JP2018080092A - 水硬性組成物及びこれを用いたアンカー定着カプセル - Google Patents

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Abstract

【課題】冷水を用いて低温下で打設しても速やかに硬化する速硬性と、打設初期に高い強度を発現する早強性とを有し、さらに長期にわたって高強度を維持できるとともに、施工時に流動性に富んでいることにより、確実に削孔内を充填でき、機材不要でアンカーボルトを挿入できるという施工性に優れる水硬性組成物、及びこれを用いたアンカー定着カプセルを提供する。【解決手段】水硬性組成物は、水との接触により最高で10℃の作業温度及び/又は周辺温度で硬化する寒冷地用の水硬性組成物であって、ポルトランドセメント、アルミナセメント、及び急結剤を含有する水硬成分と、カオリンを主成分とする強度増進剤と、流動化剤と、凝結調整剤とを含むものである。【選択図】図1

Description

本発明は、セメントを含有する水硬性組成物、及びこれを容器に封入したアンカー定着カプセルに関する。
カルバート、ダム堤体、トンネル、建物のような既存のコンクリート製人工構造物や、岩盤、自然崖のような地盤の耐震強度や耐久性を高めるために、せん断耐力を向上させる補強工事が行われている。また、法面を覆ってそれの崩落を防止するという所謂張コンクリートに、必要に応じて落石防護網や雪崩防止柵のような工作物を取り付ける工事が行われている。これらの工事は、コンクリート構造物を形成しているコンクリート躯体や地盤に、ドリルやコアボーリングマシンのような回転工具で円筒形の削孔を形成して、アンカー定着剤とこれを収容した容器とから形成されている長尺形状のアンカー定着カプセルを挿入し、そこへ鉄筋のようなアンカーボルトを打ち込んで容器を破砕して、アンカー定着剤を打設する。
このような工事は、あと施工アンカー工法と呼ばれている。アンカーボルトの打込みで容器が破砕されることにより、アンカー定着剤はアンカーボルトと削孔の内壁面との間に充填され、その後に硬化する。それによってアンカーボルトがコンクリート躯体や岩盤等に定着し、既存のコンクリート構造物のせん断耐力を高めたり、これに工作物を取り付けたりすることができる。
このようなアンカー定着剤として、エポキシアクリレートのような樹脂と、ジメチルアニリンやナフテン酸塩のような硬化剤とを含むボルト固定用固着剤が、特許文献1に開示されている。樹脂はガラス容器に封入され、硬化剤は樹脂を封入した第1のガラス容器とは別なこれより小さい第2のガラス容器に封入され、第1のガラス容器内に第2のガラス容器が収容されている。それにより樹脂と硬化剤とは、用時まで互いに混ざり合わないように隔離されている。
このようなボルト固定用固着剤は、樹脂を溶解させている有機溶剤が揮発して硬化時に不快な臭いを生じるので、施工従事者の作業環境の悪化や、自然環境の汚染を招来する。また、第1及び第2のガラス容器をアンカーボルトで突いて同時にかつ確実に破砕するのに、ハンマードリルや振動ドリルの機材を用いてアンカーボルトに打撃及び回転を加えながら、これを打ち込まなければならない。このことは、急斜面の張コンクリートにアンカーボルトを打ち込む際、不安定な足場で打込機材を操作しなければならないという負担を施工従事者に強いている。さらに動作中の打込機材から騒音が発生するので、施工現場の至近に人家がある場合に振動や騒音の基準値以下に制限され、このような打込機材の使用が困難である。
一方、アンカー定着剤として、セメントのような水硬性組成物を容器に封入したアンカー定着カプセルが特許文献2に開示されている。このアンカー定着剤は、使用直前に水に浸漬され、水硬性組成物は吸水して硬化反応を生じ、硬化する。このような水硬性組成物は、悪臭や有機溶剤の揮発を生じない。しかし、このアンカー定着カプセルを、例えば外気温が5℃未満の低温となる冬季や寒冷地であと施工アンカー工法に供すると、低い外気温とアンカー定着カプセルが浸漬される水が冷水であることとの所為で硬化反応が遅延して初期強度に劣ったり、所期の強度を発現するまでの時間を長引かせたりしている。そのため、低温条件下で硬化反応を促進させるのに温水を用いたり、早期に所期の強度を得るのに施工箇所を保温しながら養生したりしなければならならず、施工手順を煩雑化させている。
低温条件下で水硬性組成物を速やかにかつ高強度で硬化させるのに、吸水量を減じる手法が考えられる。しかし、吸水量を減じると水硬性組成物が流動し難くなって、アンカーボルトと削孔の内壁面との間に充分に行き渡らないまま硬化して空隙を生じるので、アンカーボルトの定着力が不足する。
特開昭60−28478号公報 特開昭58−156698号公報
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、冷水を用いて低温下で打設しても速やかに硬化する速硬性と、打設初期に高い強度を発現する早強性とを有し、さらに長期にわたって高強度を維持できるとともに、施工時に流動性に富んでいることにより、確実に削孔内を充填でき、機材不要でアンカーボルトを挿入できるという施工性に優れる水硬性組成物、及びこれを用いたアンカー定着カプセルを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた本発明の水硬性組成物は、水との接触により最高で10℃の作業温度及び/又は周辺温度で硬化する寒冷地用の水硬性組成物であって、ポルトランドセメント、アルミナセメント、及び急結剤を含有する水硬成分と、カオリンを主成分とする強度増進剤と、流動化剤と、凝結調整剤とを含むものである。
水硬性組成物は、前記カオリンが、焼成カオリンであることが好ましい。
水硬性組成物は、例えば、前記ポルトランドセメントを20〜40質量部、前記アルミナセメントを30〜50質量部、前記急結剤を10〜30質量部、前記カオリンを1〜10質量部、前記凝結調整剤を0.1〜1質量部、前記流動化剤を0.1〜1質量部とするものが挙げられる。
水硬性組成物は、前記急結剤が石膏を含んでおり、前記凝結調整剤がオキシカルボン酸、リグニンスルホン酸、クエン酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一種であり、前記流動化剤がポリカルボン酸エーテル、アルキルアリルスルホン酸、メラミンスルホン酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
本発明のアンカー定着カプセルは、上記いずれかの水硬性組成物が透水性筒状容器に封入されているものである。
アンカー定着カプセルは、200〜450mmの長さと20〜40mmの径とを有していることが好ましい。
本発明の水硬性組成物は、10℃以下の冷水と接触し吸水することにより速やかに凝結して水硬ペーストに変化した後、高強度に硬化するという速硬性と早強性とに優れるので、冬季や寒冷地のような低温環境下における打設であっても、温水や、保温を伴う養生を不要にできる。
水硬性組成物の吸水によって生じる水硬ペーストは、流動性に極めて富んでいるので、機材を用いず手作業でアンカーボルトを打ち込むことができ、張コンクリートのような斜面での作業性を向上させている。さらに流動性に富んでいることによって、コンクリートに開けられた削孔に挿入されたアンカーボルトの周囲を隙間なく充填することができる。それにより、アンカーボルトに高い引抜荷重を付与することができる。
この水硬性組成物を封入した本発明のアンカー定着カプセルによれば、冷水への浸漬後3〜5分で吸水率が一定となり、所要量を超えて吸水しないので、施工管理が簡便であり、施工効率を向上させることができる。
アンカー定着カプセルは、200〜450mmの長さと20〜40mmの径とを有しているものであると、それの運搬や保管が簡便であり、ハンドリング性に優れる。
本発明を適用する水硬性組成物を封入したアンカー定着カプセルの使用方法を示す模式部分断面図である。 本発明を適用した実施例の吸水試験の結果を示すグラフである。 本発明を適用した実施例、及び本発明を適用外である比較例のアンカー定着カプセルによって岩盤に定着させたアンカーボルトの引張試験の結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
本発明の水硬性組成物は、ポルトランドセメント、アルミナセメント、及び急結剤を含有する水硬成分と、カオリンを主成分とする強度増進剤と、流動化剤と、凝結調整剤とを含んでおり、10℃以下の作業温度及び/又は周辺温度で水と接触して硬化するものである。
水硬性組成物の水硬成分は、ポルトランドセメント、アルミナセメント、及び急結剤を必須として含むM型の膨張系セメントである。ポルトランドセメントは、シリカ(SiO)、及びカルシア(CaO)を主成分とし、例えば、シリカを20〜25質量%、及びカルシアを60〜70質量%を含んでいるものが挙げられる。その他にアルミナ(Al)、マグネシア(MgO)、及び酸化鉄(Fe)が、夫々1〜6質量%含まれている。これらの成分は、例えばケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、及びカルシウムアルミノフェライトとして存在している。
ポルトランドセメントとして、具体的に普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、及び白色ポルトランドセメントが挙げられる。なかでも早強ポルトランドセメントが好ましい。これらのポルトランドセメントの一種のみを用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
アルミナセメントは、アルミン酸カルシウム(CaO・Al)を主成分とする特殊セメントであり、例えばカルシアを20〜40質量%、アルミナを40〜80質量%、夫々含んでいるものが挙げられる。
急結剤は、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、及び硫酸カルシウムのような硫酸塩が挙げられる。硫酸カルシウムとして、無水石膏(CaSO)、半水石膏(CaSO・1/2HO)、二水石膏(CaSO・2HO)のような石膏が、後述するエトリンガイトの生成量を増大させ高い早強性及び速硬性を発現させる観点から好ましい。これらの急結剤は、一種のみを用いても複数種を混合して用いてもよい。
本発明の水硬性組成物中、強度増進剤の主成分はカオリンである。カオリンはシリカ及びアルミナを含んでいる。カオリンは具体的に焼成カオリン(2SiO・Al)が挙げられる。焼成カオリンは、天然粘土鉱物であるカオリン(2SiO・Al・2HO)を、例えばロータリーキルンのような窯に投入し、700〜750℃で、20〜25分の滞留時間でか焼することによって得られる。強度増進剤は、焼成カオリンに加えて、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、及び/又はシリカフュームのようなシリカ質粉末を含んでいてもよい。
水硬性組成物中の水硬成分は吸水すると、水に分散して流動性を有する水硬ペーストに変化して水和反応を生じて凝結し、その後硬化する。具体的にアルミナセメント中のアルミン酸カルシウム、石膏、及び水の反応が進行し、アルミン酸硫酸カルシウム水和物であるエトリンガイト(3CaO・Al・3CaSO・32HO)を生成する。エトリンガイトは、かさ高く水に不溶な針状結晶であり、これの成長に伴って、水硬ペーストが膨張しながら硬化する。しかも水硬性組成物に含まれる石膏が、硫酸カルシウムの供給源となってエトリンガイトの生成量を増大させ高強度の硬化体を形成する。
水硬ペーストは、アルミナセメント中のカルシアが水に溶解した水酸化カルシウム(Ca(OH))を多量に含んでいる。強度増進剤に含まれるカオリンは、この酸化カルシウムと、水に不溶な水和物を生成するという所謂ポゾラン反応を生じる。それにより、例えば、ケイ酸カルシウム水和物(3CaO・2SiO・3HO)や、アルミン酸カルシウム水和物(3CaO・Al・6HO)の微細で密な結晶が生成し、水硬性ペーストを高強度に硬化させる。特に、粉砕により粉末化される高炉スラグや、石炭灰であることにより比較的大きな球形をなしているフライアッシュに比べて、焼成カオリンの粒子は細かいので、単位質量当りに大きな表面積を有している。そのため、焼成カオリンは他のシリカ質粉末に比べて、遥かに高いポゾラン活性を有するので、緻密な水和物の結晶を急速に生成する。このことは、水硬性組成物に早強性をもたらす。
このように水硬性組成物は、アルミナセメント、石膏のような急結剤、及びカオリンを主成分とする強度増進剤を含んでいることにより、その硬化体は、打設後数時間〜1日程度で高い強度を発現するという速硬性と早強性とに優れる。
またエトリンガイトの生成及びポゾラン反応は、10℃以下の作業温度及び/又は周辺温度のような低温下でも、遅延なく急速に進む。そのためこの水硬性組成物は、温水の使用や保温を伴う養生を不要としているので、冬季や寒冷地におけるあと施工アンカー工法に好適に用いることができる。なお作業温度とは、例えば作業現場で水硬性組成物を用いたアンカー定着カプセルを硬化させる際の作業現場での気温のことであり、周辺温度とは例えば水硬性組成物を用いたアンカー定着カプセルの周辺の温度、具体的には水硬性組成物に接触させる水の温度、アンカーボルトを打ち込むためにコンクリート躯体に開けられた削孔内(図1参照)の温度、及び養生温度のように、水硬性組成物が凝結・硬化する際のそれが接する環境の温度をいう。
エトリンガイトの生成及びポゾラン反応に並行して、ポルトランドセメント中のケイ酸カルシウムの水和反応が進行し、ケイ酸カルシウム水和物の硬化体が生成する。それにより、ケイ酸カルシウムの水和反応は、アルミン酸カルシウムのそれに比較して遅いので、ポルトランドセメントの早強性や速硬性はアルミナセメントに幾分劣るものの、打設後、例えば7日〜数か月後以降の長期にわたる強度維持に優れている。
一方、アルミナセメントに由来するエトリンガイトは、次第に安定なエトリンガイトモノサルフェート(3CaO・Al・CaSO・12HO)の板状結晶に転化して、初期よりも強度低下を生じる場合がある。このような場合であっても、ポルトランドセメントに由来するケイ酸カルシウム水和物硬化体の強度により、水硬性組成物の硬化体は、全体として強度低下を生じない。
このように本発明の水硬性組成物は、水硬成分としてポルトランドセメント、アルミナセメント、及び石膏を含んでいることによって、冷水を用いて低温下で打設しても速やかに硬化する速硬性と、打設初期に高い強度を発現する早強性とを有し、さらに打設後の長期にわたって高強度を維持できる。
流動化剤は、水硬ペーストの流動性を向上させ、ワーカビリティを確保する界面活性剤である。流動化剤として、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステルの重合体のようなポリカルボン酸エーテル、アルキルアリルスルホン酸、メラミンスルホン酸、及びこれらのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられ、なかでもポリカルボン酸エーテルが好ましい。流動化剤は、水硬ペースト中に極めて微細な気泡を生成し、この気泡が水硬ペースト中で水硬性分同士の凝集を阻害し、分散を促進して流動性を向上させていると考えられる。流動化剤を用いることによって、所期の流動性を水硬ペーストに付与するのに要する水の量を低減することができる。その結果流動化剤は、水硬成分に対する水の質量比である水/セメント比を、例えば27〜32%のように低減でき、水硬性組成物の硬化体に高強度を付与するとともに、寒冷地における水の凍結によって生じる硬化体のクラック発生を抑止する。
凝結調整剤は、水硬ペーストの凝結時間を制御し、可使時間を保持するためのものである。凝結調整剤として、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、及びp−オキシ安息香酸のようなオキシカルボン酸や、リグニンスルホン酸、並びにソルビトール、ペンチトール、及びヘキシトールのような糖アルコール類が挙げられる。凝結調整剤は、オキシカルボン酸やリグニンスルホン酸のナトリウム塩、リチウム塩、及びカリウム塩のようなアルカリ金属塩、並びにマグネシウム塩、及びカルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩であってもよく、なかでもクエン酸ナトリウムが好ましく、クエン酸三ナトリウムがより好ましい。
凝結調整剤は、水硬ペースト中の水硬成分の粒子に吸着してそれの表面を被覆する。それにより凝結調整剤同士が静電気的反発を生じて、水硬成分の粒子が凝集せずに分散するとともに水との接触が抑制される。その結果、水硬成分の水和反応の開始を適度に遅延させて水硬ペーストの瞬結を防止し、水硬性組成物の吸水から水硬ペーストの凝結始発までの時間の長短を調節できる。
このような水硬性組成物中、各成分の好ましい含有量は質量部で、ポルトランドセメント:アルミナセメント:急結剤:強度増進剤:凝結調整剤:流動化剤=20〜40:30〜50:10〜30:1〜10:0.1〜1:0.1〜1であることが好ましく、20〜30:30〜45:10〜20:1〜5:0.1〜0.5:0.1〜0.5であることがより好ましく、20〜25:30〜40:10〜18:2〜4:0.2〜0.5:0.2〜0.5であることがより一層好ましい。
水硬性組成物は、水硬成分中、ポルトランドセメントに対してアルミナセメントを幾分多く含有していることが、寒冷地のような低温環境下でも早強性と速硬性とを付与できる点から好ましい。ポルトランドセメントがアルミナセメントよりも多いと、低温環境における早強性及び速硬性が得られない。
急結剤の含有量が上記の下限値未満であると、エトリンガイトの生成量が不足して所期の強度が得られない。一方上限値を超えると、エトリンガイトの生成量が過多となり、硬化体の過剰な膨張を招来してコンクリート躯体にひび割れを生じてしまう。
強度増進剤の含有量が上記の下限値未満であると、硬化体の初期強度の発現が不十分となって早強性が損なわれる。限値を超えると、未反応のカオリンの微粉末が硬化体に残存して水和物の結晶成長を妨げるので、硬化体の強度を低下させてしまう。
また、凝結調整剤及び流動化剤の含有量が上記の下限値未満であると、水硬ペーストが十分に流動しない上、打設中に凝結終結に達してしまうので、凝結した水硬ペーストがアンカーボルトに纏わりついてそれの挿入抵抗が増大し、手作業による施工が困難となりワーカビリティを損なってしまう(図1(c)参照)。またコンクリート躯体や張コンクリートに開けられた削孔の内壁とアンカーボルトとの隙間の充填不良を生じアンカーボルトの引抜き強度低下を招来する。特に流動化剤の含有量をポルトランドセメント、アルミナセメント、及び急結剤を含む水硬成分と強度増進剤との合計100質量部に対し、少なくとも0.4質量部とすることが好ましい。一方、流動化剤の含有量が上限値を超えると、水硬成分の水和反応が阻害されるので、水硬ペーストの凝結及び硬化が遅延して硬化体の早強性及び速硬性が損なわれる上、長期強度が低下してしまう。
なかでも凝結調整剤の含有量を、水硬成分と強度増進剤との合計100質量部に対し、最大で3.7質量部とすることが好ましく、1.2質量部とすることがより好ましい。この含有量を超えると、水硬性組成物に接する水の温度が施工中に上昇したり、硬化体の若齢時に例えば直射日光に曝されることにより硬化体の温度が上昇したりするというわずかな温度変化によって、水硬ペーストの凝結始発が遅延したり、凝結時間が長引いたりして速硬性が損なわれる上、硬化体の硬化初期に所期の強度が得られない。
このように水硬性組成物は、ポルトランドセメント、アルミナセメント、急結剤、強度増進剤、凝結調整剤、及び流動化剤を必須として含み、かつこれらが一定範囲の組成比で組み合わされていることにより、作業温度及び/又は周辺温度が10℃以下であるような低温下で、凝結の始発を10〜80分、終結を12〜100分とする速硬性を発現する。また低温環境下の養生において、その圧縮強度(JIS A1108(2006)に準拠)は、打設後わずか1日後に20〜30N/mmに達し、28日後に40〜50N/mmにまで向上する。さらに、この水硬性組成物に水を吸収させた水硬ペーストは、10〜30秒の流下値(コンクリート標準示方書に規定するJSCE−F 541−2013充填モルタルの流動性試験方法(J14ロート試験)に準拠)、及び280〜300mmのフロー試験値(JIS R5201(2015)に準拠)という高い流動性を有している。そのためアンカーボルトをハンマードリルのような工具を用いずに手で打ち込むことができる。
なお、作業温度及び/又は周辺温度が10℃を超えると、水硬性組成物の凝結が著しく急速に進むため、打設完了前に凝結終結に達して硬化してしまう。
水硬性組成物は、細骨材を含んでいてもよい。細骨材として、珪砂、川砂、海砂、及び砕砂のような砂類;アルミナクリンカー、シリカ粉、及び石灰石のような無機材;ウレタン砕、EVAフォーム、及び/又は発泡樹脂の粉砕物が挙げられ、なかでも珪砂が好ましく、必要に応じて1〜9号を用いることができる。このような細骨材は、水硬ペーストが硬化する際に生じる収縮を低減し、硬化体へのクラック発生を防止する。また、水硬成分の水和反応に伴う発熱を緩和し、水硬ペーストの温度上昇を抑えて過度な流動性増大や、凝結時間の延長を防止する。
細骨材の含有量は、10〜30質量部であることが好ましく、10〜20質量部であることがより好ましく、10〜18質量部であることがより一層好ましい。細骨材の含有量がこの下限値未満であると、細骨材を加えたことの効果が十分に得られず、この上限値を超えると、水硬成分に比して細骨材が過多となり、水硬成分の水和反応による結晶成長を阻害してしまい、高強度の硬化体が得られない。
本発明のアンカー定着カプセルは、上記の水硬性組成物が透水性を有する筒状容器に封入されているものである。アンカー定着カプセルは、例えばあと施工アンカー工法に使用される。あと施工アンカー工法によって落石防護網を固定する支柱を張コンクリートに取り付ける工程の一例を示す模式部分断面図である図1を参照しつつ、アンカー定着カプセルの使用方法を説明する。
図1(a)に張コンクリート11に削孔13を形成する工程を示す。張コンクリート11の表面は、法面10へのコンクリート張工によって形成されているため、傾斜している。張コンクリート11の表面12にコアボーリングマシン20をセットし、それの先端に取り付けられたコアドリル21を回転させて円筒形状の削孔13を形成する。
削孔13の長さである削孔長Mは、少なくとも500mmであることが好ましい。それにより、削孔13外気温が5℃未満であっても、周辺温度の一つである削孔13内の平均温度は気温よりも高い0〜10℃の範囲で安定し、アンカー定着カプセルの水硬性組成物が所期の時間で凝結・硬化し、かつ高強度の硬化体が得られる。気温が氷点下である場合に削孔長Mが500mm未満であると、削孔13内の温度も氷点下となり、アンカー定着カプセルの水硬性組成物に吸収させた水が凍結し、水和反応が妨げられて、水硬性組成物の凝結・硬化が進行しない。
図1(b)にアンカー定着カプセル1を削孔13に挿入する工程を示す。アンカー定着カプセル1の透水性筒状容器は、良好な透水性と易破砕性とを有する不織シート製であることが好ましい。このような不織シートとして、例えば、上質紙、中質紙、クラフト紙、ケント紙、模造紙、クレープ紙、ヒートロン紙、コーン抄紙、及び和紙のような紙を挙げることができる。これらの原材料は、針葉樹を原材料とするパルプ・広葉樹を原材料とするパルプ等の木材パルプ、ミツマタ・ワラ・バガス・ヨシ・ケナフ・クワ等の非木材パルプ及び古紙パルプの何れか一つを用いてもよいし、複数を混合して形成してもよい。また紙は、レーヨン紙やアセテート紙のような化繊紙であってもよい。
不織シートは、紙に加えて樹脂を含んでいてもよい。それによれば運搬・保管時や施工時に容易に破壊せず、内容物である水硬性組成物が遺漏しない。このような樹脂として、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリトリブチレンテレフタレートのようなポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66及びアラミドのようなポリアミド樹脂;アクリロニトリルを主成分とするポリアクリル樹脂が挙げられる。
水31をトレイ32に入れる。水31は、例えば水道水である。本発明の水硬性組成物を有するアンカー定着カプセル1によれば、水硬性組成物の凝結遅延及び強度低下防止を目的とする水31の加温を要しない。周辺温度としての水31の温度は具体的に、0〜10℃であることが好ましく、0〜5℃であることがより好ましい。また作業温度としての気温は高くとも10℃であることが好ましく、0〜5℃であることがより好ましい。水31に、アンカー定着カプセル1を、3〜5分間浸漬し、透水性筒状容器を透過して浸入した水31を、水硬性組成物に吸収させる。それにより、水硬性組成物は水硬ペーストに変化し、流動性を発現する。アンカー定着カプセル1を水31から取り出した後、削孔13に挿入する。
アンカー定着カプセル1の先端から基端までの長さL及び径Dは、夫々削孔長M及び削孔径よりも小さい値が選択される。例えば、長さLは200〜450mmであることが好ましく、300〜400mmであることがより好ましく、380〜390mmであることがさらに好ましく、380〜385mmであることがより一層好ましい。このときの径Dは夫々、20〜40mmであることが好ましく、26〜34mmであることがより好ましく、28〜32mmであることがより一層好ましい。長さLがこの範囲内であることにより、アンカー定着カプセル1の保管や運搬を簡便にでき、また良好なハンドリング性を付与して、手による取扱時に折れ曲がることによって生じる透水性筒状容器の破損を防止できる。径Dの値を変更することにより水硬性組成物の吸水完了までに要する時間、すなわち水31への浸漬時間を変更することができる。径Dが上記の範囲内であると浸漬時間を3〜5分という短時間にすることができ、しかもこの時間を超えてアンカー定着カプセル1を浸漬したとしても、所要量を超えて吸水しないので施工管理が簡便であり、施工効率を向上させることができる。
例えば、650mmの削孔長Mと40mmの削孔径とを有する削孔13に挿入されるアンカー定着カプセル1は、380mmの長さL及び30mmの径Dとを有し、それの浸漬時間は少なくとも3分間である。この場合、アンカー定着カプセル1の長さLよりも削孔長Mが長いので、アンカー定着カプセル1の複数本、例えば2本を、削孔13内に挿入する。
図1(c)にアンカーボルトの打込み工程を示す。アンカーボルト40はそれの中心軸に対して略垂直な面をなしている基端と、アンカー定着カプセル1の透水性筒状容器を突き破り易いように鋭く尖った先端とを、有している。基端部の表面に雄ねじが設けられている。この基端部に、落石防護網の支柱を固定するナットが螺合される。アンカーボルト40の全長は、規格に示されているアンカーボルトの定着長を満足し、かつ雄ねじを有する基端部が削孔13の開口から突き出るように、削孔13の削孔長Mよりも若干長い。
アンカーボルト40の打込工事を行う作業者は、アンカーボルト40の基端部を手50で握って削孔13内に挿し込み、アンカー定着カプセル1にアンカーボルト40を突刺す。アンカーボルト40の鋭利な先端によって、透水性筒状容器が突き破られて破砕し、水硬ペーストが削孔13内に流れ出す。透水性筒状容器は易破砕性の不織シート性であるので、打込機材を用いずとも、手や腕の力のような軽微な外力によるアンカーボルト40の突き刺しで、すぐさま破砕する。作業者は、一旦アンカーボルト40を削孔13から抜いて再度そこへ挿し込む。作業者はこれを繰り返すことにより、透水性筒状カプセルを確りと破砕する。作業者は必要に応じ、水31に浸漬したアンカー定着カプセル1を、さらに削孔32に挿入し、再度アンカーボルト40の抜き挿しを行う。作業者は、これらの工程を削孔32の開口から水硬ペーストが溢れ出るまで繰り返す。
水硬ペーストは高い流動性を有しているので、アンカーボルト40の抜き挿しを人力で行うことが可能であり、削孔13の内壁面とアンカーボルト40との空間を隙間なく充填される。またアンカーボルト40の打込みに、斜面で安定して支持することが困難な大型の機材を要さず、しかも騒音を伴わない。
水硬ペーストは上記温度の水31の吸収完了時から5〜75分後に凝結始発に、7〜95分後に凝結終結に、夫々達し、その後硬化する。作業者は、凝結始発から凝結終結までの凝結時間内に打込み工程を行う。水硬ペーストが凝結終結に近づいたことを、作業者はアンカーボルト40の挿入抵抗の増加を感知することにより知ることができる。作業者は、削孔13内でアンカーボルト40を所定の角度となるように手50で支持する。凝結終結に達した水硬ペーストは硬化を開始するので、アンカーボルト40は作業者の支持を要さず所定の角度を保ったまま、削孔13内に定着する。硬化は、0〜5℃の外気温のような低温下であっても進行する。そのためこのアンカー定着アプセル1によれば、寒冷地であっても保温を伴う養生を不要とすることができる。作業者は必要に応じて、削孔13から溢れた水硬ペーストを取り除く。
図1(a)〜(c)に示す工程を経た張コンクリート11を同図(d)に示す。水硬ペーストが硬化した硬化体が削孔13の開口を塞いでいるとともに、削孔13の内壁面とアンカーボルト40との間に密に充填されている。アンカーボルト40は、張コンクリート11に定着し、その基端部にナット41が螺合して支柱14が固定されている。
本発明の水硬性組成物及びこれを用いたアンカー定着カプセルを適用した実施例、並びに本発明を適用外である比較例を、以下に示す。
(実施例)
原材料である早強ポルトランドセメント、アルミナセメント、急結剤(二水石膏と半水石膏との混合物)、細骨材(珪砂6号)、強度増進剤(焼成カオリン、BASFジャパン株式会社製、製品名:メタマックス)、流動化剤(ポリカルボン酸エーテル、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、製品名:レオパック(登録商標))、及び凝結調整剤(クエン酸三ナトリウム)を、表1に示すように夫々量りとってミキサーに投入して撹拌し、水硬性組成物を調製した。なお、水硬成分と強度増進剤との合計100質量部に対し、流動化剤を3.7質量部とし、凝結調整剤を0.4質量部とした。
(比較例)
早強ポルトランドセメントからなる比較例の水硬性組成物を準備した。
Figure 2018080092
この水硬性組成物の450gを、坪量40g/mで紙とポリエチレンとからなる不織シート製透水性筒状容器に封入して長さ380mmで径30mmである実施例及び比較例のアンカー定着カプセルを得た。
(吸水試験)
実施例のアンカー定着カプセルの14本を、質量を計測してから0℃の水と10℃の水とに7本ずつ浸漬した。夫々の水温について、1分間浸漬後に取り出し質量を計測した。浸漬後質量に対する浸漬前質量の比から吸水率を求めた。浸漬時間を、2、3、4、5、8、及び10分間としたアンカー定着カプセルについても、これと同様にして吸水率を求めた。結果を図2に示す。
図2は、実施例の吸水試験における水への浸漬時間と吸水率との相関を示すグラフである。横軸が浸漬時間(分)であり、縦軸が吸水率(質量%)である。同図に示すように、実施例のアンカー定着カプセルは、水温に関わらず浸漬時間3分で吸水率約30質量%に達し、以後浸漬時間を延長しても吸水率が増加しなかった。
(凝結試験)
実施例及び比較例のアンカー定着カプセルを、夫々の水硬性組成物が0℃になるまで0℃一定に保った恒温槽内に放置した。その後0℃の水道水に3分間浸漬して、水硬性組成物を水硬ペーストとし、透水性筒状容器を破壊してこれを取り出した。0℃一定に保った恒温槽内で、透水性筒状容器から取り出した時から水硬ペーストの凝結が開始する始発時間と、凝結が終了する終結時間とを、夫々測定した。実施例及び比較例のサンプル数を夫々n=3とした。結果を表2に示す。
Figure 2018080092
表2に示すように、実施例のアンカー定着アプセルは、気温、水温、及び水硬性組成物のいずれもが0℃という条件下にもかかわらず、凝結遅延を生じなかった。一方、比較例のアンカー定着カプセルは、実施例に比べて始発時間及び終結時間ともに著しく遅く、施工性に劣るものであった。
(圧縮試験)
凝結試験と同様に操作して実施例及び比較例の水硬ペーストを得た。これを用い、JIS A1108(2006)に準拠して硬化体の供試体を作製して圧縮強度試験を行い、養生1日、3日、7日、及び28日の圧縮強度(N/mm)を測定した。なお、すべての養生温度を0℃とした。実施例及び比較例のサンプル数を夫々n=3とした。結果を表3に示す。
Figure 2018080092
実施例の水硬性組成物を用いた硬化体は、0℃環境下、僅か1日の養生で初期強度として十分な24N/mmを遥かに上回る圧縮強度を示した。一方、比較例の水硬性組成物を用いた硬化体は、28日の養生でも24N/mmを満足しなかった。
(流動性試験)
凝結試験と同様に操作して実施例及び比較例の水硬ペーストを得た。夫々の水硬ペーストについて、0℃一定に保った恒温槽から取り出してすぐにJSCE−F 541−2013に規定するJ14ロート試験及びJIS R5201(2015)に規定するフロー試験を行った。実施例及び比較例のサンプル数を夫々n=3としたJ14ロート試験の結果を表4に、両サンプルを夫々n=4としたフロー試験の結果を表5に夫々示す。
Figure 2018080092
Figure 2018080092
表4及び5に示すように、実施例の水硬性組成物を用いた水硬ペーストは、比較例よりも低い流下値及び高いフロー試験値を示した。このことから、実施例の水硬性組成物から得られた水硬ペーストは0℃という低温環境下で流動性に優れていることが分かった。
(引張試験)
冬季の北海道において、岩盤に、コアボーリングマシンを用いて削孔長650mm・削孔径40mmとする削孔を形成した。実施例のアンカー定着カプセルを、夫々の水硬性組成物が0℃になるまで気温−2℃条件下に放置した。その後0℃の水道水に3分間浸漬した。水道水の温度を30秒毎に記録したところ、平均0℃で全ての値が1σ以内であった。気温−2℃を維持したまま、削孔にアンカー定着カプセルを挿入した。この削孔にアンカーボルト(D22鉄筋、長さ800mm)を手で抜き挿しを繰り返して、水硬ペーストを削孔内に流出させた。アンカー定着カプセルの挿入と、アンカーボルトの抜き挿しとを、水硬性ペーストが削孔から溢れ出るまで繰り返して、アンカーボルトを岩盤に定着させた。気温−2℃で1日養生を行った後、アンカーボルトの引張試験を行った。比較例のアンカー定着カプセルも実施例と同様にして、引張試験を行った。実施例及び比較例の結果を図3に示す。
図3(a)は、実施例の引張試験におけるアンカーボルトの変位と引張荷重との相関を示すグラフである。横軸がアンカーボルトの変位(mm)であり、縦軸が引張荷重(kN)である。同図に示すように、実施例のアンカー定着カプセルによって定着させたアンカーボルトは、75kNの引抜荷重に達しても岩盤から抜けなかった。このことから、実施例のアンカー定着カプセルは、高い定着力をアンカーボルトに付与できることが分かった。
図3(b)は、比較例の引張試験におけるアンカーボルトの変位と引張荷重との相関を示すグラフである。横軸及び縦軸は、同図(a)に示すグラフと同様である。同図(b)に示すように、比較例のアンカー定着カプセルによって定着させたアンカーボルトは、13.7kNに引抜荷重のピークを示したが、引抜荷重はその後低下した。岩盤を目視によって観察したところ、アンカーボルトと水硬ペーストが硬化した硬化体との界面が破壊し、アンカーボルトが岩盤から抜けていることが確認された。
本発明の水硬性組成物、及びこれを封入したアンカー定着カプセルは、冬季や寒冷地のような低温環境下において、既存のコンクリート躯体や地盤の補強工事、及びこれらに工作物を取り付けるために行われるあと施工アンカー工法に用いられる。
1はアンカー定着カプセル、10は法面、11は張コンクリート、12は表面、13は削孔、14は支柱、20はコアボーリングマシン、21はコアドリル、31は水、32はトレイ、40はアンカーボルト、41はナット、50は手、Dは径、Lは長さ、Mは削孔長である。

Claims (6)

  1. 水との接触により最高で10℃の作業温度及び/又は周辺温度で硬化する寒冷地用の水硬性組成物であって、ポルトランドセメント、アルミナセメント、及び急結剤を含有する水硬成分と、カオリンを主成分とする強度増進剤と、流動化剤と、凝結調整剤とを含むことを特徴とする水硬性組成物。
  2. 前記カオリンが、焼成カオリンであることを特徴とする請求項1に記載の水硬性組成物。
  3. 前記ポルトランドセメントを20〜40質量部、前記アルミナセメントを30〜50質量部、前記急結剤を10〜30質量部、前記カオリンを1〜10質量部、前記凝結調整剤を0.1〜1質量部、前記流動化剤を0.1〜1質量部とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の水硬性組成物。
  4. 前記急結剤が石膏を含んでおり、前記凝結調整剤がオキシカルボン酸、リグニンスルホン酸、クエン酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一種であり、前記流動化剤がポリカルボン酸エーテル、アルキルアリルスルホン酸、メラミンスルホン酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の水硬性組成物。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の水硬性組成物が透水性筒状容器に封入されていることを特徴とするアンカー定着カプセル。
  6. 200〜450mmの長さと20〜40mmの径とを有していることを特徴とする請求項5に記載のアンカー定着カプセル。
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