JP2009278905A - 乳成分入り飲料の気泡保持能強化方法 - Google Patents

乳成分入り飲料の気泡保持能強化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】乳成分入り飲料について、その気泡保持能を強化する方法、気泡保持能を強化することで、乳成分入り飲料を振盪して形成させた飲料溶液内の気泡を、飲料内部に安定的に保持することを可能にする方法を提供する。
【解決手段】原料の一つとして発酵セルロースを用いて乳成分入り飲料を調製する、好ましくは、発酵セルロースを、高分子物質と複合化させた状態で用いて乳成分入り飲料を調製する。
【選択図】なし

Description

本発明は、乳成分入り飲料について、その気泡保持能を強化する方法に関する。より詳細には、乳成分入り飲料の気泡保持能を強化することで、乳成分入り飲料を振盪して形成させた飲料溶液内の気泡を、飲料内部に安定的に保持することを可能にする方法に関する。
従来、カップチーノコーヒーやミルクセーキといった飲料において、緻密な泡をコーヒーやミルクの上層や内部に形成することにより、食感(口当たり)を滑らかにし、優れたテクスチャーを付与するための方法が種々検討されている。
気泡を生じさせる方法(起泡化方法)として、例えば、(1)飲料に乳化剤とエチルアルコールを添加し、気体と強制的に混和して気泡を得る方法(特許文献1)、(2)乳化剤として(a)ソルビタンモノ飽和脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルの何れか一方または双方、及び(b)グリセリン二塩基酸脂肪酸エステル、クエン酸モノグルセリンエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステルより選択される1種以上を用いる方法(特許文献2)、(3)コーヒー抽出液に、コーヒー飲料全量中の乳脂肪分が0.05重量%以上となる量の乳成分を起泡剤とともに添加する方法(特許文献3)、(4)乳入り飲料の製造工程において、飲料全量中の乳脂肪分が0.1重量%以下となる量の乳成分を、起泡剤とともに原料液に添加する方法(特許文献4)、(5)乳ペプチドと水溶性ヘミセルロースを飲料に添加して容器に充填した後、振盪する方法(特許文献5)などが知られている。
しかし、微細で緻密な気泡を飲料溶液の上層のみならず内部にも形成させ、且つ形成した気泡を飲料溶液内部に安定的に維持するための方法としては、いずれも満足のいくものではなかった。すなわち、これらの方法では、飲料溶液内に形成された気泡が速やかに飲料表面に上昇し、飲料溶液内部に気泡が残存しにくいという問題、また飲料をコップに注いだり、また飲もうとするとき、溶液だけが出て肝心の気泡が容器内に残留するため、滑らかな食感が得られないといった問題があった。
特開平4−356160号公報 特開平10−295339号公報 特開平11−56244号公報 特開2000−60507号公報 特開2000−157232号公報
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、乳成分入り飲料の気泡保持能力を高めることで、乳成分入り飲料の溶液内部に形成された気泡を、飲料溶液内部に安定的に保持することを可能とする方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を重ねていたところ、原料の一つとして発酵セルロースを用いることによって調製した乳成分入り飲料は、振盪することによって、飲料の上層のみならず溶液内部に微細で緻密な気泡を形成することができ(起泡化)、しかも、形成された気泡が飲料溶液の内部に長時間にわたって安定的に保持されることを見出した。さらに、気泡を形成させた当該乳成分入り飲料は、別の容器に移すときやそのまま口に入れたときに、気泡が溶液とともに出てくることを確認した。
これらの知見から、本発明者らは、かかる技術を応用して調製した乳成分入り飲料によれば、微細で緻密な気泡を含む状態で飲用(摂取)することができるため、口当たりが滑らかな飲料を調製し提供できることを確認して、本件発明を完成するにいたった。
本発明は下記の実施態様を包含するものである:
(I)乳成分入り飲料の気泡保持能強化方法
(I-1)乳成分入り飲料の気泡保持能強化方法であって、原料の一つとして発酵セルロースを用いて乳成分入り飲料を調製することを特徴とする上記方法。
(I-2)上記乳成分入り飲料の調製に際して、発酵セルロースを、高分子物質と複合化させた状態で用いることを特徴とする、(I-1)に記載する乳成分入り飲料の気泡保持能強化方法。
(I-3)上記高分子物質が、キサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロースおよびその塩からなる群から選択される少なくとも1種である、(I-2)に記載する乳成分入り飲料の気泡保持能強化方法。
(I-4)さらに乳化剤を含有する(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する気泡保持能強化方法。
(I-5)さらに多糖類を含有する(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する気泡保持能強化方法。
(II)乳成分入り飲料の起泡化および気泡保持方法
(II-1)(I-1)乃至(I-5)のいずれかの方法によって気泡保持能が強化された乳成分入り飲料を、容器内で振盪して起泡化する工程を有する、乳成分入り飲料の起泡化および気泡保持方法。
本発明の方法によれば、乳成分入り飲料の気泡保持能力を増強することができるため、乳成分を含有する飲料の溶液内部に微細でかつ緻密な気泡を形成することができ、しかも形成された気泡を溶液の内部に長く安定的に保持することができる。このため、かかる本発明の方法を用いて調製した乳成分入り飲料によれば、飲用の際に必要に応じて振盪することによって、気泡を含み口当たりのよい(クリーミーな口当たり)飲料を簡単に調製することが可能になる。
本発明の気泡保持能強化方法は、乳成分入り飲料の調製に、原料の一つとして発酵セルロースを用いることによって実施することができる。
なお、発酵セルロースを飲料に用いることはすでに公知であり、例えば、飲料やドレッシングなどの水性食品の安定剤として酢酸菌が産生するセルロース(つまり発酵セルロース)の離解物を用いたり(特開昭62−83854号公報)、乳飲料においてクリーミングや白色浮遊物、オイルオフ、沈殿の発生を抑制する安定剤として発酵セルロースを用いること(特開2007−330256号公報)が知られている。しかしながら、起泡化乳成分入り飲料を調製するために、乳成分入り飲料の気泡保持能を強化することを目的として発酵セルロースを用いた例は一切ない。
本発明で用いられる発酵セルロースは、セルロース生産菌が生産するセルロースであればよく、特に限定されない。通常、発酵セルロースは、セルロース生産菌を既知の方法、例えば特開昭61−212295号公報、特開平3−157402号公報、特開平9−121787号公報に記載される方法に従って培養し、得られた培養物からセルロース生産菌を単離するか、または所望に応じて適宜精製することによって製造することができる。
ここでセルロース生産菌としては、アセトバクター属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属等に属する細菌が挙げられるが、好適にはアセトバクター属である。発酵セルロースを生産するアセトバクター属の細菌として、より具体的には、アセトバクター・パスツリアヌス株(例えば、ATCC10245等)、アセトバクター・エスピーDA株(例えば、FERMP−12924等)、アセトバクター・キシリナム株(例えば、ATCC23768、ATCC23769、ATCC10821、ATCC1306−21等)を挙げることができる。好ましくは、アセトバクター・キシリナム株である。
かかるセルロース生産菌を培養する培地及び条件としては、特に限定されず、常法に従うことができる。例えば、培地は、基本的に窒素源、炭素源、水、酸素及びその他の必要な栄養素を含有しており、上記微生物が増殖して目的の発酵セルロースを産生することができるものであればよく、例えばHestrin−Schramm培地を挙げることができる。なお、セルロースの生産性を向上させるために、培地中にセルロースの部分分解物、イノシトール、フィチン酸等を添加することもできる(特開昭56−46759号公報、特開平5−1718号公報)。培養条件としては、例えばpH5〜9、培養温度20〜40℃の範囲が採用され、発酵セルロースが十分産生されるまで培養が続けられる。培養方法は、静置培養、攪拌培養、通気培養のいずれでもよいが、好適には通気攪拌培養である。
発酵セルロースを大量生産するためには、多段階接種法が好ましい。この場合、通常、2段階の予備接種プロセス、一次接種発酵プロセス、二次接種発酵プロセス及び最終発酵プロセスからなる5段階の発酵プロセスが採用され、各プロセスで増殖された細菌について細胞の形態およびグラム陰性であることを確認しながら、次プロセスの発酵器に継代される。
発酵後、産生された発酵セルロースは培地から分離処理され、洗浄されて、適宜精製される。精製方法は特に限定されないが、通常、培地から回収した発酵セルロースを洗浄後、脱水し、再度水でスラリー化した後に、アルカリ処理によって微生物を除去し、次いで該アルカリ処理によって生じた溶解物を除去する方法が用いられる。具体的には、次の方法が例示される。
まず、微生物の培養によって得られる培養物を脱水し、固形分約20%のケーキとした後、このケーキを水で再スラリー化して固形分を1〜3%にする。これに水酸化ナトリウムを加えて、pH13程度にして攪拌しながら数時間、系を65℃に加熱して、微生物を溶解する。次いで、硫酸でpHを6〜8に調整し、該スラリーを脱水して再度水でスラリー化し、かかる脱水・スラリー化を数回繰り返す。精製された発酵セルロースは、必要に応じて乾燥処理を施すことができる。乾燥処理としては特に制限されることなく、自然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、スプレードライ、ドラムドライ等の公知の方法を用いることができる。好ましくはスプレードライ法、ドラムドライ法である。
かくして得られる発酵セルロースは、白色から黄褐色の物質であり、水に急速に分散できる非常に繊細な繊維性粒子からなる。なお、本発明で用いられる発酵セルロースは、上記方法で調製される発酵セルロースと同一若しくは類似の性質を有し、本発明の目的を達成しえるものであれば、その調製方法によって限定されるものではない。
本発明の方法において、乳成分入り飲料に配合する発酵セルロースの割合は、本発明の効果が得られる範囲であればよく、飲料の種類に応じて適宜調整することができる。通常、最終飲料100重量%中、0.01〜0.4重量%の範囲から適宜選択調整することができる。好ましくは0.02〜0.2重量%である。
本発明において発酵セルロースはそれ単独で用いることもできるが、他の高分子物質と組み合わせて用いることもできる。高分子物質と組み合わせて用いる態様としては、発酵セルロースと高分子物質とを複合化状態で用いる態様を挙げることができる。
発酵セルロースを高分子物質と複合化させる方法としては、特開平9−121787号公報に記載される2種類の方法を挙げることができる。
ここで第一の方法は、微生物を培養して発酵セルロースを産生させるにあたり、培地中に高分子物質を添加して培養を行い、発酵セルロースと高分子物質とが複合化した発酵セルロース複合化物として得る方法である。
また第二の方法は、微生物の培養によって生産された発酵セルロースのゲルを高分子物質の溶液に浸漬して、高分子物質を発酵セルロースのゲルに含浸させて複合化する方法である。発酵セルロースのゲルは、そのままか、あるいは常法により均一化処理を行ったのちに高分子物質の溶液に浸漬する。均一化処理は、公知の方法で行えばよく、例えばブレンダー処理や500kg/cmで40回程度の高圧ホモジナイザー処理、1000kg/cmで3回程度のナノマイザー処理などを用いた機械的解離処理が有効である。浸漬時間は、制限されないが、30分以上24時間程度、好ましくは1晩を挙げることができる。また、浸漬終了後は遠心分離や濾過などの方法で浸漬液を除去することが望ましい。さらに、水洗いなどの処理を行って過剰の高分子物質を除去すると、高分子物質と複合化された状態の発酵セルロースを取得することができ、複合化に利用されないで残存する高分子物質の影響を抑えることができる。
発酵セルロースとの複合化に使用される高分子物質としては、例として、キサンタンガム、カラギーナン、ガラクトマンナン(グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム等)、カシアガム、グルコマンナン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、タマリンドシードガム、ペクチン、サイリウムシードガム、ゼラチン、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ガティガム、マクロホモプシスガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カードラン、プルラン、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはその塩、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース誘導体、微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース、大豆多糖類、加工・化工でん粉、未加工でん粉(生でん粉)といった各種高分子物質を挙げることができる。
これらは一種単独で使用してもよいし、または2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
高分子物質として、好ましくはキサンタンガム、ガラクトマンナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはその塩を挙げることができる。ここでガラクトマンナンとして好ましくはグァーガムを、CMCの塩として好ましくはCMCのナトリウム塩を挙げることができる。高分子物質として、より好ましくはキサンタンガム若しくはグァーガムと、CMCまたはその塩を組み合わせて使用する態様である。
本発明の方法において、発酵セルロースは、より好ましくは、前述するキサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩からなる群から選択される少なくとも1種を、複合化させた状態で用いられる。特に好ましくは、グァーガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩からなる群から選択される少なくとも1種を複合化させた状態での使用である。かかる複合化された発酵セルロースを用いることにより、より好適に、乳成分入り飲料の内部に微細で緻密な気泡を形成することができ、かつ形成された気泡を飲料溶液内に安定して保持させることができる。
なお、上記高分子化合物と複合化された発酵セルロースは商業的に入手可能であり、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンアーティスト[登録商標]PX(キサンタンガムおよびCMCのナトリウム塩と発酵セルロースとの複合体の製剤)、サンアーティスト[登録商標]PG(グァーガムおよびCMCのナトリウム塩と発酵セルロースとの複合体の製剤)などを挙げることができる。
本発明の方法において、発酵セルロースを高分子物質と組み合わせて使用する場合、乳成分入り飲料に配合する発酵セルロースの割合としては、最終飲料100重量%中、通常0.01〜0.4重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%;高分子物質の割合としては、最終飲料100重量%中、0.001〜0.3重量%、好ましくは0.002〜0.15重量%を挙げることができる。高分子物質としてキサンタンガム、グァーガムおよびCMCのナトリウム塩の少なくとも一方を使用する場合、最終飲料100重量%中、キサンタンガムまたはグァーガムの割合として0.0005〜0.15重量%、好ましくは0.001〜0.075重量%、またCMCのナトリウム塩の割合として0.0005〜0.15重量%、好ましくは0.001〜0.075重量%を挙げることができる。
また本発明の効果を妨げない範囲において、乳成分入り飲料の調製に際して、原料として、発酵セルロースまたは発酵セルロースと高分子物質に加えて、多糖類を用いることもできる。多糖類を使用することで、飲料中における気泡の食感を変えることができる。かかる多糖類としては、キサンタンガム、カラギーナン、ガラクトマンナン(グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム等)、カシアガム、グルコマンナン、ネイティブ型ジェランガム、タマリンドシードガム、ペクチン、サイリウムシードガム、ゼラチン、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ガティガム、マクロホモプシスガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、プルラン、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはその塩、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース誘導体、微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース、大豆多糖類、加工・化工でん粉、未加工でん粉(生でん粉)を挙げることができる。
かかる多糖類を用いる場合、乳成分入り飲料に配合する多糖類の割合としては、最終飲料100重量%中、0.01〜1重量%、好ましくは0.02〜0.5重量%を挙げることができる。
また本発明の効果を妨げない範囲において、乳成分入り飲料の調製に際して、原料として、発酵セルロースまたは発酵セルロースと高分子物質に加えて、乳化剤を用いることもできる。乳化剤を使用することで、気泡の食感を変化させたり、気泡をより一層長期間保持させる効果を付与することができる。
かかる乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、蒸留モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ポリソルベートを挙げることができる。好ましくは、蒸留モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステルである。かかる乳化剤を用いる場合、乳成分入り飲料に配合する乳化剤の割合としては、最終飲料100重量%中、0.01〜1重量%、好ましくは0.03〜0.4重量%を挙げることができる。
本発明が対象とする飲料は、乳成分を含有する飲料であればよく、特に制限されるものではない。ここで、乳成分としては、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、濃縮乳、生クリーム、練乳、バター、脱脂乳、クリームパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダーを挙げることができる。好ましくは脱脂粉乳、ホエイパウダーである。なお、飲料中に含まれる乳成分の割合としては、無脂乳固形分に換算して0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは2〜4重量%を挙げることができる。また、本発明の方法は、乳成分入り飲料中に脂肪分含量が0〜5重量%、好ましくは0.02〜1重量%である飲料に好適に用いることができる。
飲料のpHは特に制限されないが、通常pH3.3〜7.5、好ましくはpH3.5〜7を挙げることができる。
本発明が対象とする好適な乳成分入り飲料の具体例として、コーヒー乳飲料(ミルク入りコーヒー)、ミルクティー(ミルク入り紅茶)、牛乳、ミルクセーキ、ミルクシェイク、ミルクココア、イチゴミルク、酸乳飲料等の乳飲料;ミルク入り緑茶、ミルク入り抹茶などの乳成分入り茶飲料;イチゴミルク、バナナミルク、メロンミルク、スムージー等のミルク入り果汁及び果実飲料;クリームスープなどの乳成分入りスープ;ヨーグルト飲料、乳酸菌飲料、酸乳飲料などの酸性の乳飲料等の各種飲料が挙げられる。これらの飲料の中でもコーヒー乳飲料、ミルクティー、ミルクセーキ、ミルクシェイク、ミルク入り抹茶、酸乳飲料が好ましい。
ここで上記飲料を充填する容器の種類としては、特に限定されるものではないが、スチール缶、紙パック、ガラス瓶、ポリエチレンテレフタレートボトル(PETボトル)、アルミ缶等が挙げられる。通常、容器への食用液、好ましくは飲料の充填量を、容器の全容量の30〜90容量%、好ましくは50〜70容量%程度とし、空隙を設けておくことで、容器を振った際に気泡を容易に形成することができる。なお、かかる充填量は、調製する飲料に応じて適宜変更することが可能である。例えば、起泡性を有するコーヒー乳飲料を調製する場合の容器への充填量は70〜90容量%程度でよく、シェイク風飲料を調製する場合は30〜50容量%程度とする等、任意の範囲で調節することができる。
本発明が対象とする飲料の製造は、制限されないが、例えば、前述する少なくとも発酵セルロースを水に、他の原料とともに溶解し、これに乳成分を加え、次いで別途抽出したコーヒーエキス、紅茶エキスまたは果汁成分など、飲料の種類に応じた原料を添加し、必要に応じてpHを調整した後に均質化し、容器に充填することによって調製することができる。また通常、容器に充填後、殺菌処理が施される。殺菌処理は、特に制限されず、通常のレトルト殺菌、プレート殺菌、オートクレーブ殺菌などの方法を採用することができる。
本発明は、少なくとも発酵セルロースを配合した上記飲料が充填された容器を、飲食時に振盪することによって、実施される。振盪方法は、特に制限されないが、例えば、容器を手にとって10秒〜1分間上下に振る方法を挙げることができる。斯くして、食用液、好ましくは飲料の表面だけでなく、内部にも微細で緻密な気泡、形状保持性に優れた気泡を形成することができる。
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは「重量部」を、「%」は「重量%」を意味するものとする。なお、実施例において使用する「サンアーティスト[登録商標]PG」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)は、発酵セルロースを20%、グァーガムを6.7%、CMCのナトリウム塩を6.7%およびデキストリンを66.6%の割合で含む粉末状の製剤である。
実施例1 缶入りコーヒー乳飲料
表1の処方に従い、各種の缶入りコーヒー乳飲料を調製した。
<処方>
1.コーヒーエキス(L値21、Brix 4.0) 27.52(%)
2.砂糖 5.0
3.脱脂粉乳 3.5
4.10%w/v 重曹水溶液 pH6.8に調整
5.添加剤(表1) 表1参照
水にて全量 100.0mlに調整
Figure 2009278905
<調製方法>
1)砂糖、脱脂粉乳、および各種の添加剤を水に加え、80℃で10分間撹拌溶解し、溶解後10℃以下に冷却する。
2)上記で調製した溶液にコーヒーエキスを加えて、重曹水溶液でpH6.8に調整する。
3)上記で調整した溶液を、75℃で均質化する(第一段:10Mpa、第二段:5Mpa)。
4)上記で得られた溶液130gを、190g容量の缶に充填する。
5)これを85℃で60分間加熱殺菌する。
6)これを冷蔵庫に入れて10℃以下に冷却保存する。
<実験方法>
1)上記方法で調製した各種の缶入りコーヒー乳飲料20mlを、100ml容量のメスシリンダーにいれて、激しく20回振って泡立てて、形成した気泡の高さ(気泡容積部の高さ:cm)を読み取る(起泡性)。
2)上記で気泡を形成させた各種の缶入りコーヒー乳飲料を室温において、経時的(5分、10分、20分、30分)に気泡の高さ(気泡容積部の高さ:cm)を読み取る(気泡保持力の評価)。
3)室温放置から30分後に、飲料中の気泡を目視で観察し、またメスシリンダーからコップに移し替えて泡の移動の様子を観察する。また、飲用して食感を評価する。
結果を表2および表3に示す。
Figure 2009278905
Figure 2009278905
<結果>
上記表2に示すように、発酵セルロースを含有するサンアーティストPGを添加してコーヒー乳飲料を調製することによって、飲料の気泡保持力を増強され、飲料内に気泡を安定に保持することができることができた。また、表3に示すように、この飲料(30分後)を肉眼で観察すると微細で緻密な気泡が明瞭に飲料中に残っており、これをコップに注ぐと飲料とともに泡もコップへ移し替えることができた。また、これを飲用すると、泡ごと飲料を飲んでいる食感があった。
一方、添加剤を添加しない飲料(対照例)ならびに発酵セルロースを含有しない他の添加剤を配合した飲料(比較例1〜4)はいずれも、飲料中の気泡が荒く消えやすいため、飲んだときに泡を感じることができなかった。また、これら比較例の飲料は、食感が糊っぽくなったり、ザラついたりと、添加剤を配合することで副作用が生じてしまった。
実施例2〜7 缶入りコーヒー乳飲料
下記の処方に従い、各種の缶入りコーヒー乳飲料(pH6.8)を調製した。なお、調製方法は、実施例1の乳飲料の方法に従った。
<処方>
1.コーヒーエキス(L値21、Brix 4.0) 27.52%
2.砂糖 5.0
3.脱脂粉乳 3.5
4.10%w/v 重曹水溶液 pH6.8に調整
5.添加剤(表4) 表4参照
水にて全量 100.0mlに調整
Figure 2009278905
<実験方法>
1)上記方法で調製した各種の缶入りコーヒー乳飲料20mlを、100ml容量のメスシリンダーにいれて、激しく20回振って泡立てて、形成した気泡の高さ(気泡容積部の高さ:cm)を読み取る(起泡性)。
2)上記で気泡を形成させた各種の缶入りコーヒー乳飲料を室温において、経時的(5分、10分、20分、30分)に気泡の高さ(気泡容積部の高さ:cm)を読み取る(気泡保持力の評価)。
3)室温放置から30分後に、飲料中の気泡を目視で観察し、またメスシリンダーからコップに移し替えて泡の移動の様子を観察する。また、飲用して食感を評価する。
結果を表5および表6に示す。
Figure 2009278905
Figure 2009278905
<結果>
上記表5および6に示すように、発酵セルロースを含有するサンアーティストPGを添加してコーヒー乳飲料を調製することによって、飲料の気泡保持力を増強され、飲料内に気泡を安定に保持することができることができた。なお、サンアーティストPGの配合量を増加させていくと、気泡自体はしっかりしていき、飲料をコップに移したときに気泡も飲料とともにコップに移動はするものの(表6参照)、0.5%を境として気泡容積部の割合が低下する傾向(表5)、ならびに若干の糊感が生じる傾向があった(表6)。この実施例の場合(コーヒー乳飲料)、気泡の量、気泡保持性、および気泡の食感から総合的に判断して、サンアーティストPGの配合量として0.2〜0.5%、特に0.3〜0.4%が好ましく、かかる割合でサンアーティストPGを用いることでバランスに優れた起泡性飲料が調製できることがわかった。
実施例8〜10 缶入りコーヒー乳飲料
下記の処方に従い、各種の缶入りコーヒー乳飲料(pH6.8)を調製した。なお、調製方法は、実施例1の乳飲料の方法に従った。
<処方>
1.コーヒーエキス(L値21、Brix 4.0) 27.52%
2.砂糖 5.0
3.脱脂粉乳 3.5
4.10%w/v 重曹水溶液 pH6.8に調整
5.添加剤(表7) 表7参照
6.乳化剤(表7) 表7参照
水にて全量 100.0mlに調整
Figure 2009278905
<実験方法>
1)上記方法で調製した各種の缶入りコーヒー乳飲料20mlを、100ml容量のメスシリンダーにいれて、激しく20回振って泡立てて、形成した気泡の高さ(気泡容積部の高さ:cm)を読み取る(起泡性)。
2)上記で気泡を形成させた各種の缶入りコーヒー乳飲料を室温において、経時的(5分、10分、20分、30分)に気泡の高さ(気泡容積部の高さ:cm)を読み取る(気泡保持力の評価)。
3)室温放置から30分後に、飲料中の気泡を目視で観察し、またメスシリンダーからコップに移し替えて泡の移動の様子を観察する。また、飲用して食感を評価する。
結果を表8および表9に示す。
Figure 2009278905
Figure 2009278905
<結果>
上記表8に示すように、発酵セルロースを含有するサンアーティストPGに加えて乳化剤を添加してコーヒー乳飲料を調製することによって、飲料の気泡保持力をより一層増強され、飲料内に気泡を安定に保持することができることができた。気泡保持力は乳化剤のHLBの違いによって左右されなかったが、HLB値が高い乳化剤を使用すると、気泡が微細で柔らかい食感を与えることができ、またHLB値が低い乳化剤を使用すると、しっかりとした気泡を形成し、泡の感触をしっかりと感じる飲料を調製することができた。このことから、飲料に種類や目的に応じて乳化剤のHLBを適宜調整することで、所望の食感を有する飲料を調製することができることがわかる。
実施例11〜12 瓶入りミルクティー
下記の処方に従い、各種の瓶入りミルクティー(pH6.5)を調製した。
<処方>
1.紅茶エキス(Brix:0.7×37.1%) 0.26(%)
2.砂糖 6.5
3.脱脂粉乳 3.5
4.クエン酸三ナトリウム 0.05
5.添加剤(下表) 下表参照
6.乳化剤(下表) 下表参照
水にて全量 100.0mlに調整
Figure 2009278905
<調製方法>
1)セイロン茶葉100gに53倍容量の85℃熱水(5300g)を加えて4分間浸漬抽出し、濾紙にて濾過後、冷却する(紅茶エキス)。
2)砂糖、脱脂粉乳、クエン酸三ナトリウム、および各種の添加剤を水に加え、65〜70℃で10分間撹拌溶解する。
3)上記溶液に紅茶エキスを加えて、70℃まで加温し、均質化する(第一段:10Mpa、第二段:5Mpa)。
4)上記で得られた溶液を瓶に充填する。
5)これを85℃で60分間加熱殺菌する。
6)これを冷蔵庫に入れて10℃以下に冷却保存する。
<実験方法>
1)上記方法で調製した各種の瓶入りミルクティー80mlを、容積100mlの蓋付き瓶に充填した。まず試料の中心部をピペットにて11ml採取し、その重量を測定する(起泡前11mL重量)。そして、激しく30回振って泡立てて、15分間放置後、再度30回振って泡立てて、再び試料の中心部をピペットにて11ml採取し、その重量(起泡後11mL重量)を測定する。
2)起泡前11mL重量と起泡後11mL重量から、下式に従って飲料中に含有されている気泡の保持性を「オーバーラン率(%)」として求める。
Figure 2009278905
3)上記で気泡を形成させた各種の瓶入りミルクティーを室温に置いて、気泡が完全に消えるまでの時間と、起泡24時間後における気泡の様子を目視で観察する(長期気泡保持性)。
結果を表10に示す。
Figure 2009278905
<結果>
上記表10に示すように、発酵セルロースを含有するサンアーティストPGに、乳化剤を併用することによって、サンアーティストPGが有する気泡保持能力を格段に増強することができ、多くの気泡を飲料内に保持することができた。また、サンアーティストPGと乳化剤とを併用することによって、飲料の上部にも微細で多くの気泡が長期間保持することができた。
実施例13〜20 缶入りコーヒー乳飲料
下記の処方に従い、各種の缶入りコーヒー乳飲料(pH6.8)を調製した。なお、調製方法は、実施例1の乳飲料の方法に従った。
<処方>
1.コーヒーエキス(L値21、Brix 4.0) 27.52%
2.砂糖 5.0
3.脱脂粉乳 3.5
4.10%w/v 重曹水溶液 pH6.8に調整
5.添加剤(表11) 表11参照
6.乳化剤(表11) 表11参照
7.多糖類(表11) 表11参照
水にて全量 100.0mlに調整
Figure 2009278905
<実験方法>
1)上記方法で調製した各種の缶入りコーヒー乳飲料20mlを、100ml容量のメスシリンダーにいれて、激しく20回振って泡立てて、形成した気泡の高さ(気泡容積部の高さ:cm)を読み取る(起泡性)。
2)上記で気泡を形成させた各種の缶入りコーヒー乳飲料を室温において、経時的(5分、10分、20分、30分)に気泡の高さ(気泡容積部の高さ:cm)を読み取る(気泡保持力の評価)。
3)室温放置から30分後に、飲料中の気泡を目視で観察し、またメスシリンダーからコップに移し替えて泡の移動の様子を観察する。また、飲用して食感を評価する。
結果を表12および表13に示す。
Figure 2009278905
Figure 2009278905
<結果>
上記表13に示すように、発酵セルロースを含有するサンアーティストPGと乳化剤に加えて、多糖類を添加してコーヒー乳飲料を調製することによって、サンアーティストPGと乳化剤によって強化された飲料の気泡保持力はそのままに、飲料に様々な食感を付与することができた。このことから、対象とする飲料の種類や目的に応じて、多糖類を使い分けることで、当該飲料に所望の食感を付与することができることがわかる。
実施例21〜23 瓶入りミルクティー
下記の処方に従い、各種の瓶入り紅茶乳飲料(pH6.5)を調製した。なお、調製方法は、実施例11の乳飲料の方法に従った。
<処方>
1.紅茶エキス(Brix:0.7×37.1%) 0.26%
2.砂糖 6.5
3.脱脂粉乳 3.5
4.クエン酸三ナトリウム 0.05
5.添加剤(表14) 表14参照
6.乳化剤(表14) 表14参照
7.多糖類(表14) 表14参照
水にて全量 100.0mlに調整
Figure 2009278905
<実験方法>
1)上記方法で調製した各種の瓶入りミルクティー20mlを、100ml容量のメスシリンダーにいれて、激しく20回振って泡立てて、形成した気泡の高さ(気泡容積部の高さ;cm)を読み取る(起泡性)。
2)上記で気泡を形成させた各種の瓶入りミルクティーを室温において、経時的(5分、10分、20分、30分)に気泡の高さ(気泡容積部の高さ:cm)を読み取る(気泡保持力の評価)。
3)室温放置から30分後に、飲料中の気泡を目視で観察し、またメスシリンダーからコップに移し替えて泡の移動の様子を観察する。また、飲用して食感を評価する。
結果を表15および表16に示す。
Figure 2009278905
Figure 2009278905
<結果>
上記表15に示すように、発酵セルロースを含有するサンアーティストPGに乳化剤または乳化剤と微結晶セルロースを添加してミルクティーを調製することによって、飲料の気泡保持力がより一層増強され、飲料内に気泡を安定に保持することができた。また、サンアーティストPGおよび乳化剤に加えて微結晶セルロースを用いることによって、より微細で緻密な気泡を形成することができた。このとき、HLB値が高い乳化剤を使用すると、気泡が微細で柔らかい食感を与えることができ、またHLB値が低い乳化剤を使用すると、しっかりとした気泡を形成し、泡の感触をしっかりと感じる飲料を調製することができた。このことから、飲料に種類や目的に応じて乳化剤のHLBを適宜調整することで、所望の食感を有する飲料を調製することができることがわかる。

Claims (6)

  1. 乳成分入り飲料の気泡保持能強化方法であって、原料の一つとして発酵セルロースを用いて乳成分入り飲料を調製することを特徴とする上記方法。
  2. 上記乳成分入り飲料の調製に際して、発酵セルロースを、高分子物質と複合化させた状態で用いることを特徴とする、請求項1に記載する乳成分入り飲料の気泡保持能強化方法。
  3. 上記高分子物質が、キサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロースおよびその塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載する乳成分入り飲料の気泡保持能強化方法。
  4. さらに乳化剤を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載する気泡保持能強化方法。
  5. さらに多糖類を含有する請求項1乃至4のいずれかに記載する気泡保持能強化方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれかの方法によって気泡保持能が強化された乳成分入り飲料を、容器内で振盪して起泡化する工程を有する、乳成分入り飲料の起泡化および気泡保持方法。
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