JP2009114019A - 急結剤および吹付材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い初期強度を有する吹付材料が得られる急結剤の提供。
【解決手段】非晶質カルシウムアルミネート類及び結晶質カルシウムアルミネート類を含有することを特徴とする急結剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、トンネル、地下空間、法面等の建設工事に適する吹付け工法に用いる急結剤および吹付材料に関し、特に、初期強度が高い吹付材料が得られる急結剤および初期強度が高い吹付材料に関する。
トンネル、地下空間、法面等の建設工事において、吹付けコンクリート等の吹付材料を用いた吹付け工法が用いられている。一般の吹付け工法は、ベースコンクリート等のセメント混練物と急結剤を別々の輸送管を通して別経路で圧送し、圧送途中で合流混合した後に吹付けノズルの筒先より地山等に吹き付けることにより行なわれている。
近年、吹付材料には、施工サイクルを短縮させることによる経済性や作業効率性を向上させるため、さらに吹付け厚さを厚くしなくとも安全性を向上させるために、高い初期強度が得られるものが求められている。その例として、セメントとセッコウとを主成分とするセメントモルタルと、カルシウムアルミネート類を主成分とする急結剤とを含有してなる吹付材料が知られている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、従来のものよりもさらに高い初期強度を有する吹付け材料が求められている。
特許第3412794号公報
本発明は、高い初期強度が得られる急結剤及びこれを含み高い初期強度が得られる吹付材料を提供することを目的とする。
本発明者等は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、急結剤に特定のカルシウムアルミネート類を含有させることで高い初期強度が得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、非晶質カルシウムアルミネート類及び結晶質カルシウムアルミネート類を含有することを特徴とする急結剤である。
また本発明は、水とセメントと石こうとを含有するセメント混練物に、上記急結剤を添加してなる吹付材料である。
本発明によれば、高い初期強度を有する吹付材料が得られる。地山等に本発明吹付材料を吹付けた場合、施工サイクルを短縮させることができ且つ安全性が高い吹付材料が得られる。また、施工サイクルを短くできるので、施工コストも抑制することも可能である。
本発明で使用する非晶質カルシウムアルミネート類及び結晶質カルシウムアルミネート類はCaO原料とAl23原料を熱処理することにより得られる。カルシウムアルミネート類としては、カルシウムアルミネート、カルシウムハロアルミネート、カルシウムナトリウムアルミネート、カルシウムサルホアルミネート並びにこれらにSiO2、K2O、Fe23、TiO2等が固溶又は化合したものの群から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
本発明に使用する非晶質カルシウムアルミネート類はCaO原料とAl23原料を溶融し、水や空気等で急冷することにより得られる。非晶質カルシウムアルミネート類中のAl23に対するCaOのモル比は1.5から2.3が好ましく、1.6から2.2がより好ましい。モル比が1.5未満では10分強度が低くなり、2.3を超えるとカルシウムアルミネート類の溶融温度が高くなるために製造が難しくなる。
本発明に用いる非晶質カルシウムアルミネート類の粉末度は、吹付材料の初期強度を高める観点から、ブレーン比表面積で3000cm2/g以上が好ましく、5000cm2/g以上がより好ましい。
本発明に使用する結晶質カルシウムアルミネート類はCaO原料とAl23原料を加熱処理して得られるものであり、CaO原料とAl23原料をキルン等で焼成し製造する方法、溶融炉で加熱処理したものを除冷する方法等により得られる。
結晶質カルシウムアルミネート類はAl23に対するCaOのモル比が0.5から1.5のものが好ましく、0.8から1.4のものがより好ましい。モル比が0.5未満では初期強度が低くなり、1.5を超えると1〜3時間の強度が低くなる。
用いる結晶質カルシウムアルミネート類の粉末度は、吹付材料の初期強度を高める観点から、ブレーン比表面積で3000cm2/g以上が好ましく、5000cm2/g以上がより好ましい。
非晶質カルシウムアルミネート類と結晶質カルシウムアルミネート類の配合比率は、非晶質カルシウムアルミネート類100重量部に対して、結晶質カルシウムアルミネート類5から500重量部が好ましく、10から100重量部がより好ましい。5重量部未満では本発明の効果が得られ難く、500重量部を超えると所要の吹付けに必要な急結性が得られない場合がある。
本発明の急結剤は非晶質カルシウムアルミネート類と結晶質カルシウムアルミネート類の他、炭酸アルカリを含むと、初期材齢の強度をさらに高めることができるので好ましい。使用する炭酸アルカリとしては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等が挙げられる。アルカリ炭酸塩の使用量はカルシウムアルミネート類100重量部に対して0.1から30重量部添加することが好ましく、0.5から20重量部添加することがより好ましい。0.1重量部未満では効果が期待できず、30重量部以上では長期強度が低下することがある。
本発明の急結剤には、更に硫酸アルカリを含むと、材齢1日までの強度が高くなるので好ましい。硫酸アルカリとしては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム等が挙げられる。硫酸アルカリの使用量はカルシウムアルミネート類100重量部に対して1から30重量部が好ましく、5から20重量部がより好ましい。1重量部未満では1日強度は上昇せず、30重量部以上では長期強度が低下することがある。
さらに本発明の急結剤には、低温時の急結性向上のためにアルミン酸アルカリを添加してもよい。アルミン酸アルカリの使用量はカルシウムアルミネート類100重量部に対して0.5から20重量部が好ましく、1.0から10重量部がより好ましい。0.5重量部未満では低温時に急結性が得られない場合があり、10重量部以上では長期強度が低下する場合がある。
本発明の急結剤には上記材料のほかに硫酸アルミニウム、石膏、石灰等の材料を使用してもよい。
本発明の吹付材料は、水とセメントと石こうとを含有するセメント混練物に、上記急結剤を添加してなる。本吹付材料において、セメントと石こうの合計100重量部に対しセメント混練物に含まれるSO3が3.5重量部を超える状態で使用されることが好ましい。
ここで使用される石こうは、特に限定されず、無水石こう、半水石こう、ニ水石こうから選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。無水石こうは、III型無水石こう及びII型無水石こうの何れも用いることができるが、水セメント比を低減する場合に急結剤添加前のセメント混練物の流動性をより良好にするため、II型無水石こうを含有する石こうが好ましく、更にII型無水石こうを70〜100重量%含有する石こうがより好ましい。
また、石こうの粉末度は、より少ない石こうの使用量で高い初期強度が得るために、ブレーン比表面積で5000cm2/g以上が好ましく、5000〜15000cm2/gがより好ましい。
セメント混練物に石こうを添加混合する方法は、特に限定されず、例えばセメント中に添加混合しても、急結剤を除く混和材料中に添加混合しても、別途石こう単独で混和しても良く、これらを組み合わせても良い。
本発明の吹付材料に使用する石こうの量は、セメントと石こうの合計100重量部に対し、セメント混練物に含まれるSO3が5重量部を超える量とすることが好ましい。セメント混練物に含まれるSO3が5重量部以下では吹付材料の初期強度が不足することがある。吹付材料の長期強度を高くするためには、この量は好ましくは5重量部を超え20重量部以下、より好ましくは5重量部を超え15重量部以下、最も好ましくは5重量部を超え10重量部以下である。
本発明に使用するセメントは、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメント、或いは、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰等の廃棄物を原料として利用したエコセメント等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用することができるが、高い初期強度を得るためには、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント又はエコセメントから選ばれる一種又は二種以上を使用することが好ましい。
本発明で使用するセメント混練物には、少なくとも水、セメント及び石こうが含まれ、本発明の効果を損なわない範囲で、必要により更にモルタルやコンクリートで使用可能な骨材や混和材料を添加しても良い。
骨材としては、例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、川砂利、陸砂利、砕石及び人工骨材等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用することができる。
また、混和材料としては、例えば、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む減水剤、シリカフューム等のポゾラン、高炉スラグ等の潜在水硬性物質、石粉、樹脂エマルション、膨張材、起泡剤、発泡剤、防錆剤、顔料、繊維、撥水剤、防水材、消泡剤、凝結遅延剤、硬化促進剤、粉塵低減剤、収縮低減剤、増粘剤、水中不分離性混和剤等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を本発明による効果を阻害しない範囲で使用することができる。
上記セメント混練物は、水、セメント及び石こう、並びに必要により添加する骨材及び混和材料を、モルタルミキサやコンクリートミキサ等のミキサにより混練してなる。
各材料の添加順序は特に限定されない。一種ずつ添加してもよく、一部又は全部を同時に添加してもよい。
本発明の吹付材料を製造する方法及び使用する方法は、特に限定されない。例えば、上記セメント混練物と上記急結剤を別々の輸送管を通して別経路で圧送し、圧送途中でY字管等で合流混合することで製造することもできる。このとき、セメント混練物添加前に水等の液体と本発明の急結剤を混合した後にセメント混練物と合流混合することも出来る。
実施例1
[モルタルによる強度試験]
10℃の恒温室において容量2リットルのポリカップ中に、普通ポルトランドセメント1000gに石膏90gを混合した粉体1090gと細骨材1000gを投入した。さらに、高性能減水剤15gと水385gを加え、撹拌羽根(直径10cm)付ハンドミキサを用いて1250rpmの回転数で2分間混合し、ベースモルタルを製造した。製造したモルタルは30分間静置した後、55秒間再度混練を行いその後5秒間で所定量の急結剤(表1,2)を投入し更に5秒間混練を行い、急硬性セメント混練物を製造した。製造した急硬性モルタルは直ちに内径5cm、長さ10cmの金属製簡易型枠(商品名「サミットモールド」)に充填し、その後、試験材齢まで室温20℃、相対湿度100%の条件下で保管し、圧縮強度試験の直前に脱型し、圧縮強度試験を行なった。なお、強度試験は急結剤添加直後を0分とし、各材齢にて試験を行なった。結果を表3に示す
Figure 2009114019
Figure 2009114019
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表3から、本発明の実施例に当たる急結剤No.4〜No.10のは、何れも材齢10分の圧縮強度が5N/mm2以上、且つ材齢3時間の強度が18N/mm2以上と、初期材齢における圧縮強度が優れていることが判る。
実施例2
炭酸リチウムの効果
表4に示す配合割合の急結剤を用い、実施例1と同様に試験を行った。結果を表5に示す。
Figure 2009114019
Figure 2009114019
表5から、非晶質カルシウムアルミネート類と結晶質カルシウムアルミネート類と炭酸リチウムを組み合わせることにより、より高い材齢1時間強度および材齢3時間強度が得られることが判る。
実施例3
硫酸ナトリウムの効果
表6に示す配合割合の急結剤を用い、実施例1と同様に試験を行った。結果を表7に示す。
Figure 2009114019
Figure 2009114019
表7から、非晶質カルシウムアルミネート類と結晶質カルシウムアルミネート類に硫酸アルカリを加えると、急結剤添加率を高くした場合により高い材齢5分強度、材齢1時間強度、材齢3時間強度および材齢24時間強度が得られることが判る。
実施例4
アルミン酸ナトリウムの効果
下記表8の配合の急結剤を用い、下記試験を行った。
Figure 2009114019
セメントペーストを用いた急結性試験
各温度の恒温室において内径12cm、深さ16cmの円筒型ポリ容器に普通ポルトランドセメント500gに石こう45gを混合した粉体545gを投入し、水192gと高性能減水剤8gを加え、直径4cmの撹拌羽付ハンドミキサーを用いて1,000rpmの回転数で1分間混合しベースコンクリートに相当するセメントペーストを製造した後、30分間練置いた。30分間練置いたセメントペーストを1分間さらに混合し、セメント100重量部に対して表中の量にて添加して5秒間攪拌し、吹付材に相当する急結性セメントペーストを作製した。この作製した急結性セメントペーストに、先端が平面な直径5mmの丸鋼からなる貫入針を1インチ貫入させたときの抵抗値、即ちプロクター貫入抵抗値を測定した。なお、プロクター貫入抵抗値は急結剤添加直後を0秒とし、各材齢にて試験を行なった。結果を表9に示す。
Figure 2009114019
表9から、アルミン酸ナトリウムを更に含有する本発明急結剤を用いると低温時の急結性が良いことが判る。
[コンクリートによる吹付試験]
表10,11に示す配合のセメント混練物に相当するベースコンクリートを容量100リットルのパン型ミキサで練混ぜ製造した。練混ぜ方法は、粗骨材、細骨材の一部、セメント、石膏、細骨材の残りの順序でミキサ内に投入し、15秒間混合した後に、別途混合した水及び高性能減水剤をミキサ内に投入し、所定時間練混ぜた。
製造したベースコンクリートは、容量100リットルの傾胴式ミキサに移し30分間静置した後、1分間傾胴式ミキサで再度混練した。再度混練したベースコンクリートを吹付け装置(商品名「アリバ260」)を使用して圧送し、別途急結剤供給装置(日本プライブリコ(株)製,商品名「Qガン」)を使用して圧送した急結剤(表8の配合No.14、セメント100重量部に対して12重量部)とY字管で合流混合させて、急硬性コンクリート即ち急硬性セメント混練物を製造した。
吹付材料の施工性評価として、吹付材料の初期強度として、JSCE−G 561−1999「引抜き方法による吹付けコンクリートの初期強度試験方法」に従い、各材齢の引抜き強度を測定し、この引抜き強度の値を4倍することで、圧縮強度を求めた。
また、材齢1日以降はJSCE−F 561−2005「吹付けコンクリート(モルタル)の圧縮強度試験用供試体の作り方(案)」に従い吹き付けたコンクリートから供試体を採取し、JIS A 1107:2002「2.コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法」に従って試験を行なった。結果を表12に示す。
Figure 2009114019
Figure 2009114019
Figure 2009114019
表12から、アルミン酸ナトリウムを更に含有する本発明急結剤(表8の配合No.14)を用いたコンクリートは長期強度が優れていることが判る。

Claims (5)

  1. 非晶質カルシウムアルミネート類及び結晶質カルシウムアルミネート類を含有することを特徴とする急結剤。
  2. 非晶質カルシウムアルミネート類中のAl23に対するCaOのモル比が1.5から2.3であり、結晶質カルシウムアルミネート類が中のAl23に対するCaOのモル比が0.5から1.5である請求項1記載の急結剤。
  3. 更に、炭酸アルカリを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の急結剤。
  4. 更に、硫酸アルカリを含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の急結剤。
  5. 水とセメントと石こうとを含有するセメント混練物に、請求項1〜4の何れか1項記載の急結剤を添加してなる吹付材料。
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