JP5122668B2 - 合板用接着剤組成物、合板の製造方法及び合板 - Google Patents
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Description
本実施形態で使用可能なレゾール型フェノール樹脂水溶液は特に限定されない。一般に、接着剤用として工業的に製造、販売されているレゾール型フェノール樹脂水溶液を特に限定することなく使用することができる。そのようなレゾール型フェノール樹脂水溶液は、一般に、後述する実施例の合成例に示すように、主として、フェノール類とアルデヒド類とを水系で水酸化ナトリウム等による強アルカリ性条件下で加熱反応させて製造されるものである。これらのフェノール樹脂水溶液は、一般的に、水系溶媒に樹脂分(固形分、不揮発分)が40〜50質量%含まれた、粘性で、強アルカリ性の液体である。
本実施形態で使用可能なアカシア樹皮粉末は特に限定されない。例えば、アカシアマンギューム樹皮、アカシアハイブリッド樹皮、モリシマアカシア樹皮等の粉末が挙げられる。これらのうちでは、アカシアマンギューム樹皮の粉末が好ましい。
本実施形態で使用可能な無機充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、珪藻土、カオリン、石膏、クレー、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらのうちでは、接着剤組成物の硬化物(すなわち合板となった後の接着剤層)の強度や硬度、及び経済性の観点から、炭酸カルシウムが好ましい。
本実施形態において、レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対して10〜50質量部と従来の合板用接着剤組成物に比べて相対的に多量に使用する水としては、イオン交換水が好ましい。接着剤組成物を含水率が通常あるいは相対的に低い単板(例えば10質量%未満、例えば8質量%等)に適用する場合は、パンク発生率抑制のため、水添加量はレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対して25〜50質量部が好ましく、含水率が相対的に高い単板(例えば10質量%以上、例えば10〜17質量%等)に適用する場合は、パンク発生率抑制のため、水添加量はレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対して10〜25質量部が好ましいことが見出された。ただし、水添加量が10〜25質量部の接着剤組成物を含水率が通常あるいは相対的に低い単板に適用しても構わない。また、水添加量が10〜50質量部の範囲にある接着剤組成物であれば、状況に応じて、単板の含水率に限定されず、含水率が通常あるいは相対的に低い単板に適用することもできるし、含水率が相対的に高い単板に適用することもできる。
本発明者等は、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液に水を加え、この希釈溶液にアカシア樹皮粉末を加えると、希釈溶液の粘度が塗布するのに適した粘度までやや上昇し、硬化速度がやや増加するという知見を得た。すなわち、水で希釈された糊液が得られた。しかし、このフェノール樹脂含有量の相対的に低い糊液は、表面の粗度(凹凸)が相対的に大きい単板に塗布し接合したときは、十分な接着力を与えることができなかった。
本実施形態に係る合板用接着剤組成物において、最適の配合比率は適用する単板の含水率に応じて変わることが認められるが、好ましい配合比率は、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部、無機充填材25〜70質量部、水10〜50質量部である。単板の含水率が通常あるいは相対的に低い場合(例えば10質量%未満)は、水の添加量は多く、アカシア樹皮粉末の添加量は少なく、無機充填材の添加量は少ないことが、パンク発生を抑制しつつ、高い接着力が得られる等、好ましい性能が得られることが見出され、一方、単板の含水率が相対的に高い場合(例えば10質量%以上)は、水の添加率は少なく、アカシア樹皮粉末の添加量は多く、無機充填材の添加量は多いことが、パンク発生を抑制しつつ、高い接着力が得られる等、好ましい性能が得られることが見出された。このような配合比率で調製した糊液は、経済性、糊液粘度、糊液粘度の経時安定性、合板用接着剤組成物としての高い耐水性及び高い接着性等の種々の性能がバランスよく発揮される。
樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末の配合量を1質量部以上とすることにより、糊液の粘度が塗布するのに適した粘度まで上昇することがより一層確実となる。また、アカシア樹皮粉末の配合量を一般的には10質量部以下とすることにより、糊液の経済性が確保されるが、高含水率の単板が混入使用される場合には、パンクを抑制して接着力の向上を図るため、アカシア樹皮粉末の配合量を15質量部以下まで増加することも選択可能である。アカシア樹皮粉末の配合量を15質量部超えにすることは経済性から好ましくない。一般的には、レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対するアカシア樹皮粉末の好ましい配合量は2〜6質量部である。
レゾール型フェノール樹脂水溶液にアカシア樹皮粉末を配合することにより多量の水を配合できるようになったことは、本発明の特徴の1つである。樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、一般的な単板の使用時には、水の配合量を25質量部以上とすることにより、ドライアウト抑制効果、環境負荷低減効果、経済性向上効果等が発揮される。一方、高含水率の単板が混入使用される場合には、水の配合量を10〜25質量部とすることにより、これらの効果を維持することができる。水の配合量が10質量部未満となると、本発明の目的の1つである経済性が十分に発揮できない。また、水の配合量を50質量部以下とすることにより、無機充填材の大量配合を回避することができる。つまり、レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対する水の配合量が50質量部を超えると、その糊液は、一般的な糊液塗布量では、単板上に固形分が確保され難くなるのである。そして、その場合は、無機充填材を大量に配合することにより、単板上に固形分が確保されるように対処するのであるが、無機充填材の大量配合は糊液の塗工性を損ない、接着力低下を招き易くなる。また、糊液塗布後、短時間で、接合、加圧、加熱を行なっても、接着力不足が生じ易くなる。すなわち、レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対する水の配合量を50質量部以下とすることにより、無機充填材の大量配合が回避でき、糊液塗工性を維持し、十分な接着力を得ることができる。
無機充填材の適切な配合量は、単板の含水量による他、アカシア樹皮粉末の配合量や水の配合量に相関する。そして、レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、無機充填材の配合量を25質量部以上とすることにより、フェノール樹脂含有量が相対的に低いにも拘らず、一般的な単板に対する糊液塗布量で良好な接着力が得られるという前述の効果がより一層発揮される。また、高含水率単板であっても、無機充填材の配合量を70質量部以下の高配合量とすることにより、前述したように、ドライアウトに起因する接着力低下、樹脂の硬化不良に起因する接着力不足の問題が回避される。糊液の塗工性がよく、接着力を高く維持するためには無機充填材の配合量を60質量部以下とすることが一層好ましい。レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対する無機充填材のより好ましい配合量は、通常の単板の場合は、25〜50質量部、より好ましくは30〜45質量部であるが、高含水率単板が混入使用されるような場合は、水、アカシア樹皮粉末の配合量によっては、45〜60質量部、さらには45〜55質量部、さらには35〜55質量部が好ましい場合がある。
以上のような理由により、本実施形態に係る合板用接着剤組成物の好ましい配合の具体例は、例えば含水率8質量%程度の通常含水率の単板に対しては、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、平均粒径が10〜30μmでメタノール抽出分が20%程度のアカシアマンギューム樹皮粉末2〜6質量部と、平均粒径が1〜10μmの炭酸カルシウム30〜45質量部と、水25〜50質量部とが添加されることにより調製された合板用接着剤組成物である。一方、含水率10質量%以上の高含水率単板を含む単板を使用する場合には、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、平均粒径が10〜30μmでメタノール抽出分が20%程度のアカシアマンギューム樹皮粉末3〜10質量部と、平均粒径が1〜10μmの炭酸カルシウム30〜60質量部と、水15〜25質量部とが添加されることにより調製された合板用接着剤組成物が好ましい配合の具体例である。含水率10質量%以上の高含水率単板を含む単板を使用する場合の一層好ましい配合の具体例は、アカシアマンギューム樹皮粉末5〜10質量部、炭酸カルシウム35〜55質量部、水15〜20質量部を含むものである。
本実施形態においては、レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対する3種類の成分の適切な配合量は相関関係にあり、含水率8質量%程度の通常含水率の単板に対しては、およそ以下のような配合量の組合せが、糊液性能、接着性能の観点から好ましい。
・アカシア樹皮粉末 0.1X±2質量部
・無機充填材 X質量部(X:25〜50、好ましくは30〜45)
・水 X±5質量部
・アカシア樹皮粉末 0.2X±2質量部
・無機充填材 X質量部(X:25〜70、好ましくは35〜55)
・水 0.4X±5質量部
(ポリビニルアルコール)
本実施形態においては、状況に応じて、合板用接着剤組成物に、ポリビニルアルコール(PVAと記す場合がある)を配合してもよい。PVAは、単板に糊液を塗布し、単板を重ね合わせて接合し、冷間(室温)において加圧し(冷圧)するときの仮接着性を向上させ、仮接着の作業性を向上させる観点から好ましい添加剤である。また、後述する実施例における合板の接着力評価(接着試験)からは、糊液のドライアウトを防止して接着力を確保する効果のあることが認められる。
本実施形態においては、状況に応じて、合板用接着剤組成物に、フュームドシリカを配合してもよい。フュームドシリカは、単板に糊液を塗布するときの塗布作業性を向上させ、かつ、糊液のドライアウトを抑制する観点から好ましい添加剤である。フュームドシリカには、比表面積が100〜400m2/g程度までのものがあり、また、各種の表面処理が施されたものがある。本実施形態では、親水性表面で、比表面積が200m2/g程度のものが好ましい。そのようなものとしては、例えば、日本アエロジル社製の親水性フュームドシリカ「AEROSIL(登録商標)200」等が好適である。
本実施形態においては、状況に応じて、合板用接着剤組成物に、例えば小麦粉等の粘度調整剤を配合してもよい。
本実施形態においては、状況に応じて、合板用接着剤組成物に、例えば炭酸ナトリウムや重炭酸ナトリウム等の硬化促進剤を配合してもよい。
本実施形態においては、状況に応じて、合板用接着剤組成物に、例えばヤシガラ粉末等の有機系充填材や、ホルムアルデヒドの放散を抑制するためのホルムアルデヒドキャッチャ等を配合してもよい。
一般に、レゾール型フェノール樹脂は、合成直後から硬化が始まり、合板工場で使用されるまでの期間中に、粘度上昇が起き易い。そのような粘度が上昇したレゾール型フェノール樹脂に、アカシア樹皮粉末や無機充填材等の粉体成分を順に添加し、混合することは作業性に劣る。そこで、本実施形態においては、粉体成分(アカシア樹皮粉末、無機充填材、PVA、フュームドシリカ、小麦粉等)を予め混合しておき、合板工場では、レゾール型フェノール樹脂と、水と、予め混合しておいた粉体成分とを混合することにより、糊液を調製することが作業効率の観点から好ましい。その場合、経時変化し、粘度が上昇したレゾール型フェノール樹脂の粘度に応じて、粘度調整剤としての小麦粉等を別に添加するようにしてもよい。
本実施形態においては、前記合板用接着剤組成物を用いて合板を製造する。すなわち、前記合板用接着剤組成物を単板に塗布し、複数の単板を重ね合わせ、加圧、加熱することにより、合板を得ることができる。まず、例えばスプレッダー等の塗布装置を用いて前記接着剤組成物を単板に塗布する。次に、所定の枚数の単板同士を重ね合わせる。冷間(室温)において、例えば1.0MPaに加圧し(冷圧)、仮接着した複数の単板を、例えば1.0MPaに加圧しつつ、例えば120〜140℃に加熱し(熱圧)、接着剤組成物を硬化させる方法が挙げられる。熱圧時の加熱温度が不足すると、接着剤組成物の硬化に時間がかかり過ぎ、合板の生産効率が低下し、経済性が低下する。熱圧時の加熱温度が高すぎると、パンク現象が起こり易くなる。平地での熱圧時の好ましい加熱温度は、例えば125〜130℃である。
フェノール658g(7モル)と、37%ホルムアルデヒド水溶液1135g(ホルムアルデヒド14モル)と、水250gとを、還流冷却装置の付いた反応器内に仕込み、攪拌しつつ、40%水酸化ナトリウム水溶液490g(水酸化ナトリウム4.9モル)を徐々に加え、82℃まで昇温し、82℃を維持しながら4時間反応させることにより、レゾール型フェノール樹脂水溶液を得た。ここに水を加えて樹脂分が42%となるように調整した。得られたレゾール型フェノール樹脂水溶液の30℃での粘度は、75cP(75mPa・s)、pHは12.5であった。
表1に示す配合により実施例1の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、上記で合成したフェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂A)を用いた。アカシア樹皮粉末としては、アカシアマンギューム樹皮の外樹皮をボールミル型粉砕機で粉砕したもの(アカシア樹皮粉末A)を用いた(粒径:10〜30μm、メタノール抽出分:約30%)。炭酸カルシウムとしては、和光純薬株式会社製の試薬一級の製品(平均粒径:1μm)を用いた。水は、イオン交換樹脂を通過させた純水(イオン交換水)を用いた。PVAとしては、クラレ社製の「PVA−205S」(ケン化度:86.5〜89モル%)を用いた(以下例において同じ)。フェノール樹脂増量倍率(用いたフェノール樹脂の質量部に対する調製した接着剤組成物の質量部の倍率)は1.90倍であった。
表1に示す配合により比較例1の接着剤組成物を調製した。アカシア樹皮粉末に代えてヤシガラ粉末を用いた。PVAは配合していない。水による希釈を行なっていないので、フェノール樹脂増量倍率は1.42倍であった。
実施例1の接着剤組成物及び比較例1の接着剤組成物について、調製直後の粘度(30℃)、35℃で2時間保管後の粘度(30℃)、35℃で4時間保管後の粘度(30℃)を測定した。結果を表1に示す。比較例1では、粘度が経時的に急増しているのに対し、実施例1では、比較例1に比べて粘度の経時的変化(粘度増加)が少ないことが観察された。
実施例1の接着剤組成物及び比較例1の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を行なった。まず、接着片として、Yellow Speciesの単板3枚(中央2.5mm厚、表裏それぞれ1.45mm厚)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側20g/ft2(21.5mg/cm2)として、調製直後の接着剤組成物を単板に塗布し、重ね合わせた。直ちに冷圧1.0MPaで25分間、その後、実施例1については、125℃、比較例1については、130℃で、熱圧1.0MPaで4分間、加圧、加熱することにより、合板を作製した。
表2に示す配合により実施例2の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、株式会社オーシカ製の「ディアノール D−117」(レゾール型フェノール樹脂B、樹脂分:43%、30℃での粘度:170cP)を用いた。アカシア樹皮粉末としては、外樹皮、内樹皮を分離することなく、ボールミル型粉砕機で粉砕した、メタノール抽出分が約17%、平均粒径が10〜50μm、最大粒径が100〜150μmのアカシアマンギューム樹皮粉末(アカシア樹皮粉末B)を用いた。その他の成分は、実施例1と同じものを用いた。硬化促進剤として炭酸ナトリウムを配合した。
表2に示す配合により比較例2の接着剤組成物を調製した。硬化促進剤として重炭酸ナトリウムを配合した。
実施例2の接着剤組成物及び比較例2の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を行なった。まず、接着片として、ラジアータ松の単板3枚(それぞれ2.8mm厚、含水率5〜6%)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側20g/ft2(21.5mg/cm2)として、ドライアウト試験として、塗布後、40℃の乾燥機中に10分間放置し、さらに相手側単板を重ね合わせて加圧無しに10分間放置した。その後、室温で冷圧1.0MPaで25分間、その後、130℃で、熱圧1.0MPaで4.2分間、加圧、加熱することにより、合板を作製した。
表3に示す配合により実施例3の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、株式会社サンベーク製の「ユーロイド PL−255」(レゾール型フェノール樹脂C、樹脂分:44%、25℃での粘度:150cP)を用いた。アカシア樹皮粉末は、実施例2と同じものを用いた。その他の成分も、実施例2と同じものを用いた。
表3に示す配合により比較例3の接着剤組成物を調製した。
実施例3の接着剤組成物及び比較例3の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を、ドライアウト試験を含め、実施例2及び比較例2と同様にして行なった。ただし、接着剤組成物の塗布量を片側17.5g/ft2(18.8mg/cm2)に減量した。結果を表3に示す。実施例3及び比較例3は実施例2及び比較例2に比べて接着剤組成物の塗布量を減量したためそれぞれ接着力が低下した。しかし、実施例3は比較例3に比べてフェノール樹脂増量倍率が大きく、環境性、経済性に有利であり、フェノール樹脂の含有量が相対的に少ないにも拘らず、実施例3は比較例3と同等の接着力であった。また、実施例3は比較例3よりも木部破断率に優れていた。
表4に示す配合により実施例4〜6の接着剤組成物を調製した。全成分とも、実施例1と同じものを用いた。
実施例4〜6の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を行なった。まず、接着片として、ラジアータ松の単板3枚(それぞれ2.8mm厚、含水率7〜8%)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側20g/ft2(21.5mg/cm2)として、ドライアウト試験として、塗布後、40℃の乾燥機中に10分間放置し、さらに相手側単板を重ね合わせて加圧無しに10分間放置した。その後、室温で冷圧1.0MPaで25分間、その後、125℃で、熱圧1.0MPaで6分間、加圧、加熱することにより、合板を作製した。
表5に示す配合により実施例7、8の接着剤組成物を調製した。実施例7において、フュームドシリカとしては、日本アエロジル株式会社製の親水性フュームドシリカ「AEROSIL(登録商標)200」を用いた。実施例8において、珪藻土としては、昭和化学工業株式会社製の製品を用いた。その他の成分は、実施例1と同じものを用いた。
実施例7、8の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を実施例4〜6と同様にして行なった。結果を表5に示す。実施例7,8はいずれもフェノール樹脂増量倍率が相対的に大きく、環境性、経済性に有利であり、フェノール樹脂の含有量が相対的に少ないにも拘らず、接着力及び木部破断率に優れていた。特に、実施例1と比べても、概ね、接着力及び木部破断率が向上した。フュームドシリカを配合した場合や、炭酸カルシウムと他の無機充填材とを併用した場合においても、接着力及び木部破断率が向上した。
表6に示す配合により実施例9、10の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、冒頭で説明した合成法と同じ条件で合成したレゾール型フェノール樹脂D(30℃での粘度82cP(82mPa・s)、pH12.5)を用いた。その他の配合成分は、実施例1と同じものを用いた。
実施例9、10の接着剤組成物について、合板熱圧時に起こるパンク現象を想定した試験を行った。まず、接着片として、高周波木材水分計値で12%、15%、16.5%に調整したラジアータ松の単板3枚(それぞれ2.8mm厚)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側17g/ft2(18.8mg/cm2)として、調製直後の接着剤組成物を単板に塗布し、重ね合わせた。直ちに、冷圧1.0MPaで30分間、その後、130℃で、熱圧1.0PMaで7分間、加圧、加熱し、解圧時パンクが発生するか否かを確認した。パンクの非発生率を下記式により算出した。各実施例において、10個の試験体で試験を行った。結果を表6に示す。
表7に示す配合により実施例11〜14の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、実施例9、10と同じもの(30℃での粘度90cP(90mPa・s)、pH12.5)を用いた。その他の配合成分も、実施例9、10と同じものを用いた。
実施例11〜14の接着剤組成物について、合板熱圧時に起こるパンク現象を想定した試験を行った。まず、接着片として、高周波木材水分計値で13.5%に調整した南洋材の単板5枚(中央3.7mm厚、表裏それぞれ0.8mm厚)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側17g/ft2(18.8mg/cm2)として、調製直後の接着剤組成物を単板に塗布し、重ね合わせた。直ちに冷圧1.0MPaで30分間、その後、125℃で、熱圧1.0MPaで10分50秒間、加圧、加熱し、解圧時パンクが発生するか否かを確認した。パンクの非発生率を実施例9、10と同様の式により算出した。各実施例において、10個の試験体で試験を行った。結果を表7に示す。
表8に示す配合により実施例15〜18の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、冒頭で説明した合成法と同じ条件で合成したレゾール型フェノール樹脂E(30℃での粘度80cP(80mPa・s)、pH12.5)を用いた。その他の配合成分は、実施例1と同じものを用いた。
実施例15〜18の各接着剤組成物について、合板熱圧時に起こるパンク現象を想定した試験を行った。まず、接着片として、高周波木材水分計値で16.5%に調整した南洋材の単板5枚(中央3.7mm厚、表裏それぞれ0.8mm厚)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側17g/ft2(18.8mg/cm2)として、調製直後の接着剤組成物を単板に塗布し、重ね合わせた。直ちに冷圧1.0MPaで30分間、その後、130℃で、熱圧1.0MPaで10分50秒間、加圧、加熱し、解圧時パンクが発生するか否かを確認した。パンクの非発生率を実施例9、10と同様の式によって算出した。各実施例において、10個の試験体で試験を行った。結果を表8に示す。
実施例15〜18の各接着剤組成物について、単板に対する接着試験を行なった。まず、接着片として、高周波木材水分計値で8%に調整した南洋材の単板5枚(中央3.7mm厚、表裏それぞれ1.2mm厚)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側17g/ft2(18.8mg/cm2)として、調製直後の接着剤組成物を単板に塗布し、重ね合わせた。直ちに冷圧1.0MPaで30分間、その後、130℃で、熱圧1.0MPaで10分50秒間、加圧、加熱することにより、合板を作製した。
表9に示す配合により実施例19の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、実施例2と同様の、株式会社オーシカ製の「ディアノール D−117」(レゾール型フェノール樹脂B、樹脂分:43%、30℃での粘度:200cP)を用いた。その他の配合成分は、実施例1と同じものを用いた。
実施例19の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を実施例15〜18と同様にして行なった。まず、接着片として、高周波木材水分計値で8%に調整した南洋材の単板5枚を使用して、合板を作製した。
表10に示す配合により実施例20の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、実施例9、10と同じもの(30℃での粘度100cP(100mPa・s)、pH12.5)を用いた。その他の配合成分は、実施例1と同じものを用いた。
実施例20の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を実施例19と同様にして行なった。ただし、接着片としては、高周波木材水分計値で16.5%に調整した南洋材の単板5枚を使用した。接着力と木部破断率の平均値を表10に示す。
Claims (9)
- 樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部と、水10〜50質量部とが添加されることにより調製されたことを特徴とする合板用接着剤組成物。
- 樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜10質量部と、無機充填材25〜50質量部と、水25〜50質量部とが添加されることにより調製されたことを特徴とする合板用接着剤組成物。
- 樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部と、水10〜25質量部とが添加されることにより調製されたことを特徴とする合板用接着剤組成物。
- アカシア樹皮粉末は、平均粒径が10〜150μmであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の合板用接着剤組成物。
- ポリビニルアルコール0.1〜3質量部がさらに添加されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の合板用接着剤組成物。
- フュームドシリカ0.1〜2質量部がさらに添加されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の合板用接着剤組成物。
- 請求項1から6のいずれか1項に記載の合板用接着剤組成物を単板に塗布し、複数の単板を重ね合わせ、加圧、加熱することを特徴とする合板の製造方法。
- 請求項7に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする合板。
- 接着剤層が、硬化したフェノール樹脂40〜50質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部とを含むことを特徴とする合板。
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