JP6156873B2 - 転がり疲労き裂進展試験方法及び転がり疲労寿命予測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、転がり疲労き裂進展試験方法及び転がり疲労寿命予測方法に関する。
転がり軸受の代表的な破損形態の1つであるはく離は、せん断型(モードII及びモードIII )疲労き裂進展による疲労破壊現象である。このような疲労破壊現象は、転がり軸受だけでなく、鉄道レールや鉄鋼設備用圧延ロールなどにおいても生じることが知られている。
一般的に、金属製品の破壊に起因した事故の多くは疲労破壊によるものである。疲労破壊は、繰返しの応力による破壊現象であり、き裂発生過程とき裂進展過程に分けられる。き裂発生は疲労寿命のごく初期段階で生じており、疲労寿命の大部分はき裂進展過程で占められる。したがって、金属材料のき裂進展特性を知ることは、その材料を安全利用する上で極めて重要である。
疲労破壊現象におけるき裂進展挙動は、き裂長さ2aと働く応力σで表される線形破壊力学パラメータK(応力拡大係数)に支配され、き裂が安定して進展する領域では、Kの変動範囲ΔK(応力拡大係数範囲)とき裂進展速度da/dN(応力1サイクルあたりのき裂進展量)は両対数直線関係となることが、Paris則として知られている(式(1)を参照)。なお、式(1)中のC及びmは実験定数である。
da/dN=C(ΔK)m ・・・(1)
式(1)の関係は、疲労き裂進展特性を表す重要なデータであり、構造材料の疲労寿命設計の基礎となるものである。このようなデータを取得するためには、疲労き裂進展過程において、そのき裂長さを連続的、定量的に測定する手法が必要である。
開口型(モードI)疲労においては、例えばコンパクトテンション試験片(CT試験片
)や、中央き裂付き平板引張試験片(CCT試験片)などを用いて、式(1)の関係に基づくデータを取得する方法が確立されている。
疲労試験中のき裂長さの測定方法としては、例えば、顕微鏡により直接観察する方法、レプリカ法、コンプライアンス法、電位差法などが用いられている。また、特許文献1には、試験片に磁界をかけ磁粉を塗り、そのままの状態で粘着テープを試験片に貼り付けて磁粉を抽出し、試験片から採取した粘着テープを顕微鏡に装着して磁粉の長さを測る手法が開示されている。
このような背景から、開口型疲労における式(1)のデータは、様々な材料において取得されデータベース化されている。また、式(1) で表されるき裂進展特性やき裂進展抵抗に基づく材料開発がなされている(例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照)。
一方、転がり軸受の疲労寿命設計は、Lundbergらによって提唱された式(2)の関係に基づき行われている。なお、式(2)中のLは軸受寿命、Cは転がり軸受の定格荷重、Pは荷重、pは荷重係数(玉軸受の場合は3である)である。
L=(C/P)p ・・・(2)
式(2)は、転がり軸受の疲労試験結果による経験式である。はく離が疲労破壊現象であることを考慮すれば、その寿命設計や材料開発は、き裂進展特性やき裂進展抵抗に基づき破壊力学的観点からなされるのが理想である。しかしながら、転がり疲労に伴うき裂発生及び進展は材料内部で生じるため、き裂発生からはく離までのき裂の連続観察を行うことは実質的に不可能であり、例えば式(1)の関係を用いて、転がり疲労き裂進展を定量的に評価することは困難であった。
そこで、このような問題を解決するため、転がり疲労をはじめとするせん断型疲労き裂進展特性の評価は、複数の研究者らが、それぞれ独自の試験法や試験装置を開発することにより実施している。例えば非特許文献1には、ダブルカンチレバー型試験片(DC型試験片)を用いた試験法が開示されている。この試験法は、中央にスリットを有した片持ち梁に均等に荷重を負荷すると、試験片中央には垂直応力は作用せず、せん断応力のみが作用するという原理に基づき開発された試験法であり、様々な材料において、式(1)の関係が取得されている。また、非特許文献2、非特許文献3にも異なる試験法について記載されている。
特開平6−50942号公報 特開2004−143504号公報 特開2009−235540号公報 特開2010−196109号公報
"せん断(モードII)疲労き裂伝ぱ抵抗値ΔKτthの測定方法とその応用",材料vol.43,No.493(1994),p.1264−1270 "高硬度材料のモードII疲労き裂進展特性を求めるための新試験法",材料vol.50,No.10(2001),p.1108−1113 "軸受鋼SUJ2における微小き裂のせん断型進展と下限界",材料vol.58,No.9(2009),p.773−780 "Three−dimensional stress distribution around an elliptical crack under arbitrary loadings",Transaction of the ASME,Journal of Applied Mechanics,Vol.33(1966), p.601−611 "ころがり軸受・ころ軸受の動的負荷容量(Lundberg−Palmgren理論の詳解)",正文社(1990) "The Elastic Field for Spherical Hertzian Contact of Isotropic Bodies Revisited:Some Alternative Expressions",Transaction of the ASME,Journal of Tribology,Vol.115(1993),p.327−332 村上敬宜,"金属疲労 微小欠陥と介在物の影響",養賢堂,1993年,p.94
しかしながら、これらの試験法により取得されたせん断疲労き裂進展特性は、同一の材質であっても、その試験法により大きく異なっており、現時点ではどのデータを転がり軸受の疲労寿命設計に応用できるかを判断することはできない。また、転がり軸受が使用される際に軸受部材に生じる応力状態は複雑であり、厳密には上記の試験法とは異なる。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、転がり疲労試験により、従来は不可能であった疲労き裂の観察を可能にし、転がり疲労き裂の進展特性を定量的に評価できる試験方法を提供することを課題とする。また、破壊力学的観点に基づく転がり軸受の疲労寿命設計を可能にする転がり疲労寿命予測方法を提供することを併せて課題とする。
前記課題を解決するため、本発明の態様は、次のような構成からなる。すなわち、本発明の一態様に係る転がり疲労き裂進展試験方法は、微小穴を形成した試験片に転動体を載置し、前記微小穴上を通る転動体軌道上で前記転動体を転動させて、前記試験片に繰返し応力を付与する転がり疲労試験を行い、前記微小穴を起点とするき裂を前記試験片の内部に生じさせ、複数の繰返し数において前記転がり疲労試験を中断し、中断した時点の試験片に生じている前記き裂の長さをそれぞれ測定し、応力付与の繰返し数とき裂長さとの関係を示す転がり疲労き裂進展曲線を取得することを特徴とする。
この転がり疲労き裂進展試験方法においては、前記き裂長さは、前記微小穴の中心を通り且つ転動体移動方向及び前記微小穴の深さ方向に平行な平面内に現れるき裂の長さであって、全てのき裂における転動体移動方向両端間の転動体移動方向距離であってもよい。 また、この転がり疲労き裂進展試験方法においては、前記微小穴はドリル加工によって形成された有底穴であり、前記微小穴内にはエッジ部が形成されており、前記微小穴の直径は、前記試験片と前記転動体の接触面の転動体移動方向の幅の1/3以下であり、前記エッジ部の深さ位置は、前記試験片の内部に生じるせん断応力が最大となる深さの2倍以下であってもよい。
さらに、前記転がり疲労き裂進展曲線に基づいて、き裂進展速度と応力拡大係数範囲の関係を示す転がり疲労き裂進展速度線図を取得することができる。
このとき、前記転がり疲労き裂進展曲線における隣接する2つのデータから平均のき裂進展速度及び平均のき裂長さを求め、前記平均のき裂長さと、き裂の発生深さにおいて働くせん断応力振幅とから応力拡大係数範囲を求めることにより、前記転がり疲労き裂進展速度線図を取得してもよい。
また、本発明の他の態様に係る転がり疲労寿命予測方法は、前記転がり疲労き裂進展試験方法によって取得した前記転がり疲労き裂進展速度線図に基づいて、転がり軸受の転がり疲労寿命を予測するに際して、転がり軸受を使用する際に材料内部に生じるせん断応力振幅の最大値と、前記転がり軸受の応力体積中に含まれる最大介在物の寸法とを用いることを特徴とする。
この転がり疲労寿命予測方法においては、前記最大介在物の寸法は、極値統計法を用いた介在物検査によって予測された応力体積中の最大介在物を、軸受軌道面に投影した投影図形の面積の平方根としてもよい。
本発明の転がり疲労き裂進展試験方法によれば、転がり疲労試験により、従来は不可能であった疲労き裂の観察を可能にし、転がり疲労き裂の進展特性を定量的に評価することができる。
また、本発明の転がり疲労寿命予測方法によれば、破壊力学的観点に基づく転がり軸受の疲労寿命設計を行うことができる。
円板状の試験片及びその観察断面を説明する図である。 試験片に形成された微小穴の形状を示す断面図である。 有限要素法を用いた応力解析のモデルを示す図である。 転がり疲労き裂の観察結果を示す試験片の拡大断面図である。 応力付与の繰返し数とき裂長さとの関係を示す転がり疲労き裂進展曲線である。 き裂進展速度と応力拡大係数範囲の関係を示す転がり疲労き裂進展速度線図である。 試験片であるスラスト玉軸受の観察断面を説明する図である。 試験片であるラジアル玉軸受の観察断面を説明する図である。 円板状の試験片と転動体の接触面の転動体移動方向幅を説明する図である。 玉軸受を試験片とした場合の試験片と転動体の接触面の転動体移動方向幅を説明する図である。
本発明に係る転がり疲労き裂進展試験方法及び転がり疲労寿命予測方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の転がり疲労き裂進展試験は、直径60mm、厚さ6mmの高炭素クロム軸受鋼SUJ2製の円板試験片(以下「試験片A」と記すこともある)及びスラスト型転がり疲労試験機を用いて、疲労試験を実施することにより行う。
この試験片1(図1を参照)は、その板面に転動体(図示せず)が走行する転動体軌道1aを有しており、この転動体軌道1aは円形で、その直径は38.5mmである。この転動体軌道1a上の一箇所に、疲労き裂の発生起点として微小穴3をドリル加工により形成する。すなわち、試験片1に微小穴3を導入することにより、き裂の発生箇所を容易に特定できるようにする。
この微小穴3の形状は、図2に示す通りである。すなわち、微小穴3は、直径d、深さhの円柱形状の有底穴であり、円板状の試験片1の板面から内部に向かって垂直に(円板試験片1の厚さ方向に)延びている。また、微小穴3の底面は円錐形状をなしており、微小穴3の深さは、周縁部よりも中心部が深くなっている。そして、微小穴3の円柱形状部と底部である円錐形状部との境界部は鋭利なエッジ部3aとなっており、前述の深さhはエッジ部3aの深さ位置を意味する。
ここで、微小穴3がせん断疲労き裂の発生起点となり得るか否かを、有限要素法(FEM)を用いた応力解析により前もって検討した。中央に微小穴を有する試験片に、半球によりモデル化した転動体(直径9.525mm)を押し付けることによって、試験片と転動体をヘルツ接触させた(図3の解析モデルを参照)。試験片及び転動体のヤング率は206GPa、ポアソン比は0.3とした。なお、解析モデルはz軸対象としている。
ここで、試験片の中央に導入した微小穴の寸法は、直径dが100μm又は50μm、エッジ部の深さhが25、75、125、又は175μmであり、ヘルツの最大接触圧力qmax が3.2GPaとなるように転動体に加える荷重を調整した。このとき、転動体と試験片の接触円直径は420μmとなり、微小穴の直径よりも十分大きい。
以上の応力解析を実施した結果、いずれの微小穴寸法においても、エッジ部にせん断応力の集中が生じることが明らかとなった。すなわち、図2に示すドリル加工による微小穴3を有した試験片1上で、荷重を負荷しながら転動体を走行させることにより、鋭利なエッジ部3aからせん断応力支配の疲労き裂が発生することが期待される。
なお、本実施形態では、ドリル加工により形成した微小穴3で検討したが、図2に示すように鋭利なエッジ部3aを有する微小穴3であれば、形成方法にかかわらず、せん断疲労き裂が発生すると推定される。このような微小穴3を導入する手法としては、ドリル加工の他に、例えばエンドミル加工、FIB(Focased Ion Beam)加工などが挙げられる。ただし、コスト面や加工の容易性などを考慮すると、ドリル加工が最適であると考えられる。
次に、直径dが100μm、エッジ部3aの深さhが75μmの微小穴3をドリル加工により導入した試験片1、試験片1に載置されて微小穴3上を通る転動体軌道1a上を転動する転動体、及び、スラスト型転がり疲労試験機を用いて、転がり疲労試験を実施した。試験片1に生じるヘルツの最大接触圧力qmax は3.2GPaとし、転動体の回転速度は1000min-1、転動体の直径は9.525mm、転動体の個数は11個とし、潤滑油(VG68)中にて転がり疲労試験を実施した。その結果、応力付与の繰返し数N(すなわち、転動体が微小穴3上を通過した回数)2.57×107 回において、微小穴3の周囲に円状のき裂が出現した。
ここで、微小穴3の中心を通り且つ転動体移動方向(荷重移動方向)及び微小穴3の深さ方向に平行な平面で試験片1を切断し、その断面を観察した(図1を参照)。なお、転動体は円形の転動体軌道1a上を移動するが、この場合の転動体移動方向とは、微小穴3の中心における転動体軌道1aの接線方向を意味する。上記観察の結果、転がり疲労き裂は微小穴3のエッジ部3aを起点として発生し、進展していることが明らかとなった。すなわち、図2に示すような微小穴3を試験片1に導入することにより、転がり疲労き裂進展挙動が観察できることが証明された。
そこで、応力付与の繰返し数N=2.57×107 を基準の繰返し数(100%)として、それよりも少ない繰返し数で転がり疲労試験を中断した試験片を準備した。本実施形態では、繰返し数N=1.44×106 (約5%)、2.76×106 (約10%)、7.59×106 (約30%)、1.50×107 (約60%)、2.37×107 (約90%)で転がり疲労試験を中断した試験片をそれぞれ準備した。
それぞれの試験片について、前述と同様の方法(図1を参照)により、断面の転がり疲労き裂の観察を実施した。図4は、観察結果の一例であり、繰返し数N=1.50×107 (約60%)の試験片の断面観察の結果である。ここで、微小穴から発生した転がり疲労き裂の進展を支配する応力拡大係数Kは、き裂発生深さでき裂の遠方に働く公称せん断応力と、断面内に現れるき裂の長さで表されると考えられる。
そして、このき裂の長さは、断面内に現れる全てのき裂における転動体移動方向両端間の転動体移動方向距離である(図4を参照)。このき裂の転動体移動方向距離は、断面内に現れる全てのき裂(微小穴を含む)を試験片表面に投影した投影線分の長さということもできる。そこで、このき裂の転動体移動方向距離をき裂長さ2aと定義し、それぞれの試験片の応力付与の繰返し数に対してき裂長さ2aをプロットすると、図5に示す転がり疲労き裂進展曲線を取得することができる。
なお、本実施形態においては、試験片Aに加えて、熱処理条件や、強度特性の異なる試験片B,試験片C及び試験片Dを用いて同様の試験を実施し、転がり疲労き裂進展曲線を取得した。試験片A及び試験片Bについては、最大接触圧力qmax を3.2GPa、試験片Cについては最大接触圧力qmax を3.2GPa又は2.4GPa、試験片Dについては最大接触圧力qmax を2.4GPaとして、転がり疲労試験を実施した。結果を図5のグラフに示す。
図5のグラフから、試験片Aと試験片Bの転がり疲労き裂進展特性は一致していること、試験片Aの転がり疲労き裂進展特性は試験片Cに対して優れること、試験片Cと試験片Dの転がり疲労き裂進展特性はほぼ同等であることが分かる。このようにして、転がり疲労き裂進展曲線を取得することによって、異なる材質の転がり疲労き裂進展特性を定量的に比較検討することが可能となる。
なお、本実施形態においては円板試験片を用いたが、例えばスラスト玉軸受(図7を参照)やラジアル玉軸受(図8を参照)など、種々の転がり軸受を試験片として用いることもできる。この場合、図7,8に示すように、微小穴3は軸受軌道輪の溝底に導入し、転がり疲労き裂の観察は、微小穴3の中心を通り且つ転動体移動方向及び微小穴3の深さ方向に平行な平面で軸受軌道輪を切断し、その断面について行えばよい。ただし、微小穴3の加工、転がり疲労試験、及び転がり疲労き裂の観察の容易性を考慮すると、前述の円板試験片が最適である。
また、試験片1に導入する微小穴3の直径は、試験片1と転動体の接触面の転動体移動方向幅Wよりも十分に小さいことが好ましい(図9,10を参照)。本実施形態では、最大接触圧力qmax を3.2GPa又は2.4GPaとして転がり疲労試験を実施しているが、このとき円板状の試験片1と転動体の接触面は、図9に示すように円形となり(玉軸受を試験片とした場合は、図10に示すように、試験片1と転動体の接触面は楕円形となる)、その転動体移動方向幅Wは、420μm又は320μmである。したがって、試験片1に導入する微小穴3の直径dは、少なくとも転動体移動方向幅Wの1/3程度以下とすればよい。
また、微小穴3の深さhが大きすぎると、エッジ部3aの深さ位置に生じるせん断応力が小さくなるため、エッジ部3aから疲労き裂が発生しない可能性が考えられる。応力解析を実施した最大接触圧力qmax =3.2GPaにおいては、深さz=75μmにてせん断応力τxzが最大となる。これに対して、応力解析結果から、エッジ部3aの深さh=175μmまでは、エッジ部3aに大きなせん断応力が働き、転がり疲労き裂が発生することが示唆された。すなわち、試験片1に導入する微小穴3のエッジ部3aの深さhは、少なくともせん断応力の最大となる深さの2倍程度以下とすればよい。
さらに、本実施形態においては、最大接触圧力qmax を3.2GPa又は2.4GPaとして転がり疲労試験を実施しているが、最大接触圧力qmax はこれらに限定されるものではない。すなわち、微小穴3の直径dが試験片1と転動体の接触面の転動体移動方向幅Wの1/3程度以下となり、微小穴3のエッジ部3aの深さhが、せん断応力が最大となる深さの2倍程度以下であるような微小穴寸法(直径d、深さh)と最大接触面圧qmax の組合せを任意に選択することができる。
また、本実施形態では、き裂長さの測定は、転がり疲労試験を中断した試験片1において、図1に示した断面観察により実施したが、例えば超音波探傷をはじめとした非破壊検査による測定法を採用してもよい。ただし、測定精度を考慮すると、本実施形態にて示した方法が好ましい。
次に、取得した転がり疲労き裂進展曲線から、転がり軸受の転がり疲労寿命を予測するための転がり疲労き裂進展速度線図、すなわち前記式(1)の関係を、以下のようにして求めた。前述の試験方法によって得られた転がり疲労き裂進展曲線において、n=i番目のデータ(Ni ,2ai )から、隣接するn=i+1番目のデータ(Ni+1 ,2ai+1 )までの平均のき裂進展速度(da/dN)は以下の式(3)で求められる。なお、平均のき裂進展速度(da/dN)の単位は、m/cycleである。
da/dN=(ai+1 −ai )/(Ni+1 −Ni ) ・・・(3)
また、平均のき裂長さaは以下の式(4)で求められる。なお、平均のき裂長さaの単位はmである。
a=(ai+1 +ai )/2 ・・・(4)
ここで、転がり疲労試験では繰返しのせん断応力が作用し、前述の観察断面(図1)におけるき裂先端の変形様式は面内せん断型(モードII)支配となる。そこで、微小穴から発生したき裂を、せん断応力τが作用する無限体中に存在する円状のき裂と仮定すると、Kassirらの厳密解(非特許文献4を参照)から、観察断面でのき裂先端のモードII応力拡大係数KIIは、以下の式(5)で表される。
なお、観察断面でのき裂先端のモードII応力拡大係数KIIの単位は、MPa・m1/2 である。また、式(5)中のFは、以下の式(6)で表される。さらに、νはポアソン比であり0.3である。
Figure 0006156873
Figure 0006156873
ここで、き裂先端の遠方、すなわち微小穴の遠方に働くせん断応力τxzは、最大接触圧力qmax に比例し、LundbergらやHansonらの厳密解(非特許文献5、非特許文献6を参照)によって求めることができる。転がり疲労試験では、転動体の移動にともない両振りのせん断応力τxzが生じ、その振幅を公称せん断応力振幅τa とすると、せん断応力範囲Δτ=2τa であるので、モードII応力拡大係数範囲ΔKIIは、式(7)で表される。
Figure 0006156873
本実施形態の試験条件である最大接触圧力qmax 3.2GPa及び2.4GPaにおいて、疲労き裂発生深さ、すなわちエッジ部の深さhに働くせん断応力振幅τa は、それぞれ685MPa及び496MPaとなるので、式(7)より応力拡大係数範囲ΔKIIを計算することができる。このようにして、各データ区間での転がり疲労き裂進展速度da/dNと応力拡大係数範囲ΔKIIを求めて両対数軸上にプロットすると、図6に示す転がり疲労き裂進展速度線図を取得することができる(図6では、転がり疲労き裂進展特性が同等な試験片Aと試験片B、試験片Cと試験片Dをそれぞれ一つのグループとした。)。
なお、本実施形態では、き裂先端のモードII応力拡大係数範囲を、微小穴から発生したき裂が無限体中に存在する円状き裂と仮定して、Kassirらの厳密解を用いて簡便的に計算した。その他、例えば微小穴にき裂を付与したモデルを用いて、有限要素法(FEM)によって求める手法も考えられる。
次に、得られた転がり疲労き裂進展速度線図から、転がり軸受の疲労寿命を予測する手法を説明する。図6の疲労き裂進展速度線図を式(1)の関係で表すと、以下の式(8)のようになる。なお、き裂進展速度(da/dN)の単位は、m/cycleである。
Figure 0006156873
ここで、転がり疲労寿命Nf は、き裂進展速度の逆数(dN/da)を、初期き裂長さa0 から疲労破壊時の最終き裂長さaf までの範囲において、き裂長さaで積分することにより得られる。すなわち、以下の式(9)のようになる。
Figure 0006156873
初期き裂長さa0 は、疲労破壊時のき裂長さaf に対して十分に小さいと推定される。この場合、式(9)のうち下線を付した項を無視することができ、式(9)は以下の式(10)のようになる。
Figure 0006156873
式(10)は、使用条件で材料内部に生じるせん断応力振幅τa と、初期き裂長さa0 から、転がり疲労寿命が推定できることを示している。ここで、材料内部に含まれる非金属介在物が、転がり疲労破壊起点となることから、初期き裂長さa0 を以下のようにして見積もる。
まず、転がり軸受の応力体積中に存在する最大介在物の寸法を、統計的手法により予測する。統計的手法としては、極値統計法が最適であり、その具体的手法は例えば非特許文献7に詳述されている。なお、介在物寸法は、介在物を軸受軌道面に投影した投影図形の面積areaの平方根√areaとすることが好ましい。
ここで、破壊起点の非金属介在物の形状がほぼ球形であると仮定し、その直径Dが初期き裂長さ2a0 に相当すると考えると、初期き裂長さa0 は以下の式(11)のように表される。
Figure 0006156873
そして、式(10)と式(11)から、初期き裂長さa0 を前記面積の平方根√areaに置き換えると、以下の式(12)のようになる。
Figure 0006156873
式(12)における定数C、mは、本発明の試験方法によって得ることができる。前述の試験片A、Bのグループでは、定数Cはおおよそ1×10-18 であり、定数mはおおよそ5.5である。すなわち、使用条件(せん断応力振幅τa )と、極値統計などにより予測した最大介在物寸法を用いて、式(12)により転がり軸受の疲労寿命を推定することが可能である。ただし、実際にはき裂が発生する深さでのせん断応力振幅は不明であるので、使用条件において生じるせん断応力振幅τa の最大値を用いることが有効である。
なお、式(12)中のFは、き裂の形状によって変化するが、球状の介在物からき裂が発生する場合は、せん断応力が働く無限体中の円状き裂と仮定できるので、式(6)の値を用いることができる。
以上のように、本発明の転がり疲労き裂進展試験方法により、従来は取得することができなかった転がり疲労き裂進展曲線(き裂長さと応力繰返し数の関係)や転がり疲労き裂進展速度線図(き裂進展速度と応力拡大係数範囲の関係)を取得することができる。
さらに、本発明の試験方法によって得られる転がり疲労き裂進展速度線図を用いて、転がり軸受の使用条件(材料内部に働くせん断応力振幅の最大値)と、極値統計などの手法により予測した最大介在物寸法から、転がり軸受の疲労寿命を精度良く予測することが可能である。この手法は破壊力学的観点に基づく方法であり、経験式に基づく従来法とは全く異なる手法である。
1 試験片
1a 転動体軌道
3 微小穴
3a エッジ部

Claims (7)

  1. 微小穴を形成した試験片に転動体を載置し、前記微小穴上を通る転動体軌道上で前記転動体を転動させて、前記試験片に繰返し応力を付与する転がり疲労試験を行い、前記微小穴を起点とするき裂を前記試験片の内部に生じさせ、複数の繰返し数において前記転がり疲労試験を中断し、中断した時点の試験片に生じている前記き裂の長さをそれぞれ測定し、応力付与の繰返し数とき裂長さとの関係を示す転がり疲労き裂進展曲線を取得することを特徴とする転がり疲労き裂進展試験方法。
  2. 前記き裂長さは、前記微小穴の中心を通り且つ転動体移動方向及び前記微小穴の深さ方向に平行な平面内に現れるき裂の長さであって、全てのき裂における転動体移動方向両端間の転動体移動方向距離であることを特徴とする請求項1に記載の転がり疲労き裂進展試験方法。
  3. 前記微小穴はドリル加工によって形成された有底穴であり、前記微小穴内にはエッジ部が形成されており、前記微小穴の直径は、前記試験片と前記転動体の接触面の転動体移動方向の幅の1/3以下であり、前記エッジ部の深さ位置は、前記試験片の内部に生じるせん断応力が最大となる深さの2倍以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の転がり疲労き裂進展試験方法。
  4. 前記転がり疲労き裂進展曲線に基づいて、き裂進展速度と応力拡大係数範囲の関係を示す転がり疲労き裂進展速度線図を取得することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の転がり疲労き裂進展試験方法。
  5. 前記転がり疲労き裂進展曲線における隣接する2つのデータから平均のき裂進展速度及び平均のき裂長さを求め、前記平均のき裂長さと、き裂の発生深さにおいて働くせん断応力振幅とから応力拡大係数範囲を求めることにより、前記転がり疲労き裂進展速度線図を取得することを特徴とする請求項4に記載の転がり疲労き裂進展試験方法。
  6. 請求項4又は請求項5に記載の転がり疲労き裂進展試験方法によって取得した前記転がり疲労き裂進展速度線図に基づいて、転がり軸受の転がり疲労寿命を予測するに際して、転がり軸受を使用する際に材料内部に生じるせん断応力振幅の最大値と、前記転がり軸受の応力体積中に含まれる最大介在物の寸法とを用いることを特徴とする転がり疲労寿命予測方法。
  7. 前記最大介在物の寸法は、極値統計法を用いた介在物検査によって予測された応力体積中の最大介在物を、軸受軌道面に投影した投影図形の面積の平方根であることを特徴とする請求項6に記載の転がり疲労寿命予測方法。
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