JP5115610B2 - 回転角検出装置、および、これを用いた電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高精度に被検出部の回転角度を検出可能な回転角検出装置、および、これを用いた電動パワーステアリング装置を提供することにある。
なお、「位相の異なる信号」とは、出力信号間における位相差が所定の値、例えば90度、である信号のことをいう。また、「位相ずれ」とは、例えばセンサ素子の実装ずれ等に起因する出力信号間の位相差の上記所定の値からの「ずれ」のことをいう。
(一実施形態)
図1に示すように、本発明の一実施形態による回転角検出装置10は、車両のステアリング操作をアシストするための電動パワーステアリング装置1(以下、適宜「EPS」という。)に適用される。
第1ブリッジ回路11は、第1ハーフブリッジ14および第2ハーフブリッジ15を有する。第1ハーフブリッジ14は、2つのセンサ素子21、22から構成される。センサ素子21、22の接続点である中点31は、増幅部40の第1オペアンプ41に接続する。第2ハーフブリッジ15は、2つのセンサ素子23、24から構成される。センサ素子23、24の接続点である中点32は、増幅部40の第2オペアンプ42に接続する。
第2ブリッジ回路12は、第3ハーフブリッジ16および第4ハーフブリッジ17を有する。第3ハーフブリッジ16は、2つのセンサ素子25、26から構成される。センサ素子25、26の接続点である中点33は、増幅部40の第3オペアンプ43に接続する。第4ハーフブリッジ17は、2つのセンサ素子27、28から構成される。センサ素子27、28の接続点である中点34は、増幅部40の第4オペアンプ44に接続する。
なお、ハーフブリッジ14〜17のそれぞれが「センサ素子組」に対応している。本実施形態では、1つの出力信号を出力するセンサ素子組を便宜上、「ハーフブリッジ」としているが、ブリッジ回路を構成するセンサ素子組は、2組に限定されることはなく、また、センサ素子組を構成するセンサ素子数も2つに限定されることはない。
第1オペアンプ41は、第1ハーフブリッジ14の中点31から出力される信号を増幅し、+cos信号である出力信号Vx1をマイコン50に出力する。第2オペアンプ42は、第2ハーフブリッジ15の中点32から出力される信号を増幅し、+sin信号である出力信号Vy1をマイコン50に出力する。第3オペアンプ43は、第3ハーフブリッジ16の中点33から出力される信号を増幅し、−cos信号である出力信号Vx2をマイコン50に出力する。第4オペアンプ44は、第4ハーフブリッジ17の中点34から出力される信号を増幅し、−sin信号である出力信号Vy2をマイコン50に出力する。
Vx1= cosδ+2.5 …(1)
Vx2=−cosδ+2.5 …(2)
Vy1= sinδ+2.5 …(3)
Vy2=−sinδ+2.5 …(4)
第1ハーフブリッジ14および第3ハーフブリッジ16の磁化方向と、第2ハーフブリッジ15および第4ハーフブリッジ17の磁化方向とのなす角度が90度となるようにセンサ素子21〜28が配置されているとき、第1ハーフブリッジ14および第3ハーフブリッジ16から出力されるcos信号と、第2ハーフブリッジ15および第4ハーフブリッジ17から出力されるsin信号との位相差は90度となる。しかしながら、磁化方向は目視で確認できないため、第1ハーフブリッジ14および第3ハーフブリッジ16の磁化方向と、第2ハーフブリッジ15および第4ハーフブリッジ17の磁化方向とのなす角度が正確に90度となるように実装することは困難である。そのため、実際には図4に示すように、cos信号とsin信号との位相差は、90±αとなる。以下、cos信号を基準とし、cos信号とsin信号との位相差から90度を減じた差分値αを、「位相ずれ」ということにする。具体的には、cos信号とsin信号との位相差が89度である場合、位相ずれαは−1度であり、cos信号とsin信号との位相差が91度である場合、位相ずれαは+1度であるといった具合である。
ここで、位相補正値φを算出する位相補正値算出処理を図5に示すフローチャートに基づいて説明する。位相補正値算出処理は、図6および図7に示すEPS駆動時に実行される回転角検出処理に先立ち、例えばモータ80に回転角検出装置10を組み付けたときに実施される処理である。
Vx=Vx1−Vx2=2cosδ …(5)
Vy=Vy1−Vy2=2sinδ …(6)
S13では、S12で算出された位相補正値φ0〜φ8をメモリ部52に記憶し、本処理を終了する。
<位相補正値φ0>
位相補正値φ0は、センサ誤差等を消去したcos信号Vxおよびsin信号Vyに基づいて算出される。ここで、cos信号Vxを基準としたときのcos信号Vxとsin信号Vyの位相ずれをα0とすると、cos信号Vxおよびsin信号Vyは、以下のように表される。
Vx=2cosδ …(5)
Vy=2sin(δ+α0) …(7)
まず、cos信号Vxからsin信号Vyを減算した減算値Vs0を算出する。減算値Vs0は、以下の式(8)のように表される。
Vs0=Vx−Vy=2cosδ−2sin(δ+α0)
=2{cosδ+cos(δ+90+α0)} …(8)
上記式(8)を和積の公式(9)により変形すると、減算値Vs0は、以下の式(10)のように表される。
cosA+cosB=2cos{(A+B)/2}cos{(A−B)/2}
…(9)
Vs0=2{cosδ+cos(δ+90+α0)}
=4cos{(δ+δ+90+α0)/2}
×cos[{δ−(δ+90+α0)}/2]
=4cos(δ+45+α0/2)cos{−(45+α0/2)}
=4cos(δ+45+α0/2)cos(45+α0/2) …(10)
Va0=Vx+Vy=2cosδ+2sin(δ+α0)
=2{cosδ−cos(δ+90+α0)} …(11)
上記式(11)を和積の公式(12)により変形すると、加算値Va0は、以下の式(13)のように表される。
cosA−cosB=−2sin{(A+B)/2}sin{(A−B)/2}
…(12)
Va0=2{cosδ−cos(δ+90+α0)}
=−4sin{(δ+δ+90+α0)/2}
×sin[{δ−(δ+90+α0)}/2]
=−4sin(δ+45+α0/2)sin{−(45+α0/2)}
=4sin(δ+45+α0/2)sin(45+α0/2) …(13)
Vs0max=4cos{(45+α0/2)} …(14)
Va0max=4sin{(45+α0/2)} …(15)
なお、減算値Vs0の最大値Vs0max、および、加算値Va0の最大値Va0maxは、被検出部87を回転させることにより、定数として取得可能である。
φ0=ATAN(Va0max/Vs0max)
=ATAN[4sin{(45+α0/2)}/4cos{(45+α0/2)}]
=45+α0/2 …(16)
位相補正値φ1は、−cos信号Vx2およびsin信号Vyに基づいて算出される。ここで、−cos信号Vx2を基準としたときの位相ずれをα1とすると、−cos信号Vx2およびsin信号Vyは、以下のように表される。なお、−cos信号Vx2については、制御部51内でオフセット値を消去し、+cos信号に換算した値−Vx2aを用いる。
Vx2a=−cosδ
−Vx2a=cosδ …(17)
Vy=2sin(δ+α1) …(18)
ここで、cos信号−Vx2aからsin信号Vyを減算した減算値Vs1を算出する。なおここでは、cos信号−Vx2aとsin信号Vyとの振幅を合わせるため、cos信号−Vx2aを2倍しているが、sin信号であるVyを1/2倍してもよい。以下の例でも同様である。
Vs1=−2Vx2a−Vy=2cosδ−2sin(δ+α1)
=2{cosδ+cos(δ+90+α1)} …(19)
上記式(19)を和積の公式にて変形すると、減算値Vs1は、式(20)のように表される。
Vs1=4cos(δ+45+α1/2)cos(45+α1/2) …(20)
Va1=−2Vx2a+Vy=2cosδ+2sin(δ+α1)
=2{cosδ−cos(δ+90+α1)} …(21)
上記式(21)を和積の公式にて変形すると、加算値Va1は、式(22)のように表される。
Va1=4sin(δ+45+α1/2)sin(45+α1/2) …(22)
Vs1max=4cos(45+α1/2) …(23)
Va1max=4sin(45+α1/2) …(24)
加算値Va1の最大値Va1maxを減算値Vs1の最大値Vs1maxで除した値のarctanを位相補正値φ1として算出すると、以下の式(25)のように表される。
φ1=ATAN(Va1max/Vs1max)=45+α1/2 …(25)
位相補正値φ2は、+cos信号Vx1およびsin信号Vyに基づいて算出される。ここで、+cos信号Vx1を基準としたときの位相ずれをα2とすると、+cos信号Vx1およびsin信号Vyは、以下のように表される。なお、+cos信号Vx1については、制御部51内でオフセット値を消去した値Vx1aを用いる。
Vx1a=cosδ …(26)
Vy=2sin(δ+α2) …(27)
Vs2=2Vx1a−Vy=2cosδ−2sin(δ+α2)
=2{cosδ+cos(δ+90+α2)} …(28)
となる。上記式(28)を和積の公式にて変形すると、減算値Vs2は、式(29)のように表される。
Vs2=4cos(δ+45+α2/2)cos(45+α2/2) …(29)
Va2=2Vx1a+Vy=2cosδ+2sin(δ+α2)
=2{cosδ−cos(δ+90+α2)} …(30)
となる。上記式(30)を和積の公式にて変形すると、加算値Va2は、式(31)のように表される。
Va2=4sin(δ+45+α2/2)sin(45+α2/2) …(31)
Vs2max=4cos(45+α2/2) …(32)
Va2max=4sin(45+α2/2) …(33)
加算値Va2の最大値Va2maxを減算値Vs2の最大値Vs2maxで除した値のarctanを位相補正値φ2として算出すると、以下の式(34)のように表される。
φ2=ATAN(Va2max/Vs2max)=45+α2/2 …(34)
位相補正値φ3は、cos信号Vxおよび−sin信号Vy2に基づいて算出される。ここで、cos信号Vxを基準としたときの位相ずれをα3とすると、cos信号Vxおよび−sin信号Vy2は、以下のように表される。なお、−sin信号Vy2については、制御部51内でオフセット値を消去し、+sin信号に換算した値−Vy2aを用いる。
Vx=2cosδ …(5)
Vy2a=−sin(δ+α3)
−Vy2a=sin(δ+α3) …(35)
Vs3=Vx−(−2Vy2a)=2cosδ−2sin(δ+α3)
=2{cosδ+cos(δ+90+α3)} …(36)
となる。上記式(36)を和積の公式にて変形すると、減算値Vs3は、式(37)のように表される。
Vs3=4cos(δ+45+α3/2)cos(45+α3/2) …(37)
Va3=Vx+(−2Vy2a)=2cosδ+2sin(δ+α3)
=2{cosδ−cos(δ+90+α3)} …(38)
となる。上記式(38)を和積の公式にて変形すると、加算値Va3は、式(39)のように表される。
Va3=4sin(δ+45+α3/2)sin(45+α3/2) …(39)
Vs3max=4cos(45+α3/2) …(40)
Va3max=4sin(45+α3/2) …(41)
加算値Va3の最大値Va3maxを減算値Vs3の最大値Vs3maxで除した値のarctanを位相補正値φ3として算出すると、以下の式(42)のように表される。
φ3=ATAN(Va3max/Vs3max)=45+α3/2 …(42)
位相補正値φ4は、cos信号Vxおよび+sin信号Vy1に基づいて算出される。ここで、cos信号Vxを基準としたときの位相ずれをα4とすると、cos信号Vxおよび+sin信号Vy1は、以下のように表される。なお、+sin信号Vy1については、制御部51内でオフセット値を消去した値Vy1aを用いる。
Vx=2cosδ …(5)
Vy1a=sin(δ+α4) …(43)
Vs4=Vx−2Vy1a=2cosδ−2sin(δ+α4)
=2{cosδ+cos(δ+90+α4)} …(44)
となる。上記式(44)を和積の公式にて変形すると、減算値Vs4は、式(45)のように表される。
Vs4=4cos(δ+45+α4/2)cos(45+α4/2) …(45)
Va4=Vx+2Vy1a=2cosδ+2sin(δ+α4)
=2{cosδ−cos(δ+90+α4)} …(46)
となる。上記式(46)を和積の公式にて変形すると、加算値Va4は、式(47)のように表される。
Va4=4sin(δ+45+α4/2)sin(45+α4/2) …(47)
Vs4max=4cos(45+α4/2) …(48)
Va4max=4sin(45+α4/2) …(49)
加算値Va4の最大値Va4maxを減算値Vs4の最大値Vs4maxで除した値のarctanを位相補正値φ4として算出すると、以下の式(50)のように表される。
φ4=ATAN(Va4max/Vs4max)=45+α4/2 …(50)
位相補正値φ5は、−cos信号Vx2および−sin信号Vy2に基づいて算出される。ここで、−cos信号Vx2を基準としたときの位相ずれをα5とすると、−cos信号Vx2および−sin信号Vy2は、以下のように表される。なお、−cos信号Vx2および−sin信号Vy2については、制御部51内でオフセットを消去し、+cos信号または+sin信号に換算した値−Vx2a、−Vy2aを用いる。
Vx2a=−cosδ
−Vx2a=cosδ …(51)
Vy2a=−sin(δ+α5)
−Vy2a=sin(δ+α5) …(52)
Vs5=−Vx2a−(−Vy2a)=cosδ−sin(δ+α5)
=cosδ+cos(δ+90+α5) …(53)
となる。上記式(53)を和積の公式にて変形すると、減算値Vs5は、式(54)のように表される。
Vs5=2cos(δ+45+α5/2)cos(45+α5/2) …(54)
Va5=−Vx2a+(−Vy2a)=cosδ+sin(δ+α5)
=cosδ−cos(δ+90+α5) …(55)
となる。上記式(55)を和積の公式にて変形すると、加算値Va5は、式(56)のように表される。
Va5=2sin(δ+45+α5/2)sin(45+α5/2) …(56)
Vs5max=2cos(45+α5/2) …(57)
Va5max=2sin(45+α5/2) …(58)
加算値Va5の最大値Va5maxを減算値Vs5の最大値Vs5maxで除した値のarctanを位相補正値φ5として算出すると、以下の式(58)のように表される。
φ5=ATAN(Va5max/Vs5max)=45+α5/2 …(59)
位相補正値φ6は、−cos信号Vx2および+sin信号Vy1に基づいて算出される。ここで、−cos信号Vx2を基準としたときの位相ずれをα6とすると、−cos信号Vx2および+sin信号Vy1は、以下のように表される。なお、−cos信号Vx2および+sin信号Vy1については制御部51内でオフセットを除去し、−cos信号Vx2については+cos信号に換算した値−Vx2a、Vy1aを用いる。
Vx2a=−cosδ
−Vx2a=cosδ …(60)
Vy1a=sin(δ+α6) …(61)
Vs6=−Vx2a−Vy1a=cosδ−sin(δ+α6)
=cosδ+cos(δ+90+α6)} …(62)
となる。上記式(62)を和積の公式にて変形すると、減算値Vs6は、式(63)のように表される。
Vs6=2cos(δ+45+α6/2)cos(45+α6/2) …(63)
Va6=−Vx2a+Vy1a=cosδ+sin(δ+α6)
=cosδ−cos(δ+90+α6) …(64)
となる。上記式(64)を和積の公式にて変形すると、加算値Va6は、式(65)のように表される。
Va6=2sin(δ+45+α6/2)sin(45+α6/2) …(65)
Vs6max=2cos(45+α6/2) …(66)
Va6max=2sin(45+α6/2) …(67)
加算値Va6の最大値Va6maxを減算値Vs6の最大値Vs6maxで除した値のarctanを位相補正値φ6として算出すると、以下の式(68)のように表される。
φ6=ATAN(Va6max/Vs6max)=45+α6/2 …(68)
位相補正値φ7は、+cos信号Vx1および−sin信号Vy2に基づいて算出される。ここで、+cos信号Vx1を基準としたときの位相ずれをα7とすると、+cos信号Vx1および−sin信号Vy2は、以下のように表される。なお、+cos信号Vx1および−sin信号Vy2については制御部51内でオフセットを除去し、−sin信号Vy2については+sin信号に換算した値Vx1a、−Vy2aを用いる。
Vx1a=cosδ …(69)
Vy2a=−sin(δ+α7)
−Vy2a=sin(δ+α7) …(70)
Vs7=Vx1a−(−Vy2a)=cosδ−sin(δ+α7)
=cosδ+cos(δ+90+α7) …(71)
となる。上記式(71)を和積の公式にて変形すると、減算値Vs7は、式(72)のように表される。
Vs7=2cos(δ+45+α7/2)cos(45+α7/2) …(72)
Va7=Vx1a+(−Vy2a)=cosδ+sin(δ+α7)
=cosδ−cos(δ+90+α7) …(73)
となる。上記式(73)を和積の公式にて変形すると、加算値Va7は、式(74)のように表される。
Va7=2sin(δ+45+α7/2)sin(45+α7/2) …(74)
Vs7max=2cos(45+α7/2) …(75)
Va7max=2sin(45+α7/2) …(76)
加算値Va7の最大値Va7maxを減算値Vs7の最大値Vs7maxで除した値のarctanを位相補正値φ7として算出すると、以下の式(77)のように表される。
φ7=ATAN(Va7max/Vs6max)=45+α7/2 …(77)
位相補正値φ8は、+cos信号Vx1および+sin信号Vy1に基づいて算出される。ここで、+cos信号Vx1を基準としたときの位相ずれをα8とすると、+cos信号Vx1および+sin信号Vy1は、以下のように表される。なお、+cos信号Vx1および+sin信号Vy1については、制御部51内でオフセットを除去した値Vx1a、Vy1aを用いる。
Vx1a=cosδ …(78)
Vy1a=sin(δ+α8) …(79)
Vs8=Vx1a−Vy1a=cosδ−sin(δ+α8)
=cosδ+cos(δ+90+α8) …(80)
となる。上記式(80)を和積の公式にて変形すると、減算値Vs8は、式(81)のように表される。
Vs8=2cos(δ+45+α8/2)cos(45+α8/2) …(81)
Va8=Vx1a+Vy1a=cosδ+sin(δ+α8)
=cosδ−cos(δ+90+α8) …(82)
となる。上記式(82)を和積の公式にて変形すると、加算値Va8は、式(83)のように表される。
Va8=2sin(δ+45+α8/2)sin(45+α8/2) …(83)
Vs8max=2cos(45+α8/2) …(84)
Va8max=2sin(45+α8/2) …(85)
加算値Va8の最大値Va8maxを減算値Vs8の最大値Vs8maxで除した値のarctanを位相補正値φ8として算出すると、以下の式(86)のように表される。
φ8=ATAN(Va8max/Vs8max)=45+α8/2 …(86)
このように算出された位相補正値φ0〜φ8は、いずれも定数であり、算出された位相補正値φ0〜φ8は、メモリ部52に記憶される(図5中のS13)。
図6中のS101では、4つの出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2を取得する。また、cos信号同士、sin信号同士を減算した値であるcos信号Vx、およびsin信号Vyを算出する(式(1)〜式(6)参照)。
S104では、全ての出力信号が正常であるので、cos信号Vxおよびsin信号Vyに基づいて補正前回転角度θ0を算出する。
まず、補正前回転角度θnの算出に先立ち、位相補正値φ0〜φ8の算出に用いた減算値Vsn、加算値Van、減算値Vsnの最大値Vsnmax、および、加算値Vanの最大値Vanmaxを用い、振幅を合わせるべく、減算値Vsnを減算値Vsnの最大値Vsnmaxで除した値Vsdn、および、加算値Vanを加算値Vanの最大値Vanmaxで除した値Vadnを算出する。
Vsdn=Vsn/Vsnmax=cos(δ+45+αn/2) …(87)
Vadn=Van/Vanmax=sin(δ+45+αn/2) …(88)
なお、VsdnおよびVadnは、具体的には、Vsd0がVs0をVs0maxで除して算出され、Vad0がVa0をVa0maxで除して算出される、といった具合であり、本実施形態ではn=0〜8である。
補正前回転角度θnは、VsdnおよびVadnを用いて算出されるarctanである角度γn(ただしn=0〜8)に基づいて算出される。角度γnは、式(89)、(90)のように表される。
γn=ATAN(Vadn/Vsdn) …(89)
γn=ATAN(Vsdn/Vadn) …(90)
また、補正前回転角度θnを0〜360度とすると、異なる補正前回転角度θnでtan値またはcot値が同じになる場合があるので、Vadnの絶対値とVsdnの絶対値との大小関係、Vadnの符号、およびVsdnの符号に基づき、補正前回転角度θnの角度範囲を特定したうえで、tan値またはcot値のarctanに基づき、補正前回転角度θnを算出する。
具体的には、図8および図9に示すように、Vadnの絶対値とVsdnの絶対値との大小関係、Vadnの符号、およびVsdnの符号に基づき、補正前回転角度θnの0〜360度を8つの角度範囲であるエリア1〜エリア8のどこに該当するかを特定する。そして、Vadnの絶対値とVsdnの絶対値とを比較し、絶対値の大きい方が分母となるようにtan値またはcot値を用い、tan値またはcot値のarctanである角度γnを算出する。なお、図9中の「γの算出方法」においては、γの算出に係り、tan値またはcot値のどちらを用いてarctanを求めているかを示している。補正前回転角度θnの角度範囲が特定されているので、図9に示すように、基準となる0度(=360度)、90度、180度、または270度に算出された角度γnを加算または減算することにより、補正前回転角度θnを算出する。
また、補正前回転角度θnは、以下の式(91)のように表される。
θn=δ+45+αn/2 …(91)
θ0=δ+45+α0/2 …(92)
S105では、cos信号Vxおよびsin信号Vyに基づいて算出され、メモリ部52に記憶されている位相補正値φ0を取得する。そして取得した位相補正値φ0に基づき、S104で算出した補正前回転角度θ0を補正する。具体的には、補正前回転角度θ0から位相補正値φ0を減算することにより、式(93)に示すように、被検出部87の回転角度δを算出することができる。
θ0−φ0=(δ+45+α0/2)−(45+α0/2)=δ …(93)
θ1=δ+45+α1/2 …(94)
θ1−φ1=(δ+45+α1/2)−(45+α1/2)=δ …(95)
θ2=δ+45+α2/2 …(96)
θ2−φ2=(δ+45+α2/2)−(45+α2/2)=δ …(97)
θ3=δ+45+α3/2 …(98)
θ3−φ3=(δ+45+α3/2)−(45+α3/2)=δ …(99)
θ4=δ+45+α4/2 …(100)
θ4−φ4=(δ+45+α4/2)−(45+α4/2)=δ …(101)
θ5=δ+45+α5/2 …(102)
θ5−φ5=(δ+45+α5/2)−(45+α5/2)=δ …(103)
θ6=δ+45+α6/2 …(104)
θ6−φ6=(δ+45+α6/2)−(45+α6/2)=δ …(105)
θ7=δ+45+α7/2 …(106)
θ7−φ7=(δ+45+α7/2)−(45+α7/2)=δ …(107)
出力信号Vx2、Vy2以外の出力信号に異常が生じている場合(S127:NO)、S130へ移行する。出力信号Vx2、Vy2のみに異常が生じている場合(S127:YES)、S128へ移行する。
θ8=δ+45+α8/2 …(108)
θ8−φ8=(δ+45+α8/2)−(45+α8/2)=δ …(109)
なお、S105、S108、S111、S114、S117、S120、S123、S126、またはS129で算出された回転角度δは、モータ80の駆動制御に用いられる。
また、−cos信号Vx2のみに異常が生じている場合(S109:YES)、+cos信号Vx1に基づいて補正前回転角度θ2を算出し(S110)、+cos信号Vx1に基づいて算出された位相補正値φ2に基づいて補正前回転角度θ2を補正し、被検出部87の回転角度δを算出する(S111)。
これにより、+cos信号または−cos信号に異常が生じている場合でも、異常が生じていない+cos信号または−cos信号に基づいて算出された補正前回転角度および位相補正値に基づき、高精度に被検出部87の回転角度δを算出することができる。
また、−sin信号Vy2のみに異常が生じている場合(S115:YES)、+sin信号Vy1に基づいて補正前回転角度θ4を算出し(S116)、+sin信号Vy1に基づいて算出された位相補正値φ4に基づいて補正前回転角度θ4を補正し、被検出部87の回転角度δを算出する(S117)。
これにより、+sin信号Vy1または−sinVy2信号に異常が生じている場合でも、異常が生じていない+sin信号Vy1または−sin信号Vy2に基づいて算出された補正前回転角度および位相補正値に基づき、高精度に被検出部87の回転角度δを算出することができる。
+cos信号Vx1および−sin信号Vy2に異常が生じている場合(S121:YES)、−cos信号Vx2および+sin信号Vy1に基づいて補正前回転角度θ6を算出し(S122)、−cos信号Vx2および+sin信号Vy1に基づいて算出された位相補正値φ6に基づいて補正前回転角度θ6を補正し、被検出部87の回転角度δを算出する(S123)。
−cos信号Vx2および−sin信号Vy2に異常が生じている場合(S127:YES)、+cos信号Vx1および+sin信号Vy1に基づいて補正前回転角度θ8を算出し(S128)、+cos信号Vx1および+sin信号Vy1に基づいて算出された位相補正値φ8に基づいて補正前回転角度θ8を補正し、被検出部87の回転角度δを算出する(S129)。
これにより、+cos信号Vx1または−cos信号Vx2、および、+sin信号Vy1または−sin信号Vy2に異常が生じている場合でも、異常が生じていない+cos信号Vx1または−cos信号Vx2、および、+sin信号Vy1または−sin信号Vy2に基づいて算出された補正前回転角度および位相補正値に基づき、高精度に被検出部87の回転角度δを算出することができる。
θ=δ+45+α/2
また、位相補正値φは、以下の通りである。
φ=45+α/2
これにより、例えば補正前回転角度θから位相補正値φを減算することにより、被検出部87の回転角度δを簡素な式で算出することができる。また、位相補正値φは、定数であるので、位相補正値φをメモリ部52等に記憶する場合、位相補正値が関数である場合と比較して、当該メモリ部52における容量を低減することができる。
(ア)上記実施形態では、+cos信号Vx1のみに異常が生じている場合(S106:YES)、−cos信号Vx2およびsin信号Vyから算出される補正前回転角度θ1および位相補正値φ1に基づいて回転角度δを算出した。他の実施形態では、−cos信号Vx2および−sin信号Vy2から算出される補正前回転角度θ5および位相補正値φ5に基づいて回転角度δを算出してもよいし、−cos信号Vx2および+sin信号Vy1から算出される補正前回転角度θ6および位相補正値φ6に基づいて回転角度δを算出してもよい。
同様に、−cos信号Vx2のみに異常が生じている場合(S109:YES)、+cos信号Vx1および−sin信号Vy2から算出される補正前回転角度θ7および位相補正値φ7に基づいて回転角度δを算出してもよいし、+cos信号Vx1および+sin信号Vy1から算出される補正前回転角度θ8および位相補正値φ8に基づいて回転角度δを算出してもよい。
すなわち、+cos信号または−cos信号に異常が生じている場合、+sin信号、−sin信号、または+sin信号および−sin信号と、異常が生じていない+cos信号または−cos信号とに基づいて補正前回転角度および位相補正値を算出し、算出された補正前回転角度および位相補正値に基づき、被検出部の回転角度を算出する、ということである。
さらにまた、−sin信号Vy2のみに異常が生じている場合(S115:YES)、−cos信号Vx2および+sin信号Vy1から算出される補正前回転角度θ6および位相補正値φ6に基づいて回転角度δを算出してもよいし、+cos信号Vx1および+sin信号Vy1から算出される補正前回転角度θ8および位相補正値φ8に基づいて回転角度δを算出してもよい。
すなわち、+sin信号または−sin信号に異常が生じている場合、+cos信号、−cos信号、または+cos信号および−cos信号と、異常が生じていない+sin信号または−sin信号に基づいて補正前回転角度および位相補正値を算出し、算出された補正前回転角度および位相補正値に基づき、被検出部の回転角度を算出する、ということである。
また、補正前回転角度および位相補正値の算出方法は、上記実施形態にて説明した方法に限らない。
また、上記実施形態では、取得される+cos信号、−cos信号、+sin信号、および−sin信号の振幅は等しかったが、他の実施形態では、取得される信号の振幅は、出力信号毎に異なっていてもよい。この場合、それぞれの出力信号の振幅がわかっていれば、制御部において演算処理を行い、振幅を補正することにより、上記実施形態と同様にして補正前回転角度および位相補正値を算出し、被検出部の回転角度を算出することができる。
(オ)上記実施形態では、2つのブリッジ回路が別々の電源に接続されていたが、他の実施形態では、2つのブリッジ回路が同一の電源に接続されていてもよい。また、一方のブリッジ回路から取得される出力信号が+cos信号および−cos信号であり、他方のブリッジ回路から取得される出力信号が+sin信号および−sin信号であってもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
10・・・回転角検出装置
11・・・第1ブリッジ回路(回路部)
12・・・第2ブリッジ回路(回路部)
14〜17・・・ハーフブリッジ(センサ素子組)
21〜28・・・センサ素子
31〜34・・・ハーフブリッジの中点、
40・・・増幅部
50・・・マイコン
51・・・制御部(出力信号取得手段、補正前回転角度算出手段、位相補正値算出手段、補正手段)
52・・・メモリ部(記憶部)
80・・・モータ
87・・・被検出部
90・・・ステアリングシステム
Claims (7)
- 被検出部の回転に応じて変化する回転磁界を感知し前記被検出部の回転角度に応じてインピーダンスが変化するセンサ素子により構成される複数のセンサ素子組を有する回路部と、
複数の前記センサ素子組から出力される出力信号を前記センサ素子組毎に取得する出力信号取得手段と、
前記出力信号取得手段により取得された前記出力信号に基づき、前記被検出部の補正前回転角度を算出する補正前回転角度算出手段と、
前記出力信号取得手段により取得された前記出力信号に基づき、前記出力信号間の位相ずれを補正するための位相補正値を算出する位相補正値算出手段と、
前記位相補正値算出手段により算出された前記位相補正値を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記位相補正値を取得し、取得された前記位相補正値に基づき、前記補正前回転角度算出手段により算出された前記補正前回転角度を補正する補正手段と、
を備え、
前記出力信号取得手段により取得される前記出力信号は、位相の異なる複数の信号であるcos信号およびsin信号を含み、
前記位相補正値算出手段は、前記cos信号と前記sin信号の加算値および減算値に基づいて前記位相補正値を算出することを特徴とする回転角検出装置。 - 前記出力信号取得手段により取得される前記出力信号は、4以上であることを特徴とする請求項1に記載の回転角検出装置。
- 前記出力信号取得手段により取得される前記出力信号は、+cos信号、−cos信号、+sin信号、および−sin信号を含むことを特徴とする請求項2に記載の回転角検出装置。
- 前記補正前回転角度算出手段は、前記+cos信号、前記−cos信号、前記+sin信号、および、前記−sin信号に基づいて前記補正前回転角度を算出し、
前記位相補正値算出手段は、前記+cos信号、前記−cos信号、前記+sin信号、および、前記−sin信号に基づいて前記位相補正値を算出することを特徴とする請求項3に記載の回転角検出装置。 - 前記補正前回転角度算出手段は、前記+cos信号または前記−cos信号に基づいて前記補正前回転角度を算出し、
前記位相補正値算出手段は、前記+cos信号または前記−cos信号に基づいて前記位相補正値を算出することを特徴とする請求項3または4に記載の回転角検出装置。 - 前記補正前回転角度算出手段は、前記+sin信号または前記−sin信号に基づいて前記補正前回転角度を算出し、
前記位相補正値算出手段は、前記+sin信号または前記−sin信号に基づいて前記位相補正値を算出することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の回転角検出装置。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載された回転角検出装置を用いた電動パワーステアリング装置。
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