JP5118353B2 - アルキルグリコシドの製造方法 - Google Patents
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Description
アルキルグリコシドは、通常糖類と高級アルコールとを酸触媒の存在下で直接反応させる直接法、または糖類と低級アルコールとを酸触媒下で反応させて低級アルキルグリコシドを調製し、その後高級アルコールとアセタール交換させることで目的とするアルキル鎖を有するアルキルグリコシドを得る間接法により製造される。これらの方法では、高級アルコールを糖類に対して過剰に用いるのが一般的であり、反応により生成したアルキルグリコシド、未反応の高級アルコール及び反応によって生成する着色物質等の不純物(以下、不純物という)との混合物から未反応高級アルコール及び不純物を分離することが必要となる。
未反応高級アルコールの分離法として通常公知の蒸留等が用いられるが、蒸留には高温に加熱することが必要不可欠となる。これは、一般に、高級アルコールの沸点は高く、未反応高級アルコール及び着色物質等の不純物を含む粗アルキルグリコシドの粘度は大きく、その内部での未反応高級アルコールの拡散速度は遅いため、蒸留によって残存未反応高級アルコールの量をより少なくするためには、高温にして粗アルキルグリコシドの流動性を向上させることが必要となるからである。ところが、アルキルグリコシドの熱安定性は限られており、高温に加熱することでアルキルグリコシドの一部が分解し、これと同時に粗アルキルグリコシド中にわずかに存在するか、又はアルキルグリコシドの分解により生ずる還元糖の変性が起こるため、アルキルグリコシドの好ましくない色相、臭いの悪化が生じてしまう、また高縮合物が生じてしまうといった問題があった。
また、アルキルグリコシドを経済的に製造するためには、過剰に残留する未反応高級アルコールを粗アルキルグリコシドから分離した後に回収し再利用することが重要となるが、分離の際に高温に加熱すると、回収する未反応高級アルコールの品質の低下を引き起こすことになる。
すなわち、本発明は次の製造方法を提供する。
1.以下の工程(I)〜(III)
工程(I):糖類又は低級アルキルグリコシドと高級アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物とを反応させて粗アルキルグリコシドを得る工程、
工程(II):粗アルキルグリコシドに炭化水素油を加えて混合物を得る工程、及び
工程(III):混合物を減圧下で蒸留してアルキルグリコシドを得る工程、
を順に含み、高級アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物が、以下の一般式(I):
(式中、Rは炭素数6〜22の炭化水素基を示し、Aは炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、nはその平均値が0〜5である。)
2.工程(III)の後に、以下の工程(IV)
工程(IV):炭化水素油を分離する工程
を含む上記1に記載のアルキルグリコシドの製造方法。
本発明の工程(I)は、糖類又はその誘導体である低級アルキルグリコシドと高級アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物とを反応させて粗アルキルグリコシドを得る工程である。粗アルキルグリコシドは、周知の方法により得られるものであるが、例えば、糖類と高級アルコールとを酸触媒の存在下で直接反応させる直接法、または糖類と低級アルコールとを酸触媒下で反応させて得られる糖類の誘導体である低級アルキルグリコシドを調製し、その後高級アルコールとアセタール交換させることで目的とするアルキル鎖を有するアルキルグリコシドを得る間接法に準じて得ることができる。
使用される酸触媒の量は、糖類と低級アルコールとの反応物1モルあたり0.001〜0.10モルであることが好ましい。酸触媒の使用量がこの範囲にあれば、反応速度及び得られるアルキルグリコシドの色相が共に良好となる。該酸触媒の量は、糖類と低級アルコールとの反応物1モルあたり、より好ましくは0.002〜0.08モル、さらに好ましくは0.003〜0.05モルである。
なお、高級アルコールは、主に後述する工程(III)で粗アルキルグリコシドから回収される未反応高級アルコールであってもよい。
反応時間は反応条件によって左右されるため、一概には決定できないが、原料の消費量や生成物の生成量を適宣追跡し、反応終了時点で反応を打ち切ることが好ましい。
予備蒸留は、温度100〜200℃、好ましくは100〜140℃、減圧の程度は13.3Pa〜13.3kPa、好ましくは13.3Pa〜1.33kPaの条件で行えばよく、用いる装置等には特に制限はない。
本発明の工程(II)は、粗アルキルグリコシドに炭化水素油を加えて混合物を得る工程である。炭化水素油としては、好ましくは飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖の炭素数12〜40の炭化水素化合物を挙げることができる。より具体的には、飽和の直鎖の炭化水素化合物としては、例えばドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、エイコサン、ヘンイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ナノコサン、トリアコンタン等の化合物が挙げられる。
飽和の分岐鎖の炭化水素化合物としては、例えば、テトラメチルオクタン、メチルドデカン、ジメチルウンデカン、トリメチルデカン、ヘキシルデカン、メチルペンタデカン、ジメチルテトラデカン、トリメチルトリデカン、テトラメチルドデカン、オクチルドデカン、デシルテトラデカン、スクアラン等の化合物が挙げられる。
不飽和の直鎖状又は分岐鎖状炭化水素化合物としては、例えば、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、オクタデセン、イコセン、ドコセン、テトラコセン、スクワレン等の化合物が挙げられる。
これらの中では、精製の能力及び効率の観点から、飽和の直鎖又は分岐鎖の炭化水素化合物が好ましく、炭素数16〜40の飽和の直鎖又は分岐の炭化水素化合物がより好ましく、炭素数20〜35の飽和の直鎖又は分岐の炭化水素化合物がさらに好ましく、炭素数25〜35の飽和の直鎖又は分岐の炭化水素化合物が特に好ましい。また、融点が80℃以下の炭化水素化合物が好ましく、融点が30℃以下の炭化水素化合物がより好ましい。このような炭化水素油としては、エイコサン、ヘンイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ナノコサン、トリアコンタン、スクアラン等が挙げられ、中でも、スクアラン、エイコサン、トリコサン、及びオクタコサンからなる群から選ばれる1種以上であることがより好ましい。なお、スクアラン、エイコサン、トリコサン、及びオクタコサンであれば、どれを用いても得られる効果は同様である。
本発明の工程(III)は、混合物を減圧下で蒸留してアルキルグリコシドを得る工程である。蒸留は、減圧下で必要に応じて窒素、水蒸気等の気体を吹き込みつつ行えば、用いる装置に制限はなく、例えば、蒸留塔としては、塔内に気液接触のための金属板型、金網型の規則充填物や、ラシヒリング、ポールリング等の不規則充填物を充填した塔、あるいは多孔板トレイ、泡鐘式トレイ等の棚段を設置した精留塔、塔内に気液接触部を設けないフラッシュ塔のいずれであっても良い。また本発明の蒸留操作は、連続、回分、半回分のいずれでも実施可能である。
蒸留の減圧の程度は、化合物によって適宜選択すればよいが、通常133Pa〜13.3kPaであり、133Pa〜2.66kPaが好ましい。温度条件も化合物によって適宜選択すればよいが、通常80〜200℃であり、100〜150℃が好ましい。
蒸留の操作において吹込む窒素、水蒸気等の量は、混合物に対して10〜50質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。
本発明の工程(IV)は、必要に応じて、工程(III)で得られたアルキルグリコシドから炭化水素油を分離する工程である。
具体的には、常圧において、工程(III)で得られたアルキルグリコシドを静置もしくは攪拌しながら適当な温度に冷却することで、当該アルキルグリコシドから炭化水素油を分離・分層することができる。温度条件は化合物によって適宜選択すればよいが、通常30℃〜100℃であり、50℃〜80℃が好ましい。
蒸留工程における予備蒸留後の粗アルキルグリコシドに炭化水素油を加えた混合物を135℃に加熱して、該混合物の流動性を、以下の基準で評価した。
○ :混合物がフラスコの壁に付着せず、さらさらしている
× :混合物がフラスコの壁に付着し、ねばねばしている
四つ口の10リットルの攪拌槽に、ラウリルアルコールを無水ガラクトースに対して15モル倍、又、パラトルエンスルホン酸1水和物を無水ガラクトースに対して0.5モル%を加えて、温度115℃、圧力5.32kPa(40mmHg)の条件で、脱水反応を開始した。この際、反応混合物中に窒素を吹込みながら、生成する水を効率よく除去した。5時間後、ガラクトースが完全に消費されたのを確認した後、常圧に戻して、反応終了物溶液が80℃になった時点で、48質量%水酸化ナトリウム水溶液0.05g(6.0×10-4モル)を加えて中和して、未反応のラウリルアルコールを88質量%含有する粗アルキルグリコシドを得た。この粗アルキルグリコシドを温度120℃、圧力1.33kPa(10mmHg)の条件で予備蒸留して、未反応のラウリルアルコールを33.4質量%含有する粗アルキルグリコシドを得た。
実施例1と同様にして得られた粗アルキルグリコシド200gにスクアラン85.7gを加えて得られた混合物に対して、25質量%の水蒸気(温度100℃、圧力1.33kPa)を0.34g/minの条件で加えつつ、温度135℃、圧力1.33kPa(10mmHg)の条件で蒸留を行った。得られたアルキルグリコシドをガスクロマトグラフィーにより測定したところ、未反応のラウリルアルコールが0.8質量%に低減した。その後、60℃で静置して冷却したところ、スクアラン(上層)とアルキルグリコシド(下層)とが分離・分層した。スクアラン(上層)をデカンテーションして、スクアランを7.2質量%含むアルキルグリコシドを144.8g得た。結果を第1表に示す。
実施例1で得られた予備蒸留後の、未反応ラウリルアルコールを33.4質量%含有する粗アルキルグリコシドを、23質量%の水蒸気(温度100℃、圧力1.33kPa)を0.41g/minの条件で加えつつ、温度135℃、圧力1.33kPa(10mmHg)の条件で蒸留を行ったところ、飛沫分散が起こり、流動性が低下したため、蒸留できなかった。結果を第1表に示す。
Claims (3)
- 以下の工程(I)〜(IV)
工程(I):糖類又は糖類及び炭素数1〜5のアルコールを反応させて得られる低級アルキルグリコシドと、高級アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物とを反応させて粗アルキルグリコシドを得る工程、
工程(II):粗アルキルグリコシドにスクアランを加えて混合物を得る工程、及び
工程(III):混合物を減圧下で蒸留してアルキルグリコシドを得る工程、
工程(IV) :スクアランを分離する工程
を順に含み、高級アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物が、以下の一般式(I):
で表されるアルキルグリコシドの製造方法。 - スクアランを粗アルキルグリコシド100質量部に対して、5〜50質量部を加える請求項1に記載のアルキルグリコシドの製造方法。
- 糖類がグルコース、ガラクトース、及びフルクトースからなる群から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載のアルキルグリコシドの製造方法。
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