JP6770658B1 - 吹付け用急結剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルカリ金属アルミン酸塩及びアルカリ金属水酸化物といった材料を使用しなくても、高温状況においても、上記材料を含む急結剤と同等以上の高い急結性や高い初期強度発現性が得られ、長期的な強度発現性を求められる箇所への適用が可能な吹付け用急結剤を提供する。【解決手段】アルカリ金属アルミン酸塩及びアルカリ金属水酸化物を実質的に含有せず、カルシウムアルミネートと硫酸アルミニウムと含有する吹付け用急結剤であって、前記硫酸アルミニウムの含有量が、前記カルシウムアルミネート100質量部に対して5〜105質量部であり、前記硫酸アルミニウム中のアルカリ土類金属の含有量が、アルカリ土類金属酸化物換算で0.007〜4質量%である吹付け用急結剤である。【選択図】なし

Description

本発明は、吹付け用急結剤に関する。
従来、トンネル掘削等で露出した地山の崩落を防止するために急結剤をコンクリートに配合した急結コンクリートの吹付工法が行われている(特許文献1)。この工法は、通常、掘削工事現場に設置した、セメント、骨材、及び水の計量混合プラントで吹付コンクリートを調製し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結剤と混合し、急結性吹付コンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹付ける工法である。
従来使用されている急結剤としては、カルシウムアルミネート、アルカリ金属アルミン酸塩、及びアルカリ金属炭酸塩等との混合物;焼ミョウバン、アルカリ金属アルミン酸塩、及びアルカリ金属炭酸塩等の混合物;カルシウムアルミネートと3CaO・SiOとの混合物;消石灰、アルカリ金属アルミン酸塩、及びアルカリ金属炭酸塩の混合物;等が知られている(特許文献2〜5)。
これらの急結剤は、セメントの凝結を促進させる働きがあり、いずれもセメントコンクリートと混合して地山面に吹付けられる。
急結剤の添加方法は、通常、空気輸送による粉体混合のために、粉塵量が多くなる方法であった。そのため、作業環境が悪化する場合があり、吹付け時には保護眼鏡や防塵マスクなどを着用して作業する必要があり、粉塵量のより少ない工法が求められていた。粉塵発生量が少ない工法として、急結剤をスラリー化してセメントコンクリートに添加混合した後、さらに、アルカリ金属アルミン酸塩の溶液を別途圧送し、混合し、吹付け施工する方法が提案されている(特許文献6)。この方法は、高アルカリの液体を使用するため、取り扱いにくく、吹付け時には保護眼鏡や手袋等が必要となり、作業性が低下するという課題があった。
そこで、特許文献7では非晶質カルシウムアルミネートと結晶質カルシウムアルミネートの組み合わせによる急結剤が提案されている。特許文献7においては、低温において更にアルミン酸ナトリウムを併用することで、更に良い効果が得られることが明記されている。しかし近年、急結剤においては、強アルカリ性による失明や薬傷の観点から、アルカリ金属アルミン酸塩やアルカリ金属水酸化物といった強アルカリの原料をできるだけ用いないことが好ましいが、高温状況、コスト面等においてはまだまだ課題は多いのが現状である。
特公昭60−4149号公報 特開昭64−051351号公報 特公昭56−27457号公報 特開昭61−026538号公報 特開昭63−210050号公報 特開平05−139804号公報 特許第5026928号
一般的に強アルカリ性材料はセメントとの反応性が強く、高い初期強度発現性を示すが、長期強度における強度促進が低く、長期的な強度発現性が求められる箇所への適用が難しい。
本発明は、アルカリ金属アルミン酸塩及びアルカリ金属水酸化物といった材料を使用しなくても、高温状況においても、上記材料を含む急結剤と同等以上の高い急結性や高い初期強度発現性が得られ、長期的な強度発現性を求められる箇所への適用が可能な吹付け用急結剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を行った結果、下記本発明に想到し、当該課題を解決できることを見出した。すなわち本発明は下記のとおりである。
[1] アルカリ金属アルミン酸塩及びアルカリ金属水酸化物を実質的に含有せず、カルシウムアルミネートと硫酸アルミニウムとを含有する吹付け用急結剤であって、前記硫酸アルミニウムの含有量が、前記カルシウムアルミネート100質量部に対して5〜105質量部であり、前記硫酸アルミニウム中のアルカリ土類金属の含有量が、アルカリ土類金属酸化物換算で0.007〜4質量%である吹付け用急結剤。
[2] 前記硫酸アルミニウムに含まれるCaO含有量が0.005〜2質量%、MgO含有量が0.002〜2質量%である[1]に記載の吹付け用急結剤。
[3] さらに、アルカリ土類金属水酸化物を、前記カルシウムアルミネート100質量部に対して5〜105質量部含有する[1]又は[2]に記載の吹付け用急結剤。
[4] さらに、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む[1]〜[3]のいずれかに記載の吹付け用急結剤。
[5] 前記アルカリ金属炭酸塩を含有し、該アルカリ金属炭酸塩の含有量が1〜30質量%である[4]に記載の吹付け用急結剤。
[6] 前記硫酸アルミニウムにおける粒径10μm以下の硫酸アルミニウムの割合が1〜40質量%である[1]〜[5]のいずれかに記載の吹付け用急結剤。
[7] 前記硫酸アルミニウムが水和物であり、その水和水の数が4〜12である[1]〜[6]のいずれかに記載の吹付け用急結剤。
本発明によれば、アルカリ金属アルミン酸塩及びアルカリ金属水酸化物といった材料を使用しなくても、高温状況においても、上記材料を含む急結剤と同等以上の高い急結性や高い初期強度発現性が得られ、長期的な強度発現性を求められる箇所への適用が可能な吹付け用急結剤を提供することができる。
また、アルカリ金属アルミン酸塩及びアルカリ金属水酸化物の少なくともいずれかを含む急結剤に比べて、取扱いにおいても高い安全性が確保される。
以下、本発明の実施形態に係る吹付け用急結剤は、アルカリ金属アルミン酸塩及びアルカリ金属水酸化物を実質的に含有せず、カルシウムアルミネートと硫酸アルミニウムとを含有する。アルカリ金属アルミン酸塩及びアルカリ金属水酸化物を実質的に含有しないため、取り扱い性が良好で、吹付け時に保護眼鏡や手袋等が不要となり作業性を低下させることがなく、高い安全性を確保することができる。
ここで、アルカリ金属アルミン酸塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムが挙げられ、アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。また、「実質的に含有せず」とは、XRF測定による検出下限未満の含有量を指し、具体的には0ppmである。
一方で、硫酸アルミニウムの含有量を、カルシウムアルミネート100質量部に対して5〜105質量部とし、当該硫酸アルミニウム中のアルカリ土類金属の含有量を、アルカリ土類金属酸化物換算で0.007〜4質量%とすることで、アルカリ金属アルミン酸塩及びアルカリ金属水酸化物を実質的に含有せずに、高温状況においても高い急結性や高い初期強度発現性が得られる。
以下、本実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
(カルシウムアルミネート)
カルシウムアルミネートとは、カルシアを含む原料と、アルミナを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や電気炉での溶融等の熱処理をし、急冷または、徐冷して得られる、結晶および/または非結晶質でCaOとAlとを主たる成分とし、水和活性を有する物質の総称であり、CaOやAlの一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物、あるいは、CaOとAlとを主成分とするものに、これらが少量固溶、または、単独でコンタミとして、存在する物質である。
カルシウムアルミネートの粒度は、ブレーン比表面積(JIS R 5201(セメントの物理試験方法)に準拠。以下、ブレーン値ともいう)で3,000cm/g以上が好ましく、5,000cm/g以上がより好ましい。3,000cm/g以上であることで、急結剤とセメントコンクリートとを混合した吹付け材料の急結性や初期強度発現性を高めることができる。
カルシウムアルミネートにおけるCaO/Alモル比は、急結性や初期強度発現性の面で、2.0〜2.6の範囲が好ましく、2.2〜2.4の範囲がより好ましい。
(硫酸アルミニウム)
本実施形態に係る硫酸アルミニウムは、アルカリ土類金属を含有し、その含有量(アルカリ土類金属が複数種ある場合はその合計量)が、アルカリ土類金属酸化物換算で0.007〜4質量%であり、好ましくは0.01〜2質量%である。
上記のような硫酸アルミニウムは、例えば、アルカリ土類金属酸化物のようなアルカリ土類金属化合物を不純物として含む硫酸と水酸化アルミニウムとを混合して得ることができる。
硫酸アルミニウムは、吹付け材料として、壁面への付着や極初期の強度発現性に寄与し、特にアルカリ土類金属を含有したものは、常温から低温環境下でも十分な付着性を付与できると共に、高温環境下での長期強度の顕著な低下を防止することも可能になる。硫酸アルミニウム中のアルカリ土類金属の含有量が酸化物換算で0.007質量%未満では高温環境下で長期強度を発現し難く、また初期強度発現性の低下が大きくなることがあるので好ましくない。また、アルカリ土類金属の含有量が酸化物換算で4質量%を超える場合は、初期強度が低下し、温度環境にかかわらず凝結性状が発現し難くなることがあるので好ましくない。特に、所定量のアルカリ土類金属含有物質を含有する硫酸アルミニウムを使用することによって既述の作用が発現できるのであって、アルカリ土類金属含有物質を含有しない硫酸アルミニウムに加えて、例えば市販試薬の酸化カルシウムや酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属酸化物を後から添加混合しても上記のような効果は十分得られない。
なお、上記の「低温環境下」における「低温」とは、5℃以下を指し、「高温環境下」における「高温」とは、25℃以上を指す。
ここで、アルカリ土類金属とは、少なくともベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの何れかをいう。
これらのアルカリ土類金属は、硫酸アルミニウムとともに、アルカリ土類金属単体、あるいは、アルカリ土類金属化合物、アルカリ土類金属含有固溶体、アルカリ土類金属含有非晶質体等のアルカリ土類金属含有物質として存在する。具体的な共存状態としては、例えば、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属酸化物(BeO、MgO、CaO、SrO、BaOなど)、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属酸化物としての硫酸アルミニウム中への固溶体などが挙げられる。好ましくは、アルカリ土類金属硫酸塩は含まない。
硫酸アルミニウムの含有量は、カルシウムアルミネート100部に対して5〜105部であり、10〜90部であることが好ましく、20〜80部であることがより好ましい。硫酸アルミニウムの含有量が5〜105部の範囲外では、凝結性が低下してしまう。
硫酸アルミニウムに含まれるCaO含有量は0.005〜2%であることが好ましく、MgO含有量0.002〜2%であることが好ましい。CaO含有量は、0.01〜1.5%がより好ましく、MgO含有量は、0.008〜1.5%がより好ましい。
硫酸アルミニウムに含まれるCaO含有量及びMgO含有量は、例えば、高純度の水酸化アルミニウムと、硫酸とを混合する際に硫酸に含まれるCaO及び/又はMgOを除去せずに混合するか、あるいは意図的に加えることによって含有量の調整を行うことができる。
CaO含有量が0.005%以上であると、高温状況で長期強度がより得られやすくなり、2%以下であると、凝結性状の低下が抑えられやすくなる。また、MgO含有量が0.002%以上であると、高温状況で長期強度がより得られやすくなり、2%以下であると、高温状況で異常膨張が抑制されやすくなる。
硫酸アルミニウムは、無水塩から14〜18水塩までが使用可能であるが、14水塩以上では、粉砕できない場合があり、12水塩以下が好ましい。また、無水塩は凝結性状が低下する場合があるため、4水塩以上が好ましい。より好ましくは4〜12水塩、すなわち、硫酸アルミニウムが水和物であり、その水和水の数が4〜12であることがより好ましい。
水和水の数は、例えば、18水塩の硫酸アルミニウムを加熱等して所望の水和水の数になるように脱水すればよい。
硫酸アルミニウムはフレーク状、粗粉末、粉末状など粉体として、いずれの形態も使用可能であるが、極初期強度発現性の観点から、粉末状が好ましく、更に粒径として、10μm以下が1〜40%で調整することが好ましい。粒径10μm以下が1%以上であると、極初期強度発現性が得られやすくなり、40%以下であると、長期強度がより得られやすくなる。粒径10μm以下を1〜40%とするには、篩等を利用すればよい。
(アルカリ土類金属水酸化物)
本実施形態に係る吹付け用急結剤は、さらに、アルカリ土類金属水酸化物を含有することが好ましい。アルカリ土類金属水酸化物を含有することで、長期強度をより向上させることができる。
アルカリ土類金属水酸化物は、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの水酸化物を指し、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、および水酸化ラジウム等のうちの一種又は二種以上を使用することが可能である。これらのうち、価格や取り扱いやすさなどの工業的見地から水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムの使用が好ましく、カルシウムカーバイドからアセチレンを発生させる際に副生するカーバイド滓等も水酸化カルシウムとして、挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物の粒度は、250μm残分30%以下が好ましく、250μm残分10%以下がより好ましい。
アルカリ土類金属水酸化物の含有量は、カルシウムアルミネートを100部としたとき、2〜120部が好ましく、5〜105部がより好ましく、5〜100部がさらに好ましく、なかでも10〜50部が好ましい。特に、5部以上であることで凝結性状が低下しにくくなり、100部以下であることで長期強度が良好することができる。
(その他の成分)
本実施形態に係る吹付け用急結剤には、必要に応じて、通常の急結剤で想定される材料を配合してもよい。例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩からなる群より選ばれた物質が挙げられ、アルカリ土類金属炭酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。アルカリ土類金属炭酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩からなる群から選択される少なくとも1種は、長期強度の増進に寄与する点で好ましく、吹付け用急結剤中、3〜50%であることが好ましく、5〜40%であることがより好ましい。アルカリ土類金属炭酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩としては、炭酸カルシウム、及び硫酸カルシウムなどが挙げられる。
また、特に3時間強度や1日強度などで所定の強度を得るためには、アルカリ金属炭酸塩の使用が好ましく、その量は吹付け用急結剤中、1〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましい。1%以上であると、材齢3時間強度や1日強度で所望の強度が得られやすくなり、30%以下であると、長期強度が得られやすくなる。アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
以上のような本実施形態に係る吹付け用急結剤は例えば、セメントコンクリートのセメント100部に対して5〜30部配合させることが好ましい。5部以上であることで、吹付けに求められる付着性状、凝結性状、強度発現性が得られやすくなる。また、30部以下であると、長期強度低下を抑制することができる。セメントコンクリートに配合する際の本実施形態に係る吹付け用急結剤の形態は、例えば、粉体、液体、懸濁液状、スラリー状など形態は問わない。
セメントコンクリートのセメントとしては、特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、中庸熱、及び低熱の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ、及び石灰石微粉末を混合したフィラーセメント、並びに都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)等が挙げられ、これらを微粉末化して使用することも可能である。混合セメントにおける混合物とセメントの割合は特に限定されるものではなく、これら混和材をJISで想定する以上に混合したものも使用可能である。
本実施形態のセメントコンクリートは、セメントと骨材とを含有するものであり、骨材は吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましい。骨材は、吹付けできれば特に限定されるものではないが、細骨材としては、川砂、山砂、海砂、石灰砂、及び珪砂等が使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利等が使用可能であり、砕砂、砕石の使用も可能である。
また、本発明の急結剤を用いた吹付け工法としては、要求される物性、経済性、及び施工性等に応じた種々の吹付け工法が可能である。本発明の急結剤を用いた吹付け工法としては、乾式吹付け工法及び湿式吹付け工法のいずれの工法も可能である。
[実験例1]
各物性の測定方法及び使用材料は以下のとおりである。
(プロクター貫入試験及び圧縮強度)
試験温度30℃でセメント100部、水40部、砂300部からなるモルタルを調製し、表1に示す含有割合の急結剤(吹付け用急結剤)を10部加えてからプロクター貫入試験により、凝結の始発時間(始発)と終結時間(終結)を測定し、急結剤を加えてから材齢10分、3時間、28日の圧縮強度(JIS R 5201、以下同様)を測定した。
なお、表1に示す含有割合の各急結剤は、それぞれの材料を混合することで調製した(他の実験例についても同様)。
(使用材料)
セメント:普通ポルトランドセメント、デンカ社製
砂:川砂、密度2.64g/cm、粗粒率(F.M)2.83
水:上水道水
カルシウムアルミネート:CaO/Alモル比:2.24、ブレーン比表面積:5900cm/g、CaO源:生石灰(CaO:95%)、Al源:天然ボーキサイト(Al:85%)、製造方法:電気炉で溶融し、急冷したものを粉砕したガラス粉末、ガラス化率:90%、CaOとAlの合計が96%
アルカリ土類金属水酸化物a:水酸化カルシウム(工業品)、水酸化カルシウム含有98%、ブレーン比表面積10,500cm/g、
AS−ア: CaO:0.9質量%、MgO:0.7質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で1.6%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、8.5水塩
表1の試験結果より、急結剤中の硫酸アルミニウム配合量を4質量部とすると、凝結の始発時間、終結時間ともにその凝結性が著しく低下し、圧縮強度も実施例と比較して低いことがわかる。また、硫酸アルミニウム配合量を110質量部とした場合も実施例と比較して凝結時間、圧縮強度が低いことがわかる。以上の結果より急結剤中の硫酸アルミニウムの含有量は5〜105質量部で、特に5〜100質量部とすることが好ましい。
[実験例2]
実験例1と同様に試験温度30℃でセメント100部、水40部、砂300部からなるモルタルを調製し、表2に示す含有割合の急結剤を10部加えてからプロクター貫入試験により、凝結の始発と終結の時間を測定し、急結剤を加えてから材齢10分、3時間、28日の圧縮強度を測定した。
なお、使用した硫酸アルミニウムはアルカリ土類金属を、金属酸化物換算で0.006%〜4.5%含有するものとし、以下にその略号を示す。
AS−イ;CaO:0.003質量%、MgO:0.002質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で0.005%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、8.5水塩
AS−ウ;CaO:0.005質量%、MgO:0.002質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で0.007%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、8.5水塩
AS−エ;CaO:0.006質量%、MgO:0.004質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で0.010%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、8.5水塩
AS−オ;CaO:0.8質量%、MgO:0.5質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で1.3%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、8.5水塩
AS−カ;CaO:1質量%、MgO:1質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で2.0%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、8.5水塩
AS−キ;CaO:1.3質量%、MgO:1.1質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で2.4%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、8.5水塩
AS−ク;CaO:1.6質量%、MgO:1.8質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で3.4%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、8.5水塩
AS−ケ;CaO:2.1質量%、MgO:2.3質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で4.4%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、8.5水塩
表2の試験結果より、アルカリ土類金属酸化物換算で0.005%のアルカリ土類金属を含有する比較例は実施例と比較してプロクターの始発及び終結時間が遅くなっていることが分かる。また圧縮強度も低下している。アルカリ土類金属酸化物換算で4.4%のアルカリ土類金属を含有する比較例も同様にプロクター、圧縮強度ともに実施例と比較して低下している。以上の結果より、急結剤中の硫酸アルミニウムはアルカリ土類金属酸化物換算でアルカリ土類金属を0.007〜4%含有しているものが好ましい。
[実験例3]
実験例1、2と同様に試験温度30℃でセメント100部、水40部、砂300部からなるモルタルを調製し、表3に示す含有割合の急結剤を10部加えてからプロクター貫入試験により、凝結の始発と終結の時間を測定し、急結剤を加えてから材齢10分、3時間、28日の圧縮強度を測定した。
以上の結果より急結剤中の水酸化カルシウムの含有量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して5質量部〜100質量部とすることが好ましい。
[実験例4]
試験温度30℃でセメント100部、水40部、砂300部からなるモルタルを調製し、表4に示す配合割合の急結剤を10部加えてからプロクター貫入試験により、凝結の始発と終結の時間を測定し、急結剤を加えてから材齢10分、3時間、28日の圧縮強度を測定した。なお、使用した硫酸アルミニウムは以下に示すものを使用した。
AS−コ;CaO:0.004質量%、MgO:0.5質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で0.504%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、8.5水塩
AS−サ;CaO:3質量%、MgO:0.5質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で3.5%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、8.5水塩
AS−シ;CaO:0.5質量%、MgO:0.001質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で0.501%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、8.5水塩
AS−ス;CaO:0.5質量%、MgO:2質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で2.5%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、8.5水塩
表4より、硫酸アルミニウムに含まれるアルカリ土類金属酸化物量が、CaO:0.005質量%〜2質量%、MgO:0.002質量%〜2質量%であることが好ましいといえる。
[実験例5]
実験例1と同様のカルシウムアルミネート100部、アルカリ土類金属水酸化物a50部、硫酸アルミニウム(AS−ア)50部、更に表5に示す種類と量のアルカリ土類金属炭酸塩とアルカリ土類金属硫酸塩からなる急結剤を作製した。試験温度30℃でセメント100部、水40部、砂300部からなるモルタルを調製し、上記急結剤を10部加えてからプロクター貫入試験により、凝結の始発と終結の時間を測定し、急結剤を加えてから材齢10分、3時間、28日の圧縮強度を測定した。なお、使用したアルカリ土類金属炭酸塩とアルカリ土類金属硫酸塩は以下に示すものを使用した。
アルカリ土類金属炭酸塩ア:炭酸マグネシウム工業品、ブレーン値2800cm/g
アルカリ土類金属炭酸塩イ:炭酸カルシウム工業品、ブレーン値3000cm/g
アルカリ土類金属硫酸塩α:硫酸マグネシウム工業品、ブレーン値3500cm/g
アルカリ土類金属硫酸塩β:硫酸カルシウム工業品、ブレーン値4500cm/g
[実験例6]
実験例5と同様のカルシウムアルミネート100部、アルカリ土類金属水酸化物a50部、硫酸アルミニウム(AS−ア)50部、アルカリ土類金属炭酸塩イ10部、アルカリ土類金属硫酸塩β10部、更に表6に示す種類と量のアルカリ金属炭酸塩からなる急結剤を作製した。試験温度30℃でセメント100部、水40部、砂300部からなるモルタルを調製し、上記急結剤を10部加えてからプロクター貫入試験により、凝結の始発と終結の時間を測定し、急結剤を加えてから材齢10分、3時間、28日の圧縮強度を測定した。なお、使用したアルカリ金属炭酸塩は以下に示すものを使用した。
アルカリ金属炭酸塩ア:炭酸ナトリウム工業品、炭酸ナトリウム含有量98%、ブレーン値1000cm/g
アルカリ金属炭酸塩イ:炭酸カリウム工業品、炭酸カリウム含有量97%、ブレーン値1500cm/g
アルカリ金属炭酸塩ウ:炭酸リチウム工業品、炭酸リチウム含有量98%、ブレーン値800cm/g
[実験例7]
試験温度30℃でセメント100部、水40部、砂300部からなるモルタルを調製し、表7に示す含有割合の急結剤を10部加えてからプロクター貫入試験により、凝結の始発と終結の時間を測定し、急結剤を加えてから材齢10分、3時間、28日の圧縮強度を測定した。なお、使用した硫酸アルミニウムは以下に示すものを使用した。
AS−シ;CaO:0.9質量%、MgO:0.7質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で1.6%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:0.5%、8.5水塩
AS−ス;CaO:0.9質量%、MgO:0.7質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で1.6%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:1.0%、8.5水塩
AS−セ;CaO:0.9質量%、MgO:0.7質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で1.6%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:40%、8.5水塩
AS−ソ;CaO:0.9質量%、MgO:0.7質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で1.6%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:41%、8.5水塩
[実験例8]
試験温度30℃でセメント100部、水40部、砂300部からなるモルタルを調製し、表8に示す含有割合の急結剤を10部加えてからプロクター貫入試験により、凝結の始発と終結の時間を測定し、急結剤を加えてから材齢10分、3時間、28日の圧縮強度を測定した。なお、使用した硫酸アルミニウムは以下に示すものを使用した。
AS−タ;CaO:0.9質量%、MgO:0.7質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で1.6%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、18水塩
AS−チ;CaO:0.9質量%、MgO:0.7質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で1.6%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、14水塩
AS−ツ;CaO:0.9質量%、MgO:0.7質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で1.6%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、12水塩
AS−テ;CaO:0.9質量%、MgO:0.7質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で1.6%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、10.5水塩
AS−ト;CaO:0.9質量%、MgO:0.7質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で1.6%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、4.0水塩
AS−ナ;CaO:0.9質量%、MgO:0.7質量%を含み、アルカリ土類金属酸化物換算で1.6%のアルカリ土類金属を含有する硫酸アルミニウム、粒子径10μm以下:20%、無水塩
本発明の吹付け用急結剤は、例えば、道路、鉄道、及び導水路等のトンネルや法面等において露出した地山面へ吹付けるセメントコンクリートに対して好適に使用できる。

Claims (7)

  1. アルカリ金属アルミン酸塩及びアルカリ金属水酸化物を実質的に含有せず、カルシウムアルミネートと硫酸アルミニウムとを含有する吹付け用急結剤であって、
    前記硫酸アルミニウムの含有量が、前記カルシウムアルミネート100質量部に対して5〜105質量部であり、
    前記硫酸アルミニウム中のマグネシウム及びカルシウムの含有量が、酸化物換算で0.007〜4質量%である吹付け用急結剤。
  2. 前記硫酸アルミニウムに含まれるCaO含有量が0.005〜2質量%、MgO含有量が0.002〜2質量%である請求項1に記載の吹付け用急結剤。
  3. さらに、アルカリ土類金属水酸化物を、前記カルシウムアルミネート100質量部に対して5〜105質量部含有する請求項1又は2に記載の吹付け用急結剤。
  4. さらに、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の吹付け用急結剤。
  5. 前記アルカリ金属炭酸塩を含有し、該アルカリ金属炭酸塩の含有量が1〜30質量%である請求項4に記載の吹付け用急結剤。
  6. 前記硫酸アルミニウムにおける粒径10μm以下の硫酸アルミニウムの割合が1〜40質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の吹付け用急結剤。
  7. 前記硫酸アルミニウムが水和物であり、その水和水の数が4〜12である請求項1〜6のいずれか1項に記載の吹付け用急結剤。
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