JP4685059B2 - マンガン合金スパッタリングターゲット - Google Patents

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この発明は、低酸素及び低硫黄であり、かつ大径(形)のマンガン合金スパッタリングターゲット及びその製造方法に関し、特にノジュールやパーティクルの発生が少なく、高特性・高耐食性の薄膜を形成できるマンガン合金スパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
コンピュータ用のハードディスクなどの磁気記録装置は、近年急速に小型化しており、またその記録密度が数10Gb/inに達しようとしている。このため再生ヘッドとしては、従来の誘導型ヘッドが限界となり、磁気抵抗効果型(AMR)ヘッドが用いられている。
そして、この磁気抵抗効果型(AMR)ヘッドはパソコン市場等の拡大に伴い、世界的規模で急成長し、さらに高密度である巨大磁気抵抗効果型(GMR)ヘッドが実用化されている。
このようなことからGMRヘッドに使用されるスピンバルブ膜の反強磁性膜として、最近マンガンと白金族元素等とのマンガン合金が使用されるようになり、さらに効率化のための急速な研究開発がなされている。また、この反強磁性膜はGMRだけでなくTMRにも使用され、さらにはMRAM等にも使用できる。
このような、例えば巨大磁気抵抗効果型(GMR)ヘッド等の製造に際しては、ヘッドを構成する各層はスパッタリング法によって成膜されている。一般に、スパッタリングに使用するターゲットは粉末の焼結するホットプレス法やHIP法による粉末冶金法又は溶解法などによって製造されている。マンガンと白金族元素等からなるマンガン合金ターゲットを前記粉末冶金法によって製造した場合、形状歩留まりが良好で抗折力が高いという利点がある。
しかし、この粉末冶金法による場合、原料粉末の比表面積が大きく、吸着する酸素が著しく高く、ターゲットの製造工程に混入する酸素やその他の不純物元素の量が多くなり、さらに密度が低いという問題がある。前記酸素の存在は膜の磁気特性を劣化させるため、明らかに望ましくない。
スパッタリング法による膜の形成は、陰極に設置したターゲットにArイオンなどの正イオンを物理的に衝突させ、その衝突エネルギーでターゲットを構成する材料を放出させて、対面している陽極側の基板にターゲット材料とほぼ同組成の膜を積層することによって行われる。
スパッタリング法による被覆法は処理時間や供給電力等を調節することによって、安定した成膜速度でオングストローム単位の薄い膜から数十μmの厚い膜まで形成できるという特徴を有している。
しかし、このような膜を形成する場合に特に問題となるのは、スパッタリングターゲットの密度とスパッタリング操作中に発生するノジュールである。
マンガン合金ターゲットはマンガン粉末と白金族元素等の粉末とを所定の割合に混合した混合粉末を焼結して製造されるが、もともと異なる成分組成の粉末であるから、粉末の粒径にばらつきがあり、緻密な焼結体が得られにくいという問題がある。
しかも、膜層がより小型化又は細密化されているので、膜自体も薄く微細化され、形成された膜が均一でない場合には品質が低下する傾向がある。したがって、ターゲットの成分を均一化するとともに、空孔を減少させることが重要である。
また、ターゲットのエロージョン面のノジュールが多くなると、これが不規則なスパッタリングを誘発して、場合によっては異常放電やクラスター状(固まりになった)の皮膜が形成されショートの原因になる問題がある。同時に、スパッタチャンバ内に粗大化した粒子(パーティクル)が浮遊するようになり、これが同様に基板上に再付着して薄膜上の突起物の原因となるという問題が発生する。
以上のことから、成分が均一かつ高密度の焼結体ターゲットを得ることが必要であったが、粉末冶金法によるものは、このような密度の低下は必須であり、ノジュールやパーティクルの発生が避けられないという問題がある。
これに対し、溶解法は粉末冶金で発生するような酸素等の吸着がなく、焼結体に比べターゲットの密度が高いという特長をもつ。しかし、溶解法によって得られたMn合金ターゲットは優れた特性を有するが、焼結体に比べて抗折力が低く割れが発生するという問題が起こった。
このため、脆性を有するながらも溶解鋳造品をそのまま使用するか又は鋳造組織をデンドライト組織にして抗折力を高めるという提案がある(特開2001−26861)。しかし、鋳造組織には異方性があり、例えデンドライト組織にして抗折力を高めることができても、その異方性がスパッタリング性膜に反映されて均一性に欠陥がでてくる可能性が高い。
また、製造コストや原料歩留まりから焼結法が望ましいが、溶解法によって得た材料を塑性加工して使用する提案もある(特開2000−160332)。しかし、この場合には、いかなる塑性加工なのか、またその塑性加工の程度もはっきりせず、単なる机上の空論に過ぎない提案もある。
実際のところ、上記のように抗折力が低く割れが発生し易いマンガン合金ターゲットでは、この脆性を解決する具体的提案がなければ、解決できない問題である。
本発明は、上記の諸問題点の解決、すなわち抗折力が低く割れが発生し易いマンガン合金の欠点を解決し、鍛造マンガン合金ターゲットを安定して製造できる方法を提供するものであり、これによってノジュールやパーティクルの発生が少なく、高特性・高耐食性の薄膜を形成できるマンガン合金スパッタリングターゲットを提供することを目的としたものである。
上記問題点を解決するための技術的な手段として加工方法の改善により、鍛造マンガン合金スパッタリングターゲットを製造できるとの知見を得た。この知見に基づき、本発明は、
1.酸素1000ppm以下、硫黄200ppm以下であり、単相の等軸晶を有し、結晶粒径が500μm以下である鍛造組織を備え、Ni、Pd、Pt、Rh、Ir、Au、Ru、Os、Cr及びReから選んだ少なくとも1種と残部Mn10〜98at%からなることを特徴とするマンガン合金スパッタリングターゲット
2.粒径5μm以上の酸化物粒子の個数が単位面積(100μm×100μm)当たり1個以下であることを特徴とする上記1記載のマンガン合金スパッタリングターゲット、を提供する。
本発明は、抗折力が低く割れが発生し易いマンガン合金の欠点を解決し、鍛造によりマンガン合金ターゲットを安定して製造でき、これによってノジュールやパーティクルの発生が少なく、高特性・高耐食性の薄膜を形成できるマンガン合金スパッタリングターゲットを得ることができるという優れた効果を有する。
本発明のマンガン合金スパッタリングターゲットは、主にNi、Pd、Pt、Rh、Ir、Au、Ru、Os、Cr及びReから選んだ少なくとも1種と残部Mn10〜98at%からなるマンガン合金に適用できる。
これらのマンガン合金は、巨大磁気抵抗効果型ヘッド、すなわちGMRやTMRさらには将来的にはMRAM等にも使用できるスピンバルブ膜の反強磁性膜として有用である。
これらのマンガン合金からなる高純度原材料を、電子ビーム溶解、アーク溶解、又は誘導溶解法によって溶解する。酸素の汚染をさけるために、真空中又は不活性雰囲気中で溶解するのが望ましい。これによって、揮発性物質は除去され、さらに純度が高くなる。これを鋳造して高純度マンガン合金インゴットを得る。
インゴットを好ましくは真空又は不活性ガス雰囲気中で、据込み鍛造又は型鍛造する。鍛造は平均真歪速度1×10−2〜2×10−5(1/s)で鍛造する。平均真歪速度1×10−2(1/s)を超えると、割れが発生し易く、また2×10−5(1/s)未満では鍛造の時間がかかり過ぎて能率的でない。
鍛造温度T(K)は、0.75Tm(K)≦T(K)≦0.98Tm(K)で鍛造することが望ましい。予式において、Tm(K)はマンガン合金の融点である。0.75Tm(K)未満では割れが発生し易く、0.98Tm(K)を超えると温度が高い割には加工が容易とならず、非効率的である。特に好ましい鍛造温度範囲は、0.80Tm(K)≦T(K)≦0.90Tm(K)である。圧下率は30%以上、99%以下とするのが望ましい。
以上の鍛造により、酸素1000ppm以下、硫黄200ppm以下であるマンガン合金スパッタリングターゲットを製造することができる。
さらに、粒径5μm以上の酸化物粒子の個数が単位面積(100μm×100μm)当たり1個以下であり、単相の等軸晶組織を有し、結晶粒径が500μm以下であるマンガン合金スパッタリングターゲットを製造することができる。
次に、本発明の実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで1例であり、この例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内で、実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
(実施例1〜実施例5)
表1に示す組成のマンガン−白金からなる原材料を、真空誘導溶解炉を用いてアルゴン雰囲気下で溶解し、インゴットを作製した。
そして、これらのインゴットを不活性ガス雰囲気中で据込み鍛造しマンガン白金合金スパッタリングターゲットを得た。各マンガン白金合金の融点、鍛造温度、圧下率、真歪速度等の鍛造条件を、同様に表1に示す。
また、この鍛造により得られたマンガン白金合金の酸素含有量、硫黄含有量、粒径5μm以上の酸化物粒子の単位面積(100μm×100μm)当たりの個数、平均粒径(μm)を表2に示す。
実施例2については、マンガン白金合金の顕微鏡組織写真を図1(A、B)に示す。
Figure 0004685059
Figure 0004685059
(比較例1〜比較例3)
比較例1は表1に示すマンガン粉末と白金粉末を混合後、温度1200°Cで、150kg/cmの圧力でホットプレスし、スパッタリングターゲットとしたもの、比較例2はマンガンと白金の粉末合成後、温度1200°Cで、150kg/cmの圧力でホットプレスし、スパッタリングターゲットとしたもの、比較例3は実施例と同様にマンガン−白金からなる原材料を、真空誘導溶解炉を用いてアルゴン雰囲気下で溶解し、マンガン白金インゴットを作製した。そしてこれをインゴットから削りだしてマンガン白金ターゲットとしたものである。
これらにより得られたターゲットの組成及び酸素含有量、硫黄含有量、粒径5μm以上の酸化物粒子の単位面積(100μm×100μm)当たりの個数、平均粒径(μm)等を実施例と対比して、表1及び表2に示す。
(実施例6)
表3に示す組成のマンガン−イリジウムからなる原材料を、真空誘導溶解炉を用いてアルゴン雰囲気下で溶解し、インゴットを作製した。
そして、これらのインゴットを不活性ガス雰囲気中で据込み鍛造しマンガンイリジウム合金スパッタリングターゲットを得た。該マンガンイリジウム合金の融点、鍛造温度、圧下率、真歪速度等の鍛造条件を、同様に表3に示す。
また、この鍛造により得られたマンガン合金の酸素含有量、硫黄含有量、粒径5μm以上の酸化物粒子の単位面積(100μm×100μm)当たりの個数、平均粒径(μm)を表4に示す。
Figure 0004685059
Figure 0004685059
(比較例4〜比較例5)
比較例4は表3に示すマンガン粉末とイリジウム粉末を混合後、温度1050°Cで、150kg/cmの圧力でホットプレスし、スパッタリングターゲットとしたもの、比較例5は実施例と同様にマンガン−イリジウムからなる原材料を、真空誘導溶解炉を用いてアルゴン雰囲気下で溶解し、マンガンイリジウム合金インゴットを作製した。そしてこれをインゴットから削りだしてマンガンイリジウム合金ターゲットとしたものである。
これらにより得られたターゲットの組成及び酸素含有量、硫黄含有量、粒径5μm以上の酸化物粒子の単位面積(100μm×100μm)当たりの個数、平均粒径(μm)等を実施例と対比して、表3及び表4に示す。
(実施例7)
表5に示す組成のマンガン−ニッケルからなる原材料を、真空誘導溶解炉を用いてアルゴン雰囲気下で溶解し、インゴットを作製した。
そして、これらのインゴットを不活性ガス雰囲気中で据込み鍛造しマンガンニッケル合金スパッタリングターゲットを得た。該マンガンニッケル合金の融点、鍛造温度、圧下率、真歪速度等の鍛造条件を、同様に表3に示す。
また、この鍛造により得られたマンガンニッケル合金の酸素含有量、硫黄含有量、粒径5μm以上の酸化物粒子の単位面積(100μm×100μm)当たりの個数、平均粒径(μm)を表6に示す。
Figure 0004685059
Figure 0004685059
(比較例6)
比較例6は表5に示すように、実施例7と同様にマンガン−ニッケルからなる原材料を、真空誘導溶解炉を用いてアルゴン雰囲気下で溶解し、インゴットを作製した。そして、これをインゴットから削りだしてターゲットとしたものである。
これらにより得られたターゲットの組成及び酸素含有量、硫黄含有量、粒径5μm以上の酸化物粒子の単位面積(100μm×100μm)当たりの個数、平均粒径(μm)等を実施例7と対比して、表5及び表6に示す。
次に、上記実施例及び比較例で得られたスパッタリングターゲット(φ76.2mm)を用いてスパッタリングし、ノジュールの発生量(個数)を測定した。なお、この場合のノジュールの発生個数は目視で識別できる個数を示す。スパッタリング条件は次の通りである。
スパッタガス : Ar
スパッタガス圧 : 0.5Pa
スパッタガス流量 : 100SCCM
投入パワー : 1W/cm
スパッタ時間 : 〜40時間
ノジュールの発生量(数)の測定結果を表7に示す。
上記表7から明らかなように、本発明の実施例のターゲット表面には、ノジュールの発生数は20時間で多くて22個であり、40時間後でも31個である。
これに対して、比較例のターゲットでは20時間でノジュールの個数が35〜191となり、さらに40時間後では144〜587と急激に増加している。特に、焼結体ターゲットではノジュールの個数が異常に多い。この対比から明らかなように、本発明の著しい効果が確認できる。
Figure 0004685059
表1〜表6に示すように、いずれのマンガン合金においても、比較例の平均粒径は小さいが、不純物である酸素含有量、硫黄含有量は本発明に比べて比較例の焼結体ターゲットは非常に増大している。また、粒径5μm以上の酸化物粒子の単位面積(100μm×100μm)当たりの個数も多くなるという結果となった。
比較例の中で溶解したものを鍛造しないで、そのまま切削してターゲットとしたものは、本発明の実施例に対して不純物である酸素含有量、硫黄含有量やノジュールの個数がやや近いと言える。しかし、平均粒径が異常に大きく、また上述のように、抗折力が低く割れが発生するという問題があり、使用に耐えないものである。
本実施例で得られるターゲットは図1A、Bに示すように、緻密で結晶粒形の小さい(500μm以下)の鍛造組織が得られる。図1は平均結晶粒が50μmのものである。このように、本発明のターゲットは抗折力が高く割れが発生しないという著しい特長を有する。
本発明は、抗折力が低く割れが発生し易いマンガン合金の欠点を解決し、鍛造によりマンガン合金ターゲットを安定して製造でき、これによってノジュールやパーティクルの発生が少なく、高特性・高耐食性の薄膜を形成できるマンガン合金スパッタリングターゲットを得ることができるという優れた効果を有し、同ターゲットとして有用である。
実施例2のマンガン白金合金の顕微鏡組織写真の模写図である。

Claims (2)

  1. 酸素1000ppm以下、硫黄200ppm以下であり、単相の等軸晶を有し、結晶粒径が500μm以下である鍛造組織を備え、Ni、Pd、Pt、Rh、Ir、Au、Ru、Os、Cr及びReから選んだ少なくとも1種と残部Mn10〜98at%からなることを特徴とするマンガン合金スパッタリングターゲット。
  2. 粒径5μm以上の酸化物粒子の個数が単位面積(100μm×100μm)当たり1個以下であることを特徴とする請求項1記載のマンガン合金スパッタリングターゲット。
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