1に準拠した発熱試験において、発熱速度200kw/m 2 以上の継続時間が0秒、20分間発熱量が、3.5〜5.6MJ/m 2 である2.に記載の塗り壁材。
4.消臭性に優れた塗り壁材であって、前記木粉はヒノキであり、前記貝殻焼成カルシウムを2〜4重量部含有する1.に記載の塗り壁材。
5.調湿性に優れた塗り壁材であって、前記木粉はヒノキであり、前記難燃剤を15〜24重量部含有する1.に記載の塗り壁材。
6.施工性に優れた塗り壁材であって、前記ヒノキの木粉を53重量部、前記貝殻焼成カルシウムを1〜4重量部含有する1.に記載の塗り壁材。
7.断熱性に優れた塗り壁材であって、前記ヒノキの木粉を54重量部、前記難燃剤を18〜21重量部含有する1.に記載の塗り壁材。
8.害虫忌避性に優れた塗り壁材であって、前記ヒノキ又は前記ヒバからなる木粉を54重量部、難燃剤を18〜21重量部含有する1.に記載の塗り壁材。
9.水100重量部に対して、請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載の塗り壁材15〜25重量部を配合混練して塗り壁材混練物を得る工程と、
下地材上に下塗り材を塗工し乾燥させて、1.0〜3.0mmの厚さの下塗り層を形成する工程と、
前記下塗り層上に前記塗り壁材混練物を塗工し乾燥させて、2mm未満の厚さの塗り壁層を形成する工程と、を備える塗り壁材の施工方法。
10.下地材と、
該下地材上に形成された1.0〜3.0mmの厚さの下塗り層と、
該下塗り層上に形成された請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の塗り壁材を塗工し乾燥させて得られた2mm未満の厚さの塗り壁層と、からなる塗り壁構造。
2.前記難燃剤が、シラス、ゼオライト、珪砂、貝殻焼成カルシウムのうち少なくとも一種以上含有する場合には、木粉との混合により優れた難燃性を発揮できる。
3.前記貝殻焼成カルシウムを1〜4重量部含有する場合には、優れた消臭機能を発揮すると共に、難燃性の効果も発揮することができる。
4.前記木粉が、ヒノキ、スギ、ヒバ、又はクスからなる場合には、特に塗り壁材として、上記の効果を発揮しやすい。
5.本発明の塗り壁材の施工方法が、水100重量部に対して、1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の塗り壁材15〜25重量部を配合混練して塗り壁材混練物を得る工程と、下地材上に下塗り材を塗工し乾燥させて、0.5〜1.5mmの厚さの下塗り層を形成する工程と、前記下塗り層上に前記塗り壁材混練物を塗工し乾燥させて、2mm未満の厚さの塗り壁層を形成する工程と、を備える場合には施工性に優れると共に、施工後の塗り壁が消臭性、調湿性及び難燃性に優れたものとなる。
6.本発明の塗り壁構造は、下地材と、該下地材上に形成された1.0〜3.0の厚さの下塗り層と、該下塗り層上に形成された請求項1〜4に記載の塗り壁材を塗工し乾燥させて得られた2mm未満の厚さの塗り壁層と、からなるため、塗り壁が消臭性、調湿性及び難燃性に優れたものとなる。
本発明の塗り壁材は、塗り壁材全体を100重量部とした場合に、木粉を45〜60重量部、難燃剤を10〜30重量部、及び粘度調整剤を20〜45重量部含有することを特徴とする。本発明の塗り壁材は、これらの成分を混合することにより製造される。なお、上記以外の他の成分を含有することもできる。
(1)木粉
木粉は、本発明の塗り壁材の主成分であり、木粉のパウダー又はチップを意味する。粒径は特に限定はないが、パウダーであれば100メッシュパス以下であることが好ましい。また、チップであれば0.8〜1.2mmメッシュパスであることが好ましい。
塗り壁材全体を100重量部とした場合に、木粉は45〜60重量部含有するが、50〜55重量部含有することが好ましく、50〜53重量部含有することが更に好ましい。また、木粉の種類は特に限定はないが、ヒノキ、スギ、ヒバ、又はクスからなることが好ましい。これらの中でも特にヒノキであることが好ましい。
難燃剤は、特に限定されず公知の材料が使用できるが、自然素材のみに限定される。シラス(火山灰)、ゼオライト、珪砂、貝殻焼成カルシウムなどが好適に用いられ、これらのうち少なくとも一種以上含有することが好ましい。
塗り壁材全体を100重量部とした場合に、難燃剤を10〜30重量部含有するが、15〜25重量部含有することが更に好ましい。
シラス(火山灰)は、火山活動によってできた噴出物及びそれに由来する二次堆積物であり、難燃剤であると共に調湿効果の補助的役割を果たす。
珪砂は、花崗岩あるいは珪岩が、雨風、あるいは振動によって細かくなり、 粒状に変化したものであり、難燃剤であると共に、施工に際してコテの滑りをよくする効果がある。
ゼオライトは、火山活動によって生じた火山灰が海底や湖底に堆積し、地下深くで高圧下、水の存在により変成して形成された鉱物である。難燃剤であると共に、消臭・調湿効果がある。
貝殻焼成カルシウムは、貝殻(ホタテ、牡蠣等の貝の貝殻)を焼成することによって得られる焼成物である。この貝殻焼成カルシウムの主成分は、水酸化カルシウム(消石灰)であるが、工業的に作られた消石灰と異なる点は、貝殻を焼成したものであるから、水酸化カルシウム(消石灰)以外の他の成分(例えばカリウム、マグネシウム等の様々なミネラル成分等)を含有している点であり、その結果として、貝殻焼成カルシウムは、反応性が低いという特徴を有する。難燃剤であると共に、消臭効果を高める作用がある。
塗り壁材全体を100重量部とした場合に、貝殻焼成カルシウムを1〜4重量部含有することが好ましく、2〜4重量部含有することが更に好ましく、2〜3重量部含有することが特に好ましい。4重量部を超えるとやや施工性が低下し、1重量部未満では、消臭効果が低下する。
粘度調整剤は、塗り壁材の塗工作業性、接着性、保水性(吸水率)などを調整するために配合するものであり、その種類は特に限定されないが、セルロース、でんぷんのり等が例示される。
塗り壁材全体を100重量部とした場合に、粘度調整剤を20〜45重量部含有する。
セルロースとしては、水溶性セルロースエーテル、水溶性メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース等が好適に用いられる。
でんぷんのりは、粘度調整剤であると共に、接着性、保水性(吸水率)などを調整する役割も果たす。
上記の成分以外のその他の成分を含有することができる。例えば、パウダーの木粉の場合「すさ」を混合することで、施工に際して塗り壁のひび割れを防ぐのに有効である。すさの種類は特に限定はないが、麻、シュロウ、椰子、藁などの天然繊維を細断したものが好ましい。
すさの混合量も特に限定はないが、塗り壁材全体を100重量部とした場合に2〜4重量部含有することが好ましい。
本発明の塗り壁の施工方法は、水100重量部に対して、本発明に係る塗り壁材15〜25重量部を配合混練して塗り壁材混練物を得る工程と、下地材上に下塗り材を塗工して、1.0〜3.0mmの厚さの下塗り層を形成する工程と、前記下塗り層上に前記塗り壁材混練物を塗工して、2mm未満の厚さの塗り壁層を形成する工程と、を備える。
水100重量部に対して、本発明に係る塗り壁材15〜25重量部を配合混練する。パウダーの塗り壁材の場合は、更に「すさ」を4〜6重量部を加えることが好ましい。また、色粉を適量混合して、塗り壁の色を決めることもできる。
水と塗り壁材を一度に混合するのではなく、混練しながら徐々に水を加えて、粘度調整を行うことが好ましい。
下地材に下塗り層を形成する工程である。
前記「下地材」は特に限定はないが、石膏ボードであることが好ましい。石膏ボードであれば、耐熱性、寸法安定性に優れている。厚さも特に限定はないが、通常9.5mm〜21.0mmであれば好適に使用できる。
前記「下塗り材」は特に限定はないが、石膏系下塗り材を主成分とするものが好ましく、下塗り材を100重量部とした場合に、焼石膏(CaSO41/2H2O)80%以上含有するものであれば好適に使用できる。
下地材上に、コテなどで、下塗り材を塗工して、自然乾燥させる。下塗り層の乾燥後の厚さは、特に限定されないが1.0〜3.0mmであることが好ましい。
前記(1)で得られた塗り壁材混練物を乾燥した下塗り層上に塗工して塗り壁層を形成する工程である。下塗り層上に、コテなどで、塗り壁材混練物を塗工する。塗り壁層の乾燥後の厚さは2mm未満とするが、1.5〜1.9mmであることが好ましい。
本発明の塗り壁構造は、下地材と、該下地材上に形成された1.0〜3.0mmの厚さの下塗り層と、該下塗り層上に形成された請求項1〜4に記載の塗り壁材を塗工し乾燥させて得られた2mm未満の厚さの塗り壁層と、からなる。
塗り壁層の厚さは、1.5〜1.9mmであることが好ましい。
塗り壁材、下地材、下塗り層、塗り壁層については、前述の通りである。
この塗り壁構造であれば、塗り壁が消臭性、調湿性及び難燃性に優れたものとなる。
実施例に係る塗り壁材のうち木粉がパウダーであるP1〜P17、木粉がチップであるT1〜T5−3、木粉がチップであり貝殻焼成カルシウムを変化させたT1−1〜T1−4の塗り壁材を作成して、燃焼試験、消臭試験、調湿試験、湿気容量試験、施工試験、熱伝導率試験、忌避試験、揮発性有機物放射量試験を行った。
(試験体の作成)
表1に示す成分の塗り壁材を調製し、水100重量部に対して塗り壁材25重量部を混練して塗り壁材混練物を作成した。以下の実施例に係る試験体の「塗り壁層」は、すべてこの比率で混練した塗り壁材混練物を乾燥して形成したものである。
各成分の詳細については以下の通りである。
木粉:P1〜P4、P8〜P17、T1〜T4、T1−1〜T1−4については、ヒノキ(東濃桧)である。P5はスギ、T5−2、P6は青森ヒバ、T5−3、P7はクスである。粒径は、パウダー(P1〜P17)は、100メッシュパス以下、チップ(T1〜T5)は、1mmメッシュパスである。他の成分の詳細は以下の通りである。
火山灰(シラス):製品名スーパーバルーン(昭和化学工業株式会社製)
セルロース:製品名KCフロック(登録商標)品番W−50GK
でんぷんのり:製品名アミコールAP(日澱化学株式会社製)
すさ:製品名みじんすさ(株式会社北正商店製)
貝殻焼成カルシウム:製品名スカロー(登録商標)(株式会社抗菌研究所製)
(試験体)
塗り壁材P1〜P7、P12、T1〜T4については、10cm×10cm、厚さ12.5mmの石膏ボード(下地材)上に下塗り層を1mmの厚さで塗工形成し、更にその上に塗り壁層を2〜2.5mm塗工形成したものと、1.5〜1.9mm塗工形成したものとを試験体とした。
塗り壁材P13〜P17については、10cm×10cm、厚さ12.5mmの石膏ボード(下地材)上に下塗り層を1.5〜2.5mmの厚さで塗工形成し、更にその上に塗り壁層を1.5〜1.9mm塗工形成したものを試験体とした。
下塗り材「塗り替えプラスター」は(株)サンクス製、「U−トップ」、「C−トップ」は、吉野石膏株式会社製である。
(試験方法)
試験機:東洋精機製作所製CONEIII、ISO5660−1に準じ、発熱速度200kw/m2以上の継続時間、試験時間中の総発熱量及び裏面まで及ぶ亀裂の有無を調べた。試験時間は20分とした。
(試験結果)
比較例1〜4、実施例1〜8についての発熱速度、総発熱量を表2に示す。いずれも発熱速度200kw/m2以上の継続時間は0秒、試験時間中裏面まで及ぶ亀裂は全く見られなかった。ここで、通常の不燃認定(7.2MJ/m2以下(基準値8.0MJ/m2の9割))を合格と判定した。
塗り壁層(乾燥後の塗り厚)が1.5〜1.9mmであれば、20分間発熱量が、3.0〜6.3MJ/m2となり、耐熱評価が合格となることが判明した。
なお、下塗り材としての使用した製品名Uトップは、焼石膏84%以上、無機質骨材(バーミキュライト)5%以下、無機質混和剤(炭酸カルシウム)10%以下)、添加剤(粉末合成樹脂。硬化時間調整剤)1%以下の組成である。
また、下塗り材としての使用した製品名Cトップは、主成分が、半水石膏(CaSO41/2H2O)、炭酸カルシウム(CaCO3)、バーミキュライト、添加剤である。
表3の結果より、塗り壁材P4、P14、P17について、火災発生の際20分間は延焼しない、つまり火の燃え移りを防ぐ効果があることが分かった。
(1)容器による試験
(試験体)
塗り壁材25重量部を水100重量部と混練した混練物から3.5cm×3.5cm、厚さ1.5〜1.9mmの板状の乾燥した試験体を作成して、実施例9〜15とした。
また、同一形状、同一の大きさのクロスを用意して比較例13とした。
クロスは、塩化ビニル樹脂系壁紙(SANGETSU社製 品番SP−9942)を用いた(以下の試験での「比較例」のクロスはすべて同じ。)。
(試験方法)
500mlの容器それぞれに試験体と鰹節(削り節)0.2gを入れ、入れた時と、30分後の臭いを5人で嗅いで比較した。
(試験結果)
表4において、「◎・・殆ど臭いがしなくなった。 ○・・微かに臭いがある。
×・・臭いに変化がない。」を表わしている。
表4の結果から比較例5のクロスは、消臭効果が全くないことが分かる。実施例9〜11、実施例14、15については消臭効果が極めて優れていることが分かる。一方、実施例12、13については、消臭効果が優れているものの、前者程ではないことが分かる。実施例12に係る試験体P8、実施例13に係る試験体P9は、貝殻焼成カルシウム含有量がそれぞれ0%、1%であり、他の実施例に比べて少ないことに起因していると考えられる。
(試験体)
30cm×30cm×30cmの箱の側面のうち3面の板を試験体とした。試験体は、それぞれ厚さ9.5mmの石膏ボード(下地材)上に下塗り層(U−トップ)を1mmの厚さで塗工形成し、更にその上に表1に示す試験体からなる塗り壁層1.5〜1.9mmを塗工形成して試験体を作成し、実施例16〜22とした。
また、比較例6として、厚さ9.5mmの石膏ボード(下地材)上にクロス貼りした板を3面とした箱(実施例16〜22と同一形状、同一の大きさ)を用意した。
(試験方法)
上記試験体の箱それぞれに、70℃、濃度約5%のコーヒー100ccが入った容器を入れて、密閉状態のまま10分間放置した。10分後、箱内の湿度が落ち着き、匂いが充満したところで、箱内からコーヒーを一旦取り出した。その後、箱内を密閉にした状態で放置し、30分後、フタを少し開けてコーヒーの香りを3人で嗅いだ。
(試験結果)
表5において、「◎・・殆ど臭いがしない。 ○・・微かに臭いがある。×・・臭いに変化がない。」を表わしている。
表5の結果から比較例6のクロスは、消臭効果が全くないことが分かる。実施例16〜18、実施例21、22については消臭効果が極めて優れていることが分かる。一方、実施例19、20については、消臭効果が優れているものの、前者程ではないことが分かる。実施例19に係る塗り壁材P8、実施例20に係る塗り壁材P9は、貝殻焼成カルシウム含有量がそれぞれ0%、1%であり、他の実施例に比べて少ないことによると考えられる。
(試験体)
水100重量部に対して塗り壁材25重量部を混練した混練物から4.5cm×4.5cm、厚さ1.5〜1.9mmの板状の乾燥した試験体を作成して、実施例23(塗り壁材:P1)、実施例24(塗り壁材:T1)とした。
(試験方法)
10ppmのアンモニアが入った容器(5リットル)に、各試験体を入れ、経過時間とその時のアンモニア濃度を測定した。また、空試験として、試験体を入れないものについても同一の試験を行い経過時間とその時のアンモニア濃度を測定した。ここで、容器へのアンモニア採取には、製品名:気体採取器(株式会社ガステック製)、測定は、製品名:気体検知管(3Lアンモニア)(株式会社ガステック製)を使用した。
(試験結果)
図1に示すように、実施例23、24のいずれも最初の5分間でアンモニア濃度が40〜50%減少していることが分かる。すなわち、消臭について即効性があると判断できる。
(試験体)
水100重量部に対して塗り壁材25重量部を混練した混練物から7.45cm×7.45cm、厚さ1.5〜1.9mmの板状の乾燥した試験体を作成して、実施例25(塗り壁材:P4)、実施例26(塗り壁材:T4)とした。なお、本試験は、部屋の広さを8畳と想定し、壁の面積と空間の容積の関係比率を、試験を行う空間、試験体の面積と同じになるように設定して行った。アンモニア濃度10ppmというのは、環境省によると「6段階臭気強度表示法」において、「強いにおい」として定義されており、一般的には公衆トイレのアンモニア濃度が4ppmである。
(試験方法)
10ppmのアンモニアが入った容器(5リットル)に、各試験体を入れ、経過時間とその時のアンモニア濃度を測定した。また、空試験として、試験体を入れないものについても同一の試験を行い、経過時間とその時のアンモニア濃度を測定した。ここで、容器へのアンモニア採取、測定には、上記(3)機器による試験−1と同一の機器を使用した。
(試験結果)
図2に示すように、実施例25、26のいずれも最初の5分間でアンモニア濃度が40〜60%減少していることが分かる。すなわち、消臭について即効性があると判断できる。
(1)模型箱による試験−1
(試験体)
上記(2)模型箱による試験と同一の試験体の箱をそれぞれ用意して実施例27(塗り壁材:P1)、比較例7(クロス)とした。
(試験方法)
湿度の高い雨の日に、同じ気温(25.6℃)、同じ湿度(56%)の状態で蓋をした(アクリルボックスを被せた。)。そして、2時間放置した。
(試験結果)
その結果、実施例27では、気温26.5℃、湿度46%であったが、比較例7では、気温26.9℃、湿度51%であり、気温に大きな差は生じなかったが、湿度の差より、実施例27の調湿効果を実証した。
(試験体)
模型箱による試験−1と同一の試験体の箱をそれぞれ用意して実施例28(塗り壁材:T1)、比較例8(クロス)とした。
(試験方法)
試験体の箱の中に、98℃の湯の入った紙コップ(100cc)を入れて、蓋をした(アクリルボックスを被せた。)。そして、20分間放置、観察した。
(試験結果)
比較例8(クロス)の方はどんどん湿度が上昇し、98%までになった。それに対して実施例28(塗り壁材:T1)ほうは、ゆっくり上昇し72%になった。
結露の様子を見ても、実施例28が調湿効果に格段と優れていることが分かった。
(試験体)
模型箱による試験−1と同一の試験体の箱をそれぞれ用意して実施例29(塗り壁材:P4)、比較例9(クロス)とした。
(試験方法)
試験体の箱の中に、70℃の湯の入った紙コップ(100cc)を入れて、蓋をした(アクリルボックスを被せた。)。そして、20分間、湿度と温度を30秒ごとに測定した。
(試験結果)
図3及び図4にそれぞれ、湿度、温度変化を示す。湿度、温度ともに実施例29も比較例9も増加をしているが、湿度に関しては測定開始直後からの数値の上がり具合に差が出た。20分後、両方の湿度が落ち着くまでの間、平均して10%以上の湿度の差がある。
湿度が高い比較例9の方は、その分模型箱内の温度も高い。この結果からは、比較例9より実施例29の方が、模型箱に存在する余分な水分を吸収し、より低い温度を保つ効果があるといえる。
(a)調湿試験
(試験体)
塗り壁材P4、P14、T4、T5それぞれ25重量部を水100重量部と混練した混練物から10cm×10cm×2mmの板状の乾燥した試験体を作成して、実施例30〜33とした。また、同一形状、同一の大きさのスギの柾目板を用意して比較例10とした。それぞれについて、透湿率を測定した。
「透湿率」とは、単位面積、時間、水蒸気圧力勾配の際に通過する水蒸気重量である。透湿率が高いほど、水蒸気が透過しやすい。
(試験方法)
透湿率の測定はJIS Z 1324「建築材料の透湿性測定方法」を参考にし、カップ法で行った。
アクリル樹脂からなる六面体の箱状の容器(一面を試験体とし、他の五面同士は密閉)にして形成したカップを恒温恒湿室(espec、TBE−10)内に静置して測定した。カップ内部は、飽和塩溶液で相対湿度58%とし、恒温恒湿室内は、湿度70%、温度25℃とし、相対湿度は12%程度に設定した。室内温湿度は温湿度計測器(T&D社製、TR−72wi)で計測した。
そして、カップ全体の重量の時間変化を測定した。重量計測は精密電子天秤(A&D社、FZ−500i)を用いた。
透湿率は、定常湿流時の水蒸気時間重量変化を試験体面積で除して、透湿抵抗を算出したのち、材料の厚みを透湿抵抗で除して求めた。
(試験結果)
表6に示すように、実施例30〜33のいずれも透湿率0.00018g/mhPaであり、これらに顕著な差はなかった。比較例10としてのスギ柾目板は0.00001g/mhPaであり、実施例の水蒸気の通過量は比較例に比べて、約18倍であった。
ここで、参考例として挙げた静止空気とは、密閉容器内のような止まった状態の空気である。静止空気の透湿率は0.0007g/mhPaである。実施例30〜33の場合、静止空気の通過水蒸気量の約1/3程度であり、非常に水蒸気を通過しやすいことが実証された。
「湿気容量」とは、材料1kgの相対湿度を1%変化させるのに必要な水蒸気量である。湿気容量が大きいほど、材料中に水蒸気を含むことができるため、結露防止の効果に優れることになる。
(試験体)
塗り壁材P14(パウダー)、T5(チップ)からなる試験体をそれぞれ実施例34、35とし、比較例11としてスギ柾目板を試験体とした。
(試験方法)
各試験体は、105℃で100時間養生して絶乾状態とした。この絶乾状態の試験体を、6種類の相対湿度環境のデシケーターに移した。試験は、恒温恒湿室で行い、25℃一定とした。試験体の重量の時間変動がなくなるまで、養生した。養生期間は2週間である。
養生後と絶乾時の試験体重量を差し引き、吸収水分重量を求めた。
吸収水分重量を試験体絶乾重量で除し、重量基準の平衡含水率を算出した。相対湿度を
説明変数、平衡含水率を目的変数に配し、補間した。曲線を相対湿度で微分し、湿気容量の相対湿度曲線を算出した。
(試験結果)
図5に示すように、湿度70%までは、実施例34(P14)、実施例35(T5)の湿気容量は同等程度であった。高湿度域になると、実施例34の方が湿気容量が大きくなった。
図6に示すように、実施例34(P14)の湿気容量は、比較例11(スギ柾目板)と比較し、低〜中湿域が安定していること、また高湿域で湿気容量が高いことが分かった。特に、90%以上の湿度域では、スギ柾目板の約2倍の湿気容量であった。
表7は、塗り壁材に含まれる貝殻焼成カルシウムと、塗り壁材の施工性との関係を調査したものである。実施例36〜39は、塗り壁材T1の配合を基本としつつ貝殻焼成カルシウムの配合量を1〜5重量部へと変化させたものである。
ここで、施工性については、「◎・・施工性がよく、壁面に対し優れた付着強度が得られる。○・・施工性に問題がなく、壁面に対し略十分な付着強度が得られる。△・・施工性に特に問題はないが、壁面に対する付着強度がやや劣る」を表わしている。
消臭試験の結果から、貝殻焼成カルシウムの配合量が多くなると消臭効果が高まることは、前述の試験結果の通りである。
しかしながら、施工性については、3重量部をピークとして、配合量の増加と共に施工性の低下がみられる。
消臭効果と併せて考えると、塗り壁材全体を100重量部とした場合、貝殻焼成カルシウムの含有量は1〜4重量部が好ましく、2〜3重量部であることが更に好ましいといえる。
これらの試験及び効果について、以下に示す。
「熱伝導率」は、熱移動の起こりやすさを表す係数で、単位長さ(厚み)あたり1℃の温度差がある時、単位時間に単位面積を移動する熱量(W)を意味する。
熱伝導率の値が大きいほど移動する熱量が大きく、熱が伝わりやすいことになる。物質内に温度差がある場合、温度の高い部分から低い部分へ熱移動が起こる。
(試験体)
塗り壁材P14、T5について、20cm×20cm、厚さ12.5mmの石膏ボード(下地材)上に下塗り層を1.5〜2.5mmの厚さで塗工形成し、更にその上に塗り壁層を2.2〜4.8mmの厚さで塗工形成したものを試験体とした。
実施例40、実施例41における下塗り材は、いずれも前記の「U−トップ」である。
(試験方法)
JISA1412−2:1999により熱伝導率を測定した。測定には熱伝導率測定装置HC−174/200(英弘精機株式会社製)を使用した。測定条件は熱流上向き、平均温度13℃、温度差20℃とした。試験体の設置方法は石膏を下側とした。以上の試験を、各試験体について、5回ずつ行った。
(試験結果)
表8に示すように、漆喰や土壁などの他の壁材と比較をしてみると、本試験体は熱を伝えにくい素材であることが分かる。
つまり、寒暖の外的影響を受けにくく、夏は涼しく冬は暖かいという室内環境を保つ効果があるといえる。また、杉の羽目板(0.31W/mk)と比較をしても、断熱効果が高いといえる。
図7に示すように、連結ケージ法を用い、アカイエカを実験装置1に入れて各壁材によるカ(蚊)の忌避効果について試験した。
(試験方法)
(1)実験装置1は、約30cm立方のアクリル製ケージ10、20及び網ネット30で作成した筒30(径11cm、長さ30cm)を用いて、図5に示すようにケージ10とケージ20を連結する。
(2)ケージ10の金網袋50の中に吸血源であるマウス(不図示)を固定し、天井に吊り下げる。
(3)ケージ10については、アクリル板12の内面のうちの筒30の接続面を除く側面3面に、厚さ1.5〜1.9mmの塗り壁材の施工面11a、11b、11cを形成した(実施例40〜43)。また、比較例として、側面3面にクロスを貼付した。
同様に、ケージ20については、アクリル板22の内面のうちの筒30の接続面を除く側面3面に、クロス21a、21b、21cを貼付した。
(4)上記装置を配置30分後、ケージ20のシャーレ60に砂糖水を入れ、更にケージ20に供試虫25頭を入れた。
(5)供試虫を入れてから約24時間後に、ケージ10、20それぞれの中にいる供試虫の吸血数及び滞留数を測定した。
(6)忌避率は、以下の計算式で求めた。
忌避率=(供試頭数−吸血数)/供試頭数×100
(7)上記試験を、ケージ10について、1回目として、クロス(比較例)、塗り壁材T5(ヒノキチップ)、P14(ヒノキパウダー)、2回目として、ヒノキとの比較をするため、クロス(比較例)、塗り壁材T5−2(ヒバチップ)、T5−3(クスノキチップ)のそれぞれについて行った。
(試験結果)
(1回目)
クロス(比較例16)では、吸血数20匹、ヒノキチップ(実施例42)では、吸血数4匹、忌避率84%、ヒノキパウダー(実施例43)では、吸血数3匹、忌避率88%(市販の虫除けスプレーの原液と同等レベル)であった。
以上の結果からクロスとヒノキ(チップ・パウダー)を比較してみると、ヒノキにはクロスに比べると4倍以上の忌避率があり、非常に強い防虫効果があることが分かる。
また、クロスとヒノキを施工した空間の蚊の滞留数を比較してみると、ヒノキ(チップ・パウダー)が施工してある空間では、蚊の滞留を避ける効果があることが分かった。
(2回目)
クロス(比較例17)では、吸血数21匹、ヒバチップ(実施例44)では、吸血数6匹、忌避率76%、クスノキチップ(実施例45)では、吸血数16匹、忌避率36%(市販の虫除けスプレーの原液と同等レベル)であった。
以上の結果から、ヒバチップの忌避率は76%とクスノキチップより高い忌避率であった。また、ヒノキチップ・ヒノキパウダー(実施例42、43)と比較すると、ヒノキの方が高い忌避率を実証していることから、ヒノキには他の樹種と比較してみても蚊を寄せ付けにくい優れた防虫効果があることが分かった。
(1)ホルムアルデヒドを除く揮発性有機化合物の放散量についての試験
(試験方法)
JIS A1901による建築材料の揮発性有機化合物(VOC)、ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散測定方法(小形チャンバー法)により試験を行った。
15cm×15cmのガラス板2枚に、塗り壁材P14(ヒノキパウダー)を厚さ1.5〜1.9mmとなるように塗布した。塗布後2日間養生してから試験を開始した。
試験条件は、表10に示す通りである。
実施例53として、ホルムアルデヒドについては、以下の試験方法により行った。
(試験方法)
JIS A1460ホルムアルデヒド放射量の試験方法に基づきデシケーター法で行った。
塗り壁材P14からなる15cm×5cm×2mmの試験体12枚を1組として、2組を試験に供した。
試験体は、室温20℃、湿度65%の下で恒量になるまで養生した後、ガラスデシケータに試験体を移し、20℃の下で24時間静置した。試験体から放散するホルムアルデヒドはデシケーター底部に設置した蒸留水に吸収され、この溶液のホルムアルデヒド濃度をアセチルアセトン吸光光度法により測定し、これを放散量として求め、2組の放散量の平均値を算出した。
(試験結果)
放散されたホルムアルデヒド濃度は、0.0mg/Lであった。
JIS A5905繊維板等に規定される性能表示区分によると、F☆☆☆☆等級で平均値0.3mg/L、最大値0.4mg/L、F☆☆☆等級で平均値0.5mg/L、最大値0.7mg/Lとなっており、本試験体は、これらの等級以上の性能であることが分かった。
すなわち、塗り壁材P14については、ホルムアルデヒドの放散量について問題ないことが判明した。
Claims (10)
- 塗り壁材全体を100重量部とした場合に、木粉を50〜54重量部、難燃剤を15〜26重量部、及び粘度調整剤を20〜32重量部含有し、
前記木粉は、ヒノキ、スギ、ヒバ、又はクスであり、
前記難燃剤は、シラス、ゼオライト、珪砂、貝殻焼成カルシウムのうち少なくとも一種以上含有することを特徴とする塗り壁材。 - 難燃性に優れた塗り壁材であって、前記難燃剤を18〜24重量部含有する請求項1に記載の塗り壁材。
- 10cm×10cm、厚さ12.5mmの石膏ボード上に、焼石膏84重量%以上、バーミキュライト5重量%以下、炭酸カルシウム10重量%以下、粉末合成樹脂1重量%以下の組成の下塗り層を1mmの厚さで塗工形成し、更に前記下塗り層の上に前記塗り壁材からなる塗り壁層を1.5〜1.9mm塗工形成した試験体について、ISO5660−1に準拠した発熱試験において、発熱速度200kw/m 2 以上の継続時間が0秒、20分間発熱量が、3.5〜5.6MJ/m 2 である請求項2に記載の塗り壁材。
- 消臭性に優れた塗り壁材であって、前記木粉はヒノキであり、前記貝殻焼成カルシウムを2〜4重量部含有する請求項1に記載の塗り壁材。
- 調湿性に優れた塗り壁材であって、前記木粉はヒノキであり、前記難燃剤を15〜24重量部含有する請求項1に記載の塗り壁材。
- 施工性に優れた塗り壁材であって、前記ヒノキの木粉を53重量部、前記貝殻焼成カルシウムを1〜4重量部含有する請求項1に記載の塗り壁材。
- 断熱性に優れた塗り壁材であって、前記ヒノキの木粉を54重量部、前記難燃剤を18〜21重量部含有する請求項1に記載の塗り壁材。
- 害虫忌避性に優れた塗り壁材であって、前記ヒノキ又は前記ヒバからなる木粉を54重量部、難燃剤を18〜21重量部含有する請求項1に記載の塗り壁材。
- 水100重量部に対して、請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載の塗り壁材15〜25重量部を配合混練して塗り壁材混練物を得る工程と、
下地材上に下塗り材を塗工し乾燥させて、1.0〜3.0mmの厚さの下塗り層を形成する工程と、
前記下塗り層上に前記塗り壁材混練物を塗工し乾燥させて、2mm未満の厚さの塗り壁層を形成する工程と、を備える塗り壁材の施工方法。 - 下地材と、
該下地材上に形成された1.0〜3.0mmの厚さの下塗り層と、
該下塗り層上に形成された請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の塗り壁材を塗工し乾燥させて得られた2mm未満の厚さの塗り壁層と、からなる塗り壁構造。
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