JP5120355B2 - 無機系アンカーの水中施工方法 - Google Patents
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Description
有機系アンカーは、濡れた壁面では接着力が低下するため、通常、水中施工には用いられておらず、主に、水中施工には、無機系のカプセルタイプのアンカーが用いられている。
また、無機系カプセルタイプのアンカー材は、アンカー筋の打ち込みの際、回転打撃により打ち込まれ、かかる水中での回転打撃による打ち込みは、水過剰の要因となる。
また施工方法においても、目地等の細かい箇所への少量の施工は手間がかかり煩雑であり、特に上向き施工が難しく、均質に施工をすることは難しかった。
かかる撹拌棒を備える構造を有する吐出機は、装置の構造が煩雑であり、また混合されるべき複数の成分、例えば第1成分と第2成分とが予め充填されていると重量が重くなるとともに搬送にも手間がかかり、従って高価なものとなってしまう。
さらに本発明の目的は、無機系アンカー用カートリッジを用いて、無機系アンカーの撹拌混合作業と充填作業を同一の容器で行い、撹拌混合作業中の粉塵の発生をほぼゼロに抑えるとともに、水中施工における穿孔内充填を簡便に行うことができ、アンカー筋を有効に固定することができる、無機系アンカーの水中施工方法を提供することである。
好適には、上記発明の無機系アンカーの水中施工方法において、前記水硬性組成物粉体には、水硬性粉体及び増粘剤が含有されていることを特徴とする、無機系アンカーの水中施工方法である。
また好適には、上記本発明の無機系アンカーの水中施工方法は、カートリッジの該シリンダ内には、該水硬性組成物の粉体が該ピストン壁側に偏って充填され、該吐出口側の該シリンダの内面と、前記充填された水硬性組成物粉体の端面との間には空洞が形成されているカートリッジを用いることを特徴とする、無機系アンカーの水中施工方法である。
より好適には、上記本発明の無機系アンカーの水中施工方法は、前記カートリッジの該ピストン壁が該シリンダの内面と密着する形状であることを特徴とする、無機系アンカーの水中施工方法である。
更にまた好適には、上記本発明の無機系アンカーの水中施工方法は、該吐出口から無機系アンカーを押出す際には、該カートリッジをシーリングガンに装着して行うことを特徴とする、無機系アンカーの水中施工方法である。
即ち、アンカー筋を回転することなく差し込んだ後も、アンカー筋の抜けがほとんどなく、強固にアンカー筋が固定される。
本発明の無機系アンカーの水中施工方法は、少量の水硬性組成物を水中で施工したいときに、所望するモルタル等の水硬性組成物を簡便に調製することができるとともに、水中の穿孔内部までの充填を専門家でなくても手軽に施工することができる。
また、水中施工する際に、施工現場で簡便に無機系アンカーを調製することができ、モルタル等の無機系アンカーを調製するための特別な道具を必要とせず、水を加えてカートリッジを振ることで容易に撹拌して簡単にモルタル等の無機系アンカーを調製することができるとともに、少量簡便に水中施工をそのまま手軽に実施することができる。
水中施工の間、モルタル等の無機系アンカーは密閉したカートリッジの中で混合撹拌されて施工され、通常の混合容器のように別の容器で調製して水中現場までホース等で搬送する必要がない。
このように、本発明の無機系アンカーの水中施工方法は、特に無機系アンカー用カートリッジを用いて、その付属のノズルによる注入工法により、水中施工を簡便に実施することができる。
本発明の無機系アンカー水中施工方法は、コンクリート構造物の水中の穿孔に無機系アンカーを水中施工するにあたり、一端に吐出口を有するシリンダと、該シリンダ内において、該吐出口に向かって移動可能なピストン壁と、該シリンダ内に水硬性組成物粉体が収容されているカートリッジに、前記該吐出口から液体を導入し、該カートリッジに振動を与え該水硬性組成物粉体と、該液体とを撹拌混合して該カートリッジ内で無機系アンカーを調製した後、該ピストン壁を該吐出口側に移動させて該吐出口から無機系アンカーを押出すことにより、水中の穿孔内の水と置換することにより充填する、無機系アンカーの水中施工方法である。
ここで、無機系アンカーは、既存のコンクリート構造物の水中の穿孔とアンカー筋を、無機系材料、特に水硬性組成物で硬化させ、物理的に固着させるアンカーをいう。
当該カートリッジは、図1に示すように、シリンダ1、吐出口封止用アルミシート4、移動可能なピストン壁2及び水硬性組成物粉体3を備える。
シリンダ1の形状は円筒形等であり、ピストン壁2がシリンダ1の吐出口6に向かってシリンダ1の内壁に沿ってシリンダ1内を移動できる距離が長くなるような形状、すなわちピストン壁2が可能な限り吐出口6に近づけるような形状を採用する。
これにより、シリンダ内部で液体と混合されて得られた水硬性組成物を水中で無駄なく必要量押出して、穿孔内の水を置換することで穿孔内を充填することができる。
吐出口6を封止する手段としては、図1に示すように、吐出口6をアルミシート4のような封止シートを設けることによっても、吐出口6にキャップを備えることによっても、またアルミシート4を設けるとともにキャップで封止することによっても、いずれの手段を用いてもよい。
このように該吐出口6を封止することで、内部と外気とは遮断され、シリンダ1内部に収容されている水硬性組成物粉体3が空気中に含まれる水分と接触することを回避でき、本発明の無機系アンカーの水中施工方法に適用する無機系アンカー用カートリッジの寿命を長くすることが可能となる。
これにより、シリンダ1の内壁に沿ってピストン壁2がスムースに移動することが可能となるとともに、ピストン壁2とシリンダ1との内壁との間がシールされる。
例えば、シリコーンシーラントのカートリッジに用いられるピストン壁2の多くが円錐台状の形状をしており、該ピストン壁2の一部の外周がシリンダ1の内壁の内周より小さいと、ピストン壁2とシリンダ1の内壁との間に隙間が形成され、ピストン壁2がシリンダ1の吐出口6の方向に移動する際に、水硬性組成物中に含まれる砂のような骨材が該間隙に入って、ピストン壁2の移動を妨げるようになり、好ましくない。
水硬性組成物粉体としては、水硬性粉体及び増粘剤、水硬性粉体及び増粘剤及び非水硬性粉体、更には、これらの粉体に反応促進剤等を添加したものを使用することができる。
水硬性粉体とは、水と接触して硬化する粉体を意味し、好ましくはポルトランドセメント、珪酸カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムフルオロアルミネート、カルシウムサルフォアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、リン酸カルシウム、半水又は無水石膏及び自硬性を有する生石灰の粉体からなる群より選ばれた少なくとも一種類の粉体が含まれる。
前記水硬性粉体は、成形時の可使時間の点から平均粒径10〜50μm程度のものが好ましく、また、高強度を確保する点から、ブレーン比表面積が2500cm2/g以上のものであることが好ましい。
非水硬性粉体としては、水酸化カルシウム粉末、二水石膏粉末、炭酸カルシウム粉末、スラグ粉末、フライアッシュ粉末、珪石粉末、珪砂粉末、粘土粉末及びシリカヒューム粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種類の粉体が好ましい。
増粘剤としては、公知の増粘剤を使用することができ、例えばメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
該増粘剤を含むことにより、得られる水硬性組成物である無機系アンカーは水中不分離性を確保することができる。
該増粘剤は、前記水硬性粉体100質量部に対して、0.01〜2.0%質量部配合される。
増粘剤が少なすぎると水中での材料分離につながり、多すぎると流動性が悪化して、水中における穿孔への充填性を低下させることがある。
上記水硬性組成物粉体3は、該カートリッジの容器を立てた場合、上記ピストン壁2側に偏って充填され、空洞5が、吐出口6側に出現することが望ましい。
すなわち、該空洞5は、該吐出口6側のシリンダ1の内面と、前記充填された水硬性組成物粉体3の端面との間に設けられることが好ましい。
水硬性組成物粉体3と反応する水等の液体Aの容量は、水硬性組成物粉体3の成分や、得られる水硬性組成物である無機系アンカーの所望する粘性により変動するものであり、予め設定することができるものである。
これにより、シリンダ1内で得られる水硬性組成物である無機系アンカーの容量を可能な限り多くするとともに、導入した液体Aと水硬性組成物粉体3とが振動によりスムースに撹拌混合することができる。
例えば、本発明の図1で示される無機系アンカー用カートリッジのノズルを取り除いて、吐出口6を封止していた、内部のアルミシート4を破断して、水等の液体Aを、該シリンダ1の該吐出口6よりシリンダ1内に設けられた空洞5に導入する。
予め設定された容量の液体Aを該空洞5内に導入したあと、例えばキャップ等の簡易な封止手段7によって、該吐出口6を仮密封する。
振動は、人力によってカートリッジを上下、左右等に振る方法や、機械を用いて振動を与える方法であってもよく、物理的に、シリンダ1内の水硬性組成物粉体3と導入された液体Aとが均質に混合される方法であれば採用することができる。
従って、水硬性組成物粉体3と液体Aとを撹拌混合して水硬性組成物である注入式の無機系アンカー10を得るのに、特別な装置等を必要とせず、簡便に混合することが可能となる。
シーリングガンまたはコーキングガンは、カートリッジを装着するカートリッジ用ガンとして使用することができる。
当該カートリッジは、キャップ等の封止手段7をはずした状態で、ノズル11の先端をカットし吐出口6に取り付け、カートリッジ用ガンに装着されて、施工に用いられる。かかる状態を模式的に示したのが図3である。
該胴体支持部材22は、先端支持部材21と連結されている側とは逆側で、ボディ23と連結されている。さらに、該ボディ23には把持部24が固定され、該ボディの支点29を中心に可動するレバー25を片手でも動作させ易いよう構成されている。レバー25の動きに連動する連動部26が設けられ、連動部26の移動により押圧軸27がカートリッジ方向に移動するよう構成されている。押圧軸27は、連動部26の動作によりカートリッジ方向のみに移動可能とされている。また、ピストン壁2は、その外気側、すなわち水硬性組成物10と接しているピストン壁2の面とは逆の面側で、ガン20の押圧軸27の押圧部28と接している。
レバー25と連動部26とは自動的に元の位置に戻るよう構成されているが、連動部26が戻る際には、押圧軸27は移動しないよう構成され、レバー25を把持部24側に引き寄せるたび毎に、押圧軸27がカードリッジ方向のみに移動し、水硬性組成物である無機系アンカー10を水中で穿孔奥から吐出させて、穿孔の奥部分より、無機系アンカーを充填する。
無機系アンカーは、水中施工での水分の侵入を抑制し、予め充填に適した流動性を確保しながら、水中施工後に所望するする最適の水―セメント比となるように調整することも可能である。
該アンカー筋は回転させることなく、ゆっくりと挿入することが良く、例えば手で挿入することができるが、アンカー筋のサイズによっては、手での挿入が困難となる場合もあり、その場合には、ハンマーによる打ち込みによって挿入することもできる。かかる場合であっても、アンカー筋を回転させず、ハンマーで打ち込む。
本発明においては、アンカー筋は回転させないで挿入することができ、これにより水中で施工する場合に、余分な水を巻き込むことなく施工することが可能となる。また、回転させるために電動工具を用いる必要もなく、水中での施工に適している。
本発明の注入式無機系アンカーを以下の方法で調製した。
図1に示すカートリッジの内部に、調合されたアンカー材料(セメフォースアンカー:住友大阪セメント株式会社製)3を、該カートリッジの内部に空洞5が形成されるように充填した。該アンカー材料は、水硬性組成物100質量部に対して、メチルセルロース(商品名:マーポローズ、松本油脂製薬株式会社製)が、0.1質量部配合されている。充填するセメント3及び空洞5(配合される水の容量とほぼ同容量)は、図2に示すように、得られる水硬性組成物である無機アンカーが、水―セメント質量比が35%となるように調整した。該カートリッジの空洞5に、水Aを添加して、吐出口6を封止して、該カートリッジを上下することでよく撹拌して、モルタルを調製した。
また、比較のために、無機系アンカーであるカプセルタイプのパーフィックスハーモニックアンカー;MC−16(エヌパット社製:比較例1)を用いた。比較例1のカプセルタイプは直接孔内に挿入し、その上から下記鉄筋を、回転打撃させながら挿入した。
該孔31に、実施例1の注入材を備える各カートリッジガンを用いて、ノズルを前記孔31内の奥部に設置し(図3(a))、該ノズルから各注入無機アンカーを押出して、穿孔内の水を無機系アンカーで置換するように奥から順次充填した(図3(b))。具体的には、前記したように、該ガンのノズル11を、水中の穿孔の奥に挿入して、レバー25を引き寄せることによりピストン壁2を移動させ、該ノズル11より上記削孔に使用量18ccで前記孔奥より充填した。
注入後に、挿し筋(異型鉄筋D16:材質SD295A、長さ450mm)を5本、回転させることなく水中で手で挿入した(実施例)。
24時間経過後、各コンクリートを水中より取り出して、該無機系アンカーからの鉄筋の引き抜き試験を行った。引き抜き試験は、センターホール型油圧ジャッキを用い、チャックで鉄筋を直接つかみ、行った。
その平均値を表1に示す。
前記引き抜き試験を行って、鉄筋が破断した場合には、アンカー筋が水中で強固に固定されていることを示す。また、アンカーとコンクリートとの接着面が剥離、破断したり、一部アンカーが破壊してアンカー筋が抜けた場合には、アンカー筋は十分な強度で固定されていないことを表す。
OK;鉄筋破断、コンクリートがコーン状で破壊
NG;接着面剥離、鉄筋抜け
2 ピストン壁
3 水硬性組成物粉体
4 アルミシート
5 空洞
6 吐出口
7 封止手段
A 液体
10 水硬性組成物
11 ノズル
20 カートリッジ用ガン
21 先端支持部材
22 胴体支持部材
23 ボディ
24 把持部
25 レバー
26 連動部
27 押圧軸
28 押圧部
29 支点
30 コンクリート構造体
31 乾燥した孔
B 水
Claims (8)
- コンクリート構造物の水中穿孔に無機系アンカーを水中施工するにあたり、
一端に吐出口を有するシリンダと、
該シリンダ内において、該吐出口に向かって移動可能なピストン壁と、
該シリンダ内に水硬性組成物粉体が収容されているカートリッジに、前記該吐出口から液体を導入し、該カートリッジに振動を与え該水硬性組成物粉体と該液体とを撹拌混合して該カートリッジ内で無機系アンカーを調製した後、該ピストン壁を該吐出口側に移動させて該吐出口から無機系アンカーを押出して水中穿孔内に充填することを特徴とする、無機系アンカーの水中施工方法。 - 請求項1記載の無機系アンカーの水中施工方法において、前記水硬性組成物粉体には、水硬性粉体及び増粘剤が含有されていることを特徴とする、無機系アンカーの水中施工方法。
- 請求項1又は2記載の無機系アンカーの水中施工方法において、水中の穿孔内に無機系アンカーが充填された後、該穿孔内にアンカー筋を回転させることなく挿入することを特徴とする、無機系アンカーの水中施工方法。
- 請求項1〜3いずれかの項記載の無機系アンカーの水中施工方法において、カートリッジの該シリンダ内には、該水硬性組成物の粉体が該ピストン壁側に偏って充填され、該吐出口側の該シリンダの内面と、前記充填された水硬性組成物粉体の端面との間には空洞が形成されているカートリッジを用いることを特徴とする、無機系アンカーの水中施工方法。
- 請求項4に記載の無機系アンカーの水中施工方法において、前記カートリッジの該空洞の容積は、前記充填された水硬性組成物粉体と反応する液体を該吐出口を経て導入すべき容量より大きいことを特徴とする、無機系アンカーの水中施工方法。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の無機系アンカーの水中施工方法において、前記カートリッジの該ピストン壁は該シリンダの内面と密着する形状であることを特徴とする、無機系アンカーの水中施工方法。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の無機系アンカーの水中施工方法において、該カートリッジの該吐出口から液体を導入し、該カートリッジに振動を与え該水硬性組成物粉体と該液体とを撹拌混合し、該ピストン壁を該吐出口側に移動させて該吐出口から無機系アンカーを、穿孔内の奥から押出すことを特徴とする、無機系アンカーの水中施工方法。
- 請求項7に記載の無機系アンカーの水中施工方法において、該吐出口から水硬性組成物を押出す際には、該カートリッジをシーリングガンに装着して行うことを特徴とする、無機系アンカーの水中施工方法。
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