JP3987634B2 - 建築用材料、建築用板、及び建物の絶縁構造体 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の壁などの用途に用いられる建築用材料、建築用板、及び建物の絶縁構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、外壁、間仕切り壁、天井など建物の絶縁構造体を形成する建材として、無機質の水硬性物質をバインダーとして用いた石膏板や木質セメント板などの無機質板や、有機質材料を用いた合板、LVL、パーティクルボード、中比重ファイバーボードなどの有機質板が使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前者のものは、通気性が殆どなく高気密性であり、しかも吸湿性が高く板の表面にとどまり易いため、結露し易くダニの発生やカビの発生が顕著であるという問題があった。また不燃材料であるために一応の耐火性能を有してはいるが、火炎に曝されると水硬性物質に結晶水として含まれる水分が遊離し、その蒸気により爆裂したり強度が急激に低下したりするという問題があった。
【0004】
一方、後者は、接着剤やバインダーに有機化学物質を用いているために、化学物質利用建材といわれている。そしてこのものでは多少の通気性があるために結露は生じ難いものの、有機化学物質が遊離した状態で残存しており、例えばホルムアルデヒドや有機溶剤(VOC:Volatile Organic Compound)などが大気中に放出されて健康を阻害するおそれがあり、化学物質過敏症やシックハウス症候群に対する対策が必要である。そこで、接着剤に含まれている遊離モノマーなどの低減、製板条件の見直し、製板後養生してモノマーを低減してからの出荷、有機化学物質を吸着する物質の混合などの対策がなされているが、有機化学物質が使用されている以上、多少の効果は認められるものの、長期間の使用に対する効果は望めないものであった。また有機質材料であるため、火炎に曝されると燃焼し、煙や危険なガスを発生し、火災時の非難時間が得られ難くなるという問題もあった。
【0005】
このように、従来の建築用板は、通気性が乏しくダニやカビの発生の問題があったり、有機化学物質が放出されて健康を阻害する問題があったり、火災時の有毒ガスの発生や火炎による爆裂などの問題があったりするものであった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、通気性を高く得ることができ、有機化学物質の放出がなく、火災時の有毒ガスの発生や爆裂がないと共に、断熱性にも優れた建築用材料、建築用板、建物の絶縁構造体を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る建築用材料は、ビール炭、木炭から選ばれる炭素成分と、吸着性能を有する無機成分とから成り、無機成分が水と混合して乾燥することによって固化するケイソウ土であると共に、バインダーを含有しないことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る建築用板は、上記の建築用材料が、板状に成形されて成ることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項3に係る建物の絶縁構造体は、上記の建築用材料が、建物に張られた網状体の表面に塗布されて成ることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
本発明において炭素成分としては、炭素の粉粒を用いることができるものであり、木材の他、コーリャン、麦、サトウキビ、イネ、ワラ、竹といった禾木科植物の種子の外皮、幹、枝、葉等、あるいは豆腐製造時の絞り粕、ビールや酒、焼酎等の製造時の絞り粕などの有機物を、加熱分解や焼成することによって得たものを使用することができる。この加熱分解や焼成の温度は、300〜1200℃の範囲が好ましく、この範囲内であれば熱分解時に生成する空隙が多いために、比表面積が大きく吸着性能の高い炭素粉粒を得ることができる。加熱分解や焼成の温度が300℃未満であると炭化が不充分であり、また1200℃を超える温度で加熱分解や焼成を行なうと、炭素粉粒の耐火性は向上するものの、炭素粉粒の収縮によって比表面積の低下を招いて吸着性能が低下し、炭素粉粒で所定の吸着性能を発揮させるためには大量の配合が必要になって好ましくない。
【0014】
ここで、禾木科植物の種子の外皮(すなわちモミガラ)、特にビールを製造する際に廃棄されるビール粕(大麦や小麦の種子の外皮が多く含まれる)は、ケイ素やカルシウムなどの無機質が多く含まれており、これを焼成すると炭素粉粒と無機質との混合物のビール炭となり、保温性の高い炭素粉粒となるものである。またその形状は直径に対して長さ方向が長い細長い形態であり、この炭素粉粒を用いて建築用板などを成形する際に補強材としての役目が効果的に発現されるものである。
【0015】
また本発明において吸着性能を有する無機成分としては、多孔質であって各種の気体や蒸気等を吸着する性能を有するケイソウ土を用いることができる。これは水と混合して乾燥すると、バインダーなしでも固形の固まりに成形することができるものである。そしてケイソウ土は管状になっているため、通気性が高く、しかも水と混合して乾燥することによって強固に結合した固形の固まりに容易に成形することができるものである。
【0016】
そして、上記の炭化成分と無機成分を混合することによって、本発明に係る建築用材料を得ることができるものであり、この建築用材料に水を加えて混合・混練し、乾燥して固化させることによって、本発明に係る建築用板を得ることができるものである。乾燥固化するときの無機成分の結合力によって、バインダーとして有機成分を配合する必要なく、成形して建築用板を得ることができるものである。ここで、建築用材料中の炭化成分と無機成分との配合比率は、必要に応じて任意に設定することができるが、無機成分による結合力を十分に得るために、無機成分が建築用材料の全量中に、20重量%以上、より好ましくは40〜70重量%になるように配合するようにするのがよい。炭素成分の配合量は建築用材料の全量中、20〜80重量%の範囲が好ましい。また、このように建築用材料に水を加える際に、添加水量を減らすための減水剤、あるいは耐水性を向上させるための撥水剤等を添加するようにしてもよい。
【0017】
建築用板を成形する方法としては、各種の方法が考えられるが、第一の方法としては、炭素成分と無機成分からなる建築用材料を水と混合し、これを型に流し込んで乾燥・固化させて、図1のように板状に建築用板1を成形する方法がある。このとき、型内の上下の少なくとも一方、あるいは型内の中央部に、紙、織布、不織布、樹脂シート、ラスボード、ネットなどの積層材2を配した状態で、型に炭素成分と無機成分と水の混合物を流し込むことによって、図2(a),(b),(c)に示すように、板状に成形される建築用板1の一方の表面、あるいは両表面、あるいは層内に積層材2を積層することができ、積層材2によって建築用板1の強度を高めたり、建築用板1の表面を化粧したりすることができるものである。この積層材2は固化成形した建築用板1の表面に貼って一体化するようにしてもよい。
【0018】
第二の方法は、建物の建築現場で施工する方法である。例えば木造住宅の場合、間柱3と胴縁4の間に竹やよしを格子状に組んだり、ラスボードや補強ネットを張ったりして、図3(a)のように網状体5を間柱3と胴縁4の間に下地材として取り付け、そして網状体5の表面に上記の建築用材料と水との混合物を、土壁を塗るようにコテなどで塗布して乾燥・固化させることによって、図3(b)のように建築用材料の固化層6で家屋の外壁を形成させるようにすることができる。勿論、このように家屋の外壁を形成する他に、間仕切り壁や、天井、床などを形成することができるものであり、外壁、間仕切り壁、天井、床など、家屋の絶縁構造体を形成することができるものである。このように網状体5の表面に建築用材料と水との混合物を塗布して乾燥・固化させて固化層6を形成するにあたって、建築用材料の一部は網状体5の裏側にまわって、固化層6内に網状体5が埋入されることになり、網状体5のアンカー効果によって固化層6が脱落することを防ぐことができると共に、網状体5がヌサの役目をして固化層6を補強することができるものである。またこの固化層6の表面に化粧層を設けるようにしてもよい。
【0019】
上記のようにして得られる、建築用板1や、家屋の絶縁構造体を構成する固化層6は、炭素成分と吸着性能を有する無機成分とから形成されているものであり、バインダーなどとして有機化学物質を含有しないものである。従って、有機化学物質の放出による健康阻害の問題がなくなるものであり、またこのように有機物を含有しないので、火炎に曝されても燃焼せず、煙や危険なガスを発生することもなくなるものである。さらに、水硬性物質をバインダーとして用いる必要がなくなるので、水硬性物質を含有する場合のような、火炎に曝されることによる爆裂の発生や強度の急激な低下を防ぐことができるものである。一方、上記のように建築用板1や固化層6には炭素成分や無機成分を含有するために、耐火炎性を高く得ることができるものであり、また吸着性能を有する無機成分や炭素成分を含有するために、これらによる吸湿で結露の発生を防止してダニの発生やカビの発生を抑制することができると共に、室内の悪臭ガスや有毒性のガス、例えば成形品や塗料から室内に発生するホルムアルデヒドを吸着性能を有する無機成分や炭素成分で吸着して除去することができるものである。さらにこの吸着性能を有する無機成分や炭素成分は多孔質体であって、建築用板1や固化層6の通気性を高く得ることができ、湿気の吸放湿を効果的に行なって、室内の湿度を一定に保つようにすることができると共に、多孔質体の無機成分や炭素成分によって保温性能を高く得ることができるものである。
【0020】
【実施例】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0021】
(実施例1)
粒径1mm以下に篩分けしたビール粕を耐熱箱に入れ、これをコークスで被覆して毎分4℃の昇温速度で1000℃まで昇温すると共に1000℃で3時間保持した後、降温させる条件で焼成することによって、ビール炭を調製した。次に、このビール炭400gにケイソウ土600g及び水300gを加え、良く混合することによって建築用材料を調製した。
【0022】
そしてこの建築用材料を30cm四方の成形用凹部を有する木型に流し込み、コテで表面を平らに仕上げた。次にこれを一日放置して乾燥・固化させた後、木型から取り出して厚み10mmの板状の建築用板を得た。
【0023】
(実施例2)
粒径1mm以下に篩分けした杉の木粉を実施例1と同様にして焼成することによって、木炭を調製した。次に、実施例1で得たビール炭200gに、この木炭200g、ケイソウ土600g及び水300gを加え、良く混合することによって建築用材料を調製した。そしてこの建築用材料を用いて、実施例1と同様にして、厚み10mmの板状の建築用板を得た。
【0024】
(実施例3)
実施例2で得た木炭400gにケイソウ土600g及び水300gを加え、良く混合することによって建築用材料を調製した。そしてこの建築用材料を用いて、実施例1と同様にして、厚み10mmの板状の建築用板を得た。
【0025】
(比較例1)
密度0.8g/cm3、厚み10mmのパーティクルボードを建築用板とした。
【0026】
(比較例2)
密度0.90g/cm3、厚み10mmのケイ酸カルシウムボードを建築用板とした。
【0027】
(吸着試験)
実施例1〜3及び比較例1,2の建築用板の一部を100μm以下の粒径に粉砕し、これを105℃の乾燥器中で1時間乾燥させ、試験用試料を作製した。そして内径10mmのガラス管にこの試料を0.5g充填し、両端を脱脂綿で軽く封じた。そこに窒素ガスで98.6ppm濃度にバランスさせたアセトアルデヒドを流量100ml/分で通過させ、5分後及び15分後にガラス管の出口側に(株)ガステック製アセトアルデヒド検知管をセットし、吸引時間1.5分で未吸着のアセトアルデヒドを測定した。また比較のために、ビール炭、木炭、ケイソウ土についても同様にして、未吸着のアセトアルデヒドを測定した。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
表1にみられるように、各比較例にはアセトアルデヒドの吸着性能はみられないが、各実施例のものは、アセトアルデヒドを吸着する性能が高いものであった。
【0029】
(通気度試験)
実施例1〜3及び比較例1,2の建築用板から直径50mm、厚み5mmの試験片を切り出し、これを(株)ハツネン社製のハツネン式通気度試験機にかけ、通気度を測定した。結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
表2において通気度の数値が大きいほど通気性は良好であり、各実施例のものは通気性が良好であることが確認される。
【0031】
(保温性試験)
実施例1〜3及び比較例1,2の建築用板の一部を100μm以下の粒径に粉砕し、これを105℃の乾燥器中で1時間乾燥させ、試験用試料を作製した。そして試料3gをアルミニウムのセルに入れ、250℃まで均一に加熱し、このセルをシャーレに乗せて熱電対温度計を用いて、所定経過時間毎に温度を測定した。結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
(吸放湿性試験)
実施例1〜3及び比較例1,2の建築用板の一部を100μm以下の粒径に粉砕し、これを105℃の乾燥器中で1時間乾燥させ、試験用試料を作製した。この試料を5g精秤し、相対湿度92%に調整したデシケータ中に置き、所定日数毎に試料の重量を計量し、吸湿率を測定した。また、試料を相対湿度45%に調整したデシケータ中に入れ、所定日数毎に試料の重量を計量し、放湿率を測定した。また比較のために、ビール炭、木炭、ケイソウ土についても同様にして、吸湿率及び放湿率を測定した。結果を表4に示す。
【0033】
【表4】
表4にみられるように、各実施例のものは吸湿率や放湿率が高く、吸放湿性が良好であることが確認される。
【0034】
(耐火試験)
実施例1〜3及び比較例1,2の建築用板から250mm×250mmの試験片を切り出し、この試験片を日本工業規格「建築構造部分の耐火試験方法」JIS A 1304に準拠した試験炉に取り付け、JIS A 1304に規定された標準加熱曲線に準拠して試験片の表面を一様に加熱した。そして試験片が着火した時間を測定し、また熱電対を用いて裏面の温度を計測して裏面温度が260℃に到達するまでの時間を測定し、さらにこの試験を60分間行なって、試験片が燃え抜けるまでの時間を測定した。また試験後の亀裂の有無を目視により観察した。結果を表5に示す。
【0035】
【表5】
表5に示すように、各実施例のものは、着火せず、260℃到達時間が長く、60分では燃え抜けず、亀裂の発生もみられないものであり、耐火性が高いことが確認される。
【0036】
【発明の効果】
上記のように本発明に係る建築用材料は、ビール炭、木炭から選ばれる炭素成分と、吸着性能を有し且つ水と混合して乾燥することによって固化するケイソウ土から成り、バインダーを含有しないので、ケイソウ土による結合作用で成形を行なうことができ、バインダーなどとして有機化学物を含有する必要がなくなって、有機化学物質の放出による健康阻害の問題がなくなると共に火炎に曝されても燃焼せず、煙や危険なガスを発生することもなくなるものである。さらに水硬性物質をバインダーとして用いる必要がなくなって、火炎に曝されることによる爆裂の発生や強度の急激な低下を防ぐことができるものである。また、炭素成分やケイソウ土によって耐火炎性を高く得ることができるものであり、ケイソウ土や炭素成分による吸湿で結露の発生を防止してダニの発生やカビの発生を抑制することができると共に、室内の悪臭ガスや有毒性のガスを炭素成分やケイソウ土で吸着して除去することができるものである。さらにケイソウ土や炭素成分は多孔質体であって、通気性を高く得ることができ、湿気の吸放湿を効果的に行なって、室内の湿度を一定に保つようにすることができると共に、多孔質体の無機成分や炭素成分によって保温性能を高く得ることができるものである。また、ケイソウ土は管状になっていて通気性を向上する効果を高く得ることができると共に、しかもケイソウ土は水と混合して乾燥することによって強固に結合するものであって、強度高く成形を行なうことができるものである。
【0039】
また、本発明に係る建築用板は、上記の建築用材料が、板状に成形されて成るものであり、壁板や天井板などとしてそのまま施工に用いることができるものである。
【0040】
また本発明に係る建物の絶縁構造体は、上記の建築用材料が、建物に張られた網状体の表面に塗布されて成るものであり、壁や天井などを上記の請求項1のような特性を有する絶縁構造に形成することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の建築用板の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の建築用板の他の実施の形態を示すものであり、(a),(b),(c)はそれぞれ斜視図である。
【図3】本発明の建物の絶縁構造体を示すものであり、(a)は施工前の正面図、(b)は施工後の断面図である。
【符号の説明】
1 建築用板
Claims (3)
- ビール炭、木炭から選ばれる炭素成分と、吸着性能を有し且つ水と混合して乾燥することによって固化するケイソウ土から成り、バインダーを含有しないことを特徴とする建築用材料。
- 請求項1の建築用材料が、板状に成形されて成ることを特徴とする建築用板。
- 請求項1の建築用材料が、建物に張られた網状体の表面に塗布されて成ることを特徴とする建物の絶縁構造体。
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