JP5126864B1 - 燃料電池用触媒層及びその用途 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、白金単独の燃料電池用触媒層と同等以上の触媒能を有し、しかも安価な燃料電池用触媒層を提供することである。本発明の燃料電池用触媒層は、金属炭窒酸化物を含む層(I)と白金を含む層(II)とを有することを特徴とする。また、前記層(I)における金属炭窒酸化物と前記層(II)における白金との単位面積当たりの質量比(金属炭窒酸化物/白金)が、2〜500であることが好ましい。さらに、前記層(II)における白金の単位面積当たりの質量が、0.005〜0.2mg/cm2であることが好ましい。
【選択図】図3

Description

本発明は、燃料電池用触媒層及びその用途に関する。
燃料電池には、電解質の種類や電極の種類により種々のタイプに分類され、代表的なものとしては、アルカリ型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型がある。この中でも低温(−40℃程度)から120℃程度で作動可能な固体高分子型燃料電池が注目を集め、近年、自動車用低公害動力源としての開発・実用化が進んでいる。
固体高分子型燃料電池の用途としては、車両用駆動源や定置型電源が検討されているが、これらの用途に適用されるためには、長期間に渡る耐久性が求められている。
この固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質をアノードとカソードとで挟み、アノードに燃料を供給し、カソードに酸素または空気を供給して、カソードで酸素が還元されて電気を取り出す形式である。燃料には水素またはメタノールなどが主として用いられる。
従来、燃料電池の反応速度を高め、燃料電池のエネルギー変換効率を高めるために、燃料電池のカソード(空気極)表面やアノード(燃料極)表面には、触媒を含む層(以下「燃料電池用触媒層」とも記す。)が設けられていた。
この触媒として、一般的に貴金属が用いられており、貴金属の中でも高い電位で安定であり、活性が高い白金が、主として用いられてきた。しかし、白金は価格が高く、また資源量が限られていることから、代替可能な触媒の開発が求められていた。
白金に代わる触媒として、炭素、窒素、ホウ素等の非金属を含む材料が近年着目されている。これらの非金属を含む材料は、白金などの貴金属と比較して価格が安く、また資源量が豊富である。
非特許文献1では、ジルコニウムをベースとしたZrOxN化合物に、酸素還元能を示すことが報告されている。
特許文献1では、白金代替材料として長周期表4族、5族及び14族の元素群から選ばれる1種以上の窒化物を含む酸素還元電極材料が開示されている。
しかしながら、これらの非金属を含む材料は、触媒として実用的に充分な酸素還元能が得られていないという問題点があった。
特許文献2では、二種類の以上の金属を含むペロブスカイト構造をとる酸化物が白金代替触媒となる可能性について検討されているが、実施例に示されているように、効能は白金を補助する担体としての役割を超えるものではなく、充分な活性を持たない。
特開2007−31781号公報 特開2008−4286号公報
S. Doi,A. Ishihara,S. Mitsushima,N. kamiya,and K. Ota, Journal of The Electrochemical Society, 154 (3) B362−B369 (2007)
本発明はこのような従来技術における問題点の解決を課題としており、本発明の目的は、白金単独の燃料電池用触媒層と同等以上の触媒能を有し、しかも安価な燃料電池用触媒層を提供することである。
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、金属炭窒酸化物を含む層(I)と白金を含む層(II)とを有する燃料電池用触媒層が、白金単独の燃料電池用触媒層と同等以上の触媒能を有し、しかも安価であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、たとえば以下の(1)〜(17)に関する。
(1)
金属炭窒酸化物を含む層(I)と白金を含む層(II)とを有することを特徴とする燃料電池用触媒層。
(2)
前記層(I)における金属炭窒酸化物と前記層(II)における白金との単位面積当たりの質量比(金属炭窒酸化物/白金)が、2〜500であることを特徴とする(1)に記載の燃料電池用触媒層。
(3)
前記層(II)における白金の単位面積当たりの質量が、0.005〜0.2mg/cm2であることを特徴とする(1)または(2)に記載の燃料電池用触媒層。
(4)
前記層(I)における金属炭窒酸化物を構成する金属元素が、アルミニウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ストロンチウム、イットリウム、スズ、タングステン、セリウム、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層。
(5)
前記層(I)における金属炭窒酸化物を構成する金属元素が、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層。
(6)
前記層(I)における金属炭窒酸化物を構成する金属元素が、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層。
(7)
前記層(I)における金属炭窒酸化物を構成する金属元素が、チタンおよびニオブからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層。
(8)
前記層(I)における金属炭窒酸化物が、フッ素を含有する金属炭窒酸化物であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層。
(9)
前記層(I)における金属炭窒酸化物が、ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aならびにフッ素を含有する金属炭窒酸化物であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層。
(10)
前記層(I)および層(II)の少なくとも一方の層が、さらに電子伝導性粒子を含むことを特徴とする(1)〜(9)のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層。
(11)
前記電子伝導性粒子が、前記層(II)における白金の担体として用いられていることを特徴とする(10)に記載の燃料電池用触媒層。
(12)
燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有する電極であって、前記燃料電池用触媒層が(1)〜(11)のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層であることを特徴とする電極。
(13)
前記多孔質支持層上に、金属炭窒酸化物を含む層(I)と白金を含む層(II)とがこの順で積層されていることを特徴とする(12)に記載の電極。
(14)
カソードとアノードと前記カソード及び前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソード及び/または前記アノードが(12)または(13)に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
(15)
前記電解質膜上に、白金を含む層(II)と金属炭窒酸化物を含む層(I)とがこの順で積層されていることを特徴とする(14)に記載の膜電極接合体。
(16)
(14)または(15)に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
(17)
(14)または(15)に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
本発明の燃料電池用触媒層によれば、安価で発電特性の優れた電極、膜電極接合体および燃料電池を得ることができる。
図1は、燃料電池用触媒層の断面図の一例である。 図2は、電極の断面図の一例である。 図3は、膜電極接合体(MEA)の断面図の一例である。 図4は、固体高分子型燃料電池の単セルの分解断面図の一例である。 図5は、実施例1、参考例1および比較例1で作製した各単セルにおける電流―電圧特性曲線である。 図6は、実施例1、参考例1および比較例1で作製した各単セルにおける電流―出力密度曲線である。
<燃料電池用触媒層>
本発明の燃料電池用触媒層は、金属炭窒酸化物を含む層(I)と白金を含む層(II)とを有することを特徴としている。なお、本発明の燃料電池用触媒層のもっとも単純な模式図を図1に示す。
前記層(I)および前記層(II)を有する燃料電池用触媒層は、白金単独の燃料電池用触媒層と同等以上の触媒能を有し、白金だけでなく金属炭窒酸化物から形成されているので、白金単独の燃料電池用触媒層に比べて非常に安価である。
前記層(I)における金属炭窒酸化物と前記層(II)における白金との単位面積当たりの質量比(金属炭窒酸化物/白金)は、2〜500であることが好ましく、7〜300であることがより好ましく、20〜200であることがさらに好ましい。
前記単位面積当たりの質量比(金属炭窒酸化物/白金)が前記範囲内であると、触媒能に優れる傾向がある。また、金属炭窒酸化物の質量を多くして、白金の質量を少なくすることにより、得られる燃料電池用触媒層は極めて安価となる。
前記層(I)における金属炭窒酸化物中の金属成分と前記層(II)における白金との単位面積当たりの質量比(金属炭窒酸化物中の金属成分/白金)は、1〜250であることが好ましく、5〜200であることがより好ましく、10〜150であることがさらに好ましい。
前記質量比(金属炭窒酸化物中の金属成分/白金)が前記範囲内であると、触媒能に優れる傾向がある。また、金属炭窒酸化物の金属成分の質量を多くして、白金の質量を少なくすることにより、得られる燃料電池用触媒層は極めて安価となる。
前記層(I)における金属炭窒酸化物中の金属成分と前記層(II)における白金との単位面積当たりの質量比(金属炭窒酸化物中の金属成分/白金)を求める方法としては、たとえば以下のような方法が挙げられる。
まず、パイレックス(登録商標)製容器中で、あらかじめ面積を測定した前記層(I)および前記層(II)を、硫酸および硝酸を含む水溶液に混合し、過熱する。さらに王水を加えることによって前記層(I)および層(II)を溶解する。得られた溶液をICP分光分析することにより、金属炭窒酸化物中の金属成分の質量と、白金の質量とを測定し、これらの単位面積当たりの質量比(金属炭窒酸化物中の金属成分/白金)を求める。
前記層(II)における白金の単位面積当たりの質量は、0.005〜0.2mg/cm2であることが好ましく、0.01〜0.15mg/cm2であることがより好ましく、0.05〜0.1mg/cm2であることがさらに好ましい。
通常、白金の単位面積当たりの質量を少なくすると、燃料電池用触媒層の触媒能は極めて低くなる。したがって、従来、触媒能を高くするために、燃料電池用触媒層での白金の単位面積当たりの質量を、例えば、0.25〜2.00mg/cm2と多くする必要があった。
しかしながら、本発明の燃料電池用触媒層は、金属炭窒酸化物を含む層(I)を有することにより、前記層(II)における白金の単位面積当たりの質量が前記範囲内のように微量であっても、触媒能に優れる傾向がある。また、白金の使用量が微量であるため、極めて安価となる。
前記層(II)における白金の単位面積当たりの質量を求める方法としては、たとえば、上述した方法により白金の質量を求め、前記層(II)における白金の単位面積当たりの質量を求める。
前記金属炭窒酸化物は、アルミニウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ストロンチウム、イットリウム、スズ、タングステン、セリウム、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む金属炭窒酸化物であることが好ましく、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む金属炭窒酸化物であることがより好ましく、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属炭窒酸化物であることがより好ましく、チタン、ニオブおよびジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む金属炭窒酸化物であることがより好ましく、チタンおよびニオブからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む金属炭窒酸化物であることが特に好ましい。
前記金属炭窒酸化物としては、フッ素を含有する金属炭窒酸化物が好ましく、ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aならびにフッ素を含有する金属炭窒酸化物であることがより好ましい。
このような金属炭窒酸化物を含む層(I)を有する燃料電池用触媒層は、白金単独の燃料電池用触媒層と比べて非常に安価であり、しかも白金単独の燃料電池用触媒層と同等以上の触媒能を有し、さらに酸性電解質中や高電位での耐久性に優れる傾向がある。
前記層(I)の触媒成分としては、金属炭窒酸化物からなることが好ましい。前記層(I)の触媒成分としては、金属炭窒酸化物以外の助触媒があってもかまわないが特に必要ではない。
前記金属炭窒酸化物の組成式は、例えば下記(x)で表わされる組成式となる。
MCxyz ・・・(x)
(ただし、Mは金属原子であり、x、y、zは原子数の比を表し、0<x≦9、0<y≦2、0<z≦5であり、0.05≦x≦2.5、0.01≦y≦1.0、0.1≦z≦2.0 が好ましい。)
前記組成式(x)において、0.05≦x≦9、0.01≦y≦2、0.05≦z≦5であることが好ましく、0.05≦x≦8、0.01≦y≦1.8、0.1≦z≦4であることがより好ましく、0.05≦x≦7、0.01≦y≦1.5、0.1≦z≦3.5であることがより好ましく、0.06≦x≦2.0、0.02≦y≦0.8、 0.2≦z≦1.9であることがより好ましく、0.1≦x≦1.5、0.04≦y≦0.7、0.3≦z≦1.8であることがさらに好ましい。
前記金属炭窒酸化物がフッ素を含有する場合、さらに任意に前記元素Aを含有する場合には、前記金属炭窒酸化物の組成式は、好ましくは下記(y)で表わされる組成式となる。
MCxyzab ・・・(y)
(ただし、Mは金属原子であり、x、y、z、a、bは原子数の比を表し、0<x≦9、0<y≦2、0<z≦5、0≦a≦1、0<b≦2であり、Aは、ホウ素、リン、および硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。)
前記組成式(y)において、xの範囲は、より好ましくは0.15≦x≦9、さらに好ましくは0.2≦x≦8であり、特に好ましくは1≦x≦7であり、yの範囲は、より好ましくは0.01≦y≦2、さらに好ましくは0.02≦y≦1.8であり、特に好ましくは0.03≦y≦1.5であり、zの範囲は、より好ましくは0.05≦z≦5であり、さらに好ましくは0.1≦z≦4であり、特に好ましくは0.2≦z≦3.5であり、aの範囲は、より好ましくは0.001≦a≦1であり、さらに好ましくは0.001≦a≦0.5であり、特に好ましくは0.001≦a≦0.2であり、bの範囲は、より好ましくは0.0001≦b≦2であり、さらに好ましくは0.001≦b≦1であり、特に好ましくは0.001≦b≦0.2である。
前記組成式(x)および(y)において、Mは、金属原子であり、アルミニウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ストロンチウム、イットリウム、スズ、タングステン、セリウム、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属であることが好ましく、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属であることが好ましく、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属であることが好ましく、チタン、ニオブおよびジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属であることがより好ましく、チタンおよびニオブからなる群より選択される少なくとも1種の金属であることがさらに好ましい。
このような組成式で表される金属炭窒酸化物を含む層(I)を有する燃料電池用触媒層は、高い触媒能を有し、酸性電解質中や高電位での耐久性に優れる傾向があり、しかも安価である。
本発明において、前記金属炭窒酸化物とは、組成式がMCxyzまたはMCxyzabで表される化合物、または、金属の酸化物、金属の炭化物、金属の窒化物、金属の炭窒化物、金属の炭酸化物、金属の窒酸化物などを含み、組成式が全体としてMCxyzまたはMCxyzabで表される混合物(ただし、MCxyzまたはMCxyzabで表される化合物を含んでいてもいなくてもよい。)、あるいはその両方を意味する。
前記金属炭窒酸化物を得る方法は特に限定されないが、例えば、金属炭窒化物を酸素ガス含有不活性ガス中で加熱する方法、液相で合成した前駆体を不活性ガス中で加熱する方法などが挙げられる。例えば、液相中で加熱する方法とは、少なくとも金属含有化合物と、窒素含有有機化合物と、溶媒とを混合して触媒前駆体溶液を得る工程(1)、前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1300℃の温度で熱処理して電極触媒を得る工程(3)を含む方法が挙げられる。また、前記工程(1)〜(3)を含む方法の前記工程(1)において、フッ素を含有する化合物をさらに混合する工程を含む方法、前記工程(1)において、ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aならびにフッ素を含有する化合物をさらに混合する工程を含む方法などが挙げられる。
前記金属炭窒化物を構成する金属元素は、アルミニウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ストロンチウム、イットリウム、スズ、タングステン、セリウム、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることが好ましく、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることが好ましく、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることが好ましく、チタン、ニオブおよびジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることがより好ましく、チタンおよびニオブからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることがさらに好ましい。
前記窒素含有有機化合物は、アミノ基、ニトリル基、イミド基、イミン基、ニトロ基、アミド基、アジド基、アジリジン基、アゾ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシム基、ジアゾ基、ニトロソ基などの官能基、またはピロール環、ポルフィリン環、ピロリジン環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環等の環(これらの官能基および環をまとめて「含窒素分子団」ともいう。)を有することが好ましい。
前記金属含有化合物は、前記金属炭窒酸化物を構成する金属元素を含む化合物で有ればよく、金属含有化合物は1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。特に2種以上の金属含有化合物を用いる場合には、便宜上第1、第2と番号を付する場合がある。例えば3種類の金属含有化合物を用いる場合、第1の金属含有化合物、第2の金属含有化合物、第3の金属含有化合物と記載する。
以下、金属炭窒化物を酸素ガス含有不活性ガス中で加熱する方法について説明する。
前記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスまたはラドンガスが挙げられる。不活性ガスとしては、窒素ガスまたはアルゴンガスが、比較的入手しやすい点で特に好ましい。
前記不活性ガス中の酸素ガスの濃度範囲は、加熱時間および加熱温度に依存するが、0.1〜5容量%であることが好ましく、0.1〜2容量%であることがさらに好ましい。前記酸素ガス濃度が前記範囲内であると、均一な金属炭窒酸化物が形成される傾向がある。また、前記酸素ガス濃度が、0.1容量%未満であると未酸化状態になる傾向があり、5容量%を超えると酸化が進み過ぎる傾向がある。
前記加熱の温度範囲は600〜1300℃であることが好ましく、600〜1200℃であることがさらに好ましく、700〜1100℃であることがさらに好ましい。また、前記加熱温度が前記範囲内であると、均一な金属炭窒酸化物が形成される傾向がある。前記加熱温度が600℃未満であると酸化が進まない傾向があり、酸素ガスを共存させる場合には、1200℃を超えると酸化が進み過ぎる傾向がある。
また、前記不活性ガスは、水素ガスを含有していてもよい。該水素ガスの濃度範囲は、加熱時間および加熱温度に依存するが、0.01〜4容量%であることが好ましく、0.1〜4容量%であることがより好ましい。前記不活性ガス中に水素ガスを前記範囲で含有していると、最終的に得られる燃料電池用触媒層の触媒能が高くなる傾向がある。また、前記水素ガス濃度が4容量%を超えると、爆発の危険性が高くなる傾向がある。
なお、本発明におけるガス濃度(容量%)は、標準状態における値である。
前記加熱方法としては、静置法、攪拌法、落下法、粉末捕捉法などが挙げられる。
静置法とは、静置式の電気炉などに、金属炭窒化物を置き、加熱する方法である。また、金属炭窒化物を量りとったアルミナボード、石英ボードなどを置いて加熱する方法もある。静置法の場合は、大量の金属炭窒化物を加熱することができる点で好ましい。
攪拌法とは、ロータリーキルンなどの電気炉中に金属炭窒化物を入れ、これを攪拌しながら加熱する方法である。攪拌法の場合は、大量の金属炭窒化物を加熱することができ、金属炭窒化物の粒子の凝集および成長を抑制することができる点で好ましい。
静置法、攪拌法などの管状炉で行なう場合、金属炭窒化物の加熱時間は、0.1〜20時間であることが好ましく、1〜10時間であることがより好ましい。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な金属炭窒酸化物が形成される傾向がある。前記加熱時間が0.1時間未満であると金属炭窒酸化物が部分的に形成される傾向があり、20時間を超えると酸化が進みすぎる傾向がある。
落下法とは、誘導炉中に微量の酸素ガスを含む不活性ガスを流しながら、炉を所定の加熱温度まで加熱し、該温度で熱的平衡を保った後、炉の加熱区域である坩堝中に金属炭窒化物を落下させ、加熱する方法である。落下法の場合は、金属炭窒化物の粒子の凝集および成長を最小限度に抑制することができる点で好ましい。
落下法の場合、金属炭窒化物の加熱時間は、通常0.5〜10分であり、好ましくは1〜3分である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な金属炭窒酸化物が形成される傾向があり好ましい。前記加熱時間が0.5分未満であると金属炭窒酸化物が部分的に形成される傾向があり、10分を超えると酸化が進みすぎる傾向がある。
粉末捕捉法とは、微量の酸素ガスを含む不活性ガス雰囲気中で、金属炭窒化物を飛沫にして浮遊させ、所定の加熱温度に保たれた垂直の管状炉中に金属炭窒化物を捕捉して、加熱する方法である。
粉末捕捉法の場合、金属炭窒化物の加熱時間は、0.2秒〜1分、好ましくは0.5〜10秒である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な金属炭窒酸化物が形成される傾向があり好ましい。前記加熱時間が0.2秒未満であると金属炭窒酸化物が部分的に形成される傾向があり、1分を超えると酸化が進みすぎる傾向がある。
本発明の燃料電池用触媒層において、上述の製造方法により得られる金属炭窒酸化物を、そのまま用いてもよいが、得られる金属有炭窒酸化物をさらに解砕し、より微細な粉末にしたものを用いてもよい。
金属炭窒酸化物を解砕する方法としては、例えば、ロール転動ミル、ボールミル、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、槽解機による方法等が挙げられ、中でも遊星ボールミルによる方法が好ましい。
解砕後の金属炭窒酸化物は、より微細な粒子となるため、好適に分散して均一な前記層(I)を形成する傾向がある。また、解砕後の金属炭窒酸化物は、解砕前よりBET比表面積が大きくなり、最終的に得られる燃料電池用触媒層の触媒能が向上する傾向がある。
前記金属炭窒酸化物のBET比表面積は、1m2/g以上であることが好ましく、1〜1000m2/gであることがより好ましく、1〜350m2/gであることがより好ましく、1〜300m2/gであることがより好ましく、5〜300m2/gであることがより好ましく、5〜250m2/gであることが特に好ましい。
なお、本発明におけるBET比表面積の値は、市販のBET測定装置で測定可能であり、たとえば、島津製作所株式会社製 マイクロメリティクス ジェミニ2360を用いて測定することができる。
前記金属炭窒酸化物の一次粒子径は、5nm〜1.5μmであることが好ましく、6nm〜1μmであることがより好ましく、8nm〜500nmであることがさらに好ましい。
本発明において、前記金属炭窒酸化物の一次粒子径は、下記式(1)を用いてBET比表面積から換算した値である。
d=6/(p×S) ・・・(1)
d;金属炭窒酸化物の一次粒子径(μm)
p;金属炭窒酸化物の密度(g/cm3
S;金属炭窒酸化物のBET比表面積(m2/g)
なお、前記金属炭窒化物を得る方法は特に限定されず、例えば、金属酸化物と炭素との混合物を、窒素雰囲気または窒素を含有する不活性ガス中で加熱することにより金属炭窒化物を製造する方法(i)、金属含有化合物(例えば有機酸塩、塩化物、錯体など)、金属炭化物および金属窒化物の混合物を、窒素ガスなどの不活性ガス中で加熱することにより金属炭窒化物を製造する方法(ii)等が挙げられる。
金属炭窒化物を製造する際の加熱の温度は600〜1800℃の範囲であり、好ましくは800〜1600℃の範囲である。前記加熱温度が前記範囲内であると、結晶性および均一性が良好となる傾向がある。前記加熱温度が600℃未満であると結晶性が悪く、均一性が悪くなる傾向があり、1800℃を超えると焼結しやすくなる傾向がある。
前記加熱方法としては、上述した静置法、攪拌法、落下法、粉末捕捉法などが挙げられる。
前記製造方法で得られた金属炭窒化物は、粉砕されることが好ましい。金属炭窒化物を粉砕する方法としては、例えば、ロール転動ミル、ボールミル、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、槽解機による方法等が挙げられ、金属炭窒化物をより微粒とすることができる点では、気流粉砕機が好ましく、少量処理が容易となる点では、乳鉢による方法が好ましい。
本発明の燃料電池用触媒層は、前記層(I)および層(II)の少なくとも一方の層が、さらに電子伝導性粒子を含むことが好ましい。また、前記層(I)および層(II)の少なくとも一方の層が、さらに高分子電解質を含むことも好ましい。電子伝導性粒子は、前記層(I)および/または前記層(II)に含めることができるが、少なくとも前記層(I)に含めることが好ましい。前記触媒を含む燃料電池用触媒層がさらに電子伝導性粒子を含む場合には、還元電流をより高めることができる。電子伝導性粒子は、前記触媒に、電気化学的反応を誘起させるための電気的接点を生じさせるため、還元電流を高めると考えられる。
前記電子伝導性粒子は通常、前記金属炭窒酸化物および/または白金の担体として用いることができる。前記電子伝導性粒子は、前記層(II)における白金の担体として用いられていることが好ましい。
電子伝導性粒子を構成する材料としては、炭素、導電性高分子、導電性セラミクス、金属または酸化タングステンもしくは酸化イリジウムなどの導電性無機酸化物が挙げられ、それらを単独または組み合わせて用いることができる。特に、比表面積の大きい炭素粒子単独または比表面積の大きい炭素粒子とその他の電子伝導性粒子との混合物が好ましい。
すなわち燃料電池用触媒層としては、比表面積の大きい炭素粒子とを含むことが好ましい。
炭素としては、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレンなどが使用できる。カーボンの粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると燃料電池用触媒層のガス拡散性が低下したり、触媒層の利用率が低下する傾向があるため、10〜1000nmの範囲であることが好ましく、15〜100nmの範囲であることがよりに好ましい。
電子伝導性粒子を構成する材料が、炭素であり、層(I)に炭素が含まれる場合には、前記金属炭窒酸化物と、層(I)に含まれる炭素との質量比(金属炭窒酸化物:電子伝導性粒子)は、好ましくは4:1〜1000:1である。また、電子伝導性粒子を構成する材料が、炭素であり、層(II)に炭素が含まれる場合には、前記白金と、層(II)に含まれる炭素との質量比(白金:電子伝導性粒子)は、好ましくは4:1〜1000:1である。
導電性高分子としては特に限定は無いが、例えばポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリ−1,5−ジアミノアントラキノン、ポリアミノジフェニル、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(キノリニウム)塩、ポリピリジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン等が挙げられる。これらの中でも、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンが好ましく、ポリピロールがより好ましい。
高分子電解質としては、燃料電池用触媒層において一般的に用いられているものであれば特に限定されない。具体的には、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(例えば、NAFION(登録商標)(デュポン社 5%NAFION(登録商標)溶液(DE521))など)、スルホン酸基を有する炭化水素系高分子化合物、リン酸などの無機酸をドープさせた高分子化合物、一部がプロトン伝導性の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン伝導体などが挙げられる。これらの中でも、NAFION(登録商標)(デュポン社 5%NAFION(登録商標)溶液(DE521))が好ましい。
本発明の燃料電池用触媒層は、アノード触媒層またはカソード触媒層のいずれにも用いることができる。本発明の燃料電池用触媒層は、高い酸素還元能を有し、酸性電解質中において高電位であっても腐蝕しがたい金属炭窒酸化物を含むため、燃料電池のカソードに設けられる触媒層(カソード用触媒層)として有用である。特に固体高分子形燃料電池が備える膜電極接合体のカソードに設けられる触媒層に好適に用いられる。本発明の触媒層を、酸素還元電極として用いた場合には、アノードで発生した水素イオンおよび回路から供給される電子と酸素とが反応して、水が発生する。
前記金属炭窒酸化物を、担体である前記電子伝導性粒子上に分散させる方法としては、気流分散、液中分散等の方法が挙げられる。液中分散は、溶媒中に金属炭窒酸化物と、電子伝導性粒子とを分散したものを、前記層(I)の形成工程に使用できるため好ましい。
液中分散としては、オリフィス収縮流による方法、回転せん断流による方法または超音波による方法等があげられる。液中分散の際、使用される溶媒は、金属炭窒酸化物や電子伝導性粒子を浸食することがなく、分散できるものであれば特に制限はないが、揮発性の液体有機溶媒または水等が一般に使用される。
また、金属炭窒酸化物を、前記電子伝導性粒子上に分散させる際、さらに上記電解質と分散剤とを同時に分散させてもよい。
白金を、担体である前記電子伝導性粒子上に分散させる方法としては、特に限定されないが、例えば、白金化合物を含有する溶液と電子伝導性粒子とを撹拌・混合した後、還元剤を加えて、さらに撹拌・混合して白金を電子伝導性粒子上に分散させる方法が挙げられる。
前記層(II)を形成する材料として、白金を電子伝導性粒子上に担持させた市販品を用いてもよい。このような市販品としては、例えば、Pt担持カーボン(TEC10E60E(田中貴金属工業製)、HiSPEC4000(ジョンソンマッセイ製))などが挙げられる。
燃料電池用触媒層の形成方法としては、特に制限はないが、たとえば、前記金属炭窒酸化物と電子伝導性粒子と電解質とを含み、更に必要に応じてポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンコポリマー、ポリアクリレート、ナフィオン(登録商標)(テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)とパーフルオロ(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル(perfluoro[2−(fluorosulfonylethoxy)propylvinyl ether])との共重合体)等のバインダーを含む懸濁液を、後述するガス拡散層に塗布することにより前記層(I)を形成し、さらにその上に白金と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を塗布することより、前記層(II)を形成する方法が挙げられる。
別の方法としては、後述する電解質膜上に白金と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を塗布することより、前記層(II)を形成し、さらにその上に前記金属炭窒酸化物と電子伝導性粒子と電解質とを含み、更に必要に応じてナフィオン(登録商標)等のバインダーを含む懸濁液を塗布することより、前記層(I)を形成する方法が挙げられる。
前記バインダーとしては、水素イオン伝導度が高いナフィオン(登録商標)が好ましい。
前記塗布する方法としては、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、フローコート法、ドクターブレード法、スキージ法、スプレー法などが挙げられる。
<用途>
本発明の電極は、燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有する電極であって、前記燃料電池用触媒層が、上述した燃料電池用触媒層であることを特徴としている。
本発明の電極は、前記多孔質支持層上に、金属炭窒酸化物を含む層(I)と白金を含む層(II)とがこの順で積層されていることが好ましい(例えば、図2参照)。このような構成の電極は、耐久性に優れ、発電性能に極めて優れる傾向がある。
本発明の電極はカソードまたはアノードのいずれの電極にも用いることができる。本発明の電極は、耐久性に優れ、発電性能が大きいので、カソードに用いるとより産業上の優位性が高い。
多孔質支持層とは、ガスを拡散する層(以下「ガス拡散層」とも記す。)である。ガス拡散層としては、電子伝導性を有し、ガスの拡散性が高く、耐食性の高いものであれば何であっても構わないが、一般的にはカーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素系多孔質材料や、軽量化のためにステンレス、耐食材を被服したアルミニウム箔が用いられる。
本発明の膜電極接合体は、カソードとアノードと前記カソード及び前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソード及び/または前記アノードが、上述した電極であることを特徴としている。
本発明の膜電極接合体は、前記電解質膜上に、白金を含む層(II)と金属炭窒酸化物を含む層(I)とがこの順で積層されていることが好ましい(例えば、図3参照)。このような構成の膜電極接合体は、発電性能に極めて優れる傾向がある。
前記膜電極接合体は、電解質膜および/またはガス拡散層に前記燃料電池用触媒層を形成後、カソード触媒層およびアノード触媒層を内側として電解質膜の両面をガス拡散層で挟み、ホットプレスすることで得ることができる。
ホットプレス時の温度は、使用する電解質膜および/または触媒層中の成分によって適宜選択されるが、100〜160℃であることが好ましく、120〜160℃であることがより好ましく、120〜140℃であることがさらに好ましい。ホットプレス時の温度が前記下限値未満であると接合が不充分となるおそれがあり、前記上限値を超えると電解質膜および/または触媒層中の成分が劣化するおそれがある。
ホットプレス時の圧力は、電解質膜および/または触媒層中の成分、ガス拡散層の種類によって適宜選択されるが、10〜1000kg/cm2であることが好ましく、20〜500kg/cm2であることがより好ましく、40〜250kg/cm2であることがさらに好ましい。ホットプレス時の圧力が前記下限値未満であると接合が不充分となるおそれがあり、前記上限値を超えると触媒層やガス拡散層の空孔度が減少し、性能が劣化するおそれがある。
ホットプレスの時間は、ホットプレス時の温度および圧力によって適宜選択されるが、1〜20分であることが好ましく、3〜15分であることがより好ましく、5〜10分であることがさらに好ましい。
前記膜電極接合体における発電性能は、たとえば、以下のように算出される最大出力密度により評価することができる。
まず、前記膜電極接合体をシール材(ガスケット)、ガス流路付きセパレーターと、集電板を挟んでボルトで固定し、所定の面圧(4N)になるように締め付けて、固体高分子形燃料電池の単セルを作成する。セル温度が著しく低い場合には、ラバーヒーターなどを用いて、測定温度まで昇温を行う。(図4参照)
アノード側に燃料として水素を流量100ml/分で供給し、カソード側に酸化剤として空気を流量100ml/分で供給し、アノード側およびカソード側の両側とも常圧で、前記単セル温度25℃における電流―電圧特性を測定する。得られる電流―電圧特性の各測定点において、積算により最大出力密度を算出する。最大出力密度が大きいほど、前記膜電極接合体における発電性能が高いことを示す。当該最大出力密度は、6mW/cm2以上であることが好ましく、10mW/cm2以上であることがより好ましく、20mW/cm2以上であることがさらに好ましい。
前記電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系を用いた電解質膜または炭化水素系電解質膜などが一般的に用いられるが、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜または多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。
本発明の燃料電池は、上述した膜電極接合体を備えることを特徴としている。
燃料電池の電極反応はいわゆる3相界面(電解質−電極触媒−反応ガス)で起こる。燃料電池は、使用される電解質などの違いにより数種類に分類され、溶融炭酸塩型(MCFC)、リン酸型(PAFC)、固体酸化物型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)等がある。中でも、本発明の膜電極接合体は、固体高分子形燃料電池に使用することが好ましい。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
また、実施例における各種測定は、下記の方法により行なった。
[分析方法]
1.元素分析
<炭素、硫黄>
試料約0.01gを量り取り、炭素硫黄分析装置(堀場製作所製EMIA−920V)にて測定を行った。
<窒素・酸素>
試料約0.01gを量り取り、Niカプセルに試料を封入して、酸素窒素分析装置(LECO製TC600)にて測定を行った。
<金属(チタン等)>
試料約0.1gを石英ビーカーに量り取り、硫酸,硝酸およびフッ酸を用いて試料を完全に加熱分解する。冷却後、この溶液を100mlに定容する。この溶液を適宜希釈しICP−OES(SII社製VISTA−PRO)またはICP−MS(Agilent社製HP7500)を用いて定量を行った。
<フッ素>
試料数mgを、酸素気流下、水蒸気を通気しながら燃焼分解した。発生したガスを10mM Na2CO3(過酸化水素を含む。補正用標準Br‐:5ppm)に吸収させ、イオンクロマトグラフィーでフッ素の量を測定した。
燃焼分解条件:
試料燃焼装置:AQF−100((株)三菱化学アナリテック社製)
燃焼管温度:950℃(試料ボード移動による昇温分解)
イオンクロマトグラフィー測定条件
測定装置:DIONEX DX−500
溶離液:1.8mM Na2CO3+1.7mM NaHCO3
カラム(温度):ShodexSI−90(室温)
流速:1.0ml/分
注入量:25μl
検出器:電気伝導度検出器
サプレッサー:DIONEX ASRS−300
<ホウ素>
試料数十mgを、リン酸を加えた後、硫酸を加えて硫酸の白煙を発生するまで加熱し、放冷した。その後、硝酸添加→加熱→放冷の操作を数回繰り返した。これらの操作後の試料をポリ容器中で純水で50mlに定容後、定容物を(ただし、沈殿物が生じた場合には上澄み液を)純水で10倍希釈した。その後、ICP発光分析でホウ素量を測定した。
<リン>
試料約0.02gを、硫酸を加え、硫酸の白煙が発生するまで加熱し、放冷後、硝酸を加え、完全分解するまで、硝酸添加→加熱→放冷の操作を繰り返した。これらの操作後の試料をポリ容器中で純水で100mlに定容した。白濁が認めた場合には、白濁が認められなくなるまでフッ酸を添加した。定容物を純水でさらに50倍に希釈し、ICP発光分析でリン量を測定した。
2.BET比表面積測定
島津製作所株式会社製 マイクロメリティクス ジェミニ2360を用いてBET比表面積を測定した。
3.一次粒子径
金属炭窒酸化物の一次粒子径は、下記式(1)を用いてBET比表面積から換算した値とした。
d=6/(p×S) ・・・(1)
d;金属炭窒酸化物の一次粒子径(μm)
p;金属炭窒酸化物の密度(g/cm3
S;金属炭窒酸化物のBET比表面積(m2/g)
[調製例1]
1.白金を含むインクの調製
Pt担持カーボン(TEC10E60E、田中貴金属工業製)0.6gを純水50mlに加え、さらにNAFION(登録商標)を含有する水溶液(NAFION5%水溶液、和光純薬工業製)5gを入れて、超音波分散機(UT−106H型シャープマニファクチャリングシステム社製)で1時間混合することにより、白金を含むインクを調製した。
2.白金を含む層の形成
ガス拡散層(カーボンペーパーTGP−H−060、東レ社製)を、アセトンに30秒間浸漬し、脱脂を行った。乾燥後、10%のポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」とも記す。)水溶液に30秒間浸漬した。室温乾燥後、350℃で1時間加熱することにより、カーボンペーパー内部にPTFEを分散させ、撥水性を持たせたガス拡散層(以下「GDL」とも記す。)を得た。
次に、5cm×5cmの大きさとした前記GDLの表面に、自動スプレー塗布装置(サンエイテック社製)により、80℃で、上記1で調製した白金を含むインクを塗布した。繰り返しスプレー塗布することにより、GDL上に白金を含む層(a)を、白金の単位面積当たりの質量が、1mg/cm2となるように形成した。
上記のとおりGDL上に白金を含む層(a)を形成したものを、電極(A)とした。
[実施例1]
1.金属炭窒酸化物の調製
炭化チタン(TiC)5.10g(85mmol)、酸化チタン(TiO2)0.80g(10mmol)、窒化チタン(TiN)0.31g(5mmol)をよく混合して、1800℃で3時間、窒素雰囲気中で加熱することにより、炭窒化チタン5.73gが得られた。この炭窒化チタンは、焼結体になるため、自動乳鉢で粉砕した。
粉砕した炭窒化チタン298mgを、1容量%の酸素ガスおよび4%容量%の水素ガスを含む窒素ガスを流しながら、管状炉で、1000℃で6時間加熱することにより、チタン含有炭窒酸化物(以下「金属炭窒酸化物(1)」とも記す。)380mgが得られた。金属炭窒酸化物(1)の元素分析結果を表1に示す。
また、金属炭窒酸化物(1)のBET比表面積は、10m2/gであり、金属炭窒酸化物(1)の一次粒子径は、150nmであった。
2.金属炭窒酸化物を含むインクの調製
上記1で調製した金属炭窒酸化物(1)0.24gと、電子伝導性粒子としてカーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD、LION社製)0.12gとを、2−プロパノール(和光純薬工業製)50mlに加え、さらにNAFION(登録商標)を含有する水溶液(NAFION5%水溶液、和光純薬工業製)2.8gを入れて、超音波分散機(UT−106H型シャープマニファクチャリングシステム社製)で1時間混合することにより、金属炭窒酸化物を含むインク(1)を調製した。
3.白金を含むインクの調製
Pt担持カーボン(TEC10E60E、田中貴金属工業製)1.2gを純水2.4gとイソプロピルアルコール2.4g(特級、和光純薬工業製)に加え、さらにNAFION(登録商標)を含有する水溶液(NAFION5%水溶液、和光純薬工業製)13gを入れて、超音波分散機(UT−106H型シャープマニファクチャリングシステム社製)で1時間混合することにより、白金を含むインク(2)を調製した。
4.燃料電池用触媒層の形成
ガス拡散層(カーボンペーパーTGP−H−060、東レ社製)を、アセトンに30秒間浸漬し、脱脂を行った。乾燥後、10%のポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」とも記す。)水溶液に30秒間浸漬した。
室温乾燥後、350℃で1時間加熱することにより、カーボンペーパー内部にPTFEを分散させ、撥水性を持たせたガス拡散層(以下「GDL」とも記す。)を得た。
次に、5cm×5cmの大きさとした前記GDLの表面に、自動スプレー塗布装置(サンエイテック社製)により、80℃で、上記2で調製した金属炭窒酸化物を含むインク(1)を塗布した。繰り返しスプレー塗布することにより、前記GDL上に、金属炭窒酸化物を含む層(I)を、金属炭窒酸化物の単位面積当たりの質量が、5mg/cm2となるように形成した。
次に、前記層(I)の表面に、自動スプレー塗布装置(サンエイテック社製)により、80℃で、上記3で調製した白金を含むインク(2)を塗布した。繰り返しスプレー塗布することにより、前記層(I)上に、白金を含む層(II)を、白金の単位面積当たりの質量が、0.1mg/cm2となるように形成した。
このようにしてガス拡散層(GDL)上に、金属炭窒酸化物を含む層(I)と白金を含む層(II)とをこの順で積層した燃料電池用触媒層(1)を形成したものを、電極(B)とした(図2参照)。
5.膜電極接合体(以下「MEA」とも記す。)の作製
電解質膜として、NAFION膜N−115(デュポン社製)を用い、アノードとして、調製例1で作製した電極(A)を用い、カソードとして、上記4で作製した電極(B)を用いた。
前記カソード及び前記アノードの間に前記電解質膜を配置したMEA(1)を以下のように作製した。
まず、前記電解質膜を、3%過酸化水素水中、80℃で1時間加熱し、その後、純水中、80℃で1時間加熱した。続いて、1M硫酸水溶液中、80℃で1時間加熱し、その後、純水中、80℃で1時間加熱した。
このようにして水分を取り除いた前記電解質膜を前記カソードおよび前記アノードで挟み、ホットプレス機を用いて、130℃、100kg/cm2で1分間熱圧着して、MEA(1)を作製した(図3参照)。なお、前記電解質膜を前記カソードおよび前記アノードで挟む際、前記カソードにおける燃料電池用触媒層(1)および前記アノードにおける白金を含む層(a)が前記電解質膜に密着するようにした。
6.単セルの作製
図4に示すように、上記5で作製したMEA(1)を、2つシール材(ガスケット)、2つのガス流路付きセパレーター、2つの集電板およびで2つのラバーヒーターで挟んでボルトで固定し、所定の面圧(4N)になるように締め付けて、固体高分子形燃料電池の単セル(1)(25cm2)を作製した。
7.発電性能の評価
上記6で作製した単セル(1)を25℃に維持し、アノード側に燃料として水素を流量100ml/分で供給し、カソード側に酸化剤として空気を流量100ml/分で供給し、アノード側およびカソード側の両側とも常圧で、単セル(1)(温度25℃)における電流―電圧特性を測定した。得られた電流―電圧特性曲線から最大出力密度を算出した。当該最大出力密度が大きいほど、MEAにおける発電性能が高く、MEAを構成する燃料電池用触媒層の触媒能が高いことを示す。MEA(1)における発電性能、すなわち最大出力密度は、45mW/cm2であった。
[実施例2]
1.金属炭窒酸化物の調製
チタンテトライソプロポキシド(純正化学(株)製)9.37g及びアセチルアセトン(純正化学)5.12gをエタノール(和光純薬(株)製)15mLと酢酸(和光純薬(株)製)5mLとの溶液に加え、室温で攪拌しながらチタン含有混合物溶液を作成した。また、グリシン(和光純薬(株)製)10g及び酢酸鉄(Aldrich社製)0.582gを純水20mLに加え、室温で攪拌して完全に溶解させてグリシン含有混合物溶液を作成した。
チタン含有混合物溶液をグリシン含有混合物溶液にゆっくり添加し、透明な触媒前駆体溶液を得た。ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液を加熱かつ攪拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形分残渣を乳鉢で細かく均一に潰して、粉末を得た。
この粉末を管状炉に入れ、4容量%水素と窒素との混合ガス雰囲気下で昇温速度10℃/minで900℃まで加熱し、900℃で1時間保持し、自然冷却することにより粉末(以下「金属炭窒酸化物(2)」または「熱処理物(2)」とも記す。)を得た。
また、金属炭窒酸化物(2)の元素分析結果を表4に示す。炭素、窒素及び酸素の存在が確認された。
金属炭窒酸化物(2)のBET比表面積は230m2/gであった。
2.金属炭窒酸化物を含むインクの調製
上記1で調製した金属炭窒酸化物(2)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、インク(2)を調製した。
3.白金を含むインクの調製
実施例1と同様の方法により、白金を含むインク(2)を調製した。
4.燃料電池用触媒層の形成
前記金属炭窒酸化物を含むインク(2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、燃料電池用触媒層(2)を形成したものを、電極(B)とした。
5.膜電極接合体(以下「MEA」とも記す。)の作製
前記燃料電池用触媒層(2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、電解質膜を配置したMEA(2)を作製した。
6.単セルの作製
前記MEA(2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、固体高分子形燃料電池の単セル(2)(25cm2)を作製した。
7.発電性能の評価
上記6で作製した単セル(2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、発電性能の評価を行った。MEA(2)における触媒能、すなわち最大出力密度は、50mW/cm2であった。
実施例2の実験条件および結果を表3、4に記載した。
[実施例3]
1.金属炭窒酸化物の調製
ビーカーに、アセチルアセトン2.60g(25.94mmol)を入れ、これを攪拌しながらチタニウムテトライソプロポキシド5ml(17.59mmol)を加え、さらに酢酸8ml(140.00mmol)を2分間かけて滴下し、チタン溶液を調製した。
ビーカーに水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.36mmol)を加えて完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)10mlを加え、さらに酢酸鉄291mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のチタン溶液を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(3)を得た。
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(3)を加熱かつ攪拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形物残渣を自動乳鉢ですり潰して、11.7gの焼成用粉末(3)を得た。
同様にして得られた12gの焼成用粉末(3)を、ロータリーキルン炉に水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で890℃まで加熱し、890℃で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の金属炭窒酸化物(3)2.08gを得た。
上記2で作製した金属炭窒酸化物(3)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、発電性能の評価を行った。MEA(3)における触媒能、すなわち最大出力密度は、52mW/cm2であった。
実施例3の実験条件および結果を表3、4に記載した。
[実施例4〜7]
第1の金属含有化合物、窒素含有有機化合物および第2の金属含有化合物として表3に記載した化合物を表3に記載した質量で用いたこと以外は、実施例2と同様の手順で金属炭窒酸化物を製造し、その分析を行い、さらに実施例1と同様の方法により、発電性能の評価を行った。
実施例4〜7の実験条件および結果を表3、4に記載した。
[実施例8〜10]
第1の金属含有化合物、窒素含有有機化合物、第2の金属含有化合物、第3の金属含有化合物およびホウ素、りん、イオウから選択された元素およびフッ素を含有する化合物として表3に記載した化合物を表3に記載した質量で用いたこと以外は、実施例3と同様の手順で金属炭窒酸化物を製造し、その分析を行い、さらに実施例1と同様の方法により、発電性能の評価を行った。
実施例8〜10の実験条件および結果を表3、4に記載した。
[実施例11]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化銅2.75g(20.45mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)10ml、酢酸鉄(II)355mg(2.045mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.80mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(11)を得た。
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(11)を加熱かつ撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させ、さらに窒素気流下、300℃で1時間の加熱を行うことにより、塩化物残渣などを除去し、3.56gの焼成用粉末(11)を得た。
同様にして得られた12gの焼成用粉末(11)を、ロータリーキルン炉に水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で890℃まで加熱し、890℃で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の金属炭窒酸化物(11)5.62gを得た。
上記1で作製した金属炭窒酸化物(11)を用いた以外は、実施例2と同様の方法により、発電性能の評価を行った。MEA(11)における触媒能、すなわち最大出力密度は、59mW/cm2であった。
実施例11の実験条件および結果を表3、4に記載した。
[実施例12〜15]
第1の金属含有化合物、窒素含有有機化合物、第2の金属含有化合物およびホウ素、りん、イオウから選択された元素およびフッ素を含有する化合物として表3に記載した化合物を表3に記載した質量で用いたこと以外は、実施例3と同様の手順で金属炭窒酸化物を製造し、その分析を行い、さらに実施例1と同様の方法により、発電性能の評価を行った。
実施例12〜15の実験条件および結果を表3、4に記載した。
[実施例16]
ビーカーに、酢酸58mlを入れ、これを撹拌しながらクロム(III)アセチルアセトナート6.14g(17.54mmol)を加え、クロム溶液(16)を調製した。
チタン溶液(3)に替えてクロム溶液(16)を用いた以外は実施例3と同様の操作を行い、粉末状の金属炭窒酸化物前駆体(16)14.7gを得た。
同様にして得られた12gの金属炭窒酸化物前駆体(16)を、ロータリーキルン炉に水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で890℃まで加熱し、890℃で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の金属炭窒酸化物(16)2.57gを得た。
上記1で作製した金属炭窒酸化物(16)を用いた以外は、実施例2と同様の方法により、発電性能の評価を行った。
実施例16の実験条件および結果を表3、4に記載した。
[実施例17〜20]
第1の金属含有化合物、窒素含有有機化合物、第2の金属含有化合物およびホウ素、りん、イオウから選択された元素およびフッ素を含有する化合物として表3に記載した化合物を表3に記載した質量で用いたこと以外は、実施例16と同様の手順で金属炭窒酸化物を製造し、その分析を行い、さらに実施例1と同様の方法により、発電性能の評価を行った。
実施例17〜20の実験条件および結果を表3、4に記載した。
[参考例1]
1.MEAの作製
カソードとして、調製例1で作製した電極(A)を用いた以外は、実施例1の5と同様にしてMEA(2)を作製した。
なお、電解質膜をカソードおよびアノードで挟む際、前記カソードおよびアノードにおける白金を含む層(a)が前記電解質膜に密着するようにした。
2.単セルの作製
MEA(1)の代わりにMEA(2)を用いた以外は、実施例1の6と同様にして、固体高分子形燃料電池の単セル(2)を作製した。
3.発電性能の評価
単セル(1)の代わりに単セル(2)を用いた以外は、実施例1の7と同様にして、単セル(2)における電流―電圧特性を測定し、最大出力密度を算出した。MEA(2)における発電性能、すなわち最大出力密度は、40mW/cm2であった。
[比較例1]
1.白金を含むインクの調製
Pt担持カーボン(TEC10E60E、田中貴金属工業製)1.2gを純水2.4gとイソプロピルアルコール2.4g(特級、和光純薬工業製)に加え、さらにNAFION(登録商標)を含有する水溶液(NAFION5%水溶液、和光純薬工業製)13gを入れて、超音波分散機(UT−106H型シャープマニファクチャリングシステム社製)で1時間混合することにより、白金を含むインク(3)を調製した。
2.白金を含む層の形成
ガス拡散層(カーボンペーパーTGP−H−060、東レ社製)を、アセトンに30秒間浸漬し、脱脂を行った。乾燥後、10%のポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」とも記す。)水溶液に30秒間浸漬した。室温乾燥後、350℃で1時間加熱することにより、カーボンペーパー内部にPTFEを分散させ、撥水性を持たせたガス拡散層(以下「GDL」とも記す。)を得た。
次に、5cm×5cmの大きさとした前記GDLの表面に、自動スプレー塗布装置(サンエイテック社製)により、80℃で、上記1で調製した白金を含むインク(3)を塗布した。繰り返しスプレー塗布することにより、GDL上に白金を含む層(c)を、白金の単位面積当たりの質量が、0.1mg/cm2となるように形成した。
上記のとおりGDL上に白金を含む層(c)を形成したものを、電極(C)とした。
3.MEAの作製
カソードとして、上記2で作製した電極(C)を用いた以外は、実施例1の5と同様にしてMEA(3)を作製した。
なお、電解質膜をカソードおよびアノードで挟む際、前記アノードにおける白金を含む層(a)および前記カソードにおける白金を含む層(c)が前記電解質膜に密着するようにした。
4.単セルの作製
MEA(1)の代わりにMEA(3)を用いた以外は、実施例1の6と同様にして、固体高分子形燃料電池の単セル(3)を作製した。
5.発電性能の評価
単セル(1)の代わりに単セル(3)を用いた以外は、実施例1の7と同様にして、単セル(3)における電流―電圧特性を測定し、最大出力密度を算出した。MEA(3)における発電性能、すなわち最大出力密度は、5mW/cm2であった。
[比較例2]
Pt担持カーボンの代わりに実施例1で用いた金属炭窒酸化物(1)を用いた以外は、比較例1と同様にして、単セルにおける電流―電圧特性を測定し、最大出力密度を算出した。MEAにおける発電性能、すなわち最大出力密度は、1mW/cm2であった。
[比較例3]
Pt担持カーボンの代わりに実施例2で用いた金属炭窒酸化物(2)を用いた以外は、比較例1と同様にして、単セルにおける電流―電圧特性を測定し、最大出力密度を算出した。MEAにおける発電性能、すなわち最大出力密度は、2mW/cm2であった。
[比較例4]
Pt担持カーボンの代わりに実施例3で用いた金属炭窒酸化物(3)を用いた以外は、比較例1と同様にして、単セルにおける電流―電圧特性を測定し、最大出力密度を算出した。MEAにおける発電性能、すなわち最大出力密度は、3mW/cm2であった。
Figure 0005126864
Figure 0005126864
参考例1および比較例1の結果から、白金の使用量を少なくすると、燃料電池用触媒層の触媒能が低くなり、MEAにおける発電性能が低くなることがわかった。
一方、実施例1で得られた燃料電池用触媒層は、白金の使用量を少なくしているにもかかわらず、金属炭窒酸化物を含む層(I)を有することにより、触媒能に優れ、該燃料電池用触媒層を有するMEAは、発電性能に優れることがわかった。
Figure 0005126864
Figure 0005126864
1 金属炭窒酸化物を含む層(I)
2 白金を含む層(II)
3 ガス拡散層(GDL)
4 電解質膜
5 アノード触媒層
5’ カソード触媒層
11 膜電極接合体(MEA)
12 ガスケット
13 セパレーター
14 集電板
15 ラバーヒーター

Claims (16)

  1. 金属炭窒酸化物を含む層(I)と白金を含む層(II)とを有し、
    前記層(I)における金属炭窒酸化物が、フッ素を含有する金属炭窒酸化物であることを特徴とする燃料電池用触媒層。
  2. 前記層(I)における金属炭窒酸化物と前記層(II)における白金との単位面積当たりの質量比(金属炭窒酸化物/白金)が、2〜500であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用触媒層。
  3. 前記層(II)における白金の単位面積当たりの質量が、0.005〜0.2mg/cm2であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池用触媒層。
  4. 前記層(I)における金属炭窒酸化物を構成する金属元素が、アルミニウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ストロンチウム、イットリウム、スズ、タングステン、セリウム、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層。
  5. 前記層(I)における金属炭窒酸化物を構成する金属元素が、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層。
  6. 前記層(I)における金属炭窒酸化物を構成する金属元素が、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、鉄、ランタン、セリウムおよびサマリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層。
  7. 前記層(I)における金属炭窒酸化物を構成する金属元素が、チタンおよびニオブからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層。
  8. 前記層(I)における金属炭窒酸化物が、ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aならびにフッ素を含有する金属炭窒酸化物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層。
  9. 前記層(I)および層(II)の少なくとも一方の層が、さらに電子伝導性粒子を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層。
  10. 前記電子伝導性粒子が、前記層(II)における白金の担体として用いられていることを特徴とする請求項に記載の燃料電池用触媒層。
  11. 燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有する電極であって、前記燃料電池用触媒層が請求項1〜10のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒層であることを特徴とする電極。
  12. 前記多孔質支持層上に、金属炭窒酸化物を含む層(I)と白金を含む層(II)とがこの順で積層されていることを特徴とする請求項11に記載の電極。
  13. カソードとアノードと前記カソード及び前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソード及び/または前記アノードが請求項11または12に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
  14. 前記電解質膜上に、白金を含む層(II)と金属炭窒酸化物を含む層(I)とがこの順で積層されていることを特徴とする請求項13に記載の膜電極接合体。
  15. 請求項13または14に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
  16. 請求項13または14に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
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