JP5122383B2 - 乳成分入り起泡性抹茶飲料 - Google Patents

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Description

本発明は、容器を振盪することにより気泡を有する乳成分入り抹茶飲料に関する。より詳細には、飲料を振盪して形成させた飲料溶液内の気泡を、飲料上層だけでなく飲料内部にも安定的に保持する乳成分入り抹茶飲料に関する。
抹茶は嗜好性飲料として歴史が非常に古く、一説によると鎌倉時代にはすでに抹茶の製法が確立されており、作法とともに日本人に親しまれていたと言われている。かつては一部の上流階級が茶道として抹茶を嗜んでいたのであるが、次第に庶民にも広がり、近年においては健康ブームも相俟って緑茶とともに抹茶の需要も著しく伸びている。ごく最近では、菓子やアイスクリームなどを通して手軽に口にすることができるようになり、この抹茶人気は一時的なものではなく、もはや普遍的で大衆的なものとなっている。
抹茶は、茶の葉を蒸したのち、煎茶で行うような揉む作業をせず、そのまま乾燥させ、小片に砕いて、茎や葉脈等の不純物を取り除き、臼で挽いて粉状にしたものである。茶葉を煮出してその成分を抽出する緑茶飲料と異なり、抹茶飲料は、粉状になっている茶葉(不溶性固形分)をそのまま水等に分散・溶解させることから、粉状の茶葉によるダマや沈殿が生じてしまうことがあり、工業的に生産する上で大きな障害となっている。
不溶性固形分である粉末抹茶を飲料中に分散させる方法として、特定の平均粒子径の粉末茶を水に分散させ、特定の均質化温度及び均質化圧力で均質化処理する方法(特許文献1)、抹茶にマルトース及び牡蠣貝等由来のカルシウム剤を混合させる方法(特許文献2)等が挙げられる。他に、抹茶に特定していないものの、不溶性固形分を分散安定させる方法として、ネイティブジェランガム、ペクチン及び大豆多糖類から選択される1種以上の高分子物質と、発酵セルロースを使用する方法(特許文献3)や、発酵セルロースと一価〜三価のカチオンを使用する方法(特許文献4)が挙げられる。
また茶葉は時間を経ると、その中に含まれるポリフェノールなどの成分が酸化され、色が緑から赤褐色に変化(褐変)してしまうことが知られている。茶葉を粉末状にした抹茶も、例外なく時間が経つと褐変が起きてしまい、事実上品質劣化が発生していなくても、見た目において品質が劣化されているとの印象を消費者に与えてしまう。とりわけ、抹茶飲料は緑であることがおいしさを惹きたてる大きな要因であるので、褐変は抹茶飲料の商品価値において致命的な現象であるともいえ、褐変を防止することが抹茶飲料製品において重要な要件となる。粉末抹茶を含有する飲料の褐変を防止するために、有効量のビタミンCやその塩類の混合物を添加することが知られている(特許文献5)。
抹茶は、茶道において泡を点てる作法があり、泡を点てることによって、苦味が緩和されて味が柔らかくなり、上品な味わいを感じることができる。さらに、抹茶に乳成分を加えたいわゆる「抹茶ラテ」は、乳成分により抹茶の甘さとまろやかさが強調されて、より一層味わいが上品で深いものとなる。近年、泡立っている抹茶ラテは、コーヒーチェーン店等で次々と商品化され人気を博しているが、コーヒー用に使用していたエスプレッソマシーンやカプチーノクリーマー等の特別な機械によって、消費者へ販売する直前に起泡化させる必要があった。そして、コーヒーチェーン店で入手できる抹茶ラテは、泡が飲料の上部に形成され、飲み終えるまで飲料中に泡を留めておくことができず、泡立つ抹茶を最後まで楽しめることができなかった。コーヒーチェーン店であっても持続可能な泡を有する抹茶ラテを提供することはできなかった。同様に、泡立つ抹茶ラテをスーパーやコンビニエンスストア等の量販店で販売するためには、上記方法では不可能であり、別の手段を講じる必要がある。
飲料を起泡化させる例として、乳化剤とエチルアルコールを添加することで、気体と強制的に混和して気泡を得ている飲料(特許文献6)、乳化剤として(a)ソルビタンモノ飽和脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルの何れか一方または双方、及び(b)グリセリン二塩基酸脂肪酸エステル、クエン酸モノグリセリンエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステルより選択される1種以上を用いる飲料(特許文献7)、コーヒー抽出液に、コーヒー飲料全量中の乳脂肪分が0.05重量%以上となる量の乳成分を起泡剤とともに添加する方法(特許文献8)、乳入り飲料の製造工程において、飲料全量中の乳脂肪分が0.1重量%以下となる量の乳成分を、起泡剤とともに原料液に添加する方法(特許文献9)、乳ペプチドと水溶性ヘミセルロースを飲料に添加して容器に充填した後、振盪して泡立たせた飲料(特許文献10)などが知れられている。
しかし、微細で緻密な気泡を飲料の上層のみならず内部にも形成させ、且つ形成した気泡を飲料溶液内部に安定的に維持するための方法としては、いずれも満足のいくものではなかった。すなわち、これらの方法では、飲料溶液内に形成された気泡が速やかに飲料表面に上昇し、飲料溶液内部に気泡が残存しにくいという問題、また飲料をコップに注いだり、また飲もうとしたりするとき、溶液だけが出て肝心の気泡が容器内に残留するため、滑らかな食感が得られないといった問題があった。また、乳成分を含有する飲料であっては、添加剤や製造工程によって乳成分が凝集や分離を起こし易い傾向にあるので、注意を払う必要がある。
上述の特許文献は、それぞれ一長一短があり、(1)抹茶粉末の分散安定効果があり、(2)乳成分を加えても飲料自体が安定であり、(3)手軽に泡立たせることができ、(4)飲料中に泡を安定的に保持することで、これを飲み終えるまで泡を楽しむことができるような、上記4つの条件を全て満たした泡立つ乳成分入り抹茶飲料を提供することができなかった。
特開2007−53913号公報 特開2003−259805号公報 特開平11−178517号公報 特開平11−187826号公報 特開2000−228953号公報 特開平4−356160号公報 特開平10−295339号公報 特開平11−56244号公報 特開2000−60507号公報 特開2000−157232号公報
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、(1)抹茶粉末の分散安定効果があり、(2)乳成分を加えても飲料自体が安定であり、(3)手軽に泡立たせることができ、(4)飲料中に泡を安定的に保持することで、これを飲み終えるまで泡を楽しむことができるような、泡立つ乳成分入り抹茶飲料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を重ねていたところ、原料として発酵セルロース複合体と、乳化剤及び特定の塩類を配合して調製した乳成分入り抹茶飲料は、振盪することによって、飲料の上層のみならず溶液内部に微細で緻密な気泡を形成することができ(起泡化)、しかも、形成された気泡が飲料溶液内部に長時間にわたって安定的に保持されることを見出した。さらに、気泡を形成させた当該乳成分入り抹茶飲料は、別の容器に移すときやそのまま口に入れたときに、気泡も飲料とともに出てくることを確認した。
これらの知見から、本発明者らは、かかる技術により調製した乳成分入り抹茶飲料によれば、微細で緻密な気泡を含む状態で飲用(摂取)することができるため、口当たりが滑らかな飲料を調製し提供できることを確認して、本件発明を完成するにいたった。
本発明は下記の実施態様を包含するものである:
項1.下記(A)〜(C)を含み、粉末抹茶が液中に分散されている飲料であって、該飲料を入れた容器を振盪して起泡化した際に、飲料上層だけでなく飲料内部にも気泡を安定的に保持することを特徴とする、乳成分入りの起泡性抹茶飲料。
(A)発酵セルロース複合体
(B)乳化剤
(C)ポリリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウムおよびクエン酸三ナトリウムからなる群から選択される1種以上の塩
項2.(A)発酵セルロース複合体が、キサンタンガム、グァーガム及びカルボキシルメチルセルロースまたはその塩からなる群から選択される少なくとも1種によって発酵セルロースを複合化したものである、項1に記載の乳成分入りの起泡性抹茶飲料。
項3.(B)乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステルである、項1又は2に記載の乳成分入りの起泡性抹茶飲料。
項4.(C)ポリリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウムおよびクエン酸三ナトリウムからなる群から選択される1種以上の塩の添加量が、0.05〜0.2重量%であることを特徴とする、項1乃至3に記載の乳成分入りの起泡性抹茶飲料。
項5.カルボキシルメチルセルロース又はその塩がさらに添加されている、項1乃至4に記載の乳成分入りの起泡性抹茶飲料。
本発明によれば、乳成分入り起泡性抹茶飲料の気泡保持能力を増強することができるため、乳成分を含有する飲料の溶液内部に微細でかつ緻密な気泡を形成することができ、しかも形成された気泡を溶液の内部に長く安定的に保持することができる。さらに本発明の乳成分入り起泡性抹茶飲料は、不溶性固形分である抹茶粉末を飲料中に安定して分散することができる。
本発明の飲料は、乳成分入り抹茶飲料の調製に、原料の一つとして発酵セルロース複合体を用いることによって実施することができる。発酵セルロース複合体は、発酵セルロースと高分子物質を複合化状態にすることにより得ることができる。
本発明の発酵セルロース複合体に用いる発酵セルロースは、セルロース生産菌が生産するセルロースであればよく、特に限定されない。通常、発酵セルロースは、セルロース生産菌を既知の方法、例えば特開昭61−212295号公報、特開平3−157402号公報、特開平9−121787号公報に記載される方法に従って培養し、得られた培養物からセルロース生産菌を単離するか、または所望に応じて適宜精製することによって製造することができる。
ここでセルロース生産菌としては、アセトバクター属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属等に属する細菌が挙げられるが、好適にはアセトバクター属である。発酵セルロースを生産するアセトバクター属の細菌として、より具体的には、アセトバクター・パスツリアヌス株(例えば、ATCC10245等)、アセトバクター・エスピーDA株(例えば、FERM P−12924等)、アセトバクター・キシリナム株(例えば、ATCC23768、ATCC23769、ATCC10821、ATCC1306−21等)を挙げることができる。好ましくは、アセトバクター・キシリナム株である。
かかるセルロース生産菌を培養する培地及び条件としては、特に限定されず、常法に従うことができる。例えば、培地は、基本的に窒素源、炭素源、水、酸素及びその他の必要な栄養素を含有しており、上記微生物が増殖して目的の発酵セルロースを産生することができるものであればよく、例えばHestrin−Schramm培地を挙げることができる。なお、セルロースの生産性を向上させるために、培地中にセルロースの部分分解物、イノシトール、フィチン酸等を添加することもできる(特開昭56−46759号公報、特開平5−1718号公報)。培養条件としては、例えばpH5〜9、培養温度20〜40℃の範囲が採用され、発酵セルロースが十分産生されるまで培養が続けられる。培養方法は、静置培養、攪拌培養、通気培養のいずれでもよいが、好適には通気攪拌培養である。
発酵セルロースを大量生産するためには、多段階接種法が好ましい。この場合、通常、2段階の予備接種プロセス、一次接種発酵プロセス、二次接種発酵プロセス及び最終発酵プロセスからなる5段階の発酵プロセスが採用され、各プロセスで増殖された細菌について細胞の形態およびグラム陰性であることを確認しながら、次プロセスの発酵器に継代される。
発酵後、産生された発酵セルロースは培地から分離処理され、洗浄されて、適宜精製される。精製方法は特に限定されないが、通常、培地から回収した発酵セルロースを洗浄後、脱水し、再度水でスラリー化した後に、アルカリ処理によって微生物を除去し、次いで該アルカリ処理によって生じた溶解物を除去する方法が用いられる。具体的には、次の方法が例示される。
まず、微生物の培養によって得られる培養物を脱水し、固形分約20%のケーキとした後、このケーキを水で再スラリー化して固形分を1〜3%にする。これに水酸化ナトリウムを加えて、pH13程度にして攪拌しながら数時間、系を65℃に加熱して、微生物を溶解する。次いで、硫酸でpHを6〜8に調整し、該スラリーを脱水して再度水でスラリー化し、かかる脱水・スラリー化を数回繰り返す。精製された発酵セルロースは、必要に応じて乾燥処理を施すことができる。乾燥処理としては特に制限されることなく、自然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、スプレードライ、ドラムドライ等の公知の方法を用いることができる。好ましくはスプレードライ法、ドラムドライ法である。
かくして得られる発酵セルロースは、白色から黄褐色の物質であり水に急速に分散できる非常に繊細な繊維性粒子からなる。なお、本発明で用いられる発酵セルロースは、上記方法で調製される発酵セルロースと同一若しくは類似の性質を有し、本発明の目的を達成しえるものであれば、その調製方法によって限定されるものではない。
本発明において、乳成分入り抹茶飲料に発酵セルロース複合体を添加する際、飲料中における発酵セルロースの割合は、本発明の効果が得られる範囲であればよく、飲料の種類に応じて適宜調整することができる。通常、最終飲料100重量%中、0.01〜0.4重量%の範囲から適宜選択調整することができる。好ましくは0.04〜0.15重量%である。発酵セルロースの含有量は、0.01重量%より少ないと起泡性に乏しく、濃度を上げるにつれて起泡性が向上し、気泡の長期保持能も強化されるのであるが、0.4重量%より高いと飲料に粘り気が生じて口当たりが悪くなってしまう。
本発明において発酵セルロースは、高分子物質と組み合わせて用いることでその効果をより高めることができる。高分子物質と組み合わせて用いる態様としては、発酵セルロースと高分子物質とを混合状態で用いる態様、または発酵セルロースと高分子物質とを複合化状態で用いる態様を挙げることができるが、本発明においては高分子物質と複合化状態にした発酵セルロース複合体として用いることで、所望の効果を有した起泡性飲料を得ることができる。
発酵セルロースとの複合化に使用される高分子物質としては、例として、キサンタンガム、カラギーナン、ガラクトマンナン(グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム等)、カシアガム、グルコマンナン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、タマリンドシードガム、ペクチン、サイリウムシードガム、ゼラチン、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ガティガム、マクロホモプシスガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カードラン、プルラン、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)の塩、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース誘導体、微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース、大豆多糖類、加工・化工でん粉、未加工でん粉(生でん粉)といった各種高分子物質を挙げることができる。これらは一種単独で使用してもよいし、または2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
高分子物質として、好ましくは、キサンタンガム、ガラクトマンナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはその塩を挙げることができる。ここでガラクトマンナンとして好ましくはグァーガムを、CMCの塩として好ましくはCMCのナトリウム塩を挙げることができる。高分子物質として、より好ましくはキサンタンガム若しくはグァーガムと、CMCの塩を組み合わせて使用する態様である。
本発明において、発酵セルロースは、より好ましくは、前述するキサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩からなる群から選択される少なくとも1種を複合化させた状態で用いられる。かかる複合化された発酵セルロースを用いることにより、より好適に、乳成分入り飲料の内部に微細で緻密な気泡を形成することができ、かつ形成された気泡を飲料溶液内に安定して保持させることができる。
なお、上記高分子化合物と複合化された発酵セルロースは商業的に入手可能であり、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンアーティスト[登録商標]PX(キサンタンガムおよびCMCのナトリウム塩と発酵セルロースとの複合体の製剤)、サンアーティスト[登録商標]PG(グァーガムおよびCMCのナトリウム塩と発酵セルロースとの複合体の製剤)などを挙げることができる。
本発明において、乳成分入り抹茶飲料に配合する発酵セルロース複合体の添加量は、飲料の種類に応じて適宜調製することができるが、飲料中の発酵セルロース含量が前記のようになるよう添加する。発酵セルロース複合体における発酵セルロースと高分子物質の割合は、3:1〜1:2、好ましくは2:1〜1:1、最も好ましくは3:2である。具体的に、最終飲料100重量%中における高分子物質の割合としては、0.005〜0.3重量%、好ましくは0.02〜0.1重量%、最も好ましくは0.04〜0.07重量%を挙げることができる。高分子物質としてキサンタンガム、グァーガムおよびCMCのナトリウム塩の少なくとも一方を使用する場合、最終飲料100重量%中、キサンタンガムまたはグァーガムの割合として0.0025〜0.15重量%、好ましくは0.01〜0.07重量%、最も好ましくは0.02〜0.05重量%、またCMCのナトリウム塩の割合として0.0025〜0.15重量%、好ましくは0.006〜0.05重量%、最も好ましくは0.01〜0.035重量%を挙げることができる。
発酵セルロースを高分子物質と複合化させる方法としては、特開平9−121787号公報に記載される2種類の方法を挙げることができる。
ここで第一の方法は、微生物を培養して発酵セルロースを産生させるにあたり、培地中に高分子物質を添加して培養を行い、発酵セルロースと高分子物質とが複合化した発酵セルロース複合化物として得る方法である。
また第二の方法は、微生物の培養によって生産された発酵セルロースのゲルを高分子物質の溶液に浸漬して、高分子物質を発酵セルロースのゲルに含浸させて複合化する方法である。発酵セルロースのゲルは、そのままか、あるいは常法により均一化処理を行ったのちに高分子物質の溶液に浸漬する。均一化処理は、公知の方法で行えばよく、例えばブレンダー処理や500kg/cmで40回程度の高圧ホモジナイザー処理、1000kg/cmで3回程度のナノマイザー処理などを用いた機械的解離処理が有効である。浸漬時間は、制限されないが、30分以上24時間程度、好ましくは1晩を挙げることができる。また、浸漬終了後は遠心分離や濾過などの方法で浸漬液を除去することが望ましい。さらに、水洗いなどの処理を行って過剰の高分子物質を除去すると、高分子物質と複合化された状態の発酵セルロースを取得することができ、複合化に利用されないで残存する高分子物質の影響を抑えることができる。
本発明で使用する乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、蒸留モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ポリソルベートなどを挙げることができ、最終飲料の形態によって適宜選択することができる。
これらの内、気泡をより一層長期間保持したり、口当たりのよい食感を付与したりする目的として好ましい乳化剤としては、蒸留モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられ、さらに、最適な乳化剤としてショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。かかる乳化剤を用いる場合、乳成分入り抹茶飲料に配合する乳化剤の割合としては、最終飲料100重量%中、0.01〜0.2重量%、好ましくは0.02〜0.1重量%を挙げることができる。
本発明で使用する塩類としては、本発明の課題を解決する上では、ポリリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウムおよびクエン酸三ナトリウムが特に好ましく、さらにその内、クエン酸三ナトリウムが最適である。なお、これらの塩類は、単独あるいは組み合わせて使用することができる。
かかる塩類を用いる場合、乳成分入り抹茶飲料に配合する塩類の割合としては、最終飲料100重量%中、0.01〜0.3重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%を挙げることができる。
また本発明の効果を妨げない範囲において、乳成分入り抹茶飲料の調製に際して、飲料の食感や口当たりを改良する目的として、原料に上記発酵セルロース複合体、乳化剤及び塩類の他、多糖類を用いることもできる。かかる多糖類としては、キサンタンガム、カラギーナン、ガラクトマンナン(グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム等)、カシアガム、グルコマンナン、ネイティブ型ジェランガム、タマリンドシードガム、ペクチン、サイリウムシードガム、ゼラチン、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ガティガム、マクロホモプシスガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、プルラン、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはその塩、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース誘導体、微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース、大豆多糖類、加工・化工でん粉、未加工でん粉(生でん粉)などを挙げることができる。この内好ましくは、カルボキシルメチルセルロースまたはその塩(例えばナトリウム塩など)である。
かかる多糖類を用いる場合、乳成分入り抹茶飲料に配合する多糖類の割合としては、最終飲料100重量%中、0.01〜0.5重量%を挙げることができる。
本発明は乳成分入り抹茶飲料を対象としているが、乳成分と水不溶性固形分を含む飲料であれば特に制限されることなく、泡立つ乳飲料を提供することができる。
ここで、乳成分としては、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、調製粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、クリームパウダー、濃縮乳、生クリーム、無糖練乳、加糖全脂練乳、加糖脱脂練乳、バター、脱脂乳などを挙げることができる。かかる乳成分の中で本発明における起泡性の効果を最も発揮できるものとして、脱脂粉乳、調製粉乳、ホエイパウダー、加糖脱脂練乳、脱脂乳など、いずれも乳脂肪分の少ないものが挙げられる。
なお、飲料中に含まれる乳成分の割合としては、無脂乳固形分に換算して0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは2〜4重量%を挙げることができる。また、本発明は、乳成分入り抹茶飲料中に脂肪分含量が0〜5重量%、好ましくは0.02〜1重量%である飲料に好適に用いることができる。
かかる水不溶性固形分として抹茶粉末の他に、ココア、カカオマス、きなこ、あずき、ゼリー、タピオカパール、粉末状のカルシウム、粒状や粉末状、若しくはペースト状のゴマ、野菜や果実を由来とするピューレやさのう、パルプなどを挙げることができる。
本発明が対象とする飲料は、抹茶および乳成分を含む飲料であるが、前述の通り水不溶性固形分を含有する飲料であれば、本発明における抹茶飲料と同様の効果を有している水不溶性固形分を含有する起泡性乳飲料を提供することができる。抹茶飲料の他の具体例として、ココア乳飲料(ミルクココア)、ココアシェイク、ゼリー入り乳飲料、カルシウム強化乳飲料、野菜や果実を由来とするピューレやさのう、パルプなどを含有する乳飲料、タピオカティー、タピオカミルク等の各種飲料が挙げられる。
ここで上記飲料を充填する容器の種類としては、特に限定されるものではないが、スチール缶、紙パック、ガラス瓶、ポリエチレンテレフタレートボトル(PETボトル)、アルミ缶等が挙げられる。通常、容器への食用液、好ましくは飲料の充填量を、容器の全容量の30〜90容量%、好ましくは60〜80容量%程度とし、空隙を設けておくことで、容器を振った際に気泡を容易に形成することができる。なお、本発明の飲料を容器に充填する場合、容器にできる空隙は通常に比べて広くするため、容器のへこみ防止と飲料の酸化抑制を目的として、窒素ガスによる置換・充填を行うことが好ましい。
本発明が対象とする飲料の製造は、制限されないが、例えば、前述する少なくとも発酵セルロース複合体、乳化剤、塩類、及び粉末茶を水などの溶媒に、他の原料とともに溶解し、これに乳成分を加え、次いで必要に応じてpHを調整した後に均質化し、容器に充填することによって調製することができる。また通常、容器に充填する前もしくは後に、殺菌処理が施される。殺菌処理は、特に制限されず、通常のレトルト殺菌、バッチ殺菌、プレート殺菌、オートクレーブ殺菌などの方法を採用することができる。
本発明の飲料は、これが充填された容器を飲食時に振盪することによって、飲料の表面だけでなく、内部にも微細で緻密な気泡、形状保持性に優れた気泡を形成することができる。振盪方法は、特に制限されないが、例えば、容器を手にとって10秒〜1分間上下に振る方法を挙げることができる。
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは「重量部」を、「%」は「重量%」を意味するものとする。文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品を表し、文中の「※」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
なお、実施例において使用する「サンアーティスト[登録商標]PG」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)は、発酵セルロースを20%、グァーガムを6.7%、CMCのナトリウム塩を6.7%およびデキストリンを66.6%の割合で含む粉末状の製剤である。
実施例1〜5 瓶入り抹茶乳飲料の安定性試験
表1の処方に従い、各種の瓶入り抹茶乳飲料を調製した。
<処方>
1.抹茶粉末 0.5(%)
2.砂糖 6.5
3.脱脂粉乳 2.5
4.着色料(メロンカラーL) 0.03
5.酸化防止剤(サンメリン Y−AF) 0.1
6.香料 0.17
(マッチャ エンハンサーNO.69920 0.05)
(マッチャフレーバーNO.67003 0.012)
7.添加剤(表1) 表1参照
8.乳化剤(表1) 表1参照
9.多糖類(表1) 表1参照
10.塩類(表1) 表1参照
水にて全量 100.0mlに調整
Figure 0005122383
(1) エキセルT-95(花王(株)製)HLB3.8
(2) エステル P-1670(三菱化学フーズ(株)製)HLB16
(3)「セオラスSC-900」(旭化成(株)製)
(微結晶セルロース73%、CMC・Na5%、キサンタンガム2.8%、デキストリン19%、食用油脂0.2%含有)
<調製方法>
1)砂糖、脱脂粉乳、抹茶粉末および各種の添加剤を水に加え、65〜70℃で10分間撹拌溶解し、70℃で均質化処理を行う(第一段:10Mpa、第二段:5Mpa)。
2)上記で得られた溶液130gを、190g容量の透明瓶に充填する。
3)これを85℃で60分間加熱殺菌する。
4)これを冷蔵庫に入れて10℃以下に冷却保存する。
<実験方法>
1)上記方法で調製した各種の缶入り抹茶乳飲料を、一度瓶の蓋を開封し、外気に曝した後、再び蓋を閉め、激しく20回振って泡立てて、泡立てた直後の気泡の状態を確認する(起泡性)。
2)上記で気泡を形成させた各種の瓶入り抹茶乳飲料を室温に30分間放置し、飲料溶液内部の抹茶粉末の分散安定性、乳成分の安定性、飲料表面の気泡の状態(気泡保持力)、及び、飲料中に含有されている気泡(含気性)を目視で観察する。また、飲用して食感を評価する。
結果を表2及び表3に示す。なお、下記表の各項目中の「○」は、本発明の飲料として商品化する際に所望の効果を最低限満たされている状態であり、「◎」は、所望の効果を十分に、あるいはそれ以上満たされている状態を示している。「×」「△」は、客観的に見たときに、商品価値がない(「×」)、又は、商品価値に乏しい(「△」)状態を示している。
Figure 0005122383
Figure 0005122383
<結果>
上記表2及び表3に示すように、発酵セルロース複合体を含有するサンアーティストPGと、乳化剤および特定の塩類を添加して乳成分を含む抹茶飲料を調製することによって、抹茶粉末の分散安定効果があり、乳成分を加えても飲料自体が安定であり、起泡性・気泡保持力が優れており、飲料内部に泡を安定的に保持した乳成分を含む抹茶飲料を作製することができた。なお、飲料内部に泡が安定的に保持されている飲料(“含気性”項目で○、◎のもの)は、飲料をコップに移したときに飲料とともに気泡もコップに移動した。
また、上記結果から、CMCのナトリウム塩を0.1%以上加えると、泡立ちが悪くなり、飲んだ際に糊感が強くなってしまうものの、飲料中の乳成分の安定性がよくなり、飲料内部に泡を安定的に保持する効果が格段に向上することが明らかになった。実施例5のように、CMCのナトリウム塩を少量(0.05%)添加することによって、抹茶粉末の分散安定効果、乳成分の安定性、起泡性・含気性がそれぞれ向上し、当該飲料として非常に優れたものを提供することができた。
実施例6〜11 瓶入り抹茶乳飲料
表4の処方に従い、各種の瓶入り抹茶乳飲料を調製した。なお、調製方法は、実施例1〜3の乳飲料の方法に従った。
<処方>
1.抹茶粉末 0.5(%)
2.砂糖 6.5
3.脱脂粉乳 2.5
4.着色料(メロンカラーL) 0.03
5.酸化防止剤(サンメリン Y−AF) 0.1
6.香料 0.17
(マッチャ エンハンサーNO.69920 0.05)
(マッチャフレーバーNO.67003 0.012)
7.サンアーティストPG 0.3
8.ショ糖脂肪酸エステル 0.03
9.CMCのナトリウム塩 0.05
10.塩類 表4参照
水にて全量 100.0mlに調整
Figure 0005122383
<実験方法>
上記方法で調製した各種の缶入り抹茶乳飲料において、飲料溶液内部の抹茶粉末の分散安定性、乳成分の安定性を目視で観察する。
2)上記缶入り抹茶乳飲料80mlを、容積100mlの蓋付き瓶に充填する。まず試料の中心部をピペットにて11ml採取し、その重量を測定する(起泡前11ml重量)。飲料を外気に十分曝した後、激しく30回振って泡立てて、15分間放置後、再度30回振って泡立てて、再び試料の中心部をピペットにて11ml採取し、その重量(起泡後11ml重量)を測定する。
3)起泡前11ml重量と起泡後11ml重量から、下式に従って飲料中に含有されている気泡の保持性を「オーバーラン率(%)」として求める。
<式>
オーバーラン(OR)率
=〔(起泡前11ml重量−起泡後11ml重量)/起泡後11ml重量〕 × 100
4)上記で気泡を形成させた各種の缶入り抹茶乳飲料を、メスシリンダーからコップに移し替えて泡の移動の様子を観察する。また、飲用して食感を評価する。
結果を表5および表6に示す。なお、表5、6中の「◎」「○」「△」「×」は表2,3と同様の評価基準に基づいて判定された評価点を示している。
Figure 0005122383
Figure 0005122383
<結果>
上記表5および表6に示すように、飲料の安定化のため実施例6〜11で添加した塩類は、飲料内部の気泡保持性(含気性)を妨げることなく逆にこの効果を向上させて、抹茶粉末の分散安定化および乳成分の安定化に高い効果を示した。添加量の違いによる含気性の差は見られなかったが、抹茶粉末の分散安定性、乳成分の安定性は添加量に比例して向上した。また、泡の感触も添加量に比例して柔らかくなった。クエン酸三ナトリウムの添加量は、0.2%を超えるとミルクの色が消え始めて、添加量を増やすと徐々にミルクの色が消えて抹茶の緑色が強くなっていった。さらに、0.3%を超える量を添加すると、添加した塩の味が気になり、抹茶飲料全体の味に影響を及ぼした。上記を考慮して、当該飲料の所望の効果を付与するためのクエン酸三ナトリウムの添加量は、0.05〜0.3%が特に好ましく、0.05〜0.2%が最も好ましいことがわかった。

Claims (4)

  1. 下記(A)〜(C)を含み、粉末抹茶が液中に分散されている飲料であって、該飲料を入れた容器を振盪して起泡化した際に、飲料上層だけでなく飲料内部にも気泡を安定的に保持することを特徴とする、乳成分入りの起泡性抹茶飲料。
    (A)発酵セルロース複合体
    (B)乳化剤
    (C)ポリリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウムおよびクエン酸三ナトリウムからなる群から選択される1種以上の塩
  2. (B)乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステルである、請求項1に記載の乳成分入りの起泡性抹茶飲料。
  3. (C)ポリリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウムおよびクエン酸三ナトリウムからなる群から選択される1種以上の塩の添加量が、0.05〜0.2重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の乳成分入りの起泡性抹茶飲料。
  4. カルボキシルメチルセルロース又はその塩がさらに添加されている、請求項1に記載の乳成分入りの起泡性抹茶飲料。
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