JP5111472B2 - 転動疲労における応力解析方法 - Google Patents

転動疲労における応力解析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5111472B2
JP5111472B2 JP2009217546A JP2009217546A JP5111472B2 JP 5111472 B2 JP5111472 B2 JP 5111472B2 JP 2009217546 A JP2009217546 A JP 2009217546A JP 2009217546 A JP2009217546 A JP 2009217546A JP 5111472 B2 JP5111472 B2 JP 5111472B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
stress
metallic
rolling
rolling element
strain
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2009217546A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011064644A (ja
Inventor
武広 土田
栄一 田村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2009217546A priority Critical patent/JP5111472B2/ja
Publication of JP2011064644A publication Critical patent/JP2011064644A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5111472B2 publication Critical patent/JP5111472B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Strength Of Materials By Application Of Mechanical Stress (AREA)

Description

本発明は、玉軸受けやころ軸受けといった転がり軸受けなどの金属製の機械構造部品において、その金属製基体に内在する非金属介在物の影響による剥離等の損傷状態を推定するために行う転動疲労における応力解析方法に関するもの、より詳しくは、有限要素法を用いて非金属介在物の周囲の金属製基体の応力と歪の状態を計算により求めることで剥離等の損傷状態を推定することができる転動疲労における応力解析方法に関するものである。
転がり軸受けなどの金属製の機械構造部品の寿命は、転動疲労によって、金属材料中に内在する酸化物系介在物、硫化物系介在物、窒化物系介在物等の非金属介在物を起点として発生するフレーキング(剥離)により決定されることが多い。しかしながら、これら非金属介在物を起点として剥離が発生するメカニズムについては不明な点が多く、軸受けなどの寿命を改善するための明確な指針が得られていないのが現状である。そこで、非金属介在物から疲労亀裂が発生するメカニズムや、その亀裂が進展するメカニズムを解明するためには、非金属介在物の周囲の金属製基体のマトリクスの損傷を計算する方法が重要になる。その計算によるシミュレーションを実施することにより、長寿命の軸受けの開発や、正確な寿命予測による小型で軽量の軸受けの開発に活用することができると想定される。
従来から、転動疲労の現象を解析するために、非金属介在物の周囲の金属製基体のマトリクスの応力計算を、有限要素法(FEM)を用いて実施することはあったが、弾性変形の範囲内で、転動体を金属製基体表面のある1箇所に押し当てたときの応力計算を行うか、塑性変形を考慮する場合であっても、非金属介在物が内在する金属製基体の表面上に転動体を押し当てながら移動させたときに発生する応力、弾性歪、塑性歪を計算しただけのものであった。これらの方法では、転動疲労のように繰り返し金属製基体の表面上を転動体が転がって歪(内部損傷)が蓄積する現象を正確に模擬することはできなかった。
非金属介在物の周囲の金属製基体の応力計算を、有限要素法(FEM)を用いて行う方法としては、例えば、非特許文献1や非特許文献2記載の方法が実際にあったが、非特許文献1には、転動体が1回だけ移動する場合の弾性変形を計算することが記載されているに過ぎず、また、非特許文献2には、材料の降伏応力を計算に入れて組成変形を計算することが記載されてはいるものの、非特許文献1、非特許文献2共に、繰り返し負荷による歪の蓄積まで計算することは記載されておらず、また、その示唆もされていない。
山川耕志郎、外3名、「転がり接触下における内部欠陥の応力場への影響」、Koyo Engineering Journal、2004年、No.166、p.24−28 藤松威史、外3名、「転動面下の非金属介在物周囲の応力解析」Sanyo Technical Report、2006、Vol.13、No.1、p.62−65
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたもので、転がり軸受けなどの金属製の機械構造部品における金属製基体に内在する非金属介在物の周囲の金属製基体の応力と歪の状態を、コンピューターによるシミュレーションによって求めることで、実際に転動疲労試験を実施することなく容易に、金属製基体の転動疲労における応力を求め出すことができる転動疲労における応力解析方法を提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、内部に非金属介在物が内在する金属製基体と、前記金属製基体の表面に一定の押し当て荷重で押し付けられながら転がる転動体とよりなる機械構造部品における前記非金属介在物の周囲の金属製基体の応力と歪の状態を計算により求めることによって、前記金属製基体の転動疲労における応力を解析する転動疲労における応力解析方法であって、前記金属製基体と転動体の形状、ヤング率、および応力歪特性と、前記非金属介在物の形状、およびヤング率と、前記非金属介在物の表面が位置する前記金属製基体表面からの深さに関する情報を入力する第1ステップと、前記各情報をもとに、要素分割を行う第2ステップと、前記転動体の前記金属製基体への押し当て位置および押し当て荷重、前記金属製基体の表面を繰返し転がる転動体の繰返し転がり回数に関する情報を入力する第3ステップと、前記転動体による押し当て位置毎に、荷重負荷時の前記非金属介在物の周囲の金属製基体の応力と歪を、有限要素法を用いて弾塑性計算すると共に、前記転動体を除荷した際の前記非金属介在物の周囲の金属製基体の応力と歪を、有限要素法を用いて弾塑性計算する第4ステップと、以上の計算結果を出力して前記非金属介在物の周囲の金属製基体の応力と歪の状態を求める第5ステップよりなり、前記転動体の前記金属製基体への押し当て位置は、前記転動体が前記金属製基体の表面を転がる範囲の位置のうち、前記非金属介在物の真上の金属製基体表面位置から、前記非金属介在物表面が位置する前記金属製基体表面からの深さ寸法と同じ長さ寸法分だけ前記転動体の転動方向の前後に離れた範囲内に位置する5箇所以上の位置とすると共に、前記第4ステップでの計算は、前記転動体が前記金属製基体の表面を転がる転動体の繰返し転がり回数に基づき2サイクル以上繰り返して行うことを特徴とする転動疲労における応力解析方法である。
請求項2記載の発明は、前記第5ステップで、計算結果を出力して求める非金属介在物の周囲の金属製基体の応力と歪の状態は、せん断歪の変動幅と方向、および/または、引張歪の変動幅と方向である請求項1記載の転動疲労における応力解析方法である。
請求項3記載の発明は、前記第5ステップで求めた非金属介在物の周囲のせん断歪の変動幅と方向、および/または、引張歪の変動幅と方向から、亀裂の発生位置と亀裂の発生方向を予測する請求項2記載の転動疲労における応力解析方法である。
本発明に係る転動疲労における応力解析方法によると、転がり軸受けなどの金属製の機械構造部品における金属製基体に内在する非金属介在物の周囲の金属製基体の応力と歪の状態を、コンピューターによるシミュレーションによって求めることで、実際に転動疲労試験を実施することなく容易に、金属製基体の転動疲労における応力を求め出すことができる。
本発明の一実施形態に係る転動疲労における応力解析方法による応力シミュレーションを示すフローチャートである。 金属製の機械構造部品の概要を示す斜視図である。 実際の亀裂の発生状況を示す金属製基体の縦断面図であり、左下は非金属介在物の左側の位置の要部拡大縦断面図、右下は非金属介在物の右側の位置の要部拡大縦断面図である。 金属製基体に内在する非金属介在物の深さ位置と、転動体の金属製基体表面への押し当て位置の関係を示すための縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る転動疲労における応力解析方法に用いた応力シミュレーションモデルを示す2次元モデル図である。 実施例での転動体の金属製基体表面への押し当て位置を例示する縦断面図である。 転動体が金属製基体の表面上を転がる回数を3サイクルとした転動疲労の解析による計算結果を示すグラフ図である。 本発明に係る応力シミュレーションにより求めた亀裂の発生状況を示す金属製基体の縦断面図である。
本発明者らは、転動疲労のように金属製基体の表面上を転動体が繰り返し転がって、その金属製基体の表面近傍に歪(内部損傷)が蓄積する現象を、実際に転動疲労試験を実施することなく、正確にシミュレーションにより模擬する方法を見出すために鋭意研究を重ねた。その結果、金属製基体の表面近傍に内在する歪の蓄積の原因となる非金属介在物の周囲の金属製基体のマトリクスの応力計算を、有限要素法(FEM)を用いて行うことで、シミュレーションにより正確に解析できることを見出し、本発明の完成に至った。
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて更に詳細に説明する。図2は実際の転がり軸受けなどの金属製の機械構造部品の概要を例示する図面であり、Aは転がり軸受けなどの金属製の機械構造部品を構成する金属製基体、Bはその金属製基体Aの表面に一定の押し当て荷重で押し付けられながら転がる転動体、Cは金属製基体Aの表面近傍に内在する酸化物系介在物、硫化物系介在物、窒化物系介在物などの非金属介在物である。フレーキング(剥離)の原因となる亀裂(クラック)1は、図3に示すように、その非金属介在物Cを起点として金属製基体Aのマトリクスの内部に発生する。
図1は、本発明の一実施形態に係る転動疲労における応力解析方法による応力シミュレーションを示すフローチャートであり、以下、その応力シミュレーションを、第1ステップS1から第5ステップS5に分け詳細に説明する。尚、これら各ステップの数字は便宜上示したもので、第1ステップS1から第5ステップS5の間、或いはその前後に別のステップが入っても構わない。
まず、第1ステップS1では、金属製基体Aと転動体Bの形状、ヤング率、および応力歪特性と、非金属介在物Cの形状、およびヤング率と、非金属介在物Cの表面が位置する金属製基体Aの表面からの深さd(図4に示す)に関する情報をコンピューターに入力する。
非金属介在物Cの表面が位置する金属製基体Aの表面からの深さdについては、基本的には任意の深さdを設定して入力すれば良いが、転動疲労では、金属製基体Aと転動体Bの接触によって金属製基体Aの内部に発生するせん断応力が最も大きくなる深さ位置に存在する非金属介在物Cを起点として亀裂1が形成され、その結果フレーキング(剥離)が発生することが殆どであるため、その最大せん断応力深さ位置に非金属介在物Cの表面深さdを設定することで、転動疲労寿命を決める現象をより確実に模擬することができる。
金属製基体Aと転動体Bの接触が単純形状同士の接触である場合は、解析解から最大せん断応力位置dmaxを計算して非金属介在物Cの表面深さdとするか、或いは、図5の右拡大図で示すように、有限要素法(FEM)で求めた金属製基体A内部のせん断応力分布から最大せん断応力位置dmaxを推定し、この最大せん断応力位置dmaxを非金属介在物Cの表面深さdに設定すれば良い。尚、この非金属介在物Cの表面深さdを深すぎる位置に設定すると、転動体Bの接触によって発生する金属製基体Aの内部の応力が小さくなり過ぎて転動疲労寿命を推定するには役立たなくなる。この転動疲労寿命を推定するためには、非金属介在物Cの表面深さdは最大せん断応力位置dmaxの1.5倍以下の深さとすることが望ましい。また、この非金属介在物Cの表面深さdを最大せん断応力位置dmaxより浅い位置に設定した場合は、転動疲労寿命の解析には役立つので、目的に応じて金属製基体Aの最表面から最大せん断応力位置dmaxの1.5倍の間に非金属介在物Cの表面深さdを設定すれば良い。
第2ステップS2では、図5に示すように、シミュレーションモデルを2次元モデルとして簡略化し、次の第3ステップS3で有限要素法(FEM)を用いて弾塑性計算するために要素分割(メッシュ作成)を行う。
要素分割にあたっては、メッシュが細かければ細かいほど収束性が良くなり計算精度も高くなるので好ましいが、一方でその計算に要する時間が膨大になるため、要素分割のメッシュの大きさは、非金属介在物Cと金属製基体Aのマトリクスの界面付近で、0.001μm〜5μmの範囲とすれば良い。本発明は特に10μm〜100μm程度の非金属介在物Cが内在する金属製基体Aを応力シミュレーションの対象とするので、例えば、図5に示すように、非金属介在物Cと金属製基体Aのマトリクスの界面付近で要素分割のメッシュの大きさは1μm程度とすれば良く、図5に示す非金属介在物Cから離れた位置では計算の迅速性も考慮して1000μm程度とし、その間で順次メッシュの大きさを変えることで対応することが望ましい。
次の第3ステップS3では、転動体Bの金属製基体Aへの複数の押し当て位置、転動体Bの金属製基体Aへの押し当て荷重、金属製基体Aの表面を繰返し転がる転動体Bの繰返し転がり回数に関する情報を転動疲労条件としてコンピューターに入力する。
非金属介在物Cの真上にあたる金属製基体Aの表面位置を、転動体Bの金属製基体Aへの押し当て位置として計算するだけでは実際の転動疲労を正確に模擬することはできない。しかしながら、転動体Bを金属製基体Aの表面に一定の押し当て荷重で押し付けられながら転動させる場合、転動中の転動体Bが非金属介在物Cから一定寸法以上離れた位置では転動体Bと金属製基体Aが接触する際に発生する応力が非金属介在物Cには及ばない。従って、転動体Bが金属製基体Aの表面を転がる範囲の位置のうち、転動体Bと金属製基体Aが接触する際に発生する応力が及ぶ範囲内の複数の位置で、転動体Bの金属製基体Aへの押し当て位置を設定する。
具体的には、図4に示すように、非金属介在物Cの真上にあたる金属製基体Aの表面位置から、非金属介在物Cの表面が位置する金属製基体Aの表面からの深さ寸法dと同じ長さ寸法d分だけ転動体Bの転動方向の前後に離れた範囲内で、転動体Bの金属製基体Aへの押し当て位置を複数設定すれば良い。その理由は、図5の右拡大図で示すように、金属製基体Aの内部に発生するせん断応力は、転動体Bの押し当て位置から概ね45°程度内部の位置で大きくなるためである。
また、転動体Bによる押し当て位置は、実際の転動疲労を正確に模擬することができる意味で5箇所以上とするが、非金属介在物Cの真上にあたる金属製基体Aの表面位置と、その位置から非金属介在物Cの表面が位置する金属製基体Aの表面からの深さ寸法dと同じ長さ寸法d分だけ転動体Bの転動方向の前後に離れた前後2箇所の位置と、それらの中間位置とすることが、実際の転動疲労を更に正確に模擬することはできる意味で望ましい。中間位置は転動体Bの転動方向の前後に離れた位置で夫々少なくとも1箇所以上とすれば良く、計算に要する時間も考慮すれば転動体Bによる押し当て位置は、5〜25箇所程度とすることが望ましい。図6では転動体Bによる押し当て位置を9箇所とした事例を示す。
次の第4ステップS4では、まず、転動体Bによる最初の押し当て位置の荷重負荷時(押し付け負荷時)の非金属介在物Cの周囲の金属製基体Aマトリクスの応力と歪を、有限要素法を用いて弾塑性計算する。続いて、転動体Bによる最初の押し当て位置の転動体Bを除荷した際の非金属介在物Cの周囲の金属製基体Aのマトリクスの応力と歪を、同様に有限要素法を用いて弾塑性計算する。以上の転動体Bによる最初の押し当て位置の荷重負荷時、除荷時の計算を共に終了した後、第3ステップS3で設定した次の押し当て位置に進み、次の押し当て位置での荷重負荷時の弾塑性計算、除荷時の弾塑性計算を同様に行う。更に次の押し当て位置に進み、荷重負荷時の弾塑性計算、除荷時の弾塑性計算を夫々行い、これらの計算を最後の押し当て位置まで順次行う。尚、これら弾塑性計算に用いる構成式については特に限定しないが、例えば、弾塑性計算にはPrandtle−Reussの構成式を用いることができる。
以上の弾塑性計算では、転動体Bが金属製基体Aの表面上を1回目に通った際の非金属介在物Cの周囲の金属製基体Aのマトリクスの変形量は特に大きく、2回目以上でその変形量は安定する(図7に例示する。)ので、第4ステップS4における弾塑性計算は、繰返し金属製基体Aの表面に一定の押し当て荷重で押し付けられながら繰返し転がる転動体Bの繰返し転がり回数に合わせて2サイクル以上行う必要がある。
最後に、第5ステップS5で計算結果として、非金属介在物Cの周囲の金属製基体Aのマトリクスの応力と歪の状態について必要な情報を出力する。転動疲労を解析する上では弾塑性計算による歪の情報が有用であり、例えば、せん断歪の変動幅と方向、引張歪の変動幅と方向を出力して、その変動が最大となる亀裂1の発生位置と亀裂1の発生方向を予測する指標として用いることができる。
また、非金属介在物Cを起点として発生するフレーキング(剥離)については、非金属介在物Cとその周囲の金属製基体Aのマトリクスが接着しているか、剥離しているかによってその条件(応力分布)が大きく変わる。そのため、実際の転動疲労現象を精度良くシミュレーションで模擬するためには、非金属介在物Cとその周囲の金属製基体Aのマトリクスの界面の接着状態を計算に取り入れることが有効である。例えば、その界面を完全に接着した状態だけでなく、一部もしくは全部が剥離した状態として計算することで、より実際に近い状態でシミュレーションすることができる。
この応力シミュレーションの結果は、亀裂1の発生位置や発生方向の解析、亀裂1が発生するまでの寿命の解析に活用することができる。その際の応力パラメータとしては、相当応力やせん断応力(モードII)、引張応力(モードI)などを選択することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の妥当性を検討するために転動疲労における応力解析を、弾塑性有限要素解析(ソルバーはABAQUS 6.5)により実施した。この解析に用いた応力シミュレーションモデルの概略を図5に示す。この応力シミュレーションモデルでは、多種介在物形態の影響を解析できるように二次元モデルとして簡便化し、転動体Bを模擬した円形モデル(φ9.6mm)を、金属製基体(軸受鋼)Aを模擬した板モデルに変位制御で押し付けた場合の歪を解析により確認した。また、金属製基体Aに内在する非金属介在物Cと、その周囲の金属製基体Aのマトリクスの要素分割のメッシュの大きさは1μmとし、図5に示す非金属介在物Cから最も離れた位置では計算の迅速性も考慮してメッシュの大きさは1mmとし、その間で順次メッシュの大きさを変えることとした。
また、金属製基体Aを模擬した板モデルの材質は、降伏応力が1960MPaの弾完全塑性体とした。この板モデル内にはAlでなる非金属介在物Cを模擬した弾性体モデルを内在させ、その非金属介在物Cの弾性体モデルの表面を、転動体Bを模擬した円形モデルを押し付けた際の最大せん断応力位置dmaxに位置させた。この非金属介在物Cを模擬した弾性体モデルの縦弾性係数は400GPaとした。
本実施例では、転動体Bが金属製基体Aの表面に一定の押し当て荷重で押し付けられながら転がる挙動を模擬して解析を実施したが、解析の収束性、計算時間を考慮して、図6に示すように、転動体Bの押し当て位置を9箇所に限定し、(1)荷重負荷→除荷→移動→(2)荷重負荷→…(9)荷重負荷→除荷(図6では○囲み数字で示す。)という順に繰返して解析を実施した。転動体Bが金属製基体Aの表面上を転がる回数を3サイクルとして得た結果を図7のグラフにまとめて示す。
この解析では、非金属介在物Cの弾性体モデルの形状を正方形とし、その上下の頂点にあたる位置(図7に示す要素a、要素b)での歪の計算結果をグラフにまとめた。このグラフから、要素a、要素b共に、1サイクル目の歪は2サイクル目以降の歪より大きく、繰返し負荷による疲労現象を模擬するには、歪が安定する2サイクル目以降の歪で評価することが妥当であることが分かる。
また、転動疲労における亀裂1の発生の考察を行うために、非金属介在物Cの弾性体モデルの形状を、頂点を上下左右に位置させた正方形(15×15μm、縦弾性係数:400GPa)とし、その最大面圧を−4500MPaとしたときの解析結果を図8に示す。引張応力によるモードI変形により亀裂1が発生すると仮定し、解析結果から任意ベクトルの引張成分歪の変化(Δε)を求めた。このΔεが最大になるベクトル方向(両方向矢印)およびΔεの値(Δεmax)を図8に示す。また、図8には、この仮定に基づき推定される亀裂1の方向を点線で示す。この図8より亀裂1の方向は、何れの箇所からも右斜め上方向或いは左斜め下方向に進展すると推定される。
一方、この応力シミュレーション結果が正しいことを証明するために、実際に転動疲労試験を実施した。その試験途中の金属製基体(軸受鋼)Aを切断して亀裂1を観察した結果を図3に示す。実際の断面写真を図面化した図3によると、亀裂1は非金属介在物(Al)Cから金属製基体Aのマトリクス内を右斜め上方向或いは左斜め下方向に進展しており、この結果は、図8に示す本発明の応力シミュレーションによる解析結果と一致する。
また、転動体Bによる押し付け負荷の位置の数(押し当て位置数)と、転動体Bが金属製基体Aの表面を転がる回数(サイクル数)を逐次変えて応力シミュレーションを実施し、その応力シミュレーションに要した計算時間と、実際の亀裂1発生の観察結果との対応状況を表1に示した。
計算時間は、8時間未満であったものを◎、8時間〜24時間未満であったものを○、24時間以上かかったものを×として示した。実際に発生した亀裂1の観察結果との対応状況(観察結果との一致)は、計算による歪の変化(Δε)が高い位置と、実際の亀裂1の観察結果が一致しておれば○、一致しなければ×として示した。
転動体Bによる押し付け負荷の位置の数(押し当て位置数)と、転動体Bが金属製基体Aの表面を転がる回数(サイクル数)が本発明の要件を満足するNo.1とNo.2は、応力シミュレーションに要した計算時間、実際の亀裂1発生の観察結果との対応状況は、共に○以上で合格であった。特に、転動体Bが金属製基体Aの表面を転がる回数(サイクル数)を5サイクルとしたNo.2では、計算に要する時間が特に短く優れていた。
一方、転動体Bが金属製基体Aの表面を転がる回数(サイクル数)が1サイクルだけであったNo.3とNo.4は、応力シミュレーションと実際の観察結果が対応しなかった。これは、転動体Bが金属製基体Aの表面を転がる回数(サイクル数)が1サイクルだけであると、疲労現象を模擬するには歪が安定しないためと考えられる。
また、転動体Bが金属製基体Aの表面を転がる回数(サイクル数)を100サイクルとしたNo.5は、計算に要する時間が24時間(1日)以上かかり、応力シミュレーションを行うのに適していなかった。
Figure 0005111472
A…金属製基体
B…転動体
C…非金属介在物
1…亀裂
S1…第1ステップ
S2…第2ステップ
S3…第3ステップ
S4…第4ステップ
S5…第5ステップ

Claims (3)

  1. 内部に非金属介在物が内在する金属製基体と、前記金属製基体の表面に一定の押し当て荷重で押し付けられながら転がる転動体とよりなる機械構造部品における前記非金属介在物の周囲の金属製基体の応力と歪の状態を計算により求めることによって、前記金属製基体の転動疲労における応力を解析する転動疲労における応力解析方法であって、
    前記金属製基体と転動体の形状、ヤング率、および応力歪特性と、前記非金属介在物の形状、およびヤング率と、前記非金属介在物の表面が位置する前記金属製基体表面からの深さに関する情報を入力する第1ステップと、
    前記各情報をもとに、要素分割を行う第2ステップと、
    前記転動体の前記金属製基体への押し当て位置および押し当て荷重、前記金属製基体の表面を繰返し転がる転動体の繰返し転がり回数に関する情報を入力する第3ステップと、
    前記転動体による押し当て位置毎に、荷重負荷時の前記非金属介在物の周囲の金属製基体の応力と歪を、有限要素法を用いて弾塑性計算すると共に、前記転動体を除荷した際の前記非金属介在物の周囲の金属製基体の応力と歪を、有限要素法を用いて弾塑性計算する第4ステップと、
    以上の計算結果を出力して前記非金属介在物の周囲の金属製基体の応力と歪の状態を求める第5ステップよりなり、
    前記転動体の前記金属製基体への押し当て位置は、前記転動体が前記金属製基体の表面を転がる範囲の位置のうち、前記非金属介在物の真上の金属製基体表面位置から、前記非金属介在物表面が位置する前記金属製基体表面からの深さ寸法と同じ長さ寸法分だけ前記転動体の転動方向の前後に離れた範囲内に位置する5箇所以上の位置とすると共に、
    前記第4ステップでの計算は、前記転動体が前記金属製基体の表面を転がる転動体の繰返し転がり回数に基づき2サイクル以上繰り返して行うことを特徴とする転動疲労における応力解析方法。
  2. 前記第5ステップで、計算結果を出力して求める非金属介在物の周囲の金属製基体の応力と歪の状態は、せん断歪の変動幅と方向、および/または、引張歪の変動幅と方向である請求項1記載の転動疲労における応力解析方法。
  3. 前記第5ステップで求めた非金属介在物の周囲のせん断歪の変動幅と方向、および/または、引張歪の変動幅と方向から、亀裂の発生位置と亀裂の発生方向を予測する請求項2記載の転動疲労における応力解析方法。
JP2009217546A 2009-09-18 2009-09-18 転動疲労における応力解析方法 Expired - Fee Related JP5111472B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009217546A JP5111472B2 (ja) 2009-09-18 2009-09-18 転動疲労における応力解析方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009217546A JP5111472B2 (ja) 2009-09-18 2009-09-18 転動疲労における応力解析方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011064644A JP2011064644A (ja) 2011-03-31
JP5111472B2 true JP5111472B2 (ja) 2013-01-09

Family

ID=43951039

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009217546A Expired - Fee Related JP5111472B2 (ja) 2009-09-18 2009-09-18 転動疲労における応力解析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5111472B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6156873B2 (ja) * 2013-07-30 2017-07-05 日本精工株式会社 転がり疲労き裂進展試験方法及び転がり疲労寿命予測方法
JP6587880B2 (ja) * 2015-09-25 2019-10-09 Ntn株式会社 機械要素材料の品質保証方法および装置
DE102019003140B3 (de) * 2019-05-03 2020-10-29 Dirk-Olaf Leimann Vergleichsspannung für Wälzlager
CN113190926B (zh) * 2021-04-20 2023-02-10 西安理工大学 一种含非金属夹杂物的微凸体接触的建模方法

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3422524B2 (ja) * 1993-06-30 2003-06-30 株式会社豊田中央研究所 熱疲労試験方法および熱疲労試験装置
JP3708067B2 (ja) * 2002-08-09 2005-10-19 川崎重工業株式会社 弾塑性体の亀裂進展予測方法および変形予測方法
JP4421346B2 (ja) * 2004-03-26 2010-02-24 川崎重工業株式会社 延性破壊限界の推定方法とそのプログラムと記録媒体
JP2006164219A (ja) * 2004-11-09 2006-06-22 Phifit Kk 有限要素解析用インターフェース、有限要素解析用インターフェースのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、高付加価値通信網を利用した有限要素解析方法、有限要素解析用並列処理計算機および有限要素解析用計算機
JP2006308019A (ja) * 2005-04-28 2006-11-09 Nsk Ltd 転がり軸受
JP2008262263A (ja) * 2007-04-10 2008-10-30 Ntn Corp 接触面圧および表面下応力の計算方法
JP5076719B2 (ja) * 2007-08-07 2012-11-21 日本精工株式会社 転がり軸受の残存寿命予測方法
JP2009191942A (ja) * 2008-02-14 2009-08-27 Nsk Ltd 転がり軸受

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011064644A (ja) 2011-03-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Kamaya et al. A procedure for determining the true stress–strain curve over a large range of strains using digital image correlation and finite element analysis
Yan et al. A fracture criterion for fracture simulation of ductile metals based on micro-mechanisms
Davoodi et al. Assessment of forming parameters influencing spring-back in multi-point forming process: a comprehensive experimental and numerical study
Ouladbrahim et al. Experimental crack identification of API X70 steel pipeline using improved Artificial Neural Networks based on Whale Optimization Algorithm
JP5111472B2 (ja) 転動疲労における応力解析方法
Zhan et al. Investigations on failure-to-fracture mechanism and prediction of forming limit for aluminum alloy incremental forming process
Hu et al. Edge fracture prediction of traditional and advanced trimming processes for AA6111-T4 sheets
Fatoba et al. On the behaviour of small fatigue cracks emanating from corrosion pits: Part I–The influence of mechanical factors
McClain et al. A numeric investigation of the rake face stress distribution in orthogonal machining
Souto et al. Fatigue behaviour of thin-walled cold roll-formed steel sections
Zhao et al. A study on ductile fracture of coiled tubing based on cohesive zone model
Celentano Thermomechanical simulation and experimental validation of wire drawing processes
Sun et al. A framework to simulate the crack initiation and propagation in very-high-cycle fatigue of an additively manufactured AlSi10Mg alloy
Leem et al. Improving the accuracy of double-sided incremental forming simulations by considering kinematic hardening and machine compliance
Long et al. Finite element modeling of burr formation in orthogonal cutting
Chen et al. Numerical simulation of fine-blanking process using a mixed finite element method
Han et al. Stress intensity factors for three‐dimensional weld toe cracks using weld toe magnification factors
Verma et al. Effect of pre-strain on anisotropic hardening and springback behavior of an ultra low carbon automotive steel
JP4703453B2 (ja) 衝撃解析方法
Smith et al. A new experimental test apparatus for angle binder draw bead simulations
Prasannavenkatesan et al. Polycrystal plasticity modeling of cyclic residual stress relaxation in shot peened martensitic gear steel
Roy et al. Experiments and simulation of shape and thickness evolution in multi-pass tube spinning
Sha et al. FEM modelling of single-core sandwich and 2-core multilayer beams containing foam aluminum core and metallic face sheets under monolithic bending
CN113358678B (zh) α钛变形过程介观应力和织构的半定量预测及可视化方法
Pacheco et al. Numerical simulation and experimental validation of a multi-step deep drawing process

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20110526

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110901

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120925

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120926

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121009

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151019

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5111472

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees