以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として小型の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
まず、図1ないし図12は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は建設機械としてのキャノピ仕様の油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、土砂の掘削作業等を行うために該上部旋回体4の前側に揺動および俯仰動可能に設けられたスイング式の作業装置5とにより構成されている。
また、上部旋回体4は、図2ないし図4に示す如く、後述の旋回フレーム6、エンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13、チルトフロア16、運転席21、遮蔽カバー26等により大略構成されている。
6は上部旋回体4の支持構造体を構成する旋回フレームである。この旋回フレーム6は、図4に示す如く、左,右方向の中間部を前,後方向に延びた平板状の底板6Aと、該底板6Aの上面側に左,右方向に離間して略ハ字状に立設された左,右の縦板6B,6Cと、該各縦板6B,6Cの前端部に設けられ、作業装置5を支持する支持ブラケット6Dと、該支持ブラケット6Dの基端部から左側に延びつつ屈曲して後側に延びた左サイドフレーム6Eと、前記支持ブラケット6Dの基端部から右側に延びつつ屈曲して後側に延びた右サイドフレーム6Fと、前部左寄りに位置して左サイドフレーム6Eの上方を左,右方向に延びて設けられ、旋回フレーム6の前側位置となる前梁6Gと、該前梁6Gの左端部から後側に延びた左梁6Hとにより大略構成されている。また、前梁6G、左梁6H等には、後述する遮蔽カバー26の周囲が取付け、取外し可能に取付けられる。
7は旋回フレーム6の後側に搭載された搭載機器としてのエンジンで、該エンジン7は、上部旋回体4に対して左,右方向に延在する横置き状態に配置されている。また、エンジン7の左側には、下部走行体2、作業装置5等のアクチュエータに向け圧油を吐出する油圧ポンプ8が取付けられている。一方、エンジン7の右側には、ラジエータ、オイルクーラ等からなる熱交換器9が配設されている。そして、エンジン7は、その前側と上側とが後述する遮蔽カバー26の縦遮蔽板部29とによって覆われている。
また、エンジン7には、中央前側の上部に位置して排気管7Aが設けられ、この排気管7Aの先端部には、消音装置、排気ガス浄化装置等の排気ガス後処理装置7Bが接続されている。一方、エンジン7の右前側の上部位置には発電用のオルタネータ(発電機)7Cが設けられ、該オルタネータ7Cは、後述する縦遮蔽板部29の蓋体29Jを取外すことにより、上作業用開口29Hを介して点検作業、整備作業等のメンテナンス作業を行うことができる。さらに、エンジン7の中央前側の下部位置には、該エンジン7を始動するためのスタータ装置7Dが設けられ、該スタータ装置7Dは、縦遮蔽板部29の蓋体29Gを取外すことにより、下作業用開口29Fを介してメンテナンス作業を行うことができる。
10は熱交換器9の前側に位置して旋回フレーム6の右側に設けられた作動油タンクで、該作動油タンク10は、油圧ポンプ8に供給する作動油を貯えるものである。また、11は該作動油タンク10の前側に配設された燃料タンクで、該燃料タンク11は、エンジン7に供給する燃料を貯えるものである。
12は旋回フレーム6の底板6Aの中央付近に設けられた油圧機器としての旋回モータで、該旋回モータ12は、前述した旋回装置3の駆動源となるものである。また、旋回モータ12は、後述する前遮蔽板部27に覆われており、蓋体27Dを取外すことにより、右作業用開口27Bを介してメンテナンス作業を行うことができる。
13は左縦板6Bの左側に位置して旋回フレーム6上に搭載された油圧機器としてのコントロールバルブである。このコントロールバルブ13は、複数個の油圧パイロット式スプール弁により形成されている。また、コントロールバルブ13には複数本の油圧ホース13Aが接続されている。そして、コントロールバルブ13および各油圧ホース13Aは、前遮蔽板部27の蓋体27Cを取外すことにより、左作業用開口27Aを介してメンテナンス作業を行うことができる。
14はエンジン7の後側に位置して旋回フレーム6の後端部に取付けられたカウンタウエイトである。このカウンタウエイト14は、作業装置5との重量バランスをとるもので、左,右方向に円弧状に延びる凸湾曲形状をなしている。また、カウンタウエイト14は、図6に示すように、後述するチルトフロア16の建屋取付部19および遮蔽カバー26の縦遮蔽板部29を取付けるための取付ベースとなっている。
15はチルトフロア16の周囲に設けられた外装カバーで、該外装カバー15は、図2、図7等に示すように、カウンタウエイト14の左端側から前方に延びた左側面カバー15Aと、該左側面カバー15Aの先端から旋回フレーム6の周囲を覆うように設けられた左スカートカバー15Bと、カウンタウエイト14の右端側から前方に延びた右側面カバー(図示せず)と、該右側面カバーの先端から旋回フレーム6の周囲を覆うように設けられた右スカートカバー15Cと、後側に位置して前記各側面カバー15A間に開閉可能に設けられエンジン7を後側から覆う後部カバー15Dと、右側に位置して作動油タンク10等を覆った開閉可能なタンクカバー15Eとにより大略構成されている。
16は旋回フレーム6上に設けられたチルトフロアを示している。このチルトフロア16は、図3に示すように、旋回フレーム6の前側を支点として旋回フレーム6上で傾転可能に設けられている。そして、チルトフロア16は、図6に示すように、その前側位置が後述のフロア支持機構20を介して旋回フレーム6の前側位置となる前梁6Gに支持され、後側位置がカウンタウエイト14上に防振マウント(図示せず)を介して離脱可能に取付けられる。これにより、チルトフロア16は、エンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13等よりも上側に配設され、これらの搭載機器を覆っている。
また、チルトフロア16は、図5、図6等に示す如く、前側に位置して後述の運転席21に着座したオペレータの足乗せ場となる足乗せ部17と、該足乗せ部17の後部から立上がりエンジン7の前側から上側を覆った立上り部18と、該立上り部18の上端部から後側に延びて設けられた建屋取付部19とにより構成されている。
ここで、足乗せ部17の前側位置には、後述の走行操作レバー・ペダル23等を取付けるためのレバー・ペダル取付板17Aが左,右方向に延びて設けられ、該レバー・ペダル取付板17Aの前側には前側ブラケット17Bが設けられている。また、立上り部18は、足乗せ部17の後側から上側に延びエンジン7の前側に位置する前面板18Aと、該前面板18Aの上側から後側に延びた上面板をなす運転席取付板18Bとにより大略構成されている。
また、チルトフロア16は、旋回フレーム6に搭載された搭載機器、例えばエンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13と後述の運転席21に着座したオペレータとの間の隔壁となっている。そして、チルトフロア16は、後述の遮蔽カバー26と協働して、エンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13の熱や騒音がオペレータ側に伝わり難くすることができる。
20は旋回フレーム6の前梁6Gと足乗せ部17の前側ブラケット17Bとの間に左,右に離間して設けられたフロア支持機構である(図6中に片方のみ図示)。この左,右のフロア支持機構20は、チルトフロア16の前側位置で左,右方向に延びる軸線を回動軸線とし、チルトフロア16の前側を旋回フレーム6に回動(傾転)可能に取付けるものである。これにより、チルトフロア16は、図1に示す如く、前側ないし上側となる矢示A方向(チルトアップ)、後側ないし下側となる矢示B方向(チルトダウン)に傾転可能となっている。
21はチルトフロア16のうち立上り部18の運転席取付板18B上に設けられた運転席で(図1等参照)、該運転席21は、オペレータが着座するものである。また、運転席21の左,右両側には、図1、図2等に示すように、旋回装置3、作業装置5等を操作するための作業操作レバー22が配設されている。また、運転席21の前方となる足乗せ部17のレバー・ペダル取付板17Aには、下部走行体2を走行させるときに手動操作または足踏み操作によって操作する走行操作レバー・ペダル23が設けられている。さらに、走行操作レバー・ペダル23の右側には、オペレータに対面するようにモニタ装置24が設けられている。
25はチルトフロア16に設けられた建屋としてのキャノピで、該キャノピ25は、運転席21の上側を覆うものである。このキャノピ25は、図1に示す如く、左,右の前ピラー25A、左,右の後ピラー25B(いずれも左側のみ図示)およびルーフ部25Cにより構成されている。そして、キャノピ25は、その前側部分がチルトフロア16の足乗せ部17の前側ブラケット17Bに取付けられ、後側部分が建屋取付部19に取付けられている。
次に、チルトフロア16と別個に旋回フレーム6側に設けられた第1の実施の形態による遮蔽カバー26の構成について説明する。
即ち、26はチルトフロア16の下側に位置して旋回フレーム6に設けられた遮蔽カバーを示している。この遮蔽カバー26は、図6に示すように、搭載機器を構成するエンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13等を覆う上側に位置し、該エンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13等とチルトフロア16との間に配設されている。また、遮蔽カバー26は、旋回フレーム6および該旋回フレーム6側の支持構造体となるカウンタウエイト14に対して取付け、取外し可能に取付けられている。
そして、第1の実施の形態による遮蔽カバー26は、搭載機器を構成するエンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13等を、図7に示すように隙間なく覆うことにより、これらが発する熱や騒音を遮るものである。また、遮蔽カバー26は、図9、図10に示す如く、金属製の板体から形成され、後述の前遮蔽板部27と縦遮蔽板部29との2部材から構成されている。
27は遮蔽カバー26の前側部分を形成する前遮蔽板部で、該前遮蔽板部27は、油圧機器としての旋回モータ12、コントロールバルブ13等の上側を隙間なく覆うものである。また、前遮蔽板部27は、前側に位置してチルトフロア16の足乗せ部17に対面している。そして、前遮蔽板部27は、略長方形状の金属板からなり、図7に示すように、その周囲が旋回フレーム6の前梁6G、左梁6H、その他旋回フレーム6に設けられた支持構造体に対し、複数本のボルト28を用いて取付け、取外し可能に取付けられている。
また、前遮蔽板部27には、図8に示すように、コントロールバルブ13の上側に位置して長方形状の左作業用開口27Aが形成され、旋回モータ12の上側に位置して長方形状の右作業用開口27Bが形成されている。これらの開口27A,27Bは、点検作業、整備作業等のメンテナンス作業を行う必要がある部位だけを露出させるもので、例えばコントロールバルブ13,旋回モータ12のメンテナンス作業を行うための開口となっている。
さらに、前遮蔽板部27には、図12等に示すように、左作業用開口27Aを閉塞する蓋体27Cが設けられ、該蓋体27Cは、複数本のボルト28を用いて左作業用開口27Aの周囲に取付け、取外し可能に取付けられている。また、前遮蔽板部27には、図9、図11に示すように、右作業用開口27Bを閉塞する蓋体27Dが設けられ、該蓋体27Dは、複数本のボルト28を用いて取付け、取外し可能に取付けられている。
29は遮蔽カバー26の後側部分を形成する縦遮蔽板部である。この縦遮蔽板部29は、図6ないし図9に示すように、前遮蔽板部27の後部から立上った垂直板29Aと、該垂直板29Aの上部から後側に延びた水平板29Bと、該水平板29Bの後部から斜め上側に延びた背面板29Cと、該背面板29Cの上部から後側に延びた後部取付板29Dと、前記水平板29Bの右側に位置して前記垂直板29Aの後部と後部取付板29Dの前部とに亘って斜めに延びた傾斜板29Eとにより大略構成されている。
また、垂直板29Aは、エンジン7の前側を覆うもので、エンジン7のスタータ装置7Dに対応する中央下側位置には、左,右方向に長尺な長方形状の下作業用開口29Fが形成されている。また、垂直板29Aには、下作業用開口29Fを閉塞する蓋体29Gが設けられ、該蓋体29Gは、複数本のボルト28を用いて下作業用開口29Fの周囲に取付け、取外し可能に取付けられている。
一方、水平板29Bと傾斜板29Eは、エンジン7の上側を覆うもので、エンジン7のオルタネータ7Cに対応する傾斜板29Eには、前,後方向に長尺な長方形状の上作業用開口29Hが形成されている。また、傾斜板29Eには、上作業用開口29Hを閉塞する蓋体29Jが設けられ、該蓋体29Jは、複数本のボルト28を用いて上作業用開口29Hの周囲に取付け、取外し可能に取付けられている。
そして、縦遮蔽板部29は、前側に位置する垂直板29Aの下部が前遮蔽板部27の後部に一体的にボルト止めされている。また、縦遮蔽板部29の後側に位置する後部取付板29Dは、カウンタウエイト14の上部に取付け、取外し可能にボルト止めされている。
このように、旋回フレーム6側に固定的に取付けられた遮蔽カバー26は、前側の前遮蔽板部27によって旋回モータ12、コントロールバルブ13を隙間なく覆うことができる。また、後側の縦遮蔽板部29によってエンジン7、油圧ポンプ8を隙間なく覆うことができる。その一方で、点検作業、整備作業等のメンテナンス作業を必要とする機器に対応する位置には、常時は蓋体27C,27D,29G,29Jによって閉塞された作業用開口27A,27B,29F,29Hを設けているから、蓋体27C,27D,29G,29Jを取外せば通常のメンテナンス作業を行うことができる。
30は旋回モータ12、コントロールバルブ13と対面する前遮蔽板部27の下面側に設けられた断熱、遮音用の横シート部材である。この横シート部材30は、前遮蔽板部27の下面を覆うように設けられている。そして、横シート部材30は、旋回モータ12、コントロールバルブ13が発生する熱や騒音を吸収することにより、この熱や騒音がオペレータや周囲の作業者に伝わらないように遮るものである。
また、31はエンジン7と対面する縦遮蔽板部29の後面側および下面側に設けられた縦シート部材である。この縦シート部材31は、縦遮蔽板部29の垂直板29Aの後面と水平板29Bの下面を覆うように設けられている。そして、縦シート部材31は、エンジン7が発生する熱や騒音を吸収することにより、この熱や騒音がオペレータや周囲の作業者に伝わらないように遮るものである。
32はチルトフロア16と遮蔽カバー26との間に形成された空気層である(図6参照)。この空気層32は、チルトフロア16を遮蔽カバー26上に下ろした(チルトダウン)ときに、このチルトフロア16と遮蔽カバー26とが二重の隔壁を形成することにより、これらの間に形成される空間である。そして、空気層32は、断熱、遮音機能を有しているから、エンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13等が発生する熱や騒音を遮蔽することができる。
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
まず、運転席21に着座したオペレータは、走行操作レバー・ペダル23を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。また、左,右の作業操作レバー22を操作することにより、旋回装置3と作業装置5を駆動して土砂の掘削作業等を行うことができる。
ここで、油圧ショベル1の走行時、作業時には、旋回フレーム6の後側に設けたエンジン7が運転状態にあり、該エンジン7が発熱し、また騒音(振動)を発生する。同様に、旋回モータ12、コントロールバルブ13も作動油の温度上昇によって発熱し、動作音を発生する。
この場合、運転席21を搭載したチルトフロア16の下側には、該チルトフロア16とは別個に遮蔽カバー26を設けることにより、この遮蔽カバー26を旋回フレーム6に対して隙間なく取付けることができる。また、チルトフロア16と遮蔽カバー26とによって二重隔壁を形成できる。また、チルトフロア16と遮蔽カバー26との間に熱や振動が伝わり難い空気層32を形成できる。さらに、遮蔽カバー26には遮音、断熱用のシート部材30,31を設けている。従って、エンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13等が発生する熱や騒音は、遮蔽カバー26の密閉構造、断熱、遮音用のシート部材30,31、熱や音が伝わり難い空気層32によって遮ることができる。
次に、エンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13等のメンテナンス作業を行う場合について説明する。
この場合には、チルトフロア16の建屋取付部19をカウンタウエイト14に取付けているボルト等を取外し、傾転機構(図示せず)によってチルトフロア16等を前側のフロア支持機構20を支点として矢示A方向にチルトアップする(図3の状態)。
これにより、遮蔽カバー26が露出するから、エンジン7のオルタネータ7Cにメンテナンス作業を施す場合には、図8に示すように、ボルト28を緩めて縦遮蔽板部29の蓋体29Jを取外す。これにより、上作業用開口29Hを介してオルタネータ7Cにメンテナンス作業を施すことができる。また、エンジン7のスタータ装置7Dは、縦遮蔽板部29の蓋体29Gを取外すことにより、下作業用開口29Fを介してメンテナンス作業を施すことができる。
一方、旋回モータ12は、前遮蔽板部27の蓋体27Dを取外すことにより、右作業用開口27Bを介してメンテナンス作業を施すことができる。また、コントロールバルブ13は、前遮蔽板部27の蓋体27Cを取外すことにより、左作業用開口27Aを介してメンテナンス作業を施すことができる。
ここで、エンジン7のオルタネータ7C、スタータ装置7D、旋回モータ12、コントロールバルブ13のメンテナンス作業を行う場合には、必要な部分だけを露出させているから、高温になるエンジン7の排気管7A等は、作業者が触れないように、遮蔽カバー26によって覆ったままの状態にすることができる。
さらに、エンジン7のオルタネータ7C、スタータ装置7D、旋回モータ12、コントロールバルブ13の交換作業、その他の機器のメンテナンス作業、交換作業等は、各作業用開口27A,27B,29F,29Hだけでは行うことが難しい。そこで、遮蔽カバー26を旋回フレーム6、カウンタウエイト14に取付けている各ボルト28を緩めることにより、該遮蔽カバー26を取外す。これにより、エンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13を広く開放することができ、機器の交換作業、奥まった位置に配設された機器のメンテナンス作業等を行うことができる。
そして、各種作業が終了したら、傾転機構によってチルトフロア16等を矢示B方向にチルトダウンさせ、チルトフロア16の建屋取付部19をカウンタウエイト14に固定することにより、メンテナンス作業を終了することができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、旋回フレーム6には、エンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13等の搭載機器とチルトフロア16との間に位置し、前記各搭載機器を覆う断熱、遮音用の遮蔽カバー26を設ける構成としている。この場合、チルトフロア16と別個に設けた遮蔽カバー26は、傾転動作を許すための隙間を設ける必要がないから、旋回フレーム6上のエンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13を隙間なく覆うことができる。
この結果、エンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13等が発生する熱や騒音が外部に漏れ出すのを防止でき、オペレータや周囲の作業者の作業環境を良好にすることができる。
また、チルトフロア16を遮蔽カバー26上に下ろした状態では、このチルトフロア16と遮蔽カバー26とによって二重の隔壁を形成することができ、しかも、チルトフロア16と遮蔽カバー26との間には空気層32を形成することができる。これにより、二重隔壁と空気層32とによってエンジン7、コントロールバルブ13等が発生する熱や騒音を確実に遮蔽することができる。
一方、エンジン7のオルタネータ7C、スタータ装置7D、旋回モータ12、コントロールバルブ13等の搭載機器のメンテナンス作業を行う場合には、遮蔽カバー26の各作業用開口27A,27B,29F,29Hを開口させることにより、各搭載機器のメンテナンス作業を行うことができる。
しかも、メンテナンス作業を行うときには、各作業用開口27A,27B,29F,29Hによって必要な部分だけを開放することができるから、高温になるエンジン7の排気管7A等は覆い隠したままの状態とすることができる。この結果、エンジン7の高温部を覆うのに必要であった保護カバーを省略することができ、部品点数を削減して組立作業性を向上することができる。
さらに、遮蔽カバー26は、旋回フレーム6に対しボルト28を用いて取付け、取外し可能に取付けているから、大掛りな交換作業、奥まった位置に配置された機器のメンテナンス作業を行う場合には、遮蔽カバー26全体を取外すことができる。これにより、エンジン7、旋回モータ12、コントロールバルブ13等を広く開放することができ、機器の交換作業、奥まった位置に配設された機器のメンテナンス作業等を行うことができる。
次に、図13は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、遮蔽カバーの蓋体には、作業用開口の内縁部に係合する爪部を設け、該蓋体は、作業用開口の内縁部に爪部を係合させた状態で、締結部材を用いて遮蔽カバーに固定する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図13において、41は第2の実施の形態による前遮蔽板部で、該前遮蔽板部41は、左側の作業用開口41A、蓋体41B、右側の作業用開口、蓋体(いずれも図示せず)および少なくとも1本のボルト42とにより構成されている。
ここで、前遮蔽板部41の蓋体41Bには、左作業用開口41Aの内縁部に係合する爪部41B1が設けられている。これにより、蓋体41Bの長さ方向の一方は、爪部41B1を用いて左作業用開口41Aの内縁部に係合させることができるから、長さ方向の他方を締結部材としてのボルト42を用いて固定するだけで、前遮蔽板部41に蓋体41Bを取付けることができる。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、前遮蔽板部41の蓋体41Bには、その長さ方向の一方に左作業用開口41Aの内縁部に係合する爪部41B1を設ける構成とした。従って、蓋体41Bの長さ方向の他方は、少なくとも1本のボルト42を用いて固定することができ、締結作業を省略して組立作業性を向上することができる。また、この構成は、右作業用開口、下作業用開口、上作業用開口にも同様に適用することができるものである。
なお、第1の実施の形態では、遮蔽カバー26を、金属材料からなる2つの前遮蔽板部27と縦遮蔽板部29とにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図14に示す変形例のように、樹脂材料を用いて遮蔽カバー51を形成してもよい。この場合には、遮蔽カバー51は、前側に位置して足乗せ部17に対面しコントロールバルブ13等を覆う前遮蔽板部52と、立上り部18に対面して立上がりエンジン7の一部を覆う縦遮蔽板53とを一体的に形成することができる。また、縦遮蔽板53は、前側を覆う垂直板53Aと、該垂直板53Aの上部から後側に延びた水平板53Bと、背面板53Cと、後部取付板53Dと、傾斜板53Eとにより形成すればよい。また、各蓋体53F,53G,53H,53Jも樹脂材料を用いて形成することができる。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
また、第1の実施の形態では、チルトフロア16を、前側の足乗せ部17と、該足乗せ部17の後部から立上がってエンジン7の前側から上側を覆った立上り部18とによりステップ状に形成し、立上り部18の運転席取付板18B上に運転席21を取付ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば足乗せ部を後側に延ばして形成することにより、この足乗せ部の後側寄り位置に運転席支持台を設け、該運転席支持台上に運転席を取付ける構成としてもよい。
また、第1の実施の形態では、定期的な点検作業、整備作業等のメンテナンス作業を必要とする幾つかの搭載機器を例示し、その具体例として、遮蔽カバー26の前遮蔽板部27には、コントロールバルブ13にメンテナンス作業を施すための左作業用開口27Aと、旋回モータ12にメンテナンス作業を施すための右作業用開口27Bとを設け、縦遮蔽板部29には、エンジン7のスタータ装置7Dにメンテナンス作業を施すための下作業用開口29Fと、オルタネータ7Cにメンテナンス作業を施すための上作業用開口29Hとを設けた場合を例示した。
しかし、本発明はこれに限るものではなく、上述したコントロールバルブ13、旋回モータ12、エンジン7のスタータ装置7D、オルタネータ7Cのいずれか1つに対応する開口を設ける構成としてもよい。また、これら以外の搭載機器にメンテナンス作業を施すための他の開口を設ける構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
一方、各実施の形態では、建設機械として複数本のピラー25A,25Bとルーフ部25Cによって運転席21の上側を覆うキャノピ25を備えたキャノピ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば運転席の周囲と上側を覆うキャブを備えたキャブ式の油圧ショベルに適用してもよい。
さらに、各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン等のエンジン、油圧機器を備えた他の建設機械にも広く適用することができる。