JP5113100B2 - 高純度ニッケル合金ターゲット - Google Patents
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スパッタリング法は、陽極となる基板と陰極となるターゲットとを対向させ、不活性ガス雰囲気下でこれらの基板とターゲットの間に高電圧を印加して電場を発生させるものであり、この時電離した電子と不活性ガスが衝突してプラズマが形成され、このプラズマ中の陽イオンがターゲット表面に衝突してターゲット構成原子を叩きだし、この飛び出した原子が対向する基板表面に付着して膜が形成されるという原理を用いたものである。
近年、特にゲート材料として、シリサイド化温度が低いこと、膜の電気抵抗が低いこと、さらにはシリサイド反応で使用されるシリコンが少ないなどの特性があることから、コバルトに替えてニッケル又はニッケル合金を使用する提案がなされている。
しかし、逆に言うとニッケル又はニッケル合金のようなターゲットにおいては、その厚さを5mm以下好ましくは3mm以下に薄くし、かつ均一な膜が得られるように、ターゲットを加工する必要があるという大きな課題がある。
また、スパッタ面内の磁気特性が不均一であるターゲットを用いると、エロージョン部の最深部が歪み、予定した膜厚分布が得られないという問題があり、磁性体であるニッケル又はニッケル合金ターゲットは、特にこの傾向が著しいと言える。
ニッケル又はニッケル合金ターゲットは、この磁気的異方性を利用するものであるが、内部組織に歪み等がそのまま存在するという欠点を有している。
このような圧延板から円盤状のターゲットを切出してターゲットを作製すると、本来円形のエロージョンが進行するところが、1方向に延ばされた形となる。
本来、円形基板上への成膜の際に本来円形のエロージョンとなることが期待されていたものであるから、該円形基板上での均一の膜厚が得られないという問題がある。
以上から、通常成膜の厚さは磁気特性を左右するので、ある程度の膜厚があり、かつそれが均一であることが必要である。しかし、ゲート膜は薄くても良く、成膜速度や膜厚は特に問題となることはない。
しかしながら、上記の成膜特性において、膜のユニフォーミティ(膜厚の均一性)がゲート膜の特性に大きな影響を与え、特に、最近の300mmウエハプロセスでは大きな問題となっている。
本発明はこの知見に基づき、
1.マグネトロンスパッタリング用高純度ニッケル合金ターゲットであって、ニッケル合金の純度が4N5(99.995重量%)以上で、合金元素はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Co、Pt、Pd、Ir、Fe、Mnからなり、その添加量は0.5〜5at%で強磁性を示し、かつターゲットの透磁率が100以上、平均結晶粒径の5倍以上に粒成長した粗大結晶粒を含まず、スパッタ膜のユニフォーミティ(%、3σ)が10%以下であるユニフォーミティに優れたマグネトロンスパッタリング用高純度ニッケル合金ターゲット、を提供する。
次に、これを熱間鍛造し、さらに30%以上の圧延率で冷間圧延し、これを400°C以上の温度で熱処理する。本発明においては前記冷間圧延と熱処理を少なくとも2回以上繰り返す。そして、最終的に、平板状その他のマグネトロンスパッタリング装置にセットできるターゲット形状に加工する。
この高純度ニッケル合金ターゲットの透磁率が100以上であることが重要であり、本発明の大きな特徴の一つである。上記の製造工程によってこれを達成する。
つまり、透磁率が低いほど漏洩磁場が大きく、エロージョン部近傍のプラズマ密度が高くなり、このエロージョンの進行に伴い、よりこの部分のスパッタ成膜が大きくなってしまい、ターゲットライフを通じてユニフォーミティの変化が大きくなってしまうことになる。
本発明は、このような透磁率が高いことによる効果を利用してスパッタ膜のユニフォーミティを改善するものであり、従来とは全くことなる技術思想に基づくものである。
また、このような高純度ニッケル合金ターゲット内部組織の粗大粒の混在は、プラズマのイグニッション(点弧)性にも悪影響を与えると考えられる。
上記のように、マグネトロンスパッタリングの際に好適なプラズマを形成させるためには、ニッケル合金ターゲットを5mm以下、好ましくは3mm程度の厚さにする必要があるが、もし異常な粒成長を起こしたターゲットの不均一組織が存在すると、それはターゲットが薄いだけに、ターゲット全体に大きく影響を与えることになる。その結果、スパッタリング膜のユニフォーミティ及びプラズマのイグニッション(点弧)性をより悪化させる。
したがって、マグネトロンスパッタリング用高純度ニッケル合金ターゲット中に、平均結晶粒径の5倍以上に粒成長した粗大結晶粒を含まないことが望ましい。これによって、膜のユニフォーミティ及びプラズマのイグニッション(点弧)性がさらに改善される。
30%未満の圧延率では、異常粒成長した粗大組織を十分破壊(分断)できず、また300°C未満では透磁率が本発明で考えている程度の大きな値にならない。したがって、熱処理の範囲は300°C以上とする。
また、一回の30%以上の圧延率での冷間圧延と300°C以上の温度での熱処理(たとえ80%程度の強加工をしても)では、異常粒成長した粗大組織を十分に消失させることができない。
したがって、この工程は少なくとも2回以上、繰り返すことが必要である。なお、この冷間圧延と熱処理は必ずしも同一条件とする必要はない。
以上の工程によって、膜のユニフォーミティ及びプラズマのイグニッション(点弧)性に優れたマグネトロンスパッタリング用高純度ニッケル合金ターゲットを製造することができる。
ニッケル合金としては、Ni−Ti、Ni−Zr、Ni−Hf、Ni−V、Ni−Nb、Ni−Ta、Ni−Cr、Ni−Co、Ni−Pt、Ni−Pd、Ni−Ir、Ni−Fe、Ni−Mnなどを挙げることができる。添加する合金元素は、強磁性体としての性質が大きく変化するほどの含有量としないことは勿論であり、添加量としては0.5〜7at%程度である。実施例に示すように上限値は5at%とする。
また、ターゲット中の平均結晶粒径が20〜1200μmであり、スパッタリングのエロージョン面における平均結晶粒径のばらつきが変動係数20%以内であることが望ましい。
これによって、ターゲットライフを通じての膜のユニフォーミティ及びプラズマのイグニッション(点弧)性に優れた好適なマグネトロンスパッタリング用高純度ニッケル合金ターゲットを得ることができる。
なお、下記実施例及び比較例に示すニッケル合金については、上記ニッケル合金の一部のみを例示するが、いずれの合金においても同様の結果が得られた。
純度99.995%のニッケルを原料として電子ビーム溶解し、これを鋳造してインゴット(120φ×70h)とした。このインゴットを均熱化処理(900〜1150°Cで2時間保持)した後、熱間鍛造(こねくり鍛造)を行った。熱間鍛造の開始温度は900°C〜1150°Cであり、真歪み約5で行った。
900°C未満の熱間鍛造では割れが入ることが多く、1150°Cを超える温度では材料の酸化が著しいので、上記の範囲の温度とした。
これを圧延率30〜60%で冷間圧延し、300°C〜600°Cで1時間熱処理し、再結晶させた。次に、これをさらに圧延率30〜60%で冷間圧延し、300〜600°Cで1時間熱処理し、再結晶させた。
これによって得た圧延板から試料を切り出し、厚さ3mm、直径440mmの円盤状ニッケルターゲット試料とした。ターゲット試料の平均粒径は表1に示す通り116〜1215μmにあり、異常結晶粒が見られない組織のターゲットが得られた。また、このニッケルターゲットの透磁率は121〜255であり、良好な平坦性を有していた。なお、組織観察と透磁率の測定は、ターゲットを放射状に均一に17点測定し、その平均値とした。以下の参考例及び比較例(参考)は、同様にして測定した。
膜のユニフォーミティの測定結果は、いずれも10%以下であり、しかもターゲットライフ90kwh(スパッタパワー1kw)まで持続し、優れた膜のユニフォーミティを示した。その詳細を、同様に表1に示す。但し、ターゲットライフ0〜10kWhは不安的期であり測定範囲外とした。
なお、表1には、プラズマのイグニッション(点弧)性を表示していないが、いずれも良好であった。
前記参考例と同様の純度99.99%のニッケルを原料として電子ビーム溶解し、これを鋳造してインゴット(120φ×70h)とした。このインゴットを均熱化処理(900〜1150°Cで2時間保持)した後、熱間鍛造を行った。熱間鍛造の開始温度は900°C〜1150°Cであり、真歪み約5で行った。
これを圧延率50〜80%で冷間圧延し、300°C〜600°Cで1時間熱処理した。この冷間圧延と熱処理は1回である。
これによって得た圧延板から試料を切り出し、厚さ3mm、直径440mmの円盤状ニッケルターゲット試料とした。ターゲット組織には、粗大結晶粒が観察された。
膜のユニフォーミティの測定結果は上限値が12〜20の範囲にあり、膜のユニフォーミティが著しく悪い結果となった。その詳細を、同様に表1に示す。特に、この比較例1〜8については、ターゲットライフが40kwhを過ぎたころから急激に膜のユニフォーミティが悪化する傾向が見られた。
なお、表1には、プラズマのイグニッション(点弧)性を表示していないが、同イグニッション性は不良であった。
純度99、995%のニッケルを原料として電子ビーム溶解した。別に純度99.995%のチタンを原料として電子ビーム溶解し、このニッケルにチタンを5at%添加して、コールドウォールタイプの真空誘導炉で溶解してニッケル−チタン合金とし、これを鋳造してインゴット(120φ×70h)とした。
このインゴットを均熱化処理(750〜1150°Cで2時間保持)した後、熱間鍛造を行った。熱間鍛造の開始温度は750°C〜1150°Cであり、真歪み約5で行った。750°C未満の熱間鍛造では割れが入ることが多く、1150°Cを超える温度では材料の酸化が著しいので、上記の範囲の温度とした。
これを圧延率30〜60%で冷間圧延し、300°C〜600°Cで1時間熱処理し、再結晶させた。次に、これをさらに圧延率30〜60%で冷間圧延し、300〜600°Cで1時間熱処理し、再結晶させた。
次に、このニッケル合金ターゲットを用いてマグネトロンスパッタリングを実施し、膜のユニフォーミティ(%、3σ)及びプラズマのイグニッション(点弧)性を測定及び観察した。なお、膜のユニフォーミティは間接的に4端子法による抵抗値から計算した。
膜のユニフォーミティの測定結果は、いずれも10%以下であり、しかもターゲットライフ90kwh(スパッタパワー1kw)まで持続し、優れた膜のユニフォーミティを示した。その詳細を、同様に表2に示す。
なお、表2には、プラズマのイグニッション(点弧)性を表示していないが、いずれも良好であった。
純度99、995%のニッケルを原料として電子ビーム溶解した。別に純度99.995%のチタンを原料として電子ビーム溶解し、このニッケルにチタンを5at%添加して、コールドウォールタイプの真空誘導炉で溶解してニッケル−チタン合金とし、これを鋳造してインゴット(120φ×70h)とした。
このインゴットを均熱化処理(750〜1150°Cで2時間保持)した後、熱間鍛造を行った。熱間鍛造の開始温度は750°C〜1150°Cであり、真歪み約5で行った。750°C未満の熱間鍛造では割れが入ることが多く、1150°Cを超える温度では材料の酸化が著しいので、上記の範囲の温度とした。
これを圧延率50〜80%で冷間圧延し、300°C〜600°Cで1時間熱処理した。この冷間圧延と熱処理は1回である。これによって得た圧延板から試料を切り出し、厚さ3mm、直径440mmの円盤状ニッケル合金ターゲット試料とした。ターゲット組織には、粗大結晶粒が観察された。
膜のユニフォーミティの測定結果は上限値が13〜22の範囲にあり、膜のユニフォーミティが著しく悪い結果となった。その詳細を、同様に表2に示す。特に、この比較例9〜16については、ターゲットライフが30kwhを過ぎたころから急激に膜のユニフォーミティが悪化する傾向が見られた。
なお、表2には、プラズマのイグニッション(点弧)性を表示していないが、同イグニッション性は不良であった。
純度99、995%のニッケルを原料として電子ビーム溶解した。別に純度99.995%のマンガンを原料とし、このニッケルにマンガンを0.5at%添加して、コールドウォールタイプの真空誘導炉でアルゴンガス雰囲気にて溶解してニッケル−マンガン合金とし、これを鋳造してインゴット(120φ×70h)とした。
このインゴットを均熱化処理(750〜1150°Cで2時間保持)した後、熱間鍛造を行った。熱間鍛造の開始温度は750°C〜1150°Cであり、真歪み約5で行った。750°C未満の熱間鍛造では割れが入ることが多く、1150°Cを超える温度では材料の酸化が著しいので、上記の範囲の温度とした。
これを圧延率30〜60%で冷間圧延し、300°C〜600°Cで1時間熱処理し、再結晶させた。次に、これをさらに圧延率30〜60%で冷間圧延し、300〜600°Cで1時間熱処理し、再結晶させた。
次に、このニッケル合金ターゲットを用いてマグネトロンスパッタリングを実施し、膜のユニフォーミティ(%、3σ)及びプラズマのイグニッション(点弧)性を測定及び観察した。なお、膜のユニフォーミティは間接的に4端子法による抵抗値から計算した。
膜のユニフォーミティの測定結果は、いずれも10%以下であり、しかもターゲットライフ90kwh(スパッタパワー1kw)まで持続し、優れた膜のユニフォーミティを示した。その詳細を、同様に表3に示す。
なお、表3には、プラズマのイグニッション(点弧)性を表示していないが、いずれも良好であった。
純度99、995%のニッケルを原料として電子ビーム溶解した。別に純度99.995%のマンガンを原料とし、このニッケルにマンガンを0.5at%添加して、コールドウォールタイプの真空誘導炉でアルゴンガス雰囲気にて溶解してニッケル−マンガン合金とし、これを鋳造してインゴット(120φ×70h)とした。
このインゴットを均熱化処理(750〜1150°Cで2時間保持)した後、熱間鍛造を行った。熱間鍛造の開始温度は750°C〜1150°Cであり、真歪み約5で行った。750°C未満の熱間鍛造では割れが入ることが多く、1150°Cを超える温度では材料の酸化が著しいので、上記の範囲の温度とした。
これを圧延率50〜80%で冷間圧延し、300°C〜600°Cで1時間熱処理した。この冷間圧延と熱処理は1回である。
次に、このニッケル合金ターゲットを用いて同一の条件でマグネトロンスパッタリングを実施し、膜のユニフォーミティ(%、3σ)及びプラズマのイグニッション(点弧)性を測定及び観察した。なお、膜のユニフォーミティの測定は間接的に4端子法による抵抗値から計算した。
膜のユニフォーミティの測定結果は上限値が15〜25の範囲にあり、膜のユニフォーミティが著しく悪い結果となった。その詳細を、同様に表3に示す。特に、この比較例17〜24については、ターゲットライフが30kwhを過ぎたころから急激に膜のユニフォーミティが悪化する傾向が見られた。
なお、表3には、プラズマのイグニッション(点弧)性を表示していないが、同イグニッション性は不良であった。
Claims (1)
- マグネトロンスパッタリング用高純度ニッケル合金ターゲットであって、ニッケル合金の純度が4N5(99.995重量%)以上で、合金元素はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Co、Pt、Pd、Ir、Fe、Mnからなり、その添加量は0.5〜5at%で強磁性を示し、かつターゲットの透磁率が105以上235以下、平均結晶粒径の5倍以上に粒成長した粗大結晶粒を含まず、スパッタ膜のユニフォーミティ(%、3σ)が10%以下であるユニフォーミティに優れたマグネトロンスパッタリング用高純度ニッケル合金ターゲット。
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