JP3985918B2 - 作業車両における運転席へのエンジン放射熱遮断構造 - Google Patents

作業車両における運転席へのエンジン放射熱遮断構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、後端小旋回形バックホー等、小型の作業車両における運転席へのエンジン放射熱遮断構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
バックホー等の小型の作業車両にあってはエンジンルームの一部を構成する隔壁上に運転席が配置されている。このため、エンジンより放射される熱が隔壁を介して運転席へ伝達されてしまい、運転席での居住性が悪いという問題がある。これは上記隔壁のエンジンに対向する側面に断(遮)熱材を張り付けることにより少しは改善されるが十分ではない。
【0003】
このことに対して、上記隔壁を2重構成にし、その内側を空気が循環する空気室とすることにより、隔壁に断熱効果を持たせることが考えられる。
【0004】
実願平2−85627号(実開平4−42420号)には上記隔壁を2重構成にした空気室を吸気消音器として用い、この消音器を経由してエンジンの吸気装置に空気が流れるようにした構成が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術にあっては、隔壁に構成した空気室をエアークリーナの消音室として用いており、エアークリーナへ吸引される空気の全量が通るようになっている。このため、消音効果を出すために、この空気室の容積を所定の大きさにしなければならず、隔壁としての厚さが大きくなり、運転席とエンジンとを近づけて車両の前後方向の大きさを小さくしようとすることに対する不具合となっている。
【0006】
また、上記隔壁はエンジンから放射される熱にて昇温されることにより、これに設けられた空気室を通る空気も、隔壁に断熱材を設けても昇温されてしまう。上記従来のものにあっては、空気室を通る空気の全量を吸気装置からエンジンへ吸引するようになっているため、この空気室を通る空気の昇温は大きな問題となっている。
【0007】
本発明は上記のことにかんがみなされたもので、運転席とエンジンとの間に位置してエンジンルームの前側壁となる隔壁にエンジンのエアークリーナに接続された空気室を運転席側への伝熱遮断を目的として設けた作業車両における運転席へのエンジン放射熱遮断構造において、この空気室内で暖められた空気がエンジンに悪影響を与えることがなく、しかも、上記空気室を空気による断熱作用を得るに足るだけの小さな容積とすることができて、これを十分薄くすることができるようにした作業車両におけるエンジンの放射熱遮断構造を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、運転席とエンジンとの間に配置される隔壁の運転席の背面に対向する背板部に、一側部に空気取入口を有する断熱用空気室を層状に設け、またエンジンルームの一側部に補助空気室を設け、この補助空気室に、上記断熱用空気室の他側部に接続した空気出口管と、エンジンのエアークリーナに連通する吸気管を開口した構成となっている。
【0009】
この発明では、エンジンの運転によるエアークリーナからの吸気作用により補助空気室を介して断熱用空気室内に空気流が生じる。このときの断熱用空気室を流通する空気はエンジンからの放射熱によって昇温されるが、この断熱用空気室から流出した空気は一度補助空気室内に入り、ここで放冷されてからエアークリーナに吸入されるので、温度が高い状態の空気がエアークリーナへ吸入することがない。
【0010】
隔壁の背板部は断熱用空気室にて十分断熱効果を発揮することができ、しかもこの断熱用空気室を通って昇温された空気による悪影響をエンジンに与えることがない。
【0011】
また、断熱用空気室を流れる空気量は、ここでの断熱作用を得るに足る量でよいことにより、この断熱用空気室の容積が小さくてよく、従って、これの厚さを十分薄くでき、断熱空気室を有する隔壁自体の厚さを薄くできて、車両の前後方向の小型化に貢献できる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、運転席とエンジンとの間に配置される隔壁の運転席の背面に対向する背板部に、一側部に空気取入口を有する断熱用空気室を層状に設け、この断熱用空気室の他側部に接続した空気出口管を、先端を外気に開口したエンジンのエアークリーナの吸気管の途中に接続した構成となっている。
【0013】
この発明では、隔壁の断熱用空気室からの空気はエアークリーナの吸気管の途中から、この吸気管よりエアークリーナへ吸入されるが、この断熱用空気室からの空気量に比較して、エアークリーナの吸気管にて吸入される外気量が極めて多いことにより、断熱用空気室にて昇温された空気による悪影響をエンジン側へ与えることがない。この発明によれば、断熱空気室内の空気の流れをスムーズにすることができ、容積が小さく、かつ薄い空気室であっても断熱効果を向上することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、上記第1、第2の発明において、運転席を覆う運転室を搭載し、この運転室の後部に断熱用空気室を層状に設けた隔壁を一体状に構成した。
【0015】
この発明によれば、運転室内へエンジンより放射される熱が伝達されることがない。
【0016】
さらに、請求項4に記載の発明は、上記第3の発明において、隔壁の断熱用空気室の一側部に設ける空気取入口を運転室の外側に開口したことにより、運転室を用いた場合における隔壁の断熱用空気層への流入空気に、少なくとも運転室内より温度が低い外気を用いることができ、運転室を搭載した時における断熱用空気室による断熱効果の低減を防止できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施しようとする作業車両の一例である小型のバックホーを示すものである。このバックホーは履帯式の走行装置1上に旋回フレーム2が旋回可能に搭載されており、この旋回フレーム2の前端部に、ブーム3、アーム4、バケット5及びこれらを起伏作動する各油圧シリンダ6,7,8等からなる作業機9がスイングブラケット10を介して左右方向にスイング可能に設けられている。
【0018】
また旋回フレーム2上には操縦装置11、運転席12、エンジン13、キャノピ14が搭載されており、エンジン13はエンジンルーム15に設置されている。そしてこのエンジンルーム15の前側壁は運転席12とエンジン13との間の空間を仕切る隔壁16となっている。なおこのエンジンルーム15の他の部分はボンネット17等にて構成されている。
【0019】
上記隔壁16は図2、図3に示すようになっていて、その形状は旋回フレーム2上に搭載される各部材に対応した形状、例えば運転席12の支持台12aを据え付けする部分を切り欠いた切り欠き18、運転席12の右側に設けられた電装装置等をカバーするカバー部19、ボンネットに連結する頂部20に連結する左右の脚部21a,21b、運転席12の背面に対向する背板部22等を有して板金構成となっている。上記左右の脚部21a,21bの下端部は運転席床に連結されるようになっている。
【0020】
そしてこの隔壁16の背板部22は略全面にわたって2重構成になっていて、層状の断熱用空気室23となっている。この2重構成による断熱用空気室23の層厚方向の寸法Dはこの中を空気が流通するに足るだけの寸法、例えば15mm程度と小さくしてある。
【0021】
上記断熱用空気室23の一側端部は、隔壁16の裏側に設けたダクト24を介して左側の脚部21aの前面に設けた空気取入口25に連通してある。また断熱用空気室23の他側端部は、隔壁16の右側に膨出させて設けたダクト26に連通してあり、このダクト26に、隔壁16の側方へ向けて開口した空気出口管27が接続されている。
【0022】
上記エンジン13は右側に向けてラジエータが配置される横向きに搭載されており、これの上部にエアークリーナ28が配置されている。また、旋回フレーム2の中心に対して後右側のボンネット17内には、エンジンルーム15から仕切り壁29にて仕切られた補助空気室30が形成されている。この補助空気室30は上記したようにエンジンルーム15及び外気からは仕切られていて密室状になっている。
【0023】
そしてこの補助空気室30に上記エアークリーナ28に設けた吸気管32と、上記隔壁16に設けた断熱用空気室23に連通する空気出口管27とが接続開口されている。この吸気管32と出口管27は補助空気室30のたがいに離間した位置に入り込んだ状態で開口されている。
【0024】
上記構成において、エンジン13が運転されることによりエンジン13のエアークリーナ28への吸気は吸気管32にて補助空気室30から吸引される。これにより、補助空気室30は負圧になり、断熱用空気室23内の空気流が吸引加速されて開口された空気出口管27からの空気が補助空気室30内に流入される。
【0025】
従って、上記空気出口管27に接続された断熱用空気室23に空気流が生じ、空気取入口25から吸入された空気が断熱用空気室23内を流れて上記補助空気室30内に流出される。これにより断熱用空気室23にはエンジン13の運転時には、常時外気が流れ込み、断熱効果が維持される。
【0026】
このときの断熱用空気室23を流れる空気量は、補助空気室30内の負圧の程度によって変り、補助空気室30にある隙間からの補助空気室30への外気の流入量が少ない場合には、上記負圧が大きくなって断熱用空気室23を流れる空気量が多くなる。また、断熱用空気室23の空気出口管27の開口先端と、エアークリーナ28の吸気管32の開口先端との間隔によっても上記断熱空気室23を流れる空気の量が変えられる。すなわち、空気出口管27の開口端をエアークリーナ28の吸気管32の開口端に近い位置に配置することにより、吸気管32による吸引力が空気出口管27に作用して、空気出口管27から空気が多く吸気管32へ吸引されて上記断熱用空気室23を流れる空気量は多くなる。
【0027】
上記作用により断熱用空気室23で暖められた空気が補助空気室30内に流入するが、この断熱用空気室23に接続された空気出口管27と上記エアークリーナ28の吸気管32の開口位置が補助空気室30内において離間されているため、補助空気室23に滞留する温度の低い空気と混合されて温度が低下した状態でエアークリーナ28の吸気管32へ吸入されることになり、エンジン13の吸気に対して上記断熱用空気室23の空気による悪影響を与えることがない。
【0028】
他の実施の形態として、図5に示すように、補助空気室を設けずに、吸気管32を直接ボンネット17の通気穴31に対向させて外気を吸入するようにし、この吸気管32の途中に上記断熱用空気室23の出口管27の出口を直接接続してもよい。
【0029】
この実施の形態では、吸気管32を大量に流れる吸気の負圧が直接空気出口管27の出口に作用するので断熱用空気室23内の空気の流れがスムーズに行われて断熱効果が向上される。なお、この場合、吸気管32に絞り32aを設けて空気出口管27内の空気の吸引流れを生じさせることが必要である。
【0030】
上記実施の形態では、キャノピ14を用いて、運転席12は外気に開放されている例を示したもので、断熱用空気室23の空気入口25を隔壁16の左側の脚部21aの前面に設けた例を示したが、旋回フレーム2に図6に示すような運転室(キャビン)33を搭載して運転席12をこの運転室33内に位置するようにした場合、上記実施の形態では断熱用空気室23の空気入口25が運転室内に開口して、断熱用空気室23へは運転室内のある程度暖められた空気を吸引することになる不具合が生じる。
【0031】
このため、運転室33を搭載する車両の場合は上記入口25の代りに、図6に示すように、断熱用空気室23の背面側にダクト34を連設し、これをボンネット17の背面側に開口した空気取入口に接続し、この空気取入口から外気を吸入するようにする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施しようとする小型のバックホーを示す側面図である。
【図2】本発明の要部を示す断面図である。
【図3】本発明の要部を示す斜視図である。
【図4】本発明の要部を示す断平面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を示す断平面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…走行装置
2…旋回フレーム
3…ブーム
4…アーム
5…バケット
6,7,8…油圧シリンダ
9…作業機
10…スイングブラケット
11…操縦装置
12…運転席
12a…支持台
13…エンジン
14…キャノピ
15…エンジンルーム
16…隔壁
17…ボンネット
18…切り欠き
19…カバー部
20…頂部
21a,21b…脚部
22…背板部
23…断熱用空気室
24,26,34…ダクト
25…空気取入口
27…空気出口管
28…エアークリーナ
29…仕切り壁
30…補助空気室
31…通気穴
32…吸気管
32a…絞り
33…運転室

Claims (4)

  1. 運転席(12)とエンジン(13)との間に配置される隔壁(16)の運転席(12)の背面に対向する背板部(22)に、一側部に空気取入口(25)を有する断熱用空気室(23)を層状に設け、またエンジンルーム(15)の一側部に補助空気室(30)を設け、この補助空気室(30)に、上記断熱用空気室(23)の他側部に接続した空気出口管(27)と、エンジン(13)のエアークリーナ(28)に連通する吸気管(32)を開口したことを特徴とする作業車両における運転席へのエンジン放射熱遮断構造。
  2. 運転席(12)とエンジン(13)との間に配置される隔壁(16)の運転席(12)の背面に対向する背板部(22)に、一側部に空気取入口(25)を有する断熱用空気室(23)を層状に設け、この断熱用空気室(23)の他側部に接続した空気出口管(27)を、先端を外気に開口したエンジン(13)のエアークリーナ(28)の吸気管(32)の途中に接続してなることを特徴とする作業車両における運転席へのエンジン放射熱遮断構造。
  3. 運転席(12)を覆う運転室(33)を搭載し、この運転室(33)の後部に断熱用空気室(23)を層状に設けた隔壁(16)を一体状に構成したことを特徴とする請求項1または2記載の作業車両における運転席へのエンジン放射熱遮断構造。
  4. 隔壁(16)の断熱用空気室(23)の一側部に設ける空気取入口(25)を運転室(33)の外側に開口したことを特徴とする請求項3記載の作業車両における運転席へのエンジン放射熱遮断構造。
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