JP2005186618A - 積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた調湿性能と、有害ガスの吸着・分解性能を有し、さらには有害ガスの再放出を抑制することができる内装仕上材用積層体を提供する。
【解決手段】吸放湿量が50g/m以上の吸放湿層の上に、水蒸気透過度が100g/m・24h以上であり、化学物質吸着剤及び光触媒物質を有する透湿層を積層する。透湿層としては、結合剤100重量部に対し、平均粒子径0.01〜5mmの骨材を100〜4000重量部、化学物質吸着剤を0.1〜100重量部、及び光触媒物質を0.1〜50重量部含むものが好適である。また、吸放湿層としては、結合剤100重量部に対し、吸放湿性粉粒体を20〜2000重量部含むものが好適である。
【選択図】なし

Description

本発明は、建築物における内装仕上材として好適な積層体に関するものである。
近年、快適な居住空間に対する関心が高まっている。これに関し、壁、天井等の内装面の表面仕上げにおいては、結露防止やカビ発生防止、あるいは湿度の調整による不快感抑制、等の機能を有する調湿性仕上材への期待が高まっている。
例えば、特許文献1(特開2001−18312号公報)には、通気性を有する不織布と覆材との間に備長炭粒子を固定化した調湿シートが開示されている。また、特許文献2(特開2003−155786号公報)には、吸放湿性材料と水硬性物質とを含む吸放湿性基材の少なくとも一面に、吸放湿性材料粒粉が添加された塗料による塗膜層が形成されてなる吸放湿性建材が開示されている。
ところで、近年、室内環境においてはシックハウス問題等が社会的にクローズアップされている状況であり、各種有害ガスの拡散防止が求められている。このような有害ガスとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等が挙げられる。上述の特許文献では、木炭、珪藻土、シリカゲル、ゼオライト、アロフェン等の吸放湿性材料が使用されている。このような吸放湿性材料は、有害ガスの吸着性能をある程度有することも知られており、室内環境の改善に有効な成分として期待できる。
しかしながら、上述の特許文献に記載の内装仕上材では、吸放湿性材料の吸着性能が飽和状態に達すると、それ以上有害ガスを吸着することはできず、吸着効果に限界がある。また、一旦吸着された有害ガスが、再度室内空間へ放出されるおそれもある。このような有害ガスの再放出は、室内環境向上の妨げとなる。
特開2001−18312号公報 特開2003−155786号公報
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、優れた調湿性能と、有害ガスの吸着・分解性能を有し、さらには有害ガスの再放出を抑制することができる内装仕上材用積層体を得ることを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行なった結果、吸放湿層の上に特定の透湿層を積層することによって、透湿層が有害ガスのフィルターとして効果的に作用することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.吸放湿量が50g/m以上である吸放湿層の上に、水蒸気透過度が100g/m・24h以上であり、化学物質吸着剤及び光触媒物質を有する透湿層が積層されたことを特徴とする積層体。
2.吸放湿量が50g/m以上である吸放湿層の上に、水蒸気透過度が100g/m・24h以上であり、化学物質吸着剤及び光触媒物質を有する透湿層が積層されており、前記吸放湿層の表面及び側面が、前記透湿層によって覆われていることを特徴とする積層体。
3.透湿層が、結合剤100重量部に対し、平均粒子径0.01〜5mmの骨材を100〜4000重量部、化学物質吸着剤を0.1〜100重量部、及び光触媒物質を0.1〜50重量部含むものであることを特徴とする1.または2.に記載の積層体。
4.吸放湿層が、結合剤100重量部に対し、吸放湿性粉粒体を20〜2000重量部含むものであることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の積層体。
5.吸放湿層及び透湿層における結合剤として有機質樹脂を含み、透湿層における有機質樹脂のガラス転移温度が、吸放湿層における有機質樹脂のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする3.または4.に記載の積層体。
上記1.及び2.の積層体では、有毒ガスの大半は吸湿時に透湿層で吸着・分解される。仮に有毒ガスが透湿層を通過して吸放湿層に到達した場合であっても、これらは放湿時に透湿層で吸着・分解される。すなわち、透湿層は有害ガスのフィルターとして効果的に作用する。したがって、上記1.及び2.の発明によれば、優れた調湿性能と、有害ガスの吸着・分解性能を有し、さらには有害ガスの再放出を抑制することができる内装仕上材用積層体が得られる。
上記3.の発明では、結合剤、特定粒径の骨材、化学物質吸着剤、及び光触媒物質を特定比率で含む透湿層を採用することにより、有害ガスの吸着・分解効果、再放出抑制効果をいっそう高めることができる。
上記4.の発明では、結合剤、及び吸放湿性粉粒体を特定比率で含む吸放湿層を採用することにより、調湿性能を高めることができる。
上記5.の発明では、吸放湿層及び透湿層における結合剤として有機質樹脂を使用することで、優れた可撓性を付与することができる。さらに、切断等の加工が容易となり、施工現場の状況に応じて積層体を自由に加工することが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明積層体における吸放湿層は、50g/m以上、好ましくは70g/m以上、より好ましくは100g/m以上の吸放湿量を有するものである。このような吸放湿層を使用することによって、室内空間において十分な調湿効果を得ることができる。吸放湿量の上限は特に限定されないが、通常は500g/m以下(好ましくは300g/m以下)程度である。
なお、本発明における吸放湿量は、吸放湿層の裏側面をアルミニウム粘着テープでシールした後、JIS A6909:2003「建築用仕上塗材」7.32.2の手順によって測定される値である。
吸放湿層は、上記吸放湿性能を有する限り、その組成は特に制限されず、公知の吸放湿材料を使用することもできる。このような吸放湿性材料としては、例えば、木炭、珪藻土、シリカゲル、ゼオライト、アロフェン等の吸放湿性粉粒体をセメント、石膏、樹脂等で固定化したものが挙げられる。
本発明における吸放湿層としては、結合剤100重量部(固形分)に対し、吸放湿性粉粒体を20〜2000重量部含むものが好適である。このような吸放湿層を採用することにより、優れた調湿性能を得ることができる。
結合剤としては、有機質樹脂が好適である。有機質樹脂としては、例えば水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂、加熱溶融樹脂等の各種結合剤、あるいはこれらを複合化したもの等を使用することができる。このうち、本発明では水分散性樹脂(樹脂エマルション)が好適である。水分散性樹脂としては、その平均粒子径が50μmを超え(好ましくは80μm超、より好ましくは100μm超)、かつ500μm未満(好ましくは400μm未満、より好ましくは300μm未満)であるものが、調湿性能の点で好適である。なお、水分散性樹脂の平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値であり、具体的には、動的光散乱測定装置として、マイクロトラック粒度分析計(例えば、UPA150、日機装株式会社製)を用い、検出された散乱強度をヒストグラム解析法のMarquardt法により解析した値である(測定温度は25℃)。
結合剤として使用可能な有機質樹脂の種類としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等が挙げられ、特にアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等が好適である。
このような有機質樹脂は、塗膜形成後に架橋反応を生じる性質を有するものであってもよい。吸放湿層における有機質樹脂が架橋反応性を有することにより、吸放湿性、耐水性、耐薬品性等の諸物性を高めることができる。具体的に架橋反応としては、例えばカルボキシル基と金属イオン、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、等の組み合わせが挙げられる。
結合剤として有機質樹脂を使用する場合、そのガラス転移温度は、通常−50〜100℃、好ましくは−20〜80℃、より好ましくは−10〜50℃である。ガラス転移温度がこのような範囲内であれば、積層体に可撓性を付与することが可能となる。なお、本発明におけるガラス転移温度は、有機質樹脂を構成するモノマーの種類とその構成比率から、Foxの計算式によって求められる値である。
吸放湿性粉粒体としては、例えば、ベーマイト、シリカゲル、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、珪藻土、珪質頁岩、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ゾノライト、イモゴライト、大谷石粉、活性白土、木炭、竹炭、活性炭、木粉、貝殻粉、多孔質合成樹脂粒等が使用できる。吸放湿性粉粒体の平均粒子径は、通常0.001〜1mm、好ましくは0.01〜0.1mm、より好ましくは0.01〜0.09mmである。なお、吸放湿性粉粒体の平均粒子径は、遠心沈降式粒度分布測定装置によって測定される50%粒子径の値である。
このような吸放湿性粉粒体は、温度20℃・相対湿度90%における吸湿率が、通常10%以上、好ましくは20%以上の性能を有するものである。なお、温度20℃・相対湿度90%における吸湿率とは、試料を温度20℃・相対湿度45%の恒温恒湿器にて24時間乾燥した後、温度20℃・相対湿度90%の恒温恒湿器にて24時間吸湿させたときの重量変化より求められる値である。すなわち、
吸湿率(%)={(吸湿後の重量−乾燥後の重量)/乾燥後の重量}×100
吸放湿性粉粒体の構成比率は、結合剤100重量部(固形分)に対し、通常20〜2000重量部、好ましくは100〜1500重量部、より好ましくは200〜1000重量部とする。吸放湿性粉粒体の構成比率が小さすぎる場合は、十分な調湿性能を得ることが困難となる。また、防火性の点においても不利となる。吸放湿性粉粒体の構成比率が大きすぎる場合は、積層体の強度や可撓性が不十分となる。
さらに、吸放湿層においては骨材を含むこともできる。骨材の平均粒子径は、通常0.01〜5mm、好ましくは0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜1mmのものが好適である。このような骨材を使用することにより、調湿性能をいっそう高めることができる。また、吸放湿層の厚膜化を図ることもできる。なお、骨材の平均粒子径は、JIS Z8801−1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。
骨材の種類は特に限定されず、天然品、人工品のいずれも使用することができる。具体的には、例えば、重質炭酸カルシウム、寒水石、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、バライト粉、珪砂、砂利、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粒、あるいは岩石、ガラス、陶磁器、焼結体、コンクリート、モルタル、プラスチック、ゴム、貝殻等の破砕品等が挙げられる。これらに着色を施したものも使用することができる。
骨材の構成比率は、結合剤100重量部(固形分)に対し、通常50〜2500重量部、好ましくは100〜2000重量部、より好ましくは300〜1500重量部とする。骨材比率が小さすぎる場合は、調湿性能の向上効果が得られない。骨材比率が大きすぎる場合は、骨材が脱離しやすくなる。また、可撓性を付与することが困難となる。なお、本発明における骨材の温度20℃・相対湿度90%における吸湿率は、通常10%未満、好ましくは3%以下である。
吸放湿層には、上述の成分以外に、例えば、顔料、繊維、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、防虫剤、難燃剤、架橋剤、滑剤、造膜助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が含まれていてもよい。
本発明積層体における透湿層は、50g/m・24h以上、好ましくは70g/m・24h以上、より好ましくは100g/m・24h以上の水蒸気透過度を有するものである。さらに、本発明積層体における透湿層は、化学物質吸着剤及び光触媒物質を必須成分として有するものである。本発明では、上述の吸放湿層にこのような透湿層を積層することによって、優れた調湿性能と、有害ガスの吸着・分解性能を発揮することができ、さらには有害ガスの再放出を抑制することができる。
水蒸気透過度の上限は、通常2000g/m・24h以下、好ましくは1500g/m・24h以下、より好ましくは1000g/m・24h以下である。透湿層の水蒸気透過度がこのような範囲内であれば、有毒ガスの吸着・分解性、再放出防止性等の点において好適である。
なお、本発明における水蒸気透過度は、JIS K5400:1990「塗料一般試験方法」8.17によって測定される値である。
透湿層における化学物質吸着剤は、有害ガス(例えば、ホルムアルデヒド、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等)の吸着、再放出防止に有効な成分である。この化学物質吸着剤は、透湿層が有害ガスのフィルターとして効果的に作用するための必須成分である。化学物質吸着剤としては、例えばアミン化合物、尿素化合物、アミド化合物、イミド化合物、ヒドラジド化合物、アゾール化合物、アジン化合物、層状リン酸化合物、アルミノ珪酸塩等が挙げられる。この中でも、層状リン酸化合物、アルミノ珪酸塩から選ばれる1種以上が好適であり、特にアルミノ珪酸塩が好適である。このような化学物質吸着剤の平均粒子径は、通常0.5〜100μm(好ましくは1〜50μm)程度である。
層状リン酸化合物としては、層状リン酸ジルコニウム、層状リン酸亜鉛、層状リン酸チタン、層状リン酸アルミニウム、層状リン酸マグネシウム、層状リン酸セリウム等が挙げられ、これら層状リン酸化合物にアミン化合物がインターカレートされたもの好適である。アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、アニリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン等が挙げられる。
アルミノ珪酸塩としては、亜鉛、銅、銀、コバルト、ニッケル、鉄、チタン、バリウム、スズ及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属とアルミニウムと珪素の複合酸化物が挙げられる。
透湿層における光触媒物質は、有害ガスの分解、再放出防止に有効な成分である。さらに、透湿層に付着した汚染物質(タバコのヤニ等)を分解する性能も有する。光触媒物質としては、例えばTiO、ZnO、Bi、BiVO、SrTiO、CdS、InP、InPb、GaP、GaAs、BaTiO、BaTiO、BaTi、KNbO、Nb、Fe、Ta、Ta、KTaSi、WO、SnO、NiO、CuO、SiC、MoS、RuO、CeO等の他、これらと金属、金属酸化物、層状化合物等との複合体等が挙げられる。このような光触媒物質の平均粒子径は、通常0.001〜1μm(好ましくは0.01〜0.5μm)程度である。
なお、光触媒物質として、吸放湿性粉粒体に光触媒物質を担持したものは、吸湿によって光触媒作用が阻害されるおそれがあるため、使用しないほうがよい。
透湿層において、光触媒物質を使用せずに化学物質吸着剤のみを使用した場合は、有害ガスの吸着量に限界が生じ、吸着能を超える効果を期待することができない。
逆に、光触媒物質のみを使用した場合、有害ガスの分解効果を得るには、光触媒物質の構成比率を十分に増やして、有害ガスが光触媒物質に接触する確率を高めなければならない。しかし、光触媒物質を増量すると、結合剤の早期劣化を招いてしまう。また、透湿層の色彩が制限される、あるいはコスト高となる等の問題が生じる。すなわち、光触媒増量には実用上限界がある。
本発明では、化学物質吸着剤と光触媒物質を併用することによって、有害ガスの吸着・分解・再放出防止において実用的な性能を得ることができ、透湿層の有害ガスフィルター効果を十分に発揮させることができる。
本発明積層体における透湿層としては、結合剤、平均粒子径0.01〜5mmの骨材、化学物質吸着剤、及び光触媒物質を必須成分とするものが好適である。このような透湿層を採用することにより、有害ガスの吸着・分解効果、再放出抑制効果をいっそう高めることができる。
透湿層における結合剤としては、透明被膜が形成可能な有機質樹脂が好適である。有機質樹脂としては、吸放湿層と同様のものが使用できる。透湿層における有機質樹脂が架橋反応性を有する場合は、透湿性、耐水性、耐薬品性等の点で有利であり、光触媒物質に対する抵抗性を高めることもできる。
透湿層における有機質樹脂として水分散性樹脂を使用する場合、その平均粒子径は、通常50μmを超え(好ましくは80μm超、より好ましくは100μm超)、かつ500μm未満(好ましくは400μm未満、より好ましくは300μm未満)であることが望ましい。平均粒子径がこのような範囲内であれば、適度な透湿性能を得ることが可能となる。
透湿層における有機質樹脂のガラス転移温度は、通常−30〜120℃、好ましくは−10〜100℃、より好ましくは0〜80℃である。ガラス転移温度がこのような範囲内であれば、積層体に適度な可撓性を付与することができ、積層体表面の汚染物質付着防止の点でも好適である。
さらに、透湿層における有機質樹脂のガラス転移温度は、吸放湿層における有機質樹脂のガラス転移温度よりも高く(好ましくは5℃以上高く、より好ましくは10℃以上高く)設定することが望ましい。このようなガラス転移温度の設定により、切断等の加工が容易となり、施工現場の状況に応じて積層体を自由に加工することが可能となる。具体的には、吸放湿層における有機質樹脂のガラス転移温度が−20〜80℃、透湿層における有機質樹脂のガラス転移温度が−10〜100℃であり、かつ透湿層における有機質樹脂のガラス転移温度が、吸放湿層における有機質樹脂のガラス転移温度よりも5℃以上高くなるように設定することが望ましい。
透湿層における骨材としては、平均粒子径が0.01〜5mm、好ましくは0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜1mmのものを使用する。骨材の粒子径が小さすぎる場合は、透湿性能が低下し、下層の吸放湿性能を阻害することとなる。また、仕上り外観が単調な色彩となってしまう。さらに、透湿層内部の光触媒成分に光が届きにくくなり、有害ガス分解効果の点で不利となる。粒子径が大きすぎる場合は、表面凹凸が大きくなりすぎ、均一な厚みの層を得ることが困難となる。骨材の種類については、吸放湿層の骨材と同様のものが使用可能である。
透湿層における骨材の構成比率は、結合剤100重量部(固形分)に対し、通常100〜4000重量部、好ましくは300〜3000重量部、より好ましくは500〜2000重量部とする。骨材比率が小さすぎる場合は、有害ガスの吸着・分解効果が不十分となり、下層の吸放湿性能を阻害するおそれもある。また、透湿層の厚膜化が困難となり、意匠性付与の点で不利となる。骨材比率が大きすぎる場合は、骨材が脱離しやすくなる。
化学物質吸着剤の構成比率は、結合剤100重量部(固形分)に対し、通常0.1〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、より好ましくは5〜50重量部とする。化学物質吸着剤の構成比率が小さすぎる場合は、有害ガスの吸着効果、再放出防止効果が不十分となる。化学物質吸着剤の構成比率が大きすぎる場合は、表面意匠性や耐水性等に悪影響を与えるおそれがある。また、コスト面でも不利となる。
光触媒物質の構成比率は、結合剤100重量部(固形分)に対し、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部とする。光触媒物質の構成比率が小さすぎる場合は、有害ガスの分解効果、再放出防止効果が不十分となる。光触媒物質の構成比率が大きすぎる場合は、結合剤の早期劣化を招いてしまう。また、透湿層の色彩が制限されやすくなる。
透湿層には、上述の成分以外に、例えば、顔料、繊維、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、防虫剤、難燃剤、架橋剤、滑剤、造膜助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
本発明積層体は、上述の吸放湿層と透湿層が予め積層されたシート状成型体として好適に用いることができる。すなわち、吸放湿層と透湿層を有する2層構造のシート状成型体として用いることができる。本発明積層体の具体的な形態(断面図)を図1〜8に示す。
このうち、図1に示す積層体については、例えば以下の方法で製造することができる。
(i)透湿層形成用組成物を型枠に流し込んだ後、吸放湿層形成用組成物を積層し、硬化後に脱型する方法。
(ii)吸放湿層形成用組成物を型枠に流し込んだ後、透湿層形成用組成物を積層し、硬化後に脱型する方法。
(iii)透湿層形成用組成物を加熱ニーダーおよび圧延ロールで成形した層(シート)と、吸放湿層形成用組成物を加熱ニーダーおよび圧延ロールで成形した層(シート)を積層する方法。
なお、透湿層形成用組成物としては、結合剤、骨材、化学物質吸着剤、及び光触媒物質等を含むペースト状混合物が使用でき、吸放湿層形成用組成物としては、結合剤、及び吸放湿性粉粒体等を含むペースト状混合物が使用できる。このような透湿層形成用組成物、吸放湿層形成用組成物における結合剤として、水分散性樹脂を使用する場合は、当該水分散性樹脂中に含まれる水の作用によりペースト化が容易となる。
上記(i)、(ii)において使用する型枠としては、例えばシリコン樹脂、ウレタン樹脂製等の型枠、あるいは離型紙を設けた型枠等が使用できる。このうち(i)では型枠側が積層体表面となるため、型枠内側の形状を調整することで、積層体表面に所望の凹凸模様を付与することができる。一方、(ii)では型枠側が積層体の裏面となる。この裏面に凹凸が形成されるようにすれば積層体の接着性を高めることもできる。
上記(i)、(ii)では、流し込みに代えて、スプレー、こて、レシプロ、コーター等の手段を用いた方法を採用することもできる。また、透湿層形成用組成物や吸放湿層形成用組成物を硬化させる際には、加熱することもできる。
積層体の製造時には、本発明の効果を阻害しない限り、例えば、補強材(織布、不織布、セラミックペーパー、合成紙、ガラスクロス、メッシュ等)を積層することができ、その他、当業者の知識に基づき種々の変更を加えることもできる。
その一例を図2に示す。図2の積層体では、吸放湿層の内部に補強材が埋め込まれている。このように吸放湿層に補強材が埋め込まれることにより、積層体の強度等を高めることができる。この際、吸放湿性能等が損われないように、補強材としては十分な通気性を有するもの(ガラスクロス、メッシュ等の網状体)が好ましい。補強材の厚みは、吸放湿層の厚みよりも小さいことが望ましく、通常は1mm未満(好ましくは0.05mm以上0.5mm未満)程度である。
積層体の寸法は、各層を積層した後に適宜切断することで調整することができる。この場合、切断後の積層体の側面は塗料等で適宜処理することもできる。上記(i)については、作製した積層体を切断することなく、予め寸法を決定した型枠を用いて製造することも可能である。
図3〜7に示す積層体は、吸放湿層の表面及び側面が透湿層によって覆われたものである。このような形態の積層体では、本発明の効果をより確実に得ることができる。
このうち、図3に示す積層体については、例えば以下の方法で製造することができる。
(iii)透湿層形成用組成物を型枠に流し込んだ後、予め成形された吸放湿層を埋め込み、硬化後に脱型する方法。
(iv)透湿層形成用組成物を型枠の底面及び側面に塗り付けた後、吸放湿層形成用組成物を流し込み、硬化後に脱型する方法。
(v)上記(i)〜(iii)の方法で得られた積層体の側面を、透湿層形成用組成物で被覆する方法。
吸放湿層の表面及び側面が透湿層によって覆われた形態において、積層体の裏面(基材側)は、図3、図4に示すように吸放湿層が露出していてもよいし、図5に示すように透湿層で覆われていてもよい。また、石膏ボード、合板、スレート板、金属板等の板材で覆われていてもよい。但し、積層体の可撓性を確保するには、硬質タイプの板材の使用は避けたほうがよい。
吸放湿層の形状は通常板状であるが、本発明の効果が発揮可能であれば、その他の形状であってもよい。また、図6、図7に示すように、2つ以上の吸放湿層を設けることもできる。
吸放湿層、透湿層の厚みは特に限定されないが、通常、吸放湿層は0.5〜5mm程度(好ましくは1〜3mm程度)、透湿層は0.5〜5mm程度(好ましくは1〜3mm程度)である。吸放湿層、透湿層がこのような厚みであれば、本発明の効果が十分に得られやすくなる。また、積層体の表面に種々の凹凸模様を形成させることもできる。さらに、積層体製造時において、金属系、無機質系、木質系等の基材を使用せずに製造できるという利点もある。
各層の厚みが上記範囲より小さい場合は、調湿機能、有毒ガスの吸着・分解・再放出抑制機能等において十分な性能が得られ難くなり、また、積層体を製造する際に基材の使用が不可欠となる。
透湿層の表面には、本発明の効果が損なわれない限り、クリヤー塗料や撥水剤等を塗布することもできる。このうち、クリヤー塗料としては、シリコーンエマルション、及び該シリコーンエマルション以外の合成樹脂エマルションを、固形分比率95:5〜5:95で含有する塗料が好適である。このようなクリヤー塗料を使用すれば、本発明の効果を阻害せずに、透湿層表面における汚れ防止性を高めることができる。
クリヤー塗料や撥水剤は、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を用いて塗布することができる。これらの塗布量は、本発明の効果を阻害しない範囲内で適宜設定すればよいが、通常0.01〜0.5kg/m程度である。
本発明積層体は、主に建築物の内装仕上げに適用できる。すなわち、流通時には、吸放湿層と透湿層を有するシート状成型体として取り扱い、これを建築物内装面の各部位に施工して内装仕上げを行うことが望ましい。具体的には、住宅、マンション、学校、病院、店舗、事務所、工場、倉庫、食堂等における壁、間仕切り、扉、天井等に適用できる。このような部位を構成する基材としては、例えば、石膏ボード、合板、コンクリート、モルタル、タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、石綿セメント板等が挙げられる。これら基材は、その表面に既存塗膜を有するものや、既に壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。本発明積層体は、このような基材に対し、透湿層が室内側を向くようにして施工する。
本発明積層体を施工する際には、接着剤、粘着剤、粘着テープ、釘、鋲等を用いて基材に貼着すればよい。その他、ピン、ファスナー、レール等を用いて固定化することもできる。
また、施工時に積層体を任意の形状に切断することも可能であるが、切断後の表面や側面に吸放湿層が現れた場合は、塗料等で適宜処理することが望ましい。この場合、塗料としては、上述の透湿層形成用組成物等が使用できる。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
(実施例1)
結合剤A100重量部(固形分)、吸放湿性粉粒体550重量部、骨材A670重量部、及び水600重量部を均一に攪拌・混合することにより、吸放湿層用組成物1を製造した。この吸放湿層用組成物1の硬化膜(乾燥厚み1.5mm)の吸放湿量を、JIS A6909:2003「建築用仕上塗材」7.32.2の手順によって測定したところ、150g/mであった。
また、結合剤B100重量部(固形分)、骨材B1200重量部、化学物質吸着剤A20重量部、光触媒物質5重量部、及び水800重量部を均一に攪拌・混合することにより、透湿層用組成物1を製造した。この透湿層用組成物1の硬化膜(乾燥厚み2.0mm)の水蒸気透過度を、JIS K5400:1990「塗料一般試験方法」8.17によって測定したところ、760g/m・24hであった。
離型剤を塗布した型枠(縦150mm×横70mm×深さ5mm)に、透湿層用組成物1を流し込み、24時間後、吸放湿層用組成物1を流し込み、こてを用いて平滑にならした。23℃下で24時間硬化後脱型することにより、積層体1を得た。この積層体1の吸放湿層の厚みは1.5mm、透湿層の厚みは2.0mmであった。
得られた積層体1について、以下の方法によって各試験を行った。結果を表1に示す。
なお、吸放湿層用組成物及び透湿層用組成物の製造においては、以下の原料を使用した。
・結合剤A:アクリル樹脂エマルション(ガラス転移温度0℃、固形分50重量%、平均粒子径130μm)
・結合剤B:架橋反応性アクリル樹脂エマルション(ガラス転移温度15℃、固形分50重量%、架橋反応基:カルボキシル基・エポキシ基、平均粒子径120μm)
・吸放湿性粉粒体:ベーマイト(平均粒子径150μm、吸湿率35%)
・骨材A:珪砂(平均粒子径120μm、吸湿率1%以下)
・骨材B:着色珪砂(平均粒子径120μm、吸湿率1%以下)
・化学物質吸着剤A:アミン複合層状リン酸ジルコニウム(平均粒子径45μm)
・化学物質吸着剤B:アルミノ珪酸塩(平均粒子径3μm)
・光触媒物質:アナターゼ型酸化チタン(平均粒子径0.02μm)
(1)調湿性能
積層体の裏側面をアルミニウム粘着テープでシールした後、JIS A6909:2003「建築用仕上塗材」7.32.2の手順によって測定した。
(2)有害ガスの吸着・分解性能
予め裏側面をアルミニウム粘着テープでシールした積層体を試料とした。この試料を3リットルにおい袋に入れ、ホルムアルデヒド(20ppm)を拡散させたwet air(23℃・90%RH)を、このにおい袋中に充填して密閉した。30分後、検知管を用いて、におい袋中のホルムアルデヒド濃度を測定し、分解率を下記式によって求めた。
分解率(%)=[(初期ホルムアルデヒド濃度−試験後ホルムアルデヒド濃度)/初期ホルムアルデヒド濃度]×100
(3)有害ガスの再放出防止性能
上記(2)で試験後の試料を新たな3リットルにおい袋中に入れ、dry air(23℃・45%RH)を充填して密閉した。このにおい袋を50℃条件下、24時間加熱後、検知管を用いて、におい袋中のホルムアルデヒド濃度を測定し、ホルムアルデヒドの再放出の有無を確認した。評価は、ホルムアルデヒドの再放出が認められなかったものを○、再放出が認められたものを×とした。
(4)汚染物質の分解性能
予め裏側面をアルミニウム粘着テープでシールした積層体を試料とした。この試料を、通気孔が設けられた20L容器内に入れ、タバコ10本に火をつけて燃焼させた後、通気孔を閉じて24時間放置した。その後、試料を取り出し、試料表面に紫外線ランプを24時間照射し、照射後の状態を確認した。評価は、試験前後の黄変の程度(Δb)を色差計で測定することにより行った。
Figure 2005186618
(実施例2)
結合剤B100重量部(固形分)、骨材B1200重量部、化学物質吸着剤B20重量部、光触媒物質5重量部、及び水800重量部を均一に攪拌・混合することにより、透湿層用組成物2を製造した。この透湿層用組成物2の硬化膜(乾燥厚み2.0mm)の水蒸気透過度を、JIS K5400:1990「塗料一般試験方法」8.17によって測定したところ、760g/m・24hであった。
透湿層として、透湿層用組成物1に代えて透湿層用組成物2を使用した以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、試験を行った。
(実施例3)
結合剤A100重量部(固形分)、吸放湿性粉粒体800重量部、骨材A670重量部、及び水800重量部を均一に攪拌・混合することにより、吸放湿層用組成物2を製造した。この吸放湿層用組成物2の硬化膜(乾燥厚み1.5mm)の吸放湿量を、JIS A6909:2003「建築用仕上塗材」7.32.2の手順によって測定したところ、220g/mであった。
離型剤を塗布した型枠(縦150mm×横70mm×深さ5mm)の底面及び側面に、乾燥厚みが2.0mmとなるように透湿層用組成物1(実施例1で使用)を塗り付け、24時間後、その内側に、乾燥厚みが1.5mmとなるように吸放湿層用組成物2を流し込み、こてを用いて平滑にならした。23℃で24時間硬化後脱型することにより積層体(図3)を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様にして試験を行った。なお、実施例3の試験では、積層体の裏面のみをアルミニウム粘着テープでシールした。
(比較例1)
結合剤A100重量部(固形分)、骨材A1200重量部、及び水300重量部を均一に攪拌・混合することにより、吸放湿層用組成物3を製造した。この吸放湿層用組成物3の硬化膜(乾燥厚み1.5mm)の吸放湿量を、JIS A6909:2003「建築用仕上塗材」7.32.2の手順によって測定したところ、30g/mであった。
吸放湿層として、吸放湿層用組成物1に代えて吸放湿層用組成物3を使用した以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、試験を行った。
(比較例2)
結合剤B100重量部(固形分)、骨材B1200重量部、及び水800重量部を均一に攪拌・混合することにより、透湿層用組成物3を製造した。この透湿層用組成物2の硬化膜(乾燥厚み2.0mm)の水蒸気透過度を、JIS K5400:1990「塗料一般試験方法」8.17によって測定したところ、700g/m・24hであった。
透湿層として、透湿層用組成物1に代えて透湿層用組成物3を使用した以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、試験を行った。
本発明積層体の一態様を示す断面図である。 本発明積層体の別の態様を示す断面図である。 本発明積層体の別の態様を示す断面図である。 本発明積層体の別の態様を示す断面図である。 本発明積層体の別の態様を示す断面図である。 本発明積層体の別の態様を示す断面図である。 本発明積層体の別の態様を示す断面図である。
符号の説明
A:吸放湿層
B:透湿層
C:補強材



Claims (5)

  1. 吸放湿量が50g/m以上である吸放湿層の上に、水蒸気透過度が100g/m・24h以上であり、化学物質吸着剤及び光触媒物質を有する透湿層が積層されたことを特徴とする積層体。
  2. 吸放湿量が50g/m以上である吸放湿層の上に、水蒸気透過度が100g/m・24h以上であり、化学物質吸着剤及び光触媒物質を有する透湿層が積層されており、前記吸放湿層の表面及び側面が、前記透湿層によって覆われていることを特徴とする積層体。
  3. 透湿層が、結合剤100重量部に対し、平均粒子径0.01〜5mmの骨材を100〜4000重量部、化学物質吸着剤を0.1〜100重量部、及び光触媒物質を0.1〜50重量部含むものであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
  4. 吸放湿層が、結合剤100重量部に対し、吸放湿性粉粒体を20〜2000重量部含むものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
  5. 吸放湿層及び透湿層における結合剤として有機質樹脂を含み、透湿層における有機質樹脂のガラス転移温度が、吸放湿層における有機質樹脂のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする請求項3または4に記載の積層体。
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